BtoBのトンカツ理論:企業が発注する5つの理由を知って顧客企業のニーズをつかもう!

トンカツ理論

BtoBの大きなニーズの1つが外注・外部依託(=アウトソーシング)

BtoB(法人顧客対象のビジネス)で、顧客企業が何かを買う・発注するという場合、仕事を「外注」するという場合が多くあります。

アウトソーシング、外部委託、などとも呼ばれます

例えば、ITサービスを「外注」するという場合もあります。給与計算などの事務を「外注」することもあります。

ITサービスにしても、給与計算にしても、自社内でやろうと思えばできるわけです。ITサービスならITに明るい人材を雇用して、自社で「情報システム部」を作ればいいわけです。

給与計算の場合は、従来社内で行っていた業務を「外に出す」すなわち「外注」する、ということが多いでしょうか。

製造の一部を外注に出す、というのもよくありますね。自社工場でも作れるにしても、委託先に外注する、というような場合です。

最近ですと、営業(リードジェネレーション)などを外注することも多いようです。

外注する理由に顧客ニーズが現れる

なぜ企業は多くの仕事を「外注」するのでしょうか?

基本的には、全てのことは自分でできます。

例えば自動車メーカーが「半導体部品」を半導体メーカーから仕入れている、とします。自動車メーカーが「半導体工場」を自社で立ち上げて内製で作ることは不可能でもありません。

しかし、多くの場合は半導体部品メーカーから仕入れるわけですね。当然、

・自分でやらずに、他社に頼む理由がある

ということです。

であれば、受注側(上の例で言えば半導体部品メーカー)は、その「他社に頼む理由」を知っておいた方が良いです。なぜならそれこそが「顧客ニーズ」だからです。

あなたが、顧客企業から何かの「外注」を受けている(=受注している)場合、顧客企業の「外注」のニーズを把握してみましょう。それにより、さらに顧客企業との関係が深められるかもしれません。

自社でもできる仕事を「外注」する理由は「トンカツ」で説明できる

「外注」ニーズを非常によく説明するのが「トンカツ理論」です。私が提唱している「理論」(というほどでもありませんが……)です。

はい、豚肉を揚げたあの「トンカツ」です。私がトンカツが大好きというのもありますが、いたってマジメです。

「外注」とは、

・自社でもできることを他社に発注する

とここでは定義しておきます。

自社では全くできないようなことを頼む(買う)のは、「仕入」ですね。

そして、トンカツも同じです。スーパーでトンカツが売っています。しかし、トンカツは自宅でも作れます。

スーパーでトンカツを買う、という行為は、「自分でもできるトンカツ作りという工程をスーパーに外注している」ということです。

トンカツを買うのは、実は「外注」なんです。

スーパーの総菜コーナーは、野菜炒めではなく「トンカツ」

スーパーの惣菜コーナーで売っているものを考えてみましょう。

「野菜炒め」は売ってませんよね? 売っているかもしれませんが、あまり大々的に売ってはいませんよね。

総菜コーナーで売っているもので、一番大きな売り場面積を占めているのは……ご存じの通り、揚げ物です。

・トンカツ
・コロッケ
・天ぷら
・鶏の空揚げ
・餃子

などです。

それはなぜでしょうか? 

なぜ「野菜炒め」ではなく「揚げ物」なのでしょうか(餃子は揚げてませんが)。

もちろん揚げ物が売れるからでしょう。

ではなぜ揚げ物が売れるのでしょうか? 「野菜炒め」が売れるのであれば、スーパーも野菜炒めを置くはずです。

トンカツを食べる頻度が多いからでしょうか?

いや、そんなに毎日食べませんよね……私はかなり好きな方ですが、それでも週1~2回だと思います。それでもかなり多い方だと思います。余談ですが、妻が私と結婚したときに食卓に並ぶ揚げ物率の高さに驚いていました。

「食べる頻度」ということで言えば、トンカツよりもむしろ「野菜炒め」の方が多いと思います。

にも関わらず、総菜コーナーでは、なぜ「野菜炒め」ではなく、「トンカツ」なのでしょうか?

理由は……

お客様は、「野菜炒め」が食べたければ自分で作ります。しかし「揚げ物」は、スーパーで買いたい、すなわちスーパーに「外注」したいのです。自分で作らずに、スーパーに「外注」する理由があるのです。

ここから、「外注」の顧客ニーズや、それに応える商品開発に関する重要な示唆が得られます。

名付けて「トンカツ理論」です。マーケティングメルマガ「売れたま!」2016年1月が初出です。

トンカツ理論:トンカツをスーパーに「外注」する5つの理由

トンカツ理論は、

「お客様が自分でやる・作るのではなく、外注する(他社から買う)理由」

についてまとめたものです。

トンカツを自分で作らず、スーパーで買う(=スーパーに置けば売れる)理由は、5つにまとめられます。

これは、BtoB(法人顧客対象のビジネス)で仕事を「外注」する理由と同じになります。

あ……料理がお好きで「トンカツなんて簡単。自分で作る」という方は、例えば「パン」に置き換えてお考えください。

食パンも自分で作れるはずですが、ほとんどの方は、パンはお店で買って来ますよね。

外注する理由1:道具・スキルが無いために、自分では作れないから

トンカツを作れる人もいます。しかし、そもそも自分で作れない場合は「外注」以外に選択肢がありません。買ってくるしかないわけです(私がそうです)。

まず、トンカツを作るための「設備・器具」「原材料」「スキル」がなければ、作りたくても作れません。作れなければ、外で買うしかありません。

○設備・器具:トンカツを揚げるには、それ相応の調理器具が必要です。置く場所も必要です。単身者の方やキッチンが狭い方は、調理器具を置くこと自体が難しいです。

○原材料の仕入:野菜炒めの材料(キャベツ、玉ねぎ、豚肉)は常備していても、トンカツの材料(パン粉、大量の油、など)を常備している とは限りません。

○スキル:野菜炒めは、適当に切ってフライパンで炒めれば、それなりの味になります。しかし、トンカツは、慣れればできるでしょうが、そのスキルの習得には時間がかかります。

外注する理由2:外注した方がラク・安全・早い

トンカツを自分で作れたとしても、それが面倒で時間がかかるのであれば、外に買いに行きます。

肉の下ごしらえをして、パン粉をまぶして……油の温度を管理しながら油に投入し……というのはかなり手間ですよね。

安全性の問題もあります。トンカツを揚げて油が飛び散ったりすると、やけどするかもしれません。手際が悪いと最悪家火事になりかねません。

油の処理や洗い物も大変です。揚げたあとはコンロはかなり汚れているでしょう。

スーパーまで行って帰って30分であれば、後処理なども含めて、自分で作るより、買って来た方がラクだし早いでしょう。

外注する理由3:外注した方が、低コストだから

他から買った方が「安い」という場合もあります。

原材料費だけで見れば自分で作った方が安いかもしれません。

しかし、

・油、パン粉、タマゴなどの「仕入」
・調理器具の減価償却、スペース費用
・自分の人件費

まで考えれば、買った方が安い場合もあるでしょう。

外注する理由4:外注した方が、より良いものが入手できるから

自分で作れたとしても、他で買って来た方が上手にできる、という場合もあるでしょう。

トンカツは、仮に出来たとしても、「上手い下手」の差があります。自分で頑張って作って、「やっぱり買って来た方がおいしい……」となると、思いっきり萎えそうです……

スーパーでは、毎日何十、何百と作る「熟練者」がトンカツを作っているわけです。

週に1回程度作る人よりは、上手にできますよね。

外注する理由5:外注する方が、選択肢が多いから

さらには、外から買って来た方が、「選択肢」が増えます。色々な店を好みに応じて選べます。

トンカツといっても、ロースカツもあればヒレカツもあります。スーパーの方が、選択肢が多いわけで、体調・気分によって選べます。

あなたの「トンカツ」が売れる理由(=あなたが受注できる理由)を考えてみよう!

スーパーがトンカツを売るのは、お客様がトンカツを買うからです。

そしてお客様から見ると、「自分で作らずに、トンカツをスーパーに外注する理由」があるから、スーパーで買うわけですね。

その理由が大別すると上記の5つになる、ということです。

外注をしない顧客に対しては、自社に発注する理由を作る

私はトンカツ同様、カレーも大好きです。コーヒーも大好きです。

が、カレーもコーヒーも自分で作ります。それはむしろ

・自分で作った方がおいしい(自分好みになる)
・コーヒーは、自分で作った方が安い(人件費は除く)

など、自分で作る(=外注しない)理由があるわけです。

ただ、レトルトは買います。レトルトカレーは、私の場合、外注する理由2:外注した方がラク・安全・早いに入ります。時間がないときには、外注するときもあるわけです。

例えば、自社で部品Aを作ることはできても、受注に生産が追いつかないときなどは、同じ部品Aを外注するときもあるわけですね。

それに、もし「自分では絶対に作れないような、超おいしいカレー」がスーパーで売られていたら、それはそれで買いに行くかもしれません。

その場合は、外注する理由4:外注した方が、より良いものが入手できるから、が生まれた、ということになります。

となります。

つまり、これらは「外注する理由をどう作るか」ということでもあります。現在、外注せずに内製しているような会社でも、やり方次第で「外注する理由を作る」ことはできるわけですね。

BtoBの顧客企業のニーズを考える3つの質問

最後に、ここまでの話に基づき、考えていただきたい質問が3つあります。

1)顧客企業があなたに「外注」する理由は何でしょうか?
2)顧客企業があなたの競合に「外注」する理由はなんでしょうか?
3)顧客企業が自分で作る(=外注しない)理由はなんでしょうか?

1)については、この理由を「維持」「強化」していくことになります。
2)については、この理由を自社が取り込めれば、競合の受注を奪えます
3)についても、この理由を自社が取り込めれば、自社に発注をもらえるかもしれません。

さて、今宵の食卓はなんですか? トンカツをいただきながら、顧客企業の「外注ニーズ」を考えてみませんか?

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