2011-07 達人マーケターへの道

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━戦略編Vol.202 2011/07/11
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

★「アタマの中の幻想の顧客」のニーズではなく、「本当の顧客ニー
 ズ」をお客様に確認しよう!
※このシリーズは、「達人への道」です……

が、本号の次から、「達人への道」シリーズが正式に始まります!

その前に、「達人への道」シリーズの「準備編」のような位置づけに
なった本号からまずどうぞ。

 

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◆ロイヤルホストの「ガーデンサラダランチ」
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★女性向けランチをボリュームアップしたら、注文が2倍に!

ロイヤルホストが、女性向けランチ、「ガーデンサラダランチ」を展
開中。当初は苦戦していましたが、工夫を重ねて、注文を増やしたそ
うです。
-----------< 記事要約 >------------
☆ロイヤルホストの女性向けランチメニュー、「ガーデンサラダラン
 チ」が好調。3月の発売時に比べ6月下旬刷新の新メニューは、注
 文数が春の2倍に。
☆当初、女性客を取り込むには「軽めでヘルシー、すなわち野菜だと
 考えた」。春に出したのはサラダとスープにピザトースト、パンケ
 ーキ、オムレツを合わせた3種類。しかしテスト販売から全く売れ
 なかった。開発スタッフは「開発チームのほとんどが男性で、女性
 のニーズとはすれ違っていた」と反省。社内の女性の意見を聞く日
 々が始まる。
☆夏はオムレツをシーフードオムライスに、パンケーキはマカロニグ
 ラタンに変更。「女性=軽食」のイメージを払拭。サイドに添える
 コロッケもグリルソーセージに変え、葉ものばかりのサラダにはブ
 ロッコリーを加えて食べ応えを強調した。意外なことに一食当たり
 のカロリーも従来より下がったという。

2011/07/06, 日経MJ(流通新聞), 15ページ
-----------< 記事要約 >------------
今のガーデンサラダランチはこんな感じです。

http://www.royalhost.jp/lunch/lunch_5.html

 

冷製コーンのすりおろしポタージュ、サラダ、粗挽きウィンナー

というセットに、以下のメニューがついて……
・クリームソースのオムライス    748kcal
・ポテトのマカロニグラタン     691kcal
・タマネギとベーコンのピザトースト 819kcal
税込924円/976円(店舗により価格が異なります)
結構ボリュームのあるメニューですが、カロリーはそれほど高くあり
ませんよね。
すると……注文が春の2倍に増えました!
さらに、100円デザート(300円(税込)以上ご注文の方)とし
て……

・ミニパインソルベ
・ミニチョコサンデー
・ミニコーヒーゼリー など

もつけると、結構なボリュームになりますね!

女性とはいえ、このようなボリュームあるランチが食べたい、という
のは……「意外」ですか?? 

 

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◆男性が考える女性のニーズと、本当の女性のニーズ
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★男性が考えた「女性のニーズ」

ここで、開発スタッフさんが、失敗というか反省を率直に表していた
だいているのが、本当に参考になります。
☆当初、女性客を取り込むには「軽めでヘルシー、すなわち野菜だと
 考えた」

☆「開発スタッフは「開発チームのほとんどが男性で、女性のニーズ
 とはすれ違っていた」と反省」
という部分ですね。
ここでの失敗の理由は、「女性のニーズを考えなかった」ということ
ではありません。女性のニーズは、捉えようとしたのです。しかし、
うまくいきませんでした。その原因が……
☆自分のアタマの中の「女性のニーズ」と、「本当の女性のニーズ」
 は違っていた
ということなんです。

あまりにも大事なことなので、繰り返します。
☆自分のアタマの中の「女性のニーズ」と、「本当の女性のニーズ」
 は違っていた
ということです。
「女性のニーズ」には応えようとしました。しかし、応えたニーズは
「本当の女性のニーズ」ではなく、「自分のアタマの中にあった、幻
想の顧客のニーズ」だったんですよね。
今回は、「女性」という括りだと顧客像の定義として広すぎる」とい
う話は(実際にそうではあるのですが)横においておきます。
今回のポイントは……
☆男性のアタマの中の女性のニーズ

・軽めでヘルシー、すなわち野菜だ

という前提で作った「サラダ、スープ、オムレツ」という当初の「軽
めでヘルシー」なメニューは売れませんでした。
☆本当の女性のニーズ

・実は食べ応えを求めていた

わけです。

 

ここから先は、実際にお客様の声を聞いてみないとわからないのです
が、「女性はサラダだ」というのは、あながち間違いではないように
思います。

ただ、ウラのニーズというか、本音のニーズというか、例えば、売多
真子なら、こんなことを言いそうです。
「私だってね、別に野菜ばっかり食べたいワケじゃないのよ! ホン
 トは、おなか一杯食べたいに決まってるじゃない! 店はうまくい
 かないしさ、たまにはヤケ食いだってしたいわよ!
 
 でも、しょうがないじゃん! 最近脂肪だって気になるしさあ……
 望ちゃんはいいわよ、痩せてるから! だから、ガツガツ食べられ
 て、太らないご飯があればいいのよ!」

とか言うのではないでしょうか?

「女性=サラダ」なのかもしれませんが、その背後にある「本音」は
「私だって食べたいのよ!」という悲痛な叫びなのかもしれませんよ
ね?
まあこれも私という「男性」のアタマの中にある「幻想」かもしれな
いので、女性の声をお待ちしています。でも、売多真子については、
私にしかわからない、ということでご勘弁を(笑)

 

★男性が考える女性のニーズと、真の女性のニーズは違う可能性

「男性のアタマの中にある女性」のニーズと、実際の女性のニーズが
違うケースは、結構多くあります。
そして、その逆もまたありえますね。あなたが女性の場合は、男性と
女性を逆にしてお考えください。

男性の方に伺います。女性はどんな色の服を着ていることが多いと思
われますか?

例えば、私も含めて、男性は「女性=ピンク色!」のような連想を単
純にします。ピンクではなくとも、パステル系の色を連想される方も
いらっしゃるかもしれません。が、ピンクやパステル系の色の服を着
ている女性は、実際にはそれほど多くいるわけではありません。

一度、電車の中などで観察してみてください。もちろん、人の好みや
季節にもよっても違うでしょうが、紺や茶系のシックな服を着ている
女性も多く、華やかな色の服を着ている女性ばかりではない、という
ことに気づくでしょう。
女性に人気のコーチのバッグでも、もちろんピンク色のものもありま
すし、売れているとは思いますが、別にピンクばっかりではないかと
思います。
つまり、「アタマの中にある女性のニーズ」が「真の女性のニーズ」
とは限らない、ということです。

ちなみに、上の、「私が考える女性ニーズ」が違っていたとしたら、
まさに上の言葉を(カラダをはって)立証していることになります…
(それはそれで問題ではありますが……)

 

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◆「真のお客様」のニーズと、「自分が考えるお客様」のニーズ
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★アタマの中にある「顧客「」は幻想かもしれない

これは本当に怖いことなのですが、私達の「アタマの中」でイメージ
している顧客像は、幻想かもしれません。

特に、「つぶやきイメージ」「動画イメージ」などをする際には、そ
の「イメージ」が本当かどうかを検証する必要があります。
「顧客ニーズを考えたのに売れなかった」

という場合、もしかして、その「顧客ニーズ」とは……
「真のお客様のニーズ」ではなく、「自分が考えている幻想のお客様
のニーズ」
に応えていたのかもしれません……

 

★思い込みで判断するのは危険。必ずお客様に直接確認しよう!

ではどうすればいいかというと……単純です。
お客様に直接確認すれば良い
のです。
ロイヤルホストの開発スタッフも、社内の女性の意見を聞いて、この
ような「食べ応え重視」にしたら、注文数が2倍になった、というわ
けですね。
これ、当たり前のようですが……「当たり前」と言われる方は、立派
なマーケターさんですよ。
・お金が無い
・時間が無い
・めんどくさい
・そんなことしなくてもニーズはわかってると思う
などなどの様々な理由で、毎回お客様に直接聞いてみる、ということ
はできないものです。
恥ずかしながら、私もそうでした。

戦略BASiCS集中セミナーの開催日は、最初は金・土で設定して
いました。色々推測した末に、それが便利だろう、と考えたのです。

特に、経営者の方は、時間の自由がききやすいだろうから、曜日はそ
れほど影響ない、むしろ平日の方が良いかと思っていたら……

そこは逆で、経営者の方でも、やはり平日は会社で指揮を執りたい、
だから土日の方が良い、という声の方が多かったのですね。
それで、戦略BASiCS集中セミナーは、土日に開催するようにし
たんです。
やはり、聞いてみないとわからないものです……

 

次回は、この続き、です。

大胆にも題して……「達人マーケターへの道」!

「お客様に聞く」というのは、ある意味では、まだ基本の技、なんで
す。

さらに上に行くには、どうすればいいのか……? 私の独断と偏見に
満ちた「達人マーケターへの道」、お楽しみに!

 

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◆今日のまとめ
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★「アタマの中の顧客」のニーズは思い込み・幻想かもしれない。本
 当のお客様に、きちんと確認しよう!

 

 

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━戦略編Vol.203 2011/07/14
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

★初級マーケターになるには、まずは「お客様視点」を身につけよう
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◆達人マーケターへの道
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★達人マーケターへの長い道のり

前号で、ロイヤルホストの開発担当者さんが……

「自分たちの考える女性ニーズと、本当の女性ニーズは違った。聞い
 てみないとわからない」

と言ったような趣旨のことをおっしゃっていた事例を紹介しました。

僭越ながら、このような道のりを経て、「優れたマーケター」として
成長していくわけですね。
というわけで、今回は……マーケター成長の道のりについて考えてみ
たいと思います。
例によって独断と偏見ではありますが、私の考えでは、達人マーケタ
ーになるまでには、段階を踏みます。

この「段階」が、順序よく進むとは限りませんし、全員の方にあては
まるとも限りません。あくまでも限られた私の経験、及び他の方の観
察に基づくもので、戦略BASiCSのようによく練られた理論では
ありません。「独断と偏見」であり、異論もあるでしょう。

また、私自身が「達人マーケターだ」と言うつもりもありません。
「何だ!? オレは初級者だっていうのか!?」と、お怒りになられ
ても、正直責任は持てません……

シャレのわからない方は、ここで止めて、お読みになられない方が良
いかと思います

「まあそういう見方もあるよね」と笑って受け流せる方は、ぜひお読
みいただければと思います。

 

マーケターと言っても、ここでは広い意味です。

・商品・製品開発
・仕入
・営業
・広告製作・デザイン・クリエイティブ

などを含み、「マーケター」と呼んでいます。

 

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◆入門者:作りたい物を作り、売りたい物を売る
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★入門者:作りたい物を作り、売りたい物を売る

どんな達人マーケターも、いきなり達人になったわけではありません
よね。誰でも最初は「入門者」です。
入門レベルだと、自分が作りたい物を作ります。お客様が、とか、そ
ういうことは考えずに、気の赴くままに

「あんなの作りたいな」
「こんなものできちゃった」
「こんなの仕入れちゃったけどどうしよう」
「なんとかこの商品売らなきゃ」

というロジック(?)で動きます。

その際には、視点は完全に「自分」です。そして、向き合う先は、自
分顧客ではなく、自分に商品を供給してくれる(=自分がお客様)供
給元(サプライヤー)です。

「そんなバカな」と思われるかもしれませんが、感覚的には、世の中
の5~6割の方はこんなロジックで動いているように思います。
「こんなの作ろうぜ。『オレは』売れると思うよ」という開発担当
「安くしますので、買ってください!」 という営業担当
「これ仕入れたけど、誰に売ろうか?」という仕入担当
「この広告のコピー、オレは好きだよ」というコピーライター
「この商品の性能はすごい!」という商品カタログ
「このフラッシュ、カッコイイ! 重くて見づらいけど」というHP
「我が社の沿革は……」という会社案内
などなど、要は、

「お客様にとってどうなのか?」

という視点がごっそり抜け落ちている場合は、すべてこのレベルにな
ります。
もちろん、誰でもこの道は通ります。

売れたま!をある程度の期間に渡ってきちんとお読みいただいた上で
実戦で色々試されている方の場合は、入門者の段階は卒業されている
と思います。

入門者のレベルではまだ「マーケター」とは呼べず、単に「入門者」
と呼称しておきます。

 

★入門者には、成功の再現性がない

このレベルの方でも、全く売れない、ということはありません。が、
売れる売れないが「運任せ」になります。

私も、このレベルのときはありました。まだ私が駆け出しビジネスパ
ーソンだった頃、広告営業をしていました。BtoBの、広告の訪問
営業です。1件1件、地図の上にマークされた法人を訪問して、「広
告いかがですか?」という営業をする仕事です。

当時はまだ何も知らず、「広告いかがですか?」という、自分本位の
営業をしていました。ですので、当然売れません。「広告いかがです
か?」「いらないよ」というやりとりを永遠に続けます。が、それで
も、希に売れることがありました。それは、「たまたま広告を必要と
していた」会社に当たったから、ですね。

でも、それは「たまたま」なので、再現性がありません。次からは、
また「広告いかがですか?」「いらない」というやりとりを再現なく
繰り返すことになります。

「当たらぬも八卦、当たらぬも八卦」ですね。1週間に数百件訪問し
て、2件が買ってくれる、と言うレベルでした。

ちなみに、その「売れなかった営業体験」がなければ、今の私も恐ら
くはないでしょうから、その体験を否定してはいませんよ。むしろ、
貴重な体験です。このような経験がなければ、次のレベルにはいけな
いと思います。
入門者レベルでは、たまには売れる商品も出てきますが、それは「た
またま」ですので、再現性がなく、次が続きません。

 

また、デザイナーやコピーライターでも、「オレはこれがカッコいい
と思う。異論は認めない」というタイプ(?)の方もいます。この態
度は、たとえデザイナーやコピーライターとしては一流だったとして
も、マーケターとしては入門者です(そういうケースがあり得るかど
うかはわかりませんが)。

ちなみに、本当にすごいデザイナーやコピーライターは、「他人から
はどう見えるのか」というチェックを本能的にというか無意識にと言
うか、入れています。
デザイナーやコピーライターはある意味での「アーティスト」かもし
れません。だったとしても、お客様(クライアント)にお金をいただ
いてデザインやコピーライティングをしている「商業アーティスト」
である限り、「オレがいいと思うモノがいいんだ」では、お話になり
ません。そういうことをおやりになるのは構いませんが、趣味として
自分でお金を払って、自分でやってください、となりますね。
こういうことを言うと、「じゃあ芸術家はどうなんだ?」と言われる
かもしれません。「優れた芸術家は、自分の好きなように作っている
ではないか?」と。

しかし、ですよ、その「芸術家」が「優れているかどうか」を判断す
るのは誰ですか? 芸術家「本人」ですか? 

でしたら、私も超一流の芸術家です。

 ●△×
 □◆▼

私が「上の記号は、すごい芸術なんだよ。誰にも認められなくてもい
いさ。オレは超一流の芸術家だよ」と言えば、私が超一流の芸術家、
ということになりますよね?

で、もちろんそうはなりません。その「芸術家」が、「優れている」
かどうかを判断するのは、他人なんですよ。生きている間に高い評価
を得られない、不幸な(と思われる)「優れた」芸術家もいるかもし
れません。

絵などについて言えば……「優れた絵」かどうかは、どれだけ多くの
人が見たいと思うか、魂が震えるか、さらに言えば、「どれだけ高値
がつくか」という基準に帰着することになります。他人に価値が認め
られなかった芸術が、優れた芸術、と言えるのでしょうか?
芸術家であろうとマーケターであろうと、作った本人が「これはスゴ
イと『オレは思う』。だからスゴイんだ」という感覚「だけ」ではダ
メなんですよ。ただ、これはスゴイと『オレは思う』、という感覚を
否定するものではありませんよ。それ自体は必要です。それ「だけ」
ではダメだ、ということです。

 

★「わかる」と「できる」は違うこと

このようなお話をすると、恐らくは誰でも「わかる」はずです。

しかし、「わかる」と「できる」は、全く違うレベルの話です。アタ
マでわかっていても、なかなかできないものです。

「わかる」だけで誰でも「できる」ようになるのであれば、苦労はし
ませんよね? 英文法のテキストを読めば、いきなり英語が使いこな
せるようになるかというと、そうではないわけです。
マーケティングでも、「わかる」と「できる」は全く、全く違うこと
なんです。

わかっていたとしても、ついつい
・作りたい物を作る
・お客様のことを考えない売り込みをする
ということをしてしまうんですよね。
ですから、「入門者」が多いこともしょうがありません。誰でも始め
は入門者です。

修行を続けると、入門者を抜け出て、「マーケター」への道を歩み始
めることになります。

 

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◆初級マーケター:「自分がお客様だとして」のお客様視点
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★初級:自分がお客様だとして、「お客様」の欲しいものを作る

マーケターへの道の第一歩は「初級」からです。「マーケター」と呼
べるのは、このレベルからだと思います。
初級マーケターは、

「自分がお客様だったとして」

という前提のもとで、「お客様の欲しい物を作る」「仕入れる」レベ
ルです。
「入門者」と「初級マーケター」の明確な違いは

「お客様視点の有無」です。

そして、これは非常に大きな違いです。

初級マーケターには、「お客様の欲しい物を作る」という意識は明確
にあります。

ですので、初級マーケターでもヒット商品・売れる営業はできます。
マーケティングは確率の問題ですので、初級マーケターでもヒットを
飛ばすことはできます。
世の中の3割程度の方はこのレベルのように思います。

呼び名は「初級マーケター」ですが、立派な「マーケター」ですから
入門者とはレベルが遥かに違います。

世間的には「名マーケター」と呼ばれ(というか、他の方と比べると
実際レベルは高いんです)、メディアにとりあげられたりします。

そのときに「自分が欲しいものを作ればいいんだと思った」というよ
うな発言をされる方は、このレベルに該当します。

繰り返しますが、初級はレベルが低い、ということではなく、世間の
平均よりは高いんですよ。

それでも、まだその先がまだまだあるので、「初級」なんです。

 

★小規模ビジネスの場合には、戦略としてあり得る

初級マーケターは、「自分だったらこんなものが欲しいなあ……」と
いうロジックで動きます。

この考えは、

☆自分が欲しいモノ=お客様が欲しいモノ

という前提を置いています。
その場合、「お客様を選ぶ」ことになります。「自分と同じ感覚を持
つ人にしか売れない」ということですね。
お客様を選ぶこと自体は別に悪いことではないので、それでも構わな
い、という場合はそれでもOKです。

1人でやってる商店主や、マニア限定のビジネスなどの場合には、あ
えて

「自分と同じ感覚を持つ人だけをお客様にする」

という戦略を意識的に取ることはありえます。メディアで取り上げら
れたりする「こだわりの名店」には、

「オレが欲しいと思ったモノを作るんだ」

という職人気質の社長がいらしたりしますね。
ちなみに、「自分と顧客ニーズは、今この場合という限定的な状況に
おいて一致している。だから、今この場合という限定的な状況におい
ては、自分の欲しいものを作れば売れる」という考えができる方は、
既に初級を超え、中級以上ですね。

 

★初級マーケターの弱点

繰り返しますが、「初級マーケター」は、「初級」とは言え、世間の
水準でいうと、かなり立派なマーケターですよ。

おそらく職場のリーダー、というような位置づけでしょう。

しかし、まだまだ先は長いんです。
☆自分が欲しいモノ=お客様が欲しいモノ

という前提を置く初級マーケターの弱点は2つあります。
1つ目、まず、自分がユーザーで無い商品・サービスを扱う場合には
そもそもマーケティングができません。
例えば、私は「化粧品」は使ったことがありません。少なくとも、
「女性用化粧品」は使ったことがありません。

使えないこともありませんし、若かりし頃にバーなんかで自分の顔に
口紅などを塗って(塗られて)遊んだことはなくはないですが(あま
りにおぞましいですが)それで女性のニーズがわかるはずもありませ
ん……。

すると、私(男性)には「女性用化粧品」のマーケティングはできな
いのか、ということになります。

一般化すると、

・男性には「女性向けの商品」のマーケティングはできないのか?
・女性には「男性向けの商品」のマーケティングはできないのか?
・若者には「年配向けの商品」のマーケティングはできないのか?
・中年には「若者向けの商品」のマーケティングはできないのか?
(以下えんえんと続く……)

ということになります。

結論としては、そんなことはありませんし、そうではない例はたくさ
んあります。

別に「自分=顧客」でなくともマーケティングはできます。が、もっ
とレベルが上がれば、の話です。
2つめの弱点は、自分の感覚が「いつか当たらなくなる」ということ
です。

自分は、年を取ります。感覚が変わります。そしてお客様も変わりま
す。

すると、「自分のニーズ」と「お客様のニーズ」がいつか乖離してい
き、当たらなくなるんです。
初級者は「自分がお客様だったとして、お客様の欲しいものを作る」
わけですが、前段の「自分がお客様だったとして」という前提の脆弱
性がここにあります。

自分のニーズ=お客様のニーズ

という前提提が成り立っているときには、打つ手が全て当たり、「神
様」のようなヒットメーカーになります。「自分のニーズ=お客様の
ニーズ」ですので、お客様のニーズが面白いように読めるからです。
しかし、「自分」あるいは「お客様」の変化によって、

自分のニーズ=お客様

という前提が成り立たなくなると、もうどうしようもありません。

打つ手が全て当たらなくなるんです。名指ししたくないのでしません
が、天才的な手腕を発揮していたカリスマのワンマン社長が会社を危
機に陥れるときは、こういうときです。

広告などのクリエーターさんなどでも結構あります。あるときまでは
出す広告が全て当たる、というときがあります。

「自分の感覚=世間の感覚」という前提が成立する瞬間があり、その
ときには、神様のように、何でも当たるんです。

しかし、自分の感覚と世間の感覚がズレてくると、もうどうしようも
なくなってしまいます。「賞味期限」が切れてしまうんですね。

それまでは

「これは売れる。なぜならオレが欲しいからだ」

で売れていたんですが、それが当たらなくなると、何に頼ってよいか
わからなくなるんです。
作詞家・作曲家、などが、ある一瞬、作る曲作る曲大ヒットして、そ
の後、どう頑張っても鳴かず飛ばず、ということもままありますが、
それもこれと同じ力学が働いています。ある一瞬は、世間が求める音
楽と自分の感性が一致するのですが、世間が求める音楽が変わった瞬
間に適応できなくなるわけです。
初級者は要は自分の感覚「だけ」でマーケティングしているわけです
から、当たらなくなると修正が効かなくなるんですね。ちなみに、自
分の感覚が不要だ、ということは全く言っていません。それ「だけ」
に頼り切るのは危険、と言っているんです。
このあたり、「当たり前じゃん」と言われるかもしれませんね。

でも、前号のロイヤルホストのように、「女性向け」メニューを男
性の感覚・味覚で作る、などという例は少なくありません。

例えば、若い女性向けメニューを開発する際に、
・「オレがおいしいと思う」

・「ターゲットである若い女性にはおいしいと思う」

は、意思決定の基準として全く違いますよね?
初級マーケターだと、「オレがおいしいと思う」ものを選ぶことにな
ります。

「自分とお客様の好みが同じ」という前提が機能する場合にはそれで
いいですが、自分とお客様の好みが違うと、これではダメですよね。

 

★初級者の「顧客セグメンテーション」

初級者の中でも、中級に近い「初級の上」くらいのレベルになってく
ると、「顧客セグメンテーション」という概念を使いこなせるように
なってきます。

お客様にも色々な方がいらっしゃるんだ、ということをアタマでは理
解します。

が、どうしても「オレがうまいものは、他の人にはうまい」という感
覚から抜けきれません。

「オレにはおいしくないけど、この顧客セグメントにはこれでいいん
 じゃないか?」

「オレにはカワイイとはとても思えないけど、このターゲットには合
 うよね」
という判断ができないんですね。

初級レベルだと、意思決定の基準が「オレ」なんですよ。

そして、このレベルの方が行う顧客セグメンテーションにおいてイメ
ージされる顧客は、

「自分のアタマの中にある幻想の顧客像」

なんですね。

「女性はこういうものだ、と「オレ」は思う」のような、やっぱり、
「オレ」の思い込みで判断してしまいます。

すると、やっぱり「売れない」ということになります。

さらに怖いのは、「オレはお客様のニーズをわかっている」という思
い込みというか過信です。

初級マーケターは、職場では、トップクラスのマーケターでしょうか
ら、それなりの自負・自信があるわけですね。すると「お客様のニー
ズがわかっている「つもり」になるわけです。

このわかっている「つもり」が怖いんです。

そして……
「お客様の立場に立って考えているのに売れない、売れない、売れな
 いんだよ!!!! 何でだよ!! お客様の立場に立って考えれば
 売れるって本にも書いてあるじゃないかよ!! 何でなんだよ!」
と苦悩の日々を過ごすことになります。
そして……悩み続け、もがき続け、どうして売れないんだ、という自
問を続け……やがて突き抜けます。

そのとき、さらに上のレベルに行く道が開けます。

「結局、自分はお客様とは違うんだ。だとして、どうするか」

と開き直れるんです。

それはどういうことかというと……

続きは次号で!!

 

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◆今日のまとめ
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★入門者と初級マーケターの違いは、「お客様視点」の有無。まずは
 お客様視点を身につけよう!

 

 

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━戦略編Vol.204 2011/07/18
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

★中級以上は、一流マーケター。中級は、「自分とお客さまは違う。
 だとしてどうする」と考えてお客さまに近づく。
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◆復習:達人マーケターへの道
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★達人マーケターへの長い道のり

独断と偏見に満ちた、マーケター成長の道のり!

前号では、「達人マーケターへの道 前編」としていましたが、思っ
ていたより長くなりそうで、かつ、結構反響もいただいたので、タイ
トルを「2」としました。意外に好評なので続けてまいります。
達人マーケターになるまでには、段階を踏みます。

この「段階」が、順序よく進むとは限りませんし、全員の方にあては
まるとも限りません。あくまでも限られた私の経験、及び他の方の観
察に基づくもので、戦略BASiCSのようによく練られた理論では
ありません。「独断と偏見」であり、異論もあるでしょう。また、自
分が「達人マーケターだ」と言うつもりもありません。
「何だ!? オレは初級者だっていうのか!?」と、お怒りになられ
ても、正直責任は持てません……

シャレのわからない方は、ここで止めて、お読みになられない方が良
いかと思います

「まあそういう見方もあるよね」と笑って受け流せる方は、ぜひお読
みいただければと思います。
それから、「私が上級者だ、達人だ」と傲慢なことを言っているわけ
ではありません。私の知る名マーケターの思考・行動を分析すると、
このような共通点がある、ということです。
あくまでも、私の個人的な感覚というか意見とご理解ください。異論
もあるでしょうし、あってよいと思います。

前回は、入門者~初級マーケターまでを見てきました。

 

★入門者:作りたい物を作り、売りたい物を売る

このレベルは「お客さま視点」という概念が抜けています。もしくは
意識はあるにしても、実践できていません。

「こんなの作ろうぜ。『オレは』売れると思うよ」という開発担当
「安くしますので、買ってください!」 という営業担当
「これ仕入れたけど、誰に売ろうか?」という仕入担当
「この広告のコピー、オレは好きだよ」というコピーライター
「この商品の性能はすごい!」という商品カタログ
「このフラッシュ、カッコイイ! 重くて見づらいけど」というHP
「我が社の沿革は……」という会社案内

というレベルです。世の中の多くの方がこのレベルにいます。

 

★初級マーケター:「自分がお客様だとして」のお客様視点

マーケターと呼べるのはここからです。

「お客さまにとってどう良いのか」という視点はあります。ですから
入門者と比べると、遥かに上です。

「初級」と言いつつも、既に数が少ないので、職場のリーダー的な存
在です。営業パーソンなんかだと、組織の中では売上上位1~2割な
どの、「成功者」の部類に入りますね。
ただ、

☆自分が欲しいモノ=お客様が欲しいモノ

という前提を無意識のうちにおいてしまい、判断基準が「オレ」であ
り、もしくは「自分のアタマの中にいる幻想の顧客像」になってしま
います。
今回は、「中級マーケター」について考えていきます!
繰り返しますが、「私が上級者だ、達人だ」と言っているわけではあ
りません。私の知る名マーケターの思考・行動を分析すると、このよ
うな共通点がある(ようだ)、ということです。
あくまでも、私の個人的な感覚というか意見とご理解ください。異論
もあるでしょうし、あってよいと思います。

 

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◆達人への道:中級以上は「一流」
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中級マーケター以上は、世間的には「一流マーケター」ですね。数と
しては少ないので、スポットが当たることはあまりありません。が、
ごく希にビジネス誌などの特集で、「中級者」や「上級者」が紹介さ
れることもあります。

 

中級以上は、「一流マーケター」の領分です。マーケターの1割にも
満たない、数%でしょうね。
中級マーケターは、言葉としては「中級」ですが、世間的には一流で
す。「スーパービジネスパーソン」の類ですね。営業パーソンなどで
すと、「会社始まって以来の伝説の営業マン」などと言われるのが、
このレベルです。

従って、現実レベルでは、目指すべきは「中級」でしょう。それ以上
は、あまり現実的ではありません。中級は十分に「スーパービジネス
パーソン」であり、職場においては尊敬される「先生」レベルです。
通常は、この時点でマーケティング経験を少なくとも十数年は積んで
いることになります。20代の中級マーケターの方は、私の知る限り
ほとんど見たことはありません。場数が足りないんです。30代でも
相当難しいでしょうね……

日本企業ですと、いわゆる「ローテーション」があり、マーケティン
グ一筋ウン十年、と言ったような経験が難しいことも、育成の難しさ
の1つの要因でしょうね。
恐らく、ですが、中級以上は日本に1万人はいないと思います。そし
て、おそらくその多くは売れたま!読者さんであろうことを、私は大
変誇らしく思います。
中級マーケターは、既に「一流」ではあるのですが、まだまだ先があ
ります。そこで満足して止まっていただきたくない、という意味も含
めて、まだ「中級」なんです。

 

★中級以上なら、本が出せる

中級マーケターとして経験を重ね、論理構成力と文章力が伴うと(こ
の条件を満たすことは非常に難しいんですが)、マーケティングの本
を出版しても、全く恥ずかしくないレベルです。
ですから、このレベル以上の方が情報発信を続けると、回りが放って
おきません。出版社さんなどからも「本を書いて下さい」という依頼
が自然と来るでしょうね。
ただ、残念ながら、本を出しているからと言って一流マーケターとは
限らない、ということも事実です。逆に言えば、本を出す、というこ
とは、自分のレベルが世間にわかってしまうわけですから、非常に
「恐い」ことなんですよね……

 

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◆中級マーケター:自分はお客様になれない、という冷徹な認識
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★中級者:自分とお客様は違うとして、お客様が欲しいものを作る

初級マーケターは、「自分が欲しいモノ=お客様が欲しいモノ」とい
う前提を置いています。そして、「自分が欲しいモノを作っても売れ
ない」という経験をして、悩むわけです。

その経験を経て、中級マーケターへと成長していきます。

したがって、中級者は、「自分のニーズ=お客様のニーズ」という前
提が成り立たない、というどうしようもないカベに直面し、悩み抜い
た経験を持っている、ということになります。
「そうか……自分は所詮お客様にはなれないんだ」
ということを身に染みて感じているんです。
そして、その「自分はお客様になれない」ということは、残念ながら
「厳然たる事実」です。「自分はお客様とは違う人間」なのです。

「お客様は自分と違う、だから、自分は絶対にお客様にはなれない」

という冷徹な事実を認識し、

「自分はお客様にはなれないとして、どうする」

と考えるんです。
では、「自分はお客様にはなれないとして、どうする」と考えられれ
ば「中級」かというと、確かにそうなのですが、初級を通り越して、
いきなり中級になれるかというと、難しいように思います。

「自分はお客様になれない」ということを「アタマ」ではなく、「カ
ラダ」で覚えている必要があると思われるからです。

 

「自分はお客様にはなれないとして、どうする」

と考えることは、「自分の感覚」を否定するわけではありません。
☆「自分の感覚」を「絶対」のものとしては捉えない
ということです。
「自分ではわからない……ではどうする……」

と悩み抜いた末に、

「お客様に聞かなきゃわからない、見なければわからない」

という結論に到達します。

この「開き直り」が、名マーケターへの道だと私は思います。

 

初級マーケターは、それなりの成功体験を持っていますから、自信・
自負もあります。だからこそ、自分の感覚・思い込みに自信をもって
しまう、といこともあるでしょう。

しかし、実際にお客様に聞いてみると、

「何だ、自分が思ってたことと全然違うじゃん」

と、打ちのめされるわけですよ。しかも何回も何回も。
そこで、自分の「過信」「全能感」みたいなものがガラガラと崩れ、
「所詮は聞かなきゃわからない」という境地に至ることが多いように
思います。
本で読んで、そういうものかと思った、というような軽い開き直りで
はありませんよ。それはまだ初級者のレベルです。
必死で必死でお客様の立場に立とうとして、立とうとして、立とうと
して、やっぱりできない……
そんな七転八倒を繰り返し、悩み抜いた末に……「わからないものは
わからない」という、心の底で感じた、カラダで染みこんだ開き直り
ですね。
この「打ちのめされるサイクル」は、1回ではなく、何回も何回も続
きます。1回でできる方もいらっしゃるかもしれませんが、それは本
当に天才か、単なる勘違いか、どちらかです。

そして打ちのめされて学び、打ちのめされて学び、という経験を経て
中級(=一流)になっていくわけです。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆中級マーケター:自分を「相対化」できる
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★自分のモノサシとお客様の感覚を合わせる

では、「自分はお客様にはなれない」という哀しくも切ない開き直り
をした中級マーケターは、マーケティングについて、どのような意思
決定・判断するのでしょうか?
中級マーケターは、「自分とお客様は違う」ということを身に染みて
わかっているので、自分の感覚を「相対的」な基準として捉えること
ができます。

この、

「自分の感覚の相対化」

が、一流マーケターに共通する特徴だと、私は思います。
「自分の感覚の相対化」がどういうことかと言うと……

仮にレストランのシェフだったとして、
初級マーケターは、

「この料理は酸味が強い。オレは酸味キライだからダメ」

と判断します。

 

中級マーケターは、そうではなく、

「この料理の酸味の強さは5段階評価で言うと、3の強さだ。オレの
 好みは2くらいの強さだが、そんなことはどうでもいい。今回のタ
 ーゲット顧客なら、むしろ4くらいの酸味を好むはずだ。だから、
 酸味をもっと強くしろ。オレはそんなのキライだけどね」

というような判断をするわけです。

自分の感覚は、あくまで「モノサシ」なんですよね。この「酸味」は
あくまで喩え話ではありますが、わかりやすい喩えだと思います。
ただ、中級レベルだと、このあたりの感覚が、まだ直感的だったりし
ます。判断はできるのですが、明確に言語化できなかったりします。

「このお客様ならこれくらいの酸味で良いかなあ」
「最近酸味が好まれなくなってきたなあ」

ということは、わかっていますが、先ほどのように、単位を作った上
で明確化・言語化することは、中級者には難しいかと思います。

中級と上級の差は、このあたりの「言語化」の差にあるように思いま
す。

 入門:「わからない」あるいは「わかっている」が「できない」
 初級:「わかる」し、自分基準*なら「できる」
 中級:「わかる」し、相対基準*でも「できる」が言語化できない

上級は、当然この上になってきます。

*自分基準=自分の欲しいものは、みんなが欲しい、という前提
*相対基準=自分をモノサシ化して、お客様の好みを相対化できる

 

★「相対的」な判断をするための2つの条件

このような「相対的な」判断、つまりは「自分をモノサシ化」した判
断をするためには、2つの条件が必要です。
1)モノサシの精度が高い

まずは、モノサシの精度を上げる必要があります。モノサシが間違っ
ているとお話になりません。上の例の場合だと、酸味を計測する機関
である「舌」の精度が良くなければ、そもそも計測できません。

ただ、別に自分の舌を使わなくても構いません。そういう舌を持って
いる人を使えばいい話です。中級マーケターは、「自分の感覚に対し
ての健全な疑い」のようなものを備えているんです。自分の舌ですら
絶対の基準としては信用せず、「自分にはわからないことがある」と
いう「謙虚さ」を持ち合わせています。
2)どんなお客様がどんな判断をするか、という精度を上げる

そして、どんなお客様は、どんな「酸味」を好むのか、という判断の
精度を上げる必要があります。

こんな人は、酸味が3
あんな人は、酸味が4

という、経験を蓄積していくわけです。

 

で、わからなかったらどうすればいいかというと……

「お客様に確認する」

ということになります。

試食会などを開いてお客様に確認し、「酸味はどうですか?」と確認
します。

中級マーケターは、「自分と顧客は違う」と言うことをカラダで理解
しているので、お客様に確認する手間を厭いません。

この、

☆「お客様に確認する手間を厭うかどうか」

というのは、初級と中級の大きな大きな分水嶺であり、一流マーケタ
ーの条件だと思います。そこに時間・手間・お金をかける意味をよく
わかっているわけです。
商品開発などですと、数千万円の投資になったりします。そのために
なぜ数百万円の調査費をケチるのか、という合理性を備えているわけ
ですね。逆に、「初級マーケター」は、自分に自信を持っているため
このような投資は不要だと考えていることが多いように思います。

 

すると……自分の感覚を相対化することにより、自分の感覚とお客様
の感覚を合わせていく、というPDSサイクルが回せるようになりま
す。「自分のモノサシ上の位置」と「お客様の好み」が徐々に合って
きます。
すると、「経験」というものが体系化されてきます。これができるか
らこそ、お客様が変わったとしても、時代が変わっても、対応出来る
んですよ。

先ほどの酸味の例で考えて見ましょう。

初級者の場合は、

「オレの酸味の好みはこれだ。だからこれに合わせろ」

というものです。これだと、お客様の酸味の好みと自分の酸味の好み
がズレると、上にズレても下にズレても、調整できません。根拠が
「自分が好きと思うモノが正しい」だからです。

「オレの酸味の好み」が、2なのか3なのか、という「相対化」がで
きていないんです。

中級者の場合は、自分の感覚を磨いた上で、相対化します。

「ちょっと若い女性の酸味の好みが変わって来た。昔は、オレの感覚
 の4が好まれたが、今は3.5くらいになってきた。だから、酸味
 を少し弱めた方がいいな」

という調整ができるんです。

その上で、「ちなみに、どうでもいいけど、オレの好みは2ね。お客
様には関係ないけど、オレに出すときは2で出してね」と、自分とお
客様の好みが違うことを明確に認識しています。
「初級マーケター」は、「自分の感覚」と「世間の感覚」が一致した
ときにのみ成功します。

世間の感覚が変わると、初級マーケターは対応できません。

しかし、「中級マーケター」は、モノサシを持っていますので、対応
できるんですよね。

「売れなくなったのは、世間の酸味の好みが変わった。どっちに変わ
 ったんだろう?」

という、仮説検証を回す、という「打ち手」があるんですよ。

 

★何を誰に聞けばいいのかわかる

このような「モノサシ」ができてくると、どのお客様になにを聞けば
いいのかわかるようになってきます。

またレストランの場合だったとして、例えば、異様にコーヒーにはこ
だわりがあるお客様がいらしたとします。

コーヒーの味を変える、という場合、その人を満足させることはでき
なかったとしても、「許容範囲だ」とおっしゃっていただければ、他
の方については、気づかない、あるいはご満足いただける、というこ
とになりますよね。

社内の意見調整でも、「コンプライアンスについては、Cさんが一番
厳しいことを言うから、Cさんのアドバイスをもらっておけば、他の
人は大丈夫だよね」と言うようなことがありますよね?

お客様に対しても、それと同様なことを行うわけです。

「このような人だから、このようなことを聞いてみよう。このような
答えが返ってくれば大丈夫だ。そうでなかったら相当まずい」という
ような判断ができます。

そしてそれは「相対化」ができているから可能になります。

さらに言うと、それはまさに「顧客セグメンテーション」ができる、
ということでもあります。

セグメンテーションは、おそらくマーケティングでも一番難しい技術
というか手法です。「そんなのカンタンだよ」という方は、天才か、
または、初級以下の方ですね。本を読んでわかった「つもり」になっ
ているという、一番恐い状態である可能性もあります。
中級になってくると、自分をモノサシ化した上で、そのモノサシの上
に、お客様ごとのニーズの違いをプロットできます(この際に、モノ
サシが1つとは限りません)。顧客ごとの「ニーズの違い」がある程
度は見分けられるようになっているからです。

 

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◆一流への道の「訓練方法」:お客様の感覚を追体験してみる
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★強制的に、お客さまの感覚を追体験する

こう書いてくると……

「じゃあどうすれば中級(一流)になれるんだ」
「そのモノサシを身につけるのはどうすればいいのか」

という疑問が出てくるかもしれませんね。

ここで、「訓練方法」をご紹介します。
中級(=一流)への道は大変です。それは、「自分とは違う人」につ
いての「感覚」を「感じる」ことだからです。
が、それを組織として全従業員に「体感」させる仕組みを作った例も
あります。

食品スーパーのマルエツが、従業員に「高齢者の感覚」を体感させる
研修を始めました。
-----------< 記事要約 >------------

☆65歳以上人口は増え続け、ほぼ4人に1人の割合になっている。
 それを受け、食品スーパー各社が、高齢者に配慮した店作りに力を
 入れ始めた。
☆マルエツは全従業員を対象に、高齢者の感覚を疑似体験できる研修
 を導入。専用のゴーグルや手袋を装着、実際に店内で商品を買い回
 らせたりして、視覚や触覚の低下などを疑似体験する。
☆高齢者の視点で気づいた店舗の問題点について報告書を提出、店作
 りに活用。「高齢者の感覚を従業員全員が体験することで意識が高
 まり、より利用しやすい店作りにつながる」(同社)という。
2011/07/10, 日経MJ(流通新聞), 8ページ

-----------< 記事要約 >------------
これは面白いな、と思いました。

「強制的」に、高齢者の立場に立ってみるわけですね。例えば、ゴー
グルをつけると、「強制的」に視界が狭くなるので、横から人が出て
来たり、視界に入らないところにモノが置いてあったりすると、危な
い、という、「感覚を体験・共有」できるわけですよね。

これは、ある特定のお客様についての理解を深める、という意味では
非常に有益な方法です。

妊婦さんのご主人にも、お腹に重しをつけて、妊婦さんの大変さ・動
きづらさ・疲れなどを理解してもらったりするそうですが、同じロジ
ックですね。
このような体験を通じて、自分の経験というか感覚を「相対化」させ
ていき、自分の感覚が唯一絶対のものではない、ということをカラダ
に染みこませていくわけです。そして、そのような「体験の幅」が、
「モノサシの目盛り」になっていくわけですね。
全社員に体感させるためには、このような「強制的」な手法が有効で
すが、中級マーケターともなると、こういうことを自分でもやってみ
たりします。

例えば、床に座り込んでみると、「子供の視点」が体感できます。大
人の視点では大したことのないテーブルが、非常に高いカベのような
ものに見えたりするんですよ。

ちなみにスキーしているときにしゃがみこむと、雪と目線が近くなる
ために、体感速度が一気に上がり、恐いです。子供にとっては、もの
すごく早く感じるでしょうね。というか、私も子供だったときは、こ
の感覚だったわけですよね……
こういう「視点移動」ができるようになることが、一流マーケターの
条件の1つです。

お客さまの視点を「追体験」する訓練を自らするわけです。
・百聞は一見にしかず
・百見は一体験にしかず

ですね。

 

★お客様の視点を追体験するマインドフロー

お客様の視点を追体験する、という意味では、「マインドフロー」*
も有効なツールの1つです。

*マインドフロー

 認知
 興味
 行動
 比較
 購買
 利用
 愛情

お客さまは、この7つの「ココロの関門」を超えていって「ファン」
になるわけです。
初級マーケターだと、「どうすれば売れるか」という、「オレ」から
考えが始まります。マインドフローにおいては、「比較」「購買」関
門あたりから発想がスタートします。どうしても「売る」ことから離
れられないんです。
中級マーケターだと、「お客さまはどのように感じて、考えていくの
か」と、「お客様」から考えが始まります。

つまり、中級者は、マインドフローにおいては、一番上の「認知」関
門から発想します。それは、お客様にとっては、それが自然だ、とい
うことがわかっているからです。
これは、些細な差のように見えて、非常に大きな差です。
中級マーケターだと、

☆「あのさあ、性能がいい性能がいい、っていうけどさ、それ以前の
 問題として、お客様は製品自体に興味持ってないよね?」

というような発言が自然に出てきます。お客様が考える順番をわかっ
ているからですね。
マインドフローは、「強制的」に、「認知」「興味」関門、という、
上から、すなわちお客様と同じ順番で発想することになります。

マインドフローで、上の認知関門から考える、ということは、お客様
の視点を強制的に追体験「させられる」わけです。このトレーニング
は一流への道を進む上で非常に有効です。

戦略BASiCSは戦略のトレーニングに、マインドフローは、顧客
視点のトレーニングに、極めて有効なんですね。

 

中級マーケターの「条件」は、まだあります。次号に続きます! お
楽しみに!

ご意見・ご感想もお待ちしています!

 

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◆今日のまとめ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★中級マーケター以上は「一流」。中級マーケターは、自分を相対化
 できるようになる。自分を「モノサシ化」しよう!

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━戦略編Vol.205 2011/07/21
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

★中級以上は、一流マーケター。お客様に「丸投げ」するのではなく
 「確認する」という態度で、仮説検証を行ってお客様に近づく。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆復習:達人マーケターへの道
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★達人マーケターへの長い道のり

独断と偏見に満ちた、マーケター成長の道のり!

やけに好評なので(感動しました、というようなメールまでいただき
まして、ありがとうございます)、調子に乗って続けさせていただき
ます。

達人マーケターになるまでには、段階を踏みます。この「段階」が、
順序よく進むとは限りませんし、全員の方にあてはまるとも限りませ
ん。あくまでも限られた私の経験と察に基づく「独断と偏見」で、異
論もあるでしょう。また、自分が「達人マーケターだ」と言うつもり
もありません。
「何だ!? オレは初級者だっていうのか!?」と、お怒りになられ
ても、正直責任は持てません……(初級者は、世間的には相当有能な
レベルです)。

「まあそういう見方もあるよね」と笑って受け流せる方は、ぜひお読
みいただければと思います。

 

前回は、中級マーケター その1 でした。
★入門者:作りたい物を作り、売りたい物を売る

このレベルは「お客さま視点」という概念が抜けています。もしくは
意識はあるにしても、あまり実践できていません。

「こんなの作ろうぜ。『オレは』売れると思うよ」という開発担当
「安くしますので、買ってください!」 という営業担当
「これ仕入れたけど、誰に売ろうか?」という仕入担当
「この広告のコピー、オレは好きだよ」というコピーライター
「この商品の性能はすごい!」という商品カタログ
「このフラッシュ、カッコイイ! 重くて見づらいけど」というHP
「我が社の沿革は……」という会社案内

というレベルです。

全体の6~7割の方はこのレベルです。
★初級マーケター:「自分がお客様だとして」のお客様視点

マーケターと呼べるのはここからです。お客様視点があり、入門者と
比べると、遥かに上です。

営業でもマーケティングでも開発でも「成功者」の部類に入り、職場
でも、指導者・リーダー的な存在です。

ただ、

☆自分が欲しいモノ=お客様が欲しいモノ

という前提を無意識のうちにおいてしまい、判断基準が「オレ」であ
り、もしくは「自分のアタマの中にいる幻想の顧客像」になってしま
います。

全体の2~3割程度の方がこのレベルです。

 

★中級マーケター

ここからは「一流マーケター」です。伝説のヒットメーカー、伝説の
営業マン、と呼ばれるような方々です。

☆お客様視点で考えたい。でも、どんなに頑張ってもしょせん自分は
 お客様にはなれない

と悩み抜き、

☆お客様に聞かないと、お客様を見ないとわからない

という「開き直りの境地」にたどり着きます。

そこで、仮説を立て、お客様に確認し、仮説を修正し……というサイ
クルを数千回、数万回と繰り返して、「一流」になっていくわけです
ね。

全体の数%(あるいはそれ以下)の方がこのレベルです。
今回は、「中級マーケター」 その2です。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆お客さまに委ねるのではなく、「確認する
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★お客様に全てを委ねるわけではない

前号で、中級マーケターは
☆お客様視点で考えたい。でも、どんなに頑張ってもしょせん自分は
 お客様にはなれない

と悩み抜き、

☆お客様に聞かないと、お客様を見ないとわからない

と「開き直る」と説明してきました。
こういうと、「じゃあ何でもお客様に聞けばいいんだ」という誤解を
招きますが、「お客様に全てを委ねる」というわけではありません。

商品開発のときに、お客様に「どんなゲーム機が欲しいですか?」と
聞いても、

「画面が2つあって、片方はタッチスクリーンで、マイク入力があっ
 て、パタンと閉じるとスイッチが切れる携帯用マシンが欲しい」

と教えてくれるはずはありません。もちろんこれは、大ヒットした、
「NintendoDS」です。
寿司店を開くときに、お客様に「どんなお店に行きたいですか?」と
聞いても、

「お寿司がベルトコンベアの上を回って、自分で皿を取って、後で皿
 数で価格計算する明朗価格の店に行きたい」

と自ら考えて教えてくれるはずはありません。これはもちろん回転寿
司のことですね。
戦略フレームワークを作るときも、お客様が

「全ての戦略理論が5つの要素にまとめられて、要素間の一貫性を考
 えることで誰でも戦略が作れる考え方を作ってくれ」

と教えてくれるはずはありません。もちろんこれは、売れたま!の誇
る「戦略BASiCS」です。
と言いつつも、中級マーケターは、そこに至るまでに、このような失
敗を繰り返しているわけですね。

で、「ニーズを教えてください」と聞いても教えてくれない、という
ことを(例によって)身体で理解していくわけです。

 

★お客様に「丸投げ」ではなく、自分の仮説を検証する、という態度

中級マーケターに、「お客様にニーズを聞けばわかるんですか?」と
いうような質問を投げると、おそらくは
「やり方によってはね」
「わかるって言えばわかるし、わからないって言えばわからないね」
などと、持って回った言い方をすることが多いと思います。それは、
「きちんとやればわかる。でも、全部をお客様が教えてくれるわけで
はない」ということを、(痛い目に遭った経験も含めて)自分の経験
からわかっているからです。

そして……お客さまに全てを委ねるのではなく、「確認」する、もの
だ、と考えるからです。
「お客様はこのように思うのではないか、と自分は思う。でも、それ
 が合っているかどうかは、お客様に確認しなければわからない」

という態度ですね。

そして、この

「お客様はこのように思うのではないか、と自分は思う。では、それ
 が合っているかどうかを、お客様に確認しよう」

というサイクルをえんえんと繰り返すわけです。

その際に、意見をお客様に直接聞くか、それとも、自分が知っている
お客様像とアタマの中で会話し、その会話の結果、考えついたコンセ
プトや試作機を聞くか、などの「手法」「プロセス」の違いはありま
すが、基本的には同じです。
なかなかこのあたりの感覚や体験は表に出てきません。それは、この
ような感覚・体験の「言語化」「体系化」が極めて難しいからです。

私が「達人」かどうかはおいておいて、戦略BASiCSについてこ
の辺の思考プロセスについて考えてみましょう。
☆観察に基づく仮説

戦略ツールは、すごく多くありますし、数々のフレームワーク本で紹
介されています。しかし、私を含めて、ですが、MBAを持っていて
すら実戦で使いこなせている人があまりいないという現実に直面しま
した。そして、MBAを雇用できるような企業は限られているわけで
そのような場合には、経営者自らが戦略を立てる必要に迫られます。
しかし、忙しい経営者には、時間が無いんですよね……

 

☆仮説に基づく提案

そんな「観察」に基づいて、「だったら、これ「だけ」で戦略が考え
られるツール」として、自分が使っている戦略BASiCSを紹介す
れば、忙しい経営者さんに受け入れられるのではないか…

という仮説を立て、売れたま!でご紹介することも含めて検証を重ね
て来た、ということですね。
「経営者さん、どんなニーズがありますか?」

と丸投げするのではなく、お客様を「観察」した上で、

「経営者さん、たった5つの要素を考えれば差別化戦略ができるツー
 ルにニーズはあると私は考えたのですが、ニーズはありますか?」

という「確認」をする、という姿勢です。
このあたりに「リサーチ」に対する誤解があるように思います。

よく「マーケティングリサーチは当たらない」というようなことが言
われます。

確かに、売上予測調査などのそもそも「当てる」こと自体が難しいリ
サーチもありますが、多くの場合は「やり方」の問題のように思いま
す。

中級マーケターともなると、このあたりのことをきちんと理解してい
ますね。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆中級マーケター:リサーチを使いこなせる
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★なぜリサーチがうまくいかないのか?

初級レベルのマーケターだと、リサーチのスキルなり、手法なりがま
だ不十分です。

ですから、「いくらアンケートしてもわからないものはわからない」
と言った類の「暴言」を言ったりします(一面の真理ではあります
が、「一面」でしかありません)。
「お客様に聞いてもわからない」という言葉は、初級マーケターの言
葉です。それは、リサーチやアンケートの手法を体得していないか、
お客様に聞くべきでないことを聞いているからです。
リサーチやアンケートがうまく行かない、という場合、どこかに問題
があります。
1)誰に聞くか

2)どのように聞くか
で間違えていると、期待した「答え」は得られません。

ですから「「いくらアンケートしてもわからないものはわからない」
といったようなことを言うんですね。

 

1)誰に聞くか

量的調査を行う場合は、回答者のサンプリングなどをきちんと行いま
すが、質的調査を行うときは、そもそも量的正確性を期待しているわ
けではありませんから「どんな人に聞くか」が非常に重要ですよね。

ポイントはいくつかあります。

例えば、前号の「モノサシ」(自分の相対化)のところで考えてきた
ように、

「この人は、あのような基準でモノを言うから、そういう人に聞いて
みよう」

と考えても良いです。
また、普通の人は、自分のニーズを言語化できません。

が、ごく希に、自分のニーズを明確に「言語化」できる方がいます。

そのような方に聞けば、すさまじく有益な答えを返していただけるん
です。そういうお客様は、大切にしましょう。

「自分のニーズを明確に言語化」とはどういうことでしょうか? で
はここで、自分が最近買った「ペットボトルの飲み物」について考え
てみていただけませんか?
普通の方に、「なぜその飲み物(水でもお茶でもコーラでも)を買っ
たんですか?」と尋ねると

・何となく
・甘い物がほしかったから
・炭酸が飲みたかった

くらいの答えしか得られません。

しかし……
「実は、買うつもりはなかったんですが、自動販売機の前を通ったと
きに、「そういえばこれから会議だった。会議中の飲み物を買おう」
と思ったんですよ。炭酸が好きなんですが、会議中にげっぷが出ると
まずいので、炭酸は選択肢から外れます。すると水かお茶になるんで
すが、カフェインは利尿作用があるので、やっぱり会議中にはまずい
と思って、ノンカフェインの選択肢の中から……」
というところまで、ペットボトルジュースの購買意思決定を行う1秒
間にアタマに浮かぶ全てのことを明確に言語化できる方が、ごく希に
いらっしゃいます。
中級マーケターともなると、「誰がニーズを言語化できるか」などを
知っているので、「誰に聞けば必要な答えが得られるか」というのを
わかっているんですよ。

ちなみに、この「ニーズの言語化能力」は非常に重要なスキルです。
このスキルは、一流であるところの中級レベルでも結構難しいように
思います。できるのは、本当に一握りの「上級マーケター」のように
思います。これについては、「上級者」のところで考えていきます。
あ、ちなみに、上級・中級を問わず、このような「スキル」は全て、
「磨ける」スキルですよ。

「ニーズの言語化能力」も磨けるはずです。私は、昔はこんなことは
できませんでしたが、今はできますから。

 

2)どのように聞くか

中級マーケターは、相手の視点に立つことができます。ですから、ア
ンケートするときにも

「この聞き方じゃ、回答者は答えられないよなあ」

という考え方ができるんです。
そして、「聞くべき質問」と「聞いても答えが出てこない質問」の分
別ができます。
先ほども見てきたように、

「あなたのニーズは何ですか?」

と聞かれても、回答者は答えられません。

せいぜい「ラクして幸せになりたい」みたいな答えが返って来るので
はないでしょうか?
「うちの商品を買った理由を教えてください」

も答えづらいですね。「たまたまです」「前に買ったけど良かったか
ら」などの、回答になっていない回答が多く返って来ます。

これらは、「そう聞いたら、そういう答えが返ってくるよなあ……」
と推測できる質問なんですよね……中級マーケターは、こういう質問
の仕方を避けます。回答者は、もっと具体的に聞かれないと回答でき
ない、そういう場合には「適当に答える」ということもわかっている
わけですね。
中級者は、「お客様の立場に立つ」ことができます。それと、「アン
ケートの回答者の立場に立つ」ことは、近いことなんです。
きちんとしたリサーチスキルは、意外に身につけられていないものな
んですよね……。私の中での優先順位が今のところそれほど高くない
のでやっていませんが、リサーチの本なり、セミナーなりは、数年ス
パンの話ではありますが、体系化しておいた方が良いのかな、とは思
っています。
中級マーケターの考え方は、次号に続きます。お楽しみに!

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆今日のまとめ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★中級マーケターは、仮説検証がうまい。リサーチスキルを持ち、仮
 説検証サイクルを回して真のお客様ニーズに近づいていこう!

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━戦略編Vol.206 2011/07/25
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

★中級マーケターは、自ら学び、自らの成長を加速させる。回りにあ
 る「ネタ」を自らの「師」としよう!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆復習:達人マーケターへの道
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★達人マーケターへの長い道のり

独断と偏見に満ちた、マーケター成長の道のり!

やけに好評なので(感動しました、というようなメールまでいただき
まして、ありがとうございます)、調子に乗って続けさせていただき
ます。

達人マーケターになるまでには、段階を踏みます。この「段階」が、
順序よく進むとは限りませんし、全員の方にあてはまるとも限りませ
ん。あくまでも限られた私の経験と察に基づく「独断と偏見」で、異
論もあるでしょう。また、自分が「達人マーケターだ」と言うつもり
もありません。
「何だ!? オレは初級者だっていうのか!?」と、お怒りになられ
ても、正直責任は持てません……(初級者は、世間的には相当有能な
レベルです)。

「まあそういう見方もあるよね」と笑って受け流せる方は、ぜひお読
みいただければと思います。

 

★入門者:作りたい物を作り、売りたい物を売る

このレベルは「お客さま視点」という概念が抜けています。もしくは
意識はあるにしても、あまり実践できていません。

「こんなの作ろうぜ。『オレは』売れると思うよ」という開発担当
「安くしますので、買ってください!」 という営業担当
「これ仕入れたけど、誰に売ろうか?」という仕入担当
「この広告のコピー、オレは好きだよ」というコピーライター
「この商品の性能はすごい!」という商品カタログ
「このフラッシュ、カッコイイ! 重くて見づらいけど」というHP
「我が社の沿革は……」という会社案内

というレベルです。

全体の6~7割の方はこのレベルです。
★初級マーケター:「自分がお客様だとして」のお客様視点

マーケターと呼べるのはここからです。お客様視点があり、入門者と
比べると、遥かに上です。

営業でもマーケティングでも開発でも「成功者」の部類に入り、職場
でも、指導者・リーダー的な存在です。

ただ、

☆自分が欲しいモノ=お客様が欲しいモノ

という前提を無意識のうちにおいてしまい、判断基準が「オレ」であ
り、もしくは「自分のアタマの中にいる幻想の顧客像」になってしま
います。

全体の2~3割程度の方がこのレベルです。

 

★中級マーケター

ここからは「一流マーケター」です。伝説のヒットメーカー、伝説の
営業マン、と呼ばれるような方々です。

☆お客様視点で考えたい。でも、どんなに頑張ってもしょせん自分は
 お客様にはなれない

と悩み抜き、

☆お客様に聞かないと、お客様を見ないとわからない

という「開き直りの境地」にたどり着きます。

そこで、仮説を立て、お客様に確認し、仮説を修正し……というサイ
クルを数千回、数万回と繰り返して、「一流」になっていくわけです
ね。

全体の数%(あるいはそれ以下)の方がこのレベルです。
今回は、「中級マーケター」 その3です。中級マーケターについて
は、今日で終了です。

 

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◆中級マーケター:みんなに売ろうとしても売れないことを理解
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★万人に売ろうとすると万人に売れないことを理解している

初級マーケターから中級に上っていくときのカベの1つが

☆顧客像の具体化

です。

初級マーケターは、「オレのニーズは世間のニーズだ」と思っている
節があります。意識的かどうかはともかく、無意識にそう思っている
ことが多いです。

「オレがおいしいと思えば、みんなそう思う」

という前提をおいています。
中級マーケターは、

☆自分はお客様になれない

ということをカラダで理解しています。

これはどういうことかというと、

・自分とお客様は違う
・人によって求めるものが違う

ということをカラダで理解している、ということです。

ここで、

・お客様は、(他人ではなく)「自分自身が」欲しいモノを買う
・人によってニーズが違う

という前提をここで置くとすると、

万人に売ろうとすると、かえって万人に売れなくなります。

なぜかというと「競合」がいるからですね。自分が顧客を絞らなけれ
ば、競合が絞ってきて、その競合にお客様を取られてしまうからです
ね。

逆に、顧客像を具体化し、ニーズを具体化していくほど、「刺さる」
商品、「刺さる」メッセージになるわけです。
つまり、「みんな」ではなく、「特定のアナタ」のために作る・売る
という感覚を持っているわけです。
初級レベルだと、どうしても「絞る」のが恐いんですよね。売上が減
るのではないかと。

中級レベルだと、「絞る」ことによって返って売上が上がることを知
っています。競合から取ってこれるからですね。むしろ、中級マーケ
ターは「広げる」ことによる「中途半端」を恐れます。
商品開発にしても、広告にしても、稟議・決裁を組織の上層部に回し
て、上の方に行けば行くほど、「角が取れて丸くなる」、すなわち特
徴が無いものになっていくわけです。

例えば、

「30代に絞ると、40代が逃げるのではないか? だから40代向
けの機能も加えよう」

みたいな発言を、会社の上層部の方は平気でおっしゃいます。

それはある意味やむを得ません。マーケティングの経験がない役員な
んかは、ここでいう「入門」レベルだからですね。
ちなみに、この発言は、多くの場合誤りです。もし、全員に売れる雑
誌というものがあるのであれば、この世の中に、「万能な万人向け」
の雑誌が1種類あればすむはずだからです。
中級マーケターが一番恐れるのは、その「角が取れること」です。組
織に属している場合には、色々な手段で、「角が取れる」ことを防い
でいくわけです。
「顧客を絞ると売上が減るのでは?」

という質問に対する回答は各所でしていますので、ここでは詳細は避
けますが、そういう場合は、

1)絞り方に問題がある:正確には、「絞る」というよりは、ニーズ
  で「括る」。それができれば、むしろ顧客は広げられる

2)絞らないとどうせ売れないから、どっちにしても売れない。だっ
  たら絞った方がいいのでは?

とお答えしています。

 

★大人気の駅弁販売員 三浦由紀江氏

先日、たまたまTVをつけていたら、JR大宮駅の「カリスマ」弁当
販売員と言われる三浦由紀江氏が紹介されていました。

2011年7月18日 TV東京系「月曜プレミア!」20時~

JR大宮駅の売上トップ10弁当のうち、7つまでは三浦氏が開発に
関わった商品だそうです。

この方は、中級、あるいはそれに準ずるレベルの方だと思います。

発言をTVで覚えている限りピックアップしてみます。録画し損ねた
ので正確ではないかもしれませんが、趣旨は大体合っていると思いま
す。
「幕の内弁当みたいな特徴の無いのは好きじゃない。(1つのお弁当
 で)多くのお客様を満足させることはなかなかできない。なら、肉
 だけ、魚だけ、ウニだけ、みたい(特徴のある弁当)にして、そ
 の品揃えの多さで満足してもらう方がいい」
これは、まさに「お客様のニーズは人によって違う。だから、それを
具体化し、そのお客様ごとにあった弁当を作るしかない」という、上
記の意味ですね。

 

「お勧めはこれ!って言えないとダメ。前に、お勧めはどれですか?
 って言われて「全部」ってお答えしたスタッフがいたけど、それは
 違うと思って」
これ、「ドリルを売るには穴を売れ」で売多勝が言ったことと、非常
に似ています。

その部分を抜き出してみましょう。
勝 :この店のオススメの料理ってなに?
望 :えっと……、何でもおいしいですけど……
勝 :これ、っていうのはないの?
望 :ええ、特に……。

それを聞いた勝の眉がピクッと動いた。

(ドリルを売るには穴を売れ P.124)

ちなみにこの下りは、「新人OL~」では泣く泣くカットしてます。
上原望の答えが、これではダメなんですよね。入門者や初級者だと、
このように「全部オススメです」と答えます。

売多勝は、当然中級のレベルは遥かに超えているわけで、彼の一言一
句はこのような「重み」を持っているんですね。
中級以上の接客担当者なら、

「えっと……お腹減ってます?」

などの、質問で探りを入れ、お客様のニーズを引き出してから、「で
は、これがオススメです」と自信を持って勧めます。

そして、まさにそれを「仕組み」にして、誰でもできるようにしたの
が、「売れる会社のすごい仕組み」でやった、あの「仕掛け」なんで
すね。

 

ちなみに、三浦氏を紹介していた番組では、そのときに「せんべい汁
弁当」の開発プロセスを紹介していたんですが、「私だったらこう言
うだろうな」という考えと、三浦氏の考えは非常に似ていたんですよ
ね。
「冷めてもおいしいせんべい汁。暑い東京にはいい」

とおっしゃっていましたが、こういう、お客様の言葉がスッと出てく
るのが中級マーケターですね。
三浦氏は、本を出していらっしゃるようです。

「1年で駅弁売上を5000万アップさせたパート主婦が明かす奇跡のサ
 ービス」 三浦由紀江 (著)

中級以上になってくると、このように「カリスマ☆☆☆」とか、「社
長表彰を受けた伝説の開発者」など、回りが放っておかないものなん
です。

メディアで取り上げられる方が必ずしも中級マーケター以上とは限ら
ないのですが、この方はハイレベルな方だと思います。

この方、ビジネス経験がなく、主婦からいきなり就職して成功された
ようです。それなのにこのレベルに来るのは、相当すごいことです。

恐らくは、弁当売り場に立って、お客様と話して場数を踏むことによ
って、

「どうも幕の内弁当は特徴が無くて売りにくい」

というようなことを経験で学んだんでしょうね。

ビジネス経験豊富なはずの大企業の役員が、「何でもかんでも機能を
つけて「幕の内弁当」にしろ」というのは皮肉なことです。

 

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◆中級マーケター:お客様は、一人一人の存在であることの理解
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★お客様は、一人一人の存在であることをわかっている

「売り手」から見ると、「買い手」はたくさんいる「大勢」のように
見えてしまうかもしれません。

多くのビジネスにおいて、買い手の数は、売り手の数より多いからで
す。

しかし、「お客様から見れば」、自分は一人しかいないわけです。当
然ですね。

お客様は、あくまで一人一人ですよね。お客様にとっては、「自分が
一番大切な存在」であり、「自分一人」のために、何かを買うわけで
す。
当たり前のことです。

しかし……当たり前ではありません。

 

★「中級」は、「皆さん」というような表現を使わない

TV通販でも、DMでも、メルマガにしても、

「皆さん」

というような呼びかけをするのは、初級以下です。

皆さん、というのは「二人称複数」の呼びかけです。

これは、「お客様を十把一絡げ」にしている呼び方です。人によって
ニーズが違う、お客様は一人一人別々の存在だ、ということを認識し
ていないから、「皆さん」と呼びかけてしまうわけです。

お客様を「一人一人の存在」として見ていないわけです。

でも、「皆様におかれましては」というような呼びかけをする、DM
やHP、TVショッピングなどは非常に多いのではないでしょうか?

お客様を一人一人の存在と見ていたら、「皆さん」という十把一絡げ
の呼びかけはしないはずです。
売れたま!をお読みのそう、そこのアナタ、「皆さん」と呼びかけら
れると、「その他大勢」として一緒くたにされてしまうイヤな感じを
受けませんか?
「皆さん」
と呼びかけてしまうのは、それは「お客様一人一人」という感覚が持
てていないからです(ひょっとして私もやってしまっているかもしれ
ませんが……。研修などでは、「お一人お一人が」というような言い
方をするように心がけてはいますが……表現の仕方の難しさもあり、
つい「皆さん」と言ってしまうこともありますね……難しいもので
す)。

 

TV通販でも、中級以上の売れる方は、「皆さん」という二人称複数
ではなく、「TVをご覧のアナタ」というように、

「自分1人」(二人称単数)

に対して、話しかけてくれます。

DMでも、「皆様におかれましては」と書かれると、敏感な方は違和
感を覚えます。

「いや、皆様じゃなくてさ、読んでるのはオレ一人なんだけど? こ
 の部屋にはオレしかいないぞ?」

という感覚を持ちます。ちなみに、このような「感受性の鋭敏さ」も
中級以上になってくると必要ですね
このような、お客様への呼びかける言葉などの「ちょっとしたとこ
ろ」にレベルの差が「はっきりと」現れるわけです。「一事が万事」
なんですよね。
ですからDMなんかを見ると、その人のレベルは如実にわかります。

 

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◆中級マーケター:サイクルを自ら回し、自ら成長する
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★「サイクルを自ら回せる」中級マーケター

前号の「リサーチ」のところでも見てきましたが、中級マーケターと
もなってくると、
☆自分はお客様にはなれない。だからお客様に聞こう

☆お客様に求めるのは「答え」ではなく、「自分のお客さまに対する
 認識があっているかどうか」の「確認」だ
ということがわかっています。ですから、「お客さん、お客さん、私
に答えを教えてください」と言った類の無茶な質問はそもそもしませ
ん。それは初級レベルです。
☆「こういうのは欲しいですか?」という「こういうの」を考えるの
 がマーケターの役割

☆お客さまに聞くのは、それに対しての「はい・いいえ」(5段階で
 もいいですけど)でしかない
という役割分担を心得ているんですね。
ですから、中級マーケターは「テストマーケティング」の重要性を理
解しています。エリア限定などで実際に売ってみたり、広告を流して
みたりして、お客様の反応を見るわけです。
「そもそも、自分は顧客にはなれない。だから、実際に売ってみない
とわからないことがある」
と考えるわけです。

だから、「考えながら売り、売りながら考える」というサイクルをガ
シガシと回していくわけですね。

そして、それを通じて、自らを成長させていくわけです。

「経験豊富なマーケター」と言った場合の「経験豊富」というのが意
味がある場合は、単なる「業界の年数」「知識の量」などではなく、
この「サイクルを回した量」なんですよね。

業界経験が長い=経験豊富、

とはなりません。「業界の常識、お客様の非常識」に染まってしまう
場合すらあります。
そうではなく、「考えながら売り、売りながら考える」というサイク
ルをガシガシと回していくわけです。
この「サイクルを回した量」が増えてくると、

「あー、そうそう、これ、あの例の売れないパターンだよ」

というのが見えるようになってきます。

「これだといけそう」「これはまずい」というような判断の源となる
「パターン認識」みたいなものができるようになってくるんです。

ですから、中級マーケター以上になると、売れそうか、売れそうにな
いか、というようなある程度の判断ができるようになります。

 

★自ら成長する「中級マーケター」:賢者は他人の経験に学ぶ

初級マーケターで熟練を積むと、「他人の経験で自らを成長させる」
ことができるようになります。

初級マーケターは「初級」とは言え、世間的にはレベルが結構高い位
置にいます。回りに「中級」以上の一流マーケターがいる確率は、中
級者の数の少なさゆえに、それほど高くありません(いらっしゃる方
は幸運です)。中級マーケターに触れる機会は、あまり無いんですよ
ね……ちなみに、職場で上級マーケターに直接教えを受ける機会など
は、現実的にはほぼ皆無と言っていいでしょう。アナタがそんな機会
に恵まれていたとしたら、それは超ラッキーです。
すると、中級マーケターになるには、「自ら成長する」姿勢が必要に
なってきます。
マーケティングのネタは回りに無限に「転がって」います。そして、
現在、情報はネットで比較的カンタンに取れます。上場企業であれば
昔だったら、わざわざ有価証券報告書などを買いにいかなければわか
らなかった情報が全部ネットで手に入ります。

すると、回りの経験を勝手につまみあげ、ネットなどで数値を分析し
「そうか、こういうことをするとこうなるんだ」という「疑似体験」
がつめるんですよ。

その「疑似体験」で自らを成長させていきます。

「こういうときにはこうなるんだ……」

というパターン認識を蓄積させていくんです。
ですから、初級から中級に行くときには、周囲からは「勝手に急成長
している」ように見えます。
☆賢者は他人の経験に学ぶ

とは、そういうことなのかな、と思います。

平たく言うと

「学ぶネタなんて回りに一杯転がってるよね~」

カッコ良く言うと、

「自分以外の全てが師なのだ」

という境地に近づいて来ます。
他業種の事例に積極的に触れるようにすることで、他人の経験を自ら
に取り込んで「疑似体験」できます。それにより、成長を加速させて
いくわけです。

このトレーニングは、「上級」になるまで続いていきます。

「中級」だと、まだ「自分の業種業態」に囚われる感覚があると思い
ます。「アタマでは、業種業態は関係ない」と思っていても、経験が
限定されているので、中級レベルだとまだまだ業種業態に囚われてい
ます。
「まさか、売れたま!って……」

と思われた方、ビンゴです!

売れたま!は、もちろん読者さん、そして、私自身の「疑似体験」に
よる成長のための「ツール」です。

例えば、マクドナルドについて、自分で行ってみて、来店者を観察し
さらに決算報告の数字や、社長の発言を分析して……

例えば、シルク・ドゥ・ソレイユについて、自分で行ってみて、来場
者を観察し、読者さんにアンケートをしてみて……
と、売れたま!では、他社さんの例を取り上げさせていただき、分析
させていただき、ご紹介させていただく、

ということをしています。

このような試みによって、読者さんが、そして私が「疑似体験」を積
めるようにしているんですよ。売れたま!は、読者のアナタ、それか
ら私が、同時に、一緒に進歩していくための試みなんです。
2010年11月15日号からの「シルク・ドゥ・ソレイユ」シリー
ズのときは、結構恐かったですよ。読者さんのアンケート結果をリア
ルタイムで分析していきました。これは、脚本を観客と一緒に作り上
げていく演劇のようなもので、どんな結果になるかわからないですか
らね。

でも、「お客様の意見が正しい」という事実の元に、自分の意見など
はヨコに置いておき、お客様の意見を「中立的に」分析すればいいん
だ、と開き直って書いてるんですよ。

これは、読者さん、ひいては私が「自らを成長させる」ための試みな
んですね。機会があったらまたやってみたいと思います。
ですから、「達人への道」の有効かつ無料のトレーニング方法が、

☆「きちんと」売れたま!をお読みいただくこと

なんですね。売れたま!は長いので、毎号毎号はできないかもしれま
せんが、興味があるトピックは、「きちんと」お読みいただいて、
「賢者が他人から学ぶ」ための「疑似体験」をしていただければと思
います。

「我田引水だ」と思われたら申し訳ありませんが、売れたま!はそう
いう意図・狙いの元に書かれているのは確かです。
そして、この成長を加速させていくことで、「上級マーケター」への
道を歩んでいきます。

今回で、「中級マーケター」は終了、次回から、ついに「上級マーケ
ター」について考えていきます!

 

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◆今日のまとめ
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★中級マーケターは、お客様は「一人一人」違う存在であることを認
 識し、お客様の立場に立つ。そうなるためには、他人の経験から学
 ぼう。

 

 

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━戦略編Vol.207 2011/07/28
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

★上級者は、「お客様のナマの言葉」を自在に使いこなせる。お客様
 と話して、お客様を観察して、お客様の言葉を身につけよう!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆復習:達人マーケターへの道
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★達人マーケターへの長い道のり

独断と偏見に満ちた、マーケター成長の道のり!

やけに好評なので(感動しました、というようなメールまでいただき
まして、ありがとうございます)、調子に乗って続けます。

達人マーケターになるまでには、段階を踏みます。この「段階」が、
順序よく進むとは限りませんし、全員の方にあてはまるとも限りませ
ん。あくまでも限られた私の経験と察に基づく「独断と偏見」で、異
論もあるでしょう。また、自分が「達人マーケターだ」と言うつもり
もありません。
「何だ!? オレは初級者だっていうのか!?」と、お怒りになられ
ても、正直責任は持てません……(初級者は、世間的には相当有能な
レベルです)。

「まあそういう見方もあるよね」と笑って受け流せる方は、ぜひお読
みいただければと思います。

 

★入門者:作りたい物を作り、売りたい物を売る

このレベルは「お客さま視点」という概念が抜けています。もしくは
意識はあるにしても、あまり実践できていません。

「こんなの作ろうぜ。『オレは』売れると思うよ」という開発担当
「安くしますので、買ってください!」 という営業担当
「これ仕入れたけど、誰に売ろうか?」という仕入担当
「この広告のコピー、オレは好きだよ」というコピーライター
「この商品の性能はすごい!」という商品カタログ
「このフラッシュ、カッコイイ! 重くて見づらいけど」というHP

というレベルです。

全体の6~7割の方はこのレベルです。

 

★初級マーケター:「自分がお客様だとして」のお客様視点

マーケターと呼べるのはここからです。お客様視点があり、入門者と
比べると、遥かに上です。営業でもマーケティングでも開発でも「成
功者」の部類に入り、職場でも、指導者・リーダー的な存在です。

ただ、

☆自分が欲しいモノ=お客様が欲しいモノ

という前提を無意識のうちにおくため、判断基準が「オレ」もしくは
「自分のアタマの中にいる幻想の顧客像」になってしまいます。

全体の2~3割程度の方がこのレベルです。

 

★中級マーケター

ここからは「一流マーケター」です。カリスマヒットメーカー、伝説
の営業マン、と呼ばれるような方々です。本当の意味で「お客様のニ
ーズに応える」のがこのレベルです。

このレベルの方々は、

☆お客様視点で考えたい。でも、どんなに頑張ってもしょせん自分は
 お客様にはなれない

と悩み抜き、

☆お客様に聞かないと、お客様を見ないとわからない

という「開き直りの境地」にたどり着きます。そこで、仮説を立て、
お客様に確認し、仮説を修正し……というサイクルを数千回と繰り返
して、「一流」になっていくわけですね。
全体の数%(あるいはそれ以下)の方がこのレベルです。

 

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◆上級マーケター
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★上級マーケターとはどんな人か?

今回からはいよいよ「上級マーケター」です。

「上級」はもはや「天才」と呼ばれる領域です。実際に「天才」なの
ではなく努力の賜なのですが、初級・中級の方から見ると「雲の上の
存在」です。すさまじく難しいことをカンタンにやってのけるので、
入門レベルだとそのすごさがわからないこともあるでしょう。
「万能」ではありませんが、マーケターとして理想的なスキル・態度
の多くを兼ね備えている存在です。
が、初級や中級の方でも、上級マーケターのスキル・考え方の一部は
「それ、自分でもやってる」というものがあるはずです。

人には誰でも得手不得手があります。仮に初級レベルだったとしても
その考え方・スキルに対しては、上級レベルに達しているので、自分
の「強み」として大切に伸ばしていくといいと思います。

恐らく、日本には数千人いるように思います。

数千~数万人に1人という存在ですので、上級マーケターに職場で直
接教えを受けられる機会は、皆無と言っていいでしょう。

当然、職場の職位が上なら「上級」とも限りません。課長~部長クラ
スにも存在するように思います。
なお、今までもそうでしたが、上級マーケター編は特に「属人的・感
覚的」になってくるため、個人差が多く、絶対的でもありません。必
ずしも正しいとも言い切れません。

そのあたりをご理解いただいた上でお読みいただければと思います。

 

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◆上級マーケター:お客様の「言語」を使いこなせる
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★お客様の言葉を自在に使いこなす上級マーケター
では、上級マーケターの特徴、最初ですね。

上級マーケターに限りませんが、マーケターのレベルの判断基準の1
つが

「お客様の言葉の使いこなし」

です。
「売り手」が、売り手の言葉を使いこなすのは当たり前ですが、買い
手であるお客様の言葉を使うのは、実は非常に難しいです。

できそうだと思っても、普通の人はまずできないでしょう。

「売り手が考えるお客様の言葉」

になってしまうんですよ。
上級ともなると、「お客様が使うお客様の言葉」を自由に使いこなし
ます。

例えば、子供がおもちゃを買うときに、その子供は「喜びの言葉」を
どう表現するでしょうか?

「他人に見せる社会的優越感を得られる」

というような言葉は、まず絶対に使いませんよね。

例えば、

「保育園で☆☆くんに見せるんだ♪」

みたいな言葉かもしれません。
例えば、年配の方がアンチエイジングの化粧品を買うときの喜びの言
葉は、

「アンチエイジングできた」

ではありませんよね。

「60才っていうと、みんなに驚かれるのよ~」

みたいな言葉かもしれません。
これ、「当たり前だ」と思われるかもしれませんが、実際にやってみ
ると、できる方は本当に少ないですよ。
上級ともなると、言葉はもちろん、モノマネみたいなことまでやって
のけます。

渋谷で遊んでいる女子高生であれば、

「え~まじで~ ぎゃはは ちょーうけるんだ~けどぉ」

巣鴨で休んでいる年配女性であれば

「どっこらせっと……くたびれたねぇ」

と、その方々が使う言葉を使い、話しているように演劇ができたりし
ます。

演技力のうまいヘタはあれど、アタマの中に映像として浮かび上がら
せることはできるでしょう。
「くたびれた」「こしらえる」などという言葉は、60代より上の方
が使う言葉ですね。それより下だと「疲れた」「作る」という言葉に
なります(古き良き日本語が失われつつあるとかそういう話は横にお
きます)。「マジで」は40代以下、「ガチで」だと、20代以下に
なるように思います。
上級マーケターは、そういう「人の言葉遣い」に非常に敏感です。

それは……
人となり・ニーズは言葉遣いに表れる
人となり・ニーズは言葉遣いに表れる
人となり・ニーズは言葉遣いに表れる
ことを知っているからです。上級マーケターは人間の思考は「言語」
「語彙」によって制約を受けることを意識的・無意識的に知ってい
ます。

要は、「言葉遣い」というのは、セグメンテーションの極めて重要な
切り口の1つなんですよね。私は勝手にWording Segmentationと呼ん
でおり、テキストマイニングと絡めて、最近の研究課題の1つだった
りします。

 

★言葉を使える=わかっている

「語彙の豊富さ」と「理解度」「感受性」の相関性は高いと考えられ
ます。

例えば、雪が降ったときに、「雪面」(水面と同じく、積もった雪の
表面のことです)の状態を表す言葉、というのは、日常語にはありま
せんよね。せいぜい「積もった雪」とか「凍って滑る雪」くらいでし
ょうか。
しかし、スキーヤーは、

・アイスバーン
・ザラメ
・クラスト
・パックトパウダー
・軽い新雪、重い新雪

などなど、「雪面状態」を表す「言葉」をたくさん持っています。

「今日の雪は滑らない」みたいな、妙な表現を使っても、それで意味
が通じるんですよね。

もちろん、言葉を知っているだけではなく、その「雪面の状態」によ
って滑り方を変えるわけです(私がそれをできるとは言ってません。
スキーのうまい人はできる、と言ってるだけです)。

逆に、それに対応できるスキルがないのであれば、雪面状態がわかっ
ても何の意味もありません。
同様に、おそらくソムリエは「ワインのおいしさ」を色々な言葉で表
現できるでしょう(私にはできませんが)。

コーヒーマニアは、コーヒーの焙煎を依頼するとき、「イタリアンロ
ーストの手前で止めて」みたいな感じの表現をするでしょう。それは
自分の好みをピンポイントでわかっているからです(私はもっと浅い
方が好みですが)

 

何が言いたいかというと、「言葉を持っている」ということは、「よ
くわかっている」ということなんです。

つまり、
「お客様の言葉を使いこなせる」

ということは

「お客様のことをよくわかっている」

ということなんですよ。

そして、うまいスキーヤーは雪面に合わせて滑り方を変えるように、
上級マーケターはお客様の使う言葉に合わせて、自分の使う言葉や対
応も変えていけるわけです。
さらに言うと、上級者なら、「お客様はそのような言葉を使わない」
と言い切ることもできます。

「使わない」と言い切れるのは、知り尽くしているからです。

英語の場合でも、「英語でそんな言い方はしない」と言い切ることが
できるのは、よっぽどの上級者ですよね。

「タクシー呼んでください」 を 英語で、

Call me Taxi !

と訳す、みたいな「ギャグ」があります。これがなぜギャグか、とい
うと、これはSVOCです。「私にタクシーを」ではなく「私をタク
シーと」呼んでください」という意味になります。すると、次からこ
の人は「よう、タクシーくん」と呼ばれる、という「ギャグ」です。

ですので、Call me Taxi という言い方は「しません」(自分の名前
が本当にTaxiであれば別ですけど)。これは、英語の文法を理解して
いれば、そう言い切れます。

話をマーケティングに戻すと、上級者は、「お客様の文法」(=思考
方法、使う言葉)を理解しているわけです。
「お客様の使う言葉」を、レベル別に表現すると、このような感じに
なるでしょう。
入門: 製品の性能・カタログの言葉など「売り手の言葉」を使う
初級: 「自分がお客様として」のお客様の言葉を使える
中級: お客様によって使う言葉を変えられる
上級: お客様の言葉を、お客様が話すように使える

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆上級マーケター:アタマにお客様のCPUを持つ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★上級者はアタマにお客様のCPUを持って、「高速翻訳」を行う

CPUとは、パソコンの中核部品で、パソコンの「頭脳」みたいなも
のとお考えください。
上級者は、アタマの中で2つのCPUを同時に使っています。

まずは、当然自分の使っているいつものCPUです。

そして、同時に、「それはお客様にとってどうなんだ」という、「お
客様の頭脳」のCPUも持っています。お客様の思考方法のシミュレ
ーションができるので、可能なワザですね。

で、この2つのCPUを同時に動かしているんです。

そして、常に「お客様のCPU」が、「自分のCPU」にチェックを
かけるわけです。

「おい、それはお客様にとってはどうでもいいことだぞ」
「ほら、その表現はお客様にはわからないぞ」

と、ヨコから介入してくるわけです。

私は同時通訳ができるほど英語はうまくありませんが、外国語として
の英語を話すときと同じですね。

若干余談ですが、よく「英語で考える」などと言いますよね。が、私
はそんなことは、ネイティブや帰国子女でない人間には効率が悪すぎ
ると思っています。

私はTOEIC975点で、日本人としては結構高い方でしょう。し
かし、それでも、「英語で考える」なんていうのは、私にはできませ
ん。
やってみればわかりますが、

3×2

という計算を、「日本語→英訳」 vs 「英語だけで考える」で、
対決させてみましょう。どちらがラクでしょうか?
日本語で「さんかけるにはろく、それを英語にして six!」

というほうが、

英語で” 3 multiplied by 2 is 6 !”

というより、早いに決まっています。たったこれだけのかけ算でもそ
うなんですから、戦略BASiCSを考える、みたいなことを英語で
考える、というのは無茶です。少なくとも非効率です。

ネイティブとか帰国子女は別ですよ。外国語として英語を使う場合は
ということですよ。

ではどうすれば良いかというと、外国語として英語を使うコツは……
アタマの中で「超高速変換」をするんです。

複雑な思考は日本語で考えます。そして同時に別の「英訳」CPUを
動かして、日本語の思考を瞬時に翻訳していくわけです。日本語思考
用のCPUと英語翻訳用のCPUを2つ同時に動かすんです。
で……ここは人によって個人差があると思いますので、異論はあるで
しょうが、私はマーケティングの場合も同じ感覚のように思います。

翻訳するものが「英語」か「お客様の言葉」かという違いなだけなん
ですよね。
変な話、「英語」も「お客様の言葉」も、「自分が日常的に使う言語
とは違う」という意味では共通します。

「お客様の言葉が自分の言語ではない」という意味は、「自分はお客
様にはなれない」からです。
ですから、上級マーケターは、「高い言語操作能力」を持っている、
ということになります。

残念ながら、この「言語操作能力」には、ある程度の(ある程度の、
ですよ)才能のようなものがあるようです。要は英語の得意不得意と
同じようなものです。人には得手不得手があるので、それはしょうが
ないことです。
すると、普通の方には……「そんなのムリだよ」ということになりま
すよね?

でも、「同時通訳」をする必要はありません。実務において、瞬時に
変換をする必要は、接客業・営業を除き、それほどありません。
(優秀なウェイターや営業は、目の前のお客様に合わせて使う言葉を
変えるくらいの作業は瞬時に、そして恐らくは無意識にやっているは
ずです)。
・自分の思考CPU
・お客様思考CPU

を「同時」に動かすのは、「離れ業」に近いですが、「交互に」動か
すのであれば、誰でもできます。誰でも、です。繰り返します。誰で
もできます。誰でも、です。誰でも、ですよ。
自分の言葉を、お客様の言葉に「翻訳する」という作業を丁寧に時間
をかけて行えばいいだけです。

「おい、それはお客様にとってはどうでもいいことだぞ」
「ほら、その表現はお客様にはわからないぞ」

という、別のCPUを働かせる時間をとって、チェックを丁寧にかけ
ていくわけです。
英語の練習を続けると、そのうち、「翻訳」をしなくても使える語彙
や文が増えて来ます。

極端な話、”Hi, how’re you doin?” というのは別に翻訳しなくても
使えますよね? これは、この文が「自分が日常使う言語」の中に入
ってきたということです。

英語の練習を続けると、そのような「語彙」「文」が増えてくるので
わざわざ「翻訳」という作業をしなくてよくなります(恐らく、これ
をもって「英語で考える」ということを言っているのかな、と思いま
す)。
マーケティングの場合も同じで、「お客様が使う表現」が、自分の語
彙の中に「入ってくる」んですね。

上級マーケターは、そういう「語彙」が非常に多い、ということだと
思います。

だから、「お客様の言葉」への「翻訳」をかけなくても、「天才」で
あるかのようにお客様の言葉が使える、ということです。

 

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◆お客様の「言語」を使いこなすための訓練方法
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上級マーケター編は、「天才」の領域に入ってきます。すると、入門
や初級の方には、

「自分にはとてもムリだ」

みたいな感覚を持たれてしまいそうです……

が、そんなことないですよ。その一部はできるはずです。

そもそも生まれつきの上級マーケターなんかいないわけで、何らかの
「訓練」を通じて成長してきたわけです。

ですから、なるべく「それに近づけるようになるための訓練方法」も
載せていくようにします。

 

★つぶやきイメージ、動画イメージを蓄積していく。

上級者が使いこなす「お客様の言葉」は、「単なる妄想」ではありま
せん。根拠があるわけです。

その「根拠」は……

「お客様の言葉の蓄積」

です。

多くのお客様と話し、多くのお客様を観察することで、パターン認識
ができるようになっているわけです。

ですから、バッグを買っている女性を見て、

「お客様は「私は優越感を得るためにこの商品を買っている」なんて
 いう言葉遣いはしない」

と言い切れるわけです。

「そうじゃなくて、お客様は「友達に、それカワイイねってほめられ
 たの♪」 みたいな言葉を使うはずだ」

と言うわけですね。

それは、お客様と話したり、お客様を「観察」していればわかるはず
です。

「ナマっぽい」(=お客様が本当に使う)表現が何か、というのをそ
れまでの蓄積からわかっているわけです。
逆に言えば、知らないお客様については、上級マーケターだってわか
りません。わかっているのは、「お客様を知らないのなら、話す、観
察する必要がある」ということだけです。
「自分はお客様になれない」という、悩み抜いた末の開き直りの元、
「自分の感覚を相対化して、お客様の好みと合わせる」という作業を
繰り返していくと……
「そうか、お客様はこういう感覚を、こういう言葉で表現するんだ」
「お客様は、こういうときにこういう行動を取るんだ」
という、お客様の観察結果や、使う言葉が蓄積されていきます。

「実戦マーケティング思考」*で言うところの「つぶやきイメージ」
や「動画イメージ」が蓄積されていくんですね。

*「実戦マーケティング思考」 佐藤義典著
http://www.sandt.co.jp/shiko.htm

 この本は、上級マーケターになるためのスキルをかなり網羅的にカ
 バーしていますので、オススメです。
このような、観察結果を蓄積していくことにより、お客様の「思考プ
ロセス」を体感できるようになります。

それが2つめのCPUである「お客様思考CPU」になっていくわけ
です。
例えば若いマーケターが年配者向けの商品開発するとき、

「自分はお年寄りにはなれない、という事実を受け止める。その上で
 どこまで近づけるか」

という発想をするわけです。
そして、「所詮お客様にはなれない」とわかっているので、

・聞いてみる
・観察してみる

という行動を取ります。

聞いてわかる場合は聞きますし、聞いてもわからない場合は、観察し
ます。すると「こしらえる」という、若い世代の言葉には出てこない
言葉を使っていることがわかりますよね。
「達人マーケターへの道 2」で、マルエツが拘束器具をつけて、高
齢者の感覚を体験する、という例を紹介しましたが、そこまでやった
りもします。

マーケティングのうまいメーカーだと、「ユーザーの利用場面調査」
などというのは普通にしますよね。

洗剤メーカーなら、実際にお客様がいつどこで何をどう洗濯するのか
をお客様に「尋ねる」のではなく、お客様が実際に洗濯している場面
を「観察する」んです。

なぜ「尋ねる」のではなく「観察する」のかというと「お客様はウソ
をつく」からです。悪意のウソではありません。お客様は、自分でも
自分のニーズに気づいていないんですよ。

ですから、状況が許すのであれば、「尋ねる」より「観察する」のが
いい、ということを上級マーケターはわかっています。
洗濯の場面を観察してみると、仕事がある人は

・夜に洗うから、外に出せない(日が照ってない)
・面倒だから洗濯カゴなんか使わずに洗濯機に下着を投げ込む

とか、

エコ意識のある人は

・残り湯を洗面器ですくって洗濯機に入れる

みたいな、観察しないとわかりづらいことがわかります。

陰干し用の洗剤、というのは最近のヒット商品ですが、消費者がこの
ような洗濯の仕方をするのは、そのずっと前からだと思われます。そ
のニーズが掘り起こせていなかったんですね。
お客様には当たり前のことが、売り手にはわからないんですよ。
お客様に「尋ねる」のは中級です(もちろん、制約があって、そうす
ることしかできない場合は別です)。

上級マーケターは、

「価値は使い方に表れる」

ということがわかっているので、「利用の現場」を「観察する」わけ
です。
お客様(候補)が回りにいないから話せない、観察できない、という
場合は、「お客様が読む雑誌を読む」ことは1つの訓練方法です。

私は、どうしても「女性」の感覚がつかめなかったので(別に今はつ
かめてるとは言いません)、一時期、色々な女性誌を読みあさってま
した。そのときの私は、「初級」レベルでした。

「読者投稿欄」とか「相談コーナー」なんかが充実しているような雑
誌がいいですね。わりと「お下品」な雑誌の方が、極端なカタチでの
「お客様が使う言葉」が載ってます。最初に読んだときは、「うわあ
こんなこと考えてるのか……」と結構衝撃でした。

それで、「こりゃダメだ。自分は女性の立場になんか立てるはずがな
い」という開き直りを得て、「じゃあどうしよう」と中級への道を歩
み始めたように思います。
BtoBの場合でも、例えば建設業界がお客様なら、建設業界の雑誌
や業界紙を読むくらいのことはしますよね(というか、しないとダメ
だと思います)。

すると「お客様の使う言葉」という意味での「共通言語」ができます
よね。その言葉をお客様と話すときに使ってみたりして、また言葉を
蓄積していけばいいわけです。
英語でも、そもそも語彙がなければ話せないのと同じで「お客様の使
う言葉」がわからなければ、お客様のニーズもわからない、というこ
とかと思います。

 

ということで、達人への道、

☆お客様の使う言葉を知ろう!
☆お客様の使う言葉遣いで話せるようになろう!

ですね。

これは、「突然覚醒する」ようなものではなく、地道に増やしていく
しかありません。

ですから、上級マーケターは突然生まれないんです。自らを育ててい
くんです。

 

このシリーズ、長くなりそうです……

上級マーケター編もまだ続きますし、「その上」もありますから……

でも、「マーケターの資質」というのは誰かが定義しておいが方がよ
いと思いますし、それは私の役割のような気がしますので、頑張って
いきたいと思います。

ということで、もうしばらくおつきあいくださいね!

 

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◆今日のまとめ
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★お客様と話し、お客様を観察して、お客様の語彙・言葉遣いを自在
 に使えるようになろう! 少しずつでも増やしていこう!

 

 

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━戦略編Vol.208 2011/08/01
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

★上級マーケターは観察力が高い。目の前で見ているものの「意味」
 に気づこう!
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◆復習:達人マーケターへの道
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★達人マーケターへの成長の道のり

やけに好評なので、続けさせていただきます。

達人マーケターになるには、段階を踏みます。この「段階」が、順序
通りとは限りませんし、全員の方にあてはまるとも限りません。限ら
れた私の経験と察に基づく「独断と偏見」で、異論もあるでしょう。
自分が「達人マーケターだ」と言うつもりもありません。

笑って受け流せる方は、ぜひお読みいただければと思います。

 

★入門者:作りたい物を作り、売りたい物を売る

「お客さま視点」という意識が無いまたは実践できていないレベル。

☆「こんなの作りたいな」という開発担当
☆「安くしますので、買ってください!」 という営業担当
☆「これ仕入れたけど、誰に売ろうか?」という仕入担当
☆「この商品の性能はすごい!」と書く商品カタログ制作者

全体の6~7割の方はこのレベルです。

 

★初級マーケター:「自分がお客様だとして」のお客様視点

ここからマーケターと呼べます。お客様視点があり、入門者より遥か
に上。営業でもマーケティングでも開発でも「成功者」の部類に入り
職場でも、指導者・リーダー的な存在。

ただ、

☆自分が欲しいモノ=お客様が欲しいモノ

という前提を無意識のうちにおくため、判断基準が「オレ」もしくは
「自分のアタマの中にいる幻想の顧客像」になってしまいます。

全体の2~3割程度の方がこのレベルです。つまり、ほとんどの人は
初級以下です。

 

★中級マーケター:一流マーケター

ここからは「一流マーケター」です。カリスマヒットメーカー、伝説
の営業マン、と呼ばれ、本を出しているような方々です。
このレベルの方々は、

☆お客様視点を持ち多義が、どうやっても自分はお客様にはなれない

と悩み抜き、

☆お客様に聞かないと、お客様を見ないとわからない

という「開き直りの境地」にたどり着きます。仮説を立て、お客様に
確認、というサイクルを数千回繰り返し「一流」になります。
全体の数%(あるいはそれ以下)の方がこのレベルです。

 

★上級マーケター

「天才」と呼ばれる領域です。実は努力の結果なのですが、初級・中
級の方から見ると「雲の上の存在」です。難しいことをカンタンにや
るので、入門レベルだとそのすごさがわかりにくいです。

「万能」ではありませんが、マーケターとして理想的なスキル・態度
の多くを兼ね備えている存在です。

恐らく日本には数千人いるでしょう。数千~数万人に1人ですので、
上級マーケターに職場で直接教えを受ける機会は、まずありません。
が、初級や中級の方でも、上級マーケターのスキル・考え方の一部は
「それ、自分でもやってる」というものがあるはずです。

人には誰でも得手不得手があります。仮に初級レベルだったとしても
その考え方・スキルに対しては、上級レベルに達しているので、自分
の「強み」として大切に伸ばしていくといいと思います。

 

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◆上級マーケター:「見ているもの」が違う
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前回は、上級マーケターは

☆お客様の言語を使いこなす
☆アタマにもう1つ「お客様のCPU」を持っている
☆お客様の「つぶやきイメージ」「動画イメージ」を蓄積する

ということを見てきました。

今回は、その訓練方法というか、イメージの蓄積方法をさらに考えて
まいります。

 

★上級マーケターは、「見ているもの」が違う

上級マーケターだからと言って、特別な生活をしているわけではあり
ません。上級マーケターは勉強熱心ですから、読書量などは当然多い
でしょうが、生活はごく普通です。むしろ、だからこそ上級になれる
のです。

上級マーケターは、日常の何事もない風景も、きちんと「見て」いま
す。電車の中では人間観察をし、タクシーに乗ったら運転手さんと話
をして、ピンと来たらすかさずメモを取り……

という行動をします。
例えば、マクドナルドで勉強している学生らしき人達は、なぜかイヤ
ホンをしています。その先は当然iPodなどにつながっています。

単に習慣でつけているだけなのか、耳栓代わりなのか(私の場合はそ
うです)、音楽を聴いているのか、気になりますよね。さすがに直接
聞きに行くと迷惑です……でも、しばらくしてiPodをいじりはじめま
した。すると、何かを聴いている、ということだけはわかります。

よくデザイナーさんとかが音楽聞きながらデザインしていますが、そ
れと同じで、音楽聞きながら勉強しているのかもしれません。そう言
えば私も高校生のときはStarship聞きながら勉強してました。いつの
間にか音楽を聴きながら仕事しなくなったのだろう、と考えると、ま
たアイディアが出るかも……

ここから直接のアイディアは出なくても、こういう「光景」を覚えて
おくことによって、何かの拍子に思い出せるわけですよね。

 

中級以下の人と違うことをしているわけではなく、同じことをしてい
るのですが、「見えている」んですよ。
「ドリルを売るには穴を売れ」で、売多真子が勝に、なぜ飲食のプロ
でもないのに、レストランの顧客ニーズがわかるのか、尋ねます。

勝の答えは……?
「オレは常に「見ている」からだよ。昼下がりに立ち寄ったカフェで
 営業マンと思わしき男性が、パソコンとにらめっこしている姿を。
 その男性が、あわてて電源コンセントを探している姿を。そんなの
 は、自分がいつもレストランで食べてるときに気をつけていれば、
 見たことのある風景のはずだ。マーケティングは会議室で起きてい
 るんじゃないんだ!」

(ドリルを売るには穴を売れ P100)
上級マーケターは、中級以下の人と見ているものは同じです。しかし
見ているものが違います。

観察力が鋭敏なんですね。そして記憶するか、すかさずメモします。
売多勝と真子の何気ないやりとりに、実はマーケティングの「真髄」
をいくつも込めているんですよ。
前に、セミナーで「冬のマクドナルドは勉強している高校生で一杯」
と何気なく言ったことがあります。

すると、「確かに言われればそうなんですけど、そういうのを見てい
て覚えていて、こういうときに言葉に出せるのがすごいですよね…」
とある方から言われました。私の一言をきちんと捉えてそういう解釈
をできるこの方も実はすごいのですが、上級マーケターは、このよう
な「観察」「記録」を日常的にやっています。

そして、アタマの中に「動画イメージ」として蓄積したり、メモをし
たりするわけです。
繰り返します。見ている風景は誰でも同じです。しかし、「見えてい
るもの」が違うんです。
同じTVを見ていても、「見えているものが違う」んですね。例えば
先日TV番組で、マクドナルドの一番売れ筋商品は何か、みたいな紹
介をしていました。

(7月29日 金曜プレステージ『プライスキング』 フジTV)

マックで一番売れているメニューは、何だと思われます?

私、ビッグマックかなあと思ったんですが……答えは、

「てりやきマックバーガー」

だそうです(私のメモですので、情報の正確性は欠いているかもしれ
ません)。

このような情報って、公式情報としては意外に出てこないんですよ。
(この情報は既にTVで公開情報となったので、広報に問い合わせれ
 ば教えてもらえるでしょうけど)。
さて……すると、マックの成功要因の1つは、「メニューの現地化」
なのではないか、という仮説が容易に考えられます。Fish&Chipsの国
イギリスでは、フィレオフィッシュが人気メニューかもしれない、な
どという仮説も立ちます。この1つの情報から、マックのグローバル
製品戦略に思いをはせることができるわけです。
この1つの情報をメモしておくことによって、芋づる式に発想を展開
させられるんですよね。

そして、仕事でグローバル戦略の話になったときに、この話をポンと
出すと、そこからまた話を広げることもできるかもしれません。
ちなみに、「観察力」というのはどこに行っても重要なようで、84
年の夏の甲子園で、あの清原・桑田両氏を擁したPL学園を決勝で破
って優勝した取手二高などの監督を務め、「木内マジック」と賞され
た木内氏がこう語っていらっしゃいます。
「マジックの秘けつ? 観察力ですね。相手投手がどう攻めてくるの
 か。打者がどう打ってくるのか。そこに一番注目してずっとやって
 きましたから」。

headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110728-00000013-spnannex-base

同じモノを見ていても、「見ているモノ」が違うのでしょうね。

 

★上級マーケターは日常を「観察」し「記録」を残す

そして、このような情報をすかさず「記録」します。要は「メモ」を
取る、ということです。人間は、「忘れる生き物」であり、「記憶間
違いをする生き物」であるということを知っているからです。
「記録」という意味で、ちょっと極端な例を紹介します。

私、スタバで「ダブルショートソーイカプチーノ」という呪文を唱え
ます。「エスプレッソを追加し、ミルクを豆乳にしたショートサイズ
のカプチーノ」です。

ある店で、毎回これを頼んでいたのですが、あるとき、「毎回重さが
違う気がする」と気づきました。気づいたとしても、ここで見逃すで
しょう。私は気になったので、オフィスや店にハカリを持ち込んで計
測することにしました。今でも手許に記録がありますが、

・サンプル数 87
・平均  183g
・標準偏差 23
・最小値 127g
・最大値 244g

という「記録」が残っています。最小値と最大値で2倍近く重さが違
いますね……最大値は、「トールサイズ」並の重さです。
ここから、少なくともスタバでは、カプチーノのミルクの量は相当変
動することがわかります(エスプレッソの量は自動に出てくるようで
すので、変わるとすればミルクだけ)。オペレーションの課題がある
こともわかりますよね。
だからどうということでは全くないですし、この記録を公開すると、
スタバのその店に迷惑がかかりそうな気がしたので実はこの記録は公
開してきませんでした。昔の話なので、もう時効かと思って、今回公
開しました。
さすがに87回も同じ注文をすると、その店では「いつもの」で、ダ
ブルショートソーイカプチーノが出てくるようになりました(笑)
ちなみに、これが密着軸の典型です。
上級マーケターは、普通の人は見逃すこと、「どうでもいいこと」を
「どうでもいいこと」としては捉えないんですよ。

ですので、「この人何やってるの?」という一風変わった行動をとる
人が多いです。
私は、「電車の中で、人は何をするのか」ということを数えたことも
あります。2003年当時、1/2の方は何もしていませんでした。
今だと、1/3以上の方がケータイをいじっているでしょうね。この
「何もしない時間」に、DSやスマホはぴったりはまったと言えるわ
けです。ちなみに、当時スキルアップにつながるようなことをしてい
る人、ビジネス本やビジネス誌を読んでいる人や勉強している人は、
4.7%でした。とすると、電車の中で売れたま!をお読みになって
いるアナタは、すでにトップ5%に入っている、となりますね。
また、スタバに1時間もいれば、その間に「エスプレッソ」という、
本来であれば「中核商品」であるはずの商品を頼む人は、多くて1人
だということに気づきます。実際記録しようとしたことがあるんです
が、ほとんどいないので、記録の取りようがありませんでした。そも
そもスタバの店内に掲示されているボードに「エスプレッソ」という
メニューがありません(もちろん注文すれば出てきます)。
上級マーケターは、こういう

☆日常のことを「観察」→「記録」→「解釈」

ということを、日常的にしているわけですね。他人さまの経験を勝手
に自分の経験にするので、「経験」が加速度的に増えていきます。
カギは「記録」ですので、上級マーケターは、メモを持ち歩く人が多
いです。すごくよく聞くのは、「枕元にメモを置く」習慣です。最近
は、ブログやSNSを自分の防備録代わりに使う人も多いでしょう。

メモは、後で見ても「これ何だっけ?」というものも多いのですが、
「ああ、そういえば……あれ、ちょっと待てよ、これ、こないだお客
様に聞いたアレとつながらないか?ということもたまにあります。そ
の「たまにある」ことのために、メモを持ち歩くわけです。そして、
その「たまにある」ことの積み重ねが、「売れる確率を高める」こと
を知っているわけですね。
こう言ってしまうと身も蓋もないですが、上級マーケターは、要は
「努力家」なんですよ。「天才」ではなく、「努力の積み重ね」をし
て成長してきたわけです。ただ、本人には「努力」という感覚ではな
いかもしれません。「やって当たり前の習慣」だったり、「趣味と実
益」みたいな感じでしょう。マックでの人間観察だって、マックで仕
事しててちょっと一息ついたときに、休憩がてら回りを見回せばいい
だけですから。

 

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◆上級マーケター:「幽体離脱」できる
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★上級者:お客様の「目」でモノを見られる

上級マーケターになると、文字通りお客様の「視点」でモノを見られ
るようになります。

それは、自分がお客様を見ているのではなく、お客様の中に入り込ん
で、お客様が見ている風景を自分も見られる、ということです。

例えて言うなら、お客様のアタマと自分がつながっていて、お客様が
見ている風景が、何かを伝わって、自分のアタマの中に映し出される
というようなSFのような感覚です。
「お客様の立場に立つ」というときにイメージするのは、多くの場合
は、

「外から見ているお客様」

ですよね?

お客様をイメージする、という場合、お客様の外見をイメージしてし
まいます(それ自体は悪いことではなく、中級に行く上での有効なト
レーニングです)。

いわゆる「動画イメージ」は、お客様を外から見ているイメージで、
お客様の姿が映っています。
しかし、上級マーケターになってくると、「動画イメージ」がさらに
進化します。

上級マーケターの言うところの「お客様の立場に立つ」というのは、

「お客様が見ている風景を見る」

ということです。ですから、そこにはお客様の姿はありません。お客
様の視点を持ったときには、その中にお客様が見えているはずはあり
ませんよね。

例えば、お客様と商談しているときに、お客様の立場に立つ、とは、
お客様の目から見えている、「自分の姿」を見る、ということです。

「お客様の目から見て、今自分が見せている資料はどう見えている、
 どう感じられているだろうか」

というシミュレーションができる、ということなんです。

究極の「お客様の視点」というのは「お客様が見ている風景を見る」
ということであって、「自分が見ているお客様を見る」ことではあり
ません。

前号でご紹介したアタマの中にある2つめの「お客様脳CPU」が常
に働き、

「今自分はお客様からどう見えているだろう」

と考えるわけです。

 

★「幽体離脱しろ」 by 売多勝

売多勝は、「新人OL、つぶれかけの会社をまかされる」の中で、こ
の感覚を「幽体離脱」と表現しました。
「あの人に自分が乗り移ったとしたら、何を見て、どう感じて、どう
 考えるのだろう」と考えるんです。

「幽体離脱」というのは、上級マーケター以上に可能な「顧客視点イ
メージ力」なんですね。
当時はまだ入門~初級レベルだった売多真子には、この感覚はまった
くわからなかったでしょうね。勝が軽く表現している一言には、相当
な深み・重みがあるんです。

ですから、実は「新人OL~」(=ドリルを売るには~)は、一見読
みやすい軽い本に見えて、般若心経のような深さを持っているんです
よ。あの本には、自分のレベルが上がるたびに、新たな発見があるは
ずです。売多勝の何気ない一言に深遠な意味があることに気づけば、
単なる「わかりやすい本」ではないことがおわかりいただけるかと思
います。
幽体離脱、とは、

「自分とお客様は、絶対に違う。しかし、それでも、少しでもお客様
 に近づく。自分が、あのお客様に乗り移って、お客様の目に見える
 ような風景を見て、お客様の嗅いでいる匂いをかぎ、お客様の感じ
 るように感じながら」
考えるわけです。人に乗り移るかのように、視点移動ができるわけで
す。もちろん実際にできるわけではなく「イメージ」ですが、ある種
のリアリティを伴っています。
例えば、自分は元気な大人の男性でも、

・ゆっくりしか走れない年配者のカラダの動きを感じられる
・階段が異様に高く感じられる子供の視点を持てる
・朝、シャワーを浴びて、バナナをかじりながら髪型をセットして、
 バタバタとメークする勤労女性の慌ただしさを体感できる
・妊娠して身重な女性の疲れを体感できる
という、自分の感覚ではない感覚を、自分のものとして「実感」する
のです。

これが、真の「顧客視点」であり、本当の「肌感覚」です。
このときには、体験・経験の広さがモノを言います。

例えば、私は肉離れを2回経験しました。そのときは、杖を持って時
速0.5kmで歩かざるを得ないような状況に追い込まれました。

このときには、わずか100m、走れば数十秒の距離がとてつもなく
遠くに感じられます(100mのためにタクシーに乗りました)。

そして、後ろからどんどんみんなが私のことを追い越していくんです
よね。

すると

「そうか、ゆっくり歩くお年寄りの気分とはこういうことか……ゆっ
 くり歩いているんじゃなくて、ゆっくりしか歩けない、ということ
 なのか。後ろから追い越されるのは結構恐いんだな……」

という「疑似体験」ができます。

この感覚を「感じ」て「記録」しておくわけです。
旅行のとき、大きな荷物を持って階段を上り下りすると、「上りより
下りの方が怖い」ということを感じます。荷物で隠れて階段の下が見
えませんし、万が一転んだときに、リカバリーできません。すると、
階段でベビーカーを持ち運ぶ子育て女性の気持ちを「疑似体験」でき
ます。
このような「疑似体験」を通じて、自分の「つぶやきイメージ」や
「動画イメージ」をさらに洗練させていくわけです。
上級者のポイントは、このような「体験の蓄積」です。

上級者であろうと入門者であろうと、「見ていること」「しているこ
と」はほぼ同じです。上級者が特別の生活をしているわけではありま
せん。というか、特別の生活をしていたら、上級マーケターになれま
せん。会社の社長になって「専用送迎車」に乗るようになったら、
「庶民の感覚」がわかるはずもありません。そんなことをし始めたら
社長としてはともかく「マーケター」としてはおしまいですね。
そして……

上級者になると、「自分の経験」が「他人の経験」になる感覚を持つ
ようになります。
「自分はこんな経験をした。これを他人に置き換えるとどうなるんだ
 ろう?」
という視点で、自分の生活・自分の体験を「他者の体験」に「変換」
していくんです。

☆自分の中にいながらにして他者の視点を持ち、
☆自分で経験をしながら、それを他者の経験に置き換える

というような「視点移動」(=幽体離脱)が自在にできるわけです
ね。

 

★お客様にすら考えつかない、お客様が欲しいものを提案

このレベルに達すると、お客様ですら気づかないニーズに気づくこと
もあります。

わかりやすい例は、メーク落としの「お泊まりセット」なんかがそう
ですよね。コットン、化粧水、などが1泊分のセットになった、すっ
かり定番商品になりましたね。

どなたが開発したかは存じませんが、これを考えた方は、素晴らしい
マーケターだと思います。

普通のお客様にただヒアリングをしても、

「お泊まりセット欲しい!」

とは言わないと思います。でも、あれば便利なはずだ、というのは、
お泊まりする女性を観察していればわかるはずです。

お客様に考えつかない、でもお客様の「視点」でモノが見えれば、
「潜在ニーズ」はある、という、素晴らしい商品だと思います。

この商品の難点は「競合でもマネできる」ということではありますが
それはBASiCSでチェックすればいい話です。

上級者ともなると、「競合のことを考えよう」と思わなくとも、競合
のことが考えられます。

なぜなら、「お客様は、競合のことを考えている」からです。上級者
だとお客様になりきれるので、当然競合のことが思い浮かびます。

意識的に、あるいは無意識的に、戦略BASiCSのような発想がで
きるわけです。

もちろん、このスキルを戦略BASiCSとして体系的に言語化され
た「ツール」として学ぶことの意義が極めて大きいので(上級者への
近道)、売れたま!ではしつこくとりあげているわけですよ。

 

この辺が、通常のビジネスパーソンが、マーケターとして目指すべき
ところなのかな、と思います。
次回は……「普遍化能力」です。

普遍化能力は、ビジネスパーソンとして重要ですが、マーケティング
においては、特に重要です。その理由とは……?

次号もお楽しみに!

 

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◆今日のまとめ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★上級マーケターは同じモノを見ていても「見ているモノ」が違う。
 日常を「観察」して、「解釈」する練習をしよう!

 

 

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━戦略編Vol.209 2011/08/04
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

★中級から上級に上がるときのカベの1つが「普遍化」。「構造化」
 と「条件の明確化」で「普遍化」しよう!
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◆復習:達人マーケターへの道
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★達人マーケターへの成長の道のり

達人マーケターになるには、段階を踏みます。この「段階」が、順序
通りとは限りませんし、全員の方にあてはまるとも限りません。限ら
れた私の経験と察に基づく「独断と偏見」で、異論もあるでしょう。
自分が「達人マーケターだ」と言うつもりもありません。

笑って受け流せる方は、ぜひお読みいただければと思います。

 

★入門者:作りたい物を作り、売りたい物を売る

「お客さま視点」という意識が無いまたは実践できていないレベル。

☆「こんなの作りたいな」という開発担当
☆「安くしますので、買ってください!」 という営業担当
☆「これ仕入れたけど、誰に売ろうか?」という仕入担当
☆「この商品の性能はすごい!」と書く商品カタログ制作者

全体の6~7割の方はこのレベルです。

 

★初級マーケター:「自分がお客様だとして」のお客様視点

ここから「マーケター」です。お客様視点があり、営業・販促企画・
商品開発などの「成功者」。職場でも指導的立場者です。ただ、

☆自分が欲しいモノ=お客様が欲しいモノ

という前提を無意識のうちにおくため、判断基準が「オレ」もしくは
「自分のアタマの中にいる幻想の顧客像」になってしまいます。

全体の2~3割の方がこのレベル、つまりほとんどの方は初級以下。

 

★中級マーケター:一流マーケター

ここからは「一流マーケター」です。カリスマヒットメーカー、伝説
の営業マン、と呼ばれ、本を出しているような方々です。
このレベルの方々は、

☆お客様視点を持ち多義が、どうやっても自分はお客様にはなれない

と悩み抜き、

☆お客様に聞かないと、お客様を見ないとわからない

という「開き直りの境地」にたどり着きます。仮説を立て、お客様に
確認、というサイクルを数千回繰り返し「一流」になります。
全体の数%(あるいはそれ以下)の方がこのレベルです。

 

★上級マーケター

「天才」と呼ばれる領域です。実は努力の結果なのですが、初級・中
級の方から見ると「雲の上の存在」です。難しいことをカンタンにや
るので、入門レベルだとそのすごさがわかりにくいです。

「万能」ではありませんが、マーケターとして理想的なスキル・態度
の多くを兼ね備えている存在です。

恐らく日本には数千人いるでしょう。数千~数万人に1人ですので、
上級マーケターに職場で直接教えを受ける機会は、まずありません。
初級レベルの方でも、上級マーケターのスキル・考え方の一部は「自
分もやってる」というものがあるはずです。それについては上級レベ
ルに達しているので、「強み」として活用・育成していきましょう。

 

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◆上級マーケター:「観察結果」を「解釈」できる
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★前回の復習

前回、上級マーケターは

☆日常を「観察」し「記録」する

☆「観察」「記録」を続けると、「幽体離脱」(お客様の見ているモ
 ノが見える)できる

ということを見てきました。
「観察」「記録」は、やる気さえあれば入門者でも初級者でもできま
すので、今すぐにでも始めることをオススメします。
今回は、「観察」→「記録」の、さらにその「先」です。
★上級者は「観察結果」を「解釈」できる

上級者には「見えているもの」をきちんと「解釈」できます。

「観察」→「記録」→「解釈」

ということですね。
例えば、電車の中では、カップルで1つのウォークマンに刺した1つ
のイヤホンを、片耳ずつに分けて耳につけている人たちがいます。

普通の人は見逃す光景です……が、上級者は当然見逃しません。

「なるほどなあ……」と考えるわけです。
その光景を「解釈」すると……

「ひょっとして、イヤホン差し込み口が2つある、カップル用のウォ
ークマンはニーズがあるのでは? あるいは、2人分ついた2人用
イヤホンでもいいかも……

というような発想がフツーにできるわけです。
目の前に見ている光景に「意味」を加えることができるんです。
ただ、これくらいなら、「中級」レベルでもできるかもしれません。

「上級」はここから先が違います。
「観察」→「記録」→「解釈」の次は……

「普遍化」です。
「普遍化」とは、言葉の通りの意味ですが、一応定義しておくと……
「ある状況において適用できたことを、他の状況においても適用でき
 るようにすること」

としておきます。

 

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◆普遍化その1:「構造」を捉えて、「構造化」する
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普遍化のポイントを、ここでは2つあげておきます。

1)構造化
2)条件の明確化

です。

まず1つめは「構造化」です。

 

★上級者は、「構造化」できる。

上級者は、先ほどの、「1つのイヤホンを2人で分けている」光景を
見て、

「これってどういうことなんだろう?」

と考えます。

すると、これは……

「要は、1つのものをカップルで分けている」

ということだよな、と「構造化」できます。

「構造化」とは、「形式として表現できる能力」、とここでは定義し
ておきます。

先ほどの「イヤホンを2人で分けている」場合、

  ウォークマン
    □      
   ↓ ↓
  ★   ★
  男性  女性

といった感じで「形式として表現」できますよね。

すると、この「ハコ」の中に入るものが変わっても、ハコの中身が変
わるだけで、「構造は同じだ」ということがわかります。
1つのレモネードを2人で飲むカップルは、上の図式で言えば、

  レモネード
    □      
   ↓ ↓
  ★   ★
  男性  女性

となります。
こう表現すると、何となく「理系的」な感じがするかもしれませんが
別に「図」にしなくても構いません。

文系的に表現すると

「1つのモノを2人で利用している状態」

と表現できます。

 

★構造化すると、「展開」が可能になる

1つのイヤホンをカップルで分けて聞いている状態を見て、それを

「1つのモノを2人で利用している状態」

と「構造化」できれば、これは……、

「1つのレモネードに2本のストローをさしてカップルで飲む」

という、松田聖子さんの歌に出てきそうな情景と、分けているモノが
音楽なのかレモネードなのかという違いだけで、「1つのモノを2人
で分けている、という意味では同じだ」、と「展開」できます。
これは、言われれば当たり前だ、とおっしゃるでしょうが、実際には
極めて難しいことはやってみればわかります。
ここまで構造化できると………

「ちょっと待てよ、子供がいる夫婦なんかが夜、一緒にテレビやビデ
オを見るときもあるよな……子供が寝るときには大きな音をつけられ
ないから、そういうときにはいいかも! 家庭用の2人用イヤホンも
ありだな。そもそも、何でイヤホン端子が2つあるBDレコーダーは
ないんだろう?」

と考えが「展開」していきます。

そして、売れるアイディアが出れば、リサーチしてお客様に確認する
わけです。

「達人への道 4」で、以下のように書きました。
☆「こういうのは欲しいですか?」という「こういうの」を考えるの
 がマーケターの役割

☆お客さまに聞くのは、それに対しての「はい・いいえ」(5段階で
 もいいですけど)でしかない

という、「こういうのを考える」瞬間は、上級マーケターには日常的
な作業なんですね。

 

★「つけ麺」を食べながら考えること

上級者は、つけ麺を食べながら(ものの喩えですが、実際に今そうし
ています……)でもアイディアが出ます。

例えば、今「つけ麺」を食べながらこれを書いていたとします。

で……「スープ割りいかがですか?」と聞かれて、「何ソレ?」と尋
るお客様が隣にいます。

私の理解でつけ麺の「スープ割り」を表現すると、

「冷めてしまった付け汁に、熱い出し汁を加え、再加熱し、かつ少し
 薄くして、付け汁を飲んでいただく」

ということです。しかし……

「構造化」ができれば、そんなまどろっこしい説明をせずに、

「そば湯みたいなもんです。そば湯の代わりに出し汁を入れます」

と答えられます。

それは、「スープ割り」と「そば湯」の「構造」が非常に似ているか
らです。
また……つけ麺の味は「ピリ辛スープ」だったのですが……

「ピリ辛味噌」

が、スープに入らずに、分けられて別に出てきました。自分の好みに
応じて、味噌を「自分で」加えて調整する、ということですね。

これを「構造化」すると……

「自分の好みに応じて、自分で好きなように調整する」

という、いわゆる「セルフカスタマイゼーション」の仕組みであるこ
とがわかります。

私は、今あるサイト(売れたま!のサイトなんですけどね)をブログ
で構築中です。あるソフト(と正確にはあるテーマ)を使って、

「自分の好みに応じて、自分で好きなように調整する」

作業をしています。

これは、「本質的には」同じ仕組みであることがわかりますね。

「自分の好みに応じて、自分で好きなように調整する」

というところまで普遍化すれば、

・つけ麺の辛味噌スープを自分で調整する
・ブログのパーツや画面を自分で調整する

ことは「本質的には」同じなんですよね。すると、これは業種業態な
どに縛られずに「展開」できるアイディアになり得ます。

 

★「構造化」できれば、アイディアは無限に出てくる

このような「構造化」に慣れると、つけ麺を見ても、何をしても、
「自分のビジネスに使うとどうなる?」と考えることができます。

何をしても、何を見ても、

☆観察→解釈→構造化→自分への落とし込み

というサイクルが回り、「では自分の場合は?」と考えられるように
なります。私の言葉で言う「マーケティング脳」が活性化された状態
をいつでも維持できるんですね。
先ほどの、「1つのイヤホンを2人で分けている光景」の場合……

食品スーパーの方だったら、同じ光景をみて……

「あれ……これは同じ音楽を2人で分ける、っていう発想か。じゃあ
超大盛りのカップ焼きそば、あれを「家族のオヤツに、子供と分けよ
う」という売り方もできるな……」

と考えるかもしれませんね。
☆観察→解釈→構造化→自分への落とし込み
というサイクルが自然に回るんですね。

すると、アイディアが無限に出てきます。

フツーの人には浮かばないアイディアも浮かびます。これがフツーの
人から見ると「天才的な閃き」に見えるわけです。天才でも閃きでも
なく、「見ているものが違う」だけなんですよね。
ちなみに、上記のイヤホンは、私がいつも思っていることなんですよ
ね……甘いラブソングを2人で一緒に聴きたいカップルとかにはいい
んじゃないですか? え、私自身の体験に基づいているのではないか
って? 残念ながら違います……。あくまでも「観察」からですので
誤解なきように……。
別に、2人で聞くのはラブソングじゃなくてもいいですよ。私のCD
をiPodに落としていただいて、移動中に部下の方と2人で聞いてもい
いわけですから。これも「解釈→普遍化→自分への落とし込み(私の
CDの用途提案)」の1つの例ですよね。

 

★構造化すると、「構造をズラす」ことができる

「同じウォークマンから、1つのイヤホンで音楽を2人で分ける」
「同じレモネードを、2つのストローで2人で分ける」

という「構造」においては、両方とも、2人の「利用時間」は「同
時」ですね。一緒に音楽を聴き、一緒にレモネードを飲みます。

では、さらに2人の「利用の時間軸」を「ズラして」みましょう。

「1つのモノを2人で利用するが、利用時間帯が違う」

という、「時間」をズラした「構造」を考えて見ます。

すると

・別荘の共同利用
・レンタカー(車の共同利用)
・同じパソコンを、ユーザー権限を分けて家族で使う
・製品生産の外部委託(同じ工場を違う会社が分けて使う)

などは、

「1つのモノを2人で利用するが、利用時間帯が違う」

という共通の「構造」を持っていることがわかります。同時に2人で
使えない、という「制約要因」があるために、時間をズラすことで、
「共同利用」を可能にしているわけです。
「構造化」することで、このように「どこを変え、どこを変えない」
という「ズラし」が、意識的・明示的にできるようになります。する
と、それこそ「無限」に「展開」できるようになるんですね。
上級者(正確に言うと、このような構造化スキルに基づく普遍化がで
きる人)は、

「何で知らない業界なのに、そんなにアイディアが出るんですか?」

と言われることが多いはずです。

それは、上記のような考え方ができるからですね。

見え方は違っても、「構造」が同じであれば、他業種の成功事例を
「応用」できるわけです。

一見業種業態が全く違っても、「構造」が同じなら、別の業種で成功
したことが使えることは少なくありません。
すると、

「自分の業種は特殊だ」

と思っている人には及びも付かない業種から、成功事例を持ってくる
ことができるので、「この人は天才か?」と思われる、ということで
す。タネを明かせば単純ですが、「単純」だからと言って「簡単」で
はない、ということはもうおわかりですよね。
恐らく、日本(又は世界)のビジネスパーソンの8割以上の方が、

「うちの業界は特殊だ」

と思っていますが、それはこのような「普遍化」「構造化」ができて
いないことの証です。

 

★文系でも理系でも「構造化」はできる

このような構造化は、理系の方の方が得意なように思いますが、おそ
らくは理系・文系問わずできると思います。

理系と文系の違いは、おそらくは「表現」の問題ではないか、と考え
ています。

例えば「集合論」は、基本的には「数学」で扱われる「学問」の範疇
です。

A∪B:AとBの和集合
・Aに含まれるものとBに含まれるもの全て

A∩B:AとBの共通部分
・AとBの両方に含まれるもの
理系的「表現」(数式による表現)と文系的「表現」(国語文での表
現)という違いはあっても、「考え方」は同じですし、突き詰めれば
同じようなところに行き着くのではないか、と考えています。
集合論は、マーケティングではセグメンテーションにおいて重要な概
念になりますね。競合や顧客が重層的に絡み合うBtoCマーケティ
ングにおいては、このような論理関係を整理するスキルは重要になっ
てきます(私の言葉でいうところの「一貫性」です)。

文系の方でも、緻密に考えられる方は、非常に緻密に考えられます。

本の章立て・見出しを見れば、大体その人の「論理的思考力」はわか
ります。

章立てに、

(A+B) × (C+D+E)

というようなきちんとした構造化ができている著者さんもいれば、
「この人、思いついた順に、気分で書いてるんだろうなあ」という方
もいらっしゃいますね。

私の本については、アナタがご評価してください。

例えば、ベストセラー「図解 実戦マーケティング戦略」は、

(A+B+C+D+E)=F

という「構造」です。A~Eが、BASiCSなどの各ツール(ピラ
ミッドツール)で、Fが最後の事例です。当然最初からこのように計
算して書いているわけです。

逆に言えば、緻密に考えられている本の構成は、このように数学的に
表現できるんですよね。

いわゆるMECE(モレなく、ダブりなく)という文系的な「論理構
成」も、

全体=A+B+C : A,B,Cが「全体」の「部分集合」
 A=a1 + a2 + a3 : a1,a2,a3が、Aのそのまた「部分集合」

と、理系「的」に、数式で表現できますよね。
「表現」の問題はヨコに置き、このような「構造化」は、文系的な方
でも理系的な方でも、練習すればできるようになります。

 

★構造化は、学べるスキル

グッドニュースは、このような「構造化」は、学べば誰でもできるよ
になるスキルです(うまいヘタ、習得の早い遅いはあるにしても、で
す)。つぶやきイメージ、動画イメージよりは学びやすいと思います
ね。

理系の方にとっては、展開方法・アタマの使い方をちょっと変えるだ
けの話なので、より身につけやすいと思いますよ。

ITの方も、プログラミングのフローチャートの「ようなもの」とお
考えいただくと、考えやすいですね。

文系の方にとっては、ちょっとハードルが高いかもしれませんが、誰
でも頑張ればできます。やるか、やらないか、だけですね。

 

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◆普遍化その2:「制約要因」を捉えて、「条件を明確化」する
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普遍化のポイントの「2つめ」は、「条件の明確化」です。

広い意味では、「構造化」の一部と言えなくもありませんが(構造化
するときに、制約要因なども合わせて構造化してしまえばよいので)
見え方が少々違うので、分けて扱うことにします。

 

★中級者は、成功できる場面が限られる

中級マーケターは、

・カリスマ自動車セールスマン
・カリスマ保険販売員
・伝説の中小企業経営者

といったレベルの方々です。

このレベルでも本は書けます。すばらしい実績を残してきているので
講演依頼も多いでしょう。話のうまい方は、研修の講師などもできる
でしょう……

が、その場合、「自分の経験」に依存します。

中級者は

☆自分はこうやったらうまくいった。
   ↓
☆だからいつでも、誰でもそうすればいいんだ

という発想をしてしまいます。いわゆる「一般化の誤謬」(Hasty
Generalization、一般化できないのに一般化してしまう)ですね。

これでは自身の成功体験に囚われてしまいます。大成功の後には、そ
の成功体験に基づきいつも同じことをして、後で失敗を繰り返してし
まいかねません。いわゆる「成功の復讐」をもたらします。

「制約要因」や「成功したときの環境の条件」などを明らかにできて
いないと、こうなってしまいます。

「こういう条件の下では」うまく言った、という「こういう条件」が
見えていないわけです。
ですから……

1)業種業態などの制約要因に縛られる
2)そのまま他人に使えるとは限らない(ヘタすると逆効果)

ということになります。

例えば、差別化軸が変われば戦い方は全く変わりますが、依拠すると
ころが「自分の個別具体的な成功体験」しかないために、差別化軸が
違う、変わった、というときなどに、対応できません。

すると、ある会社ではすごくうまくいっていた人が、会社や業種が変
わると苦戦する、ということになります。
ですから、中級レベルの方が書いた本を読んで、その通りに実行する
のは少々危険です。

前提となる状況が限定された中での成功体験ですから、読者の方で、
一旦それを「普遍化」することが求められます。

単純な話、自分の差別化軸が「密着軸」なのに、「手軽軸」での成功
体験本を読んでその通り実行すると、かえって害悪になるわけです。

これは、あまり語られませんが、結構恐いことですよね。

本を読んで勉強し、すればするほど、うまくいかなくなる、というこ
とすら起きかねません。

ですから「オレはこうやってうまくいった」という類の本(成功した
中小企業経営者や、カリスマ☆☆☆が書かれる本のほとんどはそうで
す)は、「自分と戦略が近い」という限りにおいて、参考にされると
いいと思います。逆に、戦略が違う場合においては、「普遍化」する
ことが必要ですし、その通りにやって成功するとは限りません。
スキーでも、あまりうまくないと、どの斜面においても同じ滑り方を
してしまいます(というか、同じ滑り方しかできないんです)。

斜面(斜度、雪の状態、混雑状況など)が変われば滑り方を変えるべ
きなのですが、同じ滑り方しかできないので……

「斜面を選ぶ」

ということになってしまいます。

例えば、春先で雪が重い状態では、スキーによっかかるような滑り方
でも大丈夫ですが、ツルツルのアイスバーンでそんな滑り方をしたら
すぐ転倒してしまいます。

ある斜面(=ある条件)ではうまく滑れても、斜面(=条件)が変わ
れば、転んでしまうわけです。

私は、スキーがヘタだった頃は(今でもヘタですけど)、この「斜面
を選ぶ」という言葉の意味そのものがわかりませんでした。が、少し
ずつ上達するにつれて(それでもヘタですけど)、やっとわかるよう
になってきました。

 

★上級マーケターは「条件を明確化」できる

上級マーケターは、中級時代に

「条件が変わったために、自分の成功体験が通用しない」

という体験を何回もしています(上級者の特徴の1つが失敗の数の多
さです。全く失敗していない人が上級者であるはずはありません)。
「自分の成功体験は、限られた条件下でしか通用しなかったんだ…」

ということを骨身に染みて覚えさせられる失敗体験をしてきているわ
けですね。

上級マーケターが中級マーケターだった時代に、「カリスマ☆☆」と
もてはやされて、ある意味「天狗」になる時期もあったでしょう。し
かし、「それが通用しない」という、「天狗の鼻を折られた」ような
体験もしているわけです。

そのような「成功」「失敗」を繰り返して……

「一体何でなんだろう? 何であのときは成功して、このときはうま
 く行かなかったんだろう?」

と考えます。

すると……

「そうか、あのときは、「このような状況において」、こうしたから
成功したんだ。こういう条件下における成功体でしかなかったんだ」

と気づくわけですね。

つまり、自分の成功を、「限定された状況において」捉えられるよう
になるんです。
うまいスキーヤーも、「こういう斜面だから」こう滑ったらうまく滑
れたという「条件の明確化」ができます。そして、斜面に合わせて、
滑り方を変えていくわけです。
例えば、「中級者」以下の方は、「自分の成功は、会社のカンバンが
あってこそ」ということに気づいていない可能性があります。もしく
は、ある戦場においては、たまたま自分の強みが活きたけれども、戦
場が変わったらその強みは活かせない、ということもあるかもしれま
せん。

すると、成功体験をひっさげて、意気揚々と独立しても、実は自分の
成功の「条件」が、「会社のカンバンと製品力だった」であれば、独
立してもうまくいきません。「こんなはずでは……」と、なってしま
うんです。
中級者は、

☆自分はこうやったらうまくいった。
   ↓
☆だからいつでも、誰でもそうすればいいんだ

と考えてしまいます。
上級マーケターは、
☆自分はこのとき、こうやったらうまくいった。
   ↓
☆それは、こういう競合状況で、こういう顧客に対して通用した
   ↓
☆今回は、ああいう競合状況で、ああいう顧客だから、ここは同じだ
 けど、ここは違う。だから、この部分はあてはまらない

という、「条件の明確化」ができているんです。制約要因も明らかに
できています。

だから、

「今回は状況が変わった。オレの成功体験は通用しないどころか、害
 になる。この状況での成功体験を持っている人は誰だ?」

と考えることができます。

また、自分の「成功体験」を使う場合も、一旦「条件を明確化」した
上で、話したり、使うことができます。
自分の成功体験を、

☆こういった制約条件のもとで、
☆こういう構造のときに、
こうしたら成功した、と考えられます。ですから、「何が何でも、ど
んなときでもこうすれば成功するんだ」ということにはなりません。

逆の言い方をすれば、「過去の成功体験が必ずしもあてはまるわけで
はない」ということをわかっています。
よく、「営業は足で稼げ」と言う方がいらっしゃいますが、多くの場
合は、これは、お客様が次々に生まれてくる、という「成長経済」と
いう条件においての成功体験です。

当然、現在は「条件」が変わっているので、通用しないことば多いの
ですが、それでも「オレの時代はなあ……」と営業のトップがやって
しまうわけですね。

自分が成功したときの「条件が明確化」できていれば、「オレの時代
は……」という発言は出てこないはずですね。

 

★中級レベルで独立するときは、「賞味期限切れ」に注意

ここから、中級レベルで独立するときには、少々注意しなければいけ
ないことがわかります。

中級者は、「普遍化」ができていないことはないでしょうが、まだ完
全ではないために、

「自分の成功体験」

しか売り物がなく、それが特定の条件下でしか通用しないことに、気
づいていないからです。

よくあるのは、「☆☆☆社の成功法則」みたいな本を書いて、☆☆☆
社の名前の「威を借りて」独立するようなパターンです。それから、
「こうやったら☆☆☆万円儲かった! ××の絶対法則!」のような
まさに「特定条件下での成功」に頼ったノウハウを売り物にする場合
も同じです。

しばらくは売れるかもしれませんが、その成功体験の「賞味期限」が
切れてしまうと、売り物がなくなってしまいます。

中級レベルで独立することは、数年間は稼げる、という意味では十分
に可能です。しかし、その賞味期限の間に、「普遍化」スキルを磨き
あげて、「上級」にステップアップすることが必要です。

賞味期限は、長くても「数年間」でしょうから、その間に必死で頑張
って「上級」にならないと、あっという間に自分が「陳腐化」してし
まいます。

本を1、2冊出してそれっきり、というような場合は、中級で止まっ
てしまい、「普遍化」のカベが越えられなかった、ということも多い
ように思います。

逆に、上級マーケターは、「普遍化」できますから、本のネタなんて
いくらでもある、ということに気づくんですね。
ここまでをまとめますと、普遍化のポイントは、

☆構造化
☆条件の明確化

です。
「観察」→「記録」→「解釈」→「普遍化」

と進んできました。
普遍化ができるようになると……☆☆☆から自由になります。それは
一体……?

 

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◆今日のまとめ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★上級マーケターは、見たモノを「解釈」し、「普遍化」できる。
 「構造化」と「条件の明確化」を習得しよう!

 

 

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━戦略編Vol.210 2011/08/08
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

★上級者は「業種業態」の呪縛から解放される! 上級者に近づくた
 めに、自分の成功・失敗を「普遍化」して整理しよう!
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◆復習:達人マーケターへの道
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★達人マーケターへの成長の道のり

達人マーケターになるには、段階を踏みます。この「段階」が、順序
通りとは限りませんし、全員の方にあてはまるとも限りません。限ら
れた私の経験と察に基づく「独断と偏見」で、異論もあるでしょう。
自分が「達人マーケターだ」と言うつもりもありません。

笑って受け流せる方は、ぜひお読みいただければと思います。

 

★入門者:作りたい物を作り、売りたい物を売る

「お客さま視点」という意識が無いまたは実践できていないレベル。

☆「こんなの作りたいな」という開発担当
☆「安くしますので、買ってください!」 という営業担当
☆「これ仕入れたけど、誰に売ろうか?」という仕入担当
☆「この商品の性能はすごい!」と書く商品カタログ制作者

全体の6~7割の方はこのレベルです。

 

★初級マーケター:「自分がお客様だとして」のお客様視点

ここから「マーケター」です。お客様視点があり、営業・販促企画・
商品開発などの「成功者」。職場でも指導的立場者です。ただ、

☆自分が欲しいモノ=お客様が欲しいモノ

という前提を無意識のうちにおくため、判断基準が「オレ」もしくは
「自分のアタマの中にいる幻想の顧客像」になってしまいます。

全体の2~3割の方がこのレベル、つまりほとんどの方は初級以下。

 

★中級マーケター:一流マーケター

ここからは「一流マーケター」です。カリスマヒットメーカー、伝説
の営業マン、と呼ばれ、本を出しているような方々です。
このレベルの方々は、

☆お客様視点を持ち多義が、どうやっても自分はお客様にはなれない

と悩み抜き、

☆お客様に聞かないと、お客様を見ないとわからない

という「開き直りの境地」にたどり着きます。仮説を立て、お客様に
確認、というサイクルを数千回繰り返し「一流」になります。
全体の数%(あるいはそれ以下)の方がこのレベルです。

 

★上級マーケター

「天才」と呼ばれる領域です。実は努力の結果なのですが、初級・中
級の方から見ると「雲の上の存在」です。難しいことをカンタンにや
るので、入門レベルだとそのすごさがわかりにくいです。

「万能」ではありませんが、マーケターとして理想的なスキル・態度
の多くを兼ね備えている存在です。

恐らく日本には数千人いるでしょう。数千~数万人に1人ですので、
上級マーケターに職場で直接教えを受ける機会は、まずありません。
初級レベルの方でも、上級マーケターのスキル・考え方の一部は「自
分もやってる」というものがあるはずです。それについては上級レベ
ルに達しているので、「強み」として活用・育成していきましょう。

 

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◆上級マーケター:「観察結果」を「解釈」できる
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★前回の復習

ここまで、上級マーケターは

☆日常を「観察」し「記録」する
☆「記録」したことを「解釈」して意味づけできる
☆その「解釈」を構造化したりして「普遍化」できる

ということを見てきました。

「観察」→「記録」→「解釈」→「普遍化」

ですね。

 

★上級マーケターは「普遍化」する

普遍化、とは

「ある状況において適用できたことを、他の状況においても適用でき
 るようにすること」

です。当たり前のことですが、大事なことです。
中級者は、

☆自分はこうやったらうまくいった。
   ↓
☆だからいつでも、誰でもそうすればいいんだ

と考えてしまいます。

上級マーケターは、

☆自分はこのとき、こうやったらうまくいった。
   ↓
☆それは、こういう競合状況で、こういう顧客に対して通用した
   ↓
☆今回は、ああいう競合状況で、ああいう顧客だから、ここは同じだ
 けど、ここは違う。だから、この部分はあてはまらない

という、「条件の明確化」ができているんです。制約要因も明らかに
できています。

その普遍化のカギは

1)構造化 : 形式的に表現できる
2)条件の明確化 : 成功・失敗時の条件・制約要因が定義できる

です。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆上級マーケター:業種業態のくびきからの解放
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★「普遍化」能力で、業種業態のカベを越える

自分の、あるいは他人の成功体験を「普遍化」できるようになると…

お気づきの通り、業種業態のカベを越えられます。

前号の、「1つのモノを2人で利用するが、利用時間帯が違う」

という「構造」も、

・別荘の共同利用
・レンタカー(車の共同利用)
・同じパソコンを、ユーザー権限を分けて家族で使う
・外部生産委託(同じ工場を違う会社が分けて使う)

と、売り物やBtoB・BtoCなどに関わらず、同じ構造ですね。
中級マーケターだと、まだ業界を選びます。成功できる業種が限られ
るんですね。ですから、転職・独立して成功できるかどうかは「運」
(正確に言えば自分の成功要因が活きるかどうか)次第です。

上級マーケターは、業界を選びません。もちろん得意不得意や好き嫌
いはあるかもしれませんが、ある程度、どんな業種業態でも通用しま
す。

それは、「普遍化」スキルを持っているからですね。

 

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◆上級マーケター:普遍化して、「体験」を「体系化」できる
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★「構造化」は、「ハコ」を描くこと
ここで、上級マーケターの「思考プロセス」を追ってみましょう。

普遍化に必要な「構造化」とは、「空白のハコ」を描けるようになる
ことと言えます。
前号の

「電車の中では、カップルで1つのウォークマンに刺した1つのイヤ
ホンを、片耳ずつに分けて耳につけている人たち」

の場合も、3つのハコを描けるわけです。

  ウォークマン
    □      
   ↓ ↓
  □   □
  男性  女性

ハコさえ描ければ、その中に入るモノは、業種業態を問いません。

理系的な表現では、ハコは「変数」となるかもしれませんね。

 5=3+□  ← ハコの中身はいくつか?
 5=3+x  ← xはいくつか?

と言うことです。□は、この場合「変数」ですよね。
ハコを描く例として、リクルートの「ホットペッパー」について考え
てみましょう。

ホットペッパーのビジネスを文字で表現すると、

「リクルートが、地域の飲食店の広告を有料で集めて、無料雑誌とし
 消費者に無料で配布する」

ですね。

 お金の流れ:消費者 → 飲食店 → リクルート
 情報の流れ:飲食店 → リクルート → 消費者

となります。
普遍化のポイントは、

1)構造化 : 形式的に表現できる
2)条件の明確化 : 成功・失敗時の条件・制約要因が定義できる

でした。

まずは「構造化」です。

ホットペッパーをテキスト文で強引に「構造化」すると、

   リ  ク  ル  ー  ト
     ↑       ↓
   広告出稿     無料誌配布
  飲食店(広告主) ← 消 費 者
        来店・飲食

となります。

ここで、ハコは3つある、というのがこの「構造」のポイント
です。リクルート、飲食店(広告主)、消費者、の3つです。

通常の取引だと、ハコは2つです。

     販売
      →
売り手 □ ← □ 買い手
     購入

ですね。ここにハコを1つ加えた構造にして、新しいビジネスを作り
出したわけです。
次に、これが成立する「条件」を明確化しましょう。条件は、3者そ
れぞれにメリットがあることです。

・リクルート:広告が売れる
・飲食店(広告主):お客様が来る
・消費者:無料で情報がもらえる

ということですね。
となると、ホットペッパーの「構造」を文章で表現すると

☆売り手と買い手に、新たにプレーヤーを加えてそれぞれのメリット
 を作りだすことで、新たなビジネスを作る

ということになります。

 

★ハコを描ければ、他業種でも使える

ホットペッパーのビジネスモデルをここまで「普遍化」すれば、業種
業態を越えて使えるようになります。

例えば、売れたま! 2010年10月18日配信号は、

「テンポリノベーションの業態パッケージ」

です。

「テンポリノベーション」は、飲食店などの物件の仲介をする会社で
す。
その会社が、「飲食店を開きたい人」に、「繁盛店」のノウハウなど
を教えて、開業を手伝う。開業のときは、テンポリノベーションの物
件を使う
というのが「業態パッケージ」です。

一見「ホットペッパー」とは全く違うように見えて、

☆売り手と買い手に、新たにプレーヤーを加えてそれぞれのメリット
 を作りだすことで、新たなビジネスを作る

という意味では全く同じです。
繁盛店のメリットは、ロイヤルティなどのお金が入ることと、自社の
素材を使う量が増えるので、仕入のボリュームディスカウントが狙え
ることです。
    テンポリノベーション
     ↑       ↓
   物件利用      仲介
  飲食店開業者  ←  繁盛店
       繁盛ノウハウ
これが成立する「条件」であるところの、3者それぞれにメリットが
ある、という点では、

・テンポリノベーション:物件が売れる
・繁盛店:ロイヤルティなどのお金が入る、ボリュームディスカウント
・飲食店開業者:繁盛店のノウハウが手に入る

となります。

 

★ハコが描ければ、業種業態を越えられる

このように「普遍化」ができれば、「ホットペッパー」と「業態パッ
ケージ」の、それぞれになされている工夫やノウハウを、相互に取り
入れやすくなりますね。

ハコを描いて、成功条件・制約要因を明確にすることで、色々な業種
業態の事例を「相互にやりとり」させるわけです。

イメージとしては、ハコを描いて、ハコの中身を色々「書き換える」
ような感じですね。すると、ある業種業態での成功・失敗体験を、業
種業態を越えて使えるようになるわけです。
これが、マーケターの1つのあるべき姿、だと個人的には思います。

ビジネスパーソンとしては「転職しても、自分の経験が活かせる」と
いうような割と直接的なメリットもあります(が、皮肉なことに、上
級者は「職」を気にする不安は既にないんですよね……どこに行って
も通用するので)。
マーケターとしての極めて大きなメリットは、「他業種から学べる」
ことだと思います。

世の中には、成功体験も失敗体験もあふれています。
・そのときの制約要因や条件を明確化したうえで
・体験を構造化
をすることができれば、他業種の先進的な知見を自業種に取り入れる
ことができます。

これは、やりかた次第では大きな競争優位になります。
逆に、ハコが描けない(=構造化できない)と、「うちの業種業態は
特殊だ」と考えてしまうわけです。

「うちの業種業態は特殊だ」と考えている人は、「構造化」ができて
いない、ということです。
例えば、医薬品業界の方は、よく「うちの業界は特殊だ」とおっしゃ
います。その理由を伺うと、多くの場合は

1)薬事法など法律の規制がある
2)医者を通して売るので、患者に直接売れない

ということです。

が……実は、この2つは、ガムを売る場合も同じです。

1)薬事法など法律の規制がある

ガムでも薬事法の規制は受けますね。「眠気覚ましガム」という表現
は、薬事法でNGになります。
2)医者を通して売るので、患者に直接売れない

これは、ガムでも同じです。コンビニやスーパーを通して売るので、
消費者に直接売れません。

これをハコにすると

 売り手  →  □  →  最終消費者
       医者・病院
      コンビニ・スーパー

となります。真ん中のハコの中身が「医者」になるか「コンビニ」に
なるか、だけの違いです。

というか、消費財では、エンドユーザーに直接販売している方がむし
ろ少ないと思います。
つまり、「特殊だ特殊だ」という医薬品業界も、ガムのマーケティン
グも、「普遍化」してみるとそう大きな違いはない、ということにな
ります。
そして、「うちの業界は特殊だ」と思った瞬間に、他業種から学べな
くなるので、すごく「損」だと思います。

 

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◆上級マーケター:意思決定プロセスの「構造化」
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★意思決定プロセスを「構造化」できている

「構造化」という意味では、「お客様の考え方」(=意思決定プロセ
ス)も「構造化」することができます。
例えば、「知って、買って、使って、気に入る」というマインドフロ
ーの基本プロセスは、どんな業種業態でも一緒ですよね。それぞれの
プロセスごとに「ハコ」があるイメージです。

 □ ← 知る
 □ ← 買う
 □ ← 使う
 □ ← 気に入る
この「ハコ」の中身は業種業態によって違うにしても、「知って、買
って、使って、気に入る」という「ハコ」は、業種業態を越えて使え
るわけです。
達人マーケターへの道 2 で、優れたマーケターは自分の感覚を
「相対化」して、「モノサシ」として使う、というお話をしました。

復習しますと……

初級マーケターは、

「この料理は酸味が強い。オレは酸味キライだからダメ」

と判断します。

中級マーケターは、そうではなく、

「この料理の酸味の強さは5段階評価で言うと、3の強さだ。オレの
 好みは2くらいの強さだが、そんなことはどうでもいい。今回のタ
 ーゲット顧客なら、むしろ4くらいの酸味を好むはずだ。だから、
 酸味をもっと強くしろ。オレはそんなのキライだけどね」

というような判断をするわけです。
ここまでが、「達人マーケター 2」の内容です。

上級になってくると、多種多様なモノサシを持ちますし、必要とあら
ば、モノサシ自体を作り出すことができます。

それは、このように、「意思決定プロセス」を「構造化」できている
からなんですね。
「要は意思決定プロセスなんだよね」

と上級者は言いますが、その一言のウラには、痛い目に遭ったことを
含む、膨大な経験の蓄積に基づく「構造」を持っている、ということ
ですね。
先ほどのマインドフロー的な意思決定プロセスの「構造」でも

「結婚式の購買のロジックと、工場が部品の供給先を決めるときのプ
 ロセスは同じだよね。ハコの中身が違うだけで」

ということに気づきます。

        結婚式場決定   工場の部品供給先決定

候補者選択   数会場を選ぶ    数社の候補を選ぶ
 ↓
見積もり    見積もり      見積もり
 ↓
比較検討    会場を見回る    工場で生産テスト
 ↓
意思決定者   新郎新婦と     稟議書を社内で
間での相談   両親で相談     回す
結婚式場の意思決定プロセスと、工場の部品供給先の意思決定プロセ
スが非常に似通っていることがわかるのは、上級者は「構造」を捉え
ているからです。
結婚式場を決める場合でも、部品供給先を決める場合でも、最初に、
10前後の候補をリストアップし、スペック・性能・立地条件などで
で3~4まで選び、その中で見積もりを取り、精査して決める、とい
うのは同じであることが多いです。

見積もりを取る時点では、3~5くらいに絞られるのは、結婚式場で
も部品供給先でも同じです。それは、人間は「135の中から理論的
に決める」という意思決定はしないからです。

その意味で、ある業種の「モノサシ」は、意外に他の業種でも使えた
りするんですよね。
意思決定プロセス自体は、人間のやることですから、色々な場合にお
いて共通しています。

すると、

「あっちで使ったモノサシをこっちで使う」

という、業種業態を超えた、「離れ業」(と回りからは見える)を使
えるわけですね。

「知らない業界なのに、何でわかるんですか?」

と上級者は言われますが、それはこのような「人間の意思決定プロセ
スは、業種業態を越えて似ているものだ」ということを知っているか
らなんですね。

 

★他業種がわかれば、自業種の特殊性がわかる

「うちの業種が特殊」という意見が正しい場合ももちろんあります。

ただ、「どこが特殊なのか」は、他業種を知らなければわかりません
よね?

「うちの業種が特殊」という方は、意外に他業種のことを知らないん
ですよね……。他業種を調べ尽くした上で、「うちは特殊」というの
ならわかりますが、「単なる思い込み」で「うちの業種は特殊」とい
う方が多いです。

上級マーケターは、色々な業種を知っており、それを「普遍化」でき
ているので、その業種のどこが本当に特殊で、どこが一般的なのかも
わかりますね。

 

★中級に進むためには、「うちの業種は特殊」を捨てよう
「業種業態の特殊性に対する認識」をレベル別に表すと、こうなるの
ではないでしょうか。
入門者:自分の業界のことしか知らないので、そもそもわからない
初級者:うちの業種は特殊だと強く思っている
中級者:ひょっとしてうちの業種は特殊ではないのではないか?
上級者:業種業態は関係ない
入門者の方が、むしろ柔軟な態度を持っています。例えば新入社員さ
んなんかは、別に「うちの業界は特殊だ」と思ってません。その後、
配属先で「洗脳」されて、「うちは特殊だ」と思うようになっていく
わけです。

それは、職場のリーダーであるところの初級者の方が「うちの業種は
特殊だ」と思っていることが多いからですね。初級者の方は、ある程
度「オレの経験」で成果を出しているので、そのような感覚に囚われ
やすいようです。
中級になってくると、ある意味その業種業態でのマーケティングや営
業を「極めた」状態になってきます。「極める」につれて(本当に極
めることは、永遠に無いように思いますが)、「あれ? うちの業界
って特殊じゃないのではないか?」と、自分の思い込みに疑念を持つ
ようになってくるでしょう。一流マーケター同志で話したりすると、
同じコトを言っていたりするからです。そして上級と進むにつれて、
「うちの業種は特殊だ」という感覚は薄れていきます。それは、「相
対化」「普遍化」ができるようになってくるからですね。

逆に言えば、初級→中級へと進む際の1つのポイントが「うちの業種
は特殊」という思い込みを軽減できるかどうか、ですね。

 

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◆上級マーケター:「普遍化」して「引き出し」に整理する
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さて、ここからは、どうすれば「上級マーケター」に近づいていける
のか、考えていきましょう。
★ハコの中身を埋めて、「体験」を「体系化」

上級マーケターは、このような「ハコ」を描いて構造化し、自らの、
あるいは他人の経験を整理していきます。それによって、「ハコの埋
め方」がわかっていくんですよ。

アタマの中の「引き出し」に整理していくイメージですね。

そして、このような「アタマの中の引き出しへの整理」は、上級者だ
けでなく、誰でもできます。

 

★ビジネス日誌を取ろう!

アタマの中の「引き出し」に整理していく際に、考えるだけでは忘れ
ますので「記録」することを強く強くお勧めします。
私が強く勧めるのが「ビジネス日誌」です。自分の体験、そのときに
考えたことなどを細かく記録に残しておくわけです。

紙でも何でも構いませんが、後で見やすい形式にしておくのがポイン
トです。

私は、色々試した末に、結局は「テキストファイル」として、電子的
に記録することにしました。仕事上の記録は、数年分のテキストファ
イルの上にどんどん足していきます。検索も加工もラクですので、そ
うしています。「紙」「ノート」がお好みの方は、それでも構いませ
ん。好き好きがあるでしょうから。とにかく「記録」しておくことが
カギです。
人間は忘れる生き物です。せっかく貴重な体験をしても、忘れてしま
うんです。記録しておけば、あとで「棚卸し」して「普遍化」するこ
とができるんですよね。
逆に、「書く」ことができれば、それは忘れてしまって良いんです。

ちなみに、私が「売れたま!」や「本」を書く理由の1つがそれなん
です(もちろん、第一義的な理由は読者さんのため、ですよ)。私は
「忘れるために書く」んですよ……。

本にしてしまえば、忘れてもそれを読めばいいのです。実際、昔の本
や売れたま!を読み返してみると、「なんだこれ、恥ずかしい」と思
う部分もありますが、「これ、すごいな。忘れてた」と思う部分も結
構あったりします。

 

★成功体験を「普遍化」して「引き出し」に整理しよう!

そして、そのような「体験」を引き出しに整理するわけです。特に、
「成功体験」「失敗体験」は整理しておくと良いです。

ここでいう「整理」が、「普遍化」ですね。

私は、大分前の仕事の成功・失敗を覚えていて、今でも「今、私があ
の立場にいたらどうするだろうか?」と考えを巡らせたりします。こ
れは、「リアル」ですし、いい練習になりますよ。
「成功」「失敗」の、規模の大きさは問題ではありません。というか
どうでもいいことです。

100円の売上でも、100万円の売上でも、100億円の売上でも
量的には違うでしょうが、質的には同じです。

小さい成功体験で構いません。それを「記録」すれば、血肉になりま
すし、大きな成功体験でも、忘れてしまってはそれっきりですね。

逆に、回りからは「失敗」と見られない小さなミスでも、それを失敗
としてきちんと振り返ることができれば、自身の成長につなげられま
すね。
成功・失敗体験を普遍化して整理するときのポイントは、2つありま
す。

まず、できるだけ詳しく書くことです。書いている当時は当然のよう
に覚えていることでも、後で読み返すと「あれ? これ何だっけ?」
となるからです。

もう1つは、当然「普遍化」です。詳細に書いた後で、それを「普遍
化」するわけです。

「普遍化」のカギは2つありました。

1)構造化 : 形式的に表現できる
2)条件の明確化 : 成功・失敗時の条件・制約要因が定義できる

構造化については、ここまで見てきた通り「形式化」することです。

条件の明確化は、

「このときはこうだったから、うまくいった/いかなかった。状況が
 変わった今回は、こうだろう」

と考えることですね。「状況別」に整理しておけば、「状況」が変わ
っても、対応出来ます。

業種業態を越えて使えるようにもなります。

繰り返しますが、「普遍化」しないと、「成功体験」をそのまま使う
ことになります。するとその成功体験に囚われて、「成功の復讐」と
なりかねませんので、「普遍化」することは非常に重要です。
中級レベルだと、どんな素材が出てきても(どんな状況でも)
・千切りしかできない
・みじん切りしかできない

わけです。上級レベルになると、素材によって調理方法を変えられま
す。状況に応じた対応ができるわけです。
で……その「状況」を整理する便利なツールがあればいいんですけど
ね……残念ながら……
あるんですね、これが!(笑)

そう! 戦略BASiCS、マインドフロー、3つの差別化軸などの
ツールです!

それぞれの成功体験の状況を、BASiCS、マインドフロー、3つ
の差別化軸などで整理すればいいんです。

もちろん、私もそうしています。売れたま!では、数百の成功事例の
蓄積がありますが、それらはBASiCSなどの「構造」で整理され
ていますので、「いつでも取り出して使える」状態になっているんで
すね。

 

★BASiCSなどのツールで成功体験を整理しよう!

BASiCS、マインドフロー、3つの差別化軸などは、既に構造化
されており、その有効性が(ある程度は)実証されたツールです。

ですから、まずはこれらのツールを使って整理することを勧めます。
例えば、広告の内容を変えたら、売上が上がった、という成功体験の
場合は、

「広告のメッセージを変えれば売上が上がる」

という成功体験の整理ではダメです。

すると、うまく行かなくなったときに「広告のメッセージを変えれば
いいんだ」という、「いつでもみじん切り」になってしまいます。

メッセージ「だけ」を変えて売上が上がる、という場合、「製品が差
別化されている」という前提があるはずです。製品が差別化されてい
ないのに、メッセージ「だけ」を変えても、効果は薄いですよね。製
品力がない場合は、製品力改善がメッセージ改善よりも順序としては
先に来ます。
ですから、そのときの状況や課題を、戦略BASiCS、マインドフ
ローなどで整理しておき、

☆ここが課題だったから、ここをこうしたらうまく行った

という整理の仕方をすればいいんです。

それによって、BASiCSやマインドフローを使うチカラもどんど
ん上がっていきますね。
「3つの差別化軸」による整理もいいですね。差別化軸が違う成功体
験の自社への導入は、無意味どころか、逆効果にすらなりますから、
気を付ける必要があります。

例えば、成功事例の本を読んだときも、

「これは手軽軸の成功事例。こっちは密着軸の成功事例。分けて整理
しないと混乱するから、分けておこう」

と考えればいいんですね。
このような「整理」をすることによって、自分の成功・失敗体験がど
んどん普遍化されていき、業種業態を越えて使えるようになっていく
わけです。
BASiCSやマインドフローは「成功体験を普遍化されて作られた
ツール」ですから、成功体験の整理にはもってこいですね。

その「整理」の事例しては、売れたま!はそれなりによくできている
かと思っています。他業種の事例を、BASiCSやマインドフロー
などで「普遍化」した上で、紹介しているわけですね。
まずは各ツールの基本的な使い方をお知りになられたい、という方に
は、冒頭のセミナーがお勧めです。
詳細・お申し込みはこちらから!
http://www.marken.co.jp/marken_seminar/2011/09/post_280.shtml

 

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◆今日のまとめ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★上級者は「普遍化」によって、業種業態のくびきから解放される。
 まずは、自分の成功・失敗体験を普遍化しながら整理しよう!

 

 

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━戦略編Vol.211 2011/08/11
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

★上級マーケターは、自ら理論を作り出せる。理論の検証能力を持て
 ば、「権威」的な理論からは「自由」になれる!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆復習:達人マーケターへの道
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★達人マーケターへの成長の道のり

達人マーケターになるには、段階を踏みます。この「段階」が、順序
通りとは限りませんし、全員の方にあてはまるとも限りません。限ら
れた私の経験と察に基づく「独断と偏見」で、異論もあるでしょう。
自分が「達人マーケターだ」と言うつもりもありません。

笑って受け流せる方は、ぜひお読みいただければと思います。

 

★入門者:作りたい物を作り、売りたい物を売る

「お客さま視点」という意識が無いまたは実践できていないレベル。

☆「こんなの作りたいな」という開発担当
☆「安くしますので、買ってください!」 という営業担当
☆「これ仕入れたけど、誰に売ろうか?」という仕入担当
☆「この商品の性能はすごい!」と書く商品カタログ制作者

全体の6~7割の方はこのレベルです。

 

★初級マーケター:「自分がお客様だとして」のお客様視点

ここから「マーケター」です。お客様視点があり、営業・販促企画・
商品開発などの「成功者」。職場でも指導的立場者です。ただ、

☆自分が欲しいモノ=お客様が欲しいモノ

という前提を無意識のうちにおくため、判断基準が「オレ」もしくは
「自分のアタマの中にいる幻想の顧客像」になってしまいます。

全体の2~3割の方がこのレベル、つまりほとんどの方は初級以下。

 

★中級マーケター:一流マーケター

ここからは「一流マーケター」です。カリスマヒットメーカー、伝説
の営業マン、と呼ばれ、本を出しているような方々です。
このレベルの方々は、

☆お客様視点を持ち多義が、どうやっても自分はお客様にはなれない

と悩み抜き、

☆お客様に聞かないと、お客様を見ないとわからない

という「開き直りの境地」にたどり着きます。仮説を立て、お客様に
確認、というサイクルを数千回繰り返し「一流」になります。
全体の数%(あるいはそれ以下)の方がこのレベルです。

 

★上級マーケター

「天才」と呼ばれる領域です。実は努力の結果なのですが、初級・中
級の方から見ると「雲の上の存在」です。難しいことをカンタンにや
るので、入門レベルだとそのすごさがわかりにくいです。

「万能」ではありませんが、マーケターとして理想的なスキル・態度
の多くを兼ね備えている存在です。

恐らく日本には数千人いるでしょう。数千~数万人に1人ですので、
上級マーケターに職場で直接教えを受ける機会は、まずありません。
初級レベルの方でも、上級マーケターのスキル・考え方の一部は「自
分もやってる」というものがあるはずです。それについては上級レベ
ルに達しているので、「強み」として活用・育成していきましょう。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆前回の復習
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
上級マーケターの思考プロセスは、

「観察」→「記録」→「解釈」→「普遍化」

となることをここまで考えて来ました。
前回、上級マーケターは、「普遍化」できるからこそ……

・業種業態を越えられる
・普遍化して整理された「成功・失敗体験データベース」を持つ
・体験や「モノサシ」を業種を飛び越えて使う

ことができる、ということを見てきました。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆上級マーケター:理論を自ら作り出せる
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★「普遍化」できるから、「理論化」できる。

「観察」→「記録」→「解釈」→「普遍化」

の最後は

「理論化」

です。

「観察」→「記録」→「解釈」→「普遍化」→「理論化」

となり、これでこのプロセスが完了します。
上級マーケターに、

☆理論構築力
☆言語化能力

が伴うと、「理論」を構築できるようになります。実戦経験に基づい
た、「独自の理論」ですね。

色々な体験を業種業態を越えて「普遍化」し、その「構造」を考える
ことによって、業種業態に関わらず、「ビジネスの構造」というのは
それほど変わらない、ということに気づくわけです。

その構造を論理的に整理し、さらに洗練させることによって「理論」
にするわけです。

理論化とは、いわゆる「フレームワーク」(考え方の枠組み)を作る
能力ですね。戦略BASiCSやマインドフローは、このような「フ
レームワーク」の典型ですね。
例えば、前回とりあげた「ホットペッパー」や「テンポリノベーショ
ン」の例も、この「フレームワーク」の1つです。
再掲しますと、

☆構造:プレーヤーが売り手、買い手に1人加えた3者

   リ  ク  ル  ー  ト
     ↑       ↓
   広告出稿     無料誌配布
  飲食店(広告主) ← 消 費 者
☆成立する条件:3者それぞれにメリットがあること

・リクルート:広告が売れる
・飲食店(広告主):お客様が来る
・消費者:無料で情報がもらえる
というフレームワークです。

私は、これを「3-winトライアングル」と名付けて、よく使って
います。売れたま!での初出は、2004年10月4日号と、7年近
く前のことです。
この「理論化」能力(=フレームワーク構築力)は、中級から上級に
上る上での、非常に大きなカベになります。

さらに言えば、「上級」の中でも、上級の「上」の方(達人に近いレ
ベル)と、上級の「下」の方を分けるカベになります。
理論構築力、言語化能力の巧拙がそのまま、フレームワークの巧拙に
なるわけですね。

当然レベルの高い人ほど、良いフレームワークを作れる、ということ
になります。

良いフレームワークとは、

・論理的に強固(モレ・ダブりなどがない、矛盾がない、など)
・実践で検証されている(使って見て違和感が無い)
・わかりやすく、納得感がある

などの条件を満たしたフレームワークですね。SWOT分析などは、
「わかりやすく、納得感がある」という3つ目の条件は満たしていま
すが(だからみんな使うのでしょう)、論理的には相当脆弱(強み弱
みの分類が恣意的)ですし、実践としても難しい(実際に使うと、違
和感が大きい)フレームワークです。
中級者は、職場では現実的には「先生」という存在です。

そして、上級は、「先生の先生」です。

現実レベル・実務レベルでの「トップレベル」である「中級マーケタ
ー」は、上級マーケターの本を読んだり、教えを受けて、そのフレー
ムワークを学び、実践して、現場で結果を出すわけですね。

 

★「理論化」プロセスの例
「観察」→「記録」→「解釈」→「普遍化」→「理論化」

の思考プロセスの例を、1つ取り上げてみましょう。実際にはこんな
に単純ではありませんが、まあこんな感じかと思います。
あくまでも「例」ですよ。

スタバでエスプレッソを飲んでいる「上級マーケター」か「達人」が
いたとしましょう。あくまでも「仮に」です。
イタリアのバールでみんなが頼むのは「エスプレッソ」です。上級と
もなると、好奇心旺盛ですので、好きなものについては本場(この場
合はイタリア)に飲みに行くくらいのことはします。

しかしスタバでは、エスプレッソを飲んでいる人は誰もいません。そ
の「違和感」を上級者は鋭く関知し、「観察」「記録」をすることに
します。「観察」「記録」しているとわかりますが、スタバで100
人オーダーしたとして、エスプレッソを頼む人は1人いるかどうか、
くらいです。不思議なことに、店内に掲示されているのメニューボー
ドに、「中核メニュー」であるはずの「エスプレッソ」は載っていな
いんですよ。
このあたりからアタマが回転しだして「解釈」を始めます。

スタバの人気メニューは、「カプチーノ」や「ラテ」です。カプチー
ノも、ラテも、実はエスプレッソが入っているいわゆる「エスプレッ
ソビバレッジ」です。
これを「解釈」するとどうなるかというと……

つまり「エスプレッソ」という中核ドリンクを「とっつきやすく」し
た商品が、「カプチーノ」「ラテ」だということですね。そして、多
くの人が頼むのが、この手の「エスプレッソビバレッジ」なんですよ
(カプチーノ、ラテ、カフェモカ、キャラメルマキアートなど)。
そしてこれを「普遍化」すると……

中核メニューを、とっつきやすいメニューでオブラートにくるんでい
るわけですね。そして、それに慣れていくことによって、徐々に中核
メニューへと誘導しているわけです。
これを「理論化」すると……

まずは、入り口の商品として、とっつきやすい商品を用意しよう、と
いうことになります。

しかし、「マニア育成」のためには、中核商品に慣れていただく必要
もあります。
その2つの目的を同時に解決するために、カプチーノように、「中核
商品をオブラートにくるんだような、とっつきやすい商品」を作れば
いいのではないか、と考えます。

そのような商品の条件は、

1)とっつきやすく、ビギナーに道を開く
2)本格(マニア)商品への導入になる

ことですね。

この着想を得たのは「カプチーノ」からなので、それを「カプチーノ
セオリーと名付けようではないか!」と思うかもしれません。
かくして、「マニアトラップ」の中核理論の1つである、「カプチー
ノセオリー」が完成するわけです。これは、あくまでも「例」ですの
で、この理論がどうだ、ということではありません。
ともかく、アタマの中にある数々の理論、知識、経験、などが絡み合
い、最終的に「実戦的な理論」に昇華されるわけです。
上級マーケターや達人は、次々と華麗に理論を生み出しているように
見えても、実は、
「観察」→「記録」→「解釈」→「普遍化」→「理論化」
という作業を地道に地道に繰り返しているわけです。回りからは「天
才」のように見えても、本人は「やるべきことを淡々とやっているだ
けだ」というでしょう。

 

★理論構築力と言語化能力

「作る」能力には、非常に高度な「理論構築力」と「言語化能力」が
求められるのは、言うを待たないですね。

というのは、「構造を並べる」ことは、普通の上級者ならできるんで
すが(それでも十分すごいことです)、それが「モレなくダブりない
か」「例外は無いか」などの、「検証能力」には、相当高度な論理構
築力が求められます。例えて言えば、相手をディベートで叩きつぶせ
るような能力ですね。

自分で自分の理論を徹底的に叩きつぶし、その徹底した攻撃にあって
も生き残った理論であれば、それは「恐らく正しい」と言えるわけで
す。
そもそもそんな能力を持っている人自体が(マーケターかどうかを問
わず)、日本にはおそらく数千人程度しかいないであろうために、そ
の能力を持っている「マーケター」は極めて少ないということになり
ます。

そのあたりが「上級者」とさらにその上を行く「達人」との境目にな
るか、と思います。この話は、また「達人」のところでしたいと思い
ます。
ちなみに、

☆理論構築力
☆言語化能力

自体は、実務経験だけでは身につかないように思います。おそらく、
数年間にわたる集中的なトレーニングが必要でしょう。私の場合は、
英語ディベートを二十数年やってきたので「理論構築力」は問題あり
ませんでした。そこに、売れたま!、雑誌の寄稿、などなの「書く」
経験を自ら積み、「言語化能力」を意識的に身につけるようにしてき
ました。
マーケティングに限らず、何らかの分野の「エキスパート」となる上
では、

☆理論構築力
☆言語化能力

は必須かな、と思います。上級に匹敵する経験・能力をお持ちの方で
も、この2つの能力が無いと、回りから評価されにくいんですよね。
そのような方は、本当にもったいないと思います。
逆に、中級以下の方でも、「理論構築力」「言語化能力」が高いと、
ベストセラーを連発して、一躍時の人になったりします。が、残念な
ことに長続きしないことが多いようです。

 

★上級マーケターは、「経験」+「理論」で勝負できる

中級者は、「自らの経験」で主に勝負します。

中級者が書く本は、既存の理論と自らの体験を融合させたものが多い
ように思います。

上級者は中級者よりも経験豊富ですから、もちろん経験で「も」勝負
できます……が、「経験」に加えて、「理論」で勝負できるようにな
るんですね。

上級(の上の方)は、普遍化した上で、「理論化」できます。実戦に
基づいた「理論」は、陳腐化するどころか、使うごとに鋭さ・凄みを
増してきます。

上級者が書いた本には、既存の理論を超えた、その人の膨大な経験が
導き出された、オリジナリティのある「理論」があるんですね。
逆に言えば、「経験」が無い業種業態でも、その「理論」を使えば、
十分に「切れる」わけです。

 

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◆上級マーケター:「権威」からの自由
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★上級マーケターは、自分のアタマで考えられる

中級くらいまでは、「自己流」の経験を積み重ねて、育ってくること
が多いようです。「自己流」でも中級(カリスマ営業パーソンなどど
言われるレベル)までは来れます。

・車を☆☆台売ったカリスマセールスマン
・保険を☆☆☆円売った伝説の営業パーソン

と言った本のレベルですね。
しかし、上級ともなると、数々の場数を踏んでいます。当然、その程
度のことは自分で試してきているわけです。色々なフレームワークを
実際に使って見た経験も豊富にあるわけですね。そして、物の本に書
いてあることが必ずしも「本当」のことばかりではないこともわかっ
ているからです。
特に、「普遍化」しないとそのまま使えないということもわかってい
ます。それは、「普遍化」の一部である「条件の明確化」ができるか
らです。

「こういう条件のときには、こうすれば確かに車が☆☆台売れる」

という考え方ができるわけです。

しかし、条件が違うとき、例えば、差別化戦略が違う場合などには、
そのまま鵜呑みにして使うことはむしろ危険であることを、自ら痛い
目に合った経験も含めて、わかっているわけですね。

そして、上級の上である「達人」に近い上級になってくると、自分で
理論を作り出せる、ということになります。

「理論化」できる、ということは、「自分のアタマで考えられる」と
言うことでもあります。

 

★上級マーケターは、「権威」の呪縛から解き放たれる

すると……「権威」を「尊重」はしても「盲信」しなくなります。自
らの選択眼を信じられるからです。自分が良いと思ったモノは、誰が
作ったものであろうと「良い」と言い切れるわけですね。
一番「権威」をふりかざすのは「入門者」と「初級」の下の方のレベ
ルですね。

「☆☆教授の□□理論によれば……」

と、有名教授の威を振り回します。

そして、ここの「☆☆」に入るのは、私のような在野にいる人間では
なく、世界的に著名なアメリカの学者、例えば、ポーターさん、コト
ラーさん、ドラッカーさんなどですね。

これはある意味やむを得ない部分もあります。初級レベルくらいだと
実績がないため、何らかの理由で自分を権威づけする必要があるとき
には、どこかから権威を「借りてくる」しかないわけです。

初級の上の方になってくると、自らが実績を出し始め、そして実戦的
な理論を求め始めます。そして中級になってくると、自らが「カリス
マ☆☆」と呼ばれるような存在なので、「権威」は不要です。それよ
り「使えるモノ」を求めるようになってきます。

初級~中級あたりで経験を積むと、自らの経験から、「本に書いてあ
る☆☆理論って本当に使えるのだろうか……使いにくいんだけど、本
当にこれでいいのか?」という疑念を持ち始めます。

例えば、SWOT分析なんかを嬉々として振り回すのは、入門レベル
です。初級~中級になってくると、「何となく使いにくいのだが、気
のせいかな? みんなどう思ってるんだろう?」と、違和感を感じな
がら、みんなが使うので使い続けます。

上級になると、「SWOTはダメだ」と言い切れます。論理的に破綻
していることを見抜く目をもち、使える理論とそうでない理論を選び
分けることができるのです。回しているサイクル(=経験量)が多い
ので、SWOT分析を使ってやっぱりダメ、やっぱりダメ、という経
験を多く持っているわけですね。
初級~中級でこれに気づくと、進歩は早くなりますが、それでも、そ
のときに、☆☆理論を使ってダメだった、という経験をしておくこと
はムダではないと思います。というか、自ら理論を作り出していく、
という意味では素晴らしい経験になります。

念のため申し上げておきますと、「ちょっと試してみてダメだ」では
なく、「しっかり」(少なくとも1,2年は粘り強く)使ってみて、
色々やってみて、それでもダメだ、というくらいには使ってみる必要
はあるかと個人的には思います。

 

★「権威」に対して、健全な疑いを持つ

上級は、「権威」に対して健全な疑いを持ちます。「権威だから」と
その理論を信じるのではなく、「自分が使えると思う」場合は、その
理論を「使う」、というスタンスになってきます。

権威に対して「中立的」になれるんですよ。
要は「使えるから使う。使えないものは使えない」という、言わば当
たり前の態度を取ります。

これが当たり前のように見えて、そうでないのは、未だにSWOT分
析を勧めている本が少なからず存在し、そしてその崇拝者がいる、と
いうことが証明しています。

SWOT分析に対しては、多くの人が違和感を持ちながらも「みんな
が使うから、何となく」使い続けるわけですが、「自分のアタマで考
えられる」上級者は、態度を明確にできます。

なぜSWOTだけやり玉にあげているかというと、このツールは本当
に害が多い・大きいからです。
売れたま!では、使えるものはそのまま、あるいは改良して使ってい
ます。典型が「3つの差別化軸」で、これは私の理論ではありません
が、素晴らしいと思ったので、大分改良を加えたうえで使わせていた
だいています。私の専売特許のように思われているかもしれませんが
私の理論ではありません(大分私流にしてはいますが)。あと、たま
に売れたま!で使うのが、「アンゾフのマトリックス」ですね。これ
は少し改良して使うとBASiCSと相性がいいんです。
その意味で、おそらく売れたま!の読者さんは初級あるいはそれより
上の方が多いと思います。売れたま!は、「権威を振り回す」という
意味では、残念ながらあまり役に立たないですからね……権威を振り
回すのなら、日本人は、洋物に弱いので、カタカナの教授がいいでし
ょうね。全く実績がないアメリカの教授でも、きっと有り難がって拝
んでくれるでしょう。しかし、「佐藤義典氏によれば」と言っても、
(残念ながら)まるで権威がないので、振り回す意味がないんですよ
ね……。それより、戦略BASiCSなどは、本当に使えるから、お
使いいただいているものかと思います。

 

では、今回のまとめとして、このような「権威への従属度」をレベル
別に見てみましょう。
入門:権威(特にアメリカの学者)を振りかざす
初級~中級:権威に疑念を抱き始める
上級:権威に中立。使えるものは使うし、使えないものは使わない

 

まだまだ続きます!

次回は……上級者が得られる「自由」について、さらに見ていくこと
にしましょう!

 

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◆今日のまとめ
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★上級者は、自分のアタマで「理論」を考えられるようになる。その
ため、「権威」に隷属せず、是々非々で対応できる。

 

 

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━戦略編Vol.212 2011/08/15
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

★上級マーケターは「自由」な存在となり、自分自身の足で立てるよ
 うになる。
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◆復習:達人マーケターへの道
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★達人マーケターへの成長の道のり

達人マーケターになるには、段階を踏みます。この「段階」が、順序
通りとは限りませんし、全員の方にあてはまるとも限りません。限ら
れた私の経験と察に基づく「独断と偏見」で、異論もあるでしょう。
自分が「達人マーケターだ」と言うつもりもありません。

笑って受け流せる方は、ぜひお読みいただければと思います。

 

★入門者:作りたい物を作り、売りたい物を売る

「お客さま視点」という意識が無いまたは実践できていないレベル。

☆「こんなの作りたいな」という開発担当
☆「安くしますので、買ってください!」 という営業担当
☆「これ仕入れたけど、誰に売ろうか?」という仕入担当
☆「この商品の性能はすごい!」と書く商品カタログ制作者

全体の6~7割の方はこのレベルです。

 

★初級マーケター:「自分がお客様だとして」のお客様視点

ここから「マーケター」です。お客様視点があり、営業・販促企画・
商品開発などの「成功者」。職場でも指導的立場者です。ただ、

☆自分が欲しいモノ=お客様が欲しいモノ

という前提を無意識のうちにおくため、判断基準が「オレ」もしくは
「自分のアタマの中にいる幻想の顧客像」になってしまいます。

全体の2~3割の方がこのレベル、つまりほとんどの方は初級以下。

 

★中級マーケター:一流マーケター

ここからは「一流マーケター」です。カリスマヒットメーカー、伝説
の営業マン、と呼ばれ、本を出しているような方々です。
このレベルの方々は、

☆お客様視点を持ち多義が、どうやっても自分はお客様にはなれない

と悩み抜き、

☆お客様に聞かないと、お客様を見ないとわからない

という「開き直りの境地」にたどり着きます。仮説を立て、お客様に
確認、というサイクルを数千回繰り返し「一流」になります。
全体の数%(あるいはそれ以下)の方がこのレベルです。

 

★上級マーケター

「天才」と呼ばれる領域です。実は努力の結果なのですが、初級・中
級の方から見ると「雲の上の存在」です。難しいことをカンタンにや
るので、入門レベルだとそのすごさがわかりにくいです。

「万能」ではありませんが、マーケターとして理想的なスキル・態度
の多くを兼ね備えている存在です。

恐らく日本には数千人いるでしょう。数千~数万人に1人ですので、
上級マーケターに職場で直接教えを受ける機会は、まずありません。
初級レベルの方でも、上級マーケターのスキル・考え方の一部は「自
分もやってる」というものがあるはずです。それについては上級レベ
ルに達しているので、「強み」として活用・育成していきましょう。

 

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◆前回の復習
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前回、上級マーケターは、「権威からの自由」を手に入れる、という
ことを見てきました。

実戦経験が多く、自分のアタマで考えられるがゆえに、自分自身の判
断力を手に入れるからです。

従って、「誰が」言ったか、ということに頼る必要がないのです。権
威のある人が言っても、自分のアタマの中にある、膨大な構造化・普
遍化された経験DBと照らし合わせて、「おかしい」と思えば、信用
しません。

ちなみに、初級~中級のある時期では、「権威への反抗」というステ
ージもありますね。

初級から上になってくると、実績もあげてきますので、鼻っ柱が強く
なってくるんですね。すると、話するときでも「お手並み拝見」とで
も言うような、ちょっと「鼻につく」態度を取ったりする時期もあり
ます。この「自尊心」は、「自信のなさ」の現れでもあります。上級
に近くなるにつれ、「本当の自信」が出てきますので、そんな態度を
取らなくなるんですよね。

 

入門:権威への隷属 「誰が」言ったか、が重要
初級:権威への反抗 「誰かが」言ったことに反抗
中級: ↓
上級:権威からの自由 「何を」言ったか が大事になる

 

こう言っては何ですが、売れたま!の読者さんは、この意味では大分
上のステージにいるように思います。何の「権威」も「肩書き」もな
い、私の主張を信頼してくださるのは、「何を言ったか」を重視して
いらっしゃるからですよね。

 

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◆上級マーケター:色々な意味で「自由」になる
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前号では上級マーケターは「権威からの自由」を得る、ということを
見てきましたが、上級になると、色々な意味で「自由」な存在になり
ます。
「縛られない」存在になるんですよ。

自分の足でしっかり立っている、ということではありますが、「確固
たる自分」というものとは、若干違います。「確固たる」ものがある
とすると、それは、何かに「縛られて」いるように思います。
自分が船だったとして、杭につなぎとめて動かない(=動けない)の
ではなく、「自分が行きたい方向に動ける」、ということですね。

むしろ、自由にカタチを変える「水」のような存在と言ったほうが適
しているように思います。
今回は、どんな意味で「自由」になるのか、考えていきましょう。
なお、念のために申し上げておきますが、「自由であることは良いこ
と」だとか「自由=幸せ」という価値判断はしていませんよ。

何事にも裏表はあります。「自由」であることには、代償や責任を伴
います。自由であるためには、相応の努力も必要です。

「どちらの方向にも行ける」というのは、ある意味辛いことでもあり
ます。自分のアタマで「どっちに行こうか」を考える必要があるから
です。誰かに「あっちに行け」と言われてそれに従属する方が、考え
なくて良いからラクなんですよね。
「自由であることを目指そう」ということを主張するつもりはありま
せん。が、「自由になれる」という「選択肢があることを知る」こと
は、良いことだと思います。その上で、ご自分で選べばいいかと思い
ます。

 

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◆上級マーケター:「資格」からの自由
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★資格を「取る」側ではなく、「作る」側に回る

「権威からの自由」と同じようなロジックで、上級マーケターは、
「資格」からも自由になります。

資格が必要になるのは、中級レベルまでです。初級~中級だと、自ら
のチカラを証明するモノがまだあまり揃っていないので、公的な裏付
けとしての資格が必要になるでしょう。

上級になると、実力を証明する例には事欠きませんし、本なども出し
ているでしょうから、「自分のチカラを証明するために」資格を取る
必要はありません。経験がありますので、言葉に説得力があります。

自分自身に豊富な経験と高い説明能力があるために、資格に「頼る」
必要がなくなるわけです。
ただ、上級者は向上心が強いので、自分を伸ばすための資格の勉強を
することはよくあるでしょう。
上級になると、むしろ「その資格があることで、誰がトクしているん
だろう?」という発想になります。常に裏側を読むわけですね。

資格に限らず、「何かを買おう」ではなく、「その手法を使って、自
分もビジネスできないか」と考えます。
ちなみに、マーケティングの資格という意味では、中級以上の方を
「測定」できるような資格は、今のところ無いように思います。

世界トップスクールMBAのマーケティング専攻でも、初級程度くら
いではないでしょうか。私がMBAを取ったのは、初級になるかなら
ないか、くらいの時期ですね。中小企業診断士は、入門の上の方、と
いう感じでしょうね。
仮に、マーケティングの博士号を持っていたとしても、ここでいう
「中級」にはならないでしょう。「知っている」ことと「できる」こ
とには、すさまじい開きがあるからです。それが入門者と初級者、そ
してその上の方、との間の高いカベになっているわけです。もちろん
自分で実戦されて実績をあげてきて、そのうえで大学教授になられて
いる方などは別です。
ただ、資格を否定しているわけではありません。私は、米国MBAも
中小企業診断士も持っている珍しい人間ですが(通常はどちらか)
そのときに勉強したことは、その後大変役立っています。ただ、資格
そのものよりは、そのときに「猛勉強した内容」が役立っている、と
考えています。資格は必須要件ではない、ということです。資格がな
くても上級、達人になっている方はいらっしゃいます。

 

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◆上級マーケター:「組織」からの自由
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★組織に依存しない上級マーケター

上級マーケターになると、組織に依存しなくなります。

「依存」している状態とは、自分が所属している組織に、「言うこと
聞かなきゃクビだ!」と言われたら、従いたくないことでもイヤイヤ
従う状態、ですね。
・儲かりそうだけれども人道的にはグレーゾーンであるような仕事

・社会への貢献度が高くない(と自分が考えている)企業との取引
など、自分がやりたくないこともありますよね。
通常は、「そんなことするくらいならやめる」という言葉を、グッと
飲み込んで、飲み会の場でグチるのでしょうが……

上級マーケターは、「そんなことやるくらいならやめる」とスパッと
言います。上級マーケターは、別に組織にいなくたって困らないわけ
で、むしろ上級マーケターにやめられたら、困るのは組織の方だから
ですね。もしくは、上級マーケターともなると組織でも上の方にいる
ことが多いので、「そんなことやらない」と自ら決定するかもしれま
せん。
上級マーケターが組織に属していることは多くあるでしょう。しかし
組織に「依存」する必要はなくなります。「所属」するのと「依存」
するのは大きな違いです。
上級マーケターは、組織のカンバンがなくても、自分自身のチカラで
独立して十分やっていけます。「お金を自分で稼げる」上級マーケタ
ーは、生活のために組織に依存する必要はありません。

そして、上級マーケターは、業種業態を問わずマーケティングができ
るわけですから、他の企業からも引く手あまたでしょう。企業が欲し
いのは「自立してやっていける」人材なわけです。が、そういう人材
は、組織にいなくても自分でやっていける、というのが世の中の皮肉
なところです。
ですから、組織からの自由、が得られるわけです。

そして、自分の能力を、自分がいたい場所で発揮するわけですね。組
織にいた方がいいと思えば組織の力を使うでしょうし、組織に縛られ
たくないと思う人は、回りから「自由人」に見えるような生き方をす
るでしょう。

 

★自分のチカラで稼げる上級マーケター

上級レベルになると、独立しても、マーケティング上の苦労はあまり
ないはずです。

どんなビジネスをしようと、独立したときの最大の難関は「集客」で
あり、マーケティングですね。

上級マーケターは、集客については、カンタンではないにしてもクリ
アできる能力を十分に備えています。自分自身のマーケティングも当
然できるからですね。
「マーケター」という職業の利点がここにあります。マーケターは
「稼ぐ」専門家ですから、自分でお金を稼げるわけです。自分のチカ
ラで稼げない人は「上級」マーケターとは言えないでしょう。(自力
で稼げるからと言って「上級」とも限りません。それだけが上級の条
件では無いことは、ここまで見てきた通りです)。

 

★中級で独立するときには注意!

初級レベルでの独立は無茶です。せめて中級になってからにしましょ
う。

中級レベルで独立することは可能です。が、その賞味期限は数年間で
しょう。

例えば、著名な会社に属して、その会社の経験を

☆☆社の魔法の経営!

みたいな本やセミナーを売ることはできます。これが典型的な中級者
が「自分を売る」手法です。

ただ、これは、マーケティングというよりは、ジャーナリスト的な本
の出し方ですよね。

この場合、それは「自分」ではなく「☆☆」という著名会社のカンバ
ンで勝負しているだけだということにいつ気づけるか、が勝負になり
ますね。

その賞味期限内の数年間に、上級に上がって、「普遍化」能力を持っ
て、自ら理論を作り出せるようになるかが中級者にとっての1つの勝
負のポイントになります。

「普遍化」能力を高め、理論を作り出せるレベルである「上級」にな
れば、その「自分の理論」を売ればいいわけで、他人のカンバンに頼
る必要がありません。

逆に言えば、自分のカンバンではなく、他人のカンバン(前にいた会
社など)で勝負しているうちは、上級にはなれていない、ということ
でもあります。

というか、上級になってくると、その

☆☆社の魔法の経営!

という風に知られる☆☆社から、指導を求められる立場になるんです
ね。

ですので、☆☆社の方法を売っているレベルではお話にならず、それ
より遥かに高い能力が必要になります。本で褒めそやされている会社
や、外から見ると素晴らしい会社でも、中に入ると数々の問題を抱え
ています。

☆☆社から依頼を受ける、というのは、☆☆社にはできないことを求
められている、ということですから、「☆☆社の魔法の経営」を売り
ものにするレベルより、2段階は上にいるんです。

逆に、「☆☆社の魔法の経営!」みたいな本を出す、ということは、
自分はそれ以上のレベルにはいない、ということを証明しているよう
なものですね。

あ、上級者でも、著名な会社の例をとりあげることはありますよ。

ただ、上級者がそれをやる場合には、自らの理論を使って、その☆☆
社を分析する、という「普遍化する」プロセスを入れてますね。自分
の理論を売るために、☆☆社を使う、という態度です。

念のため繰り返しますが、「☆☆社の魔法の経営!」のような、ある
特定の会社のある特定の手法を紹介する本をお読みになる場合は、ご
注意くださいね。その会社ではうまくいったとしても、自分と差別化
軸が違う場合にそれを導入すると、害悪にすらなりますから。

 

★レベル別の「会社に対する態度」

ここで、レベル別に「会社に対する態度」を考えてみましょう。

ただ、この部分は売れたま!読者さんにはあてはまらないかもしれま
せん。元から意識が高い方が多いからです。
入門:会社に食べさせていただいている

・会社への依存度が高く、自分は口を開けて、会社がエサを運んでく
 れるのを待っている、という態度。
・自分は会社に食わせてもらっているのに、会社は自分に何にもして
 くれない、と愚痴る。
・「転職したい」というと、回りからは「10年早い」と言われる。
 10年とは言わずとも、実際まだ早い。
・本当は、給料をもらいながら訓練していただいていることに感謝し
 ないといけない
初級:独り立ちし、自分の給料を自分で稼げる

・実績をそれなりに出し、責任感が出てくる
・頑張っているのに、報われていない(給料が安い)、と愚痴る。
・ただ、周囲の支えがあって、のことであり、実質的には自分の給料
 を辛うじて稼ぎ出しているレベル。
・初級の上の方になると、転職市場に出てもそれなりの評価を得るし
 転職先でもそれなりに活躍できる
中級:初級以下の人を養う稼ぎをあげ、独立が可能になる

・飲んで愚痴をこぼす時間はもったいないと考える。そんなことをし
 ているヒマがあったら、仕事をするか家族と過ごそうとする。
・初級以下を「食わせる」実績を出す。それがバカバカしくなり、独
 立しようかと考え始める。
・が、会社のカンバンや、他人の助けがあって、実績を出しているこ
 とに気づいていない。辞めて初めてその有り難みに気づく
・目に見える実績をあげているので、転職もしやすい
・このレベルだと、独立しても特定のクライアントなどに依存するの
 で、雇われているときと自由度はそれほど変わらない
上級:会社は「手段」であって「目的」ではない

・会社は「自分が実現したいこと」を実現する「手段」であって、会
 社を「使う」という態度になる。「手段」として組織が使えるので
 あれば組織に所属し、そうでなければ独立する
・どこにいても実績は出せるので、独立しようと、組織に属そうと、
 高い自由度を保てる。自分の強みもわかっているので、その強みを
 活かせる働き方をする。
といった感じになるでしょうか。
これは、「心構え」ですので、実際の自分のレベルより、上のレベル
の心構えを持っておくことは良いことかと思います。
また、「独立したい」とお考えの方は結構多いと思いますが、結構大
変なことだというのがおわかりになるかと思います。

個人差はあるでしょうが、中級なりたてで独立するのはちょっとキツ
イですね。中級から上級になりつつあるくらいのときだと、色々な意
味でラクだと思います。

ですので、個人的には、独立することは必ずしもお勧めしません。組
織にいながらにして上級になることは十分に可能です。

会社にいると、ちょっと表現は悪いですが、「会社のカネで勉強」す
ることができるわけです。ここでいう「勉強」は「失敗経験を積む」
などの広い意味ですね。それは、組織にいる大きなメリットの1つだ
と個人的には思います。

 

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◆上級マーケター:「お金」からの自由
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★上級マーケターは、お金に執着しない

上級マーケターは、お金からも自由になります。

上級マーケターともなると、それなりの稼ぎがありますので、そもそ
もお金にはあまり苦労しなくなりますが、そういう意味ではなく、精
神的な意味で、です。

マーケティングは、ありていに言えば「稼ぐスキル」ですよね。上級
マーケターとは、それに熟達した人達です。お金を稼ぐ方法を知って
いるわけです。

不思議なもので、「稼ごうと思えばいつでも稼げる」と思えるように
なると、それほどお金に執着しなくなるんですね
執着心のようなものは、誰でも持っていると思いますが、執着心を手
放す方法は、「一旦手に入れる」ことなんです。そして、このレベル
になるとそれに気づきます。
上級マーケターは、「こんなことを達成したい」と目標を掲げて、着
実に達成してきています。わかりやすい話「年収1千万円」などです
よね(その額が高いか低いかは別にして)。
で、そのような成功体験が無数にあるわけです。

するといつしか……

「目標を達成しても、自分は何も変わらない」

ということに気づきます。

例えば、年収999万円だったのが、1千万円になった瞬間は、一瞬
嬉しいでしょう。達成感もあるでしょう。

しかし、しばらくすると「自分は何も変わっていない」ことに気づく
わけです。

「本を出す」なんていうのもそうですね。自分自身は「本を出す前」
と「本が売れた後」では何も変わっていないなのに、周囲の見る目が
変わる……しかし、「自分自身は何も変わっていない」ことに気づき
ます。

欲しかったブランドの車を買うと、その瞬間の達成感はあります。
「ついにオレもこれが買えるようになったか……」と。

しかし、「自分は何も変わっていない」ことに気づくわけです。
次に、年収が2千万円になると、一瞬は嬉しいでしょう。

しかし、「自分は何も変わっていない」ことに気づくわけです。

さらに、独立して、社長になったりすると、一瞬は嬉しいでしょう。

しかし、「自分は何も変わっていない」ことに気づくわけです。
次に、年収が3千万円になると、もうどうでもよくなってきたりしま
す。
そして、このような経験を何度も何度も繰り返し……

「欲しかったアレを手に入れても、自分は何も変わらないんだ」

ということを理解します。

すると、そこで物欲と言うようなものがなくなっていくわけです。

そこで、

「モノを買っても、カネを持っても、達成感は無かった……じゃあ本
 当に自分が欲しいものって一体何だろう?」

と考え始めたりもするでしょうね。

多くの場合、

・自分が自分自身でいられることが大事
・自分が自分が、でなく、社会の一部としての自分
・利他の精神
・自分は生きているのではなく、生かされている

というような境地にたどり着くようです。

 

★「ブランド品」からの自由

最初にお断りしておきますが、ここから先では、いわゆる「ブランド
品」を否定しているわけではありませんので、誤解無きようにお願い
します。
上級マーケターになって、お金を稼げれば、憧れの高級ブランド品が
買える!
などとは、上級マーケターは思いません。

上級マーケターは、その「憧れの高級ブランド」を「仕掛ける側」に
いるからです。

さらに言えば、「裏側」も知っているわけです。高級ブランドビジネ
スの裏側なんかもわかっているわけですね。すると、そこに「執着」
がなくなるわけです。
高級ブランド品は、多くの場合「社会欲求」(回りの人によく見られ
たい欲求)を満たしたい、という購買動機でしょう。

しかし、上級マーケターは、そのような高級ブランド品に「依存」す
る必要はなくなります。自分自身のマーケティングがきちんとできる
ようになるからです。

高級品を買わない、とは言ってません。高級品を通じて得るところの
「社会的なステータス」に依存する必要がなくなる、ということです
よ。要は「踊らされない」ということです。

自分を必要以上に大きく見せる必要もなくなります。「あるがまま」
の存在であり、自分に本当の自信があるわけですね。
こういうと各所に敵を作りそうですが、自分を「護る」必要がある人
が、高級ブランドなどで「自分を護る」わけです。服とか高級車など
は、ある意味「鎧」のようなものです。自分に自信があり、自分はあ
るがままでいい、とい自信がある人は、自分をそのまま見せればいい
わけですから、ブランド品などで自分を「護る」必要はありません。
別に高級ブランド品を否定しているわけではなく、別に趣味として、
上級マーケターだってブランド品や高級車を持っているかもしれませ
んが(上級ともなると稼ぎはいいですからね)、それは別に自分を
「護る」ためではない、ということかと思います。純粋に、高級ブラ
ンド品の方が質が高いので、好むということはあるでしょう(例えば
ゴディバのチョコレートは、「ブランド品」だからではなく、純粋に
おいしいから買う、ということですね)。
本当のお金持ちは質素な生活をしている、とよく言われますが、それ
もこのような理由ではないかと思います。自分を着飾る必要がないん
ですよね。本当に儲けている人は、「自分は儲かってる」なんて言い
ませんよ。そんなこと言うと税務署が来ますからね(笑)。
今号はここまでといたしましょう。次回、まだ続きます。

お楽しみに!

 

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◆今日のまとめ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★上級マーケターは、自分の足で立ち、権威、資格、組織、お金、な
 どに縛られない、自由な存在になる。

 

 

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━戦略編Vol.213 2011/08/18
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

★上級マーケターは飽くなき向上心を持ち、成長し続けて「突き抜け
 た」存在となる。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆復習:達人マーケターへの道
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★達人マーケターへの成長の道のり

達人マーケターになるには、段階を踏みます。この「段階」が、順序
通りとは限りませんし、全員の方にあてはまるとも限りません。限ら
れた私の経験と察に基づく「独断と偏見」で、異論もあるでしょう。
自分が「達人マーケターだ」と言うつもりもありません。

笑って受け流せる方は、ぜひお読みいただければと思います。

 

★入門者:作りたい物を作り、売りたい物を売る

「お客さま視点」という意識が無いまたは実践できていないレベル。

☆「こんなの作りたいな」という開発担当
☆「安くしますので、買ってください!」 という営業担当
☆「これ仕入れたけど、誰に売ろうか?」という仕入担当
☆「この商品の性能はすごい!」と書く商品カタログ制作者

全体の6~7割の方はこのレベルです。

 

★初級マーケター:「自分がお客様だとして」のお客様視点

ここから「マーケター」です。お客様視点があり、営業・販促企画・
商品開発などの「成功者」。職場でも指導的立場者です。ただ、

☆自分が欲しいモノ=お客様が欲しいモノ

という前提を無意識のうちにおくため、判断基準が「オレ」もしくは
「自分のアタマの中にいる幻想の顧客像」になってしまいます。

全体の2~3割の方がこのレベル、つまりほとんどの方は初級以下。

 

★中級マーケター:一流マーケター

ここからは「一流マーケター」です。カリスマヒットメーカー、伝説
の営業マン、と呼ばれ、本を出しているような方々です。
このレベルの方々は、

☆お客様視点を持ち多義が、どうやっても自分はお客様にはなれない

と悩み抜き、

☆お客様に聞かないと、お客様を見ないとわからない

という「開き直りの境地」にたどり着きます。仮説を立て、お客様に
確認、というサイクルを数千回繰り返し「一流」になります。
全体の数%(あるいはそれ以下)の方がこのレベルです。

 

★上級マーケター

「天才」と呼ばれる領域です。実は努力の結果なのですが、初級・中
級の方から見ると「雲の上の存在」です。難しいことをカンタンにや
るので、入門レベルだとそのすごさがわかりにくいです。

「万能」ではありませんが、マーケターとして理想的なスキル・態度
の多くを兼ね備えている存在です。

恐らく日本には数千人いるでしょう。数千~数万人に1人ですので、
上級マーケターに職場で直接教えを受ける機会は、まずありません。
初級レベルの方でも、上級マーケターのスキル・考え方の一部は「自
分もやってる」というものがあるはずです。それについては上級レベ
ルに達しているので、「強み」として活用・育成していきましょう。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆前回の復習
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
前回、上級マーケターは、「権威からの自由」を手に入れる、という
ことを見てきました。
☆権威からの自由

☆資格からの自由

☆組織からの自由

☆お金からの自由
自分のアタマで考え、自分の足で行動し、というビジネスパーソンと
しての独立度が高まっていくわけですね。別に組織にいても、これは
可能です。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆上級マーケター:「常識」からの自由
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★「みんながそう思うから」ではなく「自分がそう思うから」

そして、上級マーケターは「常識」からも自由です。

「常識」とは、「大多数の人がそう思っていること」ですよね。それ
が正しいというロジックは「大多数の人が正しいと思っているんだか
ら、きっと正しいんだろう」でしょう。

しかし、上級マーケターは、自分のアタマで考え、自分のロジックで
確認したものを信じます。
「自分が唯一絶対正しい」と考える、いうことではありませんよ。む
しろ、上級マーケターは、「自分の考えは、本当に正しいのか?」と
いう検証もしますから。自らの考えも含めて、「それは本当に正しい
のか?」という検証を、自ら行う、ということです。
「SWOT分析は本当に使えるのか? おかしいぞ」と疑念を抱いた
ら、徹底的に考えて、「そうだな」と思ったら使うでしょうし、「お
かしい」と思ったら、それが「非常識」であったとしても、堂々と、
「SWOT分析は使えない」と主張します。

「営業は足で稼げ」と言われて、「おかしいぞ」と思ったら、訪問件
数と売上との相関や、営業員に万歩計を持たせて、成績と歩行距離の
相関を確認するでしょう。
「常識」に異を唱えるには勇気がいりますが、徹底的に検証して堂々
と主張します。それで、反論されても、堂々と再反論します。

ただ、自説にこだわるわけではなく、相手が正しい、と思ったら、あ
っさりそれを認める「水のような柔軟さ」を持ち合わせています。
ポイントは「誰が言ったことが正しいか」ではなく「何が正しいか」
だということをわかっているわけですね。
「自分のアタマで考える」ということを大切にするわけです。

だから、

・業種業態からの自由
・権威からの自由

などを実現できるわけです。
この「常識からの自由」は、単に心構えだけの問題ではなく

・論理的思考力
・構造化能力

などの、スキルに支えられていることに注意しましょう。そうでなけ
れば単なる天の邪鬼です。

 

★「常識離れ」している上級マーケター

こう言っては申し訳ないのですが、上級以上の人には、良い意味で、
「少し変わっている」ように見える方が多いです。

それは、「常識」に囚われないからですね。

普通の人と全く同じことをしていると、「普通の人」になります。

「差別化」とは、「人と違うことをする」ということですよね。

ですから、「人と違うことをする」=「少し変わっている」というこ
とになるのは、ある意味必然でもあります。
ただ、これは、他の自由、例えば「組織からの自由」などがあるから
可能だ、という側面もあります。上級者の方だったら、「うるさい、
黙って見てろ」と言えば、回りの方も、「この人が言うのなら」と納
得するでしょうが、入門者の方がいきなり「常識離れ」なことをする
と、色々問題があるかもしれませんね。

そのような場合は、組織から離れたところ(プライベートなところな
ど)で、「ちょっと変わった」ことを試してみるといいかもしれませ
んね。NPOを立ち上げたり、学生の活動を支援したりする場合には
入門者の方でも結構「自由度」が高いと思います。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆上級マーケター:自分で責任を負う、という覚悟
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★自分で責任を持つ、という覚悟

ここまで、「上級マーケターは自由」ということを考えてきました。

☆権威からの自由
☆資格からの自由
☆組織からの自由
☆お金からの自由
☆常識からの自由

が、ここで言っていることは、実は全て同じことです。

「要は、自分のアタマで考え、自分の足で行動する」

ということですね。
当然、その成功・失敗の責任は自分で負うことになります。それが
「自由」であることの代償であり報酬です。

そして、上級マーケターはその「覚悟」ができており、「ハラを括っ
て」います。

「うまく行ったら周りのお陰、失敗したら自分の責任」

というのが、上級マーケターの心構え、ですね。
拙著「売れる会社のすごい仕組み」 P250で、広岡会長が、売多
真子に対して、こう言っています。

「(社長は)誰にも言い訳できない。成果が出れば社員の手柄、失敗
 したら全部社長の責任……。因果な仕事だよ……」

私の小説で登場人物が言う一言一言には、意味を持たせています。こ
の一言は、経営者、上級マーケターが負うべき覚悟なんですよね。

逆に、居酒屋でグチを言う人は、そういう覚悟ができていない、とい
うことでもあります。「グチってるヒマがあるなら、自分で考えて自
分で行動して自分で変えればいいのに」と上級マーケターは言うでし
ょうね。

 

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◆上級マーケター:飽くなき向上心
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★「そこに山があるから登るんだ」

上級マーケターの最後として、上級マーケターは、なぜここまで成長
できるのでしょうか?

特に、中級マーケターから上級マーケターに登って行くには、周りに
上級者・達人がいない限り(そしている可能性は極めて低い)、自分
の力で、ロッククライミングをするが如く、登っていくわけです。
登山家は、「なぜ山に登るから」と聞かれたら、

「そこに山があるからさ」

と答えるといいます(それが本当かどうかはともかくとして)。
上級マーケターの心境もそれに近いように思います。上級マーケター
は、

「高く、より高く」

と考えています。「なぜか?」と聞かれても、答えられないかもしれ
ません。「高みに登りたい」というような根源的な欲求を持っている
わけです。
人間の3大欲求(生存欲求、社会欲求、自己欲求)で言うところの、
「自己欲求」ですね。初級~中級あたりまでの動機付けとしては「社
会欲求」(周囲によく思われたい)もあるでしょうが、上級マーケタ
ーは、ここまで見てきた通り、そのあたりの欲求からは既に「自由」
になっています。

「そこに登るべき山があり、登れば高いところにいける」

から、登るわけですね。
上級者が上級者たり得るのは、能力というよりも、「能力を開発する
飽くなき向上心」に支えられているんですね。

 

★「そこまでやるか……」と言われるまで「徹底して」やる

上級マーケターは、「突き抜けた存在」です。

「出る杭は打たれる」と言われますが、「突き抜けた存在」になると
もはや「打たれない」んですよ。「あいつはしゃーない」という、褒
めているのかどうかはともかく、敬意は伴う言葉で表現されます。

「突き抜ける」にはどうすればいいかというと……

「そこまでやるか」

と言われるくらい徹底してやる、ということです。
ちょっと記事が古いのですが、これがまさにその典型例ですので、ご
紹介いたします。
恐らくは「上級~達人」の域に達していると思われるソムリエの方の
話です。

-----------< 記事要約 >------------

江川氏は26才でソムリエを志すが、ワインの知識は全くなかった。

氏の“ワイン学校”はごみ捨て場。ホテルのごみ捨て場には、各レス
トランで消費されたワインの空き瓶が届く。就業時間以降にごみ捨て
場で、空き瓶に残ったワインを試飲。

氏は「臭い中でワインを飲むため、集中力がついた」と笑う。
ホテルオークラ東京 江川和彦氏――客の一言から最適ワイン(匠フ
ァイル)2008/10/01, 日経MJ(流通新聞), 9ページ

-----------< 記事要約 >------------
ゴミ捨て場をあさって、残ったワインを飲むとは……読んで「すごい
な……そこまでやるか」と私も思いました。

上級~達人となられる方には、言葉は悪いですが「狂気」に近い、す
さまじい執念のようなものがあるんですよね。
売多勝は言いました。「勝ちたいヤツが勝つ」と。本当に勝ちたけれ
ば、人の数十倍努力するでしょう。やらないのは、心の底では、勝ち
たいと思っていないんです。
「そこまでやるか」と言われるまで徹底してやれば、周りは足を引っ
張るのを諦めます。そしてある時点から、周囲の目は「カリスマに対
する尊敬」へと変わっていくわけです。
組織としては、「政府と戦ってでもやる」というヤマトの宅急便など
がその典型例です。

個人としては、政府と戦うことも、ゴミ捨て場でワインを飲むことも
さすがに難しいので、「継続する」ことがカギになります。
まさに「継続は力なり」なんです。上級マーケターは、「継続」する
んです。

 

★好きなことでなければ、続かない

上級マーケターは、「人の一生は重荷を背負いて……」とでも言うよ
うな苦難の道を歩んでいるか、というとそうとも限らないようです。
「好きなことを夢中になってやってきたら、いつの間にかこんな高い
 ところに登っていた」

というような感覚でしょう。

おそらくは、先ほどのソムリエ氏も「好き」だからこそ、ゴミ捨て場
漁りができたんでしょうね。それほど「苦難」だとは感じていなかっ
た、むしろ楽しかったのではないでしょうか?
いわゆる「守破離」を、わかりやすく表現すると

  わかる → できる → 続ける → → モノにする

という感じになるでしょう。

例えば「お客様の立場に立とう」と言って、「わからない」人は多分
いないでしょう。

しかし、それが「できる」かというとまるで違います。それが入門者
と初級者の間の高いカベですね。

できるようになっても、努力を「続ける」ことができるか、というと
また違う話です。続けることによって「自分のモノにできる」わけで
すね。
わかる→できる、できる→続ける、には、それぞれ数十人に1人、と
言うようなカベの高さがあるように思います。特に「続ける」のカベ
は非常に高いんですよね。
メルマガにしてもブログにしても、「続ける」ことができる人は、本
当に少ないです。

売れたま!を出した2003年当時は、メルマガが一種のブームにな
っていたような時代です。雨後の筍のごとく出てきましたが、その8
年後の現在、継続して出している方は非常に少ないです。

別にメルマガやブログを続けようとかそういうことが言いたいわけで
はなくて、

「続ける」

ことによって、そこに「経験の蓄積」が生まれるわけですよね。
どうして続けられるかというと、内発的な動機付け、要は「好きだか
ら」だと思います。

「好きこそものの上手なれ」

は、私は真実だと思います。
上級マーケターは特殊な存在ではなく、このような、「好き」なこと
を地道に、徹底してやり続けてきた、ということですね。
逆に言えば、「続けられるものを探す」というのは、自分の強みを伸
ばしていく上で重要なポイントの1つです。私の場合は、その1つが
売れたま!であり、本を書くことだった、ということですね。もちろ
んこれは人によって違いますよね。

 

★「全てのものは我が師」

上級マーケターになると、周囲に、手本となるような人は、確率の問
題として少なくなっていきます。というか、ほぼいません。

すると、自分自身で学ぶことになります。

上級マーケターに限りませんが、成長の早い人は、何からでも学びま
す。友人との会話から、部下から、家族から、TV番組から、スタバ
で隣の人がしている会話から、何でも、です。

「自分より上の人からしか学べない」ということは無い、と考えてい
るわけです。そうすると自分の成長がそこで止まってしまいます。
立場上は自分より「下」にいる「部下」からも当然学びます。それは
「権威からの自由」で見てきた通り、「誰が言ったか」よりも「何を
言ったか」の方が重要だからですね。年齢や役職の「上下」と学びは
関係ないわけです。
部下の良いところに学び、取引先から学び、あまり好きではないお客
様がいたとしても学び、自分と意見が対立しても、その考え方から学
び、子供の率直かつ本質的な意見に学び、路傍でたくましく生き抜い
ている雑草に学び、見事な擬態で敵を欺く昆虫に学び……

と、何からでも学びます。「学ぶ」という言葉の概念が広いんです。

「人生、すべてのものは我が師である」

というような感覚です。

学びにおいて、上級マーケターは「謙虚」であり「貪欲」です。この
「謙虚さ」「貪欲さ」を忘れて、「もはや学ぶものなし」と傲慢にな
った瞬間に転落していった人も少なからず見てきているわけです。
入門者でも初級者でも、「下の人からでも学ぶ」という姿勢を持って
いる人は、成長が早いですよね。

 

★自立と自律

「自由」とは、まさに「自立」(自分の足で立つ)ことなのですが、
それには「自律」が必要になります。自由だからこそ自分を律する必
要があるわけですね。
ある上級マーケターは、「とにかく生活レベルを上げないように心が
けている」とおっしゃっていました。そのココロは……

「最低レベルの生活をする覚悟があれば、冒険ができる。転職だって
 独立だってできるし、好きなことができる。

 失敗しても、どこかに就職して人並みの給料を得れば、人並みの生
 活はできる。逆に、生活レベルを上げてしまうと、それを「守る」
 ことになってしまう。それに「縛られる」ことになる。
 
 逆に、その生活レベルを「守る」ために、自分が好きでもないこと
 をしなければならなくなる。それは本末転倒だ。
 
 だからタクシーにも滅多なことでは乗らない。夕食の費用が千円を
 越えると今日は贅沢したなあ、と思う。
 
 なんかのマンガで「好きなときにトンカツを食べられるくらいの生
 活がちょうどいいんだ」と言ってたが、まさにその通りだと思う。

 トンカツをご馳走だと思える感覚を忘れてはいけない」

ということです。
要は、「いつでもリスクを負える」ようにしているわけですね。命を
失うような失敗さえしなければ、今の日本においては、屋根があって
ご飯がある、という生活はできますよね。そういう心構えさえあれば
「失うものはない」と開き直れるわけです。
「豪邸に住みたい」というような欲求はもちろんあっていいわけです
が、それについては前号で述べたとおり、「一瞬は嬉しいけど……」
というような短期的な喜びであり、それにはすぐ飽きてしまうことを
上級マーケターは知っているわけですね。

 
はい!!

これで、ようやく「上級マーケター編」終了です!

上級マーケターは、誰でもなれる存在です。そして、入門レベルの方
でも、上級者のある一部は既に身につけているかもしれません。その
ようなことの範囲を広げていけばいいわけです。
次回は……いよいよ「達人」です。

達人は、まさにマーケター憧れの「雲の上」の存在。

どんな人なのか? その思考方法は?

 

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◆今日のまとめ
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★上級マーケターは「突き抜けた存在」。好きな何かを徹底してやっ
 て、突き詰めてみよう!

 

 

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━戦略編Vol.214 2011/08/22
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

★達人マーケターは世界で戦える。一貫性と具体性を両立した、頂点
 に立つ存在。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆復習:達人マーケターへの道
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★達人マーケターへの成長の道のり

達人マーケターになるには、段階を踏みます。この「段階」が、順序
通りとは限りませんし、全員の方にあてはまるとも限りません。限ら
れた私の経験と察に基づく「独断と偏見」で、異論もあるでしょう。
自分が「達人マーケターだ」と言うつもりもありません。

笑って受け流せる方は、ぜひお読みいただければと思います。

 

★入門者:作りたい物を作り、売りたい物を売る

「お客さま視点」という意識が無いまたは実践できていないレベル。

☆「こんなの作りたいな」という開発担当
☆「安くしますので、買ってください!」 という営業担当
☆「これ仕入れたけど、誰に売ろうか?」という仕入担当
☆「この商品の性能はすごい!」と書く商品カタログ制作者

全体の6~7割の方はこのレベルです。

 

★初級マーケター:「自分がお客様だとして」のお客様視点

ここから「マーケター」です。お客様視点があり、営業・販促企画・
商品開発などの「成功者」。職場でも指導的立場者です。ただ、

☆自分が欲しいモノ=お客様が欲しいモノ

という前提を無意識のうちにおくため、判断基準が「オレ」もしくは
「自分のアタマの中にいる幻想の顧客像」になってしまいます。

全体の2~3割の方がこのレベル、つまりほとんどの方は初級以下。

 

★中級マーケター:一流マーケター

ここからは「一流マーケター」です。カリスマヒットメーカー、伝説
の営業マン、と呼ばれ、本を出しているような方々です。
このレベルの方々は、

☆お客様視点を持ち多義が、どうやっても自分はお客様にはなれない

と悩み抜き、

☆お客様に聞かないと、お客様を見ないとわからない

という「開き直りの境地」にたどり着きます。仮説を立て、お客様に
確認、というサイクルを数千回繰り返し「一流」になります。
全体の数%(あるいはそれ以下)の方がこのレベルです。

 

★上級マーケター

「天才」と呼ばれる領域です。実は努力の結果なのですが、初級・中
級の方から見ると「雲の上の存在」です。難しいことをカンタンにや
るので、入門レベルだとそのすごさがわかりにくいです。

「万能」ではありませんが、マーケターとして理想的なスキル・態度
の多くを兼ね備えている存在です。

恐らく日本には数千人いるでしょう。数千~数万人に1人ですので、
上級マーケターに職場で直接教えを受ける機会は、まずありません。
初級レベルの方でも、上級マーケターのスキル・考え方の一部は「自
分もやってる」というものがあるはずです。それについては上級レベ
ルに達しているので、「強み」として活用・育成していきましょう。

 

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◆達人:「カラダの作り」が違う
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前回まで「上級マーケター」を見てきました。

今号は、いよいよ「達人」です。達人については、この号だけです。

というのは、残念ながら誰もが「達人」になれるわけではないので、
あまり意味が無いと言えば意味が無いからです。

と言いつつも、その能力の少しでも近づけば、それは上級マーケター
への道でもありますので、達人の能力を見ていくことにしましょう!

 

★達人は「アスリート」の世界

上級マーケターが、それぞれのスキルを磨き、経験を蓄積していくと
だんだん達人に近づいていきます。

大きく見れば、上級と達人の違いは見えにくいでしょうが、中級マー
ケターくらいになると、その違いはわかるでしょう。

中級者は「頑張れば上級になれる」と言うレベルとして上級マーケタ
ーを捉えているでしょうし、実際そうなのですが、「達人」になると
「追いつけない」というような感覚を持つかもしれません。
それは……

「ベースとなる能力が圧倒的に違うから」

なのだと思います。

上級と達人では、アスリートで言うところの、「カラダの作り」「運
動神経」などの基本的な能力が違うんです。達人は、スーパーサイヤ
人みたいなもので、ベースとなる「戦闘力」がもともと大きく違うん
です。

達人マーケターは、スーパーサイヤ人が「マーケティング」という
戦場を選んだ、という表現が違いですね。

 

普通の人と、アスリートでは、

1)体格・筋力
2)運動神経
3)トレーニング量

という点において(この分類は不正確かもしれません。モノの喩えと
お考え下さい)大きな開きがあります。もともとの「戦闘能力」が全
く違うのです。
スキーで考えて見ると、スキーの指導員くらいまでは、平均的な体格
の方でも、平均的な運動神経の方でも、努力次第で十分になれるでし
ょう。しかし、ワールドカップを転戦するレベルの競技スキーヤーは
「アスリート」であり、普通の体格ではまずなれません。スキー技術
技以前の問題として、「カラダの作り」が一般人とは違います。
プロ野球で言えば、今の巨人レギュラー陣の中で最も小柄と思われる
藤村選手(新人なのでご存じないかも知れませんが)の身長は、
173cmです。それほど大きく見えない坂本選手でも、184cm
と、普通の人から見ると相当大きいです。小柄と言われるイチロー選
手だって、180cm前後ですから、一般人の中に入ったら結構目立
つはずです。アスリートになるには、最低限のカラダのベースが必要
なんですね。元巨人の清原氏を街で見かけましたが、大きいので、す
ごく目立ち、見た瞬間にわかりました。
「カラダの作り」に加えて、いわゆる「運動神経」も違いますよね。
プロのアスリートになるような人は、どんなスポーツをやらせても、
一般人よりは遥かにうまいわけです。そして、その中でも、スキーな
り野球なりを得意分野として選んだ、ということですから、そもそも
一般人とは違って当然なわけです。プロ野球の場合、プロ野球を志す
ような人は、子供の頃から学校一うまく、さらにその中で競争して甲
子園に出て、さらにその中で活躍した人がプロになって、さらにその
中でレギュラーになり、さらにその中でメジャーに行けて……という
大変な競争ですね。

残念ながら私がどれだけ努力しても、この壁は越えられず、アスリー
トにはなれないでしょう。高校時代に卓球をやっていましたが、その
壁を目の当たりにしました。その「戦場」にいる資格を私は持ってい
なかったんです。
そして、アスリートは当然日頃のトレーニング、柔軟運動、食生活に
まで気を配っていますよね。普通の生活ではダメで、毎日のトレーニ
ングなどは当たり前です。「スキー(や野球など)に生活を最適化」
する必要があるわけです。普通のビジネスパーソンのような生活をし
ていては、そのようなカラダが維持できません。

普通の人が3日に1回ジムに行くと、それなりの筋力量はつきます。
が、そんなトレーニング程度ではお話にならないわけですね。子供の
頃からの積み重ねも含めたトレーニング量が必要でしょう。
と言いつつも、小柄なカラダで日本を代表するスキーヤーとなられた
方も、プロ野球で活躍される方もいらっしゃいますので、うまく強み
を伸ばせばその域に達することも可能は可能なのかもしれません。

 

「達人」マーケターも同じです。一般のビジネスパーソンとはもちろ
んですが、上級マーケターと比べても、「アタマの作り」などが違う
んですね。

上級までは、相当(本人の意識はともかく、傍から見ると超過酷)な
トレーニングは必要ですが、誰でも努力次第で来れる領域であるよう
に思います。
しかし、残念ながら、達人となると、努力以外の要素も必要になって
きます。

1)アタマのつくり(「体格・筋力」)
2)アタマの使い方(「運動神経」)
3)トレーニング量

におけるベースの「戦闘能力」ですね。達人は、数十万人~数百万人
に1人という存在ですから「恵まれた才能」×「常人離れした努力」
の2つが噛み合って、初めて誕生するわけです。
上級くらいまでは、努力次第では頑張れば来れますので、ゴールとし
て上級の説明を厚くしてきました。
が、達人は、残念ながら誰でもなれる、というわけではありません。
努力しても、イチロー選手や松井選手のようにはなれない、というの
と一緒です。

というわけで、達人になる方法を紹介することは、実はあまり意味が
ないんですよね……。
と言いつつも、達人の能力の一端を知ることは、上級になる上で、意
味がありますし、達人に近づくことはできますので、一緒に考えて行
きましょう。

 

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◆「達人」は世界を見据えている
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★世界で戦えるレベルの達人マーケター

達人は、もはや世界で戦えるレベルです。国内に敵無しとは言わない
までも、見据えている先は「世界」です。日本を代表するマーケター
ですから、当然かもしれません。

世界で戦える達人マーケターは、日本にはおそらく数人~数十人存在
すると思われます。このレベルになると、隠れているのは大変に難し
く、何らかの形で世に出てきているでしょう。
日本にいる「達人マーケター」の1人が、鈴木敏文氏だと思います。
ご存じセブン&アイ・ホールディングスの会長兼CEOで、セブン・
イレブンをゼロからあそこまで育て上げられた方ですね。経営者とし
ての力量はもちろんですが、消費者を「読む」チカラも卓越している
方です。直接お話をうかがったことは1回しかありませんが、本や新
聞を通じて伝わってくるその考えは、非常に鋭く、緻密です。世界に
冠たる「コンビニ」という業態を作り上げた方、と言ってもいいでし
ょう。ご存じのとおり、「コンビニ」は、今や日本から世界へと輸出
されています。まさに「世界で勝てる」レベルですね。
マーケターではありませんが、経営コンサルタントの世界では、大前
研一氏が世界で戦えるレベルに達した方のお一人ですね。

私がMBAをとった時に、クラスで出てきた日本人の名前で私が覚え
ているのは、

・経営戦略論の大前研一氏
・知識経営の野中郁次郎氏
・トヨタ式生産システムの大野耐一氏

くらいですね。他にもいらしたかもしれませんが、世界で名前が上が
る人はとにかく少ないです。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆達人の驚異的な理論化・言語化能力
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★驚異的な理論構築力と驚異的な言語化能力

達人の能力の1つが……

☆驚異的な理論構築力
☆驚異的な言語化能力

です。
上級マーケターには

☆理論構築力
☆言語化能力

が必要、と「達人マーケターへの道 9」で書きましたが、この領域
において、圧倒的なチカラを持つのが「達人」です。世界レベルでの
チカラ、です。
大前研一氏は、この能力が「驚異的」に優れていますね。世界で「勝
てる」マーケターがこれから先、日本から出てくるとすれば、それは
この両方の能力を、世界レベルで備えていることになるでしょう。世
界中の人から知的ケンカ(ディベート)をふっかけられて、次々に撃
破していけるようなレベルの人ですね。
マーケティングの「実戦」レベルでは、日本は恐らくは世界最高レベ
ルに達しているはずです。

数百円の食事をするのに、あんな気持ちいい接客が受けられたり、携
帯電話で飛行機に乗れる国なんて、すごいと思いませんか?

私は、日本の究極の強みというのは「おもてなし」「きめ細かさ」に
あると思っていますが、もし、日本がこの能力の言語化・理論化に失
敗したときには、相当まずいのではないかと思います。

逆に、ここを理論化・言語化できれば、それは「輸出できる」理論に
なるはずです(そんなこと言うなら言い出しっぺのオマエがやれ、と
言われると、「あははは」としか現状では答えられませんが……)。
個人的には、「マーケティング」コンサルタントを名乗りつつも、
「マーケティング」という言葉自体が輸入語であることに正直抵抗感
があります。「経営学」「会計学」と同じように、「商学」でいいは
ずなんですけどね。

で、マーケティングという「括り」の言葉はともかくとして、そこで
教えている内容が、もう、ほぼ「全部」と言っていいほど、アメリカ
発の理論なんですよね。いわゆる「フレームワーク本」を見てみると
もう、何でもかんでもアメリカ発。しかも、ほとんどのフレームワー
クは実戦では使えません。SWOT分析なんて、もはや害の方が大き
いわけですが、そんなものまで金科玉条のごとく崇拝してしまってい
ます。
BASiCSなんかは、その完成度は私ではなく読者のアナタが評価
するものですが、少なくともアメリカ発「だけ」の議論が席巻してい
る状態に、日本人によるフレームワークとして、一石(未だ小石では
ありますが)を投じることはできたのかな、と考えています。

 

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◆達人:一貫性と具体性の両方に優れる
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★2つの思考能力:一貫性と具体性

その、達人の

☆驚異的な理論構築力
☆驚異的な言語化能力

という2つのチカラのベースになっている思考方は何でしょうか?
マーケティングの思考方法のキーワードは2つあります。

1)一貫性(論理的思考力):左脳、ロジック、数字
2)具体性(具体的発想力):右脳、イメージ、絵

ですね。拙著「実戦マーケティング思考」などでご紹介している通り
です。

 

★「一貫性」と「具体性」の両方を高いレベルで両立する達人

左脳だけに強い方(コンサルタントに多い)、右脳だけに強い方(た
たき上げの方に多い)は結構います。

この2つを「両立」させている方は極めて少ないんですね。それぞれ
アタマの使い方が違うからです。
それぞれ、達人の能力の一旦を見ていきましょう。

 

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◆一貫性:達人の「論理的思考力」
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★一貫性:論理的思考力

「論理的思考力」にしても、達人になると

・見た瞬間に問題点がわかる
・聞いた瞬間に話を構造化できる
・相手の言いたいことを、相手より理解して整理する
・3手先を読んでモノを言う

というような、一般ビジネスパーソンから見ると「神業」のようなこ
とをこともなげにやります。

相手の矛盾を突くことはカンタンにできます(それを口に出すかどう
かは別として)。

マーケティング経験に加えて、論理的思考力のトレーニングも必要に
なってきます。

論理的思考力は、基本的には結構カンタンに鍛えられる能力です。た
だ、達人ともなるとその鍛え方が違います。

3000時間を論理的思考力のトレーニングにみっちり使えば、それ
なりのレベルに達するでしょう。それくらいやると、上級の中でも、
かなり上の方にはいけそうですが、達人のレベルにはまだ遠いように
思います。
3000時間とはどれくらいの時間かというと、通勤に1時間かける
として、往復2時間、それに昼休みをプラスすると、1日3時間は、
そのようなトレーニングに使えます。すると、年間で1000時間使
えます。

それを3年間続けると、3000時間です。夜間のビジネススクール
などに行くと、論理的思考力の3ヶ月のクラスで、予復習あわせて、
100時間くらいは費やすでしょう。これでも結構キツイクラスと言
われますが、実戦、という意味では、それだけでは圧倒的に足りませ
ん。練習量としては、それの30倍は必要です。
中小企業診断士の必要勉強時間が1000時間、税理士や司法書士で
4000~5000時間と言われるようですが、それと同じくらいの
時間をかけると、論理的思考力がそれなりのレベルに達します。
達人のレベルは、ビジネススクールなどで論理的思考力を「教わるレ
ベル」ではなく、当然「教えられるレベル」です。が、「ビジネスス
クールで教えられる」程度ではまだ不十分のように思います。
3000時間というのは実は大した時間ではなく、学生の英語ディベ
ーターなら、ディベートに1年に費やす時間ですね(1日8時間×
365日という計算)。私は、多分「万」の単位で時間をディベート
に使っています。20年以上やってますしね。トップレベルのコンサ
ルティング会社に2年くらいいると、やはり「万」の単位の時間で鍛
えられますね。
論理的思考力が高い人は、元から高かったわけではありません。万の
単位の時間をそこに「投資」し、訓練することで得られた「努力の結
果」なんですね。
「生き方」とは、「時間という希少資源の配分方法」にほかなりませ
ん。「ありたい姿」に向けてきちんと時間を投資していけるからこそ
「達人」になれるわけです。

 

★「最強の論理攻撃」に耐えられる「最強の理論」

このような「論理的思考力」を何に使うかというと、以前にも見てき

「観察」→「記録」→「解釈」→「普遍化」→「理論化」

という思考プロセスの、後半の「普遍化」「理論化」という部分です
ね。
もちろん、この思考プロセスは基本的には誰でもある程度できます。上
級マーケターなら相当高いレベルでできます……が、達人ともなると、
この部分の「純度」というか「強さ」が違います。
達人が作った「構造」「理論」は、強固な論理構造を持っており、
「穴がない」んです。生半可な反論をすると、10倍になって返って
くるでしょう(実際にそうするかどうかは別として)。それは、この
ような圧倒的な論理的思考力の高さに支えられているわけです。

なぜかというと、達人が発表するような「理論」は、既に検証に検証
を重ねられており、普通の方が思いつくようなことは、既に検証して
きているからです。
単純な話、「相手の矛盾を突く能力」が最高レベルの人が、ある理論
を攻撃して、その攻撃に耐え切れれば、その理論は「強い」(=正し
い可能性が高い)理論だ、ということですよね。

となると、「理論構築力」の高さと、「論理的攻撃力」の高さは、相
関する、ということになります。

それは、達人はすさまじいまでの「論理的攻撃力」(=ツッコミの鋭
さ)を持っているということでもあります。だから、著名人が作った
議論であろうが信者が多かろうが、容赦なくツッコミ(=論理的検
証)を行います(その検証結果を世間に発表するかどうかは別の話で
す)。
そして……「自分の理論」も「自ら攻撃」します。自分が作った理論
を攻撃し、それに耐えうる理論を世に出しているわけですから、その
理論が「強い」のは当然ですね。他人を攻撃するのではなく、自分の
理論を強めるために使う、というのが達人ならではの態度ですね。

 

★中級になる前に、論理的思考力は鍛えておこう!

もちろん、普通の方でも、達人とまではいかなくとも、上級マーケタ
ーになるに当たって、論理的思考力を鍛えることは必要です。中級に
なるときにも、持っていた方がいいでしょう。
「観察」→「記録」→「解釈」→「普遍化」→「理論化」
の、後半部分の習得に必要になるからです。1~2年間徹底的にやれ
ば(2年で2000時間は使えることは先ほど説明しました)、誰で
もできるようになりますので、能力的なハードルはそれほど高くあり
ません。
ただ、このトレーニングをしないで、中級レベルに到達してしまうと
学習においての「心理的ハードル」が高くなります。

「カリスマ」と呼ばれるレベルの中級マーケターが、新入社員が学ぶ
ような「論理的思考力」をゼロから学ぶのは、「プライド」が邪魔し
てしまうのです。

だから、多くの人が「中級」で止まってしまうわけです。
多くの場合、現場経験が豊富な中級マーケターにとって、この能力は
「制約要因」となりますので、できれば20代~30代くらいの入門
~初級のうちに鍛えておくといいですね。

逆に、中級の方がプライドを捨てて(=開き直って)、論理的思考力
を鍛え上げて、

「普遍化」「理論化」

の能力を鍛えると、次のレベルに行けます。

 

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◆具体性:達人の「具体的発想力」
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「論理的思考力」は、言わば「左脳」の科目です。

もう1つ必要な能力が「具体性」つまり「右脳」の能力です。

論理的思考力のトレーニング方法は、昨今の論理的思考法ブームもあ
って、かなり体系化されています。しかし、「具体性」「右脳」系の
トレーニング方法は、それほど確立されていないように思います。で
すので、こちらの方が習得が難しいかと思います。
もちろん、マーケティングにおける「具体的発想力」のトレーニング
方法は、拙著「実戦マーケティング思考」において提唱していること
はご存じですよね。

ここでは、達人の能力の一端として、「表現力」と「語彙力」につい
て、垣間見てみましょう。

 

★達人の高い「表現力」

同じ日本語を書く・話すという場合でも、当然ウマイヘタはあります
よね。

達人は日本語がウマイです。言語の操作能力が極めて高いのです。

わかりやすく表現することもできれば、難しく表現することもできま
す。「表現の難易度」を自在に変えることができます。
「表現の難易度」と「内容の難易度」は違いますよね?

言われればそりゃそうだ、と思われるかもしれませんが、この2つの
概念は、混同されています。
「表現の難易度」は、どれだけわかりやすく説明できるか、です。

「内容の難易度」は、あることの概念的な難易度がどれだけ高いか、
ですね。例えば相対性理論は概念的な難易度は高いですよね?
すると、「表現の難易度」と「内容の難易度」でマトリックスを作れ
ます。

以下のようになります(等幅フォントでご覧下さい)。
          表現の難易度
         高          低い
    
    高  難しいことを     難しいことを
       難しく        わかりやすく
内容の
難易度
    低い 簡単なことを     簡単なことを
       難しく        わかりやすく
例えば、BASiCSの「戦場」の定義について考えてみましょう。
これは、内容的には結構難しい概念です。ですから「内容の難易度」
は上の「高」の方です。
では、「表現の難易度」を変えてみましょう。両方とも「戦場につい
て」の説明です。
☆難しく表現すると……

「自社の事業領域を、顧客にとっての価値、という視点で再定義して
 みましょう。自社は、何かを売っているのではなく、顧客が買う理
 由という意味での顧客価値を提供しています。顧客への価値提供が
 本当の自社の事業領域です」
☆わかりやすく表現すると……

「あなたは何屋さんですか? 果物屋さんは何屋ですか? 売り物は
 果物ですが、本当の売り物は果物ではありません。顧客が果物を買
 う理由は、例えば「デザートが欲しい」からです。であれば、その
 ときは、果物屋さんは、顧客にとっては「デザート屋」さんになり
 ます。それがアナタの本当の売り物なのです」
ということです。言っていることは同じでも、表現方法によってこれ
だけ差が出るわけです(「難しく表現すると」でも、他の本に比べる
と大分わかりやすいように思います)。
マトリックスの中で一番難しいのは、マトリックス右上の「難しいこ
とをわかりやすく」説明する能力です。
皮肉なことに……

「難しいことを難しく」または「簡単なことを難しく」表現する方が
簡単ですし、しかも「有り難み」があります。

ですから、多くの本は、そのような書かれ方をします。
「難しいことをわかりやすく」表現することは、極めて難しく、かつ
有り難みがありません。あまりにもわかりやすいと、「わかって当た
り前」と思われてしまうのですね。

つまり、達人は「さらっと本質的なことを言ってのける」んです。普
通に「当たり前じゃん」と聞き流してしまうことに、マーケティング
の本質が集約されていたりします。
「難しいことをわかりやすく」説明されている、ということを認識・
理解するのには、それなりの能力が必要なんですよ。

レベルがある程度上がってきて(初級~中級くらい)やっと「表現の
難易度」と「内容の難易度」との区別ができるようになってきます。

「あ、この人は、難しいことをわかりやすく書いてくれてるんだ」と
わかる人は、レベルが高い方、ということです。
例えば、「強み」とは「お客様が、競合ではなく、自社を選ぶ理由」
です。これは、さらりと聞き逃してしまうような、「表現の難易度」
は極めて低い(わかりやすい)表現ですが、「内容の難易度」は非常
に高いです。この定義の深さに気づく方は能力が高い方です。そうで
ないとこの「わかりやすい表現」が持つ「意味の深さ」に気づけない
んです。

逆に、入門~初級レベルで、「小難しそうな理論」を振り回したい人
には、「難しいことをわかりやすく」説明されてしまうと、かえって
困ってしまうわけですね。難しく「聞こえる」理論だからこそ「振り
回す」価値があるわけですから。

 

★難しいことをわかりやすく表現できる能力

「難しいことをわかりやすく」説明するのが一番難しい、と上で書き
ました。なぜこれが難しいかと言うと、2つの異なる能力が必要だか
らです。
1)本質を捉える理解力・構造を把握する能力
2)わかりやすい言葉を選択する能力

の2つです。
1)本質を捉える理解力・構造を把握する能力

これは、難しい概念でも、「要はこういうことだよね」という、本質
を捉えたり、その「構造化」を行う能力です。

「論理性」の高さ、ですね。
2)わかりやすい言葉を選択する能力

これは、「表現力」の高さです。本質を捉えても、それをわかりやす
く表現する力を持っていないと、難しいことを難しく表現してしまい
ます。

そして、論理性の高い人が陥るのがこの問題です。自身の理解力が高
すぎるが故に、表現力のレベルを高いままにしてしまう(=難しいこ
とを難しく説明してしまう)のです。
論理的理解力が低いと、1)の条件を満たせず、論理的理解力が高い
と、2)の条件を満たしにくい、という皮肉ですね。

ですから、この2つの能力を「両立」させられる人が少ないわけなん
です。

この2つは、「バランス」ではなく「両立」させられます。そして、
その「両立」ができる極少数の人が「達人」なんですね。
ある方は、

「私が本を書くときには、ある1文を書くときに、3~4つくらいの
 表現の選択肢を常に持っている。その表現の中から、意味的な厳格
 性と、わかりやすさを両立している文を選んでいくんだ」

とおっしゃっていました。
これは達人の1つの引き出しの例にすぎません。

このような「引き出し」は、初級マーケターでも持っていますが、そ
の「質」「量」の両面において、圧倒的に引き離しているわけです。

 

★微細な差異を使い分ける達人

これも、達人の高い「具体性能力」の一例として紹介しますが、達人
は、言語や言葉の「差異」に敏感です。

達人マーケターともなると、表現の微少な差異にも着目します。その
「微少な差異」が累積的に読み手に与える「印象」を軽視しないわけ
ですね。

例えば、本を書くときには、「字面」(じづら)も重視されます。字
面とは、まさに「文字の顔」ですね。その文字の「形」が与える印象
のことです。
・簡単
・カンタン

どちらも言葉の意味は同じですが、字面が違います。

「簡単」という言葉の意味をよりよく「表している」字面、つまり簡
単に「見える」のは、「カンタン」の方ですね。
逆に、

・複雑
・ふくざつ

だと、言葉の意味をよりよく表している字面は、「複雑」の方です。

「ふくざつなロジック」

と書かれると、むしろ「カンタン」そうですよね?

このような字面にも達人は気を付けます。
また、恐らくは達人レベルだろうと推測される方に、文章の表現で気
を付けていることの1つに

「句読点の位置」

があるとおっしゃってました。
「私の文章は、語りかけてもらっているかのように読んで欲しい。だ
 から、句読点の位置、特に読点(、)の位置にはすごく気を使う。
 意味の区切りはもちろんだけれど、読むときの「息継ぎ」に合わせ
 て読点を打つようにしているんだ」
とのことです。息継ぎに合わせる、というのは、読み手の呼吸までを
想像しながら書いている、ということですね。逆に、読みにくい文章
というのは、このあたりの配慮に欠けているわけです。

 

確かにそう言われてみると、読点の位置を適切に打つには……

・論理性:論理的・意味的な区切り
・表現力:息継ぎ・呼吸の区切り

という、まさに2つの能力が必要になりますね。
ですから、達人の書いた文章は「読みやすい」わけです。
このような「微細な表現」に対する感受性の強さと、語彙の豊富さが
達人の「表現力」を支えているわけです。
このような能力を身につけるには、さすがに「豊富な経験」が必要に
なります。ですから、20代の上級マーケターは可能性的にありえな
くはないですが(それでもごくごく希ですね)、20代の達人は、あ
りえないと断言してしまって構わないと思います。個人的には、30
代の達人もありえないと思いますし、私の知る限りでも、今のところ
見たことはありません(そもそも「達人」自体の数が、数えられるく
らいしかいないわけですが……)。

 

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◆「一貫性」と「具体性」を兼ね備える達人
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マーケティングの思考方法のキーワードは2つある、と先ほど述べま
した。

1)一貫性(論理的思考力):左脳、ロジック、数字
2)具体性(具体的発想力):右脳、イメージ、絵

ですね。

これは、人によって得手不得手があります。達人と言えども得手不得
手はあるでしょうが、しかし、それでも両方を非常に高いレベルで
「両立」させています。達人にとっては「苦手」な方でも、普通の人
からみると、「はるか上」のレベルですね。
すると、どういうことができるようになるか……
1つの例ではありますが、その能力を垣間見てみましょう!

 

★「抽象度」をコントロールする「ボリュームツマミ」を持つ

達人ともなると、思考や言語の「抽象度」を自由にコントロールでき
るようになります。

「抽象的」の反対は「具体的」です。抽象度が高いと「抽象的」で、
抽象度が低いと「具体的」になります。

 

抽象的:抽象度 高い

 ↑・高付加価値な印刷物       ← 何それ?
 |・より高価格で売れる印刷物    ← 何と比べてどのくらい?
 |・☆☆という競合より20%高価格 ← どうすればいいの?
 |・高価格に見合った紙素材     ← だから何それ?
 |・上質に見える立派な紙      ← もっと具体的には?
 |・厚さ☆mmのラシャ紙      ← 実物見せて
 ↓・はい、これがサンプルです!

具体的:抽象度 低い
このような、抽象的・具体的の間を、ボリュームを無段階にコントロ
ールするツマミのごとく、自在に合わせられるわけです。
アタマの中で、タテにスライドするツマミを上下に動かしながら、最
適の「ボリューム」を探すような感じですね。

 ―  抽象度 最高
 |
 |
 ―  抽象度 高
 |
 |
 ―  具体性 高
 |
 |
 ―  具体性 最高

(WindowsPCのボリュームツマミってこんなイメージですよね?)
達人は、このボリュームツマミを動かしながら、「必要な論理」と
「最適な表現」をアタマの中で調整しているんです。
これができるために必要な条件は2つあります。
1)論理的思考力

まずは、「論理的思考力」です。抽象度の高さを測定するために必要
な能力です。

 

2)語彙の蓄積と階層別整理

時間がかかるのはこちらです。「語彙」「表現」を蓄積し、かつそれ
を「抽象度」の高さで整理できている必要があります。これには、十
年単位で時間が必要になると思います。経験がモノを言うのです。
例えば「ブランド価値を上げる」と言ったような、極めて抽象度の高
い言葉を使うことがあります(個人的にはこういう言葉は、なるべく
使わないようにしていますが、ここではあえて使っています)。

「ブランド価値を上げる」は、抽象度が高いので、「具体的」にはど
ういうことなのか、さっぱりわかりません。

ですから、「具体性」を上げる(=抽象度を下げる)ために、「例え
ばどういうことか?」と考えます。

その「例えば」の具体例にしても、抽象度のレベルは色々とあるはず
です。

例えば、「パッケージにこういう紙を使う」

ということがあるとして、それでも色々あります。
 ―  ブランド価値を上げる
 |
 |
 ―  ?????????
 |
 |
 ―  高級紙をパッケージに使う
 |
 |
 ―  ☆☆社の、☆☆という紙の、厚さ☆☆の赤の紙を使う
この間の「無段階」のボリュームツマミを動かす度に、様々な語彙が
ありえるわけですよね。

さらに、このボリュームはたくさんあります。

「ブランド価値を上げる」ためには、売り物、売り方、売り場、売り
値(4Pですね)など、様々な「打ち手」がありますよね。その「打
ち手」ごとに「ボリュームツマミ」があるわけで、このボリュームツ
マミがヨコに無限に並んでいくわけです。そしてタテにも無限に並ん
でいくわけです。そして、その間に「語彙」がびっしりとつまってい
るわけですね。

そしてそれらの無限の語彙が論理的に階層化されます。それができる
ためには、極めて高度な「論理的思考力」が必要になります。

これをアタマの中で行うのは、とてつもなく根気のいる作業です。お
気づきの通り、ここは「経験」が効いてきます。

 

まとめると

・タテ:ボリュームツマミの上下(抽象←→具体)
・ヨコ:ボリュームツマミの種類(何について、例えば4Pなど)

を自在にコントロールできる、ということです。

お客様の言うことを聞きながら、

「この人は、……
 ・何についての(ボリュームツマミの種類)
 ・どのレベルの(ボリュームツマミの上下)
ことを言っているんだろう?」

と考えているわけです。そして、それに合わせるわけですね。さらに

「お客様がおっしゃってらっしゃることはこういうことですよね?」

とパシッと整理できるわけです。

そこから、「上」に抽象度を高めたり、「左右」に別の話をしたり、
と縦横無尽に展開できます。

これができると、コンサルタントとして、これだけで「お金をいただ
けるレベル」になりますね。

 

参考までに、私にとっては売れたま!を書くのは、最高の「論理性」
「表現力」の両方のトレーニングになっています。1号書くのには、
6時間くらいは最低かかります。1週間で2号ですから週12時間、
月に48時間は必ず使っているわけですね。48時間というと、1週
間の平均的な労働時間に匹敵します。これまでに800号前後出して
いますから約5000時間費やしたことになります。それくらい時間
を費やすと、否が応でも鍛えられますね。

 

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◆「お客様の言葉」データベースを持とう!
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★お客様の言葉データベースを持とう!

さて……ここまでの能力を持つことは難しいでしょうし、実務で成果
を出す、という意味では、達人の能力はある意味オーバースペックだ
ったりします。

達人にはなれない、と言っていてもしょうがないので、その一部の能
力だけでも身につける方法を考えましょう。

それは……

「お客様の言葉データベース」

を持つことです。

「データベース」は、別にAccessでもExcelでも紙でも何でも構いま
せん。
お客様の「ナマの言葉」をたくさんたくさん集め、それを、先ほどの
 ―  抽象度 最高
 |
 |
 ―  抽象度 高
 |
 |
 ―  具体性 高
 |
 |
 ―  具体性 最高
という、抽象度で整理するわけです。
このときのポイントは、「お客様の言葉を勝手に解釈しない」という
ことです。

アンケート結果などですと、恣意的な「解釈」が入りますが、恣意性
は排除します。

聞き取りインタビューの場合は、言い間違いも含めて(言い間違いに
重要な意味があることもある)そのまま残します。

紙のアンケートの場合は、言葉をそのまま残します。
例えば、アンチエイジングの化粧品だったら……
 ―  抽象度 最高   キレイになる
 |
 |
 ―  抽象度 高    若返った感じがするの
 |
 |
 ―  具体性 高    肌にツヤがでたわ。シミも薄くなって…
 |
 |
 ―  具体性 最高   自分の年を言ったら、「え-!?」って
             驚かれるの♪
と言った感じになるでしょうか。実際には、もっと上下のツマミの段
数は増えると思います(直感的には6~7段階くらいでしょうか)。
で……特に大事なのが、「具体性 最高」の言葉ですね。具体性が高
いほど、顧客に刺さるメッセージになりますし、社内で共有したとき
に誤解・歪曲の余地が減るからです。

「具体性 最高」のところには

「朝に顔を洗ったときに、手が顔に触れる感じが違うのよ」

というような、情景が浮かぶ言葉が入ることになります。
達人は、アタマの中にこのようなDBをたくさん持っているわけです
が、それが無理でも、Excelにこのような整理をすることは、初級者
であればできるはずです。

多くのお客様を観察し、話してみて、お客様の言葉を蓄積することは
初級→中級へと進んで行くときの最高のトレーニングの1つになるで
しょう。

 

達人についてはこれにて終了、次回、シリーズ最終回!

 

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◆今日のまとめ
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★達人は「アスリート」並の能力を持つ。それでも、その能力の一端
 をマネすることはできる。少しでも達人に近づこう!

 

 

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━戦略編Vol.215 2011/08/25
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

★チカラは「知」から。知力を鍛えよう! 自分が「天」から預かっ
 たチカラについて考えてみよう!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆復習:達人マーケターへの道
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★達人マーケターへの成長の道のり

達人マーケターになるには、段階を踏みます。この「段階」が、順序
通りとは限りませんし、全員の方にあてはまるとも限りません。限ら
れた私の経験と察に基づく「独断と偏見」で、異論もあるでしょう。
自分が「達人マーケターだ」と言うつもりもありません。

笑って受け流せる方は、ぜひお読みいただければと思います。

 

★入門者:作りたい物を作り、売りたい物を売る

「お客さま視点」という意識が無いまたは実践できていないレベル。

☆「こんなの作りたいな」という開発担当
☆「安くしますので、買ってください!」 という営業担当
☆「これ仕入れたけど、誰に売ろうか?」という仕入担当
☆「この商品の性能はすごい!」と書く商品カタログ制作者

全体の6~7割の方はこのレベルです。

 

★初級マーケター:「自分がお客様だとして」のお客様視点

ここから「マーケター」です。お客様視点があり、営業・販促企画・
商品開発などの「成功者」。職場でも指導的立場者です。ただ、

☆自分が欲しいモノ=お客様が欲しいモノ

という前提を無意識のうちにおくため、判断基準が「オレ」もしくは
「自分のアタマの中にいる幻想の顧客像」になってしまいます。

全体の2~3割の方がこのレベル、つまりほとんどの方は初級以下。

 

★中級マーケター:一流マーケター

ここからは「一流マーケター」です。カリスマヒットメーカー、伝説
の営業マン、と呼ばれ、本を出しているような方々です。
このレベルの方々は、

☆お客様視点を持ち多義が、どうやっても自分はお客様にはなれない

と悩み抜き、

☆お客様に聞かないと、お客様を見ないとわからない

という「開き直りの境地」にたどり着きます。仮説を立て、お客様に
確認、というサイクルを数千回繰り返し「一流」になります。
全体の数%(あるいはそれ以下)の方がこのレベルです。

 

★上級マーケター

「天才」と呼ばれる領域です。実は努力の結果なのですが、初級・中
級の方から見ると「雲の上の存在」です。難しいことをカンタンにや
るので、入門レベルだとそのすごさがわかりにくいです。

「万能」ではありませんが、マーケターとして理想的なスキル・態度
の多くを兼ね備えている存在です。

恐らく日本には数千人いるでしょう。数千~数万人に1人ですので、
上級マーケターに職場で直接教えを受ける機会は、まずありません。

 

★達人マーケター

世界で戦うレベル。極めて両立が難しい、論理的思考力と具体的発想
力の両方を兼ね備えた存在。

日本にはおそらく数十人以下。
初級レベルの方でも、上級・達人マーケターのスキル・考え方の一部
は「自分もやってる」というものがあるはずです。それについては
「強み」として活用・育成していきましょう。
今日が完結編!

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆上級~達人:自分の持つ「チカラ」に気づく
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★人間の持つ「チカラ」に気づく
上級~達人は、数々の成功体験を経て、

・自分の出した商品がお客様に喜んでいただくことを
・自分のアドバイスが他人の人生を変えていくことを

幾度となく目の当たりにします。
そして……

「実は、自分が世界にもたらす影響力は意外に大きい」

という実感を持ちます。

自分(というか人間)に備わった影響力、「チカラ」を実感するわけ
です。
自分自身の「チカラ」に気づくと、「他人の責任」にすることをしな
くなります。上司の責任、お客様の責任、政府の責任にしたりする必
要を感じなくなるからです。
「自分のチカラで何とかできる」

ことをカラダでわかっているからです。
中級者以上のレベルに進んで行くにつれ、

「こうだったとして、どうする」

という開き直りができています。

英語だと、Given that ~ (~として)という分詞構文ですね。ま
さに”Given”という「与えられた条件の中で」です。
「現状こうなのはしょうがない。しょうがないというか現実だ。で、
 現状がこうだったとしてどうする?」

という考え方をします。

「カネがないなら知恵を使え。知恵もないなら時間を使え」みたいな
ことをいうようになります。

これが合っているかどうかはともかくとして、

「無いとしてどうするんだ?」

と考えるわけです。
すると……

「弱みこそが強みなんだ!」
「持ってないことを強みとして使おう!」

のような開き直りも生まれて来ます。

 

★自分のチカラに怖さを感じる上級者~達人

このような「チカラ」に対する態度は、レベルが上がるにつれ、変わ
っていくように思います。

初級~中級レベルでも成功者であるわけですが、そのレベルですと自
分のチカラを過信するというか、自慢するというか、「オレってすげ
ー」的な考えになります。

例えば、中級の頃は無邪気に本、ブログ、メルマガなどを書いてしま
います。「オレはこれで成功したんだ!」と。勢いで出せてしまうん
ですよね(それはそれで大事なことですが)。そして、中級であれば
成功者ですから、一定の評価を得るでしょう。
しかし、上級以上になってくると、自分のチカラが、自分の想像以上
に大きいことにあるとき「ハッ」と気づきます。
「え……自分にはそんなに影響力があるの?」
と。
すると、自らのチカラに「怖さ」と「責任感」を感じ始めます。想像
以上に他人の人生に影響を与えるからです。
真面目な方、責任感の強い方ほど、ここで葛藤がおきますよね。
「これを社会に出して、悪い影響を与えないだろうか……? 本当に
 大丈夫か?」
と。
そこで、自らをじっと見つめ直した上で「うん。やっぱり頑張ろう」
とハラを括り、「怖さ」や「責任感」を「オレはまだまだだ。もっと
頑張ろう」という動機付けにしていくことでしょう。
上級者や達人にだって苦悩や葛藤は当然あるわけで、それを乗り越え
てきているわけです。

 

★ものごとに終わりは無いことを知っている

上級者~達人は「極めることなんかはありえない」ことを知っていま
す。

「ふう……これで極めた」と思う瞬間は、これまでの成功体験の中で
相当してきているでしょう。

しかし、そう思った瞬間に足をすくわれるという経験も、何回もして
きているでしょう。

いくら思っても、次の高い山が次々に出てくるわけです。

そして、その「次の高い山」が出てきたら……

「そこに山があるから登る」

わけです。そしてどんどん「高み」に上っていくわけですね。
「極めた」と思う体験をする度に「次の課題」が出されます。そして
その「次の課題」をクリアすると、また「次の課題」が出てきます。
そんな経験を繰り返すうちに……

「そうか、極められることなんか永遠にないんだな……」

という境地に達します。そして、

「もっと高みへ、もっと高みへ」

と上っていくわけです。
上級者あたりで、自分の動機付けが、外発的なもの(カネ、異性、見
栄など)から、内発的なもの(もっと高い場所へ)と変わっていくこ
とが多いように思います。
戦略BASiCSにしても、「これで完成だ」とはならないんですよ
ね……使っていく度に、新たな発見があります。自分が開発したツー
ルなのに、ですよ。それを繰り返していくうちに、たまに拙著「売れ
る数字」で紹介した「戦略指標」「勝利の方程式」というようなブレ
ークスルーが起きるわけです。すると、「終わりは無い」ことを実感
するわけです。

8月の戦略BASiCS集中セミナーで、受講生さんから、「『経営
戦略立案シナリオ』を書き直して欲しい。今、佐藤先生がおっしゃっ
ていることが大分進化しているからそっちに合わせてほしい」という
クレームというかリクエストをいただきました。非常にありがたく思
いました。経営戦略立案シナリオは、2007年刊です。2011年
現在、そのときよりも高いところにいなければ、進歩が無い、という
ことになります。

 

★チカラは「知から」

そして、上級者・達人は、その「チカラ」は、

・設備・技術
・資金量

というような「ハード資源」よりも、「ソフト資源」であるところの
発想力などの「知力」にある、と気づき始めます。
本当の「チカラ」は、「知から」だと気づくわけです。
上級マーケターになるような方は、元々自分への投資を惜しまない方
が多いです。

例えば、海外にMBA留学なんていうのは、何千万円の投資になるの
ですが、平気でやります。「知力をカネで買えるのなら安いモノ」と
考えられるからですね。
「費用」ではなく「投資」だと考えるわけです。なぜなら、「知力」
こそが優位の源泉だ、と考えられるようになっているからです。
高級車はいつか壊れます。宝石も盗まれるかもしれません。紙幣や株
券は紙くずになるかもしれません。

しかし、「知力」は誰にも奪うことはできません。「知識」は陳腐化
しますが、「考え方」のような知恵・知力は、使うほどに向上してい
きます。だから「投資」なんですね。
中級マーケターは「学ぶサイクルを自ら回す」と説明しましたが、上
級者~達人になってくると、これがさらに徹底されていきます。

 

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◆上級~達人に触れることで、初級~中級者が成長する
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★「自分にはできるだろうか?」と考えることが、成長への第一歩

上級~達人の本当のすごさがわかるのは、初級以上でしょう。入門者
ですと、そのすごさがわかりません。上級者の技を見て、一番「すご
い!」と感じるのは、おそらく「中級者」以上の方ですね。

中級者は、「カリスマ☆☆☆」ともちあげられている方々です。その
方から見ても、上級は圧倒的にレベルが違う技を使いこなすわけです
よね。しかも、こともなげにやってのけるわけです。
初級~中級、となってくると、「評論家」の域を脱してきます。入門
レベルでは、「自分ができない」ということに気づいてすらいないレ
ベルです。「わかる」と「できる」の差に気づいていないんですね。

本で読んだ「米国発の理論」を伝家の宝刀のように振り回すのは、入
門レベルです。

初級~中級レベルになってくると、上級マーケターの技を見て、

「それは自分にはできるだろうか」

と考えます。「自分にはできるか」と考えるのは、入門者からの脱出
の第一歩です。
入門~初級レベルだと、本を読んでも、上級者と(運良く)接するこ
とができても「ふーん。自分には関係ない」と思うか、「あんなのカ
ンタンだよ。自分にもできるよ」と思ってしまいます。

上級者・達人は、難易度の高い技をこともなげに使いこなします。

例えば、ユーザーニーズを、自然な会話の中から、さりげなく引き出
していくわけです。そして、それに合った提案をさりげなく行って、
受注獲得したりするわけですね。

入門レベルの方から見ると、何が起きているかわからないでしょう。
入門者は、その超絶技巧に気づかず「営業ってカンタンなんだなあ」
と思うかもしれません。
しかし、「わかる」ことと「できる」ことは全く違い、いざ自分でや
ってみると、全くできないわけです。ここで初めて、上級者との違い
に愕然とするわけですね。上級者がさも当然のようにやっている思考
法・発想法が「自分にはできない」と、違いを目の当たりにするわけ
です。
この「違いを目の当たりにすること」が成長への道です。そこで、自
分がまだまだ、ということを痛感するわけです。

そして

「それは自分にはできるだろうか」

と考えれば、「わかる」→「できる」へと進んでいけるわけです。
ですから、上級者の方と運良く巡り会う機会があったら、万難を排し
てでもそのチャンスを活かすことをオススメします。教えを乞うこと
ができなくとも、その技を間近に見られるだけで、大きな財産になる
でしょう。
さらに、「できる」ようになっても、今度は、「教える」立場になっ
てみると、上級~達人があんなにわかりやすく教えていたのに、自分
にはそれができない……「できる」と「教えられる」の間にある高い
壁にまた気づくわけですね。
もちろん上級者や達人もそうやって「自分にはできるか」と苦闘しな
がら一歩一歩進んできたわけです。

 

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◆「天才」の本当の意味
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★「天才」と呼ばれる上級マーケター

初級や中級レベルから見ると、上級者・達人は「魔法使い」のように
見えることもあるでしょう。

すると、上級者は、「天才」と呼ばれたことが少なからずあるはずで
す。中級レベルでも呼ばれる可能性はあります。

「天才」と呼ばれると、上級者は「天才じゃない。訓練のたまもの
だ」と内心で言いながら、「そんなことありません、私なんかまだま
だ未熟で……」と言います。

ちなみに、上級者が「まだまだ未熟で」と言うのは、謙遜ではなく、
多くの場合本心です。「常に先がある」と思っているから、中級で満
足せずに、上級者になれたわけですね。

 

★音符が天から降ってくる

ある程度以上のレベルになってくると、インスピレーションがわき出
る、というような意味のことを「降ってくる」というような表現をす
ることが多いです。

ちょっと昔の売れたま!の日記から、その言葉を拾ってみましょう。
-----------< 記事引用 >------------

ところで今日、とっても良い言葉をいただきました。宇崎竜童さんが
あるTV番組で言っていたことです。

「あるときまでは、音符が天から降ってくる感じで、それを書き留め
 ていく感じでした。それが、天狗になってきたときから、天から音
 符が降ってこなくなり、ひねり出してもどうしても出てこなくなっ
 たんですよね……感謝をこめて曲を作っていきたいです」

というような趣旨の言葉です。

がーんと打たれたような感じがしました。私も今のところはまだ、戦
略BASiCSとかマニアトラップとか、宇崎竜童さんほどではもち
ろんありませんが、天から降ってきます……謙虚な気持ちと感謝を忘
れてはいけない、とあらためて思いました。宇崎竜童さんは、本当に
悟りを開いた人、という感じがしますね。言葉がすごく重いんです。
売れたま! 2007年12月24日号
日記コーナーより

-----------< 記事引用 >------------

 

また、90年代を代表するヒットメーカーの小室哲哉氏も、同じ表現
を使っています。

-----------< 記事要約 >------------

まわりが見えなくなるくらい音楽に没頭したとき、音楽は降ってく
る。(中略)僕もその神秘的な感覚を味わったことがある

(日経トレンディネット)
http://ow.ly/65Dzf

-----------< 記事要約 >------------
「降ってくる」という言葉を使うのは、おそらく、「自分にできるこ
とを超えている」という感覚ではないかと思います。
私と、宇崎氏・小室氏を比べるのはあまりに僭越なのですが、戦略
BASiCSも、「降ってきた」ものです。戦略指標や勝利の方程式
は、戦略BASiCSの論理的な帰結であり、それは「自分が考えた
理論」という感覚なのですが、戦略BASiCSについては、「自分
の創作物」という感覚を持てないんですよね……。
まぎれもなく自分自身が紡ぎ出した曲・理論であるのにもかかわらず
それほどのものがなんで「自分に」できたかわからないわけです。

「天」にいる存在である大いなるものへの畏怖というか敬意というか
そういう無意識な感覚が「降ってくる」という言葉の源にあるのだと
思います。
おそらくは、恐ろしい集中力(ゾーンやフローなどと呼ばれるもの)
とそれまでの経験・知識のスパークなのでしょうが、皆さんが「降っ
てくる」という言葉を使うのは、非常に興味深いです。

ちなみに、「ドリルを売るには穴を売れ」も、「降ってきた」もので
した。私のアタマの中を映画が勝手に流れ、私はそれをひたすら書き
留めていっただけです。気がついたら、物語ができていました。

 

★「天才」の本当の意味とは?

そして、上級・達人マーケターは……いつか「天才」という言葉の本
当の意味に気づきます。

上級なりたての頃は、「天才」と呼ばれて、「そうかあ……ついに自
分もそう呼ばれるようになったかあ……」と、天狗になるかもしれま
せん。
困ったことに、上級マーケターが持っているスキルは「詐欺」にも使
えます。上級マーケターともなると、無価値の「壺」を、百万円の価
値があるかのように見せて売ることはできるでしょう。

そういう人が、まさに新聞を悪い意味で賑わすような人達になるわけ
ですね。それは、達人ではなく「悪人への道」ですね。

「天才」は、ダイナマイトや原子力と同じで、それ自体に「善悪」は
ありません。その「大いなる力」を「自分だけのため」に使うか、
「世の中の人のために使うか」ということかと思います。
「天狗」になり、「天」への「畏怖」「敬意」「感謝」を忘れると、
宇崎氏でさえも「天狗になってきたときから、天から音符が降ってこ
なく」なってしまうわけです。
すると……自分の得たチカラに対して、

「何で自分はこういうチカラを得たんだろう?」

と自問自答を始めます。

「一体自分の存在とは、何なんだろう?」
「このチカラとは一体何なのだろう?」
と、ここまでのレベルとは違う悩みを持ちます。
そして……

「天才」とは、「天から預かった才能」だ!

ということにいつか気づきます。「自分のもの」ではなく、「天」か
ら預かったから「天才」なんですね。そして、音符や理論が「降って
くる」のは、まさに「天」からなんです。

天から「預かった」才であるからには、きちんと使う責任があります
よね。
「経営戦略立案シナリオ」という本の後書きで書いたのですが……

「スパイダーマン」の話です。日本では2002年に公開された映画
です。

そのエンディングで……命をかけて敵を倒した主人公が、ずっと片思
いだった女性から、最後に愛を告白されます。ハリウッド映画にあり
がちなハッピーエンドか、と思いきや、主人公はなんとその告白を優
しく拒絶します。心の中では泣きながら、ですね。

その理由が……

“With great power comes great responsibility.”

「大いなる力には、大いなる責任が伴う」、という意味ですね。スパ
イダーマンとして強力な力を手に入れた主人公は、社会に対して大き
な責任を負います。そのためには、自分だけの幸せを遠ざけてでも、
社会全体に貢献する正義の道を選んだのでしょう。

この脚本を書いた方は本当にすごいな、と思います。一般受けするか
というとしないでしょう。最後はハッピーエンドの方が「ウケる」と
思います。それはわかっていても、このエンディングにしたのだと思
います。私は、スパイダーマンという映画が、映画を通して一番伝え
たかった「メッセージ」はあの一言なのでは無いかと思っています。
「天」から預かった「チカラ」は責任を持って使え、と。
そして……「この「天才」は世の中の人のために使おう」と考えるよ
うになります。「天才」が持つチカラには「大いなる責任が伴う」こ
とを理解するようになるわけです。

ここまでくると、マーケティングだ何だ、ということを越えてくるよ
うに思います。興味深いことに、どんな領域においても「極めた人」
「達人」になると同じようなことをいうようになるんですよね。

 

★誰しもが「天」から預かった「才」を持つ

誰しもが、固有の「天才」つまり「天から預かった才能」を持ってい
るのだと思います。だからこそ、責任を持って磨き上げていかないと
いけないのでしょうね。

そう考えると、実は「達人への道」とは「天から預かった才」に自ら
気づき、磨き上げていく「覚醒プロセス」なのではないでしょうか?

その「天から預かった才能」を世の中にお返しし、それを受けた次世
代の「天才たち」が育っていき……その「天才たち」がまた次世代の
「天才たち」を育て……
「そして伝説へ……」
となっていくのだと思います。
達人への道は、楽しいながらも険しい道ですし、頂上は無いと思いま
す。私も、必死で登っている毎日です。
一人で登っていくのは辛いですし、自分だけの努力だと限界がある…

でも、仲間同士がいれば、一緒に上っていけますよね。励まし合うこ
ともできますよね。先達がいれば、導いてくれますよ。
その意味で、売れたま!読者のアナタは、一緒に上っていく仲間、で
あり、「同志」ですね。これからも一緒に登っていきましょう!

さあ、日本をさらに力強く光輝かせるため、私達も「達人への道」を
一歩一歩、ゆっくりでもいいから力強く進んでいきましょう!
これにて、「達人への道」シリーズ、終了!

1ヶ月以上、13回に渡りおつきあいいただき、ありがとうございま
した!

 

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◆今日のまとめ
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★誰しもが「天」から預かった才能、「天才」を持つ。その「天才」
 を磨き上げていこう!

 

 

 

 

 

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