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「高いから売れない」は本当か?
この記事の目次
「高いから売れない……」
営業担当者さんが営業に失敗したときに、その失敗の理由として
「価格が高いから売れない」
「競合の方が安かったからそちらに負けた」
というようなことを言うことがあります。
それは本当なのでしょうか?
売れない営業担当者の言い訳だ、とか、そういうことが言いたいわけではありません。
実際問題として、お客様が断るときに「ホンネを言いたくないから、「高いから買わないんだ」と言い訳をするということはよくあります。
今回はそのような「言い訳」の話ではなく、お客様がホンネで「高いから買わない」とおっしゃっているときの話です。
お客様がホンネで「高いから買わない」と言っているときには、「高いから売れない」というのは、ある種の真実です。
しかし、「高いから売れない」を真に受けてしまうと、その論理的な対応策は「値下げする」しかないことになります。
本当にそうなのでしょうか?
「値下げ」以外に売れるようにする対策はないのでしょうか?
もし、その商品・サービスが1つも売れていないのであれば、そうなのかもしれません。
しかし、その商品・サービスが1つ以上売れているのであれば、「高いから買わない」は絶対的な真実ではありません。
少なくとも「高くても買った」あるいは「高いと思っていない」お客様が1人はいらっしゃるからです。
真の原因は4Pではなく、戦略にある
結論から申し上げると、「戦略」のミスである可能性があります。
例えば、
・「高いと思っている人のところに営業に行ってしまった」
というようなことがあり得るのです。
そもそもその価格が高すぎて受け入れられないと考えている人のところに営業に行ったら「高いから買わない」と言われて当たり前です。
これは、「顧客ターゲットの選定ミス」です。「高くてもいい」というお客様のところに営業に行かなければ、高いものは売れないのです。
例えば、ハーゲンダッツについて考えてみましょう。
2021年4月現在、ミニカップの税抜価格は295円です。実売価格はざっくり300円前後でしょうか。
ハーゲンダッツ ニュースリリース 2019.01
2人の顧客像を考えてみます。それぞれ以下のようにお考えだとします。
・Aさん:アイスは300円でもおいしければいいと考えている
・Bさん:アイスは200円以下でなければ買わないという強い信念がある
Aさんのところに営業に行けば、やり方次第でハーゲンダッツが売れるかもしれません。
Bさんのところに営業に行くと、「高いから買わない」と言われて売れません。そもそも、Bさんのところに営業に行ってはいけないわけです。なぜならBさんはハーゲンダッツの顧客としては「対象外」だからです。
つまり、
「価格が高い」という理由(断り文句)は表面上のことであって、真の原因は別にあるかもしれない
ということです。
「価格が高いから売れない」で思考を止めてしまってはいけないのです。
「価格」というのは、4Pという「打ち手」レベルの話です。
4Pというのは、
売り方(Promotion):広告・販促
売り場(Place):販路・チャネル
売り値(Price):価格
というマーケティングの4つの「打ち手」です。英語が全てPで始まり、4つあるので4P(4Ps)と呼ばれます。
「高いから売れない」というのは4Pの「売り値」のことですね。
4Pの背後には、「戦略」があります。4Pは戦略を実現したものです。
お客様が「買わない」のは、4Pレベルの話です。なぜなら、お客様に見えるものが4Pだからです。
お客様に「なんで買わなかったのか」と伺うと、4Pレベルの話が返ってくることが多いでしょう。
売れなかった理由として、
「製品の仕様(スペック)がお客様のニーズと合わなかった」
というのも「売り物」(商品・サービス)という、4Pの話です。
この場合も「高いから売れなかった」と同様に、製品が噛み合わないということは、このお客様が顧客ターゲットではなかった、という可能性があり得ます。
うまくいかなかったら、戦略を確認してみよう
本当に
・高いから売れなかった
・製品の仕様が合わなかった
ということはもちろんあるでしょう。
その場合でも、
・そもそもなぜ「高い」と言われたのか
・そもそもなぜ「製品の使用が合わない」と言われたのか
を考えてみませんか?
戦略を考えるときのフレームワークとして非常に使いやすく、お勧めなのが「戦略BASiCS」です。
詳細はこちら↓にありますが、以下の5つの要素で戦略を考えよう、というフレームワークです。
Asset:独自資源
Strength:強み
Customer:顧客
Selling message:メッセージ
戦略を確認すると、本当の理由に気づけることもある
「高いから売れない」と言われたとき、上の戦略の要素を確認すると、「高い」ではない、本当の理由に気づけるかもしれません。
そもそもその方は顧客ターゲットだったのか?
「Customer:顧客」では、「そもそもその方はターゲット顧客だったのか、営業に行くべきお客様だったのか」という確認をしましょう。
例えば、ニーズがないお客様にはどうやっても売れません(潜在ニーズがあればニーズ訴求で売れることはありますが、潜在ニーズすらもなければ、どうやっても売れません。例えば、子ども服を売ろうとしても、子ども(または孫)がいない人、知り合いに子ども(や孫)を持つ人が全くいない人には、まず売れないでしょう。
このような場合、価格をいくら下げても売れません。そのお客様に売ろうとするべきではない、という結論になります。
もしくは、先ほどの例のように、「高価な商品・サービス」を、「高価なものは買わないお客様」のところに売りに行ったら「高いから買わない」と言われるに決まっています。
強みがないから「高い」と言われたのでは?
「Strength:強み」では、本当に「競合」と比べて強みがあったのか、「競合の商品・サービスではなく、その商品・サービスを選ぶ理由があったのか」を考える必要があります。
競合に対する強みがなかったのであれば、それは価格競争になりますから「安い方が良い」とお客様がおっしゃるのは当たり前です。
そのような場合、短期的な対応策は「値下げ」しかないかもしれません。同じモノであれば、お客様は安い方を買うでしょう。
長期的には「どんな強みを作るか」と考えることになります。
高い理由を伝え切れたのか?
「Selling message:メッセージ」では、「高い理由をきちんと伝え切れたか」という確認をすると良さそうです。
安い商品・サービスは、「安いよ」で売れることも多いでしょう。
しかし高価な商品・サービスは、「高い理由」を説明する必要があります。その「高い理由」を説明しきれなければ、「高いから売れない」という答えが返ってくることになります。
このように、「高いから売れない」とお客様に言われて、それがお客様のホンネだったとしても、それを必ずしもストレートに受け止める必要があるかどうかは考える必要があります。
「高いから売れない」と言われたことの「背後」には何があるのか、ということを考えてみるといいですね。
あなたはいつも常に絶対に「一番安いもの」を買っているか?
最後に、ご自分の買い物を考えてみてください。
あなたは、いつも、必ず、常に、どんなときも、絶対に、「一番安いもの」を買っていますか?
例えば服を買うとき、「高くてもいいものを買おう」というときはありませんか?
例えばレストランに行くとき、「今日は〇〇記念日だから、いつもより高いところに行こうか」というときはありませんか?
例えば部品を発注するとき、「今回はすごく急いでいるから、少し高くても早い会社に発注しようか」というときはありませんか?
例えば素材を発注するとき、「この製品は信頼性をあげたいから、少し高くても不良品が少ない会社から買おうか」というときはありませんか?
おそらく、いつも、必ず、常に、どんなときも、絶対に、「一番安いもの」を買う、というわけではない、ということに気づかれると思います。
それに気づいたらしめたもの。「高くても買った理由」を考えてみると、ご自身のビジネスにも活かせるかもしれませんよ。