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マーケティング・営業担当者必読! お客様に刺さるメッセージの作り方
この記事の目次
「刺さるメッセージ」は、マーケティングや営業の成功を左右する最大の要素
「メッセージ」というのは、自社の商品・サービスの良さや強みをお客様に伝えるものです。
伝える「媒体」は
・製品カタログ
・営業担当者のセールストーク
・TVCM
・HP
など色々とありますが、やはり重要なのは「何をどう伝えるか」です。
あなたの会社で、商品・サービスの「売り文句」を決めるときに、
・営業担当者に任せている
・広告代理店任せ
・担当者や社長がカンと経験で決めている
ということはありませんか?
が……メッセージというのは、極めて重要なものです。
新市場開拓・新製品開発の成否を分けるものは何か?
中小企業白書2017年版に、「新事業展開の成否別に見た課題」という項目があります。
「新市場開拓戦略」や「新製品開発戦略」において、何が「課題」となっているか、ということを
・成功した企業
・成功していない企業
を分けて、分析した貴重なデータです。中小企業白書には、企業経営において貴重なデータが豊富に書かれています。
課題として取り上げられているのは、以下の7項目です。
・必要な技術・ノウハウを持つ人材が不足している
・新事業展開に必要なコストの負担が大きい”
・市場ニーズの把握が不十分である”
・販路開拓が難しい
・必要な技術・ノウハウの取得・構築が困難
・自社の製品・サービスの情報発信が不十分である
・自社の強みを活かせる事業の見極めが難しい”
ここでクイズです。
上記7項目のうちで、「成功した企業」と「成功していない企業」で、最も「差」が大きい項目はなんでしょうか?
「成功企業」と「失敗企業」の「差」です。それはつまり
・成否を分ける決め手となった項目は何か
ということです。
何かというと……実は、
ココ重要!・自社の製品・サービスの情報発信が不十分である
なんです。
「自社の製品・サービスの情報発信」が一番「成功している企業」と「成功してない企業」との「差」が大きかったんです。
「自社の製品・サービスの情報発信」というのは、お客様に何を伝えるか、という「メッセージ」にほかなりません。
ここでいう「差」は、本当に「差」(%ポイントの単純な引き算)です。
新市場開拓戦略の成否別課題:「自社の製品・サービスの情報発信」
・成功した 10.8%
・成功していない 20.1%
新製品開発戦略の成否別課題:「自社の製品・サービスの情報発信」
・成功した 8.5%
・成功していない 18.1%
「新市場開拓」においても、「新製品開発」においても、「成功している企業」と「成功していない企業」との「差」が最大だったのが「メッセージ」だったのです。「技術開発」や「販路開拓」ではなくよりも「差」が開いたのが「メッセージ」なんです。
「成功した企業」は「自社の製品・サービスの情報発信」を課題とあまり感じていません。一方で「成功していない企業」は、それを課題だ、と感じたということです。
少々驚きの結果ではありませんか?
「販促」であればわかりますよ。「新市場開拓」や「新製品開発」という分野で、「差」がつくのは「技術」「販路開拓」よりも、「メッセージ」だったんです。
元の数値をご覧になりたい方は、こちら(中小企業白書2017年版)からどうぞ。
こちらから、第2部→第3章→第2節→2 新事業展開の成否の実態 へとお進みください。上記数字のソースがあります。
成功・失敗の「差」がつきやすいのがメッセージ
もちろん「必要な技術・ノウハウを持つ人材が不足している」などの課題も大きいです。
数値自体はそちらの方が大きく出ます。例えば「新製品開発戦略」において、「必要な技術・ノウハウを持つ人材が不足している」の数値はこうなっています。
新製品開発戦略の成否別課題:「必要な技術・ノウハウを持つ人材が不足している」
・成功した 31.7%
・成功していない 36.1%
ただ、こちらの差は、4.4ポイント(単純な引き算)です。「自社の製品・サービスの情報発信」という「メッセージ」の差と比べると小さいんです。
これはすなわち「成功している企業」と「成功していない企業」であまり「差がつかない」ということだと解釈できます。
新製品開発において「必要な技術・ノウハウ」などは、みんな、そうです、みんな「課題」だと思っていますから、みんな頑張るんです。
しかし「メッセージ」で「差」がつくとは、みんな思っていないわけです。だから頑張る・頑張らないの差がつきやすい、ということだと思っています。
「新製品開発戦略」などの場合、極端に言えば、
●成功している企業:製品はできた。ここからが勝負だ! どんなメッセージが刺さるか、真剣に考えよう!
●成功していない企業:製品ができた! あとは売るだけだ。売ってこい! メッセージ? 適当に考えれば?
という感じになっているのではないでしょうか?
だから「メッセージ」で「差」がつくということだと私は解釈しています。
「伝わらない強み」には意味がない
技術開発を頑張るのは素晴らしいですが、それがお客様に伝わらなければ、お客様が「買いたい」につながりません。マーケティングや営業とは、お客様の「買いたい」を作ることです。
お客様は、「伝わったこと」だけで判断します。
感覚論になりますが、個人的には、「製品の技術開発」よりも「メッセージ開発」の方がラクだと思います。
例えば、技術開発に「1000万円」かけるとしましょう。メッセージ開発(メッセージを考える費用、メッセージを伝える宣伝費用)が「50万円」ではあまりにバランスが悪すぎます。
技術開発に「1000万円」かけるのであれば、それを「伝える」ためには、少なくとも200万円くらいは投じるべきでしょう。感覚的には、
「技術開発にかける費用:伝えるためにかける費用」は、7:3~8:2 くらいかな、と思います。
よく、百貨店で「50億円かけて改装」というようなニュースが流れます。では、その「改装」を伝えるためにいくらかけているかというと、1億円もかけていない、ということがあるようです。
これでは、せっかく「50億円かけて改装」したことが伝わらないかもしれませんよね?
このあたりに経営の巧拙、つまり、「どこにお金をかけるべきか」という資源配分の巧拙が出てくると思います。
少し話がそれましたが、では「刺さるメッセージ」をどう作るか、ということを見ていきましょう。
「コツ」と申しますか「セオリー」があります。
刺さるメッセージのセオリー1:Pain-Gain メッセージ
まずは、Pain-Gain です。
これは非常に基本的なことなのですが、驚くほどに広まっていません。
●Pain:痛み=顧客の課題
●Gain:利得=課題の解決(=商品・サービスが提供する価値)
ということです。
単純な方法です(カンタンとは言っていません。単純とカンタンは全く違う概念です)。
・まず先に、顧客のお困りごと(課題)を提案します。「こんなことに困っていませんか?」 と投げかけます。
・その後で、そのお困りごと(課題)を「解決」する方法として、自社の商品・サービスを位置付けます。「そのお困りごとを解決するためには、こうすればいいんです」と提案するわけです。
Painが先、Gainが後
お客様に提案するときなどには、この順番が大事です。
・まず、「お困りごと」で共感を得て「そうそう、そうなんだよ」と思っていただくきます。
・その後で、その後で、その後で、自社の商品・サービスによる解決方法を提案するんです。
例えば、このような感じでしょうか。2020年の4月、コロナ下で多くの小学校が休みになりました。
そのときに「チョコバナナ」が人気を集めたとされています。その理由は、こういうことだと思います。
Pain:お客様のお困りごと
コロナ下で学校が休みになり、子どもが家にいますよね? お父さま・お母さまが子どもと過ごす時間は増えるのは良かったですが、なかなか「間がもたない」ということはありませんか?
オヤツを食べさせて間をもたせることも多いと思いますが、あまり食べ過ぎるのもちょっと……食べるにしても、できれば健康的なものがいいですよね?
Gain:商品・サービスによる課題解決
そんなアナタ、チョコバナナはいかがですか?
チョコバナナなら、お湯でとかして、バナナにつけて冷やすだけで健康的なオヤツが作れます。そして、そのチョコバナナを作る時間そのものが「エンタメ」であり、ちょっとした「食育」にもなりますよね? コロナ下でお子様と過ごす時間に、そして健康的なオヤツとして、チョコバナナをどうぞ!
こんな提案がお客様に刺さったのだと思います。
ポイントは、Painを先に出すことです。どうしても「チョコバナナ」という「商品」を最初に出したくなりますが、「課題」に共感していただけなければ、そもそも聞いていただけないのです。
Painの「課題の鋭さ」がカギ:顧客ニーズをいかに把握するか
ここで重要なのは、Painの「課題の鋭さ」です。
ここが、具体的であるほどに、お客様の共感を呼びます。
先ほどのチョコバナナの場合、
「おいしいオヤツを食べたいと思いませんか?」
というような、粗っぽいPainは、あまりに当たり前で、鋭さが全くありません。
BtoB(法人顧客対象のビジネス)では、「人手不足に困っていませんか?」では、「課題」として粗すぎます。
「人出不足」を具体化していきましょう。例えば、
・若手がすぐやめてしまう、というお悩みはありませんか?
・ベテラン技術者の技術継承にお困りではありませんか?
と具体化していくと、より刺さりやすくなります。
これはつまり、「お客様の困りごとを知る」すなわち「顧客ニーズを知る」という、マーケティングの基本中の基本ということです。
「刺さる課題」が思い浮かばない、という場合、要は「お客様のニーズがわかっていない」ということなんですね。
「刺さる課題」がわからないという場合、どうすればいいかというと……単純です。お客様に聞けばいいんです。例えばチョコバナナの場合、
「チョコバナナをどのようにお使いですか?」
と聞くと、先ほどのPain-Gainのような答えがいただけるかもしれません。「使い方」を聞くのは、マーケティングのセオリーの1つです。なぜなら「価値は使い方に現れる」からです。
刺さるメッセージのセオリー2:シリコントライアングル
もう1つ紹介する手法は、「シリコントライアングル」です。
おそらく聞いたことがないと思います。私が、「英語ディベート」からもってきた方法です。
私は英語ディベートを大学時代から始め、関わってからもう数十年になります。
ディベートは、特にアメリカなどでは必須とされます。授業でも習います。
要は「議論術」であり「説得する体系的な方法論」です。
「口八丁手八丁」のようなイメージもあるかもしれません。そういう側面がないとは言いません。
が、コミュニケーションとしてのディベートは「説得力を高める」という、ビジネスパーソンであれば誰しもにとって役に立つ方法です。
ただ、英語ディベートの手法をビジネスにそのまま持ち込むのは結構難しいので、一工夫が必要です。
その1つが、この手法。
説得力の高い議論は、最低限この3つの要素が必要です。
説得力の高い議論の3要素
シ:主張 結論・言いたいこと
リ:理由 結論をささえる理由
コン:根拠 根拠としての事実・データ
主張・理由・根拠、の頭文字をとって「し・り・こん」です。
理由と根拠が「主張」を支える三角形ですので「シリコントライアングル」と私は呼んでいます。ちなみにググると、シリコン製品が出てきますね……。正式名称は「ツールミンモデル」(トゥールミンモデル)ですので、こちらでググってみてください。
正確にツールミンモデルを説明しようとすると結構大変ですが、要はこの3つの要素が、「説得力の高い説明」には最低限必要だ、ということです。
この3つの要素のうち、1つでも欠けると、聞き手のアタマに「?マーク」が浮かびます。すると、そこから先が聞き手のアタマに入ってこなくなるんです。
逆に、この3つがあれば、聞き手には「最低限成立している議論だ」と感じてもらえる、ということです。
直観的にわかりやすく説明してみます。
「主張」はマーケティングや営業では、「これを買うとこんなにいいことがありますよ」というようなことですね(いわゆる「ベネフィット」です)。
例えば、
・主張:このシステムを入れると、人が3人減らせます
というようなメッセージでITシステムを売るとしましょう。
ここであなたは思うはずです。
・なんで?
・ホント?
と。これは、まさに「なんで?」=理由、「ホント?」=根拠、と、理由・根拠を問う質問なんですよ。
理由・根拠は、論理的な頭脳を備えた方のアタマのなかに直観的に浮かぶ「チェックポイント」なんです。ですから、それをきちんとクリアしてあげることで、「主張」が受け入れられやすくなります。
・主張:このシステムを入れると、人が3人減らせます
に対して、
・理由:御社のこのビジネスプロセスをこういう風にIT化するからです
・根拠1)このビジネスプロセスは通常1日〇〇時間=人が3人分です
・根拠2)実際に、〇〇社様では、このITシステムで人を3.5人減らした実績があります
というような説明をしていくわけです。
これでお客様のアタマの中の「?マーク」が消え、「なるほど」となれば、「次のステップ」に行けます。例えば商談では、「それいくら?」などの質問が出てくる、ということにります。
シ・リ・コンの3要素は近くにおく
シリコントライアングルで説得力を高めるポイントの1つは、主張・理由・根拠の3つの要素を近くに置いて「パック」で説明することです。
具体的には、カタログやパワーポイントのスライドで、それぞれの要素を近くに置くことです。お客様の目に3つが一緒に入るようにする、ということです。
パンフやカタログでよくみかけるのが、
・主張と、理由・根拠 が書いてある場所が離れている
というものとです。
例えば、パンフに
・このパソコンはとっても早い!
と書いてあるのは良いとして、その理由・根拠(例えばスペックなど)が別のページに書いてあったりします。
これですと、お客様がアタマの中で「シリコンの三角形」が描けません。
・このパソコンはとっても早い!
と書くのなら、その近くに理由・根拠をおいてあげましょう。少なくとも、「早い理由はこちらの〇〇ページへ」などと、ガイドしてあげると良いですね。
理由・根拠は事前に詰めておこう!
シリコントライアングルは、説得の「術」というよりは、「考えていることをきちんと伝える」というものです。洗脳や「口八丁」による説得をするものではありません。
何らかの「主張」を伝えたい、というときに、「事前に」
・なんで? という理由を突き詰める
・それはホントなのか? という根拠を洗い出す
ということが大事です。
シリコントライアングルは、ここでは「メッセージ」の手法として紹介していますが、本質的には「考えをきちんと詰めていく」ためのツールです。
英語ディベートを数十年やってきた私の持論ですが、「ディベートの勝敗は、試合前に(ある程度)決まる」のです。このようなロジックをどれだけ詰められているか、という「準備作業」でディベートの勝敗が決まります。ディベートの試合は1時間くらいの場合が多いですが、準備時間は、数百時間です。その数百時間で決まるわけです。
「その場しのぎの対応力」は重要ではない、とは言わないにしても、「その場しのぎをするような状況」になってはそもそもいけないわけです。
ですから、事前に、「理由」と「根拠」を詰めておきましょう。そうすれば自信を持って打ち合わせや営業に望めます。
お客様や上司への説明など、「説得する」場合に非常に有用
シリコントライアングルは、マーケティングのメッセージに限らず、上司に何かを説明するときに非常に有用です。
なぜなら、論理的な人が発する質問が、
・なんで?(理由は何?)
・ホント?(根拠を見せて)
だからです。
そして、この2つの質問にすぐに、きちんと、簡潔に答えられないのは相当にまずいです。
「考えが足りない」「考えていない」
と思われてしまいます。例えば考えていても、です。
例えば、今日お客様や上司に何かを説明するとき、
・電車の中で、「なんで?」「ホント?」をシミュレーションする
・お客様のところに行く前に「なんで?」「ホント?」の資料を準備する
ということをするだけで「説得力」がはねあがるかもしれません。
「なんで?」と言われたときに、「それはこういう理由です」と答えられたらビジネスパーソンとしてカッコイイですよね。
そして、「えー、それホントなの?」と聞かれたら、「そうなんですよ、こんなデータがありまして……」とすぐにデータを出せたら、「できるビジネスパーソン」ですよね。
慣れればできるようになります。ディベートを始めたばかりの大学1年生でも、数ヶ月でできるようになります。
自分の説得力を高めたいという方、ぜひ使いこなしてみてください!