弱みで勝つ!4:「何も無い」秘境駅には何も無い?
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■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━戦略編Vol.197 2011/06/20
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
●「何も無い」は、思い込みにすぎない。外部の人に聞くなどして、
「持っているもの」を探そう!
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◆何も無いのが人気の「秘境駅」
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●回りには何も無い「秘境駅」が大人気!
昨年の記事で、ちょっと古いものなのですが、非常に興味深いのが…
「秘境駅」
回りに何もない「秘境」が人気を呼んでいるそうです。
-----------< 記事要約 >------------
○人里離れた山奥などにあり、鉄道以外で到達するのが難しい「秘境
駅」が人気。牛山隆信さんが99年、「秘境駅へ行こう!」という
HPを立ち上げ、その後、著書や写真集を出版したことなどから広
まったとされる。
○天竜川をのぞみながら険しい渓谷を走るJR飯田線の六つの秘境駅
がツアーの参加者で賑わう。飯田線の担当社員らが企画。当初は5
月の大型連休限定の企画だったが定員はすぐいっぱいになり、6、
7月には追加のツアー。8月からは休日限定の臨時急行列車「飯田
線秘境駅号」の運行を始めた。中高年の夫婦や子ども連れの家族が
参加し、停車時間に周辺を散策するなどして楽しむという。
○企画担当者は「意外に幅広い層から支持された(中略)へんぴな点
を強調する逆転の発想で観光の素材にできた」と話す。
毎日新聞 2010年9月27日(月)8時19分配信
headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100927-00000006-maiall-soci
(記事はもう見られない状態です)
-----------< 記事要約 >------------
ちなみに、旅行専門チャンネルの「旅チャンネル」(スカパー!やケ
ーブルテレビで見られます)でも「全国秘境駅ファイル」という番組
をやってますね。私は、これでこの言葉を知りました。提唱者の牛山
さんも出てくる番組です。
http://www.tabichan.jp/railroad/hikyo_file2
結構面白い番組です。秘境駅って、本当に「秘境」の、何も無い駅な
んですよね。
その、大人気になったツアーのパンフがまだウェブに残ってました。
http://jr-central.co.jp/news/release/_pdf/000007229.pdf
まあ秘境駅が人気になって人が来るようになると、最早「秘境」では
なくなる、という皮肉な状況になるのですが、やっぱりそこに魅力が
あるんでしょうね。
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◆復習:弱みで勝つ!
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●弱みは強み、強みは弱み
拙著「白いネコは何をくれた」の名文句(?)が「強みは弱み、弱み
は強み」です。
一見「弱み」に分類されるものでも、やり方次第で「強み」に転化す
ることはできます。
「弱みで勝つ!」とは、このように一見弱みと分類されることを、強
みとして、ウリにしてしまおう、ということです。
●事実を強みとして「解釈」しよう!
そもそも、そんなに強みばっかりの会社・人はいません。
強み弱み分析のようなことをして、「うわ、うちは弱みばっかりだ」
と「諦めモード」に入ってしまったら最悪です。
そうではなく、
「事実を羅列し、これをどう強みとして使うか」
と考えるんです。
「事実」は「事実」です。弱みになるか、強みになるか、それは、使
い方次第、使う人次第です。
弱みを強みに転化し、弱みで勝つ!
これがしたたかで軽やかな経営者・マーケターの態度だと思います。
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◆「何も無い」のは、本当に何も無いのか?
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●「何も無い」ことの意味
「何も無い」ということは、「華やかな観光地」という「戦場」を考
える場合には、明らかに「弱み」でしょう。食べるところどころか、
自動販売機ですら無いわけですから。トイレがあるかどうかも危うい
ところかもしれません。
それに、秘境駅って行きづらいんですよね……電車も1日に数本とか
しか無いんです。3分に1本来る、都心の電車とはワケが違います。
●「何も無い」代わりに、何がある?
しかし、本当に「何も無い」のでしょうか?
「観光地」のようなもの、例えば華やかな繁華街やお店が無い代わり
に……
たっぷりの自然
がありますよね。「何もない」のではありません。遊ぶ場所が無いわ
けでもありません。
・華やかな遊ぶ場所
・人工的な歓楽街
が無いだけなのです。
・鳥のさえずり
・虫の鳴き声
・けもの道
・おいしい空気
などなど、都会人から見たら羨むような自然がありますよね。
「何も無い」という発言のウラには、何らかの「思い込み」がありま
す。恐らくは
「人が喜ぶようなモノは(オレが思うには)何も無い」
というような思い込み、です。
そこには、どうしても自身の「主観」が入ってしまいます。
ですから、自身の「主観」を外して、「何も無い」ではなく、「事実
として何があるんだろう」と見るのです。
「人が喜ぶようなもの」という主観を持たず、「事実として」あるも
の、持っているもの、を淡々と列挙していくのです。
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◆「持っているものの強み」は、自分にはわからない
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●「何もない場所の、どこがいいんだろうねえ」
このような場合、ほぼ確実に共通して起きるのが、そこに住んでいる
方にとっては「こんな何もないところのどこがいいんだか」という考
えですね。
今回も、確認してみますと……
-----------< 記事要約 >------------
○不便さが人気を集める「秘境駅」。地元の人は、ブームをどう思っ
ているのだろう。
○JR飯田線の小和田(こわだ)駅から1キロ歩いたところに住む、
ただ1組の夫婦家族は「朝早く駅に行ったら、若者6人が寝てて、
たまげたわ。こんな何もない場所がいいなんて、私らには不思議だ
ねえ」という。
読売新聞
2010.08.14 [列島2010]秘境駅人気 支える住民 駅舎掃除
地名の由来説明 東京朝刊 3社 25頁
-----------< 記事要約 >------------
やっぱり、そのような発言がありました。これは、今回に限らず、私
も含めて、誰しも共通に起こる現象なんですよ。
・できる人・持っている人
・そこにいる人
には、「できること」「そこにあるもの」が、「当たり前」になって
しまい、その「良さ」「有り難み」がわからなくなってしまいます。
最近、首都圏でわかったのが「空気」「水」「電気」のありがたみ、
ですよね。
原発事故で、キレイな空気や水、無尽蔵にあると思っていた電力、が
当たり前でなくなったわけです。そして、私達は、そうなって初めて
「身の回りに当たり前のようにあるもののありがたみ」がわかったわ
けです。ガソリンや、コンビニに並んでいる商品なんかもそうでした
ね(だから買い占めが起きたわけですが)。
回りに当たり前のようにあると、それが当たり前になってしまい、そ
の「良さ」がわからなくなるんです。
東京の都心でも、40年近く前はツバメが飛んでおり、家の軒先に巣
を作っていました。銀ヤンマや赤とんぼも見られました。家には必ず
「ハエたたき」というものがありました。しかし今や、都心ではハエ
や蚊すら見られません。
そのような「豊かな自然」は、「人工物が何も無い」からこそ、豊富
に残っているわけですよね。
それは、大変ありがたいものではないでしょうか?
●「弱みの魅力」は、「外の人」に聞いてみよう!
同じような環境にいる人は、同じような発想をしてしまいます。回り
にあるものを「あって当たり前」と捉えてしまうんです。
ですから、「自分の持っているものの強み」を考える際には、仲間内
で話しあってもダメです。大体、「こんなものは価値がないよね」
「そうだそうだ」で終わってしまいます。
そうではなく、外部の人に聞くんです。外部の人に見てもらって、あ
るいは体験してもらって、自分たちが「弱み」と思っていることの
「魅力」を発見してもらえばいいんです。
秘境駅の牛山隆信氏も、東京のご出身だそうです。だからこそ、「秘
境」の駅に魅力を感じられ、その魅力をHPなどで発信しようと思い
立ったのではなでしょうか?
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◆「弱みの魅力」を評価してくれる人を探そう!
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●弱みを強みにするセオリー
「弱み」を「強み」にするセオリーは、
1)「弱み」ではなく「事実」として客観的に羅列する
2)その「事実」を「強み」として評価してくれる潜在顧客を探す
3)その顧客に「強み」として提案する
というステップになります。
つまり、「事実」を「これはいい」と評価してくれる方に対して、き
ちんと提案しようということです。
これは、BASiCSにおいて、自社の強みを提案するときのプロセ
スと何ら変わりはありません。少々の「意外感」があるだけです。
「何も無い」というのは単なる思い込みで、事実ではありません。
正確には「人工的な歓楽街が無い」だけであり、自然などはたっぷり
あるわけですよね。
「人工的な歓楽街が無い」ことは、強みですか? 弱みですか?
大人の遊びができない、ということでは弱みでしょうが、人工的な遊
びをする場所が無い、という意味では強みになりますよね。携帯ゲー
ム機をする、と言っても、充電すらできないかもしれないわけですか
ら、子供を持つ両親にはいいかもしれません。
●「秘境駅」は行きやすい「秘境」!
「秘境駅は行きにくい」と冒頭に書きましたが……それも本当でしょ
うか?
こう言ってしまうと身も蓋もないのですが、「秘境駅」と言っても、
電車は走ってるわけですよね? 電車に乗ってさえいれば、着ける場
所なんですよ。車で行って、テントをかつぎ、ひいふう、と登山しな
くてもいいわけです。
何も無い、といいつつ、「電車はある」んですよ!
と考えると……実は、秘境駅というのは、「行きやすい秘境」なんで
すよ。秘境と言っても、「電車が1日に1、2本しか無い」「携帯が
つながらない場所がある」という程度の「秘境」なんです。「滑落し
たら即死」というような、命の危険が伴うような「秘境」ではないん
ですね。
と考えると、実は、秘境駅、というのは、「秘境」戦場においては、
実は「行きやすい秘境」なんですよね。鉄道が通っている、という、
素晴らしい「強み」がある「秘境」なんです。
そう考えると、色々な展開ができそうです。
・子供がいても大丈夫
・年配層でも行きやすい
などなど、ですね。
●「弱み」を活かした用途提案をしよう!
「秘境駅」が、鉄道マニアだけに魅力的だった、というのであれば、
それはある意味当然というか、納得のいくところです。
そうではなく、一般の人にも人気が出た、というところが今回のポイ
ントの1つです。何らかの普遍的な魅力があった、ということでしょ
うし、そして、先ほどの「行きやすい秘境」というのもポイントにな
っていると思います。
すると、「提案」次第で、「秘境駅」でも色々とできそうです。
組み合わせを考えてみましょう
○「自然の安らぎ」「手つかずの自然」
→ 安らぎを求める、都会の疲れたビジネスパーソンに
「鳥の声・虫の鳴き声を聞くツアー」
→ 夏休みに、「子供の理科の自由研究ツアー」
○「人工的な遊びができない」
→ 子供に自然で遊ばせたい両親に「自然な遊びツアー」
など、実は「何も無い」秘境駅には、様々な「使い方」があるわけで
す。
夏休みなどは、「子供の理科の自由研究」なんて面白そうではないで
すか? 多種多様な生物がいるでしょうから、1日いれば終わるかも
しれませんよね。
考え方次第では、色々できるものです。
さて、あなたは、「何も持っていない」と思っていませんか?
それは、秘境駅のように、「ある特定の何かが無い」だけで、実は色
々なものを持っているのかもしれません。
ぜひお考えになってみてください!
今号はこれで終了、以下は、いつもの再掲分です。
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◆再掲:SWOT分析は、戦略立案には適さない
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●SWOT分析の罪
この項に関しては、毎回同じことを申し上げます。極めて重要な主張
ですので、繰り返したいのです。またかよ、もういい、という方はこ
れで終わりです。
繰り返したいその主張、とは……
「SWOT分析*は戦略立案には適さない」
です。
*SWOT分析
Strength(強み)
Weakness(弱み)
Opportunity(機会)
Threat(脅威)
の4つで戦略を考えようという手法
●「強み」を他の戦略要素と切り離してはいけない
まず、「強み」と言っても少なくとも2つ考慮すべき点があります。
1)「誰と比べて」という競合の問題
2)「誰にとって」という顧客の問題
です。
マクドナルドの強みは? というと、「速い」という答えがよく返っ
てきます。
でもそれって本当ですか?
仮に、「競合」を「吉野家」とすると、吉野家よりは速く無いですよ
ね?
また、顧客が「急いでいる」顧客なら強みになりますが、ゆっくりし
たい顧客なら、「速い」と、せかされているようで、むしろ「弱み」
になりますよね?
つまり、「競合」や「顧客」を考えずに、強み「だけ」を独立して考
えては、誤った結論を導きだしてしまう可能性があります。
ですから、
競合×顧客の組み合わせ
それぞれについて、SWOT分析が必要になります。このことは、
SWOT分析を教える人や本にもまず書いていません。
つまり
・競合
・顧客
・強み
を切り離して考えてはいけないんですよ。
競合が決まらなければ、強みがわかりません。顧客が決まらなければ
競合が決まりません。
だから、それを考えない分析は、「有害」ですらあります。間違った
分析になるからです。
戦略は、要は 「競合×顧客×強みの組み合わせ」、です。
どうすればいいかというと……もうおわかりですよね。
そう、BASiCSを使えばいいんですよ! 全ての要素を一体的に
考えられるのがBASiCSの「強み」ですから。
●「弱み」ばかりだとやる気をなくす
さらに害があるのが、「弱み」という分類です。
ある事実を一旦「弱み」というカテゴリーに分類してしまったら、そ
れは「弱み」なってしまい、「強みとして活用しよう!」という発想
になりませんよね?
SWOT分析をして、「弱み」がたくさん出たら……「諦めモード」
になるのではないですか?
SWOT分析は色々と害の多いフレームワークですので私は決して勧
めません。売れたま!でもSWOT分析の害は色々と取り上げてきま
した。
その「数ある害」のうちでも「致命的な害」がこれです。「どうせウ
チは弱みばっかりだしさ……」と思ってしまうんです。
この「やる気を削ぐ害」は、SWOT分析の致命的な害です。
だったら「弱みに分類しないで全部強みに分類すればいいじゃん」と
思われるかもしれませんよね。そうなんですよ。最初から、これは強
みだ、こっちは弱みだ、などと分類する必要がないんですよ。
戦略の醍醐味は、「弱みを強みに転化する」ことです。これが決まる
と、痛快です。
SWOT分析は、「弱み」というラベルを貼ってしまうことにより、
この発想を封じ込めてしまうんです。これは害が大きいです。
●SWOT分析は、戦略立案には適さない
つまり、SWOT分析は「戦略立案には適さない」んです。
戦略が決まらなければ、競合や顧客が決まりません。決まらなければ
あることが強みなのか弱みなのか、そもそも分類できません。
多くの本では、SWOT分析は「戦略立案ツール」として紹介されて
いると思いますが、それが本質的な論理矛盾を抱えていることは、こ
れでおわかりですよね。
こんな当たり前のことを何で誰も指摘しないのか、不思議でしょうが
ありません。
●SWOT分析の使い道?
ちなみに、使い道はあります。それは……
・その戦略をやりたいなら、「機会」「強み」を並べ立てて、提案を
通す
・その戦略をやりたくないなら、「脅威」「弱み」を並べ立てて、提
案を拒否する
という、「方便」ですね。これはSWOT分析の恣意性を端的に表し
ています。どうにでも解釈できるんですよ。
ここまで言って、それでも使いたい、というのなら、せめて「競合」
「顧客」を定義してから、競合と顧客の組み合わせごとにやりましょ
う。SWOT分析が何枚もできるはずです。
でも、使わないですむのなら、使わない方がいいです。BASiCS
で完結するのに、あえて複雑にする必要は無いからです。