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3つの差別化軸
戦略の基本は「強みを活かして戦う」ことです。要は「差別化する」ことですね。通常は「強み」を使って「差別化」しますので、「強み」と「差別化」は同じ概念として「強み・差別化」と呼ぶことにしましょう。
さて、「強み・差別化」というと無数にあるように思われるかもしれませんが、実は大別すると3つしかありません。その3つを私は「3つの差別化軸」と呼んでいます。
これは私のオリジナルではなく、ウィアセーマ氏らの著作から着想を得たものです。
3つの差別化軸は、以下の3つです。
1)手軽軸:他社よりも早い、安い、便利で差別化
2)商品軸:他社よりも高品質、最新技術で差別化
3)密着軸:他社よりも「個別」ニーズに応えることで差別化
それぞれ、お客様のニーズに応える、ということでは同じです。応えるニーズが違うわけです。
例えば、美容院で考えてみましょう。
手軽軸は、10分千円のQBハウスなどですね。まさに早い、安い、です。立地は駅内などの便利な場所にあります。それはそうしないと、回転率が上がらないからです。
商品軸は、東京で言えば青山や表参道などの情報発信拠点にあり、いわゆる「カリスマ美容師」などがいる芸能人御用達の店です。価格も高価です。
密着軸は、住宅地の美容院で、お客様と顔見知りになり、「いつもどおりね」と言えばまさに「いつもどおり」に切ってくれる店です。髪質や好みなども知り尽くしています。
メーカーでも同じです。ノートパソコンで考えてみましょう。
手軽軸は、デルですね。早い、安い、宅配で便利にお届け、です。低価格にできるのは汎用部品を使うから、と言われています。
商品軸は、最近ではアップルですね。MacBookAirは2010年11月時点で世界一薄いノートパソコンとのことですが、このような技術で勝負しています。価格はその分高価になります。
密着軸は、パナソニックのLet’sNoteでしょう。私もそうなのですが、「れっつらー」と呼ばれる固定ファンがつき、そのニーズに応え続けています。
同じノートパソコンでも、差別化軸によって大分見え方が違うことがわかりますね。差別化軸が違う(=応えるニーズが違う)からこそ、棲み分けができているわけです。
3つの差別化軸は、マーケティングなどはもちろん、設備投資や人事・組織などに大きく影響します。手軽軸の場合は「大量生産・大量販売」を志向した設備投資を行い、人事・組織は効率重視の中央集権型になります。商品軸の場合は、「最高品質・最新技術」を志向した設備投資を行い、人事・組織は、開発部門が自由に動けるようにします。密着軸の場合は「お客様ごとの個別生産」を志向し、人事・組織は顧客に最も近い組織(通常は営業部門や接客部門)に力を持たせます。
差別化軸の選択とは、全社戦略的に非常に大きな変更になる、経営者が決めるべき次元の意思決定であることがおわかりいただけるかと思います。例えば設備投資のために資金調達をするにしても、どんな設備が必要かは差別化軸によって異なります。資金ニーズも差別化軸によって異なるのです。
3つの差別化軸は、「経営戦略立案シナリオ」(佐藤義典著、かんき出版)で詳細に説明されていますので、ご興味があればぜひどうぞ。