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2016-08 マーケティング理論は「嬉しさ」の体系
この記事は、2016年8月18日~9月15日に渡ってメルマガ
「売れたま!」で集中連載された記事を、加筆修正したものです。
全体で5万字程度(本1/2冊程度)になります。
難しそうな「マーケティング理論」は、「顧客にとっての価値」すな
わち「嬉しさ」を中核キーワードに考えて行くことで、非常にシンプ
ルかつわかりやすくなるのです。
理論の内容は、拙著「ドリルを売るには穴を売れ」(=新人OL、つ
ぶれかけの会社をまかされる)に加筆し、戦略的な内容まで踏み込ん
だものとなっています。
「新人OL、つぶれかけの会社をまかされる」マンガ版*の補足説明
書という位置づけでもあります
*マーケティング理論をマンガで説明した意欲作
http://sandt.co.jp/manga-ol.htm
ではお楽しみください!
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■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■
~MBAの中小企業診断士がそっと教えるパワフルレッスン~
━━━━━━━━━━━━━━特別編Vol.335(累計1352) 2016/08/18
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 1回目のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
●マーケティングの本質はお客様に対する「嬉しさ提供活動」であり
それは企業活動そのもの
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆夏休み特別号! マーケティングは「嬉しさ」の体系
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少しタイミングは遅くなりましたが、今年もやります!
夏休み特別号!
今回は、普通の「講義」形式で行きたいと思います。
2016年6月2日号でも少し触れましたが、マーケティング理論は
「嬉しさ」(=お客様にとっての価値)
を軸に考えると、すさまじくシンプルかつわかりやすくなります。実
際、6月2日号に対してもそのようなコメントをいくつかいただきま
した。
ということで、今回のテーマは……
マーケティングは「嬉しさ」の体系!
です。
マーケティングとは何か?
基本に立ち返って、考えていきましょう。
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◆マーケティング=嬉しさを提供し、対価をいただくこと
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●マーケティング=嬉しさを提供し、対価をいただくこと
マーケティングの本質を一頃で言い表せば、
「お客様に価値を提供し、その対価をいただくこと」
です。さらにシンプルに表現すれば、
「お客様に嬉しさを提供し、お金をいただくこと」
となります。
マーケティングの本質、というより、ビジネスそのもの、と言ってよ
いかもしれません。
●嬉しさを提供すれば、お客様から対価をいただける
何が「嬉しさ」になるのかは次回以降になりますが、「嬉しさ」を提
供すれば、基本的には「売れる」(=お客様にお金を払っていただけ
る)はずです(ここでは一旦競合の存在はヨコに置きます)。
逆に、お客様がお金を払わないということは、お金に見合った嬉しさ
が提供できていない、ということになります。
ビジネスはボランティアでやっているわけではありません。あくまで
「対価」をいただくためにやっているのです。
私たちがスターバックスに行って、300円のコーヒー*を飲むのは
その対価に見合う(あるいはそれ以上)の「嬉しさ」を感じているか
らですね。
*ドリップコーヒーショート280円(税抜き)、税込で約300円
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◆お客様に提供する「嬉しさ」の総和=自社の「売上」
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●お客様に提供する「嬉しさ」の総和=自社の「売上」
「お客様に嬉しさを提供し、お金をいただくこと」がマーケティング
という考えを進めていくと、「嬉しさ=売上」となります。
企業が提供した「嬉しさ」を数値化すると、長期的には、「売上」に
なる、ということです。「長期的には」と言っているのは、詐欺まが
いの商売をすると短期的には売上を稼げても、長期的にはもたないか
らです。
スターバックスの1,257億円*という売上は、提供しているコー
ヒーなどによってもたらされていますが、それは要は顧客である私た
ちが「嬉しさ」の「対価」として払ったお金の総計です。
*2014年3月期。それ以降は東証の上場廃止のため不明
仮に300円のコーヒーに換算しますと、約4億杯(!)です。
のべ4億人のお客様が、300円のコーヒーを飲んだ、というのがス
ターバックスの1,257億円の「売上」となったわけです(実際に
は客単価はもっと高いでしょうから、客数が減りますね)。
ここで、
○売上=客数×客単価
ですから、売上を上げる方法は、客数を増やすか、客単価を上げるか
しかありません。どちらも「嬉しさ」向上で達成されます。
1)客数:より多くの人に「嬉しさ」を提供すれば、客数(=その商
品・サービスに嬉しさを感じた人の総数)が増えます。
2)客単価:より高い「嬉しさ」を提供すれば、客単価(=その商品
・サービスの嬉しさに見合う対価)が上がります。
ですから、
売上=客数×客単価
=嬉しさを感じた人の総数 × 1人1人が感じた嬉しさ
=自社がお客様に提供した嬉しさの総和
となるのです。
すなわち、「売上」を上げるためには、「売上を上げろ!」と叫ぶこ
とが大事なのではありません。
「お客様により多くの嬉しさを提供すること」
が、売上を上げる唯一の方法です。そしてそれは、
1)客数向上:より多くの人に嬉しさを提供する
2)客単価向上:顧客1人当たりにより多くの嬉しさを提供する
という2つの方法のどちらかで達成されます。
スターバックスで言えば、
1)客数向上:より多くの人にスターバックスに嬉しさを感じていた
だくようにする
2)客単価向上:フラペチーノのなどのより嬉しい(=高単価)メニ
ューの開発、デザートの充実による多種の嬉しさ(=購買点数)
の提供
などにより、売上が上がるわけです。
「売上」とは、お客様に提供した「嬉しさの総和」であり、売上を上
げる唯一の方法が、お客様に提供する「嬉しさ」を向上することなの
です。
○売上=自社がお客様に提供した嬉しさの総和
だとすれば、
○「売上を作る力」=「お客様への嬉しさ提供力」
となります。
いや、「価格」を下げれば売上が上がる場合もある、という疑問が浮
かぶかもしれません。
その場合も、結局は「客数」が増える(=嬉しさを提供する人数が増
える)などのことで、お客様に提供する「嬉しさの総和」が増えるか
ら売上が上がる、という意味では同じです。
●「モノ」ではなく、「嬉しさ」
ここで重要なのは、「モノ」ではなく「嬉しさ」です。
スターバックスの300円のコーヒーについて考えてみましょう。
大事なのは
「果実の種を焙煎・粉砕して抽出した黒くてコクと苦みのある液体」
という「モノ」それ自体ではありません。
「スターバックスが提供する嬉しさ」
です。
そうでなければ、スターバックスのコーヒー(約300円)がマクド
ナルドのコーヒー(100円)と約3倍の価格差があることが説明で
きません。
コーヒーという「黒い液体」自体には、マクドナルドとスターバック
スにはそれほど差があるとは思えないからです。
「モノが良い」商品・サービスではなく、「より嬉しい」商品・サー
ビスをお客様は選ぶのです。
スターバックスの
・商品・サービスのおいしさ
・店舗の清潔さ・居心地の良さ
・従業員対応の心地よさ
など、全体としての「嬉しさ提供力」が1,257億円の売上として
結実しているわけです。
もちろん「モノの良さ」が「嬉しさ」の重要な構成要素になる場合は
あるでしょう。その場合でも、「モノの良さ」が重要なのではなく、
「お客様がモノの良さに嬉しさを感じる」ことが重要なのです。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆利益率=費用1円当たりの嬉しさ提供力
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●利益=売上-費用
次に、「利益」について考えて行きます。
企業の最終的な目標(の1つ)が「利益の最大化」です。
○利益=売上-費用
というのはいいですよね。
○売上=自社がお客様に提供した嬉しさの総和
ですから、
○利益=提供した「嬉しさ」の総和-「嬉しさ」の提供コスト
となります。
●利益率=利益/売上=費用1円あたりの提供した嬉しさ
利益率=利益/売上=(売上-費用)/売上
というのもいいですよね? これは、
「会社が費用1円を使ってどれだけ顧客に嬉しさを提供できるか」
という、
「費用1円あたりの提供した嬉しさ」
となります。これが高いほど、利益率が高まります。
ですから、
1)同じコストでより大きい嬉しさを提供する
2)同じ嬉しさを、より低コストで提供する
という2つの方法で、利益を向上できます。
○「利益をあげる力」=「費用1円あたりの嬉しさ提供力」
なのです。
またスターバックスを例にとって考えて見ましょう。
スターバックスの営業利益率は、8.7%*と驚異的な数字です。店
舗のほとんどは直営店であるにも関わらず、この数字はすごいです。
*2014年3月期。それ以降は東証の上場廃止のため不明
http://www.starbucks.co.jp/ir/highlight/
スターバックスの「嬉しさ提供力」は、例えば
・商品・サービスのおいしさ
・店舗の清潔さ・居心地の良さ
・従業員対応の心地よさ
などに現れています。
何よりすごいのは、この店舗での活動の主力は「アルバイト」さんと
いうことです。
私が良く行く店では、店長さんのみ社員、後は全員「アルバイト」の
方です(と店長さんがおっしゃってました)。
スターバックスの時給は、聞いたところ、安くはないにしても、通常
の「アルバイト」さんの時給です。
にも関わらず、あれだけの「嬉しさ」を提供しているのが
「時給1000円前後のアルバイトさん」
というのがすごいですね。
社員を使えば、スターバックス並かそれ以上のサービスを提供できる
かもしれません。が、そうなると、「嬉しさの提供コスト」が跳ね上
がってしまいます。
スターバックスの営業利益率は、PL(損益計算書)などを見れば、
色々な理由付けができるでしょう。
が、その本質は、
○素晴らしい嬉しさを、アルバイトさんが提供できている
すなわち
○高い売上を低コストで作っている
ことになるのだと私は思います。
逆に言えば、同じコストをかけて「1,257億円の売上を作る力」
(=嬉しさ提供力)が高い、ということですね。
●利益向上:「嬉しさ」を増やすか「嬉しさの提供コストを減らす」
ここまで見てきたように、
○利益=売上-費用
=提供した「嬉しさ」の総和-「嬉しさ」の提供コスト
です。
「利益向上」という意味での企業活動は、
1)お客様に提供する「嬉しさ」を増やす
2)「嬉しさ」の提供コストを下げる
しかない、ということになります。
そしてこの2つが企業の「業績」「生産性」に直結します。
企業の「業績」「生産性」を上げる活動とは、
1)嬉しさ向上活動
2)嬉しさ提供コスト低減活動
の2つなのです。
例えば、会議をしているとします。その会議が、この2つ以外のこと
を話題にしているとすれば、それは利益向上という意味では「ムダ」
です。
「じゃあ従業員満足とかはどうなるの?」などの疑問が浮かぶかもし
れません。
それも同じです。
「従業員満足」を上げることで、
1)お客様に提供する「嬉しさ」を増やす
2)「嬉しさ」の提供コストを下げる
のどちらかにつながるのであれば意味があります。そうでなければ意
味が無い、ということになります。
今は人出不足と言われますが、従業員不足で店舗が開けないような場
合は、お客様に「嬉しさ」を提供できません。その意味では、人手不
足対策は「嬉しさ」の向上に直結するために重要、ということになり
ます。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆企業活動=嬉しさ提供活動
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
今回の内容を一旦まとめておきましょう。
○マーケティングの本質:嬉しさを提供し、お金をいただくこと
○お客様に提供する「嬉しさ」の総和が自社の「売上」となる
○売上=客数×客単価
=嬉しさを感じた人の総数 × 1人1人が感じた嬉しさ
=自社がお客様に提供した嬉しさの総和
1)客数向上:より多くの人に嬉しさを提供する
2)客単価向上:顧客1人当たりにより多くの嬉しさを提供する
○「売上を作る力」=「お客様への嬉しさ提供力」
○利益=提供した「嬉しさ」の総和-「嬉しさ」の提供コスト
○費用1円あたりの提供した「嬉しさ」が大きいほど利益率が高まる
○「利益をあげる力」=「費用1円あたりの嬉しさ提供力」
ロジック自体は極めて単純です。
・お客様に提供する「嬉しさ」を増やすほどに、その「対価」として
の「売上」が増える
・その「嬉しさ」を低コストで提供できるほどに、「利益」が増える
ということです。
この「嬉しさ提供力」は企業の業績(利益・売上)として現れます。
マーケティングの本質はお客様に対する「嬉しさ提供活動」であり、
それは企業活動そのものとも言えます。
次回からはその「嬉しさ」を中核にした「マーケティング理論」につ
いて考えて行きましょう。
ご質問・ご感想・ご意見お待ちしております!
★今日の「アタマに問いかけるべき適切な質問」
あなたは、「嬉しさ提供力」を強化し続けていますか?
ぜひお考えになってみてください!
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◆1回目のまとめ
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●マーケティングの本質はお客様に対する「嬉しさ提供活動」であり
それは企業活動そのもの
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■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■
~MBAの中小企業診断士がそっと教えるパワフルレッスン~
━━━━━━━━━━━━━━特別編Vol.336(累計1353) 2016/08/22
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 2回目のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
●「嬉しさ」は、全ての始まり。BtoCでも、BtoBでも、まず
は「嬉しさ」をしっかり考えよう!
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◆「嬉しさ」=「価値」=「ベネフィット」=「目的」
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●嬉しさ=お客様にとっての価値=ベネフィット=達成したい目的
ここまで、お客様にとっての「嬉しさ」と表現してきましたが、それ
は色々な表現で言い換えられます。
「お客様にとっての価値」
というのが、より「学問的」な表現かと思います。ここでは「価値」
と「嬉しさ」は同じ意味として使っています。
そして、マーケティング用語ではその「お客様にとっての価値・嬉し
さ」を「ベネフィット」と呼びます。
「ベネフィット」に対してあてられる訳語は「便益」であることが多
いと思います。
BtoB(法人顧客対象のビジネス)の場合も同じですが、BtoB
の場合は
「顧客企業が達成したい目的」
という表現の方がしっくり来るかもしれません。
顧客企業が生産機材を買う場合、「もっと早く生産できるようにした
い」などの何らかの「目的」達成するために買うわけです。
スターバックスで300円のコーヒーを買って店内で飲むという場合
も、何らかの目的(コーヒーを飲みたい、休憩したい、誰かとおしゃ
べりしたい、など)を達成するために300円という「対価」を払う
わけですね。
ここでは、
・お客様にとっての「嬉しさ」
・お客様にとっての「価値」
・ベネフィット
・お客様が達成したい「目的」
などの表現は同じもの(相互に代替可能)として扱います。現実的に
もそれで問題ないかと思います。
要は、お客様が「対価」を払って得たい「何か」のことを「嬉しさ」
「価値」「ベネフィット」「目的」などの言葉で表現しています。
●「モノ」「機能・性能」ではなく「嬉しさ」
前号でも説明しましたが、お客様が「対価」を払う対象物は「商品・
サービス」ではなく「嬉しさ」です。
ですから、「機能・性能」を改善しても、それが「嬉しさ」につなが
らないのであれば、意味がありません。
一頃、携帯電話メーカーが「薄さ・軽さ」競争に血道を上げていまし
た。あるTV番組で見たのが、リーダーが「とにかくあと1mm薄く
しろ」(1mmかどうかは覚えていませんが)といったことを開発者
の方に強行に主張しているシーンです。
厚さ5cmの携帯電話が2cmに薄くなるのであれば「嬉しさ」につ
ながるでしょうが、15mmの厚みが14mmになっても「嬉しさ」
につながるとは思えません。
であれば、開発者の時間を「1mm薄くする」ことに使うのではなく
他の「嬉しさにつながること」に使うべきなのです。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆「嬉しさ」を知るには、「使い方」を知ろう
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●「価値は使い方に現れる」:嬉しさを知るには、使い方を知ろう
では、その「嬉しさ」「価値」とは具体的にどのようなものか、見て
いきましょう。
「嬉しさ」は、お客様のココロの中で生じるものですので、売り手に
はなかなかわかりません。どんな「嬉しさ」を求めて買ったのか、知
っているのはお客様だけです。
1つの有効な方法は、お客様に「直接聞いてみる」ことです。どんな
「嬉しさ」を求めて買ったのか、聞いてみれば良いわけです。
もう1つは、お客様の「使い方を見る・知る」ことです。
売れたま!で、極めて重要な主張の1つが「価値は使い方に現れる」
です。
お客様は、「使う」(=目的を達成する)ために買うわけです。
ということは、「使っている」場面が、「目的を達成している瞬間」
であり、「価値を感じている瞬間」であり、「嬉しい瞬間」です。
ですので、「使っている場面」を見るのが、「嬉しい瞬間」を知る、
有力な手がかりです。
例えば、売れたま!2016年8月4日号で紹介した、刃先が曲線の
ハサミ、プラスの、フィットカットカーブ。
刃先が曲線で、固いモノでもしっかり切れるので、大ヒット。
元々は、ハサミの「使い方」を調べたのが開発のキッカケでした。薄
紙よりは、厚紙などを切る「使い方」の方が多く、それに合わせてし
っかり切れるように刃を曲線にしたのです。
そして、さらにキッチンで昆布などを切るという「使い方」のために
「フィットカットカーブ 洗えるチタン」を出しました。
「価値は使い方に現れる」ので、その「使い方」を見れば「嬉しい瞬
間」がそこから推測できるのです。
その「嬉しい瞬間」をさらに嬉しくすることができるのであれば、そ
れは商品開発などの有力なヒントになります。
●使い方=TPO
「使い方」をさらに分解すると、TPOになります。
T:Time 時間
P:Place 場所
O:Occasion 対象物・加工方法
ですね。
先ほどの「フィットカットカーブ」、及び「フィットカットカーブ
洗えるチタン」のTPOを考えてみましょう。
フィットカットカーブ
T:仕事中に
P:オフィスの机の上で
O:アマゾンの段ボールを切って開ける
フィットカットカーブ 洗えるチタン
T:料理中に
P:キッチンで
O:昆布を切る
「フィットカットカーブ 洗えるチタン」は「調理用具」であり、元
々のフィットカーブ(いわゆる文房具)とTPOが違います。新しい
使い方(=新しいTPOの組み合わせ)を提供することで、新たな
「嬉しさ」を提供できるようになったわけです。
●「新しい価値の提案」=「新しい使い方・TPOの提案」
この「フィットカットカーブ 洗えるチタン」の事例からわかるよう
に、新しい「使い方」(=TPO)というのは、商品開発・改善の大
きなヒントになります。
よく「新しい価値の提案」と言われますが、「価値」=「使い方」
(=TPO)ですから、それを現実的に表現すると、「新しい使い方
=TPOの提案」となります。
逆に言えば、「お客様の使い方を無視した価値提案」などはあり得な
い(=売れない)、ということになります。
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◆「嬉しい瞬間」は無限にある
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●「嬉しい瞬間」は1つではなく、無限にある
「嬉しい瞬間」は一瞬とは限りません。無限にあります。
ガムメーカーが売っている「ミントガム」のお客様が「使って嬉しい
瞬間」は、例えば……
・ガムを味わっている、おいしい瞬間
・食べ終わって、口の中がスッキリした瞬間
・口臭が気にならなくなって、自信を持って話している瞬間
など色々「嬉しい瞬間」があります。「嬉しい瞬間」は、一瞬ではな
いのです。
美容院の「ヘアカット」サービスを受けて、お客様が「使って嬉しい
瞬間」は例えば……
・洗髪の時間が短くなったとき
・朝のセット時間が短くなったとき
・午後になっても髪が乱れていないとき
・気になるあの人に「その髪型いいね」と褒められたとき
など、やはり色々な「嬉しい瞬間」があります。
BtoBでも、例えば「燃費の良いエンジン」を自社が製造し、自動
車メーカーに売るとします。お客様の嬉しい瞬間は……
直接の顧客企業の「嬉しい瞬間」
・調達しやすく、調達担当者の手間が減ったとき
・エンジンを組み込む生産ラインの効率が上がったとき
・エンジンのお陰で「売れる車」ができ、車がヒットしたとき、さら
にその顧客が「次もまたこのメーカーから買おう」と思ったとき
顧客企業の顧客(=車のユーザー)の「嬉しい瞬間」
・燃費が良く、自分のガソリン代が減ったとき
と、「直接の顧客企業」の中でも、部署ごとに「嬉しい瞬間」があり
ますし、「顧客企業の顧客」にも「嬉しい瞬間」があります。
お客様が「嬉しい瞬間」は、このように、無限にあります。
その「嬉しい瞬間」がわかれば、お客様に「メッセージ」としてそれ
を伝える、その「嬉しい瞬間」をさらに強化する方法を考える、など
色々な打ち手が浮かんでくるはずです。
ただ、この「嬉しい瞬間」を知る・把握することは、現実的にはかな
り難しいです。
お客様につきまとい続け、「今嬉しかったですか?」と聞き続けるよ
うなことができれば良いのですが、なかなか難しいので、調査手法を
工夫する必要がありますね。
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◆BtoCの「嬉しさ」:人間の3大欲求
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●BtoCの「嬉しさ」:人間の3大欲求
では具体的にどのような「嬉しさ」があるのか、BtoC(個人顧客
対象のビジネス)とBtoB(法人顧客対象のビジネス)を分けて考
えていきましょう。
まずはBtoCからです。
BtoCの場合は、「嬉しさ」という言葉がぴったりはまります。
「嬉しさ」とは、「欲求が満たされる」ということですから、どんな
どんな欲求があるのかがわかれば、嬉しさの種類もわかります。
結論からいうと、現実のビジネスの場で使いやすいのは
○アルダファーのERG理論
です。
E:Existence (存在)
R:Relatedness (関係)
G:Growth (成長)
の略です。
マズローの欲求5段階説*でも良いのですが、5つもあると非常に覚
えにくいというのと(5つ全てを正確にスラスラと言えます?)、5
つが明確に区別しにくいので、私はERG理論をお勧めしています。
*マズローの欲求5段階説
自己実現欲求:自由、個性、成長の欲求
自我欲求:回りから評価されたいという欲求
所属・愛欲求:集団に所属したい、愛されたいという欲求
安全欲求:安定的な生活をしたいという欲求
生理的欲求:食べたい、寝たいなどの生理的欲求
私はマズローの5つの欲求に基づき、「3大欲求」としてまとめてい
ます。
1)生存欲求 : 生理的なニーズ(身体的快楽)
・生活を便利にしたい、おいしいものが食べたい、など
2)社会欲求 : 他人との関係ニーズ(他人の評価)
・他人とのつながりを強めたい
・褒められたい、見栄を張りたい、モテたい
3)自己欲求 : 自分自身で完結するニーズ(自己満足)
・自分らしくありたい
・自分を成長させたい
という、「人間の3大欲求」として使っています。
それがERG理論とほぼ同じだ、ということを後で知りました。
E:Existence (存在) → 生存欲求
R:Relatedness (関係) → 社会欲求
G:Growth (成長) → 自己欲求
ということですね。
「人間の3大欲求」は、ERG理論と全く同じではありませんが、か
なり近い分類になっていることがわかります。
●スターバックスの「嬉しさ」を「3大欲求」で分析してみよう
では例によってスターバックスの提供する「嬉しさ」を「3大欲求」
で分析してみましょう。
1)生存欲求 : 生理的なニーズ(身体的快楽)
スターバックスが提供する商品・サービスの場合は、「生存」そのも
のには関わりませんが、「身体的快楽」は提供しています。
・商品・サービスのおいしさ
・コーヒーで目が覚める
・ソファーなどの座り心地の良さ など
ここは、基本的な商品・サービスの部分ですね。「おいしさ」などは
「生存欲求」(身体的快楽)そのものでしょう。
2)社会欲求 : 他人との関係ニーズ(他人の評価)
・テイクアウトして、スターバックスのカップを周りに見せつけると
「スターバックスに行ってる自分」を周囲に見せられる(この欲求
は10年前は結構あったと思いますが、最近はスターバックスが増
えたのであまりないかもしれません) など
社会欲求は「他人とのつながり」ニーズです。「見栄を張りたい」な
どもここに入ります。
3)自己欲求 : 自分自身で完結するニーズ(自己満足)
・リラックスしてくつろげる、自分自身の時間
・「スターバックスに行ってる自分」が好き など
社会欲求は「他人にどう思われるか」ですが、自己欲求では「自分が
どう思うか」が重要です。
「スターバックスに行く理由」は、これらの欲求の組み合わせ、とい
うことになります。
ボールペンを買う理由も、この3大欲求の組み合わせになります。
1)生存欲求:書きやすい(ジェットストリーム)、持ちやすい
2)社会欲求:他人にそのボールペンを見せたい(モンブラン)
3)自己欲求:「モンブランを使っている自分」が好き
自動車もそうですね
1)生存欲求:載り心地、運転しやすさ、燃費など
2)社会欲求:他人にカッコイイ車を見せたい(ポルシェ)
3)自己欲求:「いつかはクラウン」
多くのニーズは、この3大欲求のどれかに分類されると思います。
この3大欲求に優劣があるかどうかは、難しいところです。人によ
る、という部分も多くありそうです。ベンツやBMWは、恐らくは
「社会欲求」「自己欲求」に対する訴求が強いのではないでしょう
か。
また、「生理的欲求」などの「低次」の欲求から、「自己実現欲求」
などの「高次」の欲求に順番に進む、とも限りません。「自己実現」
のために「生命」を犠牲にする例はいくらでもあります。生活を犠
牲にして趣味にお金を投じる、だったり、極端な話、自爆テロなども
命を犠牲にして何かを達成しているのでしょう。
何かモノを買ったときには、ご自身で「どの欲求を満たすために買っ
たのか」を考えてみるのは良い練習になります。
●3大欲求を満たすほど「嬉しさ」は増す
スターバックスの例で示したように、1つの商品・サービスが3大欲
求の3つ全てを満たすことができます。
むしろ、3大欲求を満たせるほど、「嬉しさ」は増えていきます。
ですので、商品・サービスの改善などをする場合は、どの「嬉しさ」
を強化・改善しようとしているのか、「3大欲求」で確認するといい
ですね。
「機能・性能」だけを向上しても、それは多くの場合「生存欲求」し
か向上しません。
「機能・性能」は変えずに(あるいは落としても)「デザイン」を向
上すれば、「社会欲求」「自己欲求」は上がるかもしれません。
お客様は「嬉しさ」に対して代価を払うわけです。
「どの嬉しさ」を強化すべきか、というのは重要なポイントです。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆BtoBの「嬉しさ」:使い方×QCD改善×PL・BS改善
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●BtoBの「嬉しさ」は、基本的には「稼ぎ」
BtoB(法人顧客対象のビジネス)でも、顧客企業は「嬉しさ」に
対して対価を払っている、ということは一緒です。
ただ、BtoBの場合、お客様は「会社」ですから「嬉しさ」の内容
が若干変わって来ます。
「会社」の最優先事項(の1つ)が「利益」ですから、お客様の嬉し
さは「利益を増やすこと」が主眼となります。
BtoBの場合の嬉しさは、基本的には「稼ぎ」「利益」となりま
す。
ですから、
「うちの商品・サービスを使えば、御社が儲かる」
と顧客企業に説得力を持って(かつ、うさんくさくないように)伝え
切れれば、高い確率で耳を傾けてもらえるでしょう。
●BtoBの「嬉しさ」:使い方×QCD改善×PL・BS改善
ではどうすれば、「うちの商品・サービスを使えば、御社が儲かる」
と言えるようになるのでしょうか?
結論から言えば、
1)自社商品の使い方(=TPO)
・自社商品を顧客企業は具体的にいつどこでどう使うのか?
2)顧客企業のQCD改善
・その結果、顧客企業の商品・サービスのQ(品質)C(コスト)
D(納期)はどう改善されるのか?
3)顧客企業のPL・BS・CF改善
・その結果、顧客企業のPL(損益)・BS(資産効率など)・CF
(キャッシュフロー・資金繰り)はどう改善されるのか?
という3ステップで考えると「顧客企業の嬉しさ」が考えやすくなり
ます。
2015年6月15日号で紹介した事例(小売業向けの「ATM型入
出金機)を使って考えていきましょう。
-----------< 記事引用 >------------
◇『富士通フロンテックは小売業向けに店舗の現金入出の管理と
ATMを一つにまとめた装置を開発した』『今回開発した「ATM
型入出金機」を使うと、店員が売上金をATM型入出金機に入れる
だけで集計作業が終わる。さらにクラウド上で過去のPOSレジの
釣り銭状況を分析。この金機からレジに必要な分だけ釣り銭がはき
出され、必要以上に現金をレジに持たなくて済むようにした』
◇『またATM型入出金機を利用して売上金を集計後、そのまま本部
の口座へと送金できる。従来、本部口座に送金する作業は3~4日
程度かかったが、半分程度で済むため、小売業にとっては運用益を
増やせる利点がある』
◇『14年11月から茨城県の中小スーパーへ試作機を導入してお
り、釣り銭の補充用に用意していた現金を5割以上減らせる見込み
だ。釣り銭の計算違いなどのミスも軽減した』『従業員の人手不足
が深刻な小売業では、バックヤード作業の中でもとくに現金管理の
作業負担が重荷となっている。入出金機の導入により店舗側は顧客
対応に多くの時間を割けるようになりサービスの向上につながる』
2015/05/13 日経MJ P.7
以下、記事からの引用部分は『』で括ります
-----------< 記事引用 >------------
1)自社商品の使い方(=TPO)
使い方・TPOが大事なのは、BtoBでも同じです。
「ATM型入出金機」のTPOは、
T:1日の売上を締めて、入出金や翌日の釣り銭を用意するとき
P:店内のバックヤードで
O:従業員が現金を出し入れする
となるでしょう。
2)顧客企業のQCD改善
まず、このATM型入出金機は色々なコスト改善につながります。
・現金管理という大きな作業負担(人件費)
・釣り銭の計算間違いなどのミス及びその対応を減らす(人件費)
・釣り銭用の現金を5割減らせるので、その金利負担が減る
また、これらの作業で浮いた時間を顧客企業(小売業)が接客などに
回せれば、顧客サービス(Q:品質)向上につながります。
3)顧客企業のPL・BS・CF改善
その結果として、PL・BS・CFという財務が改善されます。
まず、コスト削減できますので、利益がその分増えます。
さらに、
『従来、本部口座に送金する作業は3~4日程度かかったが、半分程
度で済むため、小売業にとっては運用益を増やせる利点がある』
という意味では、CF(キャッシュフロー)も良くなります。
このように見てきますと、「ATM型入出金機」は色々な意味で、顧
客企業の「稼ぎ」に貢献する商品のようです。あとは、導入費用との
比較、ということになりそうです。
まとめますと、BtoBの場合は、BtoC同様に「価値は使い方に
現れる」のですが、さらに一歩進んで、顧客企業の「稼ぎ方」までを
考える必要がある、ということです。
BtoBでは顧客企業の「使い方」に加えて「稼ぎ方」も考えよう、
ということです。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆BtoCでも、BtoBでも、「嬉しさ」を常に考えよう!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●お客様の「嬉しさ」が全ての始まり
では今号の内容について、まとめましょう。
マーケティングの本質は、「お客様に嬉しさを提供し、お金をいただ
くこと」です。
「お金を払う」のはお客様ですから、売り手ができることは、「お客
様に嬉しさを提供する」ことです。
その意味で「嬉しさ」が全ての中核となります。
○嬉しさ=お客様にとっての価値=ベネフィット=目的
○「価値は使い方に現れる」:嬉しさを知るには、使い方を知ろう
○使い方=TPO
「使い方」をさらに分解すると、TPOになる
T:Time 時間
P:Place 場所
O:Occasion 対象物・加工方法
○「新しい価値の提案」=「新しいTPOの提案」
○BtoCの「嬉しさ」:人間の3大欲求
1)生存欲求 : 生理的なニーズ(身体的快楽)
2)社会欲求 : 他人との関係ニーズ(他人の評価)
3)自己欲求 : 自分自身で完結するニーズ(自己満足)
○BtoBの「嬉しさ」:使い方×QCD改善×PL・BS改善
これで「嬉しさ」「価値」「ベネフィット」の説明が終わります。
しかし、この「嬉しさ」は、顧客によって異なります。ですから、顧
客を分けて考える必要があります。
次号は、セグメンテーション・ターゲティング、です!
ご質問・ご感想・ご意見お待ちしております!
★今日の「アタマに問いかけるべき適切な質問」
あなたは、お客様の「嬉しさ」について、真剣に考えていますか?
ぜひお考えになってみてください!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆2回目のまとめ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●「嬉しさ」は、全ての始まり。BtoCでも、BtoBでも、まず
は「嬉しさ」をしっかり考えよう!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 3回目のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
●「嬉しさ」は、人によって違う。「求める嬉しさの違い」でお客様
を括ろう!
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◆セグメンテーションは「嬉しさ」の違いで分ける
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●セグメンテーション:「嬉しさ」は人によって違うから「分ける」
ここまでの2号では、「嬉しさ」「嬉しさ」「嬉しさ」「嬉しさ」と
連呼してきました。
ただ、そのお客様が求める「嬉しさ」は人によって違います。
例えばタバコが好きな人、キライな人、がそれぞれにいるからホテル
には「禁煙室」があり、カフェに「分煙コーナー」があるわけです。
全人類が全く同じ「嬉しさ」を求めるのであれば、
・世界中のレストランは全て同じ
・世界中の雑誌は1つしかなく、全人類が同じ雑誌を読む
・自動車の種類は色も形も大きさも全て同じ
・全員が全く同じ服を着る
ということになりますが、もちろん現実はそうなっていません。様々
なレストラン、雑誌、自動車、服があり、様々な「嬉しさ」を提供し
ているわけです。
その「嬉しさ」で分けられたグループのことを「セグメント」と呼び
ます。
そして、分けられた各セグメントの中で、「狙い」(=優先順位)を
つけます。狙った(=優先順位の高い)セグメントが「ターゲット」
(ターゲットセグメント)となります。
通常は、自社の「強み」が活き、かつ、「十分に儲かる」セグメント
を狙うことになります。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆TPO・T:「使い方×人」で考える
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●同じ人でも、TPOによって嬉しさが違う
求める「嬉しさ」は「人」によって違う、ということを見てきまし
た。
さらに、同じ人でもTPOによって求める「嬉しさ」が変わります。
同じ人であれば、常に同じニーズを持つか、というとそうではありま
せん。
証明させてください。
あなたは、昨日の朝食、昼食、夕食、全く同じものを食べましたか?
もし、朝食、昼食、夕食でそれぞれ食べたものが違うのであれば、な
んと、朝と昼と夕で、食事に求める「嬉しさ」が違う、ということに
なります。同じ人でも、です。
通常、
・朝は忙しく、また、起きて間もないので軽いものを
・昼も忙しいが、ただ、体は目覚めているのでそれなりの量を
・夜は少し時間に余裕が有り、場合によってはアルコールも
といった感じで、食事に求める「嬉しさ」が時間(TPOのT)によ
って変わるのです。
さて、常夏の国、シンガポール。「常夏」ということは、冬が来ない
ということです。
シンガポールで「冬服」を売る方法を考えてみていただけますか?
覚えていらっしゃるかもしれません。2016年2月11号の事例で
す。
常夏の国、シンガポールでも、「冬服」は売れるのです。
-----------< 記事引用 >------------
◇『クリスマス前のこの季節、相変わらず最高気温が30度を超す常
夏のシンガポールだが、ショッピングモールの中は冬色に染まって
いる。流れるクリスマスソングや雪だるまの飾りだけではない。ダ
ウンジャケットやセーターなど、冬服を売る店が増えているのだ』
◇『学校が長期休みになる12月はシンガポールでは旅行シーズン。
欧米や北海道、韓国などへ冬を楽しみに出かける人が多い。海外出
張に行く人の需要もある。同国で23店を展開するユニクロでも、
店頭の最も目立つ場所にダウンジャケットやヒートテック、フリー
スが並ぶ。11~12月は冬物が売り場の半分以上を占める』
2015/12/11 日経MJ P.10
-----------< 記事引用 >------------
冬休みの旅行用・海外出張用です!! 常夏の国シンガポールの方で
も、寒い国に旅行・出張に行くときには冬服を買うんです!
同じ人でも、「地元のシンガポール」にいるときと「寒い国に旅行」
するときでは、服に求める「嬉しさ」が違うんです!!
同じ人でも、いる場所・行く場所などのTPOによって「嬉しさ」が
変わる、というのがわかりやすい事例です。
●TPO・T:「使い方×人」で考えよう!
「人」によって求める「嬉しさ」が変わります。
そして同じ人でも、「TPO」によって嬉しさが変わります。
ですから、
「使い方」と「人」の組み合わせ
で考えることが必要になります。
セグメンテーションは、「人」の分類ですが、実は「人の分類」だけ
では不十分なのです。
使い方(=TPO)×人(=Target)で、TPO・T(ティー
ポット)です。
「嬉しさ」と「人」を分けて考えるのではなく、
「どんな人がどう使ってどう嬉しいのか」
という「TPO・T」で考えるといいですね。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆括って広げる3ステップ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●括って広げる3ステップ
セグメンテーションとは「市場を分ける」ことです。そしてその中で
「ターゲティング」して狙いを絞っていくわけですから、それはお客
様を「絞る」ことです。
「絞るとお客様が減る」
と思われるかもしれませんが、そうとも限りません。
ここで重要なのが「括って広げる3ステップ」です。
○括って広げる3ステップ
ステップ1:顧客像の具体化
ステップ2:ニーズの普遍化
ステップ3:ニーズで人を括る
例によって、スターバックスを使って考えてみましょう。
学生にとっては夏休みの今、スターバックスやマクドナルドで勉強し
ている高校生をよく見かけます。特に真剣度が高いのが受験生である
高校3年生の方でしょう。
○ステップ1:顧客像の具体化 スタバで勉強する高校3年生
この高校3年生の求めるニーズ(嬉しさ)を「普遍化」します。具体
的にやっていることは「受験勉強」ですが、普遍化すると「静かな環
境で集中したい」となるでしょう。
○ステップ2:ニーズの普遍化 静かな環境で1人で集中したい
この「静かな環境で1人で集中したい」という普遍化されたニーズは
高校3年生の受験生だけではなく、多くの人が持っています。
私はスターバックスで本やメルマガを書いたりします。つまり「本を
書いている私」(中年男性)も同じニーズを持っています
スターバックスでゆっくり新聞を読んでいるシニアの方も、英語の勉
強をしてる主婦の方も、同じニーズを持っています。
○ステップ3:ニーズで人を括る スタバで本を書く中年男性
であれば、その「同じニーズを持つ、他の方々」を括ることで「人」
を増やせるのです。
●「嬉しさ」で広げれば、人は増やせる
この「括って広げる3ステップ」は、「個別具体的な顧客の嬉しさ」
を「普遍化」していくことで、「人」を増やしていく手法です。
上の事例では、
○ステップ1:顧客像の具体化 スタバで勉強する高校3年生
○ステップ2:ニーズの普遍化 静かな環境で1人で集中したい
○ステップ3:ニーズで人を括る スタバで本を書く中年男性
という考えるステップを経て、「同じ嬉しさ」を求めるお客様を増や
しています。
「人」ではなく、「嬉しさ」を軸に考えることで、「人」を増やすこ
とができるのです。
●「嬉しさ」がセグメンテーションの切り口となる
「同じ嬉しさ」を求めるのであれば、「打ち手」も同じになります。
このような「静かな環境で1人で集中」という「嬉しさ」を求めるセ
グメントに対しては、
・1人席を増やす
・テーブル席とは離した位置にする(テーブル席ではおしゃべりをす
る人が多い。1人で集中したい人は静かな環境を求める)
・文房具を売る
などの打ち手が考えられます。
これは、「どんな人か」に関わらず、「静かな環境で1人で集中した
い」という「嬉しさ」を求める人には共通した打ち手になります。
「嬉しさ」をきちんと捉えることができれば、「人」から離れられる
のです。
もちろん、この後で
「静かな環境で1人で集中」という嬉しさを求める人はどんな人か?
という「人」への落とし込みをしても構いません。実際に、この嬉し
さを求める人の人数を性別・年代・職業別に考えていく意味はあるで
しょう。
TVCMを出す場合など、最終的には性・年代別などに落とし込む必
要も出てきます。
しかし、あくまでも「嬉しさ」が中核です。
セグメンテーションは、求める「嬉しさ」が違うから分けるのであっ
て、「人」が違うから分けるのではありません。
ですから、セグメンテーションの切り口も「嬉しさ」になるのです。
「求める嬉しさの違い」でお客様を「括る」のが、セグメンテーショ
ンの「極意」と言えます。
ちなみに、セグメンテーションの「切り口」については、2012年
12月の特集号から、4ヶ月に渡って連載したまとめ記事が以下にあ
りますので、今回は繰り返しません。そちらをご覧ください。
本2~3冊分の長さです。
ご質問・ご感想・ご意見お待ちしております!
★今日の「アタマに問いかけるべき適切な質問」
セグメンテーションの切り口は「嬉しさの違い」になっていますか?
ぜひお考えになってみてください!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆3回目のまとめ
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●「嬉しさ」は、人によって違う。「求める嬉しさの違い」でお客様
を括ろう!
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━━━━━━━━━━━━━━特別編Vol.338(累計1355) 2016/08/29
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 4回目のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
●「強み」は、競合との「嬉しさの差」。「嬉しさの差」が、「お客
様が競合ではなく自社を選ぶ理由」=「強み」となる!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆ここまでの復習
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ここで一旦、1~3回目のまとめをしておきます。
◆1回目:マーケティングの本質=嬉しさを提供し、対価をいただく
○売上=客数×客単価
=嬉しさを感じた人の総数 × 1人1人が感じた嬉しさ
=自社がお客様に提供した嬉しさの総和
1)客数向上:より多くの人に嬉しさを提供する
2)客単価向上:顧客1人当たりにより多くの嬉しさを提供する
○「売上を作る力」=「お客様への嬉しさ提供力」
○利益=提供した「嬉しさ」の総和-「嬉しさ」の提供コスト
○費用1円あたりの提供した「嬉しさ」が大きいほど利益率が高まる
○「利益をあげる力」=「費用1円あたりの嬉しさ提供力」
◆2回目:嬉しさ=価値=ベネフィット=お客様が達成したい目的
○お客様は「モノ」「機能・性能」ではなく「嬉しさ」を買う
○「価値は使い方に現れる」:嬉しさを知るには、使い方を知ろう
○使い方=TPO:使い方をさらに分解するとTPOになる
T:Time 時間
P:Place 場所
O:Occasion 対象物・加工方法
○「新しい価値の提案」=「新しい使い方・TPOの提案」
○「嬉しい瞬間」は1つではなく、無限にある
○BtoCの「嬉しさ」:人間の3大欲求
1)生存欲求 : 生理的なニーズ(身体的快楽)
2)社会欲求 : 他人との関係ニーズ(他人の評価)
3)自己欲求 : 自分自身で完結するニーズ(自己満足)
3大欲求を満たすほど「嬉しさ」は増す
○BtoBの「嬉しさ」:使い方×QCD改善×PL・BS改善
◆3回目:セグメンテーション 「嬉しさ」で人を括る
○「求める嬉しさ」は人によって違うから分ける。分けることが「セ
グメンテーション」、分けられた各グループが「セグメント」
○TPO・T:「使い方×人」で考える
TPO(使い方)・TargetでTPO・T(ティーポット)
同じ人でもTPOで嬉しさが変わる:朝食と夕食は違うものを食べ
るし、常夏の国の人でも、旅行用に冬服を買う
○括って広げる3ステップ:「求める嬉しさ」で括れば人が広がる
ステップ1:顧客像の具体化 → スタバで勉強する高校3年生
ステップ2:ニーズの普遍化 → 静かな環境で1人で集中したい
ステップ3:ニーズで人を括る→ スタバで本を書く中年男性
○求める「嬉しさ」がセグメンテーションの切り口
セグメンテーション特集 https://uretama.com/?page_id=510
ここまで、
・1回目:マーケティングを「嬉しさ」中心に考える
・2回目:「嬉しさ」とは何か:ベネフィット
・3回目:「嬉しさ」で顧客を括る:セグメンテーション
と見てきました。
すごく大きくまとめれば、
マーケティングとは、さらに言えば、企業活動はお客様にとっての
「嬉しさ」(=価値=ベネフィット)を最大化すること。
「嬉しさ」(=価値)は「使い方に現れるので、「新たな価値提案」
とは「新たな使い方に提案」にほかなりません。
そしてその「嬉しさ」(=価値=使い方)は人によって違うので、分
けて考える必要があります。
ということです
4回目のここから、「強み」に入っていきます。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆「強み」は競合との「嬉しさの差」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●強み=お客様が競合ではなく自社を選ぶ理由=競合との嬉しさの差
「強み」の定義は、「お客様が競合ではなく自社を選ぶ理由」です。
自分の自分の商品・サービスは、お客様に「嬉しさ」を提供します。
しかし、「競合」の商品・サービスも「嬉しさ」を提供しています。
自社の商品・サービスがお客様に提供する「嬉しさ」が、競合の「嬉
しさ」を上回れば、お客様は自社の商品・サービスを選びます。
すなわち、
自社が提供する嬉しさと、競合が提供する嬉しさの「差」
が「強み」(=お客様が競合ではなく自社を選ぶ理由)となります。
●「ベネフィット」と「強み」の違い
「ベネフィット」と「強み」の違いは何ですか、という質問をよくい
ただきます。
・ベネフィット=自社商品・サービスがお客様に提供する「嬉しさ」
・強み=自社商品・サービスと競合との「嬉しさの差」
・自社の強み=自社のベネフィット-競合のベネフィット
となります。これが「ベネフィット」と「強み」の違い、です。
例えば、夏に、他のカフェではなくスターバックスに行く理由(=ス
ターバックスの強み)を考えてみましょう。
夏だから、冷房の効いた場所で「涼しくなれる」という「嬉しさ」も
スターバックスは提供しています。
が、競合のカフェでも同様に涼めます。スターバックスが特に涼しい
ということはないでしょう。ですから、「涼しさ」は競合との「差」
がないために、「強み」になりません。
「甘くて冷たいメニューが他より豊富(フラペチーノなど)」
というのはあるかもしれません。
この場合には、商品の「おいしさの差」が「嬉しさの差」となる、と
いうことになります。
●価格1円あたりの「嬉しさの差」
厳密に言えば、「強み」は
「価格1円あたりの嬉しさの差」
です。
・同じ価格なら、より「嬉しい方」を買う。
・同じ嬉しさなら、より「安い方」を買う(安い方が「嬉しい」)
ということです。
「費用対効果」「コストパフォーマンス」といった表現を使う場合、
この「効果」「パフォーマンス」は「嬉しさ」「価値」になります。
ここから先は、「嬉しさ」といった場合、この「価格1円あたりの嬉
しさの差」という意味を含むことにします。
●「強み」は「使い方」(=TPO)によって変わる
2回目の復習ですが、
○お客様は「モノ」「機能・性能」ではなく「嬉しさ」を買う
のです。
同様に「強み」も「機能・性能の差」ではなく「嬉しさの差」です。
例えば、ノイズキャンセリングヘッドホン。周囲の雑音をカットして
音楽などが聴きやすいヘッドホンです。最近、電車の中でも見ます。
他のヘッドホンにノイズキャンセリング(騒音低減)機能がないとす
れば、「機能の差」はあります。
電車や飛行機の中などでは非常に「嬉しい」機能です。
が、そもそも「雑音がある場所」で音楽を聴かない(そのような「使
い方」(=TPO)をしない)のなら、この「機能」が「嬉しさ」に
つながりません。
「価値は使い方に現れる」というのは売れたま!の定理です。「嬉し
さ」は「使い方(=TPO)」で変わります。
「強み」(=嬉しさの差)も同様に「使い方」(=TPO)で変わる
のです。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆「事実」としての「差」と、「意味」としての「差」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●「事実」としての「差」と、「意味」としての「差」
「強み」は、2つの要素から構成されています。
というか、同じことが2つの側面を持つ、と言った方が正確かもしれ
ません。
それは「事実」としての競合との差、と、「意味」としての競合との
差、です。
○事実としての差:性能・機能・形・提供速度などの物理的な違い
○意味としての差:お客様の「嬉しさ」の違い
「強み」は「嬉しさの差」ですが、それは「意味としての差」です。
ただ、その「意味としての差」は、「事実としての差」がなければ産
まれません。
例えば、デジカメの画素数。
私のスマホの画素数は、800万画素です。別のスマホが、1600
万画素、という2倍の画素数になったとします。
○事実としての差:デジカメの画素数が2倍
この「性能の差」が「嬉しさの差」になれば、「強み」になります。
が、そうなるとは限りません。
普通に人物写真を撮って年賀状に使うという「使い方(=TPO)」
においては、800万画素すら不要です。500万画素もあれば恐ら
く十分で、800万画素も1600万画素も一緒です。
ですので、「画素数2倍」は、この「使い方(=TPO)」では強み
になりません。画素数を増やすと年賀状の印刷速度が遅くなるでしょ
うから、「弱み」にすらなります。
ですのでこれを「意味」としての「差」に転化する必要があります。
A4、A3などのサイズの「印刷物」に使う場合には、画素数があっ
た方が、一般論としてキレイに印刷できます。
○意味としての差:大型の印刷物がキレイに印刷できる
また、「トリミング」というのもあります。例えば、東京の家の窓か
ら見える富士山を年賀状に使うとします。富士山は遠いので、ズーム
しても、限界があります。
画素数が少ないと、富士山だけを切り出して拡大すると、粗くなって
しまいます。この場合には、画素数が多いほど有利です。
○意味としての差:遠くのものをキレイに拡大できる
まとめますと、
○事実としての差:デジカメの画素数が2倍
○意味としての差:大型の印刷物がキレイに印刷できる
○意味としての差:遠くのものをキレイに拡大できる
ということです。
これで、「画素数の差」という「モノの差」が「嬉しさの差」になり
ました。
両者の違いは何でしょうか?
「事実としての差」の主語は「モノ」です。「このデジカメは」画素
数が2倍、です。
「意味としての差」の主語は「お客様」です。「お客様が」キレイに
印刷できる、キレイに拡大できる、です。
そして「意味としての差」は、「使い方」になっています。ある使い
方における「嬉しさ」なのです。
つまり、
○事実としての差:主語は「モノ」 モノ、機能・性能の差
○意味としての差:主語は「顧客」 ある使い方における嬉しさの差
ということです。
「静音性の高い車」などでも同じです。
○事実としての差:この車(主語)は、他社より○○デシベル静か
○意味としての差:お客様(主語)が子供とドライブ中、子供がぐっ
すり眠れる
○意味としての差:お客様(主語)がクラシック音楽を聴いていると
きに、音楽の細かいニュアンスが聞き取れる
となりますね。
「事実としての差」と「意味としての差」が両方揃って、「強み」と
なるのです。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆「嬉しさ」の差別化をしよう! 「嬉しさ」の競争をしよう!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●「製品差別化」ではなく「嬉しさの差別化」を考えよう
「差別化」も同じです。「差別化」も、「モノ・機能・性能」ではな
く、「嬉しさ」で差別化すべきです。
「製品差別化」という言葉がありますが、これはあまり使いたくない
言葉です。
差別化するのは「製品」ではなく「嬉しさ」だからです。
「事実の差」(=製品の差)がなければ、「意味の差」(=嬉しさの
差=強み)が産まれません。
しかし「事実の差」(=製品の差)があったとしても、それを「意味
の差」に転化できなければ、「強み」(=お客様が競合ではなく自社
を選ぶ理由)にはならないのです。
「製品差別化」は、あくまでも「嬉しさの差別化」の手段です。
競争すべきは、「機能・性能」ではなく「嬉しさ」なのです。
私たちは、「機能・性能」競争をしているのではありません。
提供する「嬉しさ」の競争をしているのです。
●今号のまとめ
○強み=お客様が競合ではなく自社を選ぶ理由=競合との嬉しさの差
正確には、「価格1円あたりの嬉しさの差」
○「ベネフィット」と「強み」の違い
ベネフィット=自社商品・サービスがお客様に提供する「嬉しさ」
強み=自社商品・サービスと競合との「嬉しさの差」
自社の強み=自社のベネフィット-競合のベネフィット
○「強み」は「使い方」(=TPO)によって変わる
○「事実」としての「差」と、「意味」としての「差」
事実としての差:主語は「モノ」 モノ、機能・性能の差
意味としての差:主語は「顧客」 ある使い方における嬉しさの差
○事実としての差:デジカメの画素数が2倍
○意味としての差:大型の印刷物がキレイに印刷できる
○意味としての差:遠くのものをキレイに拡大できる
○嬉しさ競争:「製品差別化」ではなく「嬉しさの差別化」を!
★今日の「アタマに問いかけるべき適切な質問」
あなたの「強み」は、「競合との嬉しさの差」になっていますか?
「製品差別化」ではなく「嬉しさ競争」に集中していますか?
ぜひお考えになってみてください!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆4回目のまとめ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●「強み」は、競合との「嬉しさの差」。「嬉しさの差」が、「お客
様が競合ではなく自社を選ぶ理由」=「強み」となる!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■
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━━━━━━━━━━━━━━特別編Vol.339(累計1356) 2016/09/01
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 5回目のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
●「4P」は「嬉しさ」を知らせ、届け、実現し、対価をいただく。
「強み」は4Pで現実化する!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆「嬉しさ」を現実化する4P
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●「嬉しさ」を現実化する4P:売り物・売り方・売り場・売り値
ここまで見てきた
・「嬉しさ」とは何か:ベネフィット (2回目)
・「嬉しさ」で顧客を括る:セグメンテーション (3回目)
・強みは競合との「嬉しさの差」:強み (4回目)
は、全て「概念」です。目に見えません。セグメンテーションの対象
である「顧客」ターゲットについては見えますが、それをどう括る
か、は、やはり「概念」です。
お客様に見えるものは、「4P」であり、4Pとして、ここまでの
「概念」が現実化されます。
○「4P」
・売り物=Product 商品・サービス
・売り方=Promotion 広告・販促
・売り場=Place 販路・チャネル
・売り値=Price 価格
頭文字が全てPですので、4P(複数だから4Psだ、というご意見
もおありでしょうが、4Pで統一します)。
マーケティングを「勉強」すると必ず出てくるフレームワークです。
●ベネフィット、セグメンテーション、強み、との一貫性
4Pにおいて重要なのは、ここまで見てきたこととの一貫性です。
1)どんな嬉しさを現実化するのか:ベネフィット
2)どんな人が嬉しさを感じるか:セグメンテーション・ターゲット
3)競合との嬉しさの差は何か:強み
売り物・売り方・売り場・売り値すべてにおいて、この3つと明確な
一貫性を持つ必要があります。
「嬉しさ」(およびその競合との差)を明確にし、売り物・売り方・
売り場・売り値を同じ方向に向けることで、お客様が「嬉しさ」を実
感し、お客様に「刺さる」ようになります。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆売り方:お客様に「嬉しさ」を伝える
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
では、ここから先は、お客様が一般的に経験する順番で考えて行きま
しょう。
●「売り方」:お客様にメッセージとして「嬉しさ」を伝える
お客様があなたの商品・サービスのことを何も知らない、という場合
は通常は、
・TVCM、雑誌広告、オリコミ、
・店頭、店内POP・チラシ、
・配布サンプル
・営業担当者の行動(電話、訪問など)
・配布サンプル
・展示会
・口コミ拡大活動による口コミ
・HP、ブログ
などの、いわゆる「広告」「販促」「広報」活動を通じて認知するこ
とが多いと思います。
「広告」「販促」「広報」などに分けても良いですが、いずれにして
も「嬉しさをメッセージとして伝える」ことが重要な役割です。
●「売り方」では、「嬉しさ」「強み」を伝える
この段階では、どんな商品・サービスかという基本情報はもちろん、
それに加えて「それが自分にどんな嬉しさ」をもたらすか、を知るこ
とがお客様にとっては重要になります。
なぜなら、お客様がその商品・サービスを「認知」したとしても、そ
れに「嬉しさ」を感じて「興味」をもたなければ、無視してしまうか
らです。
CMを大量に流したり、チラシを大量に配ったりすれば「認知」は得
られます。
しかし、「嬉しさ」を感じなければ、「興味」を持たずにそこで終わ
ってしまいます。
あなたが、家から会社に通勤されるまでの間に、少なくとも数十~数
百の「店」の前を通るでしょう。
その多くの「店」に、あなたが「嬉しさ」を感じ取れば興味を持って
「いつか行こう」と考えるでしょうし、そうでなければ無視します。
さて、あなたはいくつのお店に「いつか行こう」と思われました?
多くて1割ではないでしょうか? 興味を感じなかった店は、あなた
に「嬉しさ」を店頭で伝えきれなかったか、あるいはあなたがその店
に「嬉しさ」を感じる「ターゲット」ではなかった、となります。
いずれにしてもカギは「嬉しさ」です。
さらに、「強み」(=お客様が競合ではなく自社を選ぶ理由)すなわ
ち「競合との嬉しさの差」まで伝えられるとさらに良いです。
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◆売り場・売り値:お客様に「嬉しさ」を届け、対価をいただく
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●「売り場」:お客様に「嬉しさ」を届ける
「売り方」を通じて「嬉しさ」を感じたお客様は、次に実際に見て、
確認して、買う、ということになります。
この「場」を提供するのが「売り場」です。
商品・サービスをお客様の手元に届けることで、「嬉しさを届ける」
ことが「売り場」の役割です。
「売り場」は広い意味の「売り場」です。
商品・サービスを店舗で売る場合は、お店が「売り場」になります。
通販で売る場合は、
・TV・ラジオ・新聞
・電話
・カタログ
・DM
・HP
などの、通販の媒体が「売り場」になります。
BtoB(法人顧客対象のビジネス)では、「自社の営業担当者」や
「代理店」が「売り場」になることもあります。「営業担当者」は、
その意味では「動く売り場」ですね。
「嬉しさをお客様の手元に届ける」という意味では、物流もその一部
になります。
アマゾンや楽天のメインの「売り場」はHPですよね。実際に商品を
届けるという意味では運送会社までを含めての「売り場」と考えた方
が良いですね。
「売り場」は、お客様に「嬉しさ」を届けるところですから、お客様
に「届けられる」場所でないと意味がありません。
お店の場合、お客様の行動範囲内になければお客様が来られません。
百貨店などでは、あるフロアに「売り場」があったとしても、そもそ
もそのフロアに来て欲しいお客様が来ないのであれば、その「売り
場」とターゲットが「合っていない」ということになります
●「売り値」:お客様が払う「嬉しさ」の「対価」
「売り場」のもう1つの役割が、お客様から「対価」としての「売り
値」をいただくことです。お客様からすると「売り場でお金を払う」
ということになります。
お客様が「嬉しさ」を感じていれば、それに見合う「対価」を払いま
す。
「売り値」は「モノの対価」ではなく、「嬉しさの対価」です。
「売り値」は「嬉しさの対価」ですから、より大きい「嬉しさ」を提
供すれば、売り値が上げられます。
前にもやりましたが、スターバックスのコーヒー(約300円)は、
マクドナルドのコーヒー(100円)の約3倍の「売り値」です。
そこには、
・商品・サービスのおいしさ
・店舗の清潔さ・居心地の良さ
・従業員対応の心地よさ
など全てを含めた「嬉しさの対価」として、3倍の対価を払っている
わけです。
価格競争になっている場合は、自社は競合と同程度(あるいはそれ以
下)の嬉しさしか提供できていない、ということです。
ここでいう「売り値」は、「支払い方法」「与信」なども含めた、広
い意味です。
BtoB(法人顧客対象のビジネス)の場合は、請求書払いとなるで
しょうし、通販の場合は、現金では払えないので、クレジットカー
ド、振込、なども含めての「売り値」と考えると良いです。
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◆「売り物」:お客様が使って「嬉しさ」を実現する
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●「売り物」:お客様が使って「嬉しさ」を実現する
ここまで、「売り方」で商品・サービスを知って、「売り場」でその
商品・サービスを買い、対価としての「売り値」を支払ったことにな
ります。
買った「売り物」がいよいよ「嬉しさ」を実現する、ということにな
ります。
「飲み物」を買う場合、TVCMなどの「売り方」で知り、コンビニ
などの「売り場」でその飲み物を買い、対価としての「売り値」を支
払います。
そしてその「飲み物」という商品・サービスを「使う」(この場合は
「飲む」ことで「嬉しさ」を実現します。
お客様は商品・サービスを「使う」ことで、嬉しさを実現します。
「使う」ために買うのです。
ですから、「価値は使い方に現れる」わけです。
ここでの「売り物」は、アフターサービスなども含めた広い意味を指
しています。
●「売り物」が「強み」を実現する
「強み」は、「お客様が競合ではなく自社を選ぶ理由」です。これは
「概念」ですから、目に見えません。
「強み」は、「商品・サービス」という「売り物」を媒介して、この
世に現実化します。
その意味で、「売り物」は「強み」の物的な存在です。そして同時に
そこに「概念」としての「強み」(=お客様が競合ではなく自社を選
ぶ理由)が内在しているわけです。
ここで、4回目の「強み」の内容を思い出してください。
○「事実」としての「差」と、「意味」としての「差」
事実としての差:主語は「モノ」 モノ、機能・性能の差
意味としての差:主語は「顧客」 ある使い方における嬉しさの差
○事実としての差:デジカメの画素数が2倍
○意味としての差:大型の印刷物がキレイに印刷できる
○意味としての差:遠くのものをキレイに拡大できる
「事実としての差」は、「売り物」に現れます。自社商品・サービス
と競合の商品・サービスが物理的にどう違うか、です。
「画素数が2倍」というのが、デジカメの「売り物」としての「競合
との差」です。
この「売り物」としての「物理的な競合との差」が、「意味としての
差」という「嬉しさの差」を作り出すわけです。
逆に、「物理的な競合との差」がなければ、「意味としての差」が産
まれない、すなわち差別化できない、ということになります。
だから「売り物」が「強み」を作り出すわけです。
先ほど、スターバックスのコーヒーはマクドナルドのコーヒーの約3
倍の価格、ということを紹介しました。
スターバックスの「売り物」は「コーヒー」という黒い液体だけでは
ありません。コーヒーだけをとってみれば、3倍は違わないと(個人
的には)思います。
スターバックスの「売り物」は、内装、トイレの清潔さ、落ち着ける
BGM、座り心地の良いソファなども含めての「売り物」であり、そ
れも含めて3倍の「売り値」をお客様が(恐らくは喜んで)払ってい
るのでしょう。
ここまで見てきたように、「嬉しさ」は、4Pを通じて現実のものと
なり、お客様が「嬉しさ」を得られるのです。
●今号のまとめ
○「嬉しさ」を現実化する4P:売り物・売り方・売り場・売り値
○「売り方」:お客様にメッセージとして「嬉しさ」を伝える
「売り方」では、「嬉しさ」「強み」を伝える
○「売り場」:お客様に「嬉しさ」を届ける
○「売り値」:お客様が払う「嬉しさ」の「対価」
○「売り物」:お客様が使って「嬉しさ」を実現する
「売り物」が「強み」を実現する
★今日の「アタマに問いかけるべき適切な質問」
あなたは、「嬉しさ」と「強み」を4Pで実現していますか?
ぜひお考えになってみてください!
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◆5回目のまとめ
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●「4P」は「嬉しさ」を知らせ、届け、実現し、対価をいただく。
「強み」は4Pで現実化する!
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◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 6回目のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
●マーケティングの中核にあるのが「想い」。お客様をどう応援して
どんな「嬉しさ」に満ちた世界にしたいのか、が全てを決める!
6回目の今号は、「想い」と、ここまでの理論のまとめです。
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◆社会の「嬉しさ」を考える「想い」
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●「想い」:どんな「嬉しさ」に満ちた世界を作りたいのか?
今回が、マーケティングの基礎理論としては最後になります。
基礎理論最後の要素にして、中核となる要素が「想い」です。
お客様をどう応援し、どんな「嬉しさ」に満ちた世界にしたいのか、
が「想い」です。
「ベネフィット」と似ているようですが、違いは、
○ベネフィット=個別具体的なお客様の、個別具体的な嬉しさ
○「想い」=世の中全体の「嬉しさ」
ということです。
その商品・サービスを通じて、どのような「嬉しさ」「幸せ」な世の
中を作ることに貢献したいのか、ということです。
「あなたはこの商品・サービスで、結局何がしたいの?」
というすさまじく本質的な問いです。
それは「自分が夢見る幸せな社会とは、どんな社会なのか」というこ
とでもあります。
仕事をしていれば、辛いときもあります。というか、辛いときの方が
多いでしょう。
そんなときでも、この「想い」があれば、頑張れます。あと一歩、踏
ん張れるのです。
逆に言えば、「そのためならもっと頑張れる」と思えるようなものが
「想い」ですね。
「マーケティング3.0の話ですか?」とか言われそうですが、コト
ラー大先生の書籍「Marketing 3.0」は2010年、この「想い」の
理論を書籍に記した「ドリルを売るには~」は2006年ですから、
こちらの方が先です。もっとも、この「想い」の話はもっとずっと前
からある話だと想います。
●電話の「想い」:連絡が取りやすい社会
例えば、固定電話や携帯電話の場合は、「連絡が取りやすい社会」と
いう「想い」がありそうです。
もはや「電話がない時代」を想像するのは難しいかもしれませんが、
そのときの緊急連絡手段は「電報」でした。「サクラサク」のような
文言を当時の「電報電話局」(今のNTT)の方が届けに来てくれた
わけです。
そして、黒電話(固定電話)が一家に1台、携帯電話が1人に1台、
と「連絡が取りやすい社会」になっていくわけですね。
その典型が「カエルコール」(帰るコール)。「今から帰るね」とい
う電話を1つ入れることで、色々な段取りがしやすくなるからか、昔
人気になり、世の中に受け入れられました。
そう考えると、「電報」も「連絡が取りやすい社会」を実現するもの
と言えそうです。少し前は、結婚式で「祝電」を披露する時間があり
ましたよね(私の結婚式でもいただきました)。
電話の場合は、広がるほどに利便性が上がる、といういわゆる「ネッ
トワークエクスターナリティ」(ネットワーク外部性)の効果が働き
ます。
まさに「誰か1人に電話を売ることが、その電話の価値を高める」と
いう意味で、「世の中全体の嬉しさ」を増やすわけです。
●コンビニの「想い」:「あいてて良かった♪」
飽和したと言われながらも、毎年出店が続くコンビニエンスストア。
全店売上高 年末店舗数
2005年 7.4兆円 42,643店
2015年 10.2兆円 53,544店
(日本フランチャイズチェーン協会
http://www.jfa-fc.or.jp/particle/320.html)
この10年で見ても、店舗数は1万店以上、売上高は3兆円弱増えて
います。
私が子供の頃、コンビニはまだなく、文具は文具屋さんで、お菓子は
お菓子屋さんで買うのが当たり前でした。しかし、日曜日に文具を買
いに行っても、開いておらず、本当に困ったことを覚えています。
だから……コンビニは「あいてて良かった」(昔のセブン-イレブン
のキャッチコピー)なんです。
コンビニは、世の中を本当に便利にしましたし、夜でも灯りがつき、
人通りがあることで、治安も良くなったと思います。
今はセブン-イレブンは「近くて便利」と言っていますが、大きな
意味では「想い」自体は変わっていないと言えそうです。
●戦略BASiCS:無用な競争を減らしたい
売れたま!の看板フレームワーク、戦略BASiCS。このシリーズ
も、次号から戦略BASiCSに入っていきます。
戦略BASiCSは、もちろん「個々の会社」の売上向上をお手伝い
する道具です。
が、戦略BASiCSが世の中全体に広まると、無用な競争が減るは
ずです。
自社の「独自資源」に基づく「強み」とそれを求める「お客様」に強
固なつながりができるため、同質競争が減るからです。
戦略BASiCSは競争を促進するようなものに見えますが、全く逆
です。
自社の「強み」を磨き上げ、それに共鳴する「お客様」との素敵な関
係が増え、競合との無用な「戦い」は不要になるのです。
だからこそ、戦略BASiCSを世の中に広めたい、というのが私の
「想い」なのです。
●世の中の「嬉しさ」を減らす商品・サービスもある
以上は、世の中にプラスの影響を与える「想い」でしたが、そうでは
ないものももちろんあります。
極端な例が「麻薬」です。個人で見れば「嬉しさ」が(恐らくはほん
の一瞬)増すかもしれませが、麻薬が世の中に広まるほどに、世の中
全体としての「嬉しさ」は減っていくのではないでしょうか?
その商品・サービスが世の中に広まるほどに、世の中はどうなってい
くのか、というのは重要なチェックポイントだと思います。
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◆全体の「一貫性」と「具体性」
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●「嬉しさ」が貫くマーケティングの「5つの基礎理論」
ここまで、
1回目:マーケティングを「嬉しさ」中心に考える
2回目:「嬉しさ」とは何か:ベネフィット
3回目:「嬉しさ」で顧客を括る:セグメンテーション・ターゲット
4回目:強みは競合との「嬉しさの差」:強み
5回目:「嬉しさ」を現実化する:4P
6回目:「嬉しさ」に満ちた世界を作る:想い
と見てきました。
この、
1)ベネフィット:お客様の「嬉しさ」
2)セグメンテーション・ターゲット:「嬉しさ」で顧客を括る
3)強み:競合との「嬉しさの差」
4)4P:「嬉しさ」を現実化する売り物・売り方・売り場・売り値
5)想い:「嬉しさ」に満ちた世界を作る
の5つが、マーケティングの「基礎理論」となります。
マーケティングには色々な専門書がありますが、その本質はこの5つ
になります。
そしてその5つは、全て「嬉しさ」を中核に説明すると、極めて単純
かつわかりやすくなることがおわかりいただけるかと思います。
これが、「マーケティングで読むべき最初の1冊」である
・ドリルを売るには穴を売れ(=新人OL、つぶれかけの会社をまか
される)
・マンガ 新人OL、つぶれかけの会社をまかされる
の中核理論となっています。
ただ、「単純」であることは、「簡単」であるとは限りません。
というか、この「5つの基礎理論」をきちんと練って、きちんと実行
することはむしろ「極めて難しい」ことです。
その意味で、上記書籍は「読みやすい入門書」であると同時に、「極
めて難しい実戦の書」という側面を持っています。
●「良い」マーケティングの2つの要素:「一貫性」と「具体性」
この「5つの基礎理論」を実戦する際に重要なのが、
1)一貫性:各要素は全体としてつながっているか、
2)具体性:各要素の描写は具体的で例示があるか
の2つです。
マーケティングの打ち手に「正解」「誤り」はあまりありません。
「こうすれば絶対うまくいく」という「魔法の法則」もありません。
あるのであればぜひ教えてください。そんな魔法があれば、「聖杯」
どころではない各国の奪い合いになるでしょう。自国の経済だけがう
まくいく(=自国の商品だけが売れる)ようになるからです。
状況に応じて変わりますし、やってみないとわからない、という面も
多分にあります。
が……「一貫性」「具体性」がなければ、それは「間違い」です。
その2つについて、見ていきましょう。
●「具体性」
まずはわかりやすい(簡単という意味ではありません)「具体性」か
ら。
・顧客ターゲットは「シニア層」です。
・この機械は「高品質」です。
・この食品の強みは「安心・安全」です。
というのは全てダメ、です。「シニア層」「高品質」「安心・安全」
には全て「具体性」がないからです。
「シニア層」といっても、例えば60歳以上の方は3,928万人、
人口の31%もいます。0~29歳の人口よりも多いのです。同じ
70代の方でも、寝たきりの方もいれば、海外スキーに行って、雪山
をスキー担いで登る方もいます。全然違います。「どんな」シニア層
なのかを具体化しないと、何もできません。
「高品質」もダメです。「耐久性が高い」「デザインが良い」のも、
どちらも「高品質」に入り得ます。「耐久性」と一口に言っても、
「1万時間連続稼働できる」ことと「1tの荷重に耐える」ことは、
全く違います。「何がどう高品質なのか」を具体化しないと、商品も
販促コピーも作れません。
「この食品の強みは安心・安全」もダメです。競合が「毒入り」の商
品を売っているのであればそれでもいいですが、国内で大規模に流通
している食品であれば、「安心・安全」は当たり前です。「防腐剤不
使用で安全」と言っても、防腐剤が入っているからこそ「安全」とも
言えます。「どんな安心・安全なのか」を具体化しないと、お客様に
刺さりません。
「シニア層」ではなく、「72歳、年○○円の年金が主たる収入源。
膝に痛みがあり、買い物程度はできるが、長時間の移動は不安」とい
った具合に、具体化する必要があります。
「具体化すると顧客数が減る」という疑問に対しては、既に
◆3回目:セグメンテーション 「嬉しさ」で人を括る
○括って広げる3ステップ:「求める嬉しさ」で括れば人が広がる
でお答えしていますので、そちらをご確認ください。
「強み」も、「この食品の強みは安心・安全」ではなく、「この食品
は○○で採れた○○を使い、残留農薬試験したところ残留農薬はゼ
ロ。収穫から○時間以内に○○加工をし……」と具体化していきまし
ょう。そこまでしなければ、競合よりどう「安心・安全」なのか、違
いがわかりません。
●「一貫性」
次に、「一貫性」について見ていきましょう。
・ベネフィット
・セグメンテーション・ターゲット
・強み
・4P
・想い
の全てに一貫性が必要です。
例えば「幼児向けの靴(服でも玩具でもいいです)」で「10年間も
使えます」は、ダメです。すぐ大きくなる乳児(及びその母親)とい
う顧客ターゲットに、「10年間使える」という「強み」は刺さらな
いでしょう。一方、大人向けの靴であれば、「10年間使えます」は
いいかもしれません。
このように、「顧客ターゲット」と「強み」に一貫性がなければお客
様に刺さりません。
また、「女子高校生向けの美容家電」を「男性客がメインの家電量販
店」で売るのもダメでしょう。「顧客ターゲット」と「売り場」に一
貫性がないからです。女子高校生が来店するような雑貨店などで売っ
た方が、顧客ターゲットの目に触れやすいでしょう。
この「一貫性」と「具体性」は、当たり前のことではありますが、い
ざ実戦するとなると、非常に難しい壁となります。
これらの「当たり前」は、現実には極めて難しいことです。これがカ
ンタンなら、「売れなくて困っている商品・サービス」などは世の中
にないはずですから。
「マーケティングを考える」こととは、この「一貫性」と「具体性」
を突き詰めて行くこと、と言ってもよいくらいなのです。
次からは、この基礎理論を「戦略」へと高めていきます。
いよいよ「戦略BASiCS」!
●今号のまとめ
○「想い」:どんな「嬉しさ」に満ちた世界を作りたいのか?
ベネフィット=個別具体的なお客様の、個別具体的な嬉しさ
「想い」=世の中全体の「嬉しさ」
○「良い」マーケティングの2つの要素:「一貫性」と「具体性」
1)一貫性:各要素は全体としてつながっているか、
2)具体性:各要素の描写は具体的で例示があるか
★今日の「アタマに問いかけるべき適切な質問」
あなたは、世の中をどんな「嬉しさ」で満たしたいですか?
ぜひお考えになってみてください!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆今日のまとめ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●マーケティングの中核にあるのが「想い」。お客様をどう応援して
どんな「嬉しさ」に満ちた世界にしたいのか、が全てを決める!
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■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■
~MBAの中小企業診断士がそっと教えるパワフルレッスン~
━━━━━━━━━━━━━━特別編Vol.341(累計1358) 2016/09/08
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 7回目のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
●「戦場・競合」は、「お客様の嬉しさ」を巡って争う場。業種が違
っても「嬉しさ」が同じなら競合する
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆ここまでの復習
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ここまでが、いわゆる「マーケティングの基礎理論」ということにな
ります。
マーケティングには色々な理論がありますが、基本的にはこの中のど
こかに入る、ということになるはずです。
他にもマーケティングリサーチなどがありますが、それもこれらを把
握するための「手法」ということになります。
◆1回目:マーケティングの本質=嬉しさを提供し、対価をいただく
○売上=客数×客単価
=嬉しさを感じた人の総数 × 1人1人が感じた嬉しさ
=自社がお客様に提供した嬉しさの総和
○「利益をあげる力」=「費用1円あたりの嬉しさ提供力」
◆2回目:嬉しさ=価値=ベネフィット=お客様が達成したい目的
○お客様は「モノ」「機能・性能」ではなく「嬉しさ」を買う
○「価値は使い方に現れる」:嬉しさを知るには、使い方を知ろう
○使い方=TPO:使い方をさらに分解するとTPOになる
Time(時間)、Place(場所)、Occasion(対象物・加工方法)
○「新しい価値の提案」=「新しい使い方・TPOの提案」
◆3回目:セグメンテーション 「嬉しさ」で人を括る
○「求める嬉しさ」は人によって違うから分ける。分けることが「セ
グメンテーション」、分けられた各グループが「セグメント」
○TPO・T:「使い方×人」で考える
○括って広げる3ステップ:「求める嬉しさ」で括れば人が広がる
ステップ1:顧客像の具体化 → スタバで勉強する高校3年生
ステップ2:ニーズの普遍化 → 静かな環境で1人で集中したい
ステップ3:ニーズで人を括る→ スタバで本を書く中年男性
◆4回目:強みは競合との「嬉しさの差」
○強み=お客様が競合ではなく自社を選ぶ理由=競合との嬉しさの差
正確には、「価格1円あたりの嬉しさの差」
○嬉しさ競争:「製品差別化」ではなく「嬉しさの差別化」を!
◆5回目:「嬉しさ」を現実化する4P
○「嬉しさ」を現実化する4P:売り物・売り方・売り場・売り値
・売り物=Product 商品・サービス 「嬉しさ」を実現
・売り方=Promotion 広告・販促 「嬉しさ」を伝える
・売り場=Place 販路・チャネル 「嬉しさ」を届ける
・売り値=Price 価格 「嬉しさ」の対価
◆6回目:「想い」を中核にした「一貫性」と「具体性」
○「想い」:どんな「嬉しさ」に満ちた世界を作りたいのか?
ベネフィット=個別具体的なお客様の、個別具体的な嬉しさ
「想い」=世の中全体の「嬉しさ」
○「良い」マーケティングの2つの要素:「一貫性」と「具体性」
1)一貫性:各要素は全体としてつながっているか、
2)具体性:各要素の描写は具体的で例示があるか
マーケティングの基礎理論
1回目:マーケティングを「嬉しさ」中心に考える
2回目:「嬉しさ」とは何か:ベネフィット
3回目:「嬉しさ」で顧客を括る:セグメンテーション・ターゲット
4回目:強みは競合との「嬉しさの差」:強み
5回目:「嬉しさ」を現実化する:4P
6回目:世の中をどんな「嬉しさ」で満たしたいか:想い
ここまで、拙著「ドリルを売るには穴を売れ」(=新人OL、つぶれ
かけの会社をまかされる)の説明の順番で進んできました。
「新人OL、つぶれかけの会社をまかされる」マンガ版も出ました!
http://sandt.co.jp/manga-ol.htm
今回から、戦略に入っていきます!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆戦略BASiCS:マーケティング戦略を考える5つの要素
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●基礎理論に基づき「視点」を高め、嬉しさを中核にした「戦略」へ
ここまで見てきたマーケティングの基礎理論に基づき、その「視点」
をさらに経営戦略のレベルまで引き上げていきます。
理論の「レベル」の高さというより、企業内の「視点」の高さです。
より経営者視点になる、ということです。
もちろん、「戦略BASiCS」へと展開していきます。
●復習:戦略BASiCS マーケティング戦略を考える5つの要素
経営戦略・マーケティング戦略で考えるべきポイントは以下の5つ。
Battlefield:戦場・競合 →自社商品の代替選択肢
Asset:独自資源 →強みを競合がマネできない理由
Strength:強み →お客様が競合ではなく自社を選ぶ理由
i
Customer:顧客 →強みを重視する相思相愛になれる人
Selling message:メッセージ→強みの伝え方
戦略BASiCSの詳細は、アマゾン「オールタイムベスト ビジネ
ス書100」のマーケティング・セールス分野で唯一の日本人著者と
して選ばれた本、「図解 実戦マーケティング戦略」でどうぞ!
http://tinyurl.com/a6ul5
今回の流れで言えば、戦略BASiCSは、「嬉しさ」「価値」を中
核に考える理論です。それは当たり前のようでいて、全然当たり前で
はありません。
例えば、「軍事」を起点とする経営戦略論は「戦い」が源流ですから
「お客様の嬉しさ」を中核にするのは難しいです。
BASiCS以外に、「嬉しさ」で説明できる戦略理論があれば、ぜ
ひ教えてください。
●「C:顧客」と「S:強み」は、ここまでの理論と全く同じ
BASiCSの5つの要素のうち、「C:顧客」と「S:強み」の2
つは、ここまでの基礎理論で見てきた「顧客」「強み」と全く同じで
す。
違うのは、
B:戦場・競合
A:独自資源
Sm:メッセージ
です。逆に言えば、「マーケティングの基礎理論」を「戦略」へと高
めていくにはこの3つが必要だということです。
ですから、この3つを順番に見ていくことにしましょう。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆B 戦場・競合:同じ「嬉しさ」を巡って争う場
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●BASiCSのB 戦場・競合は、「同じ嬉しさ」を巡って争う場
BASiCSのBは「Battlefield 戦場・競合」です。
「戦場」という言葉自体は物騒な、血で血を洗う生臭いものです……
が、「戦場」というのは、「嬉しさ」を巡って争う場、です。
お客様は、より大きな「嬉しさ」を提供してくれた会社・商品・サー
ビスを買いますから、お客様により大きな「嬉しさ」を提供した会
社・商品・サービスが戦いに「勝つ」のです。
企業戦略は「嬉しさ提供」の勝負なのです。
さて、ではあなたは一体誰と闘うのでしょうか?
もちろん「敵」は「競合」です。
では、「競合」とは一体誰でしょうか?
例によって、スターバックスで考えてみましょう。
スターバックスは、「家電量販店」(例えばビックカメラ)とは競合
しますか? 多分「No」です。
では、マクドナルドとは競合するでしょうか? これは競合「する」
でしょう。
では、なぜ「家電量販店」とは競合せず、マクドナルドとは競合「す
る」のでしょうか? 「競合」に明確な「線引き」をしようとすると
意外に難しいです。
「業種業態」という意味では、スターバックスは家電量販店でもハン
バーガーショップでもありませんから、みな異業種です。
答えは……「同じ嬉しさ」を提供しているかどうか、です。
そして、「価値は使い方に現れる」ので、2回目で見てきたように
○嬉しさ=価値=ベネフィット=使い方=TPO
です。
「嬉しさ」が「戦場」の「括り」であり「境界線」となるのです。
そして、
「ちょっとコーヒーでも飲みながら休むか」
とお客様が考えたとき、「お客様のアタマに浮かぶ代替選択肢」が競
合です。
「同じような嬉しさ=使い方を提供している誰か」が競合なのです。
スターバックスもマクドナルドも「コーヒーを飲みながら休む場」を
提供しているからこそ、競合するのです。
「ちょっとコーヒーでも飲みながら休むか」というとき、スターバッ
クスとマクドナルドは恐らく「代替可能」だから競合し、家電量販店
は代替可能では「ない」から競合しない、ということです。
●競合するかしないかは、「モノ」「業種業態」ではなく「嬉しさ」
「競合」するかしないかは、「モノ」「業種業態」で決まるわけでは
ありません。
「同じような嬉しさ」を提供するかどうか、で決まります。業種業態
が同じだと、提供する「嬉しさ」が近いことが多いので、結果として
競合することが多い、ということです。
例えば、「東京から広島まで早く移動したい」というTPOでは、
「飛行機」と「新幹線」は競合しますよね?
飛行機と新幹線では、「モノ」も「業種業態」形も全く違います。で
も、競合します。それは提供する「嬉しさ」(東京→岡山への速い移
動)が同じだからです。
このとき、新幹線と東海道線は競合しません。形はすごく似ています
が、競合しません。提供する「嬉しさ」が違うからです。
「何を当たり前のことを言っているんだ」
と思われているのであれば、ここまでの説明はOKだった、というこ
とになります。
当たり前のようですが、こういう主張をしている戦略の「教科書」っ
てそんなにないと思いますよ。
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◆「嬉しさ」を考えない「競合」は、誤った結論を導きかねない
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では、「嬉しさ」=「使い方」を考えない「戦場・競合」の定義をす
るとどうなってしまうのでしょうか?
それを考えるために、この質問について考えてみましょう。
●スターバックスとコンビニは競合するか?
スターバックスとコンビニエンスストアは競合するでしょうか?
スターバックスとコンビニでは、業態は全く違います。
が、最近はコンビニもいれ立てのコーヒーを提供しています。
わかりやすいのは「テイクアウト」のコーヒーは競合する可能性があ
ります。「テイクアウト」という「使い方」=「戦場」では競合しそ
うだ、というのはいいですよね。
さて、では先ほどの
「ちょっとコーヒーでも飲みながら休むか」
ではスターバックスとコンビニは競合するでしょうか?
都心では競合「しない」でしょう。イートインコーナーがあれば別で
すが、コンビニでは座って休めませんから。
が……郊外ではあり得ます。というのも、郊外のコンビニには駐車場
があり、アナタが車で移動中なら、
「コンビニでコーヒーを買って、駐車場に停めた車の中で休む」
という「使い方」=「戦場」があり得るからです。
郊外の方にとっては当たり前の使い方ですが、都市部を主な活動範囲
とし、車にあまり乗らない私にとっては、衝撃的な「使い方」でし
た。カフェとコンビニが競合する場合もあるのです。
つまり、スターバックスが、コンビニと競合するか、などは、同じよ
うな商品・サービス(この場合は「コーヒー」)を提供していても、
・その場で座って飲むか、テイクアウトか
・車に乗っているかどうか
などの、具体的な「嬉しさ=価値=ベネフィット=使い方=TPO」
を無視しては、決められないのです。。
●「嬉しさ」を考えない「競合」は、誤った結論を導きかねない
「嬉しさ」=「使い方」を無視して考えた「競合」は「誤っている」
(=お客様にとっては本当の競合ではない)という可能性がある、と
いうことがここからわかります。
競合を誤って把握すると、「強み」(=競合との嬉しさの差)を誤っ
てしまうかもしれません。
「嬉しさ」を中核に考えて行くことで、より正確(=お客様の思考方
法に近い)考え方ができるようになるのです。
これが、「嬉しさ」を中核にした戦略BASiCSの「強み」の1つ
です。
「嬉しさ」を中核にすることで、より「正確」で、より「精緻」な分
析や打ち手が可能になるのです。
お気づきの通り、この「戦場・競合」の定義は、2回目にやった「ベ
ネフィット」の内容を前提としています。
戦略BASiCSは、「嬉しさを中核にしたマーケティングの基礎理
論」をベースにし、それを「戦略」へと高めている理論なのです。
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◆BtoBの戦場・競合も「嬉しさ」=「目的」で決まる
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●BtoBでも、戦場・競合は、「同じ嬉しさ」を巡って闘う場
BtoC(個人顧客対象のビジネス)ではこの考え方は比較的わかり
やすいと思います。
が、BtoB(法人顧客対象のビジネス)においても同じです。
わかりやすい例が、企業の「マーケティング活動」の一部である、
「商品・サービスの認知向上」戦場
です。
アナタが、
「この商品・サービスの認知度を上げたいなあ」
と考えたとします。
そのときの「アナタのアタマに浮かぶ代替選択肢の集合」が競合、と
なります。
・TVCM=広告代理店
・ウェブ広告=Yahoo!、Google
・HP制作=HP制作会社
・DM=印刷会社
・フリーペーパー=リクルートなど
・オリコミチラシ=新聞社
・配達地域指定郵便=JP(郵便局)
など、様々な「認知度向上の手段」があります。商品・サービスや予
算などに応じて、いくつかの「候補」が上がるでしょう。
それらが「競合」なのです。
このとき、「業種業態」は関係ありません。
「商品・サービスの認知度を上げる」
という「嬉しさ」=「目的」を達成できれば、何でも良いわけです。
「人材募集」なども同じです。広告を出す、ヘッドハンターを使う、
ハローワークを使う、など色々と「手段」はあります。
「そうだ、人材を採ろう」
とお客様が考えたときの「アタマに浮かぶ代替選択肢の集合」が、そ
のときの「戦場・競合」なのです。
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◆戦場価値公式:戦場・競合=価値=嬉しさ=使い方
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●戦場価値公式:戦場・競合=価値=嬉しさ=使い方
ここから導かれるのが、売れたま!で何回も登場している「戦場価値
公式」です。
戦場は「価値」(=嬉しさ)で定義すべき、というのが「戦場価値公
式」であり、ここまで見てきたように、「嬉しさ」で「戦場」や「競
合」を定義すべきだ、ということです。
価値は使い方に表れます。お客様は「使う」ために買うのですから
「使うとき」がお客様にとって重要=価値が現れるときです。
そして、その「使い方」によって「戦場・競合」が定義されます。あ
る「使い方」のときに、比較対象である競合が決まるのです。
○「戦場」=「お客様のアタマに浮かぶ選択肢の括り」
=「その商品・サービスの使い方・TPO」=価値
○「競合」=「その使い方(TPO)のときの、代替選択肢」
=「その価値を巡って争う相手」
「戦場・競合」は、「嬉しさを巡って争う場」というのが、戦場価値
公式の意味なのです。
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◆実戦力チェックとしての「競合の定義」
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●「競合の定義」は、実戦力をチェックする
ちょっと失礼な話になりますのでイヤな方は読み飛ばしてください。
「マーケティング力」をテストするときに、「競合」の考え方は「実
戦力」のチェックに役立ちます。
「競合」の定義を尋ねると、多くの方は「業種業態」「同じ商品・サ
ービスを提供している会社」と答えるでしょう。
「きちんと勉強している方」はポーター先生の「5 Forcesだなんだ」
という答えが返ってくるでしょう。
では、「実戦力」のある「場数を踏んでいる方」は、どう答えるかと
いうと……
言い方はともかく、
「ある顧客のある利用場面における代替選択肢の集合」
というような回答が返ってくるでしょう。「教科書」に書いてある
「お勉強」はともかく、「お客様の思考方法」という「実戦論」にお
いては、この答えが「正しい」からです。
「ちょっとコーヒーでも飲みながら休むか」
とお客様が考える時に、「スターバックスとマクドナルドは業種が違
うから」などとは考えません。
「この商品・サービスの認知を上げたい」
というときにも、「ここは業種が違うから見積もりを頼まない」とい
うような発想はしません。
「自分にとって、同じ嬉しさを提供するかどうか」
で、「選択肢」を考えるわけです。
この「ある顧客のある利用場面における代替選択肢の集合」が、
BASiCSの「戦場・競合」の定義です。
「戦場・競合」も「提供する嬉しさ」を中心に考えることで、よりお
客様の「現実」に近い、「正確で精緻」な戦略論となるのです。
●今号のまとめ
○BASiCSのB 戦場・競合は、「同じ嬉しさ」を巡って争う場
○戦場価値公式:戦場・競合=価値=嬉しさ=使い方
○「戦場」=「お客様のアタマに浮かぶ選択肢の括り」
=「その商品・サービスの使い方・TPO」=価値
○「競合」=「その使い方(TPO)のときの、代替選択肢」
=「その価値を巡って争う相手」
○「嬉しさ」を考えない「競合」は、誤った結論を導きかねない
★今日の「アタマに問いかけるべき適切な質問」
あなたは、「戦場・競合」を「嬉しさ」で定義していますか?
ぜひお考えになってみてください!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆7回目のまとめ
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●「戦場・競合」は、「お客様の嬉しさ」を巡って争う場。業種が違
っても「嬉しさ」が同じなら競合する
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◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 8回目のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
●「独自資源」は、「独自の嬉しさ」の提供力。「嬉しさの差」につ
ながらない「独自資源」は意味が無い
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆A 独自資源:「独自の嬉しさ」の提供力
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●復習:戦略BASiCS マーケティング戦略を考える5つの要素
経営戦略・マーケティング戦略で考えるべきポイントは以下の5つ。
Battlefield:戦場・競合 →自社商品の代替選択肢
Asset:独自資源 →強みを競合がマネできない理由
Strength:強み →お客様が競合ではなく自社を選ぶ理由
i
Customer:顧客 →強みを重視する相思相愛になれる人
Selling message:メッセージ→強みの伝え方
●BASiCSのA 独自資源は、「独自の嬉しさ」の提供力
前号で「B:戦場・競合」を見てきました。
今号は、「A:独自資源」です。
「独自資源」は、大きく2つに分けられます。
1)ハード資源:設備、技術・特許、土地・立地など
2)ソフト資源:スキル、人材、外部との関係、文化・歴史など
「独自資源」の定義は、「強みを競合がマネできない理由」です。こ
の中に「強み」という言葉が入っています。
4回目で見てきた通り、
○強み=お客様が競合ではなく自社を選ぶ理由=競合との嬉しさの差
です。
ですから、「独自資源」とは、
「競合との嬉しさの差を、競合がマネできない理由」
となります。
自社商品・サービスが、競合よりも大きな嬉しさ(=強み)を提供で
きていれば、自社の商品・サービスが選ばれます。
しかし、その「嬉しさの差」(=強み)を競合がマネしてきたら、そ
の「差」がなくなってしまいます。
「強み」=「嬉しさの差」=「独自の嬉しさ」を生み出すのが、「独
自資源」ということになります。
その意味では
○独自資源=「競合との嬉しさの差=独自の嬉しさ」の提供力
となり、「独自の嬉しさ」を作り出す力、ということになります。
1回目で見てきたように、
○売上=自社がお客様に提供した嬉しさの総和
です。そして3回目で見てきたように、
○強み=お客様が競合ではなく自社を選ぶ理由=競合との嬉しさの差
です。
「技術」「人材」などは「独自資源」の典型ですが、それらの「独自
資源」は、「独自の嬉しさ」を生み出して、初めて「売上」につなが
るのです。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆「吸引力の変わらない掃除機」を競合がマネできない理由
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●ダイソンの掃除機は吸引力の変わらないただひとつの掃除機です
大人気の掃除機、ダイソン。
手元に、丁度ダイソンの掃除機のカタログがあります。先週家電量販
店でいただいて来たのでおそらく現時点の最新版です。
あくまでも「例」として、ダイソンの掃除機で考えてみましょう。
このカタログには、
『ダイソンの掃除機は吸引力の変わらないただひとつの掃除機です』
と書いてあります。
以前からダイソンはこのコピーを使っていましたが、これが、他の掃
除機との「嬉しさの差」であり、「独自の嬉しさ」ですね。
『一般的な掃除機は吸引力が低下し、ゴミを取り残しています』
とありますが、要は「他の掃除機よりゴミがよく吸い取れる」という
のが「嬉しさの差」であり、ダイソンの「独自の嬉しさ」です。
では、なぜこれを競合の掃除機は「マネ」しないのでしょうか?
「独自資源」は「競合との嬉しさの差を、競合がマネできない理由」
です。マネできれば、「独自」の資源にはなりません。
競合から見れば、それをマネできれば、ダイソン同様の人気の掃除機
を作れます。
ダイソンのカタログによれば……
『ダイソンの特許技術RootCycloneTM(ルートサイクロン)テクノロ
ジーは、パワフルな遠心力を発生させ、微細な粒子を分離しクリア
ビンに集めます』
『サイクロンの性能が低い他の掃除機は、微細なゴミを捉えるために
フィルターに頼っています。しかしそのフィルターは使っているう
ちに目詰まりし、吸引力が落ちて、ゴミが取り残されます』
とのこと。
つまり……
○独自の嬉しさ:ゴミを取り残さないのでキレイに掃除できる
○独自資源:ルートサイクロンテクノロジーによるパワフルな遠心力
ということですね。この「ルートサイクロンテクノロジー」という特
許技術(=ハード資源)が、「独自の嬉しさ」を競合にマネさせない
「源」となっているわけです。
これがなければ、競合にすぐにマネされて、競合との「嬉しさの差」
がなくなってしまい、「嬉しさ」の独自性がなくなります。
ちなみに、他の掃除機も「吸引力が変わらない」というメッセージを
出しているようですが、そのダイソンのカタログによれば……
『他のプレミアム掃除機の中には吸引力が変わらないと主張するもの
がありますが、それは家の中に実在するゴミとは異なるゴミを使用
したテスト結果に基づくものです』
とのことです。
依然として差がある、というダイソンの主張ですね。
ここでお断りしておきますが、だからダイソンの性能が良い・悪いと
いうことが申し上げたいわけではありません。「独自資源」の例とし
て使わせていただいています。
恐らくは他のメーカーさんにも言い分があるでしょう。
ただ、ここまではっきりと言い切る姿勢は、スゴイなと思いました。
読んでいるこちらが、「ここまで言い切ってしまって大丈夫なのか」
と心配になるほどです。よほど自信があるのでしょうね。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆「嬉しさ」を産まない「独自資源」は、無意味
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●「嬉しさ」を産まない「独自資源」は無意味
○独自資源=「独自の嬉しさ」の提供力
です。「嬉しさ」につながらない「独自資源」は、いくら「独自」で
あっても、意味がありません。
どんなにすごい「技術」があっても、それが「独自の嬉しさ」につな
がらないのであれば、その「独自資源」は、ないのと同じです。
例えば従業員の「団結力」などは「独自資源」になり得ますが、「団
結力」があるがゆえに顧客対応が「なあなあ」になってしまい、お客
様からの意見に対して十分に応えられない、となると……「負の独自
資源」となってしまいます。
●英テスコの「日本撤退」
世界屈指の小売業、イギリスのテスコが2003年、「つるかめラン
ド」というスーパーを東京などで展開していた「シートゥーネットワ
ーク」という会社を買収。日本参入を果たしました。
その後、2011年に撤退を表明、テスコの損害は数百億円以上と言
われています。
この話は売れたま!でも、2011年9月8日号で取り上げました。
テスコの失敗の理由は、色々と分析されていますが、主要な要因は、
「売れなかったから」
でしょう。
テスコはイオンやセブン&アイよりも大きい会社で、グローバルに店
舗展開をしています。
その意味で「グローバル」であることは、テスコの「独自資源」かも
しれません。
しかし、その「グローバル」という「独自資源」が「独自の嬉しさ」
を生み出せなければ、意味がありません。
以下は、当時の売れたま!で紹介した記事です。
-----------< 記事引用 >------------
◇『テスコ関係者は敗因を「日本の消費者に受け入れられる独自のプ
ロダクツを持っていなかった」と総括する』
◇『ある大手食品メーカーは商品政策に関して「『グローバル小売業
として』厳しい取引価格を提示するが、こっちが見ているのは日本
法人」と話す。PBはメーカー品に比べても価格競争力を打ち出す
ことができなかった』
2011/09/05, 日経MJ P.1
以下、記事からの引用部分は『』で括ります
-----------< 記事引用 >------------
つまり、「グローバル」が「嬉しさの差」につながらなかった、「独
自の嬉しさ」を提供できなかったのです。
『日本の消費者に受け入れられる独自のプロダクツを持っていなかっ
た』
と記事にありますが、これは致命的です。「グローバル」であるから
こそ調達できる「他社より安全で安くておいしい牛肉」などがあれば
それは「独自の嬉しさ」になります。
が、そういう「独自の嬉しさ」が提供できなかったわけです。
仕入れ先に対しても、「グローバル」であることは、特に意味を持ち
ません。「グローバル」だからこそ、調達量が10倍になるのであれ
ば価格交渉もできるでしょうが、グローバルになっても、「つるかめ
ランド」という、地域スーパーです。
「グローバル」であることが、「お客様」にも「取引先」にも「嬉し
さの差」につながらなかったのです。
「独自資源」は、「嬉しさの差」を生み出し、「独自の嬉しさ」を提
供できてこそ、意味があるわけです。
テスコのような、世界的に有名な企業でさえ、このような失敗をして
しまうわけです。
●「嬉しさ」「独自の嬉しさ」の源泉としての「独自資源」
・グローバル
・高い技術力
・優秀な人材
・団結力
・伝統
などはすべて「独自資源」であり、そのままでは「嬉しさ」にはなっ
ていません。
「独自資源」は「技術」「人材」など、「社内」にあるものですから
どうしても考え方が「自社の」という方向に向きがちになります。
しかし、それらの「独自資源」から「嬉しさ」「独自の嬉しさ」を生
み出せなければ、売上(=嬉しさの対価)は上がりません。
極端な話、お客様の「嬉しさ」に、長期的にも短期的にも、直接的に
も間接的にも全く貢献しないような「資源」は、不要ですから、売っ
てしまって身軽になった方が良いとすら言えます。
○独自資源=「独自の嬉しさ」の提供力
です。お客様の「嬉しさ」につながってこそ、その「独自資源」に存
在意義があるのです。
●今号のまとめ
○BASiCSのA 独自資源は、「独自の嬉しさ」の提供力
「嬉しさの差」(=強み)を生み出さない独自資源は無意味
★今日の「アタマに問いかけるべき適切な質問」
あなたの「独自資源」は、「独自の嬉しさ」を生み出していますか?
ぜひお考えになってみてください!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆8回目のまとめ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●「独自資源」は、「独自の嬉しさ」の提供力。「嬉しさの差」につ
ながらない「独自資源」は意味が無い
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■
~MBAの中小企業診断士がそっと教えるパワフルレッスン~
━━━━━━━━━━━━━━特別編Vol.343(累計1360) 2016/09/15
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 9回目のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
●企業の競争力は「嬉しさ提供力」が決める。「技術競争」ではなく
「嬉しさ競争」をしよう!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆Sm メッセージ:「嬉しさ」を伝えるメッセージ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●復習:戦略BASiCS マーケティング戦略を考える5つの要素
経営戦略・マーケティング戦略で考えるべきポイントは以下の5つ。
Battlefield:戦場・競合 →自社商品の代替選択肢
Asset:独自資源 →強みを競合がマネできない理由
Strength:強み →お客様が競合ではなく自社を選ぶ理由
i
Customer:顧客 →強みを重視する相思相愛になれる人
Selling message:メッセージ→強みの伝え方
ここまで、BASiCSをを
7回目 B:戦場・競合 「同じ嬉しさ」を巡って争う場
8回目 A:独自資源 「独自の嬉しさ」の提供力
と見てきました。そして
4回目 S:強み 競合との「嬉しさの差」
3回目 C:顧客 「嬉しさ」で顧客を括る
と、既に見てきています。
BASiCSで最後に残っている、極めて重要な要素が「Sm:メッ
セージ」です。
●BASiCSのSm メッセージは「嬉しさ」を伝える
「Sm:メッセージ」は、基本的には
○強み=お客様が競合ではなく自社を選ぶ理由=競合との嬉しさの差
=独自の嬉しさ
を伝えるものです。
「強み」=「お客様が競合ではなく自社を選ぶ理由」がお客様に伝わ
れば、「お客様に選んでいただける」(=売れる)はずです。
そうならない場合は、
1)戦略の誤り=B:戦場・競合、S:強み、C:顧客の誤り
2)伝え方の誤り=Sm:メッセージの誤り
のどちらか、ということになります。
「戦略」が間違っているのか、「伝え方」が間違っているのか、どち
らなのか、というチェックの意味もこめて、「Sm:メッセージ」が
重要チェックポイントとなっています。
Sm:メッセージは、基本的には、「S:強み」(=競合との嬉しさ
の差=独自の嬉しさ)を伝えるものです。
が、「独自の嬉しさ」を伝える前に、基本となる「嬉しさ」(2回目
の「ベネフィット」)が伝わっていない場合は、基本となる「嬉し
さ」を伝える必要があります。
その意味では、Sm:メッセージは、「嬉しさ」を伝えるもの、と言
えます。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆「嬉しさ」の「伝え方」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
Sm:メッセージは「嬉しさ」を伝えるものですが、その「伝え方」
にも色々とあります。メッセージの伝え方だけで、1日のセミナーに
なります(実際やりました)し、1冊の本になりそうです(書くかも
しれません)。
ここでは、基本的な伝え方を見ていきましょう。
●1)プラスの「嬉しさ」vsマイナスの「嬉しさ」
S:メッセージは「嬉しさ」を伝えます。
同じ「嬉しさ」を伝えるにしても、「プラス」の伝え方と、「マイナ
ス」の伝え方があります。
○プラスの嬉しさ=「天国型」
・お客様の課題・悩みが商品・サービスで解決された「後」の姿
・バラ色の「未来」を見せる
○マイナスの嬉しさ=「地獄型」
・お客様の課題・悩みが商品・サービスで解決される「前」の姿
・悲しい「現在」を見せる
「プラスの嬉しさ」と「マイナスの嬉しさ」は、単なる裏返しで、基
本的には同じモノです。「絶対値」は同じ、符号が違うだけです。
全ての商品・サービスは「課題解決」です。バナナを食べる理由が
「調理器具を使わずに、空腹感を手軽に満たせる」という場合も、課
題解決ですね。「調理器具を使わずに、空腹感を手軽に満たしたい」
という「課題」を解決しているわけです。
バナナの場合、
○プラスの嬉しさ:お腹が満たされて満足した姿=解決した後
あるマイナスの嬉しさ:空腹感で辛い姿=解決する前
のどちらに焦点を当てるか、ということです。
同じ課題解決の時間軸が違うだけなので、「絶対値は同じ」です。
プラス・マイナスの両方に焦点を当てると、「Before/After」型にな
ります。
エステの広告なんかがそうですね。お腹がぽこっと膨らんだ姿が、
Beforeの姿、お腹がすっきりした姿がAfterの姿、ですね。
プラスの訴求とマイナスの訴求のどちらが良いかどうかは一概には言
えませんが、「夢を売る商品」は「プラスの嬉しさ」を、「不安除去
商品」は「マイナスの嬉しさ」を訴求することが多いです。
例えば、ディズニーランドは「夢を売る商品」ですので、「ディズニ
ーランドに来ないと、お子さんが泣きますよ」という「マイナスの嬉
しさ」を訴求することはまずありません。
逆に、膝の痛みを取る薬は「不安除去商品」ですので、「あいてて!
膝が痛くて階段が上れない、ということはありませんか?」という、
「マイナスの嬉しさ」を訴求することが多いです。もちろんその後で
「○○○なら、その膝の痛みを軽減します」という「プラス」の嬉し
さも魅せるでしょう。
●2)価値は使い方に現れる:使い方=TPOを伝える
もう1つの主要な「伝え方」が、TPOを伝えることです。
繰り返しますが、価値(=嬉しさ)は使い方に現れます。
ということは、「使い方」「TPO」を訴求すれば、お客様はその
「価値」(=嬉しさ)を理解しやすい、ということでもあります。
先ほどのディズニーランドの「使い方」は、例えば
「お子様の○才の誕生日は、初めてのディズニーランドで。お子様の
喜ぶ顔が目に浮かびます」
という「使い方」をメッセージにすれば、刺さるかかもしれません。
また、「膝の痛みを取る薬」は、
「お孫さんとのご旅行で、膝のご不安なく楽しめます」
という「使い方」をメッセージにすれば刺さるかもしれません。
この意味で、『1)プラスの「嬉しさ」vsマイナスの「嬉しさ」』
と、「2)使い方=TPOを伝える」は、一緒に使えます。というか
一緒に使うと、よりパワフルになることが多いですね。
このような「使い方」「TPO」がパパパパっとアタマに浮かべば、
お客様の「嬉しさ」を理解している、ということになります。
浮かばないようであれば、「嬉しさ」の理解を深めるため、お客様の
「使い方」「TPO」をお客様に聞いてみると良いですね。
●「嬉しさ」と「売り物」とのリンクを強くしよう
お客様は「商品・サービス」ではなく、「嬉しさ」を買っています。
ですから、伝えるべきは「嬉しさ」「独自の嬉しさ」です。
が……
当然、「売り物」(商品・サービス)とのリンクも必要です。
「嬉しさは伝わったけど、どの商品・サービスか覚えていない、わか
らない」
ようなメッセージでは、意味がありません。
例えば、TVCMの多くが、「何の商品・サービスか覚えていない」
ようなものになっています。
「商品・サービス」ではなく、「タレント」が主役になってしまった
りすると、
「あ、○○ちゃんが出ているヤツね。覚えてるよ。何の商品のCMだ
ったか? うーん……知らない」
という状態になってしまいます(というか、多くのCMがそうなって
いますね)。
実際、15秒CMの中で、「嬉しさ」と「商品・サービス」をきちん
と伝え切るのは、極めて難しいです。
多額の広告費があれば物量作戦をとれますが(例えばソフトバンク)
なかなかそうもいかないので、様々な工夫をするわけです。
TVCMでも何でも、その目的は、
・お客様に「嬉しさ」「独自の嬉しさを伝える」
・その「嬉しさ」と「商品・サービス」を強くリンクさせる
ということです。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆「嬉しさ」を中核にした戦略BASiCS
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
お疲れ様でした! これで、
・マーケティングの基礎理論
・戦略BASiCS
を全てお客様の「嬉しさ」を中核に説明できたことになります。
まずは全体像です。
●マーケティングの基礎理論
1)ベネフィット:お客様は「嬉しさ」を買う
2)セグメンテーション・ターゲット:「嬉しさ」を求める人
3)強み:競合との「嬉しさの差」=「独自の嬉しさ」
4)4P:「嬉しさ」を実現する売り物・売り方・売り場・売り値
5)想い:世の中を「嬉しさ」で満たす
●戦略BASiCS
1)B:戦場・競合 同じ「嬉しさ」を巡って争う場
2)A:独自資源 「独自の嬉しさ」の提供力
3)S:強み 競合との「嬉しさの差」=「独自の嬉しさ」
4)C:顧客 「嬉しさ」を求める人
5)Sm:メッセージ 「嬉しさ」を伝える
全て、「嬉しさ」が中核です。
そしてそのことにより、「マーケティング理論」がそのまま「戦略理
論」に昇華されています。
「マーケティングの基礎理論」と「戦略BASiCS」の関係は、以
下のようになっています。
B:戦場・競合 ← 同じ1)ベネフィット 5)想いを巡って争う
A:独自資源 ← 戦略論として精緻にするために付加
S:強み ← 3)強み と同じ
C:顧客 ← 2)セグメンテーションと同じ
Sm:メッセージ→ 4)4Pをメッセージが統括し現実化
「マーケティングの基礎理論」を下地に、「競合」を明確化し、「独
自資源」などの「経営戦略」として必要な要素を加えて、戦略論へと
発展させたのがBASiCSです。
ですので、根っこは同じお客様の「嬉しさ」です。
戦略BASiCSが「嬉しさ」を出発点にしている、という出自・
DNAが、BASiCSを独自な戦略論にしています。
拙著で言えば、
「ドリルを売るには穴を売れ」(=新人OL、つぶれかけの会社をま
かされる)が、「図解 実戦マーケティング戦略」のベースになって
いる、ということです。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆最後に……企業の競争力は「嬉しさ提供力」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●「技術競争」ではなく「嬉しさ競争」をしよう!
この特集を始めた理由は、1つは、「嬉しさ」で理論をまとめる、と
いうことを一度きちんとやっておくべきだ、と考えたことです。
もう1つは、仮説として、日本企業の競争力強化のカギは、ここにあ
る、と考えているからです。
技術力では、依然として日本は世界トップレベルにあると思います。
日常生活を見ても、「お財布ケータイ」などを当たり前のように実現
してしまうのはスゴイですよね。
負けているのは、「技術力」ではなく「嬉しさ提供力」ではないでし
ょうか?
技術競争は、モノ相手の競争です。
「嬉しさ」競争は、「人」という「よくわからない何か」を相手にす
るものですので、難しいかもしれません。
だからこそ、「嬉しさ」を中核にした「マーケティング理論」「戦略
理論」が必要なのだと思います。
繰り返しますが、お客様が買うのは「モノ」でも「技術」でもなく、
お客様の「嬉しさ」です。
お客様が競合ではなく自社商品・サービスを買うのは、「モノ」が良
いからではなく「独自の嬉しさ」を提供しているからです。
ですので、「企業の競争力」というのは、「嬉しさ提供競争力」なの
です。
そしてそれが利益に直結するのは、第1回目で既に見てきました。
○売上=客数×客単価
=嬉しさを感じた人の総数 × 1人1人が感じた嬉しさ
=自社がお客様に提供した嬉しさの総和
○「利益をあげる力」=「費用1円あたりの嬉しさ提供力」
●「嬉しさ」を最大化することに集中しよう!
「嬉しさ」をひたすら増やせば、「売上」も増やせます(もちろん
「対価」としての「売り値」に反映するなどのことは必要です)。
「嬉しさ」につながらないコストを省き、効率的に「嬉しさ」を増や
せれば「利益」も上がります。
そして「嬉しさ」を増やせれば、それは競合との「嬉しさの差」すな
わち「競合ではなく自社を選ぶ理由」となり、差別化もできます。
そこで得た「利益」を従業員に還元すれば、従業員の「嬉しさ」も増
すでしょう。
つまり、企業努力を「嬉しさ」に集中すれば、売上、利益、差別化、
従業員満足などは「結果」としてついてくるのです。
これは当たり前のようで、全く当たり前ではありません。
「嬉しさの最大化」を阻害する要因は色々とあります。特に社内にあ
ります。
・社内の派閥争い
・お客様の「嬉しさ」につながらない技術開発
・お客様の「嬉しさ」につながらない会議・報告書の作成
など、お客様の「嬉しさ」を増やさないようなことに時間を割いてい
る、ということはいくらでもあるはずです。
それをいかに減らし、「嬉しさの最大化」に集中できるか、が、企業
の「競争力」に直結するのです。
そして……
この考え方が広がれば、
・お客様・世の中の「嬉しさ」が増える
・企業の売上・利益も増える
という素晴らしいことになります。
そんな世界に少しでも近づけるよう、売れたま!はこれからも「嬉し
さ」を軸にしたマーケティング理論、戦略理論を発信し続けます!
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◆全体のまとめ <保存版>
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最後に、全体の総まとめをしておきます。印刷して、ノートに貼って
おくと良いかもしれません。
◆1回目:マーケティングの本質=嬉しさを提供し、対価をいただく
○売上=客数×客単価
=嬉しさを感じた人の総数 × 1人1人が感じた嬉しさ
=自社がお客様に提供した嬉しさの総和
1)客数向上:より多くの人に嬉しさを提供する
2)客単価向上:顧客1人当たりにより多くの嬉しさを提供する
○「売上を作る力」=「お客様への嬉しさ提供力」
○利益=提供した「嬉しさ」の総和-「嬉しさ」の提供コスト
○費用1円あたりの提供した「嬉しさ」が大きいほど利益率が高まる
○「利益をあげる力」=「費用1円あたりの嬉しさ提供力」
◆2回目:嬉しさ=価値=ベネフィット=お客様が達成したい目的
○お客様は「モノ」「機能・性能」ではなく「嬉しさ」を買う
○「価値は使い方に現れる」:嬉しさを知るには、使い方を知ろう
○使い方=TPO:使い方をさらに分解するとTPOになる
T:Time 時間
P:Place 場所
O:Occasion 対象物・加工方法
○「新しい価値の提案」=「新しい使い方・TPOの提案」
○「嬉しい瞬間」は1つではなく、無限にある
○BtoCの「嬉しさ」:人間の3大欲求
1)生存欲求 : 生理的なニーズ(身体的快楽)
2)社会欲求 : 他人との関係ニーズ(他人の評価)
3)自己欲求 : 自分自身で完結するニーズ(自己満足)
3大欲求を満たすほど「嬉しさ」は増す
○BtoBの「嬉しさ」:使い方×QCD改善×PL・BS改善
◆3回目:セグメンテーション 「嬉しさ」で人を括る
○「求める嬉しさ」は人によって違うから分ける。分けることが「セ
グメンテーション」、分けられた各グループが「セグメント」
○TPO・T:「使い方×人」で考える
TPO(使い方)・TargetでTPO・T(ティーポット)
同じ人でもTPOで嬉しさが変わる:朝食と夕食は違うものを食べ
るし、常夏の国の人でも、旅行用に冬服を買う
○括って広げる3ステップ:「求める嬉しさ」で括れば人が広がる
ステップ1:顧客像の具体化 → スタバで勉強する高校3年生
ステップ2:ニーズの普遍化 → 静かな環境で1人で集中したい
ステップ3:ニーズで人を括る→ スタバで本を書く中年男性
○求める「嬉しさ」がセグメンテーションの切り口
セグメンテーション特集 https://uretama.com/?page_id=510
◆4回目:強みは競合との「嬉しさの差」
○強み=お客様が競合ではなく自社を選ぶ理由=競合との嬉しさの差
正確には、「価格1円あたりの嬉しさの差」
○「ベネフィット」と「強み」の違い
ベネフィット=自社商品・サービスがお客様に提供する「嬉しさ」
強み=自社商品・サービスと競合との「嬉しさの差」
自社の強み=自社のベネフィット-競合のベネフィット
○「強み」は「使い方」(=TPO)によって変わる
○「事実」としての「差」と、「意味」としての「差」
事実としての差:主語は「モノ」 モノ、機能・性能の差
意味としての差:主語は「顧客」 ある使い方における嬉しさの差
○事実としての差:デジカメの画素数が2倍
○意味としての差:大型の印刷物がキレイに印刷できる
○意味としての差:遠くのものをキレイに拡大できる
○嬉しさ競争:「製品差別化」ではなく「嬉しさの差別化」を!
◆5回目:「嬉しさ」を現実化する4P
○「嬉しさ」を現実化する4P:売り物・売り方・売り場・売り値
・売り物=Product 商品・サービス
・売り方=Promotion 広告・販促
・売り場=Place 販路・チャネル
・売り値=Price 価格
○「売り方」:お客様にメッセージとして「嬉しさ」を伝える
「売り方」では、「嬉しさ」「強み」を伝える
○「売り場」:お客様に「嬉しさ」を届ける
○「売り値」:お客様が払う「嬉しさ」の「対価」
○「売り物」:お客様が使って「嬉しさ」を実現する
「売り物」が「強み」を実現する
◆6回目:「想い」を中核にした「一貫性」と「具体性」
○「想い」:どんな「嬉しさ」に満ちた世界を作りたいのか?
ベネフィット=個別具体的なお客様の、個別具体的な嬉しさ
「想い」=世の中全体の「嬉しさ」
○「良い」マーケティングの2つの要素:「一貫性」と「具体性」
1)一貫性:各要素は全体としてつながっているか、
2)具体性:各要素の描写は具体的で例示があるか
◆7回目:戦略BASiCS B:戦場・競合
○BASiCSのB 戦場・競合は、「同じ嬉しさ」を巡って争う場
嬉しさ=価値=ベネフィット=使い方=TPO=戦場の「括り」
○競合するかしないかは、「モノ」「業種業態」ではなく「嬉しさ」
・速く移動したいとき、「飛行機」と「新幹線」は競合する
○「戦場」=「お客様のアタマに浮かぶ選択肢の括り」
=「その商品・サービスの使い方・TPO」=価値
○「競合」=「その使い方(TPO)のときの、代替選択肢」
=「その価値を巡って争う相手」
◆8回目:戦略BASiCS A:独自資源
○BASiCSのA 独自資源は、「独自の嬉しさ」の提供力
「嬉しさの差」(=強み)を生み出さない独自資源は無意味
◆9回目:戦略BASiCS Sm:メッセージ
○BASiCSのSm:メッセージは「嬉しさ」を伝える
○プラスの「嬉しさ」vsマイナスの「嬉しさ」のどちらを伝えるか
○価値は使い方に現れる:使い方=TPOを伝える
◆総まとめ:企業の競争力=「嬉しさ」提供力
○「技術競争」ではなく「嬉しさ競争」をしよう!
★今日の「アタマに問いかけるべき適切な質問」
あなたは、お客様の「嬉しさ」を最大化する、「嬉しさ競争」をして
いますか?
ぜひお考えになってみてください!
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◆9回目のまとめ
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●企業の競争力は「嬉しさ提供力」が決める。「技術競争」ではなく
「嬉しさ競争」をしよう!
これで終わりです! お読みいただき、ありがとうございました。
「マーケティング理論」そしてさらには「マーケティング戦略理論」
を「嬉しさ」を中核キーワードにして考えてまいりました。
あなたがこれまで学ばれた知識、得られた経験も、ぜひ「嬉しさ」で
再解釈してみてください。全体がつながってくると思いますし、「あ
のときの成功要因・失敗原因」も言語化しやすくなると思います。
商品開発のときでも、販促策を考えるときでも、ぜひ「お客様の嬉し
さは何だろう?」と考えてみてください。
それだけでも、成功の確率は上がると思います。