2013-01 セグメンテーション特集

 

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━特別編Vol.200(累計0976) 2012/12/27

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●マーケティングの基本は「お客様の立場に立つ」こと。「自分とお
 客様は違う」ということをまずは認識しよう。

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◆年末年始特別号!
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もう年末! 今年の「締め」、年末年始好例の「特別号」は、お馴染
みのこの2人にお任せしましょう。その「2人」とは、そう……

我らがヒロイン「売多真子」(うれた・まこ)と、真子の親戚にして
そのメンター「売多勝」(うれた・まさる)です。

2人は以下の本の登場人物です。もうお読みいただいているかと思い
ますが、念のためご紹介しておきます。2冊とも、小さくて軽いので
荷物にならず、帰省の電車などでお読みいただくのにオススメです!

○「新人OL、つぶれかけの会社をまかされる」 佐藤義典著
http://ow.ly/89pSR

売多真子が、勝の助力を得てイタリアンレストランの新企画に奮闘!
マーケティングの最初の1冊としてオススメ。

○「新人OL、社長になって会社を立て直す」 佐藤義典著
http://ow.ly/6s63d

上の本の続編。真子が社長になり、ライバルと戦っていく! 戦略構
築から実行プロセスまで、社長の視点を物語で体感!

例によってこのシリーズはどのくらいの長さになるかは、この2人の
活躍次第ですので、現時点ではわかりません。

今回の特集は、「セグメンテーション」! マーケティングで恐らく
は一番難しいこのと1つです。

そのセグメンテーションにどう切り込むのか? お楽しみください!

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◆売多真子と売多勝の年末は、売多家で集合!
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売多家は、毎年年末・年始に一家一族で集まるのが恒例だ。今年は、
温泉地の老舗旅館に集まることになっていた。

多忙な売多真子・売多勝も、このときは仕事を入れずに駆けつける。

混雑が予想される年末の電車を、旅行代理店経験のある真子が勝の分
と一緒に手配し、大晦日の夜、東京駅の改札に集合した。

改札の前で大きな荷物と共に、新聞を読みながら時計をちらちらと確
認している男性が1人。売多勝(うれた・まさる)だ。

勝 :真子のヤツ、おせーな、相変わらず……チケットもらっときゃ
   良かったな。そーすりゃ勝手に1人で行くのにな……はぁ。

すると「すみませーん」と聞き慣れた声がする。ピンクのキャスター
バッグを力任せにガラガラ引きずりながら、勝目がけて一直線に駆け
てくる、20代半ばと思わしき女性。売多真子(うれた・まこ)だ。

真子:勝さん、すいませーん!

勝 :真子おせーよ、電車に遅れるぞ。チケット出せ、早く行くぞ!

真子と勝はごった返す東京駅の中を半分駆け足で進み、ホームに到着
するともう乗り込むべき電車が待っている。

「勝さん、待って! お菓子買うから!」と叫ぶ真子に、勝が「早く
しろよ! ったくもう……」と返す勝。

ようやく電車に乗り込み、2人掛けの席に座り、ふう、というと発車
ベルが鳴った。電車がゆっくりと動き出す。

勝 :ホント、ギリギリだったな……

真子:間に合って良かったねー、きゃははは

勝 :あのなー、遅れた上にお菓子なんか買いやがって……

真子:いーじゃん、勝さんだって食べるでしょ。それに、電車予約し
   といて良かったじゃん。ほら、大混雑だよ。

勝 :まあそりゃそうだな。あのな、席はオマエと離れた席を取れ、
   って言ったよな? 何回も言ったよな?

真子:そんなのダメに決まってるじゃん。

勝 :何で年末までオマエと何時間も隣に座る羽目になるんだよ。罰
   ゲームか、これ。オレは今年何か悪いことしたのか……。
 
真子:ホントは美女と座れて嬉しいくせにー。2人を隔てる仕切りも、
   真子達の間には不要、っと。

真子が、勝との間を隔てていた肘掛けを上に持ち上げる。

勝 :とにかくオレは仕事するから、話しかけるなよ。

真子:何それー、それじゃ一緒に行く意味ないじゃん。いつも恵利が
   いて、2人っきりは久しぶりなのにぃ。あのね、こないだね…

勝は無言でパソコンを取り出し、イヤホンを耳に刺す。そのイヤホン
を勝手に真子が取り外し、「ねえー、ったらぁ!」と耳元で叫ぶ。

勝 :叫ぶな! 囁くように言うくらいできんのか、オマエは……

真子:やだあ、色っぽく言ってほしいんだあ……真子、困っちゃう♪
   ねーねー、お話しよーよー。

勝 :あーもー、はい、はい、降参! じゃあお菓子出せよ。

真子が嬉しそうに、うん! とうなずき、テーブルの上に買ったばか
りのお菓子を広げる。「オマエ、どんだけ買ってるんだ」と呆れる勝
に、「何よ、いつも勝さんが全部食べるじゃん」と真子が返す。

楽しそうに世間話をしている2人も、いつしか仕事の話に。

真子:でねでね、こないだうちのスタッフに「うちのお客様は誰か」
   って話をしてたのね。

勝 :それで?

真子:そしたら「何でお客様をそんなに絞るんですか? お客様をあ
   えて減らす意味は何ですか?」って言われちゃって……

勝 :それで、うまく答えられなかったと……この未熟者が。

真子:きゃははは、ホントそーだよねー。だからさあ、ちゃんと教え
   てよぉ! 弟子が困ってるんだからさあ。

勝 :弟子は取らないんだよ、オレは。

真子:じゃあ、こんなカワイイ女の子が困ってるんだからさぁ。

勝 :誰が「カワイイ女の子」だ。じゃあ……今回のテーマはそれに
   しようか。セグメンテーション。

真子:え? テーマって……教えてくれるのー? やったああ!! 
   言ってみるもんだ。

勝 :セグメンテーションって、簡単そうでメチャクチャ難しい。セ
   グメンテーションができれば、一人前というかもう一流。

真子:で、「教えられるオレは超一流」とか言うんでしょ、やだぁ。

勝 :言ってないだろ。あー、今回は恵利ちゃんがいないからなぁ。
   オマエ、ちゃんとノート取れよ。

真子:わかってますよー、ほら、ちゃんと持って来てるんだからぁ。
   真子ノート♪

勝 :セグメンテーションだけについてきちんとまとめた本とかって
   ほとんどないからな。貴重だぞ。

真子:うん! センセー、お願いしまーす!

では、セグメンテーション特集、はじまりはじまりぃ~~

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◆お客様の立場に立つのは難しい
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勝 :でさ、真子どうやってスタッフに教えたの? いきなりセグメ
   ンテーションとは、とかって大上段にやってないよな?

真子:え……あ、あはは、もちろん……そうやった……かも……

勝 :モノには順序ってモノがあるからな。セグメンテーションの前
   に、そもそもマーケティングの本質って何だ?

真子:売ること!

勝 :もちろん「求める結果」としてはそうなるんだけど、「その結
   果を得るためには何が必要だ」、って聞いてる。

真子:お客様の立場に立つこと!

勝 :そうだよな。それができないから、「マーケティング」なんて
   モノが必要になるんだよな。

真子:マーケティングって、「体系的にお客様の立場に立つ方法だ」
   って勝さんよく言ってるよね。

勝 :よく覚えてるじゃねーか。その「お客様の立場に立つこと」が
   簡単なら、誰も売上に困らない。できれば売れるはずだからな

真子:難しいからこそ「体系的」に考えるんだよね。

勝 :で、なんでお客様の立ち場に立つ必要があるんだ?

真子:「お客様は、自分の欲しいモノを買う」から! つまり、そう
   しないと売れないから。

勝 :OK。さすがにこのあたりは大丈夫だな。じゃあこれを……

勝がノートパソコンを操作し、フォルダの中から記事を探り出す。画
面に表示させると、真子はもう横から勝手に画面を覗き込んでいる。

-----------< 記事要約 >------------

(サントリー酒類の社長相場康則氏が、日経MJ紙のインタビューに
答えて)

――若者のアルコール離れはどうすれば食い止められますか。

「一般にそう言われていますが……(中略)若者にふさわしい商品や
価値ある提案ができていなかっただけなのです。例えば低アルコール
飲料『ほろよい』はアルコール度数が3%。『こんなものが売れる
か』と思いましたが、開発者の狙い通り若い人にうけました」

2012/08/06 日経MJ P.3

-----------< 記事要約 >------------

真子:へー、面白いねー。社長は「こんなものが売れるか」って思っ
   ても、お客様は欲しかったんだねー。

勝 :そうそう。ってことは、お客様の立場には立てていなかった、
   ってこと。それを素直に告白できるこの社長の度量はすごい。

真子:うん。「若者」と「社長」は、そりゃ違うよね。

勝 :今、何て言った?

真子:え? 若者と社長は、違う、って……

勝 :そう! それが「お客様の立場に立てない」原因。自分=お客
   様だったら、そもそもお客様の立場に立つなんてことは不要。

真子:え? あ、そっか。自分の欲しいものを作れば売れるはずだも
   んね。「自分=お客様」なら。

勝 :だろ? これがセグメンテーションの大原則。「人によって欲
   しいモノが違う」。だから「お客様の立場に立つ」必要がある

真子:そっか、こーゆー説明をすっとばして、いきなり「セグメンテ
   ーションとは」ってやるからわかってもらえなかったんだぁ!

勝 :オマエが「スタッフの立場に立ててなかった」ってことだな。

真子:きゃははは、そーだねー!

勝 :それに、オマエは大丈夫なのか?

真子:え?

勝 :いや、真子が「こんなものが売れるか」って思うモノを、真子
   の会社のイタリアンレストランの来店者が求めてないか?

真子:え? あ、うちの店、「そーれ・しちりあーの」のお客様が、
   ってこと? う、そ、そう言われると……

勝 :真子の好み・舌、と、お客様の好み・舌が同じ、って言い切れ
   るのか? その根拠はあるのか?

真子:う、そ、それは……

勝 :油断するなよ。「自分=お客様」の方がむしろ例外なんだぞ。

真子:う、うん……

勝 :だからこの「自分とお客様は違う」というのが、まずはマーケ
   ティングの前提であり、「初級」脱出のカギになる。

真子:でも、「自分とお客様は違う」っていう、これ、結構難しいん
   でしょ? 「達人への道」でもやってたけどさー。

勝 :そうだよ。まずは「自分とお客様は同じとして、自分が欲しい
   ものを作る」のが「初級」だからな。

真子:ここでいう「初級」って、世の中的には、そんなに「初級」じ
   ゃないんだよね? その前の「入門」レベルがほとんどで……

勝 :そうだな。「初級」は全体のトップ2~3割。営業成績が上位
   10%の優秀な営業担当者さんなんかがまさに「初級」。

真子:「中級」だと本を出せるレベル、って勝さん言ってたよね?

勝 :そうそう。TVの取材が来るレベル。まあ今回の主題はそこじ
   ゃないから、ここでやめておこう。

真子:はーい。

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◆人間は「自分」が好きな生き物
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勝 :人間は「自分を好きな生き物」ということは「脳」の本能とい
   うか、習性らしい。

真子:え、そうなの?

真子は、真子なりに必死でノートを取っている。勝はそれを満足そう
に眺め、ノートパソコンを操作して真子に見せる。

-----------< 記事要約 >------------

◇自分について話すことが、食べ物やお金で感じるのと同じ「喜びの
 感覚」を脳のなかに呼び起こすことが明らかになった。

◇日常会話の約40%は、自分が何を感じ、どう考えたかを他人に話
 すことで占められる。米ハーバード大学の神経科学者らが脳画像診
 断と行動に関する5つの実験を行い、その理由を解明。脳細胞とシ
 ナプスがかなり満足感を得るため、自分の考えを話すことを止めら
 れないのだ。

◇「セルフディスクロージャー(自己開示)は特に満足度が高い」と
 同大学の神経科学者、ダイアナ・タミール氏は話す。

◇一般的に、セルフディスクロージャーを行うと中脳辺縁系ドーパミ
 ン経路に関わる脳の領域の活動が高くなる。ここは食べ物やお金な
 どで得られる満足感や快感と関係している部分だ。

ウォール・ストリート・ジャーナル日本版
脳科学で解明、人が自分について語りたがるわけ─氾濫するSNS

2012年 5月 8日 20:05 JST

-----------< 記事要約 >------------

勝 :「人は自分のことを話すのが好き」という当たり前の実験結果
   ではあるが、要は「自分のことを考える」生き物なんだよな。

真子:そりゃそーだよねー。だからFacebookとかで「自分が」食べた
   ものを人に見せたくなったりするんでしょ。

勝 :そしてそれは「脳の本能的な快感」によるものだってことだ。

真子:じゃーさー、「お客様の立場に立つ」っていうのは、「本能に
   逆らう」ってことだよね? だから難しいんだ!

勝 :そう! みんなついつい「自分のこと」を「本能的」に考えて
   しまう。だから、他人である「お客様」の立場に立ちにくい。

真子:じゃあさ「お客様の立場に立つ」っていうのは、「気合い」の
   問題だったりするんじゃないの?

勝 :ある意味そうだな。「お客様の立場で考えよう!」と、常に自
   分に気合いを入れてないと、忘れちゃう。

真子:そーかー。「お客様の立場に立つ」ことは、人間の本能に逆ら
   うことかあ……。売り手も「自分」のことを考えちゃうんだ。

勝 :で、お客様は、本能通りに「自分の欲しいモノを買う」だろ?
   でも「自分とお客様」は違うから、そこに問題が起きる。

真子:そうか! そこにハナっからギャップがあるんだ! 売り手も
   買い手も「自分が好き」だから!

勝 :これがマーケティングの難しさ、なんだよな。

真子:だから、「お客様の立場に立とう!」っていうんだね。

勝 :それが簡単にできるんであれば、そんなことわざわざ言わない
   よな。

真子:あ、そりゃそうだ。

勝 :だから、「ベネフィット」っていう「お客様の価値」を考える
   とか、っていうようなことが必要になる。まずはコレが基本。

真子:はーい。

勝 :じゃあ、ここまでをまとめてみろ。恵利ちゃんがいないから、
   真子がやるんだぞ。

真子:わかってるよー、もー、恵利恵利ってうるさいなー。カワイイ
   真子ちゃんがここにいるのにー。

真子が、まとめあげたばかりのノートを勝に見せる。

○今号のまとめ

・マーケティングは「お客様の立場に立つ」こと

・「お客様と自分は違う」ために、お客様の立場に立つことが必要

・人間は自分のことを考えるのが本能的に好きな生き物。その本能に
 逆らって、「お客様の立場に立つ」ように気合いで頑張る!!

勝 :まあこんなもんか。まだ最初だからな。これを前提として、次
   から、セグメンテーションの内容に入って行くか。

真子:うん! ねー、これで私も、スタッフに「真子のセグメンテー
   ション講座♪」とか開けるようになるかな?

勝 :できないと困るんだよ。教えてるオレの立場としても。

真子:じゃあ頑張ろうっと。勝さんのた、め、に、はーと。

勝 :オレのことはいいから、会社のために頑張れ。

勝はそう言いながら、テーブルの上に散乱するお菓子を開けては、ひ
ょいひょいと口に入れていき、ぱくぱくと食べて行く。

真子はその間も、勝の言ったことを思い出しながら、ひたすらノート
に取っていく。

「あー、勝さん、食べ過ぎぃ! 私の分も残しといてよー!」
「お、よく気づいたな」
「何よもー、人がせっかくマジメに考えてるのにぃ」
「オレ、メシ食ってないんだからな。晩飯代わりだな」
「そ、そーなの? じゃあ、お弁当買えば良かったのに……」
「オマエが遅れてくるから、買う時間もなかったんだよ!」
「え、あ、きゃははは、ごっめーん! じゃあ真子がおごるね!」
「お、じゃあ、おごられるか。元々オマエのせーだしな」
「じゃあ、ワゴンが回って来たら、買ってあ、げ、る、はーと」

旅はまだ始まったばかり。2人の珍道中はいかに。お楽しみに!

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◆今日のまとめ
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●マーケティングの基本は「お客様の立場に立つ」ことだが、それは
 非常に難しい。まずは「お客様の立場に立つ」ことを徹底しよう!

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━特別編Vol.201(累計0977) 2012/12/31

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●「セグメンテーション」は、とりあえずは「分ける」こと。「分け
 る」理由は、ニーズが違うから!

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◆まずは、前号の復習から!
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「あ、勝さん、ワゴン車が来たよ! お弁当買ってあ、げ、る♪」
「じゃあ、釜飯とカツサンド」
「へ? 変な組み合わせだねー。まーいーけど、それで足りるの?」
「宿に着いてからまた食うだろ。だから控えめにしとく」
「全然控えてないじゃん、きゃははは。じゃーお金を、っと……」
「お、ありがと。じゃあ食いながら始めるか」

勝 :じゃあ、まずは前号の復習からな。もぐもぐ。あ、うまい。

真子:前号は、セグメンテーションに行く前の、その前提の話だった
   よね。まず、マーケティングは「お客様の立場に立つこと」。

勝 :そうだな。なんでそれが必要かっていうと?

真子:そうしないと売れないから!

勝 :何で、自分の思い通りに作って、売ると売れないんだ?

真子:自分とお客様は違うから!

勝 :そうだな。でも、何でわざわざ「お客様の立場に立とう!」な
   んてことを大げさに言わなきゃいけないかっていうと?

真子:人間は、自分のことを考えたり話すのが好きだから! 相手の
   立場に立つ、っていうのは人の「本能」に逆らうから難しい!

勝 :そうだな。敵は「本能」寺にあり、ってところだな。

真子:え? あ、きゃははは、おもしろーい!

勝 :いやあ、下らないオヤジギャグで笑ってくれる真子は本当に嬉
   しいよ。

真子:なによー、人をバカみたいにー。勝さんだって、ムスっとして
   る子よりは、笑ってる女の子の方がいいでしょー!?

勝 :そりゃそうだよ。だから褒めてるんじゃねーか。

真子:そー聞こえなかったけど、まーいーや。

勝 :じゃあ、今号からセグメンテーションの本論に入っていくか。

真子:うん!

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◆「セグメンテーションの基本」は「分ける」こと
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勝 :まずは基本から、だな。マーケティングの教科書、コトラー先
   生のマーケティング・マネジメントから見ていこう。

-----------< 引  用 >------------

どのような市場で事業を行うにしろ、一般にそのすべての顧客に販売
するということは不可能である。顧客の数は多く、拡散しており、購
買行動もそれぞれ異なるので、競争企業が得意とする顧客層もできれ
ば、自社が有利に販売できる顧客層もできてくる。

そこでマーケティング計画を別個に用意する価値がある程度に、市場
をいくつかの顧客別部分集合に分割する市場セグメンテーションと、
その各市場セグメントを評価し選択したセグメントに努力を集中する
ターゲット市場設定を行うことが必要となる。

マーケティング・マネジメント 第4版 1983年 P.114
フィリップ・コトラー著

-----------< 引  用 >------------

真子:えっと……難しい日本語だね、これ……

勝 :言ってることは単純にして当たり前、すなわち極めて本質的。
   その意味でもよくまとまってる。

真子:もうちょっとやさしく書いてくれればいいのにねー。教科書な
   んだからさー。

勝 :やさしく書いてくれてる本もあるだろ。

真子:え、そんな本あるのー? おしえてよー!

勝 :何言ってんだ、この本がそういう意味では一番いいだろ。

○「新人OL、つぶれかけの会社をまかされる」 佐藤義典著
http://ow.ly/89pSR

真子:あー、真子達が出てる本だぁ!

勝 :この本はまさに「わかりやすい教科書」だからな。

真子:そりゃそーだよねー、きゃははは。

勝 :で、マーケティング・マネジメントは、この4版が、古いけど
   よくまとまってる。これがまずは基本的な考え方だな。

真子:え? 1983年? わ、30年前だ!

勝 :と言っても、マーケティングの本質なんか江戸時代の平賀源内
   の「土用の丑の日」からそれほど変わってないからな。

真子:あー、それと比べると30年前は全然最近だねー。

勝 :で、さっきのマーケティング・マネジメントの内容をまとめる
   と、どうなる?

真子:えっと……「色んなお客様がいるから、お客様を分ける」かな

勝 :そうだな。セグメンテーションの基本は、「分けること」。後
   で「修正」するけど、ここではそうしておく。後は?

真子:どれかのセグメントに「集中する」のが、「ターゲット」!

勝 :ああ。セグメント、っていうのは「分けられたカタマリ」。そ
   のうちで、狙うべきところが「ターゲット」だな。

真子:あとさ、「自社が有利に販売できる顧客層」っていうのが、
   「強みが活きる顧客層」ってことだよね?

勝 :お、そうそう。さすがマーケティングの教科書のヒロイン。

真子:へっへえ♪

勝 :でさ、この話って、前号の内容が「前提」になっている、って
   いうのはいいよな?

真子:前号は……「自分とお客様は違う」っていうことだから……そ
   うか、「お客様同士でも違う」ってことだ!

勝 :そう。真子的に言うと、「人っていっても色々いるよねー」っ
   て感じか。

真子:だよねだよねー、きゃははは。

勝 :だから、分けて対応することになる。全てのお客様には売れな
   いからな。

真子:全てのお客様に売れてるものってないのかなー?

勝 :あるとすれば、電気くらいだろ。それでも普及率100%では
   ないよな。電気引いていない家もゼロではないだろうから。

真子:そっか。

勝 :まあ、とにかくセグメンテーションの基本は、後で修正するけ
   ど、「分ける」こと。何で分けるかっていうと?

真子:人によって「ニーズが違う」から!!

勝 :そうだな。「ニーズが違う」から分ける、っていうのはおさえ
   ておこうな。くどいけど、「分ける」は後で修正する。

真子:うん。ねー、このコトラーさんの本にさー、セグメンテーショ
   ンの説明っていっぱいあるの?

勝 :それがさー、あんまりない。P.114-129のたった16
   ページだな。

真子:えー、意外と少ないねー。

勝 :まあ、基本的なテキストだからな。中小企業診断士試験とか、
   MBAレベルならそんなもんでいーけどな。

真子:えー、MBAレベルでもそんなもんなの?

勝 :マーケティング専攻でもなきゃ、そんなもんだぜ。

真子:へー、そうなんだ。

勝 :このシリーズはその内容を遥かに上回る。世界的に見てもハイ
   レベルな内容になるぞ。

真子:やったあ! 真子も世界トップれ、べ、る、はーと♪

勝 :使いこなせれば、の話だからな。「わかる」と「できる」は全
   然違うぞ。

真子:わかってますよーだ。

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◆基本的な分け方 その1:「男女」で分ける
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勝 :じゃあ、まずは「分け方」を見ていこうか。繰り返すけど、後
   で「分ける」という考え方は否定というか、修正するから。

真子:うん、「後で否定するために、とりあえずの理解として」、便
   宜上「分ける」って言っておく、ってことだよね

勝 :そう。まずはわかりやすいところで、「男女」で分ける。

真子:まあ、男女ではニーズが色々と違うよね。

勝 :わかりやすいのが、「伊勢丹メンズ館」だな。

真子:あ、そっか、「男性のための店」として「分けている」ってこ
   とか。じゃあ、「レディースランチ」みたいのもそうだよね?

勝 :そうそう。デザートとかがついてくるランチメニューな。逆に
   「大盛メニュー」なんかは男性向けだよな。

真子:あー、勝さんみたいな人向けねー。

勝 :コンビニでも、カップラーメンの大盛り、っていうのは必ずあ
   るよな。コンビニは男性向けのチャネルだからさ。

真子:あ、そっか。男性が行く店には「大盛」があるってことか。

勝 :そういうことだな。ちょっと読んで見ろ、これ。

真子がノートを取っていある間に勝はノートパソコンを操作する。電
車の振動で時折揺れる。

真子がノートを取っているので、勝は弁当をガツガツと口にする。

「ちょっとー、米粒飛ばさないでよー、汚いなー、もー」
「いいからこれを読め」

真子が勝の隣の席から、勝のノートパソコンを覗き込む。

-----------< 記事要約 >------------

◇RTD(レディー・トゥー・ドリンク)と呼ばれる缶チューハイや
 カクテルなどの低アルコール飲料が人気。30~50代男性が支持
 するビール類と異なり、主要顧客は20~40代女性。

◇クロス・マーケティングが自宅用のRTD購入者20~59歳男女
 を対象に調査したところ、女性の割合は55%と過半数を占めた。
 キリンビール「氷結」は男性の比率が高く、サントリー酒類「ほろ
 よい」やアサヒビール「カクテルパートナー」は女性が高かった。

◇飲む際に一緒に食べる料理を聞いたところ、「氷結」は肉料理との
 組み合わせが多い。「ほろよい」「カクテルパートナー」では空揚
 げのほか「パスタ」も高水準だった。

◇RTDを選ぶ際に重視する点は男女ともトップは「味がおいしい」
 で「飲みやすい」「価格が手ごろ」が続いた。女性の場合「カロリ
 ーが低い」「気軽にアルコールを楽しめる」「アルコール度数が低
 い」が男性に比べて高い。

           RTD    ビール類

男性20~29歳  11.2    10.3
男性30~39歳  12.6    15.4
男性40~49歳  12.5    16.6
男性50~59歳   9.0    16.4

男性合計*     45.3    58.7

女性20~29歳  14.0     7.0
女性30~39歳  14.8    10.5
女性40~49歳  14.3    11.5
女性50~59歳  11.5    12.3

女性合計*     54.6    41.3

*男性・女性の合計値は筆者が計算

2012/07/04 日経MJ P.2

-----------< 記事要約 >------------

真子:えっと……RTDって、要は缶チューハイとか、缶のカクテル
   だよね? 

勝 :そう。カクテルとか、手で作らずにすぐ飲めるから、Ready To
   Drinkなんだろうな。

真子:ビールだってそうなのにRTDって言わないんだね。何で?

勝 :その理由はオレに聞かれても困る。とにかく、データを見ろ。
   男女で違うだろ

真子:うん。女性はRTDで男性はビール!

勝 :飲むものが違うよな。それから違うものは?

真子:一緒に食べるものも違う! うーんっとね……

真子がノートにまとめていく。

○男性 → 氷結 → 肉料理
○女性 → ほろよい・カクテルパートナー → パスタ

勝 :そうだな。他には?

真子:女性は、カロリーもアルコール度数も低い方がいい!

勝 :となるとさ、何が変わるんだ?

真子:飲み方が違う! 男性は酔うために飲むし、女性はパスタと一
   緒に味わうドリンクって感じ!

勝 :そうだろうな。実際、アサヒの「スーパードライ」は、アルコ
   ール度数が5%で、サントリーの「ほろよい」は3%だしな*

*参考資料
http://www.asahibeer.co.jp/products/beer/superdry/
http://www.suntory.co.jp/rtd/horoyoi/

真子:パッケージもさー、「ほろよい」はカワイイし、「スーパード
   ライ」はカッコイイって感じだよね。

勝 :つまり、「何」が違うんだ?

真子:えっと……「売り物」が違うってこと? あ、「売り方」も変
   わるか……

勝 :そういうこと。男性と女性で、売り物、売り方、売り場、が変
   わって来る。だから「分けて対応する」ってこと。

真子:まずはこれが基本ってことだよね。

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◆基本的な分け方 その2:「年代」で分ける
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勝 :これも基本だが、男女の次は「年代」。

真子:子供と大人じゃ「ニーズが違う」もんね!

勝 :そういうこと。わかりやすいのはこれ、な。

勝がノートパソコンを操作して真子に見せる。

「ほら、そんなにくっつくなよ」
「いーじゃん、もー照れちゃってぇ」
「メシが食いづらいんだよ」
「あー、やっぱりイヤじゃないんだー」
「だからそんなくっつくなって。いーから読め」

真子がノートパソコンを注視する間、勝がカツサンドをほおばる。

-----------< 記事要約 >------------

◇スーパー各社がシニア対応を強化。イオンは板橋店(東京・板橋)
 に初めて100台規模で拡大鏡付きのカートを導入。商品のパッケ
 ージ表示を読みやすくすることで買い物の負担を減らす。

◇ダイエーは赤羽店(東京・北)などで一般的な鉄製に比べ25%ほ
 ど軽いアルミ製のカートに切り替えた。イトーヨーカ堂も一部店舗
 で利用を始めた。

◇エコスは今年度、25店に高齢の顧客も使いやすいよう高さを抑え
 た陳列棚、カロリーや塩分も表示した値札などを取り入れた。

◇マルエツは商品を袋詰めする台を工夫。台の高さを従来より10セ
 ンチほど下げ、カートを台に差し込めるようにした。カートのカゴ
 の部分だけが台の上に乗り、「買い物カゴを持ち上げて台に移す負
 担がなくなる」(同社)という。

2012/12/24 日経MJ P.7

-----------< 記事要約 >------------

真子:なるほどねー。カート引っ張り回すの、結構大変だもんね。

勝 :オレは気にならないけどな。

真子:結構重いよ。カートから買い物カゴを袋詰め台にのっけるのも
   結構大変だよね。カゴが重いから。

勝 :オマエ、どんだけ買い物すんだよ。

真子:買うヒマがないから、一気にドカンと買っちゃうんだよねー。
   それに、野菜とか結構重いし。か弱いお、ん、な、の、こ♪

勝 :あーなるほどな。ということは、真子とシニアはその意味でニ
   ーズが同じ、ってことだな。

真子:あ、確かにそうだね。私とシニアは、ニーズが同じだ。「重い
   モノを持ちたくない」ニーズ♪

勝 :こんなのもあるぜ。

-----------< 記事要約 >------------

◇ファミリーマートのPB菓子、「おとなのおやつ」が好調。同社が
 「おとな世代」と呼ぶ50歳以上を狙い、食感や容量を工夫。
 2012年1月下旬の発売から3カ月で250万個を売り上げた。

◇2010年にファミマが設立した「おとなコンビニ研究所」のモニ
 ターから「多くは要らないが1個の満足感が欲しい」との声があが
 る。スナック菓子は車輪のような形でアンチョビとガーリックを利
 かせ「冒険的な味」(同社)に。バターパイはバターの構成比が
 NB商品では3%程度なのに対し、10%まで使用。

◇質を追求したが、200円以上では手が出づらくなるため容量を絞
 り、主力商品は128~198円に抑えた。

◇ファミマには容量多めで105円均一のPB菓子「ボクのおやつ」
 がある。ボクのおやつの売上高に占める50歳以上の比率は5%程
 度だが、おとなのおやつでは13%まで伸びた。

2012/06/01 日経MJ P.3

-----------< 記事要約 >------------

真子:へー。子供は量が多くって105円の「ボクのおやつ」で、大
   人は量が少なくていい材料を使った「おとなのおやつ」か。

勝 :まあよくわかる話だよな。子供は甘いモノがたくさん食べたい
   だろうし。

真子:でもさー、勝さんもそーじゃん。甘いモノをたくさん食べたい
   んじゃないの、きゃははは!

勝 :そう! オレと子供はニーズが同じ!

真子:面白いね、私とシニアはスーパーでのニーズが同じで、勝さん
   と子供はお菓子のニーズが同じ!

勝 :だろ? これをよく覚えておけよ。この話は後につながってい
   くからな。

真子:うん。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆ターゲット顧客が変わると、「B:戦場・競合」が変わる!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

勝 :じゃあ、分け方のまとめとして、これ。カラオケ、な。

勝は再びノートパソコンを操作し、最後のカツサンドを口に入れた。

-----------< 記事要約 >------------

◇カラオケ店「コート・ダジュール」を運営するヴァリックは、滑り
 台やおもちゃを備え付けた「ファミリールーム」を全店の9割近い
 約120店に設置、投資額は4億円。「ライバルはファミリーレス
 トラン。家族や友達同士でくつろいでもらいたい」(同社)

◇シダックスは今夏から、カラオケルームで子供を対象とした科学や
 食育の講座を開始。学研グループの学研教育みらいからプログラム
 の提供や講師の派遣を受ける。講座を通して子供にも来店してもらう
 きっかけを作る狙い。実施店舗も約70店に増やす考え。

◇第一興商は時間とお金に比較的余裕があるシニア世代を狙う。6月
 に奈良市が所有する温浴施設に体操用にアレンジした歌謡曲などの
 演奏に対応した通信カラオケ機器「FREE DAM」を設置。機
 器を使った体操や歌謡教室を週1回、1時間程度開く。

別表:カラオケの利用者層(2011年度)

中高年 18%
大学生 13%
サラリーマン(若年) 19%
サラリーマン(中高年)16%
ファミリー      10%
シニア  14%
主婦   9%
その他  1%  (注)全国カラオケ事業者協会の調べによる

2012/10/14 日経MJ P.11

-----------< 記事要約 >------------

真子:すごいねー、会社によって、ファミリー狙ったり、子供狙った
   り、シニア狙ったり、って……確かにニーズが違うよね!

勝 :でさ、ターゲットによって、やるべきことが変わるだろ? ど
   うなってる?

真子が、「うーんとね……」と言いつつパソコンのモニタを見ながら
ノートにまとめていく。「ね、これでどう?」と言いながら勝にノー
トを見せる真子。

 顧客ターゲット   売り物の改変      戦場・競合

○ファミリー : 滑り台やおもちゃ → 競合はファミレス
○子供    : 科学や食育    → 競合はおけいこごと?
○シニア   : 温浴施設で体操  → 競合はスポーツジム?

勝 :お、いーじゃん。競合までちゃんと書いてあるところが。

真子:へっへー。

勝 :そうそう、ターゲットによって、売り物も変わるし、競合も変
   わって来る。何でだ?

真子:そりゃ、ニーズが違うからでしょ。ファミリーを狙うと「昼間
   の食事戦場」になって、シニアなら「健康・運動戦場」かな?

勝 :そうだな。つまり、「戦場」が変わる。「戦場」=「ニーズ」
   だから、「ニーズが違う」と「戦場が変わる」

真子:だから、結果として「競合」も変わるんだよね!

勝 :うん。だからヴァリックが「ライバルはファミレス」というの
   は、考え方として適切だと思うよ。

真子:もはやカラオケ同士のバトルじゃないってことだよねー。

勝 :そうなるよな。そういう考え方のためにも「適切な分け方」っ
   ていうのが、戦略の根幹になってくる。

真子:あ、そっか、この「分け方」を間違えると、戦場・競合とかが
   間違っちゃうってことだ!

勝 :そう! だから、セグメンテーションはすっごく大事! 戦略
   の本当に「根幹」なんだよな。じゃあここまでのまとめ、な。

真子:うん!

真子が、しばらくノートに書き込んでいただかと思うと顔を上げ、ま
とめあげたノートを勝に見せる。

○今号のまとめ

・「セグメンテーション」とは(とりあえずは)「分ける」こと
 (でもこの考え方は、後で修正する!)

・分けた「セグメント」で、狙うところが「ターゲット」

・セグメントによってニーズが違うから、分けて対応する!

・基本的な分け方は、性別・年代

・顧客ターゲットを変えれば、戦場・競合が変わる!

勝 :OK、さすがこのあたりまでは真子もさすがにできるようにな
   ってるよな。

真子:へっへー、一応勝さんの薫陶を受けた経営者ですからねーだ。

勝 :まあ確かにこれくらいはできなきゃ困るよな。

「あれ、勝さん、もう食べ終わったの?」
「まあ、弁当1個とカツサンドだからな……全然たりねー」
「もう、食べ過ぎー! じゃあ宿で一杯食べよー!」

車掌のアナウンスが車内に流れる。
「間もなく~○○駅ぃ、間もなく~○○駅ぃ」

「え……勝さん、もう駅に着くよ!」
「あれ……こんな時間だ! やばい! 真子、荷物下ろせ!」
「えー、か弱いレディにそんなことさせるなんてぇ……」
「誰がか弱いよ。オレはパソコンたたまなきゃいけないんだよ!」
「もう……わかりましたよー」
「乗り過ごしたらシャレにならんぞ! 早くしろ!」
「勝さんの方がヤバそーじゃん、きゃははは」

慌てて片付けを始める真子と勝。2人一緒の年末は、いつも通り、ド
タバタで迎えるのでした。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆今日のまとめ
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●「セグメンテーション」は、とりあえずは「分ける」こと。ニーズ
 が違えば戦場も変わるから、分けて対応しよう。

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━特別編Vol.202(累計0978) 2013/01/03

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●「セグメンテーション」は「分ける」より「括る」。「性別」「年
 代」ではもう分けられないことも少なくない!

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◆まずは、前号の復習から!
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大晦日の夜遅く、売多家が集まる温泉宿に飛び込んだ真子と勝。チェ
ックインを済ませると、親戚に手荒い歓迎を受ける。

「あらあら、勝ちゃんに真子ちゃん、遅かったねー」
「すみませーん、遅くなっちゃって」
「アナタ達は昔っから仲いーねー、ホント、いっつも一緒で」
「いや、コイツが勝手にひっついてくるだけですから。今回も」
「そんなこと言って、勝ちゃんもまんざらじゃないんでしょ?」
「ほら、こーゆーこと言われるからオマエと一緒はイヤなんだ……」

「やーだ、勝ちゃん、照れちゃってー」と真子が肘で勝をつつく。
「オマエが言うな」

「食事は終わったけど、これから年越しソバよ。」
「やったあ! 勝さん、ソバには間に合ったねー」
「勝ちゃん用にはいつもどおり、トンカツを用意してるからね」
「ありがとうございます!」
「あー、私もー! 大体勝さん、さっきカツサンド食べてたじゃん」
「別にいくつ食ってもいいだろ。カツは正月の縁起物なんだから」
「縁起モノじゃないよ、勝さんが食べたいだけじゃん」
「いいんだよ、正月のおせちだって全部語呂合わせじゃねーか」

そうこうしている間に、宿からふるまわれる年越しソバ。勝は嬉しそ
うに、ソバにトンカツをひたす。

「私にもちょーだい!」

真子が勝手に勝のトンカツを奪っていく。

「あ、持ってくな! オレんだ!」
「いーじゃん、一切れくらい」
「それだけだからな」
「じゃーもう一切れっと」
「ふざけんな!」

喧々諤々(?)で食べ終わると、食卓に残された空っぽの器。

「ふう……これで今年も終わる、って感じがやっとしてきたな」
「ね、ね、さっきのヨイトマケの唄、良かったねー」
「あの人、オーラの人かと思ってたら、すごかったな」
「ほんとオーラがあったよねー」
「オーラなど存在しない。演出×所作、要はメッセージの結果だ」
「なるほど。演出×所作の結果として、私達が勝手に感じる……」
「そういうこと。オーラなんて呼ぶと再現性がなくなるだろ」
「そっか。演出×所作、と考えれば私にもできるかな」
「だろ? じゃあ、時間もったいないから、さっきの続き、な」
「うん!」

部屋の隅っこに机を移し、テーブルの片隅で始まる今年最後のレッス
ン。真子がバッグからノートを取り出す。

「今年最後のプライベートレッスンだねー。ふ、た、り、き、り♪」
「妙な言い方はやめろ。しかし、最後までオマエと一緒とはな……」
「何よ今さら。毎年のことじゃん、きゃははは」
「まあそうだな……じゃあ始めるか」

真子:前号の復習からだよね。

勝 :おお、そうしてくれ。

真子:センセー、前号は、セグメンテーションは「分けること」って
   いう、基本のところをやりました!

勝 :その「分ける」っていうのは、後で否定っていうか「修正」す
   る。で、教科書の定義はこれだな。これがまずは基本になる。

-----------< 引  用 >------------

どのような市場で事業を行うにしろ、一般にそのすべての顧客に販売
するということは不可能である。顧客の数は多く、拡散しており、購
買行動もそれぞれ異なるので、競争企業が得意とする顧客層もできれ
ば、自社が有利に販売できる顧客層もできてくる。

そこでマーケティング計画を別個に用意する価値がある程度に、市場
をいくつかの顧客別部分集合に分割する市場セグメンテーションと、
その各市場セグメントを評価し選択したセグメントに努力を集中する
ターゲット市場設定を行うことが必要となる。

マーケティング・マネジメント 第4版 1983年 P.114
フィリップ・コトラー著

-----------< 引  用 >------------

真子:うん。まずは「男女の違い」をやったんだよね。アルコールだ
   と、男性はビールで、女性は缶のカクテル!

勝 :何でそうなる?

真子:ニーズが違うから! 男性は酔いたいだろうし、女性はパスタ
   と一緒に楽しむ! 使う方が違う!

勝 :そうだな。「ニーズが違う」から分けて対応する、というのが
   セグメンテーションだからな。するとどうなる?

真子:「売り物」とか「売り方」が変わる!

勝 :そうそう。やるべきことが変わる。逆にやるべきことが変わら
   ないなら、分ける意味が無い。あとは?

真子:あとは、「年齢」! お菓子も、おとな向けには少し高くても
   少し良いモノ、子供向けには、安くて量が多いモノ!

勝 :そうだな。セグメントが変わることの、戦略的な意味は?

真子:カラオケなんかだと、セグメントが変わると、戦場・競合も変
   わる!

 顧客ターゲット   売り物の改変      戦場・競合

○ファミリー : 滑り台やおもちゃ → 競合はファミレス
○子供    : 科学や食育    → 競合はおけいこごと?
○シニア   : 温浴施設で体操  → 競合はスポーツジム?

勝 :その理由は?

真子:セグメントによってニーズが変わるから! 戦場は「ニーズの
   カタマリ」だから!

勝 :OK。「戦場はニーズのカタマリ」っていい表現だな。

真子:いぇーい!

勝 :じゃあ、進めていこうか。

真子:はい、センセー!

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆性別・年代ではもはや分けられない
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

勝 :じゃあ、前号で散々言ってきた「セグメンテーションとは分け
   ること。あとで否定・修正するけど」をやっていこう。

真子:うん!

勝 :結論から言うと、前号の「性別」「年代」で「分ける」ことは
   現代では難しい。

真子:でも前号では分けられてたじゃん。

勝 :単純な場合はいいよ。「シニア対応」とか。ただ、シニアって
   一口にまとめるのは、ホントは不十分。

真子:なんで? 例えば?

勝 :前号では、スーパーのシニア対応、という例を出したけど、そ
   もそも店に来られないシニアの方だっていらっしゃるだろ。

真子:あ、そうか。動くのがままならない方もいらっしゃるね。

勝 :そう。実は「スーパーに来られる」というのは、「動ける」と
   いう前提を既においちゃってるんだよな。

真子:なるほどね。だから「シニア」っていうだけじゃ不足なんだ。

勝 :そう。例えばさ……

-----------< 記事要約 >------------

◇大丸松坂屋百貨店が大丸京都店に開いた、高齢女性向け衣料品売り
 場「マダムセレクション」が好調。年代によって好みが異なるとみ
 て、あえて65~69歳に品ぞろえを絞った。売上高は改装前に比
 べ4割伸びており、他店への導入を目指す。

◇商品の選定にあたっては65~69歳をターゲットに据えた。高齢
 女性というと60歳代をひとくくりにすることが多いが、60代前
 半と後半では好みや体形が異なると判断した。

2011/11/25 日経MJ P.5

-----------< 記事要約 >------------

真子:なるほど、60代の前半と前半でも大分違うってことか……

勝 :そうそう。だから「60代女性」っていうのも、切り口として
   は粗すぎるってこと。こんなショッキングなニュースもある。

-----------< 記事要約 >------------

◇小学館は月刊学習雑誌「小学三年生」と「小学四年生」を2012
 年3月号で休刊すると発表。昭和48年には、三年生が4月号で
 102万部、四年生も同号で82万部の最大部数を記録したが、今
 年度に入ってからは、3年生が4-5万部、4年生は3-4万部。

◇「小学五年生」「小学六年生」は平成21年度内で休刊。残る「小
 学一年生」「小学二年生」については、来年度以降も発行予定。

産経新聞 12月1日(木)13時41分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111201-00000528-san-ent

-----------< 記事要約 >------------

真子:えー、あれ、なくなっちゃうんだ! 私読んでたのにー!

勝 :で、その理由が非常に興味深い。小学館のプレスリリースによ
   ると、こんな理由なんだよな。

-----------< 引  用 >------------

◇近年の社会状況や生活環境の変化はたいへん大きく急激で、趣味や
 価値観の多様化、情報の細分化と専門化など、大人の世界で起きて
 いる事象が、そのまま子どもたちの世界でも現実化してきていま
 す。その中で、「学年別」に「男女共通」で「総合的な内容を持
 つ」雑誌という刊行形態の枠内では、成長と変化が著しい小学校中
 学年の子どもたちのニーズに必ずしも合致しなくなってまいりまし
 た。

http://www.shogakukan.co.jp/st/files/sho3_sho4.pdf

-----------< 引  用 >------------

真子:えー、小学生でも、「学年」とかじゃ分けられないんだ!

勝 :そう。同じ「3年生」でも、ニーズは全然違う。都心と地方、
   公立と私立、なんかで考え方は違うだろ?

真子:そりゃそうか……

勝 :あと当然、親によっても考え方が違う。買うのは親だしな。

真子:あ、そうか! 親が「多様化」したんだ!

勝 :そうだろうな。3年生「全員」に売ろうとして、総花的な内容
   にすると、4~5万部しか売れない時代になった。

真子:昔は100万部ってことは、「3年生」とその親は、同じニー
   ズの人が100万人いたってことかな?

勝 :そうなるな。要は「同じ小学3年生」でも、ニーズは違うって
   言うことだ。

真子:私は遊び回ってたけど、むしろ特殊なのかなー。

勝 :オレだってそうだよ。小学生のとき、家で勉強した記憶なんか
   ないぞ。中学生のときはゲーセン通いだったしな。

真子:あれ、勝さん勉強しなかったの? してたのかと思ってた。

勝 :小中学校のうちは、わざわざ家で勉強しなくたって、学校で先
   生の話聞いてりゃ、全部できるだろ。

真子:勉強しなくてもできたって言いたいのねー、イッヤミー。

勝 :ともかく、結論としてはこんな感じ。

-----------< 記事要約 >------------

◇ルミネの新井良亮社長は「年齢で消費傾向を語ることができなくな
 ってきている」「今後は年齢軸だけによらず、ルミネの価値観や感
 性に共感してくれる幅広い層を獲得したい」と語る。

2012/07/11 日経MJ P.5

-----------< 記事要約 >------------

真子:なるほどね。年齢じゃダメで、「価値観」とかで分けないとダ
   メかあ……。

勝 :「価値観」っていうとちょっと大げさになるけど、まあそうい
   うこと。「年齢」だけじゃ不足なんだよな。

真子:ねー、これってよく言われる「価値観の多様化」とかって話な
   の? ほら、昔は「1億総中流」とか言われてたんでしょ?

勝 :あ、なるほど、昔は「1億総中流」だったけど、そうじゃなく
   なったっていうことか?

真子:あ、うん。価値観の多様化、ってそういうことだよね?

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆変わっていない「一億総中流意識」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

勝 :そうか。じゃあいい機会だから「国民の意識の変化」について
   まとめておこう。

真子:へ?

勝 :「国民生活に関する世論調査」っていう、国がやってる素晴ら
   しい調査がある。

真子:へー、そうなんだ!

勝 :長期間に渡って同じ設問を繰り返しているから、非常に一貫性
   がある。そういう調査は民間ではほとんどないからな。

真子:なるほどぉ。ありがたいね。

勝 :「1億総中流意識」ってさっき真子が言った、それの元になっ
   た調査の1つだな。

真子:その「中流意識」って崩れてるんでしょ?

勝 :そうなのか?

真子:そう言われてるじゃん。

勝 :「国民生活に関する世論調査」の数字はこうなってるぞ。

勝がノートパソコンを操作し、真子に向ける。

-----------< 引  用 >------------

○お宅の生活程度は,世間一般からみてこの中のどれに入ると思いま
 すか。

      上   中の上  中の中  中の下  下   不明

1958  0.2   3.4   37    32    17    10
1972  0.6   7.0   57.6   24.7   6.5   3.6
1992  0.9   10.4   53.6   26.2   5.1   3.8
2012  1.1   12.9   55.7   23.7   5.4   1.2

国民生活に関する世論調査
http://www8.cao.go.jp/survey/s32/S33-02-32-15.html
http://www8.cao.go.jp/survey/s46/S47-01-46-20.html
http://www8.cao.go.jp/survey/h04/H04-05-04-01.html
http://www8.cao.go.jp/survey/h24/h24-life/3.html

○長期推移グラフ

http://www8.cao.go.jp/survey/h20/h20-life/images/z31.gif

-----------< 引  用 >------------

真子:あれ? 1972年以降は、ほとんど変わってないんだ!

勝 :そうだな。1958年から後、1972年以降はずっと同じ。
   だから「中流意識の崩壊」はウソ。

真子:そうなんだあ!

勝 :グラフから、唯一言えそうなのは、「中の上」の増加、だな。
   むしろ「生活程度」の自己認識は改善されている。

真子:じゃあ、何にも変わってないってこと?

勝 :セグメンテーションにおいて「生活程度の自己認識」は変化が
   ない、って言ってるだけ。変わってる部分も当然あるぜ。

真子:そうなの?

勝 :ああ。セグメンテーションからはちょっと離れるけど、参考ま
   でに、見ておけよ。

勝がノートパソコンを叩き、「これな」と言いながら真子に見せる。

-----------< 引  用 >------------

○お宅の生活は,去年の今頃と比べてどうでしょうか。この中から1
つお答えください。

    向上している  同じようなもの  低下している  不明
1992  7.6       76.0      15.1     1.3
2012  5.7       72.0      22.1     0.2

国民生活に関する世論調査
http://www8.cao.go.jp/survey/h04/H04-05-04-01.html
http://www8.cao.go.jp/survey/h24/h24-life/3.html
*1972については、質問の順序・内容が違うため、割愛

○お宅の生活は,これから先,どうなっていくと思いますか。この中
 から1つお答えください。

     良くなっていく 同じようなもの 悪くなっていく 不明
1972    31.5      42.4      14.0    12.1
1992    20.3      59.1      14.1    6.5
2012    9.7      58.9      29.8    1.6

国民生活に関する世論調査
http://www8.cao.go.jp/survey/s46/S47-01-46-20.html
http://www8.cao.go.jp/survey/h04/H04-05-04-01.html
http://www8.cao.go.jp/survey/h24/h24-life/3.html

-----------< 引  用 >------------

真子:これはわかりやすいね。生活はこれから悪化していく、とみん
   な思ってるんだ!

勝 :まあそりゃそうだよな。人口減るしな。

真子:えー、じゃあ価値観の多様化、って起きてないの?

勝 :そんなこと言ってないだろ。「1億総中流意識の崩壊」はウソ
   だ、って言ってるだけだ。

真子:じゃあ、価値観は多様化してるんだ? その「中流」っていう
   ところは変わらないにしても。

勝 :少なくとも、「性別」「年代」だけで「分ける」ことは非常に
   難しくなっているとは言える。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆ニーズで「分ける」というより、ニーズで「括る」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

真子:それで、「セグメンテーションは分けること」を否定する、っ
   て話はどうなったの?

勝 :それそれ。性別・年代みたいな、人口統計的な切り口で「分け
   る」だけでは不十分。

真子:それってどういうことなんですか?

勝 :そもそもセグメンテーションは何のために存在するんだ?

真子:えっと……「人によってニーズが違うから分けて対応する」!

勝 :そうそう。性別とか年齢じゃなくて、「ニーズ」が違うから、
   分けるんだな。

真子:じゃあ、何で最初に「性別」「年代」の例をあげたんですか?

勝 :性別・年代が「ニーズ」を表すことが「結構ある」から。でも
   それ「だけ」ではニーズを表せなくなってきてる。

真子:じゃあ「ニーズ」で分けられればいいんだよね?

勝 :結論はそう。ただ、性別・年代ならスパッと切るように「分け
   る」ことはできても、ニーズでスパッと切るのは難しい。

真子:じゃあどうすればいーの?

勝 :「分ける」というより、ニーズで「括る」。これが「分ける」
   セグメンテーションへの修正。「分けるよりも括る」

真子:「括る」っていうのは、具体的にどういうことですか?

勝 :前号でさ、スーパーマーケットの「シニア対応」っていうのを
   取り上げただろ? 覚えてるか?

真子:あ、うん。シニア向けにカートを工夫して、カートから買い物
   カゴを持ち上げて、袋詰め台に置く手間がなくなった。

勝 :それってさ、嬉しいのはシニアだけじゃないだろ?

真子:うん。私みたいな、か、よ、わ、い、女の子♪

勝 :それがまさに「ニーズ」。重い買い物カゴをカートから袋詰め
   台に移したくない、っていうニーズ。

真子:あ、そうか! その意味では、シニアの人と、かよわい女子は
   「ニーズが同じ」なんだ!

勝 :だから、「シニア」と、「かよわい女子」一緒にしてしまって
   いい。つまり「分ける」のではなく「括る」。

真子:なるほど、「重い買い物カゴを移したくない」っていう、個別
   具体的なニーズだから、分けるって感じじゃないんだ!

勝 :そうそう。「男女」とかだったら、人間全員にあてはまるから
   「分ける」でいいけど、今みたいな場合は「分けて」ない。

真子:そっか、個別具体的なニーズで「括る」方がピンと来るね。

勝 :そうすると、「結果として」、「シニア」と「かよわい女子」
   が一緒に括られる。何でそうなるんだ?

真子:重いモノを持ち上げる力が無いから!

勝 :そう。それが共通点だよな。それと、「性別」「年代」は関係
   ないよな?

真子:うん! 女性でも、力の強い人は入ってこないし、男性でも、
   そういうのが大変な人には便利!

勝 :まだあるよな。あとは? 重い買い物カゴを移したくない人は
   どんな人だ?

真子:えっと……そうか! たくさん買う人! 買い物カゴ一杯に、
   いっぱい買う人だ! 重い買い物カゴは移したくないから!

勝 :そうそう。真子もそう言ってただろ? まとめ買いするって。

真子:うん! そうなってくると、「買うモノの量」が関係するね。
   ホント性別とか年代は関係ない!

勝 :前号でもう1つあっただろ? ファミマのPBのお菓子の例。

真子:えっと……あ、そうだ。子供用の「ボクのおやつ」と、大人用
   の「おとなのおやつ」だね。

勝 :どう違うんだっけ?

真子:子供には、量が多くて105円の「ボクのおやつ」で、大人向
   けには量が少なくていい材料を使った「おとなのおやつ」。

勝 :そうだな。でもオレは、量を食べたいから、大人だけど「ボク
   のおやつ」を結構買ってる。

真子:きゃははは、そーだよねー。

勝 :だから、それはどういうことだよ。

真子:勝さんは「子供」と同じニーズ! やだぁ、きゃははは!

勝 :まあ、そういうことだ。だから、大人とか子供じゃなくて、
   「量をたくさん食べたい人」というニーズで「括れる」。

真子:それだと確かに「分ける」って感じじゃないね。ホントだあ、
   性別とか年齢で分けられないねー。

勝 :だから「ニーズで括る」。あと、性別・年代のセグメンテーシ
   ョンの弊害はまだある。

真子:なになに?

勝 :性別年代で切ると、それでセグメンテーションを「やった気」
   になって、思考がそこで止まる。

真子:あー、それ以上考えないってことかー。

勝 :そう。性別年代のセグメンテーションを否定しているわけじゃ
   なくて、それは「入り口」にすぎないってこと。

真子:あ、じゃあその「出口」が「ニーズ」ってことだ!

勝 :正解! あくまでも、「ニーズの違い」を知るための1つの
   「とっかかり」が性別・年代みたいな「分け方」

真子:最終的には、「ニーズで括る」のね。でも、それならさっきの
   「価値観」で分ける、みたいなことでいーんじゃないの?

勝 :年齢だったら「分ける」でいいんだけど、「価値観」とか「考
   え方」で「分ける」ってそもそもできるか?

真子:できるんじゃないの?

勝 :どうやって「分ける」? 年齢ならスパッと分けられるけど。

真子:えっと……「こんな価値観を持ってる人」とかで分ける?

勝 :それこそ「分ける」というより「括る」だろ。価値観なんて、
   一杯あるんだからさ。

真子:じゃあ「価値観」で「括れば」いいんだよね?

勝 :もちろんそうなんだけど、その「価値観」はどうやって知る?

真子:価値観を調べる調査とかすればいいんじゃない?

勝 :だから価値観って言っても色々あるだろ。どんな価値観を知る
   必要がある? どんな質問項目を聞けば、価値観がわかる?

真子:えっと……読んでる雑誌とか?

勝 :それはいいポイントだけど、雑誌がある特定の価値観を代表す
   る、っていうのはどうやって立証する?

真子:だって、価値観によって読んでる雑誌が違うじゃん。

勝 :だから、そもそも「どんな」価値観を知ればいいんだ? 一口
   に価値観って言っても、広すぎるんだよ。

真子:え?

勝 :例えば、ある商品のセグメンテーションをするとき、どの「価
   値観」がその商品の購買に影響するかは、どうやって知る?

真子:え……それは……はいはい、わかりましたー、降参でーす! 
   じゃー「ニーズで括る」ってどーやればいーんですかー!

勝 :それはだな……

真子:う、うん……

ごーーーーん……ごーーーーん……

TVから除夜の鐘が聞こえて来た。

「あ……ほら真子、年が明けたぞ!」
「え? あーホントだぁ! 年明けも私たち、一緒だねー」
「ホント不吉な終わり方で、不吉な始まり方だな……」
「またまた嬉しいくせにー。あけましておめでとうございます♪」
「おう。あけましておめでとう」
「本年もよ、ろ、し、く、ね、はーと♪」
「そうだな。あ、挨拶しないと……」

売多家の親戚が集まっているテーブルに、勝と真子が挨拶に向かう。

「あらあら、勝ちゃんに真子ちゃん、あけましておめでとう」
「今年もよろしくお願いします!」
「ホント2人はいつも一緒だねー。昔っから」
「そうだよねー、勝さん♪」
「それはもういいから、読者さんにご挨拶、だな」
「うん。じゃーせーの……」

「本年もよろしくお願い申し上げます!」

次号に続きます!

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◆今日のまとめ
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●性別・年代だけで切れないことも多い! 「セグメンテーション」
 は「分ける」より「ニーズで括る」方が適切。

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◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●「主流派の消失」により、ニーズが多様化した。その結果、性別・
 年代だけではセグメンテーションできなくなった!

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◆まずは、前号の復習から!
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*本編の日付は、年が明けたばかりの1月1日です。

「新年が明けたねー! 今年もよ、ろ、し、く、はーと♪」
「まあお互いに頑張ろう」
「うん♪」
「まだ眠くないだろ? 午前0時を過ぎたばっかだし」
「もっちろん」
「じゃあ時間もったいないし、続けるか」

勝 :じゃあまずは復習から、な。

真子:うん。現代は、性別・年代だけでセグメンテーションできる時
   代ではなくなってきた!

勝 :例えば?

真子:例えば小学館の「小学3年生」とかは、昔は100万部超だっ
   たのに、もう4~5万部。学年だけじゃ切れない。

勝 :何で?

真子:ニーズが多様化してきたから! 親も子供も。

勝 :そうだな。これ、「小学3年生」全員に売ろうとすると、むし
   ろ売れない、という典型的な事例だな。

真子:あ、なるほど。同じ「小学3年生」でも、色々と違うから、ど
   こかに絞った方がいいんだ!

勝 :そう。

真子:でもそうすると、顧客数が減るよね?

勝 :そんなことないだろ。学年のワクが外れるから、増えることだ
   ってあるぞ。

真子:あ、そうか。小学3年生じゃなくても良くなるワケか。

勝 :そう。それがこれからやる「括って広げる」ってこと。で、復
   習の続きに戻ると?

真子:「ニーズの多様化」っていうと、中流意識がなくなかったか、
   と思ったらそうでもなかった。

勝 :そうだな。みんな「中流」だとは思ってる。ただその中で色々
   変わって来た、ということだろうな。

真子:それで、セグメンテーションは、「分ける」というよりは、
   「ニーズで括る」方が今の時代には合ってる!

勝 :そうそう。例えば?

真子:例えばスーパーマーケットが「シニア対応」で、カートから買
   い物カゴを持ち上げて袋詰め台に移さなくてもいいようにした

勝 :その「ニーズ」は?

真子:「重い買い物カゴを、カートから袋詰め台に移したくない!」

勝 :その「ニーズ」で「括れる」顧客層は?

真子:シニアの方だけじゃなくて、私みたいにか弱い女の子とか、た
   くさん買い物して買い物カゴが重いお客様!

勝 :そうだな。「ニーズを具体化」することで、むしろ「顧客層」
   は広げられる。それが「ニーズで括る」という発想。あとは?

真子:あと、性別・年代でセグメンテーションすると、それでセグメ
   ンテーションを「やった気」になっちゃう。

勝 :そうだよな。思考停止しやすくなる。

真子:じゃあ「ニーズで括る」っていうのはどうすればいいの、って
   いうところで終わりました!

勝 :OK。じゃあ今号の内容だな。

真子:新年最初のレッスンだねー。今年もよ、ろ、し、く、ね♪

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆「主流派」の消失
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

勝 :これから「ニーズで括る」話をしようと思ったんだけどさ……

真子:思ってたんだけど……?

勝 :「ニーズの多様化」っていう前に、「何が変わって、何が変わ
   っていないのか」というのをデータでおさえておこうか。

真子:そんなデータあるの?

勝 :例えばわかりやすいのがこれ。厚労省の「国民生活基礎調査」
   の結果。「世帯構造」の変化。

勝が例によってノートパソコンを操作し、真子に見せる

---------< デ ー タ 要 約 >---------

      単独世帯  夫婦のみ  夫婦と未婚の子  3世代
                 
1970  18.5  10.7  41.2    19.2
1989  20.0  16.0  39.3    14.2
2010  25.5  22.6  30.7     7.9

国民生活基礎調査
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001101476
表番号2

---------< デ ー タ 要 約 >---------

勝 :ホントは1990年のデータがあれば、20年おきに見られた
   んだけど、その年の数字が見つからなかったんだよな。

真子:うん、えっと……あ、単独世帯が増えて、3世代世帯が減って
   る。よく言われるヤツだよね。1人世帯が増えてる、って。

勝 :そうそう。数字自体は見ればわかるから、その意味を考えてい
   こうか。

真子:その「意味」って?

勝 :この数字から何がわかる? 単独世帯が増えてる、とかそうい
   うのは見ればわかるけどさ。

真子:え? うーんっと……ええっと……???

勝 :それぞれの世帯の「差」はどうなってる?

真子:えっと……あ! 「夫婦と未婚の子」世帯が最大だったけど、
   「単独世帯」とか「夫婦のみ」世帯に抜かれそう!

勝 :そうそう。昔は、「夫婦と未婚の子」世帯に、それにその親が
   いる「3世代」世帯を足すと6割超えてた。

真子:なーるほどねー。その人達が主要顧客だったんだねー。

勝 :それがさ、今は単独世帯もあれば、夫婦のみ世帯もあれば、子
   アリ世帯もあれば……って、「分散」したよな。

真子:そっか、「親子がいる世帯」ばかりじゃなくなった!

勝 :そうそう。多数派がなくなったっていうか、「主流派の消失」
   っていう感じか。

真子:色んな世帯が増えた、ってことかー。逆に言えば、それまでは
   「みんな似たような感じ」だったってことかな?

勝 :そうなんだよな。親子で暮らしてて、家庭によっては祖父母が
   いて、夜はみんなで巨人戦を見ながらご飯。

真子:きゃははは、今やそんなの無いよねー。

勝 :巨人戦、TVでやらなくなったからな。オレ等が子供だった頃
   からすると信じがたい。ラジオでさえやらない日がある。

真子:それも時代の変化、ってことかー。

勝 :だから、「親子がいる世帯」を主要顧客層にしていて、そこか
   ら変化が無い業態は、伸びにくい市場だよな。

真子:例えば?

勝 :例えばファミレス。市場はこんな感じ

2004年度 1.25兆円  (市場占有率2006年版)
2011年度 1.17兆円  (日経シェア調査2013年版)

真子:そんな減ってないよね?

勝 :この市場の中でこの数字はある意味大健闘。でもさ、ファミレ
   スの草分けの「すかいらーく」なんかはもう無いからな。

真子:あ、前にニュースで見た。「ガスト」になったんだよね。

勝 :すかいらーくグループでも、ガスト、和食の「夢庵」、中華の
   「バーミヤン」とか、色々できたよな。何でだ?

真子:えっと……あ、なるほど、「ニーズの多様化」に対応してるっ
   てこと?

勝 :そうそう。家族揃って「子供はみんなハンバーグ」っていう時
   代ではなくなったってことだ。

真子:そりゃーそーだよねー。

勝 :さっきの「巨人」の例でも、野球だけじゃなくてサッカーとか
   出てきたんだよな。そういう意味でみんな「多様化」してる。

真子:あ、すかいらーくも巨人も同じなんだ!

勝 :あと、自動車の「クラウン」なんかもそれに入りそうだ。90
   年の販売台数は年間20万台、今は3万台前後*だってさ。

*参考
http://toyokeizai.net/articles/-/12291?page=2

真子:うわー、すごい減ったね!

勝 :真子、「いつかはクラウン」っていうコピーわかる? 昭和の
   名コピー。

真子:え? 何それ?

勝 :そうだよな……働いて偉くなって、「いつかはクラウンに乗ろ
   う」って頑張った時代があったんだよ。

真子:それもこの時代?

勝 :そうだな、まあ90年代まで、って感じか。

真子:勝さんもそうなの?

勝 :昔は車持ってたけど、オレは自動車に酔うからな……教習所で
   自分の運転に酔ってトイレに駆け込んだことあるし。

真子:きゃーははは、おもしろーい。

勝 :クラウン、すかいらーく、巨人ってみんな昔は「主流派」だっ
   たのにそれがいつか「バラけた」んだよな。

真子:「主流派の消失」がこの時代に起きたんだ!

勝 :オレはそう思ってる。さっきのデータで他に気づくことは無い
   か? 「時間」っていう切り口で。

真子:え……「時間」って……あ! 70年→89年より、89年→
   10年の変化の方が大きい!

勝 :そう。これを見てみ。平均世帯人員の推移。

       平均世帯人員  5年前との差(ポイント)
 1960  4.13
 1965  3.75    0.38
 1970  3.45    0.30
 1975  3.35    0.10 ●
 1980  3.28    0.07 ●
 1985  3.22    0.06 ●
 1990  3.05    0.17
 1995  2.91    0.14
 2000  2.76    0.15
 2005  2.68    0.08
 2010  2.59    0.09

http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001101476
表番号7 を著者が加工

真子:あ、ホントだ、70~85年ってほとんど変わってない!

勝 :そうなんだよ。70年代、80年代、って比較的このあたりの
   ことが安定してた時代なんだよな。変化が少なかった。

真子:へー、そうなんだあ……

勝 :で、「画一的な好み」が存在しやすかったんじゃないか、とオ
   レは考えている。

真子:それで、90年以降、一気に「主流派の消失」が進んだって感
   じかな?

勝 :データを見る限り、そう言えそうだよな。

真子:なんかさー、おっきなカタマリが90年代以降、砕けてバラバ
   ラになった、っていうイメージかな?

勝 :あ、そうそう。クラウン、すかいらーく、巨人、みんなそんな
   感じだよな。あとさっき見たばっかりの紅白*もそうだよな

*ここでの時間は、1月1日になったばかりです

真子:あ、昔、紅白の視聴率ってすっごく高かったんでしょ?

勝 :関東で80%超えてたこともあるらしーぜ。

真子:うっわー。でももうありえないよねー。お笑いとか、ボブ・サ
   ップみたいなヤツとか、色々あるもんね。

勝 :ボブ・サップってまた懐かしいな、格闘技、な。

真子:これも「主流派の消失」だね!

勝 :そうそう。あと、スキー場の食堂。昔、カレー、ラーメンくら
   いしかなかった。マジで牛丼があればいい方だったぞ。

真子:えー、今イタリアンとかあるよね?

勝 :そうそう。まさにそういうことなんだよ。カレー、ラーメンだ
   けですむ時代じゃなくなった。

真子:そっかー、そんなところでも同じことが起きてるんだー。

勝 :90年代以降、一気にそうなった感じがするな。

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◆「所得格差拡大」のウソ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

真子:あとさ、「所得格差の拡大」って言われるのもそうだよね?

勝 :何それ?

真子:え? 所得の格差って広がってるんでしょ? やっだあー、勝
   さん、そんなことも知らないのー? 

勝 :そんなこと、誰が言ってるの?

真子:え? そ、それは知らないけど……新聞とかで……

勝 :オマエ、そんなこと信じてるの?

真子:だって……みんな言ってるんだもん……

勝 :みんなが言ってたら本当なのか? 調べたのか?

真子:う、ううん……

勝 :ちゃんと検証しておけよ……厚労省が、「所得再分配調査」っ
   てやってるんだけどさ……

勝が「ふう」とため息をつきながら、真子にノートPCを向ける。

      300万円未満  300-499   500-999 1000万円以上
1985  31.7   28.6   32.6   6.8
1990  24.9   24.2   38.0  13.1
1995  22.4   21.5   38.0  17.9
2000  27.6   22.3   34.2  15.8
2005  30.6   23.4   32.9  12.8
2010  32.9   24.4   30.9  11.7

http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001101550
表番号2 を 著者が加工

*数字の和が100ピッタリにはなりません。

真子:えっと……1985年から、所得が高い人が増えていって、
   2010年には又戻った、って感じ?

勝 :そんな感じだな。1985年と2010年を比べると、ほんの
   少しだけ1000万円以上世帯が増えただけだな。

真子:でも、それって格差が広がってるっていうことでしょ?

勝 :じゃあ、「ジニ係数」を見てみようぜ。

真子:「ジニ係数」って?

勝 :「所得の再分配の不平等」を表す数字。大きいほど不平等。

○ジニ係数
        当初所得    再分配所得   再分配改善度
 1962  0.3904   0.3442  11.8%
 1972  0.3538   0.3136  11.4%
 1981  0.3515   0.3177   9.6%
 1990  0.4334   0.3643  15.9%
 1999  0.4720   0.3814  19.2%
 2002  0.4983   0.3812  26.4%
 2008  0.5318   0.3758  29.3%

○当初所得:雇用者所得、事業所得、農耕・畜産所得、財産所得、家
 内労働所得及び雑収入並びに私的給付(仕送り、企業年金、生命保
 険金等の合計額)の合計額

○再分配所得:当初所得から税金、社会保険料を控除し、社会保障給
 付(現金、現物)を加えたもの
(http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/tyousa/index.html#10)

所得再分配調査
1981年
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001048090

1990年
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001048075

2008年
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001067028

真子:どう見ればいいの?

勝 :「当初所得」っていうのが、言ってみれば「額面の収入」。

真子:だから「当初」にもらえるはずだったお金、ってことか。

勝 :そこから税金、社会保険料を払って、社会保障をもらって、と
   いう「再分配」をした後が「再分配所得」、要は「手取り」。

真子:「再分配改善度」は、その「再分配」の大きさ、かな?

勝 :そう。数字はどうなってる?

真子:えっと……当初所得のジニ係数は増えてる? つまり、額面で
   の格差はやっぱり増えてる!

勝 :そうだな。「再分配所得」の方は?

真子:あ、あれ? 全然増えてない! それどころか、1999年以
   降はむしろ減ってる!

勝 :っていうことは?

真子:1999年以降は、むしろ「再分配所得」については、格差は
   小さくなってる!

勝 :そう。小泉政権は、2001年4月~2006年9月だから、
   「小泉政権は格差を広げた」なんてこの調査からは言えない。

真子:えー、そうなんだー。でもみんなそう言ってるじゃん。選挙の
   ときの決まり文句になってるよね?

勝 :それ、多分「当初所得」の話だろ。自分に都合のいい数字だけ
   を取り上げてるわけだな。簡単に信じるなよ。

真子:じゃあ、格差拡大なんてウソなんだあ!

勝 :この調査によれば、「再分配所得」の格差は縮小してるな。少
   なくとも「拡大」はしていない。

真子:何でみんな「格差拡大だ!」なんてウソつくのよー?

勝 :そういうことにしといた方が、都合がいい人がいるんだろ。そ
   れどころか、1999年以降の「再分配改善度」は急上昇。

真子:これって、お金持ちから取る分を増やしてるってこと?

勝 :そういうこと。良いか悪いかはともかく「金持ち優遇」なんて
   全然ウソ。高所得層に厳しく、低所得層にやさしくなってる。

真子:どのくらいが分岐点なの?

勝 :例外はあるけど、ざっくり年収550万円以上だと、もらう分
   より、払う方が多い。つまり「損」してる。

真子:逆に550万円未満は、もらう方が多いんだ?

勝 :ざっくり、そうなる*。コトの良し悪しは別にして。

真子:それって平等なのかな?

勝 :「低所得者にやさしい」とも言えるし「頑張った人が報われな
   い」とも言えるな。同じことをどっちから見るか、だ。

真子:えー、そーなんだー! じゃあ頑張る分だけ損ってこと?

勝 :カネ、という意味ではそうなるな。「格差拡大」には「頑張っ
   た人が報われる」っていう一面もあるからな。

真子:えー、じゃー頑張らない方がトクな社会なんだあ……ショック

勝 :その取り方は人それぞれだけど、ヘタすると税金の担い手であ
   る高所得層が日本から逃げ出す。それは本当にまずい。

真子:そっかあ……勝さんは?

勝 :オレは税金には関係なく頑張るよ。税金はきちんと使ってくれ
   とはすごく思うけどさ。

真子:何かさー、自分で税金の使い道決められたらいーのにねー。

勝 :それはすごくそう思う。子供を産んで育てる世代への再分配が
   最優先だと思うけどな。

真子:うん、少子化だしね。

勝 :実体はその真逆だけどな。

真子:え?

勝 :子育て層の負担が一番大きく、70代が一番給付受けてる。

真子:え、ええ?

勝 :もちろん、70代は自分で払った年金をもらってる、っていう
   のもあるけど、数字はこうなってる*。

世帯主の年齢  当初所得  再分配所得  再分配計数

29歳以下   306万  262万   - 8.8
30~35歳  471万  429万   - 8.9
35~40歳  545万  475万   -12.8
40~44歳  667万  579万   -13.3
45~49歳  715万  634万   -11.4

70~74歳  204万  439万  +114.9
75歳以上   147万  472万  +221.4

再分配係数(%)=(再分配所得-当初所得)÷当初所得×100

*参考資料:
所得再分配調査 2008 「報告書」
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001067028

勝 :「再分配計数」が、プラスならもらう方が多いし、マイナスな
   ら払う方が多い。

真子:40代の人の負担が大きいね。

勝 :所得が高いからしょうがない部分はあるけどな。

真子:うわあ……20代の人の「手取り」より、70代の人の手取り
   の方が大きいんだ……

勝 :そうだな。オレらが70代になったときにもそうなっていれば
   その意味では「公平」だけどな。

真子:20代の人の方がお金使ってくれそうなのに……うーーん、考
   えさせられるね……

勝 :こんな数字もある。世帯平均所得の推移のデータ。

       全世帯   高齢者世帯  児童のいる世帯

1990  596.6  263.9  670.4
2000  616.9  319.5  725.8
2010  538.0  307.2  658.1

国民生活基礎調査2011
www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa11/xls/08.xls

真子:え? この20年間で、「全世帯」でも「児童のいる世帯」で
   も減ってるのに、「高齢者世帯」だけすっごい増えてる!

勝 :さっきの数字と整合性があるよな。それで、高齢者が増えてる
   わけだから、まあ「高齢者市場」はチャンスありだよな。

真子:まあそうだけど……

勝 :納得いかない面は色々あるだろうが、事実はこうなってる。
   「ニーズの多様化」は、必ずしも所得格差を原因としてない。

真子:うーーん……色々考えないといけないね……

勝 :まずは、周りが言ってることを鵜呑みにするなってことだな。

真子:うん……ハンセー。でも、所得格差が広がらなくても、ニーズ
   は多様化するんだね。

勝 :そりゃ、選択肢が増えたりするからな。同じ所得でも、カレー
   とラーメンだけじゃなくて……

真子:あ、パスタもピザもあれば、そっちを食べるかもしれないって
   ことだ。

勝 :そういうこと。ニーズの多様化は、情報量の増加、選択肢の増
   加と手を携えながら進行したんだと思ってる。

真子:あと、ネットとかの情報源も増えたしね。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆「十把一絡げ」では対応できない!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

勝 :で、ようやくセグメンテーションの話に戻ろう。

真子:あ、そっか、その話だった、忘れてた、きゃははは!

勝 :最初の「世帯構造の変化」については、これは数字ではっきり
   出てたよな。

真子:うん、「主流派が消失」したんだよね?

勝 :それはオレの仮説だけど、多分合ってると思う。昔は、年齢が
   同じなら、同じような生活をしていたんだろうな。

真子:うん。夕食はみんな一緒で、お父さんはビールに枝豆……

勝 :それが、さっきの「世帯構造の変化」で相当変わる。例えば、
   子供の有無で全然違う。

真子:あと、共働きかどうか、でも違うよね。

勝 :お、鋭いじゃん。共働き世帯は相当増えてるはずだけど、ちょ
   っと調べてみるか……

勝がネットを調べてみると、簡単に見つかる。

      男性雇用者+無業の妻   雇用者の共働き世帯

1980  1114万世帯     614万世帯
1990   897万世帯     897万世帯
2006   854万世帯     977万世帯

http://wwwhakusyo.mhlw.go.jp/wpdocs/hpax200801/b0055.html

真子:わー、やっぱり共働き世帯が増えてるね。

勝 :そうそう、で、世帯構造の「組み合わせ」が増えた。

・結婚しているか
・共働きか
・子供が居るか

真子:なるほど、昔は、「主流派」は結婚して、奥さんは専業主婦で
   子供がいる世帯だったけど……

勝 :そういう世帯ばかりではなくなった、っていうこと。

真子:それに、情報が増えたり、趣味が増えたり、みたいのもあるん
   だよね、きっと。

勝 :そうだな。さっきの「TVは巨人戦」だけじゃなくて、ケーブ
   ルTVとかでチャンネルも増えたりした。

真子:あ、なるほどね。インターネットもできたし。

勝 :このあたりの「世帯の多様化」と「選択肢の増加」が相互作用
   しつつ「ニーズがバラけた」、つまり「多様化」したんだろう

真子:だから、性別・年代だけでは切れなくなった!

勝 :そういうこと。だから「ニーズで括る」のが今の時代には合っ
   てる、っていうこと。

真子:なるほどねー。

勝 :逆に言えば、「性別・年代で切れた」のは、「主流派」がいて
   かつ世帯構造が安定していた1970~80年代の特殊事情。

真子:あ! むしろ「性別・年代」で切れた時代が特殊だった!

勝 :オレはそう思う。真子、セグメンテーションって何だっけ?

真子:「人によってニーズが違うから、ニーズで分ける」こと!

勝 :で、その時代は、「たまたま、ニーズと性別・年代が一致して
   いた」時代だった、ってこと。「たまたま」な。

真子:だから、その時代は「性別・年代」でも良かったんだ。それが
   多様化した今では切れなくなったんだね。

勝 :その頃に若手だった人が今会社のリーダーだとすると、その成
   功体験に引っ張られてる可能性はあるな。

真子:でもさ、「ニーズで分ける」限り大丈夫なんでしょ?

勝 :「分ける」じゃなくてニーズで「括る」な。じゃあそれを……

「勝ちゃん、真子ちゃん、2人とももう休んだら? もう遅いよ」
「え?」

親戚に声をかけられて回りを見ると、もう誰もいない。テーブルの上
には空いた食器、誰も座っていない座布団がその回りに散っている。

「うわ、こんな時間か!」
「真子としゃべってると時間がたつのが早いでしょ、はーと♪」
「そうだな、さすがに寝るとするか……」
「ね、ね、今日見る夢が初夢だよね? きっと真子の夢を見るよ!」
「正月からそんな悪夢見たくはないな」
「またまた~真子は勝さんの夢を見ようっと」
「や、め、ろ。肖像権侵害だ」
「そんなの真子の自由ですよ~だ」
「どーせオマエが見る夢なんて食い物の夢だろ」
「きゃははは、ナスと挽肉のパスタだと縁起良さそうだね」
「タカの爪のペペロンチーノとかな」
「あ、それでもいいや。そうしようっと。じゃあまた明日ね~」
「ああ、お休み」

次号に続きます!

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◆今日のまとめ
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●世の中の「主流派が消失」したことで、ニーズがバラけた! だか
 ら性別・年代では括れない時代になった!

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━特別編Vol.204(累計0980) 2013/01/10

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●顧客のニーズがわからない理由は、顧客像が具体化されていないか
 ら。まずは顧客像を具体化しよう!

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◆まずは、前号の復習から!
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*本編の日付は、年が明けたばかりの1月1日の朝です。

「あ、叔母さん、おはよーございます! 本年もよろしくお願い申し
 上げます!」

1月1日の朝、宿の座敷に真子の明るい声が響き渡る。

「あらあら真子ちゃん、本年もよろしくお願いします。真子ちゃんは
 いつも元気だねぇ」
「それしか取り柄がありませんから!」
「うんうん、そうだねぇ」
「やーだ、謙遜ですってばぁ、きゃははは」
「勝ちゃんはどーしたんだい? 昨日も随分遅くまで仲良くしてたみ
 たいだけど?」
「そーそー、そうなんですよー。私、起こしてきます」

「誰もコイツと仲良くなんてしてませんよ」

いつの間にか現れていた勝が、真子の肩越しに声をかける。

「わあぁ! あ、勝さん、びっくりしたあ」
「叔母さん、あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願
 い申し上げます」
「あらあら勝ちゃん、こちらこそよろしくね」

「勝さん、髪の毛くらいとかしてきなよー。お正月くらいさー」
「いーよ別に、何を今さらだ」
「じゃあ、私がやってあげる。じっとしててね」
「あ、やめろ、触るな、大きなお世話……やめろってば」
「もー、何恥ずかしがってるのよー。それこそ何を今さらだよ」

「2人とも、お雑煮ができてるよ。お屠蘇と」
「わあ、お腹減った! ほら、勝さんも!」
「オレはいい。朝食は食べない。それよりカプチーノ作るわ」
「あ、いつもの携帯用エスプレッソマシンか……ねー、縁起物なんだ
 からお屠蘇いただこーよー」
「そーよ、勝ちゃん、お屠蘇くらいしなさいよ」
「じゃあ、エスプレッソでやります」
「もー、じゃー私、お雑煮食べるね!」

「ふう……一息ついたねー」
「元旦から落ち着かないヤツだな」
「何よー、勝さんだってそーじゃん。ね、続き始めるんでしょ?」
「今年は初詣行かなくていいーのか?」
「やっだー、勝さん、やっぱり真子と行きたいんだぁ」
「何言ってんだ、行くなら1人で行け」
「ダーメ、後で行こうね」
「とりあえず始めようぜ。そんなにゆっくりもしてられないし」

真子:前号の復習からだよね。前号は「主流派の消失」について、世
   帯構造の変化を中心に分析しました!

勝 :それはどういうことだ?

真子:昔は、みんな結婚して、子供がいて、おじいちゃんおばあちゃ
   んが同居してたけど、みんながそうじゃなくなった。

勝 :そうだな。データは?

真子がノートを広げ、「はい!」と言いながら勝に見せる。

---------< デ ー タ 要 約 >---------

      単独世帯  夫婦のみ  夫婦と未婚の子  3世代
                 
1970  18.5  10.7  41.2    19.2
1989  20.0  16.0  39.3    14.2
2010  25.5  22.6  30.7     7.9

国民生活基礎調査
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001101476
表番号2

---------< デ ー タ 要 約 >---------

真子:んーとね、この「夫婦と未婚の子」とか「3世代」がどんどん
   減って、「単独世帯」「夫婦のみ」が拮抗してきてる。

勝 :そうだな。それはどういうことだ?

真子:社会の多数派が、減っていった、つまり「主流派の消失」!

勝 :世帯構造の変化としては、具体的に何が起きてる?

真子:結婚してるか、子供がいるか、共働きか、みたいな「組み合わ
   せ」が増えて、バラけた感じ。

勝 :そうだな。「バラけた」から、「分ける」「切る」みたいな発
   想だと、セグメンテーションしにくくなってる。

真子:だから「分ける」よりは「括る」んだよね! それでじゃあど
   うやればいいの、っていうところまで来ました!

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆「括って広げる3ステップ」
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勝 :「括って広げる」基本的な考え方は、実は前々号でやってる。
   スーパーマーケットの「シニア対応」ってところで。

真子:えっと、シニアの方向けに「買い物カゴをカートから袋詰め台
   に移す」手間を省いたカートを作った、っていうのだよね?

勝 :それそれ。で、この便利なカートは、元々シニアの方向けに作
   ったわけだけど……

真子:私みたいな「か弱い女の子」にとっても、嬉しい!

勝 :真子がか弱いかどうかはともかく、シニアの方向けのカートが
   「か弱い女性」にも嬉しいのはどうしてだ?

真子:「ニーズ」が同じだから! 重い買い物カゴをカートから袋詰
   め台に移すのは大変、っていうニーズ!

勝 :それがまさに「ニーズで括る」っていう発想。共通したニーズ
   で括っている。すると、性別・年代を超えて顧客が広がる。

真子:共通点は「重いモノを持ち上げる力がない」ってことだよね。

勝 :そうすると「入り口」では「シニア向け」って絞っているけど
   「出口」としては、広がってるだろ?

真子:うん! ターゲットが増えてる!

勝 :これが、「括って広げる」ってこと。

真子:面白いよね。元々はシニアの方のために、って考えたのに、タ
   ーゲットが広がってるんだもんね。

勝 :顧客像を具体化することで、むしろターゲットは広がる。それ
   が「括って広げる」発想、だな。

真子:それでそれで、どうすればいーの?

勝 :「括って広げる」のは、3つのステップで考えればいい。「括
   って広げる3ステップ」だな。

勝が真子のノートに、サラサラと書き始める。

○括って広げる3ステップ

1)顧客像の具体化
2)ニーズの普遍化
3)ニーズで人を括る

真子:きったない字だなあ、もー……

勝 :うるせーな、有り難く思え。

真子:へいへい、っと。

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◆ステップ1:顧客像の具体化
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勝 :まずは、「ステップ1:顧客像の具体化」から考えていこう。

勝がちゃぶ台の上に置かれたノートPCを操作し、真子に向けた。

-----------< 記事要約 >------------

○西川産業が百貨店やショッピングセンター(SC)に展開する女性
 用オーダー枕専門店が快走。ターゲットを絞り、快適な眠りの価値
 が一目でわかるように訴求、新たな顧客を取り込みつつある。

○東武百貨店池袋本店の婦人服フロアの雑貨売り場のようなコーナー
 が西川産業のオーダー枕専門店「ピローウィーカフェ」。首都圏と
 大阪市の常設5店と、SCなどに期間限定の移動店舗を常時2~3
 カ所展開。顧客の7割は20~30代女性が占める。

○テーマは「スイーツを選ぶように枕をつくる」。東武百貨店の店で
 はオーダー枕だけで週末に40~60個売れる。常設店の売上高は
 月500万~600万円。移動店舗には同900万円売る店も。

○展開を始めたのは2010年。27~28歳の女性社員3人を指名
 し、顧客像を同世代の「28歳の女性」に設定。外から見えない内
 袋にも5種類のデザインを用意。「私たちは下着も裏地がかわいい
 ものを選ぶ」という意見を反映。顧客像が33歳の「お姉さん版」
 店舗の出店準備も進めており、13年秋にも出店を始める計画だ。

2012/12/28 日経MJ P.16

-----------< 記事要約 >------------

真子:あれ、私この事例知ってる。何でだろう……

勝 :何でだろうって、夏休み特別号↓でやっただろうが……「密着
   軸の経営戦略」な。あの長かったヤツ。

http://archive.mag2.com/0000111700/20120821003000000.html

真子:あ、「オーダーメイド」の例だ! コレ何でカフェっぽくした
   んだろうと思ってたら、ターゲットが28歳女性なんだ!

勝 :そうそう。だから27~28歳の女性社員を起用したわけだ。

真子:すごいねー。そこまで完全に一致させてるんだ!

勝 :そりゃそうだろ。一番ニーズがわかるわけだからな。

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◆「20代女性のニーズ」などは存在しない!
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真子:ねー、「28歳」まで具体化しないとダメなの?

勝 :ダメ。っていうかBtoCの場合、年齢の特定は、最低限。
   「28歳女性」でさえ、まだ広い。

真子:えー、でもさー、「ウチの顧客ターゲットは20代女性」とか
   って、よく言うじゃん。

勝 :言うかどうかはともかく、「20代女性のニーズ」なんてもの
   は存在しない。

真子:え? ないの? 20代女性なんていっぱいいるよ?

勝 :いや、「20代の人」なんて存在しない。

真子:え? え? いるよ? 私も20代女性だよ?

勝 :それに答える前に、真子、セグメンテーションって何だっけ?

真子:人によってニーズが違うから分けて対応すること!

勝 :そうだよな。例えば20歳の女性には、どんなニーズがある?
   都会暮らしだとして。真子は20歳のときどうだった?

真子:やっだー、知ってるく、せ、にー。一杯一緒に遊んだじゃん。

勝 :オマエが勝手に来てただけだろ。いーから答えろ。

真子:20歳だと女子大生! 私はいっぱい遊んでた。でもお金は全
   然なかったなー。

勝 :オマエ、ホントよくオレのところに飯タカリに来てたよな。

真子:タカリじゃないもん。勝さんと一緒にご飯食べたかったんだも
   ん。まー実際お金もなかったけど。

勝 :コスメは? どんなメークしてた?

真子:あんましなかった。勝さん、素顔の真子が好きだよ、って言っ
   てくれてたじゃん。

勝 :そんなこと、ひっとことも言ってねーだろ。

真子:だってめんどくさかったんだもん。それに私、お化粧なんかし
   なくても、こ、の、び、ぼ、う、はーと♪

勝 :はいはい。で、服は?

真子:勝さん、服なんか買ってくれなかったじゃん。

勝 :当たり前だ、オレはオマエの財布じゃねー。

真子:勝さんが買ってくれなかったから、安いのを時間かけて選んで
   何とかオシャレに見せようとしてた。

勝 :そうだよな。それで21歳になると変わるよな? 特に3年生
   後半になるとさ。何が始まる?

真子:え? あ、そうか、就活が始まるね。そうそう、遊び回る余裕
   がなくなった。大変だったなあ……

勝 :コスメは?

真子:さすがに一応メークしたよ。無難で受けがよさそうなの。

勝 :服はどうした?

真子:就活用のスーツを買った! 紺色の無難なヤツ。

勝 :それ、今でも着られるか?

真子:やっだー、勝さん、見たいの?

勝 :いーから。

真子:私、体型変わってないもん。着られますよーだ。

勝 :っていうか、とってあるのか? まだ着るのか?

真子:あ、そっか。捨てちゃったかも。

勝 :何で?

真子:だって……一応私、社長だし……さすがに、それなりの服を着
   てないと……。

勝 :だろ? 着てるスーツは全然違うよな? 同じ20代女性、し
   かも同じ真子、という人間でも、だぞ。

真子:そりゃそーだよ。当たり前じゃん。

勝 :あのなあ……もう1回言うぞ? 21歳の真子と、今の真子は
   同じ20代女性でもニーズが全然違うよな?

真子:うん! あ……そうか、だから「28歳」まで具体化しないと
   ダメなんだ!

勝 :そうそう。28歳だと、どうなる?

真子:んーとね、働いていれば、もう1人前。お給料もちょっと増え
   てくる。

勝 :そうだよな。お金にちょっとだけ余裕が出てくるよな。コーチ
   のバッグくらいなら買える。

真子:あ、ボーナス貯めればヴィトンも買えるねー。新入社員だとち
   ょっと厳しいけど。

勝 :あとさ、仕事の責任も増えるよな?

真子:あ、うん。忙しくなる! 帰りも遅くなってくる。

勝 :仕事してればそうだよな。あとさ、真子は結婚して子供がいる
   友だちとかいないのか?

真子:あ、そうか。そういう子もいるね。そうなると全然ニーズが違
   う! 仕事してなければ、スーツもいらないしね。

勝 :だからそういうこと。さて、もう一度聞く。「20代女性のニ
   ーズ」って何だ?

真子:た、確かに……人によって全然違う……

勝 :だから、「20代女性のニーズ」なんてものは存在しない。
   20歳女子大生のニーズ、28歳専業主婦ならまだわかるけど

真子:あ、そうか! 「20代女性」っていうと一番ニーズが変わる
   ときだ! 就職、結婚、出産……色んなことが起きる!

勝 :だろ? 「20代女性」には、女子大生、新入社員、専業主婦
   に独身有職、共働き、全部入る。ニーズバラバラ。

真子:そうだねぇ……コスメも、着るモノも、遊ぶところも全然違う
   よねえ……子供の有無でも全然違うしね……。

勝 :真子さ、20歳の真子と、今の真子と、「同じ人」か? マー
   ケティング的に見て、だぞ。

真子:ううん、全然違う! 共通点があるとすれば……20歳のとき
   も今も、すっごく魅力的なお、ん、な、の、こ、はーと♪

勝 :マーケティング的に見てだ、っつってるだろ。

真子:やだあー、「すっごく魅力的」っていうのは認めるんだー。

勝 :無視。だから、20歳の女子大生、28歳の専業主婦はいても
   「20代の女性は存在しない」っていう意味がわかるな?

真子:うん! 20歳と21歳でもニーズが変わる!

勝 :物理的にも「同時に20歳と21歳である人」はいないだろ。

真子:やーだー、あったりまえじゃーん。

勝 :だから、「20代の女性は存在しない」んだっつーの!

真子:あー、そういうことかあ……

勝 :っていうかさあ……この話「新人OL、つぶれかけの会社をま
   かされる」でやっただろ?

真子:え、そ、そうだっけ?

勝 :やった。

「化粧品も食事をする場所も時間も、20歳と29歳では全く違うで
しょう。つまり、「20代女性のニーズ」などというものは、そもそ
も存在しないのです。」 P.86

真子:あ、ホントだー。この本、結構ムズカシイ話してるねー。

勝 :そう。入門書と言いつつ、レベル高い。表現の難易度を下げて
   るけど、内容の難易度は結構高い。

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◆顧客像を具体化すれば、ニーズが具体化される!
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勝 :結局、「ニーズがわからない」という場合、顧客を具体化して
   いないことが理由、ということが結構多い感じがする。

真子:そっか、「20代女性」っていっても色々いるから……人によ
   って全然言うことが違ってくるんだろうね。

勝 :だから、顧客像を「具体化」すれば、ニーズも具体化される。
   逆に「20代女性のニーズ」なんて広すぎて誰にもわからない。

真子:でもそれって、「28歳女性」でもそうなんじゃないの? 同
   じ28歳でも、独身もいれば、専業主婦もいれば……

勝 :そう! だから、記事のピローウィーカフェも、多分「28歳
   女性」以上に具体化しているんだろうな。

真子:そっか、記事に出てきた以上の具体的な設定があるかもしれな
   いってことだ。

勝 :そうだな。まず、ピローウィーカフェは池袋、新宿、横浜、福
   岡みたいな大都市に出店してるから……

真子:あ、「都市部」に住んでる人だね。

勝 :で、池袋とか新宿に出てこられる人、という意味では?

真子:あ、働いている人!

勝 :あとは?

真子:28歳だと……結婚してるのかなー。気になるなー……

勝 :なんで気になるんだ?

真子:だってー……色々とさぁ……ねえ……

勝 :真子はどう思うんだ?

真子:え? ま、勝さん? そ、そんな……そんな突然言われても…
   ココロの準備が……

勝 :はあ? 28歳だと未婚者と既婚者、どっちが多い、って質問
   に心の準備がいるのか?

真子:えー、なんだー、もう……。都市部だと、未婚者が多そう!

勝 :正解。東京都で見ると28歳女性は58%が未婚。2010年
   の国勢調査で*。全国平均では未婚者は52%。

*国勢調査2010 表番号5-1
www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001034991&cycode=0

真子:そうなんだ! 6割近くが未婚なんだぁ! 心強いな。

勝 :となると、ピローウィーカフェの顧客像は「都市部の28歳独
   身有職女性」ということだろうな。

真子:それならニーズは大分具体化できるね。ね、話は変わるけど、
   昔は結婚するのはもっと早かったんだよね、きっと?

勝 :えっと……1970年だと、25~29歳の80%が「有配偶
   者」つまり既婚*だな。

*国勢調査 表番号4
www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001007702&cycode=0

真子:ひょえー。今と全然違うんだ! ね、これ前号の内容と一致す
   るよね? 「昔はみんな同じだった」っていうのと。

勝 :鋭いな。1970年なら「20代後半~30代女性」という粗
   っぽい括りで良かった。30代だと既婚者が90%超えるぞ。

真子:わ! みんな結婚して、子供産んでたんだねー。

勝 :昔は「20代女性」でも、まだ何とかなったかもしれないな。
   今は「都市部の28歳独身有職女性」でもまだ最低限。

真子:あとは何を具体化するの?

勝 :デザインの好みとか。「スイーツを選ぶように枕をつくる」っ
   ていうコンセプトだから、カフェによく行く人、とかな。

真子:あ、ライフスタイルみたいな感じ? 買い物する場所とか、よ
   く行くお店、とか……

勝 :それも含めて。雑貨店風の店にしてる、というのも、多分雑貨
   店によく行く人、ということにしてるんだろうな。

真子:あ、なるほど。そう言われてみれば、そこまで考えないと店作
   りができないよね。

勝 :そうなんだよ! 「20代向けの店を作れ」って言われても、
   「え? 20代って誰ですか?」ってなるよな。

真子:うん! 女子大生向けの店と、29歳キャリアウーマン向けの
   店じゃ、全然違う!

勝 :そうなるよな。

真子:でも、「都市部の28歳独身有職女性」って言っても、その問
   題は起きるよね? 同じ28歳でも、いろんな人がいるし……

勝 :だから、最終的に「1人」になるまで具体化する。例えば「売
   多真子、ウン歳」まで具体化すれば1通りに決まる。

真子:まあそうだけど……どうやって?

勝 :真子の会社がやってるレストラン、そーれ・しちりあーののコ
   ンセプト考えたとき、ターゲットに誰を想定した?

真子:私! カワイイカワイイ真子ちゃん!

勝 :ほら、「1人」をターゲットにしただろ。そこまでやれば、絶
   対に一貫性が取れる。店作り、HPのデザイン、メニュー……

真子:そりゃそうだよね。でもそーすると、顧客が狭すぎないの?

勝 :だから、後で「括って広げる」んだろうが。この段階では、ひ
   たすら「具体化」していく。「1人」になるまで。

真子:なんで?

勝 :だから「具体的なニーズを知る」ためだってば。「1人」の人
   なら、個別具体的なニーズがわかるだろうが。

真子:そっか。あ! だから、西川は同じ「顧客像」の社員を、ピロ
   ーウィーカフェの担当に器用したんだ! 28歳の!

勝 :そうだろうな。ここまで考えると、年齢までを合わせる必要が
   あることがわかるよな。

真子:うん!

勝 :それに、28歳を想定顧客だとしても、別に30歳の人が買わ
   ないわけじゃない。同じニーズなら買ってくれる。

真子:じゃあ「28歳」なんて具体化する必要ないじゃん。ニーズが
   同じならいいんでしょ?

勝 :だから、顧客像を具体化しなきゃ、どんな「ニーズ」があるの
   かがわからないだろうが。

真子:あ、そうか。まずはニーズを具体化しないといけないからだ。

勝 :そうそう。それで、その「具体化された顧客像」に向けての打
   ち手が効く人は、同じニーズを持っている、ということになる

真子:そうか……ある1人の人に効く打ち手が、他の人に効くんであ
   れば、その人たちを「括って」しまえばいいんだ!

勝 :だからさっきからそう言ってるだろうが。

真子:なーるほどねー。まずはお客様を具体化しようってことだ。で
   その人のニーズに応えていくんだ。

勝 :それが、「括って広げる3ステップ」の、「ステップ1:顧客
   像の具体化」だな。

真子:うん!

「ね……勝さん、お腹減らない?」
「さっきお雑煮食ってただろうが……ってそう言えば減って来たな」
「あれ? みんないなくなっちゃった……わ、もうお昼だ!* 」

(ここでの時間は、1月1日の昼過ぎくらい、です)

「そうか、朝起きるのがちょっと遅かったからな……」
「そういえば、叔母さんが昼ご飯はついてない、って言ってたよ」
「オレは別に食わなくてもいいけどな。めんどくさいし」
「やっだー、真子と話してる方が楽しーんだね」
「いや、それなら寝る」
「ダメだよー、宿の食堂に食べに行こうよー」
「カロリーより、カフェイン補給したいんだけどな……」
「きっとコーヒーくらいあるよー、行こうよー、ねー、ねー」
「わかったよ……じゃあさっさと片付けて、昼飯食いにいくか」
「うん!」

バサバサとノートや筆記用具をバッグに手荒くしまっていく真子。勝
は腕時計をもう一度チラ、と見て、ノートパソコンのモニタをぱたり
と閉じた。

次号に続きます!

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◆今日のまとめ
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●顧客を具体化すれば、ニーズも具体化される。まずは「1人」の顧
 客像を具体的に考えよう!

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━特別編Vol.205(累計0981) 2013/01/14

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●顧客像を具体化すればニーズが具体化され、利用場面も具体化され
 る! すると4Pも決まる!

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◆まずは、前号の復習から!
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*本編の「今の時間」は、1月1日の昼過ぎです。

売多家一同が温泉地の老舗旅館に集まって新年を迎えた元旦。勝と真
子は、朝食の会場でマーケティングレッスンを行っていたが、昼食の
ために館内の食堂へと出かけ、隅の席に陣取った。

「こういう、昔ながらの食堂もいいよねー。東京だと、やれイタリア
 ンだ、フレンチだって、そんなのばっかりだもんねー」
「イタリアンレストランの社長がそんなこと言ってんじゃねーよ」
「うちは、元気提供屋さんだもん。レストランじゃないもん」
「お、よく言った。じゃあオレ、トンカツ定食」
「えーまたー!? 昨日の夜、トンカツ年越そば食べてたのに……」
「そんなの去年の話だろ。年が変わったんだよ。真子は?」
「まーたそんな屁理屈を……私は中華丼! ダイエット中だし」
「何がどうダイエットなんだよ……大体朝から、雑煮あれだけ食って
 ただろうが」」
「いーの。あ、おねーさあん、注文お願いしまーす!」

勝 :飯が来るのを待ってる時間ももったいないから、再開するぞ。

真子:うん! 前号の復習からだよね。セグメンテーションのポイン
   トは「括って広げる3ステップ」!

真子が、食堂のテーブルの上にノートを広げる

○括って広げる3ステップ

ステップ1:顧客像の具体化
ステップ2:ニーズの普遍化
ステップ3:ニーズで人を括る

勝 :あ、オレが書いたのがちゃんと書き直されてるじゃん。

真子:だって勝さんの字、きったなくて人に見せられないんだもん。

勝 :うるせーよ。それで、前号は「ステップ1:顧客像の具体化」
   をやったんだよな。

真子:うん! 西川寝具のピローウィーカフェの顧客像は、28歳の
   女性! もっと言えば「都市部の28歳独身有職女性」!

勝 :その人達を顧客とするために、西川はどうしたんだっけ?

真子:同じ年齢の、「27~28歳の女性社員」を社内から起用しま
   した! それならニーズがわかるから!

勝 :そうだな。「20代女性」というような定義だとダメ、という
   理由は?

真子:うん、「20代女性」だと定義が広すぎる。女子大生、新人ビ
   ジネスウーマン、共働き夫婦、専業主婦、全部入っちゃう。

勝 :つまり?

真子:セグメンテーションは、「ニーズが違うから分ける」ことなの
   に、ニーズが違う人達を十把一絡げにしちゃってる!

勝 :そうだな。広告業界では未だに20~34歳女性をF1(えふ
   わん)って呼ぶけど、ホント十把一絡げだ。

真子:だから「20代女性のニーズ」なんてものはそもそも存在しな
   い! 一番ニーズが変わるときなのに。

勝 :10代もそうだよな。10歳の小学生と、19歳の大学生とか
   ビジネスパーソンが同じはずない。

真子:そりゃそーだけど、でもみんな「20代女性」とかって言っち
   ゃうのは何で?

勝 :一つは、性別・年代で切れるという昔の考えを引きずっちゃっ
   てるからだろうな。あと、広告媒体の問題もある。

真子:広告媒体って?

勝 :例えばTVにCM出すとき、結局細かいターゲティングができ
   なくて、「F1層」ってなっちゃうから。

真子:あ、そっか、行動に落ちてくるときに粗っぽいカタマリになっ
   ちゃうから、やっても意味がないってことか……

勝 :ネットとかDMなら、それこそ「1人」に対しての打ち手が打
   てるけど、TVとかだとムリだからな。

真子:じゃあ、その「1人」に対しての打ち手が打てる媒体を使えば
   いいってことだよね?

勝 :テレビとか新聞広告が減ってる理由として、それもあるだろう
   な。細かいターゲティングがやりづらい。

真子:ネット広告の方が、ターゲティングとか効果測定とかやりやす
   そうだよね。

勝 :ネット広告が増えてる理由の1つがそれだろうな。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆ニーズは使い方に現れる:顧客像を具体化すると使い方が決まる!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

勝 :「括って広げる3ステップ」での「ステップ1:顧客像の具体
   化」は、「顧客像を描く」イメージだな。絵を描くイメージ。

真子:あ、お客様の絵が描ける、ってことは「具体化」できてる!

勝 :そうそう。髪型、洋服、アクセサリー含めて、な。

真子:そ、そこまで?

勝 :髪型とか洋服にその人の「人となり」が出るだろ。時計1つと
   っても、電波時計とカルティエの時計は違うだろ?

真子:あーなるほどぉ……電波時計だと、きちっとしてる感じの人だ
   し、カルティエだとオシャレなイメージだねぇ……

勝 :例えば、だけどな。洋服、カバン、靴、みんなそう。

真子:あとは?

勝 :セグメンテーションって何だっけ?

真子:「人によってニーズが違うから、分けて対応する」こと!

勝 :で、その「ニーズ」はどのような形をとって現れる?

真子:利用場面!

勝 :お、すげーじゃねーか。そう、「ニーズは使い方に現れる」。
   「売多勝名言集」の1つ。

真子:きゃははは、名言集なんてまた自分で言ってるー。そんなこと
   誰も言ってくれないから自分で言うしかないもんねー。

勝 :うるせーよ、その通りだよ。で、だったらどうすればいい?
   顧客像を具体化するためには?

真子:利用場面を具体化する!

勝 :そうそう。こんな例もあってだな……

勝が再びノートパソコンを真子に見せる。

-----------< 記事要約 >------------

○カルピスが2012年10月にリニューアル発売した「ザ・プレミ
 アムカルピス」が好調。発売直後1週間の売れ行きは、前回のリニ
 ューアル時より出荷ベースで26%増。

○リニューアルでは過去の売れ筋を分析してターゲットや飲用シーン
 を細かく絞り込んだ。暑い時にゴクゴク飲むのが「カルピスウォー
  ター」なら「プレミアム」は「働き盛りの30代前半独り暮らし
  男性」が「ちょっと疲れた時に味わって飲む」というコンセプト

○大人の男性が手に持ち、夜飲むのにふさわしい中身とパッケージを
 めざし、中身はカルピス菌だけの発酵・熟成方式に変更。カルピス
 らしい香りと共に甘みと酸味のバランスにこだわり「濃厚でありな
 がらさわやかな後味を実現」(同社)。カルピスブランドとして初
 めて「紅色のキャップ」を使い高級感を演出、容量は350ml。

○日経CVSレシートデータでは、ペットボトル無果汁清涼飲料の平
 均と比べ、カルピスウォーターは30歳未満の女性の購入比率が5
 ポイント高い。プレミアムは30歳以上の男性の購買比率が4ポイ
 ント高い。狙い通り働き盛りの男性が支持している。

○曜日別では、ウォーターが土日の週末に売れるのに対し、プレミア
 ムは木曜と金曜が目立つ。時間帯別では昼間から夕方が中心のウォ
 ーターに対して、プレミアムは夕方から夜にかけて伸びる。ウォー
 ターは「余暇の明るい時間に」、プレミアムは「疲れがたまる週後
 半の仕事の後で」という使い方が浮かび上がる。

2012/11/05 日経MJ P.2

-----------< 記事要約 >------------

真子:おおお……「働き盛りの30代前半独り暮らし男性」とは、か
   なり具体化してるねー。

勝 :だよな。顧客を具体化した結果、どうなった?

真子:商品コンセプトが決まった!

勝 :そこでいう商品コンセプトって何だ?

真子:えっと……「働き盛りの30代前半独り暮らし男性」が「ちょ
   っと疲れた時に味わって飲む」だから、利用場面だ。TPO!

勝 :そうそう。顧客像を具体化すれば、利用場面が決まる。つまり
   ここで言う商品コンセプトは「人×TPO」だな。

真子:そうか、顧客と利用場面を具体化すれば、それがそのまま商品
   コンセプトになるんだ! 人×TPO

勝 :そうだな。コンセプトが決まると何が決まる?

真子:えっと……パッケージとか、味とか!

勝 :相変わらず粗っぽいな。カルピスウォーターと比べて、4Pと
   かをノートにまとめてみろ。パッケージはここにあるから。

ザ・プレミアムカルピス
http://pr-calpis.jp/products.html

カルピスウォーター
http://www.calpis.co.jp/cw/product/

「はーい」真子がノートPCとにらめっこしてはノートにまとめる。

      カルピスウォーター   ザ・プレミアムカルピス

顧客像   30歳未満の女性    30代前半一人暮らし男性

使い方   暑い夏にゴクゴク飲む  疲れたときに味わって飲む

曜日    週末の土日       木曜・金曜

時間    昼間~夕方       夕方~夜

味     ゴクゴク飲める?    濃厚でさわやか

パッケージ 水玉で爽やか      シルクっぽい上質感

量     500ml       350ml

真子:ねー、こんな感じだよね?

勝 :そうそう、こんな感じ。それで?

真子:人×TPOが具体化されれば、味とかパッケージとかが自動的
   に決まっていく!

勝 :そうだな。

真子:量だって、ゴクゴク飲むカルピスウォーターは500mlで、
   味わって飲むプレミアムは350mlなんだよね。

勝 :そうそう。「人×TPO」に基づく一貫性で、全部が決まって
   いく。人を具体化すれば使い方が決まり、4Pも決まる。

真子:4Pって売り物、売り方、売り場、売り値、だよね。

勝 :そう。顧客像の具体化→TPOの具体化→4P、と考えていけ
   ば、戦略と戦術の一貫性・具体性が両立する。

真子:具体的に考えるから一貫性が取れるんだよね!

勝 :それ! 一貫性と具体性は、両立する。具体的に考えるほど、
   一貫性が取りやすくなる。

真子:ねー、さっきのザ・プレミアムカルピスのHPに、「おいしい
   飲み方」も書いてあったよね?

勝 :お、よく気づいたじゃん。これな。

-----------< HP引用 >------------

「ザ・プレミアムカルピス」のおいしい召し上がり方

 ・冷蔵庫でよく冷やします。
 ・リラックスできる場所、格好で心を落ち着かせます(クラシック
  音楽など、ゆったりした音楽をかけるのもオススメ)
 ・よく冷えた「ザ・プレミアムカルピス」を冷蔵庫から取り出し、
   一口ずつじっくりと味わってください。

http://pr-calpis.jp/products.html

-----------< HP引用 >------------

真子:飲むときの音楽まで考えてたなんで、スゴイよねー。

勝 :それこそ「具体性」が高くていいよな。ハードロックを聴きな
   がら飲むなら、炭酸が入りそうだ。

真子:きゃーははは、確かにぃ! 聴く音楽で、飲み物も変わる!

勝 :「ニーズは使い方」に現れる、ってそういうことだぞ。

真子:きっとさー、商品考えるときに、こういうイメージで味とかパ
   ッケージ考えたんだろうね-。

勝 :そうだったらすごいと思うわ。ホント一貫性と具体性が両立で
   きる。

真子:すごいイメージしやすいよね! 確かにこういうシーンだと、
   カルピスウォーターのパッケージはちょっと明るすぎるね。

勝 :でさ、こういう使い方をするときに、今までは、何飲んでた?
   ターゲットの「30代一人暮らしの男性」は?

真子:え……あ、なるほど、ウイスキーとか? お酒じゃないかな?

勝 :そうだよな。で、今の若い人はお酒飲まなくなってるから、実
   はこのTPOは空白になってたのかもしれないよな。

真子:なーるほどぉ! お酒代わりなら、350mlで十分だね!
   そっか、そーかもね!

勝 :合ってるかどうかはともかく、顧客像を具体化すれば、仮説も
   どんどん具体化される。

真子:うん! 4Pも決まるんだね!

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆3つに「分ける」のではなく、「3人を描く」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ノートを書き上げた真子が顔を上げて、小首を傾げた。

真子:ね、ザ・プレミアムカルピスのターゲットって、1通りだけな
   んだよね?

勝 :記事からはそう見えるな。

真子:もっと広げたい場合はどうするの?

勝 :同じニーズで括れるなら、その人達も買ってくれるだろ。別に
   30代前半の人暮らし男性にしか売らないわけじゃないし。

真子:あ……そうか、だから後でニーズで「括る」んだ。でもさ、セ
   グメンテーションって、いくつかに分けることじゃないの?

勝 :だから「分ける」じゃなくて「括る」だってば。

真子:あ、うん。でもさ、とにかく複数あるんだよね? 1つじゃな
   くて。

勝 :そうだよ。だからそれぞれに対応するわけだ。あ、同じニーズ
   で括れない場合は、どうする、ってことか?

真子:あ、そう。私、そう言いたかったんだ、きゃははは。

勝 :どうすればいいと思う? しつこいけど、セグメンテーション
   って何だった? 迷ったらそこに戻れ。

真子:ニーズが違うから分けて対応する! そっか、ニーズが違った
   ら、分けて対応するんだ。

勝 :前号の西川のピローウィーカフェのターゲットは、28歳女性
   だったよな? 恐らくは都市部在住で独身の。

真子:うん!

勝 :実は、ピローウィーカフェの記事には続きがあってだな……

勝が、食堂のテーブルの上でノートパソコンを開き、真子に見せる。

-----------< 記事要約 >------------

○顧客像が33歳の「お姉さん版」店舗の出店準備も進めており、
 13年秋にも出店を始める計画

2012/12/28 日経MJ P.16

-----------< 記事要約 >------------

真子:えっと……さっきの「28歳」向けのピローウィーカフェとは
   別に、ってことだよね?

勝 :それの「お姉さん版」ってことだろうな。

真子:わぁ、28歳と33歳って5歳違うだけなのに「お姉さん版」
   の違う店を作るんだ!

勝 :何でだと思う?

真子:28歳と33歳じゃ、ニーズが違うから!

勝 :そうだろうな。

真子:結婚してる人とか、子供がいる人も増えるよね、きっと。

勝 :ああ、国勢調査だと東京都の33歳女性の既婚者は55%。
   28歳女性は58%が未婚だから、比率が逆転する*

*国勢調査2010 表番号5-1
www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001034991&cycode=0
既婚者=「有配偶者」

真子:何か好みも変わりそうだよね。33歳だと落ち着いた感じに…

勝 :顧客像が28歳だと、こんな感じのHPになるな。ピローウィ
   ーカフェのHPなんだけどさ。

http://www.nishikawasangyo.co.jp/pillowycafe/

真子:あー、なんかカワイー感じのページだね。

勝 :33歳となると、もう少し大人っぽくするかもな。顧客像を具
   体化すればHPのデザインも必然的に決まってくる。

真子:そっか、それが「ニーズが違うから分けて対応する」ってこと
   の意味なんだね! HPのデザインも変わってくる!

勝 :そう。20代とか30代って「分ける」んじゃなくて、「28
   歳」「33歳」と具体化した上で、「括る」。

真子:じゃあさ、40代のお客様を狙うのなら、また「45歳」って
   具体化すればいいんだね?

勝 :そう! 例えば3通りにお客様を「分けたい」なら、3人の具
   体的な顧客像を描いた上で、「括る」

勝が「こんな例もあるぞ」と言いながら、PCを真子に向ける。

-----------< 記事要約 >------------

○中国市場に2011年秋に進出した婦人服製造販売のクロスカンパ
 ニーが上々の滑り出し。9月に上海市内に出店した直営第1号店の
 売上は想定の2倍のペース。「中国はニッチがニッチじゃないマー
 ケット」(同社長)。千人に一人が興味を持てば巨大な需要だ。

○ターゲットは2つに絞り込んだ。一つは「21歳」。イメージは大
 卒初任給に相当する月4千元の小遣いをもらう富裕層の女子大生。
 もう一つは「26歳」で比較的、所得水準の高いOLだ。売り場作
 りにもそうした戦略を反映し、店に入って左手は「21歳セグメン
 ト」向けのかわいらしい商品、右手は「26歳セグメント」で主に
 シックで高級感のあるデザインが並ぶ。ターゲットを明確にして訴
 求力を高める戦略だ。

2011/12/21 日経MJ P.3

-----------< 記事要約 >------------

真子:えっと……これ、中国での話だよね?

勝 :そうだけど、こういう考え方に国とか業種業態は関係ないぞ。

真子:こういう「括る」考え方って、ニーズが多様化してる先進国の
   話なのかなー、と思って……

勝 :だから、性別・年代で切れる方がむしろ特殊なんだって。

真子:中国でも、「20代女性」じゃ切れないんだ……

勝 :中国の20代女性なんて、何千万人いると思ってんだよ。それ
   に、ファッションが全然違うんだろ、記事によれば。

真子:ええっと……あ、21歳向けにはかわいらしく、26歳にはシ
   ックなデザインかあ……

勝 :で、かわいらしい服が欲しい人は、30歳の方でも買うだろ?
   売り場は21歳向けに作っても、だぞ。

真子:あ、それが「括る」ってことだ!

勝 :そう。「3つのセグメントに分ける」というよりは、「3人の
   具体像を描いて、括る」という方が実戦的。

真子:なるほどねー、「3つに分ける」んじゃなくて「3人描いて、
   括る」ね。これは大事だなー。

勝 :そうそう。3つに分けるんじゃなくて、3人描いて括る。顧客
   像は「書く」じゃなくて「描く」だからな。

真子:うん。絵を描くように、具体的に描写ってことだよね。

勝 :そうそう。まさにそれ。

真子:ねー、でもさー、ザ・プレミアムカルピスも、ピローウィーカ
   フェも、結局1セグメントに1つの商品だよね。

勝 :この場合はそうだな。

真子:じゃあ、同じ商品で、違う顧客像が3つ描ける、っていうこと
   はないの?

勝 :ニーズが同じなら、もちろんあり得る。っていうか、それが
   「ニーズで括る」ってこと。違う人を「括る」。

真子:あ、そっか。それにはどんなのがあるの?

勝 :そうだな……例えば……

「お待たせしました。ご注文のトンカツ定食と中華丼になります」

食堂の従業員が、トレーを2つ持って勝たちのテーブルに来た。

「きゃああ、来たあ! 待ってましたぁ!」

勝が「じゃあ食うか」と言いながらノートPCをどけると、その場所
にトンカツが載ったトレーがどん、と置かれる。

「いっただきまーす!」
「オマエ、朝、雑煮のモチ、4つ食ってただろ。よく食えるよな」
「4つじゃないもん。3つだもん」
「同じだっつーの」
「大体、勝さんだって昨日からトンカツ連続じゃないの。カロリー摂
 りすぎだよ」
「だから朝はエスプレッソしか飲んでねーだろ。大体、そんなに食っ
 たら思考が鈍る」
「へー、勝さん、真子レベルの人と話すのにアタマ使うんだー」
「ぐ……」
「それとも、真子のためにアタマ使ってくれてるのかなー?」
「オマエは……」
「そっかー、真子のために朝食ガマンして、エスプレッソだけ……」
「オマエのためじゃなくて、いつもそうなんだよ、オレは!」
「ホーンと意地っ張りなんだから」
「知るか。じゃあオレもいっただきまーす」

勝は、カツにソースをかけると、箸で一切れつまみあげ、嬉しそうに
口に入れた。

次号に続きます!

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◆今日のまとめ
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●顧客像を具体化すれば、使い方が具体化され、4Pも決まる!

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━特別編Vol.206(累計0982) 2013/01/17

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●ステップ2:普遍化→ステップ3:括る、のプロセスは、一見違う
 人達の「ニーズの共通点」を探すこと!

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◆まずは、前号の復習から!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

*本編の「今の時間」は、年が明けた1月1日の昼過ぎです。

売多家一同が温泉地の老舗旅館に集まって新年を迎えた元旦。勝と真
子は、朝食の会場でマーケティングレッスンを行っていたが、昼食の
ために館内の食堂へと出かけ、レッスンの続きをしている。

勝はトンカツ定食を、真子は中華丼を注文、食事の間も騒がしい。

「じゃ、カツ1切れもらうねー」
「あ、ふざけんな、返せ、その1切れで全体の14.3%……」
「食べちゃったよーだ……」
「じゃあ中華丼のウズラ卵もらうからな」
「あ、ダメ……ああああ! ひっどおい! 1つしかないのにぃ!」
「先にやったのはそっちだ。正当防衛だからな」
「じゃあもう1切れいただこうっと」
「ダメ。もう絶対やんねー」
「何よー、そんな子供みたいに隠しちゃって!」
「トンカツもう1人前頼めよ。オレも全然食えるしな」
「うん!」
「ってやっぱりダメ。食い過ぎるとアタマの働きが鈍る」
「きゃははは、十分食べてるじゃん! ご飯お代わりまでして」
「だからお代わりだって1杯でガマンしてるんだろうが」

「ふう……ご馳走さまでしたぁ」

食べ終わった真子の、ぱんと両手を合わせ、うなずくような仕草。ぴ
ょこんという小動物のような動作が愛らしい。

「アイスコーヒー遅いな……食ったらすぐ飲みたいんだけどな」
「もう、せっかちなんだからぁ」
「せっかちなんて、オマエに言われたくないぞ。まあ始めるか」

真子:うん! じゃあ前号の復習よね。今やってるのはセグメンテー
   ションの「括って広げる3ステップ」

真子がノートを広げる

○括って広げる3ステップ

ステップ1:顧客像の具体化
ステップ2:ニーズの普遍化
ステップ3:ニーズで人を括る

真子:前号でやったのは「ステップ1:顧客像の具体化」。まずは、
   具体的な顧客像を詳しく描き出す。

勝 :そうだな。顧客像が具体化されると、何が決まる?

真子:ニーズが決まる! それに伴って使い方も決まる!

勝 :何で?

真子:ニーズは使い方に現れるから!

勝 :よし。そうするとどうなる?

真子:商品コンセプトが決まる! 人×TPO! どんな人がどうや
   って使うかが決まる!

勝 :そうすると、何が決まる?

真子:売り物、売り方、売り場、売り値、つまり4Pが決まる! パ
   ッケージとかも決まる!

勝 :そうだな。あとは?

真子:セグメンテーションで例えば「3つに分ける」とき、分けるん
   じゃなくて、「3人の具体的な顧客像を描く」こと。

勝 :そうそう。3つに分けるんじゃなくて、3人描いて括る。

真子:それで、どうやって括るの、っていうところで終わったんだよ
   ね?

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆ステップ2:ニーズの普遍化
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

勝 :今回から、「ステップ2:ニーズの普遍化」に入って行こう。
   ノート取れよ。

真子:うん、わかってるって。

勝 :「普遍化」は要は「括られる人達のニーズの共通点を探す」っ
   てこと。

真子:えっと……この後のステップ3で「括る」っていう作業をする
   ために、だよね?

勝 :もちろん。ステップ2では、その「括るための切り口」ってい
   うか「括り口」、を探す。それが「ニーズの共通点」

真子:「共通点」っていうのは?

勝 :違う人達を「括る」には、何らかの「共通点」が必要だろ。性
   別・年代、だって「共通点」の1つだからな。

真子:あ、そっか。「共通点」があるから括れるんだ。

勝 :で、「人」の共通点じゃないぞ。「ニーズ」の共通点だぞ。違
   う人達を「括る」んだから、人の共通点があるとは限らない。

真子:なるほどねぇ……「違う人」を括るのは、「共通するニーズ」
   ってことかあ。

勝 :これ、考え方は単純だけど、「ニーズの共通点」を探すのって
   結構難しいんだよな。やってみるとわかるけど。

真子:そうなの?

勝 :じゃ、やってみるか? 真子、今この食堂にいる人達のニーズ
   を普遍化してみろ。

真子:え? この旅館に泊まってる人?

勝 :そうとは限らない。泊まってなくても、食事に来るお客さんが
   いる。大体それニーズの共通点じゃなくて「人」の共通点だ。

真子:あ、そうか。じゃあ……おなかが空いてる! きゃははは!

勝 :そう!!!

真子:え? いーの?

勝 :なんと、今ここにいる人の「ニーズの共通点」は、「昼食を食
   べたい」ってことだ!!

真子:きゃははは、そりゃそーだよねー!

勝 :まずはそこからだ。で、さすがに「昼食食べたい」っていうニ
   ーズだと、普遍化しすぎ。もう少し戻そうぜ。

真子:「戻す」って、具体的な方に戻すってこと?

勝 :そうそう。「普遍化」を直訳すると「抽象度を上げる」ことに
   なるんだけど、その「加減」が難しい。

真子:抽象度を上げすぎると意味がなくなっちゃうよね。「昼食食べ
   たい」なんて、当たり前だから。

勝 :だから「ステップ3:ニーズで人を括る」を見据えながら、ち
   ょうどいいところを探す。

真子:ど、どうやって?

勝 :「達人への道12」*でやった、「抽象度をコントロールする
   ボリュームツマミ」って覚えてるか?

達人への道12↓
http://archive.mag2.com/0000111700/20110823032000000.html

真子:えっと……あ、うん、言葉の抽象度を上げ下げするんだよね?
   音量のツマミを上げ下げするがごとく。

勝 :そうそう。抽象←→具体の、いいところで止める、達人レベル
   のスキル。

真子:え……ええ!? 達人レベルじゃ、私にはムリじゃん!

勝 :だからセグメンテーションは難しいんだよ! でも「ムリ」で
   はない。緻密に考えていけばできる。やってみようぜ。

真子:う、うん……

勝 :だから今この食堂にいる人達のニーズは?

真子:えっと「昼食を食べたい」は当たり前で……あとは「場所」だ
   よね。この辺で昼食を食べたい。

勝 :そうだな。「どんな」昼食だ? これは、具体性のボリューム
   ツマミを上げていくための質問。

真子:ここは普通の定食が多いから……「和風の定食」が食べたい?

勝 :それは具体性ボリューム上げすぎ。真子、定食食べてないじゃ
   ん。中華丼だろ? 定食じゃないじゃん。

真子:あ、そっか。

勝 :別にオレ等、「和風の定食」を探してなかっただろ。今度は、
   抽象度のボリュームツマミを上げろ。

真子:うーん……無難なものを食べる店、って感じ?

勝 :「無難なもの」だと戻りすぎ。抽象的すぎる。パスタだって無
   難だけど、ここには無いぞ。

真子:ツマミの調整、難しいねー

勝 :これ、結構ロジカルシンキング的な能力も必要だからな。

真子:あ、じゃあ、「和風の無難なモノ」?

勝 :そんなもんだな。次は別のボリュームツマミを操作しよう。
   「値段」はどうだ?

真子:千円弱。まあ普通の値段だよね?

勝 :あとは、この店の雰囲気とかかな。

真子:あ、そっか。なんかさー、そういう「切り口の要素」を探すの
   が難しいね……言われればわかるけど……

勝 :そう。どんなボリュームツマミがあるのか、っていうのを考え
   るのも結構大変。で、店の雰囲気は?

真子:割合落ち着いた感じ。数人で来て、話せるし。

勝 :そうだよな。落ち着けることはオレ等にとっては大事だよな。

真子:やっだー、やっぱり勝さん真子とゆっくり話したかったんだぁ

勝 :いいから、まとめろ。

真子:「この辺で、和風の無難なモノを、落ち着いた雰囲気で、数人
   で、1人千円程度で食べたい」って感じかな?

勝 :じゃあ周りを見回してみろ。

真子:え……あ、まさにそんな感じの人達ばっかりだ!

勝 :それが今この食堂にいる人達の「ニーズの共通点」だな。それ
   が「普遍化」されたニーズ、ってことだな。

真子:なーるほどぉ。これなら確かに性別とか年代とかは関係ない!

勝 :っていうか、周りは年配の方が多いだろ。オヤジのオレですら
   大分若い方だぞ。

真子:あ、ホントだねー。

勝 :「ステップ3:ニーズで人を括る」っていうのは、今の「普遍
   化されたニーズ」を持つ人を具体化していく、ってこと。

真子:あ、「ニーズの共通点」を探してから、それを持ってる人を
   「括って」いくんだ!

勝 :「ニーズの共通点」がわからなきゃ、「括る」ことができない
   からな。

真子:でも、その「ニーズの共通点」の、「要素」を探したり、決め
   たりするのが難しいね。何がその「共通点」になるのか……

勝 :そうなんだよ。今の要素で足りてるか、多すぎないか、検証し
   ないといけないしな。

真子:うん……

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆どの共通点を「切り口」として選ぶのか?
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

勝 :だから、その「ニーズの共通点」は何なのか、っていうのをき
   ちんと定義する必要があるな。

真子:ど、どうやって?

勝 :シリーズ第2号*でやった、スーパーがシニアの方向けに導入
   したカートの話、覚えてるよな?

*バックナンバー↓
http://archive.mag2.com/0000111700/20121231220000000.html

真子:うん。カートに載せた買い物カゴを、袋詰め台にヨイショって
   載せなくてすむカートを導入したって話だよね。

勝 :その「ニーズの共通点」は、何だっけ?

真子:「重くてカゴを動かすのが大変」な人。それなら、私みたいな
   か弱い女の子もシニアの方と一緒に「括られる」。

勝 :そうだな。「普遍化」は「括られる人達のニーズの共通点を探
   す」ことだからな。

真子:この場合は、「重くてカゴを動かすのが大変」が「ニーズの共
   通点」でそれを探す、っていうのが「普遍化」か……

勝 :その「ニーズの共通点」を持つのが、シニア、女性、一度にた
   くさん買い物をしてカゴが重い人、なんかだよな。

真子:うん。あれ、何かカンタンにできそうだ。

勝 :あのなあ、今「表現の難易度」はすっごい落としてるけど、
   「内容の難易度」はすっごい高度なこと言ってるからな。

真子:そ、そうなの?

勝 :カンタンにできればいいんだけどな……あ、そうだ。

真子:え?

勝 :じゃあマコちゃん、バナナ、トマト、イチゴ、メロン、キュウ
   リを2つの仲間に分けてくれるかなー?

真子:え? バナナ、トマト、イチゴ、メロン、キュウリ?

勝 :そーでーす。マコちゃん、どーかなー?

真子:はーい、バナナ・イチゴ・メロンの「果物」さんたちと、トマ
   ト・キュウリの「野菜」さんたちが仲間でーす。

勝 :じゃあ、それぞれの仲間の「共通点」は、「果物」と「野菜」
   ということでいーのかなー?

真子:そーでーす!

勝 :ブー! 間違いでーす!

真子:え?

勝 :イチゴもメロンも「果物」ではありませーん。イチゴもメロン
   も、ついでにスイカも「野菜」なのでーす。

真子:そんなことありませーん、イチゴもメロンもスイカも果物に決
   まってまーす。

勝 :マコちゃんは、何をもって「果物」って言ってるのかな?

真子:え? 甘くておいしーモノでーす! イチゴもメロンも甘くて
   おいしーから果物に決まってまーす!

勝 :じゃあ、「渋柿」は果物じゃないんですねー? 甘くない野イ
   チゴもあるよ? それも果物じゃないんだねー?

真子:そんなの知りませーん。センセー、性格悪いでーす。

勝 :イチゴより甘いトマトもあるらしーよ? それは果物かなあ?
   それとも野菜かなあ?

真子:メロンとイチゴが果物じゃないなんて言うなら、理由を言って
   くださーい。立証責任は言い出しっぺにありまーす。

勝 :性格悪い子供ですねー。あのねマコちゃん、メロンとイチゴは
   木にならないから野菜なんだよ。

真子:へ? メロンとイチゴは、木にならないから、野菜??

勝 :正確に言うとこんな感じ。

○野菜:1年生及び多年生の草本(そうほん)になる実
○果物:永年生の樹木(じゅもく)になる実

すいか、メロンはウリ科の1年生果菜(野菜)で、いちごはバラ科の
多年生果菜(野菜)

http://www.maff.go.jp/hokuriku/kids/question/green03.html

真子:え、ええ!? あー、メロンは「ウリ」なんだあ……

勝 :そうでーす。生物学上はそうなりまーす。スイカも西瓜ってい
   うくらいで、ウリの仲間でーす。カボチャもそうでーす。

真子:でもセンセー、スイカもメロンもイチゴも果物屋さんに売って
   まーす。

勝 :果物屋さんに売ってるモノが果物なら、果物屋さんで果物ナイ
   フが売ってたら、それも果物なのかなあ?

真子:違いまーす。

勝 :だからねー、「どの共通点を共通点とみなすか」で、全然違っ
   てくるんですよー。

真子:え? わかりませーん。

勝 :だから、バナナ、トマト、イチゴ、メロン、キュウリをどう
   「分ける」っていうとき、「ナニで」分けるかが大事だよねー

真子:え?

勝 :今、分けるための基準として、どんな「切り口」が出てきた?

真子:えっと、甘さでしょ、それと木になるかどうか、それと、果物
   屋さんで売ってるか……

勝 :だからそれによって「括られ方」が違うわけだから、「どの共
   通点で括るか」っていうのをちゃんと考えろって話だ。

真子:え、あ、そうか! 「どの共通点を選ぶか」によって、括られ
   るモノが違うんだ!

勝 :そう。共通点は色々ある。で、「どの共通点を選ぶか」ってい
   うのが、セグメンテーションのポイント。

真子:そっかあ……色々ある中から選ぶのが難しいんだ……

勝 :それによってさ、「考え方の方向性」が大分変わる。

真子:イチゴが「果物」と「野菜」のどっちに入るか、とかね、きゃ
   ははは!

勝 :そう、それが言いたかった。どの人がどのセグメントに入るか
   が「共通点」によって変わるだろ。

真子:うん!

勝 :で、「括られる人達の共通点」が、セグメンテーションの「切
   り口」になるわけだからな。

真子:えー、じゃあそれってセグメンテーションそのものじゃないで
   すかー! お客様の「切り口」を探すんだから……

勝 :そうだよ。だからセグメンテーションは難しいんだってば。

真子:じゃあ、どうやってその「切り口」を探せばいいの?

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◆ステップ3:ニーズで人を括る
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勝 :そういう話になるけど、その前に「ステップ3:ニーズで人を
   括る」もやっちゃおう。

真子:はーい。

勝 :これも考え方は単純。ステップ2の探した「ニーズの共通点」
   を「人」に落とし込む。同じ「共通点」を持つ人を探す。

真子:あ、そうか、ステップ2は「ニーズの共通点」で、ステップ3
   は、それが「人」の話になるんだ。

勝 :そうそう。ステップ2は「ニーズ」。ステップ3は「人」。こ
   こは切り離して考えるのがポイント。

真子:えっと……ステップ2で、「ニーズ」を一旦「人」から切り離
   すから、ステップ3で新たに「人」を広げられるんだよね?

勝 :まさにそういうこと。「ニーズ」と「人」を違うレイヤーって
   いうか違う「層」で考えるから、それができる。

真子:へー、この「括って広げる3ステップ」って、単純そうで、結
   構考えてあるんだねー。見直しちゃった♪

勝 :オマエに言われるとはな……BASiCSだって単純だけど、
   すっごい奥深いだろうが。

真子:あー、BASiCSと同じか。単純だけど奥が深い……

勝 :それだ。簡単そうで、やってみるとこれがまた難しいんだな。
   で、さっきのスーパーのカートの例だと、どうなる?

真子:スーパーのカートで言えば、「重くてカゴを動かすのが大変」
   っていうのがその「ニーズの共通点」だよね。

勝 :そう。その「ニーズの共通点」を持つ人を「探す」っていうか
   「思いつく」のが結構難儀。腕の見せ所。

真子:まずは「力の無い人」かな?

勝 :そうだよな。「重いモノを動かすのが大変」っていうのは、
   「ニーズ」で、「力の無い」のは「人」の特徴だよな。

真子:ホントだあ! いつの間にか「ニーズ」が「人」になってる!

勝 :いつの間にか、じゃなくて、それを明示的にやるんだよ。

真子:だから、シニアの方と、女性と……あ、子供もそうか。

勝 :それ、全然「括って」ないだろ。人口の半分以上がその中に入
   ってくるぞ。シニアと女性と子供なんて、ほとんど全員だ。

真子:え……ああ、ホントだ、きゃははは! じゃあもっと具体化し
   なきゃセグメンテーションにならないねー。

勝 :当然。前号でやっただろ。「3つに分ける」んじゃなくて、
   「3人の具体像を描く」んだぞ。

真子:あーそーだった!

勝 :女性でも、2、3品しか買わない人だったらカゴはそんなに重
   くないだろ?

真子:あ、確かに。お弁当とジュースだけだったら、そもそもカゴな
   んかいらないし。

勝 :となるとさ、結局大事なのはこの場合、何だ?

真子:カゴの重さ! つまり、一度にたくさん買うかどうか!

勝 :まずはそれだよな。でも、力があれば、カゴが重くても別に問
   題無いわけだから……

真子:あ、そっか。じゃあ、力の無さも大事だね。だから「一杯買っ
   てカゴが重くて、かつ力の無い人」

勝 :そうそう。そこまで具体化されると、括りやすくなるよな。

真子:あー、なるほど、ステップ2の普遍化と、ステップ3の括るの
   を言ったり来たりしながら括っていくんだ!

勝 :そう。「抽象度をコントロールするボリュームツマミ」を合わ
   せていく。

真子:あ、ここでもそれやるんだ。

勝 :もちろん。で、じゃあ「カゴの重さ」で括っていくと、どんな
   人がカゴが重い?

真子:えっと……まとめ買いする人?

勝 :そうだよな。来店頻度が低い人。どんな人が来店頻度が低い?

真子:忙しい人。あと、なかなか外に出られない人とか?

勝 :すると、「女性」って言っても、毎日来店する主婦の方は「カ
   ゴの重さ」がそれほどでも無いかもしれないよな。

真子:あーなるほどぉ。共働きで、たまにまとめ買いする人とかだ。

勝 :そうそう。そうやって「括られる人」が具体化していくだろ。
   あとは、どんな人がカゴが重い?

真子:あと……あ、野菜とか買う人。白菜1/2、キャベツ1つ、大
   根1本買ったら、もう大分重いよ!

勝 :そうそう。買うモノの重量。そうなると、重いモノって他にも
   あるだろ?

真子:あ、うん。2Lのペットボトルとか。

勝 :するとさ、どんな人がカゴが重い? 1人暮らしの人が白菜半
   分とか買わないよな? 使い切れないぞ。

真子:あ! そうか、じゃあ、家族がいる人?

勝 :そうそう、そうやってどんどん具体化されていくだろ? ちょ
   っとまとめてみ。

真子:えっと……「共働きで、家族がいて、まとめ買いする力の無い
   女性」かな。

勝 :ほら、大分具体化されただろ。

真子:なーるほどねー。となると、ステップ2の「普遍化」、ステッ
   プ3の「括る」は、一緒にやった方がやりやすそうだね。

勝 :一緒にっていうか、行ったり来たり、だな。同じように、元々
   このスーパーが狙っていた「シニア」の方も、具体化する。

真子:そっかあ……

勝 :例えば「腰が曲がりつつあって、3日に1回来店する1人暮ら
   しの年配者」なんかになるよな。男女含めて。

真子:あ! そうすると、「忙しい共働き女性」と「1人暮らしの年
   配男性」っていう、全然違う人が「括られる」!

勝 :だろ? 見かけ上全く違う人が「同じニーズで括られる」って
   こういうこと。「ニーズの共通点」を持ってる。

真子:確かにこれだと、性別とか年代で分けるのはムリがあるよね。

勝 :だから「ニーズ」で括る。括るためには、「ニーズの共通点」
   が必要。それが「ステップ2:ニーズの普遍化」

真子:あ、それで「ニーズの共通点」を知るためには、まずはどんな
   ニーズがあるのかを知らなくちゃいけない。

勝 :だから、「ステップ1:顧客像の具体化」が必要。

真子:きゃあああ、キレイに流れるー!

勝 :そう、実戦的で強い理論って実は「美しい」。無理なく流れる
   からな。

真子:なんかさー、勝さんが「美しい」とか言う言葉を使うと、すっ
   ごい違和感あるよね……

「うるせーよ。オレはロジックに関してはすっごい美的か、かか、感
覚が……」と珍しく勝が噛んだ。

「きゃははは、ほらぁ、美的感覚なんて言い慣れない言葉使うから」
「オマエにも論理的美的感覚があれば、もう少し賢かったのにな」
「何よー、いいもん、私はルックスが美しいからいいんだもん」

2人が騒ぐ間に、食堂の従業員が食後のアイスコーヒーを2人分トレ
ーに載せて運んでくる。

「お待たせしました、食後のお飲み物になります」

「あ、やっときた」
「勝さん、そーゆーこと言っちゃダメだよ。昼時は大変なんだから」
「はーい。いっただきまーす」

勝がアイスコーヒーのストローに口をつけると、黒い液体が猛スピー
ドでストローを上昇し、水面が急下降する。勝が5秒で飲み干した。

「お代わりください!」
「え、あ、あの、別料金になりますが……」
「はーい、それでいーですからすぐお代わりください!」
「あ、はい、承知しました」

「勝さん、飲むの早すぎぃ! もっと味わって飲みなよー」
「オレの勝手だろうが。一刻も早くカフェインが欲しかったんだよ」
「あーそーか、真子のために、もっとアタマを働かせないとねー」
「違うだろ」
「そーかー、真子のためかー、もー、困っちゃうなー」

勝は真子を無視して、「早く来ないかな」と言いたげに、食堂の調理
場に顔を向けた。

次号に続きます!

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◆今日のまとめ
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●普遍化→括る、のプロセスは、「ニーズの共通点」を探すこと!
 抽象度をコントロールしながら括れる「切り口」を探そう!

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━特別編Vol.207(累計0983) 2013/01/21

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●セグメンテーションは「個別具体化して神経衰弱」。カギは、個別
 化して「ニーズの共通点」を洗い出すこと!

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◆まずは、前号の復習から!
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*本編の「今の時間」は、年が明けた1月1日の昼過ぎです。

売多家一同が温泉地の老舗旅館に集まって新年を迎えた元旦。勝と真
子は、昼食のために館内の食堂へと出かけ、レッスンの続きを。昼食
を食べ終わり、食後のカフェを楽しんでいる。

食堂の従業員がテーブルに近づき、「はい、アイスコーヒーのお代わ
りをお持ちしました」というと、注文を書き加えた伝票をテーブルに
載せる。

「あ!!」

お代わりのアイスコーヒーを手に取った勝が声をあげる。

「ど、どうしたの?」
「ケーキセットにすればよかった……」
「な、なんだ……そんなことで大声出さないでくださいよ……」
「なんだ、って大事なことだろ。ケーキの値段が安くなるだろうが」
「いーじゃないですかー。勝さん、稼いでるんだからさー」
「稼いでいることと合理的にお金を使うことは全く関係がない」
「もう……ケーキなら後で初詣に行くときに食べよーよ」
「あ、オマエ初詣行くのか」
「うん。勝さんと一緒に♪」
「えー……寒いから1人で行けよ。オレここで心の中でお参りする」
「ダ、メ。一緒に行くの! 毎年行ってるじゃん!」
「めんどくせー……」
「何よー、初詣には意義があるって自分で言ってたじゃん!」

http://archive.mag2.com/0000111700/20110106211000000.html

「そりゃそーなんだけどさー……」
「ねー、カフェでケーキ食べられるからさー、いこーよー、ねー!」
「わかったよ、じゃあ後でな……」
「うん!」
「じゃあ続きを始めるか……」

勝がアイスコーヒーを一口飲んでテーブルに置くと、氷がぶつかるカ
ランという音がした。

勝 :じゃあ、前号の復習から、な。

真子:うん! じゃあ前号の復習よね。今やってるのはセグメンテー
   ションの「括って広げる3ステップ」

真子がノートを広げる

○括って広げる3ステップ

ステップ1:顧客像の具体化
ステップ2:ニーズの普遍化
ステップ3:ニーズで人を括る

真子:前号でやったのは「ステップ2:ニーズの普遍化」。普遍化と
   は「ニーズの共通点」を探すこと。これが難しいんだよね……

勝 :すっごく難しいな。

真子:普遍化しすぎると、当たり前のことになっちゃうし、具体的す
   ぎると、顧客が広がらないし……

勝 :そういうことだ。どんなイメージだ?

真子:「達人への道」でやった、「抽象度をコントロールするボリュ
   ームツマミ」のイメージ*

*達人への道12↓
http://archive.mag2.com/0000111700/20110823032000000.html

勝 :そうだな。音量を上げ下げするがごとく、言葉の抽象度をコン
   トロールしていく。

真子:あと、「どの共通点を選ぶか」、つまり「何で括るか」を探し
   て選ぶのが重要。

勝 :その「切り口」っていうか「括り口」がセグメンテーションだ
   からな。

真子:それで、その「ニーズの共通点」を持つ人を探していくのが、
   「ステップ3:ニーズで人を括る」こと。

勝 :ニーズで括る際のポイントは何だ?

真子:顧客像を具体化すること! 具体的な顧客像を「描く」こと!

勝 :OK。

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◆ニーズで括ることは、「個別具体化して、神経衰弱」
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真子:結局、ステップ3で「括る」ときも、「30代男性」とかじゃ
   なくて、「具体的な顧客像を描く」んだよね?

勝 :そうだよ。

真子:となると、ステップ1の「顧客像の具体化」と同じことするん
   だ?

勝 :だからそうだってば。イメージとしては、「個別具体化して神
   経衰弱」

真子:へ? 「個別具体化して神経衰弱」って? どういう意味?

勝 :その通りの意味だよ。「個別具体化」は、ステップ1だよな。
   神経衰弱は、その名の通り。

真子:「神経衰弱」って、トランプの絵合わせをする、あの「神経衰
   弱」のこと?

勝 :だからそうだよ。ただ、ホンモノの神経衰弱との違いは、「表
   面」を合わせて行く。

真子:何それー、表面の神経衰弱なんてできて当たり前じゃん。

勝 :とにかくやっていくか………オレと、真子と、恵利ちゃん、望
   ちゃんでいいよな、4枚のカードは。

真子:は?

ノート貸せ、と勝が真子に言ったかと思うと、ノートに書き込む。

     勝     真子     恵利ちゃん    望ちゃん

年代   中年    20代     20代     20代
性別   男性    女性      女性      女性

勝 :これが「トランプのカード」。で、カードを合わせていく。

真子:え? あ、この「人」が、「カード」なのね。でもさー、神経
   衰弱って「裏面」にしてやるんでしょ?

勝 :お、ナイス。まさにそれ。このままだと、まだ「裏面」の状態
   だろ。情報が少なすぎて「仲間合わせ」ができないだろ?

真子:えっと、この情報をもとにしては「括れない」ってこと?

勝 :そういうこと。だから「表面」にしてから「括る」。

真子:え? これが「表面」になるの? どうやって?

勝 :それぞれの「個別具体的なニーズ」の「モトとなるもの」を加
   えていこう。職業、業種、学歴……

      勝     真子    恵利ちゃん    望ちゃん

年代    中年    20代    20代     20代
性別    男性    女性     女性      女性
職業    社長    社長    2代目後継者   管理職
業種   サービス   飲食     飲食      飲食
学歴    MBA   大学     大学      大学
住む場所 マンション マンション   自宅     マンション
家族   一人暮らし 一人暮らし   両親同居   一人暮らし
趣味    スキー   スノボ   お菓子作り    料理
性格    温厚    短気     温厚      温厚

勝 :こんなもんか? これで「表面」になってるか?

真子:こんなもんか、って?

勝 :この神経衰弱は、カードの裏面じゃなくて表面でやる。この情
   報で「十分に括れるか」ってこと。

真子:え? え?

勝 :いや、だからさ、「趣味」で「神経衰弱」するとどうなる?
   カードを合わせてみろよ。

真子:え? あ、勝さんと真子が「ウィンタースポーツ」だよね、ス
   キーとスノボだから……

勝 :そうなるよな。それで?

真子:で、恵利ちゃんと望ちゃんが「料理関係」っていう仲間、かな

勝 :だとするとさ、例えば旅行代理店がDM出すとするだろ? す
   るとどうなる?

真子:ええっと……旅行代理店がDM出すと……勝さんと私には、ス
   キー、スノボツアーで……恵利と望ちゃんは、料理ツアー?

勝 :そうだよな。ほら、それで「神経衰弱」できただろ? 

真子:できたけど、それで?

勝 :ニブイヤツだなあ……それがセグメンテーションの「切り口」
   になるだろうが。趣味で括れるだろ、って言ってんの。

真子:え……ああああああ! わかったぁあ!!

 周りの客が一斉に真子を見る。

勝 :大声出すなよ。オマエ注目浴びてるぞ。

真子:え、あ、あははぁ。スミマセン、お騒がせして……なるほど、
   「ニーズの共通点」で括っていくわけだ!

勝 :そう。趣味で括ると、今みたいな「組み合わせ」になるよな。
   それが「ニーズの共通点」、つまり「切り口」になる。

真子:なーるほどねー。性別・年代で括ると、勝さんだけ仲間はずれ
   だあ、きゃははは!

勝 :そうだな。でさ、「一人暮らしのためのカンタン晩ご飯」みた
   いな本とかレシピだったら?

真子:えっと……そうか、恵利はご両親と同居してるから、恵利が仲
   間はずれになるんだ。

勝 :「性格」で括ると、オマエが仲間はずれな。

真子:せ、「性格」? え、何コレ、私だけ短気なんて……ひっどー
   い、勝さんだって「短気」じゃん。書き直してあげるよ。

勝 :やめろ、ふざけんな!

真子:ほらー、これくらいのことで怒るなんてやっぱり「短気」じゃ
   ん、きゃははは!

勝 :……ともかく、これが「括って広げる」イメージ。まず、それ
   ぞれの「カードの内容」を具体化する。

真子:あ、それが「ステップ1:顧客像の具体化」だ!

勝 :そうそう。で、そのときにニーズなりそのモトとなる要素を、
   個別具体的に書く。1人1人書いていく方が書きやすいだろ?

真子:あ、うん。それぞれの違いが出るから。

勝 :上の表では、もうかなり「普遍化」しちゃってるけど、実際に
   は個別具体的なことを書いていく。学歴なら、大学名とか。

真子:あ、なるほど。「大学」って普遍化しちゃってるけど、女子大
   とか、場所とかで違うかも……

勝 :「学科」だって違うかもしれないからな。大学が違っても、学
   科が同じなら「括れる」かも。

真子:あー、確かに「理系」と「文系」で違うかもしれないね!

勝 :真子さ、BASiCSの背後には膨大な「積分」があって、
   BASiCSはその「微分」だ、っていってわかる?

真子:へ? 微分積分? わっかりませーん!

勝 :だろ? 理系だと今の説明の方が多分わかりやすい。だから、
   「理系」と「文系」で「メッセージ」も変わるかもしれない

真子:あーなるほどー。そうやって「カードを合わせていく」んだ!

勝 :そうそう。それが「ステップ3:ニーズで人を括る」。「ニー
   ズの共通点」があるものをグループ化する。

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◆ニーズで括れていれば、「打ち手」が見える
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

真子:でもさー、どの項目で括るか、っていうのがわからないよね。
   どの「ニーズの共通点」を使うべきかってゆーのが。

勝 :それが難しいんだよな。自分の商品の場合、どの「共通点」が
   カギになるのか、結構難しい。

真子:どうすればいいの?

勝 :1つのチェックポイントは、ニーズでうまく括れていれば、そ
   れに合った「打ち手」が論理的に出てくるかどうか。

真子:え? 何で?

勝 :ニーズが見えていれば、あとはそのニーズに応えるだけだから

真子:どういうこと?

勝 :やってみよーぜ。真子の会社のイタリアンレストラン、「そー
   れ・しちりあーの」ならどうする?

真子:え? あ、うちの会社ならどう「括るか」ってこと?

勝 :そう。上の4人に共通するモノがあるから、4人に来てもらえ
   るような「ニーズの共通点」を探してみろよ。

真子:え? みんな日本人とか?

勝 :「抽象度のボリュームツマミ」上げすぎ。

真子:えっと……じゃあ……「女性」???

勝 :それだとオレが外れるだろ。ヒント。イタリアンレストランの
   メニュー。

真子:あ! みんな甘い物大好き! ケーキとか!

勝 :そうそう。デザート食べ放題とかやった場合、4人全員に「刺
   さる」だろ?

真子:なーるほどぉ……じゃあ、カードの「項目」が業種とかによっ
   て違うってこと?

勝 :そういうこと。その「項目」を定義するのが難しいんだな。

真子:なるほどねー。

勝 :それに商品の差別化を考えると、同じような商品でも、「差別
   化できる」項目を入れなきゃいけないだろ?

真子:あ! ということは、同じような商品でも、同じ「項目」でい
   いとは限らないんだ!

勝 :だから難しい。イタリアンレストランならどんな項目を加える
   べきだと思う? やってみろよ。

真子:うん!

真子がノートに書き込みながら、顔を上げては「うーんと……」と少
し考えてからまたノートに向かう。

勝はアイスコーヒーを飲みながら、パソコンをいじっている。

      勝     真子    恵利ちゃん    望ちゃん

食べる量  食べ過ぎ  多い     普通      少なめ
脂モノ   大好き   大好き    普通      普通
お酒    弱い    強い     弱い      強い
彼氏・彼女 いない   いない    いない     いない
使い方   接待    女子会    1人で     1人で
重要な品  ドルチェ  お酒     ドルチェ    お酒

真子が「できた!」といい、勝にノートを見せる。

勝 :どれどれ? なるほどな……で、どう括るんだ? これによっ
   てどんな打ち手が打てるんだ?

真子:え? さ、さあ……

勝 :それじゃ意味ないだろうが……え、みんな彼氏・彼女いない?
   だったらみんなで合コンでもしよう。それぞれ友達連れてさ。

真子:そ、そんなのダメ!

勝 :何でだよ、そういう考え方だってあるだろうが。真子だって、
   出会いが欲しいだろ?

真子:だ、だって……わ、私は出会いなんていらない……あ、そ、そ
   うだよ、そんなのうちの店には合わないよ。

勝 :まあそうかも……あ、「使い方」で括るのはアリだよな。接待
   と女子会とお一人様。席の作り方とかメニューも変わる。

真子:あ、そーだね。テーブルの配置とか変わるねー。

勝 :昼はいいけど、夜に1人で行く場合、食べるモノが無いよな。
   夜用の「お一人様用ディナープレート」でもあればいいけど。

真子:「お一人様」を狙うならそうなるよね。なるほどね、そうやっ
   て「打ち手」を考えながら「括って」いくんだ!

勝 :そう。うまく「括れて」いれば、打ち手に落ちてくるだろ?

真子:うん! テーブルの配置、メニューの内容なんかが変わる!

勝 :あとさ、これに典型的に出てるけど、お酒に弱いと、何食べる
   ことになる?

真子:料理でしょ?

勝 :そりゃそうだけど、料理は酒飲んでも食べるだろ。

真子:あ、そうか……あ! ドルチェ(デザート)だ! そっか、飲
   まない人はドルチェかあ……

勝 :項目間の「相関」があると、それはいいヒントになるよな。

真子:あ! 脂モノが好きな人は、よく食べる人、とか?

勝 :検証する必要はあるけどな。そうやって「括る」のに適した
   「切り口」を探していく。飲まない人の場合はどうする?

真子:飲まない人向けのドルチェメニューを充実させる!

勝 :飲まない、って「お酒」を飲まないだけだろ?

真子:あ……そうか、ドルチェに合う飲み物を用意する!!

勝 :そうそう。そうやって打ち手に落ちてくる。

真子:なーるほどねー。「神経衰弱」の意味がわかった! この4枚
   のカードの組み合わせが色々あるんだね!

勝 :これさ、実際に「神経衰弱」やるんだぜ。リアルに。

真子:え?

勝 :A4の紙に、顧客の情報書けるだけ書いて、テーブルにぶわあ
   って並べて、「仲間合わせ」していく。

真子:あー、なるほどぉ! 「リアル神経衰弱」だあ!

勝 :その場で情報を書き加えていきながら、「切り口」を考えて、
   「ニーズの共通点」を探せばいい。

真子:ね、でも「括る」ときに「この人はどっちに入るんだろう」っ
   てならないかな?

勝 :そうなったら、それは括る「切り口」がおかしいだろ。

真子:でもそれって「切り口」が決まった後の話でしょ? 「括る」
   ときは、その「切り口」がわからないんだから……

勝 :あ、だから、ステップ2の普遍化と、ステップ3の括る作業は
   行ったり来たりして考える。だから書きながらやるわけだ。

真子:大変だなあ……

勝 :リアル神経衰弱なら、切り口を紙に書いて、また「仲間合わ
   せ」して、って同時に出来るのがメリットだな。

真子:あ、そっか! なんか楽しそうだ!!

勝 :「どの切り口が適切か」っていうのがセグメンテーションで一
   番大事なんだから、そこは時間をかけないとな。

真子:そうか……切り口を探すのがセグメンテーションだもんね。

勝 :これは、スタッフみんなでやってみると面白いぜ。

真子:あ、ホント、うちも望ちゃんとやってみようっと。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆「個別」に見なければ分けられない
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

勝 :結局、セグメンテーションのカギは最初の「個別化」にあるん
   だよな。

真子:「リアル神経衰弱」もその「個別化」だよね?

勝 :そう。突然だけど、神奈川県の気候ってさ、南北で分ける? 
   東西で分ける? どっちが正しい?

真子:神奈川県の気候? さ、さあ……?

勝 :NHKの天気予報なんかだと、神奈川を東西で分けてる。これ
   ってどういうことだ?

真子:南北の違いより、東西の違いの方が大きいんじゃない?

勝 :多分そうなんだろうな。でさ、それってどうやって確認したと
   思う? 神奈川は、イメージ的にはこんな感じなんだけどさ。

  ○神奈川県略図(あくまでもイメージです)

    相模原          川崎

          厚木     横浜

    小田原   平塚     横須賀

真子:えっと……都市を1つ1つ比べて、気候の変化が似ている都市
   をまとめていくんじゃないかな?

勝 :そうだよな。川崎は、横須賀と似てるのか、相模原と似てるの
   か、って比べていくわけだよな?

真子:うん、それしかないよね……

勝 :ってことはさ、「東西」で切るか、「南北」で切るか、ってい
   うのも「個別に」都市を見ていかないとわからないよな?

真子:そ、そうだけど?

勝 :マーケティングもそうだろ? 「20代女性」とか言う前に、
   お客様を「1人1人個別に」見ないと、分けられないよな?

真子:あ、あああ! セグメンテーションだあ! そうか、これも都
   市を「1つ1つ個別に」見ていかないとわからない!!

勝 :だから叫ぶな、って。

真子:あ……あはははは。でもこれもまさに「括る」だね! 分ける
   んじゃなくて、都市を「括る」!

勝 :「分ける」には、「個別具体的に」括らないと分けられないよ
   な? 地図からいきなり「東西」「南北」に分けないよな?

真子:うん!

勝 :でもさ、「20代女性を狙う」って、地図を見ていきなり「神
   奈川県東部を狙う」って言ってるんだぜ? 変だろ?

真子:確かにそうだ!! 個別に見なければ、東西に分けることがい
   いのかどうかもわからないのに……。

勝 :ちょっと考えればすぐわかることなのに、すぐ「性別・年代」
   とか、BtoBだと「業種と企業規模」とかで切っちゃう。

真子:そっかあ、そもそも「業種と企業規模」で切れるかどうかがわ
   かんないのにね。

勝 :「気候の変化」で括る、って一口に言っても、気温、降水量、
   湿度、風向きとか「項目」が色々あるだろ?

真子:な、なーるほどぉ! それで「共通点」を探すんだ! さっき
   の例と同じだねー。項目を並べていって、共通点を探す!

勝 :それが「括る」ってことだ。セグメンテーションで個別化して
   「ニーズの共通点」を探すのも全く同じこと。

真子:その「共通点」が切り口になるんだ! だから、都市の場合で
   も「個別具体化して神経衰弱」すればいい!

勝 :そう。だから、まずは「個別に」見る。地域を分けるなら、都
   市を1つ1つ。人を分けるなら「1人1人」を個別に見る。

真子:みんなおんなじだねー。言われて見れば当たり前だけど。

勝 :そういうこと。「括って広げる3ステップ」って、こういう当
   たり前のことをマーケティングにあてはめただけ。

真子:そうかあ……ね、勝さんどうやってこんなこと思いついたの?

勝 :いや、別にNHKの天気予報を見てて思いついただけ。

真子:ホントすごいなー。天気予報からセグメンテーションを思いつ
   くなんて……どういうアタマしてるんだろうね、この人は……

真子が勝をじっと見つめる。10秒くらいだろうか、無言の刻が流れ
た。勝が珍しく照れたように目をそらし、アイスコーヒーに手を伸ば
す。中身はいつの間にかなくなっており、ストローが空気を吸う「ず
っ」という音だけ聞こえた。

「きゃー、やっだー、真子に見つめられて照れちゃって……」
「ば、べ、別に照れるかよ……」
「真子の熱いまなざし、感じてく、れ、た?」
「知るか。アイスコーヒーもう一杯もらおうかな」
「あー、ごまかしてるー」
「何にもごまかす必要はない。ケーキ食おうかな……」
「だから初詣に行こうってば。せっかくならカフェで食べようよー」
「オマエこの店に失礼だな……でもまあそうするか……」
「うん!」
「じゃあこの店はオレが奢ってやるよ」
「やったあ! じゃあ、ケーキは真子がご馳走するね♪」
「やりぃ、じゃあケーキは食べ放題な」
「あー、そんなのダメ、意地悪ぅ!」
「よし、じゃあ片付けるか。部屋に戻るぞ」
「うん! ご馳走さまでしたぁ!」

真子が再び手を合わせ、ぴょこん、と軽くお辞儀した。

次号に続きます!

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◆今日のまとめ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●セグメンテーションは「個別具体化して神経衰弱」。ポイントは個
 別化。「ニーズの共通点」を洗い出そう!

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━特別編Vol.208(累計0984) 2013/01/24

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●ニーズの「括り方」の基本は、使い方。TPOを考えよう!

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◆まずは、前号の復習から!
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*本編の「今の時間」は、年が明けた1月1日の昼過ぎです。

昼食を終え、初詣&カフェに出かけるべく、ホテルのロビーで集合す
る勝と真子。

「あれ、真子、晴れ着じゃないのか?」
「持ってこれないし、着付けだってすぐにはムリだよー」
「そうか……」
「あー、やっだぁ、真子の晴れ着姿見たいんだー」
「そうそう、真子にも衣装、って言ってやりたかった」
「そのオヤジギャグは毎年聞いてるからもーいーってば」
「じゃあ、またいつもの神社な」
「うん!」

ぱんぱんという手があたる乾いた音と、がらがらがら、という金属音
が神社の境内に響き渡る。

真子の横で、勝が長いことブツブツとつぶやき続ける。「去年は……
は達成しました。今年は、アレとコレを……を達成することをここに
宣言します」*

「今年もいい年でありますよーに」
「ありますよーに、じゃなくて「いい年にします」だっつっただろ」

*真子と勝の初詣 2011年1月新年特別号
http://archive.mag2.com/0000111700/20110106211000000.html

「自分の目標は、もー宣言したんだもん」
「へー、何を宣言したんだ?」
「ダメー、内緒だよーだ」
「オレに関係なきゃ、なんでもいーや」
「……勝さんにも関係あるもん」
「なんだ、売多家の繁栄とかか」
「違うもん。勝さん、言葉の抽象度上げすぎ」
「へー、その言葉、使いこなせるようになったか」
「勝さんこそ何をお願いしたのよー」
「望ちゃんと恵利ちゃんと仲良くなれますよーに、って」
「ふーんだ。ホントは真子ともっと仲良くなりたいく、せ、に♪」
「じゃあ絵馬買うぞ。絵馬は『自分への意識付けツール』*だからな」
「うん! お揃いのにしよーね♪」
「知るかそんなの」

2人は初詣を終えると、帰り道のカフェに寄る。

先に席を取っていた勝のところに、「お待たせー」と言いながら真子
がトレーを持ってやってきた。トレーにはケーキとエスプレッソが2
人分ずつ並んでいる。

「お、ありがと。ここのミルクレープうまいんだよな」
「結構混んでるねー」
「まあその方が話しやすいからいいだろ。真子が叫び声あげるしな」
「そんなことしないもん」
「さっきしてただろーが。とにかく続き始めるぞ。ノート出せ」
「うん!」

テーブルにケーキ、エスプレッソ、勝のノートPC、真子のノート、
と所狭しと並べられる。勝がエスプレッソを1口飲んで言った。

勝 :じゃあ復習からな。

真子:うん、今はセグメンテーションの「括って広げる3ステップ」
   をやってるところ。

○括って広げる3ステップ

ステップ1:顧客像の具体化
ステップ2:ニーズの普遍化
ステップ3:ニーズで人を括る

勝 :そうだな。前号はこの理論の「核心」だからすっごい大事。

真子:うん! セグメンテーションは「個別具体化して神経衰弱」

勝 :そう。「個別具体化して神経衰弱」だけど、裏面じゃなくて、
   カードの表面を合わせる。カードを「表」にする方法は?

真子:まずは、お客様の具体像を「個別に」1人1人描く!

勝 :それが「ステップ1:顧客像の具体化」だな。

真子:こんな感じだよね。

真子がノートを広げる。

      勝     真子    恵利ちゃん    望ちゃん

年代    中年    20代    20代     20代
性別    男性    女性     女性      女性
職業    社長    社長    2代目後継者   管理職
業種   サービス   飲食     飲食      飲食
学歴    MBA   大学     大学      大学
住む場所 マンション マンション   自宅     マンション
家族   一人暮らし 一人暮らし   両親同居   一人暮らし
趣味    スキー   スノボ   お菓子作り    料理
性格    短気    短気     温厚      温厚

勝 :この表だと、もう「ステップ2:ニーズの普遍化」をしすぎち
   ゃってるくらいしてるけどな。

真子:実際には、「マンション」とかじゃなくて、○○駅徒歩3分、
   ○○平米の、とかにするんでしょ?

勝 :そういうこと。それで、「マンション」だと粗すぎる場合は、
   「駅から徒歩10分以上」とかにする。

真子:そういう場合なんてあるの?

勝 :駅までの移動が大変だとか、スーパーから遠い場合には、宅配
   ニーズが強かったりするだろ?

真子:あー、なるほどねー。だったら宅配サービスを強化するとか、
   チラシをまくとかできるんだ。

勝 :そうやって、打ち手を考えながら普遍化していく。

真子:それで、趣味とか職業とかの項目で「括る」んだよね。それが
   「ステップ3:ニーズで人を括る」。

勝 :そう。「ニーズの共通点」が探せれば、それで括れた、という
   ことになる。「神経衰弱」でいう「カード合わせ」

真子:問題は、どんな「項目」を出すか、っていうところだよね。う
   ちのイタリアンレストランならこんな感じ。

      勝     真子    恵利ちゃん    望ちゃん

食べる量  食べ過ぎ  多い     普通      少なめ
脂モノ   大好き   大好き    ?       普通
お酒    弱い    強い     弱い      強い
彼氏・彼女 いない   いない    いない     いない
使い方   接待    女子会    1人で     1人で
重要な品  ドルチェ  お酒     ドルチェ    お酒

勝 :そうだな。

真子:それで、打ち手を考えながら「括って」いくんだよね。神経衰
   弱でカードを合わせて行くみたいに。

勝 :うまくカードが合っていれば、打ち手が決まるだろ。そうなれ
   ば、神経衰弱がうまく行ってる証拠だな。

真子:うん。この場合だと「使い方」でカードを合わせると、「1人
   で」来店される方には「お一人様メニュー」とか。

勝 :そうそう。この「項目」をどう選ぶか、っていうのも大事なと
   ころ。項目が思いつかなければ、括りようがないからな。

真子:あ、そっか! じゃあどうすればいいの?

勝 :そのために「ステップ1:顧客像の具体化」がある。そこで、
   とにかく具体化していく。

真子:具体化したとしても、「括る項目」を思いつくかどうかはまた
   難しいですよね……?

勝 :そうだよな。ある程度の「セオリー」はあるぜ。

真子:そ、そんなのあるの!?

勝 :あるよ。オレを誰だと思ってるんだ。

真子:それを早く言ってくださいよ……

勝 :じゃあ、ケーキに免じてこの超貴重な、血と汗と涙の結晶のノ
   ウハウを教えてやるか……

真子:ケーキで買えるなんて、随分やっすい「血と汗と涙の結晶」な
   んだねー、きゃははは!

勝 :オマエ、ケーキに失礼だぞ。こんなにおいしいのに……大体、
   価値は人によって違う、っていうのがセグメンテーションだぞ

真子:あ……ケーキさん、ゴメンナサイ! だから、1口もらうね!

勝 :いいけど、もう1個買ってもらうからな。

真子:「血と汗と涙の結晶」のノウハウのためならお安いご用で♪

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◆切り口1:使い方・利用場面
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勝 :ここまでは、セグメンテーション理論の前段。ここからは、具
   体的な「切り口」、つまる「括る項目」の実戦例。

真子:ふう、やっとかあ……セグメンテーションって、奥が深いねー

勝 :1冊の本にはなるだろうな。セグメンテーションに特化した本
   って、世界的にもあんまり見ないけどな。

真子:あんまり売れなさそうだよねー、マニアックで、きゃははは!

勝 :だからこの会話がすっごい貴重なんだよ!

真子:はーい、ありがたく思ってまーす。ケーキならいくつでも買っ
   てきまーす。いくらでも食べてくださーい。

勝 :コイツ……

真子:ね、ね、きっと最初の「切り口」は「使い方」じゃない?

勝 :!! な、なんでわかった!?

真子:きゃあ、あたったあ! だって勝さんいつも言ってるじゃん、
   「価値は使い方に現れる」って。売多勝名言集、だって。

勝 :その通り。「価値は使い方に現れる」。逆に言えば、使い方を
   見れば価値がわかる。だからこういうこと。

勝がノートPCを操作し、真子に向ける。真子は熱心に読み込む。

-----------< 記事要約 >------------

○母親の授乳記録、子供のお絵描き、初めてのつかまり立ちの写真。
 いつまでも残したい、大量の情報を効率的に管理。ツールを提供す
 る企業も、上手な利用法の提案活動に乗り出した。

○コクヨS&Tのスマホ対応ノート「CamiApp(キャミアッ
 プ)」(210~840円)は、手書きメモをスマホで手軽に電子
 化できる用紙。専用のアプリを使えば撮影時にカメラが傾いても自
 動補正し、画像データを電子化する。

○キャミアップは昨年9月の発売から6月末までに累計80万冊を販
 売。「ビジネスマンに普及した後は売れ行きが落ち着いた」(上土
 井プランナー)。新たな使い方として、子供が手書きしたものの管
 理に着目。

○お絵描きや初めて書いたひらがなは大切な成長記録。上土井さんは
 2歳の娘の育児記録を作成。子供のノートから面白い作品を電子化
 しネットで保管。メーリングリストで画像情報を夫や両親に送る。
 お絵描き、手紙と、子供が発信する情報はほとんど手書き。「子育
 てが忙しくても、とりあえずデータ化する“ついでログ”を提案し
 たい」と話す。

○ショットノートを先がけて発売したキングジムもプライベート市場
 の開拓に着手。ピンクや水色の新製品を投入、子育て中の母親を狙
 い、パンフレットや店頭販促で、クレヨンで描いた子供の絵や誕生
 祝いのメッセージも電子化できることをアピール。

2012/12/24 日経MJ P.16

-----------< 記事要約 >------------

勝 :ショットノートはわかるだろ? 売れたま!でも何回か取り上
   げてるしな。その競合製品がキャミアップだな。

ショットノート
http://www.kingjim.co.jp/sp/shotnote/

キャミアップ
http://www.kokuyo-st.co.jp/stationery/camiapp/

真子:なーるほどぉ! 手書きメモを電子化するのも、子供のお絵描
   きを電子化するのも「使い方」は同じなんだあ!!

勝 :そうそう。「手書きのモノをデジタル化して保存する」ってい
   う「使い方」が、「ニーズの共通点」なんだよな。

真子:そっかあ。デジタルもの、って言えば、写真だってそうだね。

勝 :「手書きのモノをデジタル化して管理・保存」が「普遍的なニ
   ーズ」で、その具体的な使い方が「会議」か「子育て」だな。

真子:ね、ね、っていうことはさ、こういう使い方をいっぱい探して
   いけば、売上上がるよね!

勝 :だからそれを「用途提案」っていうんだろうが。マーケティン
   グ戦術の王道中の王道。

真子:あ、そっか、それが「用途提案」か。

勝 :真子の会社の店、そーれ・しちりあーのにだって使えるぞ。

真子:え? え?

勝 :レシピ開発とかはどうやるんだ? メニューの作成は?

真子:あ! そうか、料理のプロセスを写真に撮って管理したりでき
   るね! 手書きのレシピもデジタル化できる!

勝 :その一部は、実際にHPとか、メニューに載せてもいいだろ?
   調理風景を載せたメニューとか、見たことないぜ。

真子:あ……確かに……何でやらないんだろう?

勝 :その意味するところに気づいてないからだろ。いっつも言って
   るけど、飲食業界はメニューを手抜きしすぎ。

真子:ホントそうだなあ……

勝 :これを、「括って広げる3ステップ」でまとめてみろよ。「個
   別具体化して神経衰弱」だからな。

真子:うん!

真子がペン先でアタマをコツコツ叩きながら、ノートにまとめる。勝
は眼を細めてその光景を見ながら、ケーキを口に運ぶ。

○ステップ1:顧客像の具体化

・商品開発担当さんが、会議の記録や、手書きのメモをスマホで写真
 に撮ってデジタル化する。それをパソコンやクラウドに保管、検索
 しやすくする。

○ステップ2:ニーズの普遍化

手書きなどのアナログモノをデジタル化して管理・保存

○ステップ3:ニーズで人を括る

手書きのモノをデジタル化して管理・保存したい人は……

・「子供のお絵描き」などの育児記録を管理・保存したい人
 →子供が小さい親、祖父母

・料理のレシピとその写真を管理する、レストランのシェフ

・結婚式や送別会とかで、手書きのメッセージと写真を一緒にして、
 プレゼント・記念に贈りたい幹事さん

真子が「ね、ね、これでどうかな?」と言いながら勝に見せると、勝
は「いいじゃないか、これ」と満足気にうなずいた。

勝 :この、結婚式とか送別会のプレゼント、っていいな。

真子:送別会の寄せ書きとかって、すっごい嬉しいんだけど、とって
   おくの、なかなか大変じゃない?

勝 :そうだよな。これなら、送別会に来られない人のメッセージも
   一緒にプレゼントできるしな。

真子:あ、確かにぃ~

勝 :真子のコレ、何がいいかって言うと「手書き」のところ。何で
   「手書きのメッセージ」にしたんだ?

真子:だって、画像だったらデジカメでやればいーじゃんん、ってこ
   とになるよね。だから。

勝 :そうそう。「手書きのを」っていうところで、ショットノート
   とかの手書きメモの「強み」が活きるよな。

真子:あ! そうか、「強みを活かす切り口」を探せばいいんだ!

勝 :そうそう……って、何だ、気づいてなかったのか……

真子:い、いや、もちろん気づいてたよ、あははは……

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◆利用場面はTPOで考えよう!
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勝 :でさ、「価値は使い方」に現れるんだけど、その「使い方」っ
   て、具体的にどう考えるんだっけ?

真子:使い方は、TPO! Time、Place、Occasion、だよね。

勝 :そうだな。まずは「Time」、時間から見ていくか。

勝が再びノートPCを真子に見せる。

-----------< 記事要約 >------------

○イオンはグループの全国約1000店で開店時間を午前7時に早め
 る。2012年6月から夏季限定で通常より1~2時間早めたが、
 期待したシニアだけでなく、若い母親や出勤前の会社員らも来店。

○シニア客のほか、サマータイム導入で出勤が早まった会社員の朝食
 用の買い物などが増えた。「子供を保育園に送った帰りに母親が買
 い物を済ませる」などの需要も取り込んだ。

○イオン約340店を運営するイオンリテールの6月1日~8月20
 日の午前中の既存店売上高は約1割増。同期間の午後を含む売上高
 もプラス。

2012/08/24 日経MJ P.5

-----------< 記事要約 >------------

真子:えっと……そうか、「時間」が「ニーズの共通点」になってる
   んだね! カード合わせの項目だ!

勝 :そう。最初はシニア層を狙ったんだろうけど、ビジネスパーソ
   ンは朝から使うし、子供を保育園に送った帰りの主婦も来た。

真子:「朝に買いたい」っていう「ニーズの共通点」があったんだね

勝 :まさにそういうこと。

真子:ってゆーかさー、会社員狙うんだったら、働いている時間は来
   れないよねー。

勝 :ホントそう思うわ。ビジネススーツを売ってる店が、朝10時
   からやってたって、ビジネスマンは行けないからな。

真子:あ、確かにそうだ。スーツ店なら、夜からでもいーよね。その
   分、夜遅くまでやってくれれば私も行ける!

勝 :それが正しいかどうかはともかくとして、「時間」はニーズの
   切り口になる。真子の店もそうだぜ。

真子:え?

勝 :なんと、昼にはランチをする人が来るだろ?

真子:そりゃそうだけど?

勝 :で、夕方にはお茶する人が来ないか? 同じ人でも、だぞ。

真子:あったりまえじゃん……って、そうか! 同じ人でも、時間に
   よってニーズが違う!!

勝 :そう。だから、朝のオレと、昼のオレと、夜のオレは、別人と
   考えた方がいいな。

真子:そうだねー。だから「時間」で括ればいいんだ!

勝 :そういうこと。外食だと、朝には朝食メニュー、っていうのは
   当たり前だけど、他業界ではそうでもないぞ。

真子:例えば?

勝 :例えば、平日と休日は食べたいモノが違うよな?

真子:そうだね。休日はちょっとラクして贅沢したい。

勝 :そこまで考えてる小売店は無いよな? 基本的にずっと同じモ
   ノ売ってる。朝も夜も、平日も休日も。

真子:あ、確かにさー、土曜日はケーキ充実させるとかしてもいーよ
   ねー。

勝 :例えば、そういうこと。オペレーション上難しい、っていうの
   はわかるけど、POPくらいは日替わりにできるだろ。

真子:うん! 「休日にはおうちカフェ」とかね。

勝 :っていうふうに、「時間」っていうキーワードで「括って広げ
   る」ことができるよな。

真子:ねー、「時間」だけでそれだけ発想できるってことは、TPO
   の組み合わせなんて無限だよね?

勝 :そう。まさに無限。次は、TPOの「P」な。

勝が再びノートPCを操作し、真子に向ける。

-----------< 記事要約 >------------

○居酒屋チェーン大手のコロワイドは9月から料理の宅配を開始。主
 力業態店の「北海道」で専用メニューを用意し、近隣の会社などに
 配達。「オフィスで手軽に宴会を済ませる会社が増えた」(同社)
 ことから企業の利用は堅調。節約志向が強まり、居酒屋などの宴会
 に行かず、オフィスでビールやおつまみを楽しむ会社員は多い。

○モンテローザはファミリーマートの子会社が運営する通販サイト
 「ファミマ.com」を通じて、店舗メニューの販売を開始。居酒
 屋が通販モールで料理を販売するのは珍しい。大人数用の人気メニ
 ューを中心に約10品を用意、2~3000円程度と値ごろな価格
 で提供。人気メニューの一つ、餃子を3種類詰めた「バラエティー
 餃子3種セット味くらべ!」は2599円。

○「買い物に行くのをためらうシニアや主婦ら新規客の利用が少なく
 ない」(同社)と、思わぬ販促効果に驚く。常連客のほか、夕食用
 に注文する家庭も増えたという。

2012/10/19 日経MJ P.14

-----------< 記事要約 >------------

真子:TPOの「P」はPlace、場所だから……そうか、宅配っ
   て「場所」を広げてるんだね。

勝 :そうそう。「場所」によってニーズが変わる。

真子:そうか、「外に出たくない」っていう「ニーズの共通点」だ!

勝 :「外に出たくない」理由は色々だけど、どんな感じだと思う?
   ノートにまとめてみろよ。

真子:うん。えっと……こんな感じかな?

真子が勝にノートを見せる。

○ビジネスパーソン:居酒屋で飲むと、お金がかかる
○主婦:子供から目が離せない、家事で忙しい、
○シニア:外に出るのが、肉体的に面倒

勝 :そうそう。それが、それぞれの「個別具体的なニーズ」だな。
   それを「普遍化」すると要は「外に出たくない」ってなる。

真子:その意味では「宅配」っていう「打ち手」は一緒だもんね。だ
   から「括れる」んだねー。

勝 :こないださ、夜イタリアンレストランに言ったら、子供連れの
   ご家族が来ててさ……

真子:お子さんが騒ぐから大変じゃない?

勝 :だからテーブルを離して、テーブルでお絵描きとかやってた。

真子:うわー、すごいねー。そうか、そういう対応もアリか……

勝 :子育て中のお母さんだって、っていうか、子育て中のお母さん
   こそ、イタリアンとかで気張らししたいんだよな。

真子:あ! だから宅配か! ケータリングやった方がいいかな……

勝 :いや、別にケータリングやろうって言ってるわけじゃなくて、
   「ニーズの共通点」の例、だからな。

真子:うん。わかってる。

勝 :あと、TPOの「O」は、まさに使い方。ツイッターのフォロ
   ワーさんから、面白いつぶやきああって……

真子:なになに?

勝 :介護用の「こぼさない食器」を買ったら、乳児用のと同じモノ
   になったんだって。

真子:あー、なるほどぉ!! 「こぼさない」という「使い方」は、
   祖父母も赤ちゃんも一緒なんだ!

勝 :そうそう。まさに「ユニバーサル」ってそのことだ。

真子:持ちやすいとか、食べやすい、っていうニーズで括るとそうな
   るんだあ……ホント年齢関係ないね。

勝 :価値は使い方に現れる。「使い方」は具体的にはTPO。だか
   らまずは使い方・TPOを考えるのが基本になるな。

真子:TPOそれぞれの共通点とか違いとかを見ていけばいい、って
   ことだよね? それで「神経衰弱」するんだよね?

勝 :そういうこと。TPOを切り口として、神経衰弱する。まずは
   これが基本中の基本。

真子:基本中の基本、なんて軽くおっしゃいますけどー、すごく難し
   いよ、これ?

勝 :そりゃそうだよ。でも「20代女性!」なんていうのじゃお話
   にならない、っていうのがよくわかるだろ。

真子:うん!

「ねー、セグメンテーション」って、「人間」に関することだよね?
「そうだな。人間心理とかも含めて」
「ってゆーことはさー、勝さん、人間への洞察が深いってこと?」

勝がケーキの最後の一口を口に運び、「何が言いたい?」と訊く。

「女性心理がわかる勝さんは、きっとモテるんだろーなーと思って」
「ん、げ、げほげほ……」
「ど、どうしたの?」
「痛いところ突きやがって……むせただろうが」
「きゃーははは、そこ、勝さんの弱点かあ……」
「モノを売る方法はわかるんだけどな……」
「自分を売るのもモノを売るのも一緒だ、とかゆーのかと思った」
「……」
「そーだよねー、勝さんはホンット女心、わかってないもんねー」
「……ケーキ、お代わりな」
「あーごまかした。でも真子は、そんな勝さんでも、い、い、よ♪」
「いいから、もう1つ。今度は、チョコレートムース」
「やだ、ホントにもう1つ食べるの?」
「もう1つですむと思ってるのか?」
「はいはい、買って来ますよー。エスプレッソもだよね?」
「ああ」

じゃーちょっと待っててねー、と真子が立ち上がると、勝はふう、と
息を1つつき、再びノートPCを操作し始めた。

次号に続きます!

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◆今日のまとめ
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●セグメンテーションの切り口の基本はまずは「使い方」。商品の利
 用場面・TPOを考えよう!

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━特別編Vol.209(累計0985) 2013/01/28

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●セグメンテーションやベネフィットは「階層」で考えよう。抽象度
 で「階層化」しよう!

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◆まずは、前号の復習から!
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*本編の「今の時間」は、年が明けた1月1日の昼過ぎです。

1月1日、初詣に出かけた帰りにカフェに寄った勝と真子。カフェで
レッスンの続きが始まっている。

真子がトレーを持って、勝がいるテーブルに戻ってくる。

「はい勝さん、エスプレッソとケーキのお代わりおまたせー」
「お、ありがと」

トレーの上に再びケーキとデミタスカップが所狭しと並べられる。

「最近、カフェとかコンビニののスイーツのレベル高いよな」
「ホントだよねー。うちの店もうかうかしてられないなぁ」
「冷凍技術とかすごいらしいな」
「そーなのよー。コーヒーを冷凍してるところもあるみたいだよ」
「コーヒーって、淹れた液体のコーヒーを冷凍、か?」
「うん、そうだよ」
「へえ、その凍ったコーヒーをアイスコーヒーの氷にしたいな」
「あー確かにぃ。氷だと薄まらないもんね」
「そうそう。アイスコーヒーって、薄くなるからなあ……」
「勝さん、濃いの好きだもんねー。エスプレッソの氷割りとか♪」
「そうか、コーヒー氷つくっときゃいいのか」
「勝さん、めんどくさがりなのにそういうところはマメだよねー」
「コーヒーだけに、マメだよな」
「え? あ、コーヒーマメ、きゃーははは、出たぁ、オヤジ!」
「ともかく、始めようぜ」

勝がエスプレッソを一口飲んで、真子に促した。

真子:前号の復習だよね。今はセグメンテーションの「括って広げる
   3ステップ」をやってるところ。

真子が自分のノートを勝に見せる

○括って広げる3ステップ

ステップ1:顧客像の具体化
ステップ2:ニーズの普遍化
ステップ3:ニーズで人を括る

真子:それで、前号は、セグメンテーションの「切り口」っていうか
   「括り方」の実戦例を見てきたの。

勝 :そうだな。それで?

真子:「価値は使い方に現れる」から、まずは「使い方」で括る、の
   が基本形。

勝 :例えば?

真子:ショットノートとかキャミアップみたいなスマホ用メモだと、
   「手書きの大事な何かをデジタル化して記録」っていう使い方

勝 :すると、どうやって広げられる?

真子:元々はビジネスパーソンの会議用で、それを子供のお絵描きと
   か、シェフのレシピメモとか、送別会の寄せ書き、とか。

勝 :そうだよな。全然違う人を括れる、すなわち、「広げられる」
   ということになる。

真子:「使い方」が同じ人を考えてみる、ってことだよね?

勝 :うん。ただ、そこでいう「使い方」は、ステップ1の個別具体
   的な使い方じゃなくて、普遍化された使い方、だな。

真子:それが「手書きの大事な何かをデジタル化して記録」っていう
   ことでいいんでしょ?

勝 :そうだな。

真子:「こぼしにくい食器」という使い方なら、乳幼児と介護の方が
   括れる!

勝 :それ、面白いよな。で、「使い方」は具体的にどう考える?

真子:TPO!  Time、Place、Occasion! 例えば「朝スーパー
   に行く」っていう「時間」のニーズで括る!

勝 :そうすると、どんな人が括れる?

真子:早起きするシニアの方とか、子供を保育園に送った帰りのお母
   さんとか。

勝 :OK。これがまずは基本形になる。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆ニーズを括って広げる練習問題 「女性のランチタイム」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

勝 :じゃあ、今から練習問題。マコちゃん、がんばってねー。

真子:へ、れ、練習問題? あ、はーい、がんばりまーす。

勝 :じゃあ、これが問題文ですねー。よーく読んでねー。

勝が真子にノートパソコンを向ける。

-----------< 記事要約 >------------

○働く男性のランチ代はワンコイン、女性は千円札1枚と言われる。

○新生銀行の2012年調査では男性会社員の昼食代は510円と
 11年より25円減。ランチに使う時間も減り、12年は平均
 19.6分で、83年(33.0分)の約2/3。「食べない」
 「5分以下」が計4.4%、食事は「1人で」(47・3%)が
 「同僚と」(44・2%)を上回った。「同僚と全く行かない」人
 も19.6%。食後に「喫茶店に入って友人などとおしゃべりをす
 る」は、83年の36.4%から12年は1.2%に減少。

○一方女性では、日経MJがプロントコーポレーションの協力を得て
 12月にプロントファン女性の会「プロン女」35人に聞くと、
 1回のランチ代は半数近い16人が「800~1000円」で、週
 1~2回は1千円を超す人も14人いた。

○女性は「夜はプライベートを優先したい分、昼間に時間をかけて食
 事し、同僚とのコミュニケーションを円滑にし、友人との会話を楽
 しみたいのではないか」(プロント)と解説する。

○実は1分当たりの支払金額で比較すれば、男女とも20円前後で差
 は少ない。ランチに対する「時間価値」への評価が見てとれる。

2012/12/21 日経MJ P.16

-----------< 記事要約 >------------

真子:はーい、女性は確かにそんな感じだと思いまーす。うちの店の
   ランチも千円前後ですけど、女性がたくさん来まーす。

勝 :では問題その1です。男性会社員と女性会社員のニーズの違い
   を明確にしなさい。

真子:はーい。カンタンでーす。

勝 :お、自信ありげですねー。じゃあノートに書いてねー。

真子がノートパソコンをチラと見ては、スラスラと書き、勝に「ハイ
せんせー、できましたー」と言って見せる。

       男性会社員     女性会社員

T:   19.6分       1時間前後

P:   ファストフード     レストラン

O:   1人でさっさと     同僚とコミュニケーション

単価    510円       1000円前後

勝 :よくできましたねー。ハナマルをあげましょう。

真子:この問題をイタリアンレストランの社長である私が解けなかっ
   たら大問題でーす。

勝 :そんなことよく言えますねー。「新人OL、つぶれかけの…」
   の最初の方で泣いてたのはどこの誰かなあ?

真子:せんせー違いまーす。泣いてたのはその後の「新人OL、社長
   になって……」の方でーす。

勝 :あ、あれ? 先生間違えたかな? ゴメンなさいねー。

真子:価値は使い方に現れまーす。カンタンすぎまーす。

勝 :じゃあ第2問。「ランチにおいて、この女性会社員の個別具体
   的ニーズに基づき、男性会社員へと括って広げなさい」。

真子:その問題も来ると思って読んでましたー。

勝 :へー、すごい自信ですねー。楽しみですねー。

真子がサラサラとノートに書き、「はいセンセー」と勝に見せる。

○括って広げる3ステップ

ステップ1:顧客像の具体化

・26歳、都心部で働く女性会社員。スーツを着て、コーチのバッグ
 を持っている。仕事について3~4年たち、職場の雰囲気にも慣れ
 てくる。先輩と仕事の話も含めてコミュニケーションを取るために
 先輩と2人で来店。今起きている問題などをさりげなく相談して、
 アドバイスをもらったりする。

ステップ2:ニーズの普遍化

・同僚や先輩と昼食を一緒に取って、コミュニケーションを深める。
 会社では話しにくいことも話しやすい。夜に飲みにいってもいいけ
 ど、昼食はどうせとるものだから、その方が効率的。

ステップ3:ニーズで人を括る

・35歳、男性会社員。お客様または取引先と、コミュニケーション
 を深めたい。夜に一緒に飲みに行く時間はお互いに取れないが、昼
 食なら大丈夫。ちょっと頼みにくいことも頼める

・会社宛で領収書を出して欲しいとお願いされることも結構あること
 から、「会社」のニーズであることがわかる。

勝 :おー、すごいですねー。ハナマルでーす。

真子:へっへー。実際、こーゆーシーンはよく見まーす。男性だけで
   来るお客様は、大抵仕事の話してまーす。

勝 :領収書をもらうかどうか、っていうのは「法人需要」かどうか
   を示す、わかりやすいサインですねー。

真子:そーなんでーす。なんと、会社名までわかってしまいまーす。

勝 :するとどうなるんですかー?

真子:直接使うことはしませんが、話の中身とかが具体的に想像でき
   まーす。

勝 :もっとやるべきことはありますねー。混んでるときは仕方ない
   としても、空いてたら「どんな気遣い」ができますか?

真子:え? どんな気遣い?

勝 :半分商談って感じの人は、見ればわかりますよねー?

真子:うん。スーツ着てくるし、同僚同士で来る場合とは、雰囲気が
   ちょっと違いまーす。

勝 :だからどんな席にご案内すればいーですか?

真子:あ……そっか、マダムとはちょっと離した席の方がいい!

勝 :ちょっと待て、まず「マダム」がランチに来てるんだな?

真子:え? そうですけど……

勝 :マダムは何しに来てるんだ? ランチ食べに、なんていう答え
   だったら失格。

真子:え……? あ! そうか、マダムも「コミュニケーション」を
   深めに来てる!

勝 :そうそう。「マダムのおしゃべり」もコミュニケーションだか
   ら、基本的なニーズは同じ。

真子:そっかあ……

勝 :っていうか、真子の会社の店、そーれ・しちりあーのに来る方
   はみんなそうだろ? 単なる「栄養補給」なら違う店に行くよ

真子:あ、そりゃそうだねー。

勝 :じゃあ戻って、さっきの商談に来るビジネスパーソンは、隅っ
   このテーブルにするくらいの配慮はあっていいよな?

真子:そうですけど……えっと……ちょっと待って……あ、そうか!
   わかった!!

勝 :へ?

真子:ステップ2の普遍化で終わらないで、ステップ3でまた違う顧
   客像を「具体化」する理由が今わかりました!!

勝 :なになに?

真子:ステップ3で顧客像を「具体化」することで、今みたいな、
   「具体的な打ち手」に落ちてくるんだ!!

勝 :それはその通りだけど、さっき「カンタン」とか言ってたのに
   今ごろそれに気づいたのか?

真子:だ、だってー……

勝 :とにかくそういうこと。普遍化した後で、「括る」っていう表
   現にしたのは、「具体像をまとめる」ってことだから。

真子:「昼食でコミュニケーションを深めたい人」っていう普遍化で
   止めちゃうと、「席をどうする」っていう発想にならない!

勝 :だからそういうことだよ。顧客像は常に具体化。

真子:なるほどねー。

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◆「セグメンテーションの階層」
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勝 :だから、セグメンテーションには「レベル」があるんだよ。

真子:えっと、カンタン・難しいの「レベル」?

勝 :じゃなくて、「階層」。「レイヤー」って言った方が正確だけ
   ど、「レイヤー」っていう表現があまり一般的じゃないからな

真子:どういうことですか?

勝 :さっきの記事だと、「男性と女性でランチニーズが違う」って
   話だったよな?

真子:うん。

勝 :だから、その「ニーズの違い」を明らかにしてみよう。どう違
   うんだっけ?

真子:男性は「20分でさっさと食べたい」で、女性は「同僚とコミ
   ュニケーションしたい」

勝 :つまり、男性は「栄養補給」が中心で、女性は「仲良くなる」
   ことがその本質だよな?

真子:あ、うん、そうだね。

勝 :こうやって「カンタンな言葉で要約」することは、普遍化する
   ときの大事なポイントの1つ。

真子:確かに「同僚とコミュニケーション」って「要は」仲良くなる
   ことだね。

勝 :そう、「要は」粗っぽく要約することが大事。じゃあ、さっき
   の対比表に加えていこうぜ。

真子が「うん!」と元気よく返事し、ノートに書き加えていく。

       男性会社員       女性会社員

T:    19.6分       1時間前後

P:    ファストフード     レストラン

O:    1人でさっさと     同僚とコミュニケーション

単価    510円        1000円前後

ニーズ   早く栄養補給      仲良くなる
の違い

勝 :まずは、これが第1段階の「ニーズの違い」。真子の店、そー
   れ・しちりあーのは、この「右側」をターゲットにしてる。

真子:うん、左側の「早く栄養補給」ニーズは、うちの店は狙ってな
   いし、やろうとしてもムリ。ファストフード系に勝てない。

勝 :そうだよな。で、この右側の「仲良くなる」っていう「ニーズ
   の共通点」が、どうやってわかったかと言うと……

真子:「括って広げる3ステップ」のステップ1~ステップ2、個別
   具体化して、ニーズを普遍化することでわかった!

勝 :うん。ステップ3で「括る」わけだけど、それが次の階層のセ
   グメンテーションになる。2段階目の「ニーズの違い」だな。

真子:え? 次の階層のセグメンテーション?

勝 :この「仲良くなる」っていう共通ニーズを持つ人は、今までど
   んな人が出てきた? ノートに書いてみろ。

真子:えっと……

1)先輩と2人で来る女性ビジネスパーソン

2)おしゃべりに来るマダム

3)取引先と商談をする男性ビジネスパーソン

勝 :そうそう。これが、真子の店のランチ時間の「セグメント」だ
   ろ? 3つに分けるとすれば、さ。

真子:え……あ、そうだ! そうなる!

勝 :実は、この「括る」段階でも、「個別具体化して普遍化」とい
   うプロセスを繰り返してる。

真子:どういうこと?

勝 :例えば「2人で来ておしゃべりする37歳専業主婦、子供は学
   校に行っていて……」を「括って」マダム、って言ってるだろ

真子:あ……ホントだあ! いきなり「おしゃべりに来るマダム」っ
   てなってない。

勝 :だから、「個別具体化して普遍化」っていうのを、何回も繰り
   返してるんだよ。「違うレベル」で、さ。

真子:そっかあ……

勝 :で、「仲良くなる」という「共通ニーズ」の下で、違いがある
   わけだろ?

真子:うん! 男性ビジネスパーソンは、少し静かな方がいい、とか

勝 :そうだよな。でもさ、同僚とおしゃべりする女性ビジネスパー
   ソンと、マダムは、その意味ではニーズは一緒だろ?

真子:あ……そうか! ちょっと騒げるくらいの方がいい、っていう
   ニーズだ!

勝 :そうそう。だから、マダムと女性ビジネスパーソンは、その意
   味では、「もう1回括れる」。ということは?

真子:そうか! 実はセグメントは3つじゃなくて、2つかも! 女
   性ビジネスパーソンとマダムを括れる!

勝 :そうかもな。そこで確認すべきは、その2つにニーズの違いが
   あるかどうか。無ければ一緒にしてしまえばいい。

真子:なあるほどぉ!

勝 :「席」という意味では「女性ビジネスパーソン」と「マダム」
   は一緒でもいいだろ?

真子:うん、近い席にご案内しても大丈夫! でも男性だったら、席
   を離した方がいい!

勝 :ほら、打ち手がこの「階層」に応じて変わるだろ?

真子:ホントだあ……

勝 :だからセグメンテーションするときは、「どの階層での話か」
   という「レベル感」を意識したほうがいい。

真子:う、うん……そうだね……全然「カンタン」じゃないや……

勝 :当たり前だ。オレが「表現の難易度」を下げてるから簡単そう
   に聞こえるだけだ。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆セグメンテーションの階層=ベネフィットの階層=言葉の階層
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勝 :でさ、これは「セグメンテーション」の階層でもあるけどさ、
   それはすなわち「何の階層」を意味している?

真子:え? 人の階層?

勝 :ここまでやったことをあっさりひっくり返すなよ。セグメンテ
   ーションってそもそも何だよ。

真子:ニーズが違うから分ける……あ、そうか! 「ニーズの階層」
   だ!

勝 :そうだな。ニーズすなわち「ベネフィットの階層」でもある。
   さっきの、ランチの事例でやってみようぜ。

真子:うん。最上位階層が「仲良くなる」だよね……その次は……

真子がノートにまとめ、勝に見せる

 階層1         仲良くなる

 階層2  楽しく語らいたい      じっくり話したい

勝 :そうだよな。これが「ベネフィットの階層」だよな。これ、上
   下で何が違う?

真子:上に行く方が「言葉の抽象度」が高い! 逆に言えば、下に行
   くと「言葉の具体度」が高まる!

勝 :そう!! 実は、「言葉」って、「抽象度の階層」を持つんだ
   よ!

真子:えー……わかりませーん。例えば?

勝 :例えばさ、よく「うちの商品は安全」っていうけどさ……それ
   ってどういうことだ? 例えば食品でいう「安全」って何だ?

真子:無農薬野菜、とかじゃない? あと添加物不使用とか?

勝 :だろ? 「安全」と「無農薬」は言葉の「抽象度の階層」が全
   然違うだろ?

真子:なるほどねぇ……

勝 :さらに言えば、その中間に「低毒性」っていう階層が入るな。
   「安全」と「無農薬」では、階層が違いすぎる。だから……

勝が真子のノートに書いていく
 
  安全 
   → 低毒性 
     → 無農薬
     → 有機肥料使用

   → 添加物不使用
     → 添加物◇◇不使用
     → 添加物××不使用

勝 :ちなみに、無農薬とか添加物不使用が安全とは限らない。安全
   な添加物もあるだろうから、あくまでも説明の例だぞ。

真子:うん。確かに「安全」って言っても色々あるねぇ……

勝 :いわゆる「ロジカルシンキング」的な話。低毒性って言っても
   色々あるし、添加物にも色々あるだろ。

真子:あとさ、「顔が見える農家から買ってる」とかもあるよね?

勝 :だからそういうのを全部「階層化」していくわけ。そうすると
   すごいことになる。

真子:たいへんだあ……こういうのはどうすればできるの?

勝 :達人マーケタークラスになると、その「言葉の抽象度の階層」
   をアタマの中にデータベースとして持ってる。

真子:アタマの中に、この表がいっぱいあるんだ!

勝 :そうそう。日本語の言葉が階層化されてる。

真子:ふええ……そっか、だから自由自在に「抽象度のボリュームツ
   マミ」をコントロールできるんだ!

勝 :そういうこと。

真子:勝さんのアタマの中にもあるの?

勝 :モノによっては、だけどな。

真子:えー、じゃあ教えてよー……

勝 :日本語の言葉、いくつあると思ってるんだよ。大体そんなの人
   に頼るなよ。みんな苦しんで身につけるんだよ!

真子:はーい。

勝 :こういう「階層化」って、自分の経験とかの「暗黙知」を「形
   式知」化するってことだから、やってみるといいぞ。

真子:うん、うちの業界についてだけでもやってみようっと。

勝 :じゃあ戻って、さっきの「ベネフィットの階層」に、「人」と
   「打ち手」をつけてみろよ。

真子:うん! それはできそうだ。

 階層1         仲良くなる

 階層2  楽しく語らいたい      じっくり話したい

 ○おしゃべりに来るマダム    ○取引先と来る男性ビジネス
 ○先輩と来る           パーソン
  女性ビジネスパーソン

 打ち手  それぞれに席をまとめる。

勝 :そうそう。これで人がうまくはまってる感じはするか?

真子:うん! 「括れた感」がある!!

勝 :その「括れた感」があれば、うまく括れている。で、この場合
   は「席」っていう「打ち手」が変わるだろ?

真子:ねー、食べ物っていう「打ち手」も変わるんじゃない? 男性
   だと、量が欲しいんじゃないの?

勝 :そうだよな。それも「打ち手」だよな。メニューを分けてもい
   いし、今の世の中の流れだと……どうなってる?

真子:え?

勝 :お客様が好きなだけ食べられるようにすれば、その「量」の問
   題は解決するだろ?

真子:あ! バイキングだ!! それなら確かに食べたい人は食べた
   いだけ食べられる!!

勝 :そうそう。バイキングのメリットはこの「食べたいものの人に
   よる違い」をお客様に任せてしまえること。

真子:そっか! オーダーを取る人件費が減るだけじゃないんだ!

勝 :そういうことだな。「人によって打ち手を変える」のは大変だ
   から、一緒にできるならしてしまった方がいい。

真子:バイキングが人気があるのって、その理由もあるんだろうね。
   グループで来るときに「好みの違い」を考えなくていいから。

勝 :あとバイキングなら「量の違い」も考えなくてよくなる。

真子:あ、そっか。好きな分だけ食べられる。

勝 :ちなみにBtoBでも同じだぞ。BtoBの「ベネフィット」
   は何だっけ?

真子:「利益」を上げること!

勝 :それを階層化すると、その下には何が来る?

真子:えっと利益=売上-費用、だから、売上と費用!

勝 :そうだな。「売上」を階層化すると?

真子:え?

勝 :「新人OL、社長になって……」*でやっただろうが。
   まずは「客数×客単価」で、次は?

*「新人OL、社長になって会社を立て直す」 佐藤義典著
http://ow.ly/6s63d

真子:えっと……そうだ、「売上5原則」だ!

勝 :そうそう。P.79。じゃあ「費用」を階層化すると?

真子:えっと……レストランならFL*かな。材料原価と人件費。

*Food and Labor 

勝 :それでもいいし、変動費と固定費、みたいな分け方もあり得る
   よな? FLだと家賃とかが入ってこないからな。

真子:あ、そっか。

勝 :今の「階層」をまた図にしてみろ。

真子が「うん」と言って、ノートに書いて勝に見せる。

 階層1            利益
 
 階層2      売上            費用
 
 階層3    売上5原則        変動費   固定費

勝 :そうだな。BtoBだと、この階層のどこかに貢献することが
   「お客様の利益」になる。

真子:どこに貢献するのか、具体化した方がお客様に「刺さる」って
   ことだよね?

勝 :そう。固定費って言っても色々ある。家賃、人件費……

真子:ねー、でもその切り口って色々あるよね?

勝 :そうだよ。例えば、売上5原則の「新規顧客獲得」の下には、
   どんな階層があり得る? 真子の知ってるフレームワークで。

真子:え? 私が知ってる……あ! マインドフローだ!!

勝 :そうそう。新規顧客を取るっていっても、「認知」なのか「行
   動」で止まってるかによって、顧客企業への提案が変わる。

真子:そうかあ……うわあ、大変だあ!

勝 :だから「適切な切り口」を探す。もちろん「顧客企業によって
   違う」から……?

真子:あ、同じような考え方をする会社を「括る」んだ! 

勝 :そういうこと。セグメンテーションってここまで考えるんだ
   ぞ。これでも、「カンタン」なんて言うか?

真子:もう……意地悪……

勝 :この「ニーズの階層」「言葉の階層」なんて、メチャクチャ高
   度な話だからな。

真子:そうだね……ね、言葉のデータベースを持てばいいんだよね?

勝 :さらに言うと、「誰の言葉」だ?

真子:あ! 「お客様の言葉」! そうか、お客様の言葉をたくさん
   集めて、「階層化」すればいい!

勝 :そうだな。それならBtoBでもBtoCでも同じことだ。と
   言っても、かなり高度な話だけどな。

真子:だから「セグメンテーション」が難しいのかぁ……

勝 :それもある。手法の問題もあるし、言葉のニュアンスを感じ取
   る「感度」も必要になるからな。

真子:うーん、先は長いなあ……

勝 :だから、どうしても「経験」が必要になる。それはもうしょう
   がない。

真子:経験すれば、できるようになるかな?

勝 :ちゃんと「形式知」にする努力を怠らなければ、な。

真子:じゃあ頑張ろうっと。

「ね、ね、勝さんと真子は同じセグメントだよね?」
「なんでそんな失礼なことがあっさり言えるんだ」
「だって、私達、『食べ物は質より量』セグメントでしょ?」
「誰が「質より量」だよ。それはオマエだろ」
「だって、普通の人はケーキ2個も食べないじゃん、きゃははは」
「うぐ……オレは「質より量」じゃない、「多量」なだけだ」
「きゃはは、「量」は認めるんだね」
「まあ、そうだな。ここのカフェだってケーキの「質」はいいぞ」
「だったらさー、ジャンボケーキとかあればいいのにね」
「それは飽きるからダメ。色々なモノがたくさんあった方がいい」
「あ、ケーキバイキングかあ……」
「そうそう。そういうの」
「あ、じゃあ今度ケーキバイキング連れてってあ、げ、る」
「は?」
「だって、男性1人は入りにくいでしょ? 一緒に行ってあげる♪」
「ケーキバイキングは行きたいけどな……あ、恵利ちゃんと行くか」
「だ、だだだ、ダメよ!! 大体、恵利は自分がケーキ売ってるよ」
「じゃあ望ちゃんと……って同じか……」
「勝さんの知り合いの女の子って恵利と望ちゃんしかいないの?」
「……大きなお世話だ」
「だから真子が行ってあげるって言ってるのにぃ」
「まあオマエとだったら気兼ねしなくていいから、いいか……」
「何よー、こんな美女と出かけるんだから気兼ねしなよー」

勝は、2つめのケーキをつまみながら、エスプレッソの入ったデミタ
スカップを口に運ぶ。

「まさか……3つめのケーキなんて言わないよね?」
「もう少ししたら、3つめな。次は何がいいかな……」
「うわあ……でも私も食べようっと♪」

次号に続きます!

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◆今日のまとめ
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●セグメンテーションもベネフィットも「階層」で考えよう。抽象度
 の階層をデータベースにしよう。

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━特別編Vol.210(累計0986) 2013/01/31

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●セグメンテーションの階層は「戦場・競合」の階層。ベネフィット
 で「戦場・競合」を「階層化」しよう!

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◆まずは、前号の復習から!
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*本編の「今の時間」は、年が明けた1月1日の昼過ぎです。

1月1日、初詣に出かけた帰りにカフェに寄った勝と真子。カフェで
レッスンの続きが始まっている。

周りは空席がほぼないほどに混雑している。

「ねー、やっぱりお正月は混んでるねー」
「まあ、今混まなかったらやっていけないわな」
「お正月が終わったら、空くかな?」
「そうだろうな。春くらいなら籠もって執筆するのにいいかもな」
「あ、そうだねー。温泉のある宿で、和室でお仕事」
「それ、昔の小説家みたいでいいな。やろうかな
「じゃあ真子ちゃんも一緒に来てあ、げ、る、はーと♪」
「それじゃ意味ねーだろ。オマエが来たら仕事にならねー」
「あー、真子ちゃんの魅力で気が散っちゃうんだぁ!」
「オマエはうるせーからだよ!」
「えー、本当に集中できてたらうるさいのは気にならないでしょ?」
「オマエはムチャクチャなことするだろうが」
「勝さんが無視するからじゃん」
「ほら。結局オマエのせーだろうが」
「そんなことないもん」
「とにかく、再開するぞ」
「はーい」

真子:前号は「括って広げる」練習問題をやりました! ビジネスパ
   ーソンのランチニーズ。こんな感じ!

真子がノートを広げる。

       男性会社員     女性会社員

T:   19.6分       1時間前後

P:   ファストフード     レストラン

O:   1人でさっさと     同僚とコミュニケーション

単価    510円       1000円前後

勝 :「価値は使い方に現れる」って、売多勝名言集の言葉通りだよ
   な。TPOがわかれば、ニーズがわかる。

真子:うん。明確にニーズが違う。もっと進んで、「セグメンテーシ
   ョンの階層」をやったんだよな。

勝 :そうだな。「セグメンテーションの階層」は、結局何の階層に
   なる??

真子:セグメンテーションは、「ベネフィット」で括るから「ベネフ
   ィットの階層」になる!

勝 :例えば?

真子:例えば、「女性ビジネスパーソンのランチニーズ」は、「同僚
   とコミュニケーションして仲良くなること!」

勝 :それで?

真子:「ランチで話して仲良くなる」がベネフィットだけど、それを
   さらに「具体化」して階層を落としていく!

真子が勝にノートを見せる

 階層1         仲良くなる

 階層2  楽しく語らいたい      じっくり話したい

 ○おしゃべりに来るマダム    ○取引先と来る男性ビジネス
 ○先輩と来る           パーソン
  女性ビジネスパーソン

 打ち手  それぞれに席をまとめる。

勝 :それで?

真子:それで、階層2のところが、セグメンテーションで、うちの店
   の顧客もそれで「括れる」!

勝 :括れるとどうなる?

真子:打ち手が変わる! ご案内する席を変えるとか、フードメニュ
   ーをセグメントごとに充実させるとか!

勝 :OK。それでいい。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆セグメンテーション・ベネフィットの「階層構造」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

真子:ねー、この「階層」ってまだわかってない感じがするぅ!

勝 :じゃあ、この「階層構造」をきちんとやっておくか。

真子:うん!

勝 :正確に言えば、この「階層1」もセグメンテーションの切り口
   の1つになってるんだよな。

真子:え?

勝 :この「階層1」の上に、「階層0」があってさ、それは「ラン
   チのニーズ」みたいな、ばくっとした話。

真子:あ、なるほど。もっと「抽象度」を高めるんだね。

勝 :そうそう。すると、ランチで「仲良くなる」と同階層、すなわ
   ち階層1で並列にあるニーズには、他に何がある?

真子:速く安く満腹! とか?

勝 :いや、「仲良くなる」と同レベルの抽象度にしようぜ。それだ
   と具体性が少し高すぎる。

真子:そっか……じゃあ「栄養補給」とか?

勝 :そうだな。それが階層1。それってさ、さっきの最初の図の話
   だろ? TPOで違う、っていう……

真子:え……あ! ホントだあ! ここでもう「男性会社員」と「女
   性会社員」で分かれてる!

勝 :それで、その「栄養補給」の下に、階層2がある。例えば何が
   ある?

真子:速く食べたいとか?

勝 :そうだよな。そこにはどんな「人」が入ってくる? 「ニーズ
   と人は常にセット」で考える。

真子:えっと……ランチに時間が取れない男性ビジネスパーソンとか
   じゃないかな?

勝 :だからそれはどんな人なんだよ? 人って言うか「場合」で考
   えた方がいいな。

真子:なんで?

勝 :だってさ、真子の店に来る男性ビジネスパーソンでも、速く食
   べたいから牛丼屋に行く「場合」もあるだろ?

真子:あ、そうか! 「場合」によって違うんだ!

勝 :そう。それが「TPO」。だから、人じゃなくて「場合」すな
   わち「TPO」とか「ニーズ」で考える。

真子:そうか! だから「ニーズと人は常にセット」なんだ! これ
   売多勝名言集に加えよう。ちゃんとメモして……っと。

勝 :ちょっと図にしてみ。真子はその方が考えやすいだろ?

真子:何その私が「物わかり悪いコちゃん」みたいな言い方。まあ実
   際悪いけどさ、きゃははは。

勝 :いーからやれ。

真子がノートにまとめ、勝に見せる。

○ビジネスパーソンのランチニーズ

階層0       ビジネスパーソンのランチニーズ

階層1     仲良くなる          栄養補給

階層2 楽しく語らう  じっくり話す   速い食事  お腹一杯

顧客像 ○おしゃべりに ○取引先と来る  ○会議が  ○朝食抜
     来るマダム   男性会社員    近い人   いた人
    ○先輩と来る
     女性会社員

勝 :まあこんな感じかなあ……「会議が近い人」って?

真子:13時から会議ってときは、12時半頃から資料をコピーして
   ホチキスして、って忙しいから食事を速くすませたい!

勝 :なるほどな。そういう「場合」は、男女問わずあるよな。

真子:うん。

勝 :モレはありそうだけど、「階層化」するイメージはこんな感じ
   だな。これでつかめたか?

真子:うん! でもさ、セグメンテーションって、結局どの「階層」
   の話になるの? 全部?

勝 :どう思う? 真子の店、そーれ・しちりあーのの場合は?

真子:えっと……階層1の「栄養補給」はそもそも狙ってないから…

勝 :だろ?

真子:あ! そうか、階層1の右側の「栄養補給」は無視していい!

勝 :そう。そこはそもそも狙っていないセグメントっていうかベネ
   フィットだから、戦略の対象外。真子の「戦場」に入らない。

真子:なーるほどぉ。

勝 :だから、階層1の「仲良くなる」が、真子の顧客の「全体」に
   なって、その「全体」の中で、「括る」。

真子:なるほどぉ! 現実的には、うちの店のセグメンテーションは
   「階層2」なんだね!

勝 :そういうこと。だからこの「階層」って大事なんだよな。

真子:ねー、こういうセグメンテーションの考え方って一般的なの?
   普通は3つに分けよう、とかで終わるんじゃないの?

勝 :どうだろうな。確かにあんまり見ないけどさ。っていうか、こ
   の特集は「3つに分けよう」を否定してるんだけどな。

真子:あ、そっか。「分ける」んじゃなくて「括る」んだ。

勝 :顧客像を具体化して「括る」ことができれば、必然的に階層化
   できるはずだけどな。

真子:どうやって?

勝 :「神経衰弱」する組み合わせ、つまり「括った際の人」の単位
   をどれくらい細かくするか、が「階層」になる。

真子:えっと……上の図だと「マダム」「女性会社員」で括って、そ
   こに「取引先と来る男性会社員」を加えるかどうか、とか?

勝 :そうそう、そういうこと。だから、まずは「具体化」。だから
   「ステップ1:顧客像の具体化」がとにもかくにも先。

真子:そっか、具体化すれば、「大きく括るか」「小さく括るか」の
   違いにできちゃうんだ!

勝 :そういうこと。だから、具体化がステップ1。一番最初。で、
   それを「階層化」していく。

真子:大変だなあ……

勝 :この「階層構造」は、ロジカルシンキング的な「モレなくダブ
   りなく」、いわゆるMECEの話。

真子:聞いたことはあるけど……

勝 :セグメンテーションは、ロジシン的に「階層化」する左脳の話
   と、具体化する「右脳」の両方が必要なんだよな。

真子:う、うん……

勝 :でさ、例えば階層1の「仲良くなる」と「栄養補給」で、モレ
   もダブりもないか、って言われると誰も証明できない。

真子:あ、そっか。男性と女性なら、モレもダブりもないけど……

勝 :それが、「ニーズで括る」ことにつきまとう難しさ。階層2の
   「楽しく語らう」と「じっくり話す」も同じ。検証が難しい。

真子:でもさ、括れてる「感じ」はするよね。

勝 :そう。その「感じ」で判断して、行動で検証するしかないから
   「絶対法則」が存在しない。つまり「スパッ」とは切れない。

真子:でもさー、っていうことはさ、やれば差別化できるっていうこ
   とだよね?

勝 :そう。新しい「切り口」に気づくことは、新しい「打ち手」に
   つながるからな。

真子:そっか。頑張ろうっと。

勝 :で、「人の階層化」じゃないからな。「人」だけで階層化する
   と、必ず「ダブり」がでる。

真子:え? 何で? 「男女」とかの切り口とかってモレもダブりも
   ないよね?

勝 :同じ人、例えば「35歳男性会社員」でも、真子の店に行く
   「場合」もあれば、牛丼屋に行く「場合」もあるだろ?

真子:あ! そうか、TPOによって同じ人でもニーズが変わるから
   だ!

勝 :そうそう。上の図でも、「顧客像」はダブりまくってるだろ。

真子:あ、ホントだ! 私は、全部に入るかも!

勝 :だろ? だから「ニーズと人は常にセット」。これが、セグメ
   ンテーションの「階層化」の難しさ。

真子:「ニーズと人」をどう括るか、だから、ニーズと人を常に考え
   ないといけない……そりゃ難しいよねえ……

勝 :それを安易にモレ・ダブりのない「年代・性別」で「分ける」
   から、「ニーズが見えない」って嘆くことになる

真子:ううん……耳が痛いなあ……

勝 :だから、セグメンテーションがきちんとできれば、それでもう
   一流なんだよな。「上級」以上だな。

真子:私はまだまだ、かあ……

勝 :完全にできなくてもいいよ。っていうかカンペキに出来ること
   なんかまずないからな。

真子:そうなの!? 勝さんでも?

勝 :当たり前だろ。セグメンテーションを論理的に行う計算式でも
   できたら、各国が奪いに来るよ。モノが売れるんだからな。

真子:きゃーははは、映画になりそうだねー。「セグメンテーション
   の秘宝」を巡って争う各国諜報機関、必死に逃げる売多勝♪

勝 :ホントそうなるわ。

真子:主人公が憧れるヒロインが絶世の美女、真子ちゃん♪

勝 :そのヒロインをあっさり見捨てる売多勝であった。

真子:やだあー、そんなのダメ-!

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◆「階層構造」で「戦場」が切れる!
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勝 :で、このセグメンテーションとかベネフィットの「階層化」が
   できると、BASiCSで他にも役立つことがある。

真子:そうなの?

勝 :ベネフィットの階層は、セグメンテーションの階層化でもある
   けど……何の階層になる?

真子:え? セグメンテーション以外で?

勝 :そう。ベネフィットが現すものは他にもあるだろ?

真子:ええっと……

勝 :ヒント。BASiCS。

真子:あ! 「戦場」だ!

勝 :そうそう。「戦場」は「価値」で表され、同じ価値を提供する
   ものが「競合」だからな。ということは?

真子:ということは……あ! セグメンテーションの階層は「戦場」
   の階層にもなる!

勝 :そういうこと。だから、さっきの図には、競合を入れることが
   できる。さっきの図、もう1回出してみ。

真子:これだよね。

○ビジネスパーソンのランチニーズ

階層0      ビジネスパーソンのランチニーズ

階層1     仲良くなる          栄養補給

階層2 楽しく語らう  じっくり話す   速い食事  お腹一杯

顧客像 ○おしゃべりに ○取引先と来る  ○会議が  ○朝食抜
     来るマダム   男性会社員    近い人   いた人
    ○先輩と来る
     女性会社員

勝 :この図でさ、階層0の「ビジネスパーソンのランチニーズ」っ
   て、そのまま「ビジネスパーソンのランチ戦場」だろ?

真子:あ、うん、ホントだ!

勝 :そこにはどんな「競合」がいる?

真子:「ランチニーズ」だから、もう全部! マック、吉野家、コン
   ビ弁当、ラーメンに……

勝 :そうだよな。別に「外食」とは限らない。「食べない」とか、
   「手作り弁当」に「カロリーメイト」とかも入ってくる。

真子:あ、そ、そうだね。外食とは限らないや……

勝 :だから、ホントは階層0から階層1の間には、もっと細かい階
   層がたくさんある。

真子:そうかあ……

勝 :で、階層1の「仲良くなる」戦場には、何が入ってくる? ラ
   ンチにおける、だからな。

真子:うーんと……うちみたいなイタリアン、もちろん、他のフレン
   チとかのレストラン、お寿司屋さん……

勝 :あと、ホテルのレストランとかだな。バイキングに行くと、マ
   ダムが一杯いらっしゃるぞ。

真子:あ、そうだね……でも、そんなもんかな?

勝 :階層0の「ビジネスパーソンのランチ戦場」よりは競合が減る
   よな? 何でだ?

真子:そりゃ、下の方がベネフィットが狭いっていうか、絞られてい
   るからでしょ?

勝 :そうだけど、ここまでの言葉を使って言うと?

真子:えっと……あ、ベネフィットの「具体性」が高まるからだ!

勝 :そう! 階層が上に行くほど、すなわちベネフィットの抽象度
   が高まるほど、競合が増える。

真子:なるほど! っていうことは、「抽象度が高いベネフィット」
   を狙うと、「競合が増える」ってことだ!!

勝 :よく気づいた! 抽象度を高めるのは、自ら競合を増やすこと
   になるから、戦いにくくなる。だから具体性を高めて……

真子:競合を絞って、それに勝った方が戦いやすい!

勝 :戦場にある程度の規模がある前提で、そうなるな。

真子:実際、階層2の「栄養補給戦場」なんて、競合がメチャクチャ
   多いよね。

勝 :そうだよな。じゃあさっきの図に競合を加えてみようぜ。

真子:あ、そうだね! えっと……まず「お腹一杯」戦場は……

2人で騒ぎながら、競合を埋めて行く勝と真子。

○ビジネスパーソンのランチ「戦場」

階層0      ビジネスパーソンのランチ戦場
競合       全部、もう何でも!

階層1     仲良くなる戦場        栄養補給戦場
競合    寿司、レストラン、ホテル     たくさんある!

階層2 楽しく語らう  じっくり話す   速い食事  お腹一杯

顧客像 ○おしゃべりに ○取引先と来る  ○会議が  ○朝食抜
     来るマダム   男性会社員    近い人   いた人
    ○先輩と来る
     女性会社員

競合  レストラン   寿司屋      コンビニ   牛丼屋
    ホテル     ホテル      マック    定食屋
    ファミレス   レストラン    社内食堂   弁当店
                     牛丼屋

真子:できたあ!

勝 :まだあるだろうけど、典型的なのはこんな感じだろうな。で、
   ここからわかることは?

真子:まず、階層が上に行くほど競合が増えて、下に行くほど競合が
   絞られていく!

勝 :戦場=ベネフィットだから、ベネフィットを具体化すれば、競
   合も具体化されるよな。

真子:うん! これが「戦場を価値で表す」ってことなんだね!

勝 :そういうこと。全部つながってる。それから?

真子:下に行くと、競合はかぶってはいるけど、結構分かれてくる。

勝 :「顧客像」によって競合が変わって来るよな。

真子:うん。例えば「寿司屋」さんは、ビジネスマンが取引先と行く
   ことはあるだろうけど、マダムはあんまり見ないよね。

勝 :データはないけど、そんな感じだろうな。寿司屋で騒いだら怒
   られそうな感じするしな。

真子:お弁当屋さんとか定食屋さんは、「お腹一杯」戦場には入るけ
   ど、急いでいるときの「速い食事」戦場には入らないよね。

勝 :そうだな。そういうときはコンビニとかに行くよな。

真子:うん。あと、右側の栄養補給戦場は、戦うのが大変! 競合が
   たくさんある!

勝 :ということは?

真子:だから戦いにくい。

勝 :そうなんだけど、競合がたくさんいると、「何が大きい」?

真子:え? あ! 市場規模だ!

勝 :そう。この表に市場規模が大体入るはず。右側の「栄養補給戦
   場」は、データにもよるけど、数兆円規模かそれ以上だな。

真子:そうだね。でも、「仲良くなる戦場」は、それほど大きく無さ
   そうだよね。あ、だから競合が少ないんだ!

勝 :そう。「ランチ」ということで言えば、何兆円にはならないだ
   ろうな。寿司屋でも1兆円はあるって言われるけど……

真子:夜の需要も大きいだろうからね。

勝 :だから、顧客像を具体化する意味は、ここにもある。戦場・競
   合が決まるから、市場規模もわかる。

真子:でもさー、「楽しく語らう」戦場の市場規模なんてわからない
   よね?

勝 :それが1つの問題。そういう切り口でモノを捉えてないから、
   わからない。でも、だからチャンスなんだぜ。

真子:そっか、だからうまい「切り口」がわかればいいんだ!

勝 :だから、「括って広げる」考え方は、BASiCSにおいても
   すごい大事。

真子:うん!

勝 :でさ、「顧客」が決まり、「戦場・競合」が決まれば、何が決
   まる?

真子:「強み」が決まる! そうか、それで「勝てる戦場」を選べば
   いいんだ!

勝 :そういうこと。

真子:じゃあ、この「階層化」でBASiCSが決まる?

勝 :そうだよ。

真子:えー、じゃあすっごい大事じゃん。

勝 :だからそう言ってるだろ。その「勝てる戦場」の市場規模が小
   さすぎるなら、他の「勝てそうな戦場」へと広げるが……

真子:「競合」が変わるから、戦い方とか強みが変わるんだよね。

勝 :そういうこと。戦場を広げると、それまでの強みが通用しなく
   なることがある。

真子:そっかあ……確かに、うちの店も、他のファミレスとは差別化
   できそうだけど、お寿司屋さんと比べたことはなかったな……

勝 :だろ? でもさ、寿司屋のカウンターで食べると、静かで話は
   できるけど、テーブル狭くてパソコン広げられないぜ。

真子:あ!! 確かに! そうか、だからうちの店にいらっしゃって
   いただけるのかなあ……

勝 :そうなると、テーブルの大きさはどうなるんだ、とかって話に
   なるだろ?

真子:うん、そうだねえ……そうかあ、テーブルの大きさまでそうや
   って決めていくのかあ……

勝 :回転率重視ならテーブルは小さくして席数を増やすだろうし、
   そうじゃなければ、また違う方法を取るよな。

真子:うん! この「階層化」、私の課題だなあ……

勝 :これ、聞いてると簡単そうに聞こえるだろうけど、ホントレベ
   ルの高い話だから、一歩一歩進んで行けよ。

真子:うん……達人レベルって言ってたもんね……

勝 :だから今まで、これやってこなかったんだけどさ。セグメンテ
   ーションではこれが避けて通れない。だから難しい。

真子:そうなんだあ……頑張ろうっと。

勝 :マーケティングの半分は右脳だけど、やっぱりあと半分は、ロ
   ジカルな左脳も必要なんだよな。

真子:私の苦手なところだぁ……

勝 :ロジシン自体は勉強すればできるけど、それに顧客ニーズとか
   をあてはめていくのは、大変だぞ。

真子:うん……両方できないといけないんだもんね。

勝 :まあガンバレ。

「じゃあ、カワイイ真子ちゃんにじっくりお、し、え、て、ね♪」
「知るかそんなの。ロジシン関係は本読めばできるだろ」
「できないもん。それは勝さんだからできるんだもん」
「そんなことないだろ。誰でもできる」
「本読んでできたら、誰も苦労しないよー」
「恵利ちゃんに教えてもらえ。恵利ちゃんこういうの得意そうだぞ」
「えー……勝さん教えてよー」
「オマエに教えるのは大変だからイヤだ」
「勝さんも人には得手不得手があるって言ってたじゃん」
「真子に「得手」なんかあるのか?」
「うん♪ このび、ぼ、う、はーと♪」
「そうそう、それが真子の強みだよな。すっげー開き直り」
「ひっどーい、開き直りじゃないもん! 事実だもん」
「その事実認定は誰がするんだ?」
「すごく客観的なこの真子ちゃん♪」
「全然客観的じゃないな。だからロジシンやれっつってんだ」
「でも勝さんも真子のこと、カワイーって思ってるでしょ?」
「全然」
「あー、やっぱりカワイーって思ってるんだぁ……そうかあ……」
「今の発言のどこをどう聞くと、そうなるんだ?」
「勝さんの顔に書いてあったもん」
「どこにだよ、え? どこにだ?」
「全部!」
「もう知らん……あ、エスプレッソがなくなった」
「あ、お代わりいる?」
「そうだな……ホットコーヒーもらうか」
「あ、うん、じゃあ買ってくるね」
「あ、いや、これはオレが買ってくるわ。真子もいるか?」
「うん。やったあ!」
「その間にノートまとめておけよ」
「はーい」

勝は財布を持っていることを確認すると、テーブルを離れた。テーブ
ルでは真子がノートとにらめっこしては何かを書き続けていた。

次号に続きます!

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◆今日のまとめ
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●セグメンテーションの階層は「戦場・競合」の階層。ベネフィット
 で「戦場・競合」を「階層化」しよう!

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━特別編Vol.211(累計0987) 2013/02/04

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●切り口の2つめは「困りごと」。「ニーズの強度」と「ニーズの重
 要性」を考えよう!

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◆まずは、前号の復習から!
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*本編の「今の時間」は、年が明けた1月1日の昼過ぎです。

1月1日、初詣に出かけた帰りにカフェに寄った勝と真子。カフェで
レッスンの続きが始まっている。

乱雑にモノが散らばるテーブルでノートを一心不乱にまとめる真子。
そのテーブルに勝がトレーにコーヒーカップを2つ載せ戻ってくる。

「ほら、コーヒー」
「わ、ありがと!」 真子が顔を上げて勝に微笑む。

勝が席に着いて、コーヒーを「ず」と音を立ててすする。

「エスプレッソばっかじゃなくて、たまにはコーヒーもいいよな」
「勝さん、音を立てて飲むと女の子に嫌われるよ」
「それが何か弊害を生むのか?」
「だから女の子に……」
「そんなの、何を今さらだろうが」
「あー、そっかぁ……なるほどねー……にたぁ」
「は?」
「真子なら気にしないからい、い、よ♪」
「熱いコーヒーは最初の1/3までは音を立てていいんだ」
「そ、そうなの?」
「オレのローカルルールでは、な。大体こんな熱いモノ……」
「きゃははは、じゃーアイスにしなよー。勝さん猫舌なんだからー」

勝 :とにかく再開だ。まずは「括って広げる3ステップ」とは?

真子:うん、いい加減覚えた!

○括って広げる3ステップ

ステップ1:顧客像の具体化
ステップ2:ニーズの普遍化
ステップ3:ニーズで人を括る

勝 :そうだな。それで前号でやったことは?

真子:前号は「階層構造」をやった! まずはベネフィットの階層構
   造。ビジネスパーソンのランチニーズならこんな感じになる。

真子がノートを勝に見せる。

○ビジネスパーソンのランチニーズ

階層0      ビジネスパーソンのランチニーズ

階層1     仲良くなる          栄養補給

階層2 楽しく語らう  じっくり話す   速い食事  お腹一杯

顧客像 ○おしゃべりに ○取引先と来る  ○会議が  ○朝食抜
     来るマダム   男性会社員    近い人   いた人
    ○先輩と来る
     女性会社員

真子:「人」を括っているようだけどそうじゃなくて「人×ニーズ」
   で階層化するのがポイント。人はダブって入ってるから。

勝 :そうだな。「人×ニーズ」で切れていると、この表の上に何が
   ついてくる?

真子:うん、「戦場と競合」がついてくる! なぜかっていうと「戦
   場」は「ベネフィット」で定義されるから!

○ビジネスパーソンのランチ「戦場」

階層0      ビジネスパーソンのランチ戦場
競合       全部、もう何でも!

階層1     仲良くなる戦場        栄養補給戦場
競合    寿司、レストラン、ホテル     たくさんある!

階層2 楽しく語らう  じっくり話す   速い食事  お腹一杯

顧客像 ○おしゃべりに ○取引先と来る  ○会議が  ○朝食抜
     来るマダム   男性会社員    近い人   いた人
    ○先輩と来る
     女性会社員

競合  レストラン   寿司屋      コンビニ   牛丼屋
    ホテル     ホテル      マック    定食屋
    ファミレス   レストラン    社内食堂   弁当店
                     牛丼屋

勝 :そうだな。それで?

真子:それで、上に行くほど、すなわちベネフィットの抽象度が高く
   なるほど競合も増える!

勝 :そうそう。だから?

真子:だから、ベネフィットを具体化すれば競合も少なくなって、戦
   いやすい!

勝 :そう。ただ、市場規模も減ってくるから、その兼ね合いだな。

真子:うん。この競合に対する「強み」を決めれば、BASiCSの
   3つ、戦場・競合、顧客、強みが決まる!

勝 :そういうこと。何でかっていうと、全ての「戦い」は「顧客の
   価値」すなわちベネフィットを巡って起きるモノだから。

真子:BASiCSの背後にはそれがいつもあるんだよね……忘れち
   ゃうから注意しようっと♪

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆切り口2:困りごと
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勝 :でさ、今は「セグメンテーションの切り口」をやってるんだけ
   ど……

真子:あ、あれ? そうだっけ? 階層構造の話じゃなかったっけ?

勝 :やっぱり忘れてたか。「切り口1」はなんだっけ?

「あ、そういえば……」と言いながら真子がノートをめくる。

真子:えっと……「切り口1:使い方・利用場面」だ!

勝 :そうそう。今からは、「切り口2」に入っていくぞ。

真子:やっと2つめかあ……

勝が「とにかくこれを読め」と言って真子にパソコンのモニタを向け
る。真子は「はーい」と言いながらモニタを覗き込む。

-----------< 記事要約 >------------

◇冬になると女性の9割が利用するというハンドクリーム。2012
 年のハンドクリーム販売額は192億円(見込み)で、ここ10年
 で約18%の伸びを見せた(富士経済調べ)。

◇インプレスR&Dが発表した『スマートフォン/ケータイ利用動向調
 査2013』によると、個人のスマートフォン利用率は約40%、
 前年よりほぼ倍増した。指を繊細に使う機会の増加が、ハンドクリ
 ーム市場を後押ししているようだ。

◇男性の利用者も増えている。20~40代の育児に積極的な男性
 (イクメン)の約3割は、手荒れに悩んでいるという調査結果が出
 ている。男性を意識したハンドクリームも充実しつつある。

NEWSポストセブン 2012.12.02 07:00
http://www.news-postseven.com/archives/20121202_157986.html

-----------< 記事要約 >------------

真子:なーるほどぉ! 手荒れニーズは、男女関係ないってことか!

勝 :そういうこと。この切り口も典型的なものの1つ。

真子:この切り口は、「ニーズ」とでも言えばいいの?

勝 :セグメンテーションの切り口は全部ニーズなの!! 正確に言
   えば「人×ニーズ」だけどさ。

真子:あ、そっか。ニーズの中で、どんな切り口か、ってことか。

勝 :そう。

真子:ってなると「悩みごと」って感じかな?

勝 :まあそうだな。「悩み」っていうと表現として大げさだから、
   「困りごと」みたいな感じ。

真子:あ、なるほど。女性はもちろんそうだけど、スマホ使う人とか
   「イクメン」も手荒れが「困りごと」なんだね。

勝 :そう。そう考えれば、「手荒れに困っている人はどんな人か」
   って、「広げる」ことができる。

真子:なるほど、「手荒れ」っていう困りごとで「括って、広げる」
   わけだ!

勝 :そういうこと。スマホユーザー、イクメン以外にまだあるぜ。
   手荒れに悩む人。

真子:うーーん……誰かなあ……

勝 :前にこの号でもやった。

http://archive.mag2.com/0000111700/20101221014000000.html

真子:あー、インフルエンザだ! 手を洗うと、手が荒れる!

勝 :そうそう。外出から帰って、よく手を洗う人。

真子:なーるほどぉ。

勝 :ハンドクリームだと「切り口1」の使い方で切ってもいいが、
   これが「困りごと」で括る理由。

真子:なんで?

勝 :「手荒れ」の要因を因数分解しやすいから。手が荒れる原因は
   何だ? ここまでの流れで……

真子:手を洗うから!

勝 :そうだよな。そうすると、ハンドクリームの売り場が広げやす
   いだろ。どこに広げればいい?

真子:あ! そうか、石けんとかの売り場に広げられる!

勝 :そうそう。「手洗い」が「困りごと」の要因なんだから、その
   「手洗い」売り場に困りごとの「解決策」を置けばいい。

真子:なーるほどぉ。その「解決策」がハンドクリームかあ……

勝 :だから、手荒れで悩む人ってどんな人→よく手を洗う人→それ
   って具体的にどんな人、って「具体化」していくわけだ。

真子:そうすると、「手荒れ」っていう「ニーズの共通点」を持って
   る人達を「括れる」んだ!

勝 :そうそう。「この商品はお客様のどんな困りごとを解決するの
   か?」というのは、ベネフィットの基本中の基本だな。

真子:うん……あ!

勝 :どうした?

真子:じゃあさ、その「切り口」が色々あれば、売り場を広げたり、
   色んなアイディアが出てくるね!

勝 :そう。切り口次第で打ち手が広げられる。逆に言えば、競合が
   使ってない切り口を考えつけば、「新しい」アイディアが出る

真子:そうか! じゃあ色んな切り口を知っといた方がいーじゃん!

勝 :だからそう言ってるだろ。絶対至高の切り口なんかない。

真子:じゃあ、セグメンテーションのうまい人って、「引き出し」を
   一杯持ってるひとだねー。

勝 :何を今さら。だから今こうやって「切り口」を紹介してるんだ
   ろうが。

真子:あ、そっかー、きゃははは、そうなんだぁ!

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆「目もとエステ」の発想方法
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

勝 :次の事例に行こう。パナソニックが「目もとエステ」っていう
   美容器具を出してるんだけどさ……

真子:エステ、っていうからには女性がターゲットかな?

勝 :そう思うだろ?

勝がノートパソコンをいじると、再び真子に向け直す。

-----------< 記事要約 >------------

◇パナソニックの美容家電「目もとエステ」がめざましい売れ行き。
 目もとを温感ヒーターとスチームで加温、保湿する。睡眠前や休憩
 時などに約12分間使用すれば、手軽に効果を実感できる。9月の
 本格販売から1カ月の出荷台数は想定の3倍を超す3万3千台。

◇「もともとは名称の通り女性向けのエステ商品」(同社)だったが
 購入客の3割が男性という家電量販店が出るほど、男女双方の支持
 を得た。女性中心のスタッフが男性の視点にも目配りした結果だ。

◇重視したのは寝ながらでも使える“ながら美容”のニーズ。意外だ
 ったのは、試作品を使った社内の男性からの好反応。「同じ思いは
 若い男性にもあるし、そもそも疲れ目は男女共通」。ピンクのみを
 計画していた色にシルバー系を加えた。今年7月には男女のモデル
 を起用したポスターなどでPRを開始。

2012/10/19 日経MJ P.3

-----------< 記事要約 >------------

勝 :ちなみに、商品HPはこんな感じ↓

http://panasonic.jp/beauty/style/night/products/eh_sw50/

真子:あー、確かに「目の疲れ」は、そりゃー男性にもあるよねー。
   っていうか、パソコンよく見る男性の方がニーズありそうだ。

勝 :まさにそういうこと。「目の疲れ」っていう「困りごと」で、
   「括って広げる」好事例。

真子:あ、これも「困りごと」かあ……目の疲れ、っていうのも。

勝 :そう。一種の「課題解決」だけど、そういうとちょっと大げさ
   だからな。で、この「困りごと」にどうやって気づいたんだ?

真子:うん。まずは多分「パソコンなどの事務作業で目が疲れた事務
   職女性」とかって「具体的な顧客像」を描いて……

勝 :それが「ステップ1:顧客像の具体化」だけど、もともと「エ
   ステ」商品なんだから、「目が疲れた」じゃないだろ?

真子:あ、そっか。「目の下のクマが気になる、25歳女性」とか?

勝 :最初はそんな顧客を狙って開発が始まったんだろうな。

真子:あ、そっか。その後で、「仕事で目が疲れる」ってニーズに気
   づいたんだ。

勝 :それが「ステップ2:ニーズの普遍化」。この普遍化は、何で
   気づいた?

真子:えっと……「試作品を使った社内の男性からの好反応」ってと
   ころじゃないのかな?

勝 :そうだよな。それで「疲れ目」っていう普遍的な「困りごと」
   の存在に気づいたんだろうな。ってことはどういうことだ?

真子:えっと……あ! そうか、色んな人に試しに使ってもらえば、
   「困りごと」に困っている人がわかる!

勝 :そういうこと。ダメだったら、予定通り女性だけに絞ればいい
   だけだからな。

真子:そっかー。じゃあさ、「男性に試してもらったこと」っていう
   のがエライところだね!

勝 :そうなんだよな。いきなり「目元を温める、疲れ目用マシン」
   が発想できたら天才だけど、それはまずムリ。

真子:確かにね……

勝 :まずは「個別具体的なニーズ」を考えるのが最初。じゃないと
   具体的なニーズはわからない。

真子:だから、やっぱり「普遍化」の前に「具体化」なんだねー。

勝 :元の発想は「エステ」でも何でもいい。それを「ステップ」、
   踏み台にして、広げればいい。

真子:最初のコンセプトとは、ちょっと変わってるもんね。

勝 :でもそれにはまずは「具体化」が先。そうしないとニーズに気
   づきようがない。

真子:あれ? ってことはさー、この「括って広げる」方法って、発
   想の方法論でもあるんだ!

勝 :そうだよ。今頃気づいたのか?

真子:だったら、そう言ってよー。

勝 :アイディアを出すには、大きく入らない。「人類を幸せにする
   ためには何が必要か」って考えてもアイディアは出ない。

真子:あははは、そうだよねー。人類を幸せにするより真子を幸せに
   し、て、ね、勝さん♪

勝 :オレが不幸せになるからイ、ヤ、だ。

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◆「ニーズの強度」と「ニーズの重要性」
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勝 :で、「疲れ目」っていう「困りごと」は性別とか年代には関係
   ないよな?

真子:うん!

勝 :何に関係有る?

真子:だから「目の疲れ方」だってば。

勝 :そうだよな。となると、「ステップ3:ニーズで人を括る」と
   きに大事なことは、何だ?

真子:えっと……あ! 「目の疲れ方」だ! それが「括る」ための
   「切り口」になる!

勝 :そうそう。人間の目の疲れが数値化できて、その数値が大きい
   順に並べることができれば……

真子:うん! 数値が大きい人達に売りまくれば、売れるよね!

勝 :そういうこと。このような「基準」がわかればいんだよな。自
   分のビジネスで、重要な「数値」はなにか。

真子:そっか、目もとエステの場合は、「疲れ目の度合い」だね。

勝 :それに気づければ、ある意味「勝ち」だ。それを「ニーズの強
   度」ってオレは呼んでる。

真子:ニーズがどれくらい強いか? あ、どれだけ目が疲れるか、だ

勝 :そういうこと。

真子:なるほど、目が疲れている人をひたすら探して、提案していけ
   ば売れるからだよね。

勝 :そう。その人の「目の疲れ具合」がぴぴぴぴって表示される
   「スカウター」でもあればいいんだけどな……

真子:「スカウター」って何?

勝 :人の強さが数字で表示されるメガネ。ド○ゴンボールだよ。そ
   れくらい常識だろうが。

真子:えー、そんなの常識じゃないもん。

勝 :とにかく、その「スカウター」で表示すべき数字は何か、って
   いうのが「ニーズの強度」だな。

真子:あ、それがわかれば、お客様が見つけられる!

勝 :そう!

真子:あ、その「スカウター」っていうのがあればいいのにねー。そ
   の人の「ニーズの強度」がわかるメガネ♪

勝 :もちろん「目が疲れている人のリスト」なんて都合の良いもの
   は多分存在しないから、自分で見つけ出していく。

真子:「目が疲れている人って、具体的にどんな人か」を、ステップ
   3で考えていく、ってことでいーの?

勝 :その通り。それが「括って広げる」。「疲れ目」という普遍的
   「困りごと」に気づけば、広げられる。例えばどんな人だ?

真子:もちろんパソコン使う人だよね。

勝 :そうだよな。パソコン使うほど、ニーズの強度は高まりそうだ
   よな。

真子:あ、確かに! あと、目を使う人は……すっごいニッチだけど
   飛行機のパイロットとか?

勝 :なるほどな……そうか、そういう発想か。まずはそういう個別
   具体的な人でいいんだ。それを「普遍化」すると、どうなる?

真子:飛行機に乗る人?

勝 :普遍化の方向性が違うだろ。目の疲れと関係ないぞ。

真子:あ、たしかにー、きゃははは。

勝 :だから普遍化って意外に難しい。「目を使って運転する人」、
   だろうが。一杯いるだろ。

真子:あ!! 電車とかの運転手さん!

勝 :それもそうだけど、もっと普遍化できるだろ。正確に言えば、
   もっと「顧客数」を増やせるだろうが。

真子:えっと……あ! 車のドライバー!

勝 :そう!! その人達は、目の疲れが命に直結するだろ? だか
   ら「ニーズの重要性」が高い。

真子:そうだね! あ、そうか! 目が疲れると、すっごい大変な人
   を探せば、より売れる、ってことだ!

勝 :それそれ。目が疲れるっていう「ニーズの強度」と共に、その
   「困りごと」の程度、つまり「ニーズの重要性」も大事。

真子:えっと「ニーズの強度」が、目がどれくらい疲れるかで、「ニ
   ーズの重要性」が、目が疲れるとどれくらい困るか、でいい?

勝 :ナイスフォロー。そういうこと。

真子:なるほどねー。「ニーズの強度」と「ニーズの重要性」かあ。

勝 :これ、さらっと言ってるけど、すっごい大事な話。いくら目が
   疲れていても、それが重要じゃなければモノは買わない。

真子:そりゃそーだよねー。となると、営業車を運転する人とかもそ
   うだよね。よく運転する人は、事故の確率も高まるだろうし。

勝 :そうそう。車の運転は「事故」になると大変だから「ニーズの
   重要性」が高い。

真子:そうかー、命に関わることなら、お金を払ってでも解決したく
   なるよねー。

勝 :でさ、「ニーズの強度」とか「ニーズの重要性」は、どこに現
   れる?

真子:へ?

勝 :価値はどこに現れるんだよ……何回やったよ、これ。「売多勝
   名言集」だぞ。

真子:「価値は使い方に現れる」……あ! そうか、「車の運転」っ
   ていう「目の使い方」だ!

勝 :そう。だからニーズの「強度」と「重要性」が高い利用場面・
   TPOを探せばいい。「車の運転」はまさにそれ。

真子:確かに、目が疲れやすいし、目が疲れると事故になるから、強
   度も重要性も高い! ここでも「利用場面」が大事なんだ!

勝 :そういうこと。目が疲れなければ、すなわち「ニーズの強度」
   がなければ、そもそも「困りごと」になってない。

真子:それに、「困りごと」になっていたとしても、その重要性が高
   くなければ、それほど気にしないんだね。

勝 :そういうこと。両方大事。っていうか掛け合わせ。ってことは
   どういうことだ?

真子:え?

勝 :だからセグメンテーションにおいてどういう役割を果たす?

真子:あ! セグメンテーションの「切り口」になる!

勝 :そう。「困りごと」を分解すると「ニーズの強度」×「ニーズ
   の重要性」になる。それで人を分類すればいい。

真子:なーるほど! 「困りごと」って言っても、奥が深いね!

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◆「括り方」がわかれば、「売り場」が広がる!
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勝 :でさ、こうやって「括って広げる」と、売り場が広げられるん
   だよな。

真子:え? どうやって?

勝 :さっきのさ、「パソコンで目が疲れる人」なら、この「目もと
   エステ」はどの売り場に置けばいい?

真子:あ! パソコン売り場だ!

勝 :ほら、売り場が広がっただろ? 車の運転をする人に売りたい
   場合はどんな店に置く?

真子:わかった! カー用品店だ! たーしかにぃ……

勝 :これが、「ステップ3:ニーズで人を括る」ときに、顧客像を
   具体化する理由。人を具体化すれば、売り場も具体化される。

真子:なるほど! 人を広げることができれば、「売り場」も広げら
   れるってことだ!

勝 :そういうこと。あと、どんな人に広げられる?

真子:じゃあじゃあ、タクシー会社の、クリスマスのビンゴの景品に
   使おう! 運転手さん用に!

勝 :あ、それおもしれー。

真子:うん、車関係の会社さんに、年末に売り込んでいけば、すっご
   い売れるかも! 運送会社さんとか!

勝 :それを普遍化すると、「ギフトニーズ」もあるってことだ。カ
   タログギフトに載せてもいいってことだな。

真子:そーだね! あと……ね、学者さんとかも目が疲れるよね?

勝 :お、それは何でだ?

真子:だって、細かい字の本とか論文とか、読んでそうじゃん。

勝 :そうだよな。「ニーズの重要性」はどうだ?

真子:そりゃあるでしょ。学者さんが本読めなかったら、商売あがっ
   たりじゃん。勝さんだってそーでしょ?

勝 :じゃあそのニーズを「普遍化」しようぜ。どんな人だ?

真子:本をよく読む人!

勝 :だよな。となると、「目もとエステ」は本屋さんに置いてもい
   いよな。本読む人は目が疲れるなら、さ。

真子:うっわー、「括って広げる」と、「売り場」が無限にあるって
   ことなんだねー。

勝 :だろ? 「顧客ニーズを具体化」して、普遍化すれば売り場が
   いくらでも広げられる。

真子:そっか、ニーズを具体化すると市場が狭くなるかと思ってたら
   逆なんだー。

勝 :そう。具体化するほどに広げやすくなるから、むしろ市場は広
   がる。売り場も広げられる。

真子:面白いねー。

勝 :だから、ステップ2の「普遍化」がミソ。「疲れ目」っていう
   「困りごと」が普遍的で、意外に手つかずの市場なんだろうな

真子:あ、目を温めるシートとかあるもんね。

勝 :だから、潜在ニーズはあったんだろうな。アイディアが出る人
   って、こういう「具体化」「普遍化」を自然にやってるよな。

真子:え?

勝 :イメージとしてはこういう感じ。

勝が真子のノートに書き込んでいく。

 普遍性      2)四角形

        ↑       ↓

 具体性 1)□ ■    3)◆ ◇

勝 :とりあえず普遍性と具体性の2つの「階層」にしてるけど、実
   際はもっと複雑な階層構造になることもある。これが基本。

真子:う、うん……それで……どう見ればいいの?

勝 :1)2)3)は、発想の順番。まずは、1)□■っていう、個
   別具体的ニーズに気づく。

真子:それで、2)が四角形? あ! 普遍化するんだ!

勝 :そうそう。「要は角が4つあるってことだな」って気づく。

真子:すると、3)で、他の四角形◆◇っていう、ちょっと変わった
   アイディアが出る!

勝 :そう。表面的には、1)→3)って見えるから、いきなり面白
   いアイディアが出るように見えるけど……

真子:そっか、2)の普遍化をやってるんだね。

勝 :このプロセスを抜かすとさっきの真子みたいに「パイロット」
   から「飛行機に乗る人」みたいな変な方向に行く。

真子:きゃーははは、ホントだぁ……「疲れ目」って普遍化しておけ
   ば、目が疲れる車の運転手、ってなるのにね。

勝 :アイディアが出せる人は、これを無意識にやってる。この「無
   意識」っていうのが案外厄介。

真子:そっか、自然にできちゃうんだ。

勝 :そう。だから他人に説明できない。逆に言えば、この発想プロ
   セスをきちんと踏めば、誰でも「天才的」発想ができる。

真子:やったあ! 真子ちゃんにもできる♪

勝 :イヤ、真子はむしろ天才型だから、普遍化して言語化しないと
   周りがついてこれない。天才は往々にしてそうなる。

真子:えー……

勝 :だから望ちゃん*みたいな論理型タイプを大事にしろよ。

*「新人OL~」シリーズの登場人物。

真子:うん。でもさー、元々は「女性向けのエステ商品」だったのに
   ここまで広がるなんて、面白いねー。

勝 :しつこいけど、この「疲れ目ニーズ」には何で気づいたかって
   いうと?

真子:「個別具体的なエステニーズ」があったからだよね。だから、
   ステップ1:顧客像の具体化、が最初なんでしょ?

勝 :そう。顧客像を具体化して、ニーズを具体化する。それが最初
   になる。で、ステップ2で普遍化する。

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◆「セグメンテーション」は打ち手を考えながら行う
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真子:それで「ステップ3:ニーズで人を括る」、ここで目が疲れて
   いる男性と女性を「括った」んだね。

勝 :ああ。ただ、そこで男女の違いがあったのは、何だ?

真子:あ、そっか。「色」の好みが違ったんだね。女性はピンク、男
   性はシルバー♪

勝 :そうそう。それもある意味でのセグメンテーションと言える。
   「ニーズの共通点」が存在する中での「ニーズの違い」。

真子:その「ニーズの違い」は気にしなくていいの?

勝 :気にするだろ。だから「色違い」にしているんだろうが。ただ
   打ち手としては「打ちやすい」打ち手だろ?

真子:色を変えるのはカンタンってこと?

勝 :形を変えるよりはカンタンなんだろうな。真子の店でも、男性
   向けに根本的に味を変えるよりは、量を変える方がラクだろ?

真子:あ、そうだね。材料の量を変えるだけだから。

勝 :生産工程をガラっと変える打ち手は厳しいけど、色は、最後の
   工程の「インク」を変えるくらいですむんじゃないかな。

真子:えっと……「人によって変える」部分がカンタンなら、それは
   その人達は「括って」しまっていいってことかな?

勝 :「ニーズの共通点」があるという前提で、Yes。だから、セ
   グメンテーションをするときには、打ち手を考えながらやる。

真子:あ、そうか。「ニーズの共通点」がある人達のなかで、「カン
   タンに変えられること」があれば、やった方がいいよね。

勝 :色の違いへの対応もある意味「セグメンテーション」だけど、
   そのレベル感に結構差があるよな。

真子:レベル感、って、あの「階層構造」の話?

勝 :まさにそれ。根本的なニーズの違いなのか、「色」とか「量」
   を変えればすむ「違い」なのか、っていう「レベル感」

真子:あー、確かにその「レベル」を意識しておかないと、ぐちゃぐ
   ちゃになるね。

勝 :だから、シリーズ10~11の「階層」は、大事。きちんと読
   み返しておくように。あんまり世間では見ないけどさ。

真子:なんで?

勝 :右脳と左脳の両方が必要になるからな……「達人」レベルなら
   両方できるけど、普通はどっちかが「利き手」になってる。

真子:ねえ……セグメンテーションってすっごく難しいんだね……

勝 :だからそう言ってるだろ。マーケティングで一番難しいって。
   人を年代・性別で分類するだけなら、中学生でもできる。

真子:そりゃそーかー。ねー、どうすればこういう発想ができるよう
   になるの?

勝 :練習、練習、また練習。売れたま!も、実はほぼ全てこういう
   構成になっている。具体化→普遍化→具体化。

真子:どーゆーこと?

勝 :個別具体的な実例を出して、BASiCSとかで普遍化して、
   それを他の事例にあてはめられるようにしてる。

真子:あ! そーなんだ!

勝 :この「考え方」自体は、10年前の1号目から変わってない。
   具体化、普遍化、を何回も「やりとり」する構成になってる。

真子:そーなんだー……じゃー、売れたま!をきちんと読んでれば、
   この具体化と普遍化がわかるんだ!

勝 :少なくともそうなるように書かれている「はず」だ。

真子:そっかー。じゃあ、ちゃんと読もうっと。

勝 :当たり前だ。

真子:だって、長いとついつい貯めちゃって……とにかく、私は極端
   に「右脳型」だからなー。

勝 :ロジシンなんかの「左脳型」の手法は、むしろ学びやすいぜ。

真子:そっかあ……あーゆーの苦手だと思ってたけど、やんないとダ
   メかあ……

勝 :あのな、苦手なことを先送りしていると、人生のどっかでツケ
   を払うもんだ。人生はそうなってるらしい。

真子:そ、そうなの? 勝さんもそーだったの?

勝 :オレの場合は、数学。高校の微積なんて、赤点スレスレ。あと
   1点で赤点だった。そんなの微積だけだ。極端な文系だった。

真子:えええー?? 統計くらいできないとマーケター失格とか、エ
   ラソーに言ってたじゃん。

勝 :だから、後でそのツケを払ったんだよ。MBAのときに、基本
   的な微積とかできないとお話にならなかったからな……

真子:え? 留学時代? じゃあ、英語でやったの?

勝 :そう。日本語でも赤点スレスレだったのに、英語でやるとか、
   どんな罰ゲームか、と……。マジ泣きそうだった。

真子:きゃーははは、そーだよねー。

勝 :逆に、英語をやってこなかった留学生は、そっちで苦しんでツ
   ケを払ってたから、結局一緒。オレは英語はできたからさ。

真子:そっか……ツケはいつかは払わなきゃいけないんだ……。

勝 :そう。踏み倒すともっとヒドイ目にあう。

真子:じゃーさー、勝さんの「片付けられない病」も、いつかツケを
   払うんだね!

勝 :……っていうか既に一杯払ってるな……でも統計にしても微積
   にしても、若いウチにやっておいてホント良かった。

真子:えー、クロス集計が分析の基本だ、って言ってたじゃん。難し
   い統計分析なんていらない、って。

勝 :っていうことは、統計をやって、やっと言えること。結局統計
   にも「意思」が反映される、っていうのがわかったからな。

真子:そーなんだー。

勝 :あと、微積「的」な発想ができるのはいいぜ。

真子:え? 例えば?

勝 :BASiCSは背後にある膨大な理論や経験の「微分」だって
   お世話になってる先生に言われて「なるほど!」と思った。

真子:わかんなーい。

勝 :だからだよ。その瞬間に、BASiCSでやってきたことって
   いうか、その意味がすごい明確に自分の中で「言語化」された

真子:ふーん、そんなもんなんだ。

勝 :だから、「アタマの使い方」という意味でも、数学「的」な考
   え方ってできると色々とトク。

真子:ずるいなー。私、数学ダメなのにー。

勝 :いや、逆に数学が得意な人は、真子みたいな具体的な発想はで
   きないもんだ。だからお互い様。

真子:そーなんだぁ……

勝 :よく恵利ちゃんとか望ちゃんが、真子の発想をうらやましがっ
   てるのはそういうこと。

真子:そっかー。じゃあ私も論理的思考とか、今のうちに頑張るか。
   とゆーことで、勝さん、本書いてねー。

勝 :だから自分でやれ。オレはマーケティングか戦略の本しか書か
   ない。それがオレの「戦場」だからな。

真子:じゃーさー、セグメンテーションの本書くときにやってよー。

勝 :まあそうか……そうだな。長期的課題とさせていただく。

「勝さん、そーゆーところは、妙に意固地だよね。何でも飛びつくダ
 ボハゼみたいに見えてさー」
「意固地じゃねーだろ。自分が言ってることを遂行してるだけだ。一
 貫性一貫性って騒いでる本人がブレててどーするよ」
「いーじゃん、ブレたって。実験は大事だ、って勝さんいつも言って
 るクセにー」
「実験とブレはレベルが違う話だろーが」
「じゃーさ、どのケーキがおいしいか、実験しよう。買ってくるよ」
「それはいい実験だな。何がいいかな……」
「ね、何があるか、ガラスケース見にいこうよ」
「そうしよう! 貴重品は持って行けよ」
「うん」

勝はノートパソコンをパタンと閉じ、マウスを外した。真子はバッグ
からお財布を取り出すと、同じタイミングで席を立ち、ケーキが陳列
されているガラスケースへ2人は駆け出すように歩きだした。

次号に続きます!

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◆今日のまとめ
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●切り口の2つめは「困りごと」。「ニーズの強度」と「ニーズの重
 要性」に分解して考えよう!

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━特別編Vol.212(累計0988) 2013/02/07

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●切り口の3つめは「体質」。自分の商品・サービスに密接な関係の
 ある「体質」の違いをとらえよう!

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◆まずは、前号の復習から!
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*本編の「今の時間」は、年が明けた1月1日の昼過ぎです。

1月1日、初詣に出かけた帰りにカフェに寄った勝と真子。カフェで
レッスンの続きが始まっている。

2人は、レッスンの合間に2つめのケーキを食べることにして、ガラ
スケースの前で目を輝かせて選んでいる。

「ね、ね、勝さんはどのケーキにするの?」
「さっきはミルクレープだったから、チョコレート系がいいな」
「真子はどーしよっかなー。モンブランかなぁ……」
「あー、それもうまそうだな……」
「シフォンケーキは、大きさの割に原価が安いんだよねー」
「オマエ、そーゆー夢のないこと言うなよな」
「きゃー、いつも冷徹なのにケーキに「夢」とか言っちゃうんだ♪」
「原価と価値は相関するとは限らないって、何度言ったら……」
「はいはい、それは百回くらい聞きましたー」
「じゃ、オレはやっぱりチョコレートムースにしよう。初志貫徹」
「私も初志貫徹してモンブランにしようっと。注文しとくね♪」

勝は「ありがと」と言って、先にテーブルに戻り、ノートパソコンを
再度開いた。

「お客様ぁ、大変お待たせしました、きゃは♪」と、真子がトレーを
持って戻ってくる。「ありがと」と勝がトレーからケーキ皿を取って
真子と自分の前に置くと、早速それぞれの「獲物」にかぶりついた。

「お、うまい」
「ね、勝さんの一口ちょーだい」

真子は勝がうんと言う前に、勝のムースにスプーンを入れる。勝もい
つものこととばかり、真子のモンブランをフォークですくいとる。

「あ、おいしーね」
「モンブランも結構いいな」

勝はコーヒーを一口すする

「甘いモノと苦いモノって、ホント合うよな。悪魔の誘惑だよな」
「ホントだねー。すっごい、ゆ、う、わ、く♪」
「そのお陰で真子の商売も成り立ってるところもあるからな」
「きゃははは、そーだよねー」
「こうやってケーキとコーヒーがいただけることに感謝しないとな」
「うん!」
「じゃあ感謝しつつ再開するぞ。まずは前号の復習から」

真子:うん。前号は、セグメンテーションの切り口の2つめ、「困り
   ごと」をやりました!

勝 :それで?

真子:パナソニックの「目もとエステ」を、「括って広げる3ステッ
   プ」で考えると、こうなります!

○ステップ1:顧客像の具体化

・例えば、目の下のクマが気になる、25歳女性

○ステップ2:ニーズの普遍化

・疲れ目

○ステップ3:ニーズで人を括る

・パソコンを使う事務職(男女関わらず)
・「飛行機のパイロット」を普遍化して「車のドライバー」
・「ビンゴの景品」を普遍化して「カタログギフト」
・「学者さん」を普遍化して「本をよく読む人」

勝 :そうだな。それでこの「困りごと」を分解するとどうなる?

真子:「困りごと」は、「ニーズの強度」と「ニーズの重要性」に分
   解されまーす。

勝 :それぞれ、どういうことだ?

真子:「ニーズの強度」は、そのニーズの大きさ。疲れ目の場合は、
   疲れ目の程度の強弱。

勝 :「ニーズの重要性」は?

真子:そのニーズがどれだけ重要か。疲れ目の場合は、疲れ目によっ
   て起きる「弊害」がどれだけ大きいか。

勝 :「車のドライバー」の場合は?

真子:運転を長時間すると目が疲れる、つまり「強度」も強いし、目
   が疲れると命に関わるから「重要性」も高い!

勝 :だから、ニーズがある、っていうことだよな。

真子:それで、ステップ3で「具体的な顧客像」を描くと、売り場が
   広がる! パソコンでの疲れ目ならパソコン売り場とか。

勝 :そうだよな。つまり「具体化」することで、売り場も「広げら
   れる」わけだ。

真子:うん! だったら、どんどん具体化した方がいいよね!

勝 :そのためには、ステップの「ニーズの普遍化」の巧拙が大事だ
   けどな。普遍化の「階層」がポイント。

真子:どういうこと?

勝 :抽象化しすぎると、商品とのつながりが薄くなりすぎるし、具
   体化しすぎると、広げにくくなる。

真子:あ、そっか。

勝 :だから、この「階層構造」をいかにうまく作るか。

勝が、真子のノートの該当部分を四角で囲った。

 普遍性      2)四角形

        ↑       ↓

 具体性 1)□ ■    3)◆ ◇

勝 :この図の2段階じゃなくて、何段階もある「階層構造」だな。

真子:うん。セグメンテーションも、ベネフィットも、戦場も、全部
   「階層構造」なんだよね。

勝 :そういうこと。言ってみれば、全ての市場はトランプ52枚で
   できてるみたいなもんだ。

真子:わっかりませーん。

勝 :少しは考えろよ。52枚でできてて、それを「数字」で括るか
   「マーク」で括るか、「絵札」で括るかとか、色々あるだろ。

真子:あ、どうやって「神経衰弱」するか、っていう組み合わせだ!

勝 :そうそう。それがセグメンテーションの切り口であり、戦場の
   切り口でもある。

真子:「戦場」と「セグメンテーション」って同じなの?

勝 :うまく切れてれば、「戦場」と「セグメンテーション」は同じ
   ものになる。どちらも「価値」だから、さ。

真子:そっかあ……

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆「困りごと」:歌がうまくなりたい!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

勝 :この「困りごと」っていうのが、「狭義のニーズ」だよな。ニ
   ーズっていうと何でも入っちゃうから「狭義のニーズ」な。

真子:「ニーズっぽい」って感じがするよね。「肌荒れ」とか「疲れ
   目」とか。

勝 :そうそう。ある程度普遍的で、ある程度具体的な「ニーズ」。
   その意味ではこれもそう。

勝がノートパソコンのモニタを真子に向ける。

-----------< 記事要約 >------------

◇「大人のための音感トレーニング本」(リットーミュージック)が
 人気。1万冊でヒットとされる音楽関連書籍にあって、発売1年で
 続編と合わせ約4万冊に。

◇「音痴は半ば先天的なものと捉えられ、鍛えるという発想が日本は
 乏しかった」(著者の友寄隆哉氏)。訓練で、大人でも絶対音感に
 似た「音程感」という感覚が養えるとの自説と訓練法を書いた。

◇「楽器演奏者などある程度の知識がある人を想定していたが、カラ
 オケ好きの中高年が予想以上に買ってくれた」(同社)ことがヒッ
 トにつながった。専門書にもかかわらず、カラオケ好きの多くの中
 高年が手に取り、「音痴を克服したい」という潜在需要をとらえた。

2012/06/22 日経MJ P.16

-----------< 記事要約 >------------

真子:これ!! 勝さんにチョーぴったりじゃん! カラオケ行くと
   いっつもメチャクチャ音痴な勝さんに!

勝 :オレは音痴なんじゃない。音程を気にしないだけだ。

真子:すっごい開き直り、きゃははは!

勝 :そんなこと言うなら、真子とは絶対いかねー。いーんだよ、カ
   ラオケなんて楽しけりゃ。

真子:ごもっとも。

勝 :とにかく、「括って広げる3ステップ」で体系化してみろ。

真子:うん!

真子が時折小首を傾げながら、ノートに書いていく。ペンの反対側を
頬に押し当てるような仕草を何回か繰り返す。

「できた!」と言って真子が勝にノートを見せる。

○ステップ1:顧客像の具体化

・「音程感」を鍛えたい楽器演奏者などのプロ、セミプロ

○ステップ2:ニーズの普遍化

・歌がうまくなりたい!

○ステップ3:ニーズで人を括る

・カラオケ好きの中高年

勝 :エライ単純だが、まあそういうことだ。

真子:なんかさー、こう書くと当たり前に見えるんだけどねー。「歌
   がうまくなりたいニーズ」とかさ。

勝 :それが難しいんだってば。何回も言うけど、いきなり「歌がう
   まくなりたいニーズ」がわかったら天才だって。

真子:まー確かに、これが最初っからわかってるんだったら「カラオ
   ケ好きのための」みたいなタイトルにするよね。

勝 :だからそれが最初っからわかれば苦労しないって話。

真子:勝さんもできないの?

勝 :わかったら天才。仮に天才だったとしても、「理論化」されて
   いないと「再現性」がないから運頼みになる。

真子:あ、そっか。何となくできちゃうと、何となくできなくなっち
   ゃうんだ。

勝 :そう。で、ここからが「括って広げる」練習だ。カラオケ以外
   にどんな人に広げられる?

真子:他に「歌がうまくなりたい」人だよね? 合唱団の人とか?

勝 :え?

真子:ほら、年末に第九を歌うような大人の合唱団があるじゃん。サ
   ークルみたいな感じの。

勝 :なるほど。それなら「大人のための音感トレーニング本」って
   いうタイトルのままいけそうだな。

真子:あと、幼稚園の先生とかもニーズあるんじゃない?

勝 :あ、そうだよな。なるほど、カラオケ、合唱団、幼稚園の先生
   か……それ、どう「括れる」と思う?

真子:へ?

勝 :カラオケ、合唱団、幼稚園の先生にある「共通点」は何か、っ
   て聞いてる。この3つの集団を「括る」、ニーズの共通点。

真子:ニーズの共通点……何かな? ヒントくださーい!

勝 :価値は???に現れる。

真子:価値は使い方に現れる……「歌」の使い方……あ!! 「人前
   で歌を歌う人」だ!

勝 :そう! そこに「社会欲求」、周りの人によく見られたいニー
   ズがあるわけだ。それは「ニーズの重要性」が高いよな。

真子:なーるほどぉ。自分1人で歌う分には別に気にしないもんね。

勝 :そうするとさ、「人前で歌う人」を片っ端からターゲットにで
   きるだろ。

真子:うん!

勝 :これで「歌がうまくなりたい人」から、一段階「具体化」され
   たよな? 「人前で歌う人」の方がより具体性が高い。

真子:あ、ホントだー。

勝 :こうやって具体性を上げたり抽象度を上げたりしていく。

真子:そう言えば、結婚式の「出し物」で、歌を歌うことってあるよ
   ね? 新郎新婦のお友達とかが。

勝 :確かにそうだな。オレは頼まれたことないけどな。

真子:きゃーははは、当たり前じゃん! 祝いの席ぶちこわし!

勝 :んなことねーよ、盛り上がるぞ。

真子:ドン引きされるからやめた方がいーよ。

勝 :ともかく、その「結婚式で歌う人」のニーズは何だ? それこ
   そ「困りごと」があるだろ?

真子:歌の練習をするにしても、時間がないことじゃないかな? 結
   婚式まであと2ヶ月とか3ヶ月とか……

勝 :そうだよな。すると、どんな「メッセージ」を入れればいい?

真子:あ! 「3ヶ月でうまくなる!」とか、ってタイトルとかオビ
   に入れればいい! 「速習法」みたいな感じで。

勝 :そうだよな。だから「歌がうまくなりたい」→「人前で歌う」
   →「どんな」人前で歌う、っていう具体化していくと……

真子:メッセージも具体化されていく!

勝 :「歌がうまくなりたい」には、別の方向性の具体化も可能かも
   しれない。オレの中学だと、「歌のテスト」とかあったぜ。

真子:歌のテスト? 1人1人先生の前で歌うの?

勝 :そうだよ。

真子:勝さん、点数悪そーだ、きゃははは!

勝 :うるせーよ、ほっとけ。で? 音楽の成績は、一応内申点にも
   関係あるだろ?

真子:あ、なるほど。学校の成績あげたい中学生とか、その両親とか

勝 :そうそう。そうなると「大人の音感トレーニング」っていうタ
   イトルだとダメだから、タイトルを変える必要があるけどな。

真子:そっか、「子供のうちに教えたい、ママが教えられる歌い方」
   みたいな感じかな?

勝 :例えば、そういうのもありかもな。「歌がうまくなりたい」っ
   ていう「困りごと」は、色々広げられそうだろ?

真子:うん! 「歌がうまくなりたい」っていうニーズの下に、いく
   つか「セグメント」ができる、ってことだよね?

勝 :そういうこと。カラオケとか、子供とか、ってことだな。

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◆切り口3:体質
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勝 :じゃあ次の切り口に行くか。次の切り口は個人的な「体質」。
   これはまさに「人による違い」になる。

真子:「体質」? 例えば?

「例えばこんな感じ」と勝が言いながら、ノートパソコンを真子に向
ける。

-----------< 記事要約 >------------

○缶酎ハイ市場でユニセックス化が進む。アルコール度数が7%以上
 の「高アルコール商品」には30~40代を中心とした女性が飛び
 つき、3%以下の「低アルコール商品」は20代を主とした男性が
 手にとる。発売前のメーカーの想定とは異なる、意外な購買層が売
 れ行きをけん引。

○サントリー酒類のアルコール度数8%の「-196℃ ストロング
 ゼロ」は2009年の発売当時、女性の購入比率は35%。しかし
 11年上期には50%に上昇。女性購入者のうち8割以上が30~
 40代。キリンビールのアルコール度数8%の「氷結ストロング」
 シリーズも、女性の購入比率は当初想定の3割を上回る4割でその
 うち30~40代が5割を占めるという。

○30~40代女性がアルコール度数の高い商品を好む理由は、女性
 の社会進出や、単身世帯の増加が要因との説がある。女性は社会進
 出しても、子供の出産や企業内の慣習で、幹部登用の道は平らでは
 ない。育児や家庭との両立などストレスも多い。1杯ですぐに酔え
 る缶酎ハイに手が伸びるのは合理的な消費行動でもある。

○3%以下の「低アルコール」の市場は12年は09年の3倍程度に
 なる見通しだが、この市場は20代男性がけん引。サントリー酒類
 の「ほろよい」も売上高構成比のうち4割が男性。「特に20代の
 若い男性が想定より多かった」(同社)。

○20代は男性でもムリをして酒を飲む姿勢はほとんどない。「酒が
 強くないが、いろんな味を低アルコールで飲めるから抵抗感なく飲
 めてうれしい」(20代の男性会社員)といった証言は、かつての
 若い女性と大差ない意識だ。

2012/03/02 日経MJ P.16

-----------< 記事要約 >------------

真子:えっと……逆じゃないよね? 女性がアルコールの「高い」の
   を飲むんだよね? こういうことだよね。

 アルコール度数が「高い」缶チューハイ:女性30~40代
 アルコール度数が「低い」缶チューハイ:男性20代

勝 :そうだな。主要顧客層がそうなった、というわけではなく、あ
   くまでその比率が高まった、ということだと思うけどさ。

真子:これ、勝さんと私の関係と同じだねー。お酒に強い私と、弱い
   勝さん♪

勝 :そういうこと。「酒の強さ」と「性別」は必ずしも相関しない
   っていう、当たり前と言えば当たり前の話だ。

真子:そっか、それこそ「体質」だよね。強い人は強いし、弱い人は
   弱い。

勝 :昔は「男なら飲め」みたいな風潮があったけど、それもある意
   味セクハラだからな。男性に対するセクハラだ。

真子:あー、確かにそーだ。

勝 :オレさ、飲まされて「各駅停車」したことがある。

真子:へ? 各駅停車?

勝 :だからさ、会社で飲まされるよな? それで電車で帰るだろ?
   で、電車が止まる各駅で……ってわけだ。

真子:やー、きったなーい! 読者様、大変お見苦しい場面を想像さ
   せてしまい、申し訳ございません……代わってお詫びします。

勝 :こういう苦しみは、真子みたいに酒が強いタイプにはわからな
   いだろうな……

真子:ホント「体質」だからね……

勝 :そういう「男なら」みたいのが剥がれ落ちて、「アルコールに
   対する強さ」っていう「体質」で素直に分かれてるわけだ。

真子:逆にさー、女性もストレスが多くなってる時代だよねー。だか
   ら女性も「酔いたい」んだろーね。

勝 :そう! ストレスが多くて、酒が飲める人なら、男女関わらず
   「酔いたい」ニーズがあるってことだ。

真子:そっかー、だから女性だと30代以上なのかー。会社で責任が
   増えてくる世代だから、ストレスが増えるから……

勝 :で、アルコールに弱ければ、「酔いたい」じゃなくて「楽しみ
   たい」になるよな。性別・年代に関わらず。

真子:あ、あれ? この話って最近勝さんとした覚えが……??? 
   まさか夢の中で話したのかなぁ……???

勝 :恐いこと言うなよ……シリーズ2号で「女性がRTDで男性が
   ビール」ってやっただろうが。昨日*、行きの電車の中で。

*本編の「今の時間」は、年が明けた1月1日の昼過ぎです。

真子:え……? あ! 勝さんがお弁当食べて米粒飛ばしたときだ!

勝 :どうでもいいことは覚えてるんだな。RTDがまさに缶チュー
   ハイとかだけど、この数字、見覚えあるよな?

-----------< 記事要約 >------------

           RTD    ビール類

男性20~29歳  11.2    10.3
男性30~39歳  12.6    15.4
男性40~49歳  12.5    16.6
男性50~59歳   9.0    16.4

男性合計*     45.3    58.7

女性20~29歳  14.0     7.0
女性30~39歳  14.8    10.5
女性40~49歳  14.3    11.5
女性50~59歳  11.5    12.3

女性合計*     54.6    41.3

*男性・女性の合計値は筆者が計算

2012/07/04 日経MJ P.2

-----------< 記事要約 >------------

真子:アレ? さっきの話と矛盾するようなしないよな……?

勝 :大きく見ると、女性は缶チューハイとかのRTDで、男性はビ
   ールっていうのは、実際そうなんじゃないのか?

真子:でも細かく見るとさっきみたいな話になるんだ?

勝 :細かいっていうか、「切り口」の話。性別に加えて「アルコー
   ル耐性」っていう切り口も重要だ、ってこと。

真子:でもさー、この表だと、女性は20代~40代まで、RTDの
   数字はほとんど同じだよね?

勝 :だから、RTDの「中身」が違う可能性がある。30代以上だ
   と、飲む商品のアルコール度数が上がってるかもしれない。

真子:あ、なるほど! こっちの表はアルコール度数の違いを、全部
   まとめちゃってるんだ。

勝 :だから、性別という切り口は「大きな違い」を見る「入り口」
   としてはいいけど、それで止まっちゃうと不十分だよな。

真子:そっかぁ。男性は「酔いたい」で、女性は「楽しみたい」じゃ
   不十分で……

勝 :だからホントは男女の違いじゃなくて、「アルコール耐性」っ
   ていう「体質」の違いじゃないのか、ってこと。

真子:あー、男性の方がアルコールに強そうだから、男女の違いだ、
   って思っちゃってたのかも……

勝 :少なくとも「男女」で思考を止めちゃいけないよな。

真子:お酒について考えるなら、「アルコール耐性」とかの「体質」
   を考えるのはそりゃそーだよね。

勝 :もちろん、「酒」だから「アルコール耐性」が重要な「体質」
   となるわけで、他の商品ならまた別の「体質」を考える。

真子:うん、自分の商品・サービスに深く関わる「体質」を考える、
   っていうことだよね?

勝 :そういうこと。アルコール耐性なんかは「飲めるか、飲めない
   か」だから、好み以前の問題になる。

真子:うん。「手っ取り早く酔いたい」から、アルコールが強いのを
   飲むって言うのも、まあ「当たり前」だよね。

勝 :へえ、じゃあその「当たり前」は真子の会社のイタリアンレス
   トラン、そーれ・しちりあーのでは、どうなってるんだ?

真子:へ?

勝 :当たり前、というからにはできてるんだろうな?

真子:な、何が?

勝 :カクテルを、アルコールの強い順とかに並べてるとか、「当た
   り前」のことをやってるんだろうな?

真子:う、そ、それは……

勝 :アルコール度数が全く違う、ワインとブランデーを近くに並べ
   たりしてないよな?

真子:さ、さあ……?

勝 :大体、2012年4月23日号で、この話、したよな?

http://archive.mag2.com/0000111700/20120424023000000.html

真子:あ、あはは……はいはい、すみませんでした! やってません
   でしたぁ!!

勝 :でた、お得意の開き直り。

真子:あーあ、女性もこういうストレスが貯まって、酔いたくなるん
   だろうなあ……勝さんみたいな人に意地悪されて、さあ……

勝 :何が「意地悪」だ。真子はアルコール耐性もストレス耐性もあ
   る「体質」だから、大丈夫だろ。

真子:何よ、このか弱い乙女に向かって……

「逆だ、オマエの方がか弱いオレにストレス与えてるだろうが。」
「そんなことないもん。勝さんに幸せな時間を提供中♪」
「いっつも邪魔してきやがって……」
「勝さんは怒り耐性が低いんだよ、きゃははは」
「ふ、ざ、け、ん、な!」
「ほらあ、怒り耐性低すぎぃ。真子みたいにおおらかにならなきゃ」
「ものすげーストレスが貯まってきたぞ……」

勝が無言でケーキをパクつく。

「きゃははは、勝さんはストレス貯まるとケーキなんだぁ!」
「……」
「ほら、段々幸せそうな顔になってきた♪」
「ふう……オマエといるとケーキ食う量が増えるわ……」

勝はコーヒーを一口すすると、幸せそうな顔をした。

次号に続きます!

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◆今日のまとめ
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●切り口の3つめは「体質」。自社の商品・サービスにとって重要な
 「体質」は何か、考えてみよう!

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━特別編Vol.213(累計0989) 2013/02/11

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●セグメンテーションの切り口の4つめは「所有資源」。まずは、年
 収の違いを考えよう!

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◆まずは、前号の復習から!
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*本編の「今の時間」は、年が明けた1月1日の昼過ぎです。

1月1日、初詣に出かけた帰りにカフェに寄った勝と真子。カフェで
レッスンの続きが始まっている。

「私達、お正月からこんなにケーキ食べてコーヒー飲んでるっていう
 のも、なんなんだろーね、きゃははは」
「別にお正月とか関係ないだろ。今日も平常営業って感じだな」
「まあ確かに私達らしいっていえばそーなんだけどさー」
「っていうかさ、ここんところ毎年こんな感じだよな……」
「あ、そーだねー。年末年始は毎年、ふ、た、り、き、り」
「全然違うだろ。親戚一同バカ騒ぎじゃねーかよ」
「やっだー、真子とふたりきりになりたいんだー。今、そーだよ♪」
「いや、できれば早く帰りたい」
「またまた照れちゃってー。この話、全然終わる気配ないよねー」
「どうしようかね、ホントに……」

勝 :まあとにかく前号の復習からな。

真子:うん。まずはセグメンテーションの切り口の2つめ、「困りご
   と」の事例。「大人のための音感トレーニング本」をやった!

真子が勝にノートを見せる。

○ステップ1:顧客像の具体化
・「音程感」を鍛えたい楽器演奏者などのプロ、セミプロ

○ステップ2:ニーズの普遍化
・歌がうまくなりたい!

○ステップ3:ニーズで人を括る

1)人前で歌を歌うときに、恥ずかしく見せないようにしたい
・カラオケ好きの中高年
・合唱団
・幼稚園などの先生
・結婚式で歌の出し物をする人

2)音楽の成績を上げたい
・小学生、中学生とその両親

勝 :OK。大分「構造化」されるようになってきたな。

真子:うん。整理の仕方がわかってきた。あと、セグメンテーション
   の切り口の3つめ、「体質」を考えた!

勝 :それで?

真子:お酒なんかだと、「男女」の違いに加えて「アルコール耐性」
   つまり「お酒に強い弱い」を考えないといけない!

勝 :それによって、選ぶ商品が違うからな。

真子:そーだよねー。フツーに考えれば、アルコールが弱い商品を選
   ぶ人はすぐ「女性」って思っちゃうけど……

勝 :そこで、もう一声「何でだ?」という問いを発せられるかどう
   かだよな。そうすると「あ、お酒に弱いからだ」と気づく。

真子:なるほどぉ。そうすれば「男女じゃなくて、お酒の強い弱い」
   だって気づくか……

勝 :そういうこと。性別・年代のセグメンテーションの見えにくい
   弊害が、それで「切れた」と思って思考停止しちゃうこと。

真子:あー、たしかにそーだね-。「20代女性」とか言うと、ター
   ゲティングが「できた気」になっちゃう。

勝 :そのさ、できた「つもり」、わかった「つもり」っていうのが
   一番恐いんだよな。そこで思考も進歩も止まるからな。

真子:勝さんは疑り深いから、「それホントか?」とか「何で?」っ
   てしつこく訊くよね、きゃははは。

勝 :疑り深いのもあるけど、より考えたいっていうか、そもそも競
   合と同じ切り口だと、競合と同じ発想になるだろうが。

真子:あ、そっか、だからかー。性格悪いだけかと思った、きゃはは

勝 :別に性格悪いことは否定しないから、どうでもいい。真子に嫌
   われても何の「重要性」もないからな。

真子:もー、素直じゃないなー。性格悪いだけじゃなくて、天の邪鬼
   なんだよねー、きゃはは。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆切り口3:体質 「肌質」と「髪質」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

勝 :「体質」という意味では、こういうのも「体質」に分類される
   よな。化粧品の事例だけど……

勝が例によってノートパソコンを軽快に操作し、真子に向ける。

-----------< 記事要約 >------------

○資生堂は2011年秋、敏感肌用化粧品「dプログラム」の大幅刷
 新に踏み切った。医薬部外品の成分を新たに使い、老化と肌過敏の
 両方をケアする機能を強化。既存品では満足しきれない顧客を取り
 込みつつある。

○開発の着想は「40~50代の女性の敏感肌の意識が大きく変わっ
 た」(同社)ことにある。資生堂の調査によると、自分が敏感肌だ
 と思う女性は増加傾向。ホルモンバランスが乱れやすく、肌が敏感
 になりがちな20~30代では70%前後、バランスが安定する
 40~50代でも50%前後に上る。仕事と家庭の両立でストレス
 を抱える40~50代の女性が増え、敏感肌用化粧品はもはや若年
 層やアトピーなどを抱える女性を対象にした商品ではなくなった。

2011/11/07 日経MJ P.6

-----------< 記事要約 >------------

真子:あ、そうだよね。「肌質」なんかも、「体質」の一種だよね。

勝 :年齢で肌が変化するから年齢も関係ありそうだけど、「敏感
   肌」は年齢では括りにくくなった、ってことみたいだな。

真子:そっか、確かに年齢もだけど、「自分に合った」コスメ、って
   いうのは大事だよね。

勝 :その「自分に合った」っていうのが、体質、肌質なんだろ?

真子:そこは確かに、「好み」の問題じゃなくて「体」の問題だから
   「体質」だねー。

勝 :それに近いモノとしては、こんなのもあるな。2010年7月
   29日号、セグメンテーションの号だな。

-----------< 記事要約 >------------

○ツムラライフサイエンスの女性用育毛剤「モウガLモルティ」が
 2010年4月の刷新以降、前年比5割増の売上。

○刷新時に「髪につや」「髪にハリ・コシ」「髪にうるおい」と目的
 別の3タイプに商品を分けた。パッケージにも各目的を明示し「消
 費者にわかりやすい商品になった」(同社)。

○各タイプとも、消費者意識を反映させた。同社が独自調査したとこ
 ろ、20~40代女性は「髪のつやのなさ」、40代以上は「髪に
 コシがない」など、年代によって悩みが違うことがわかった。男性
 が「抜け毛予防」に集中するのとは対照的だ。

○目的に応じて主要成分も変えた。「髪につや」タイプは保湿成分の
 ホホバ油を使用。「髪にハリ・コシ」タイプは毛髪由来アミノ酸を
 配合し、髪にボリューム感を出せるようにする。主要成分に応じた
 生薬を配合し、頭皮の血行促進も期待できるという。

2010/07/07, 日経MJ(流通新聞), 6ページ, 有, 616文字

-----------< 記事要約 >------------

勝 :会社名は「ツムラライフサイエンス」から「バスクリン」に変
   わったけどな。

真子:そういえばやったような……売上5割上がるなんてスゴイな、
   と思った覚えが……確かに「髪質」も「体質」の一種かぁ。

勝 :そうそう。「肌質」とか「髪質」とか、ひっくるめて「体質」
   って呼んでる。

真子:要は「好み」じゃなくて「身体的特徴」ってこと?

勝 :身体的特徴、っていうと「アルコール耐性」なんかが違和感を
   感じるから、まあ「体質」だろうな。

真子:そっか、「体質」って言った方が近いんだね……

勝 :で、この号はものすごくうまく「切れた」号なんだよ。

真子:出た、いつもの自画自賛。

勝 :まあそうなんだけど、何でだと思う?

真子:勝さんのアタマの中なんてわかるはずありませーん。

勝 :あのなー、今やってることと関係ない質問をオレがするはずが
   ないだろうが。

真子:え? あ、そっか、セグメンテーションだから……セグメンテ
   ーションができれば、全て切れる、みたいな話?

勝 :そうそう。この号でもやったけど、製品HPからまとめてみよ
   うぜ。HPのメッセージは当時とほとんど変わってない。

真子:ふーん、じゃあ今もうまくいってるんだろうねー。

勝が「そうだろうな。このページだ。読んで、セグメントとつなげてみ
ろ」と言って真子にノートパソコンを見せる。

-----------< HP抜粋 >------------

○薬用育毛化粧水:もっと健康でつややかな髪へ
・ホホバオイル新配合 髪のつや感を向上しました
・抜け毛予防&育毛タイプ

○薬用育毛ローション:もっとハリとコシのある髪へ
・毛髪由来アミノ酸新配合 髪にハリとコシを与え、髪のボリューム
 感を出します
・発毛促進&脱毛予防タイプ

http://www.bathclin.co.jp/products/hair/molty/

-----------< HP抜粋 >------------

真子は手慣れた手つきで、ノートにまとめ始める。勝がケーキを2口
つまむと真子が「うん、できた!」と言ってノートを勝に見せる。

  年齢    → 髪質ニーズ  →  製品とその特徴

 20~40代   髪のツヤ     薬用育毛化粧水
                 ホホバオイルでつや感を上げる

 40代以上    髪のコシ     薬用育毛ローション
                 毛髪由来アミノ酸で、コシと
                 ボリューム感を出す

勝 :早いな……うん、OK。

真子:カンタンだった♪

勝 :カンタンに見えるけど、これに気づくのが大変なんだよ。気づ
   いちゃうと、「当たり前」に見える切り口になる。

真子:あー、そっか、セグメンテーションがよくできてるから「カン
   タン」にぱぱっと整理できるんだ!

勝 :そういうこと。

真子:製品特徴もそうだよね。髪質の違いによる「ニーズの違い」が
   はっきりわかってるから、その通りの特徴になってる!

勝 :その「ニーズの違いを洗い出す要素」が、「うまい切り口」に
   なるんだよな。

真子:なるほどぉ、「何がニーズの違いを産み出すか」か……

勝 :だってニーズが同じなら、やることが一緒になるから「分ける
   必要」がないだろ。どうせ同じ事やるんだからさ。

真子:ニーズに違いがないなら、やることが同じだから……括ってし
   まっていいってことだ!

勝 :性別年齢に関わらず、、同じモノを買っていただけるなら、分
   けるだけムダ。分けないですむなら、分けない方がいい。

真子:何で?

勝 :分けることの「手間」とか「コスト」は、結構無視できないか
   ら。複雑にしない方がいい。

真子:そっか、消費財とかだと40通りの商品なんて出せない、って
   ことだよね……

勝 :このモウガLモルティも3通りの商品にしてる。だから、その
   「3通り」に分けるための「括り方」が大事だよな。

真子:この場合は「髪質の違いによるニーズの違い」ってことだね。

勝 :そうだな。で、「年代によって悩みが違うことがわかった」っ
   て記事にあるけど、この「検証」が大事。

真子:「年齢でニーズが違う」ことを確認しよう、ってことだよね?

勝 :そう。もちろん「年齢」は、分析の「入り口」として重要だし
   「ニーズの違い」を検証できているなら年齢で切ればいい。

真子:この場合は、「髪質」が年代によって違う、っていうことだか
   ら、年代より、あくまで「髪質」なんだよね?

勝 :そうだな、その区別は重要。切り口はあくまで「髪質」。その
   切り口を「描写」すると「年代」になったってこと。

真子:そっか、「髪質」っていう「ニーズの違いを表す何か」、が、
   この場合はたまたま「年代」だったってことだ!

勝 :そうなんだよ、その検証をしないで性別年代で切っちゃうと、
   「切れてナーイ」っていうあのCMみたいなことになる。

真子:きゃーははは、あったねー。

勝 :で、この「モウガLモルティ」のパッケージには、こう書いて
   あるだけなんだよな。

 ○薬用 頭皮の育毛化粧水:うるおう髪と健康な頭皮へ
 ○薬用 育毛ローション:もっと健康でつややかな髪へ
 ○薬用 育毛エッセンス:もっとハリとコシのある髪へ

http://www.bathclin.co.jp/products/hair/molty/

真子:そりゃ、キャッチコピーだから、書くでしょ?

勝 :そうじゃなくて、別に「40代以上」とか書いてないだろ? 
   それでも、40代以上の方は買うだろ?

真子:そりゃそう……あ! そうか、別に「40代以上」とか書かな
   くても、そのニーズがある人は買ってくれる!

勝 :そう!! だから、この「髪質」に基づいたニーズをきちんと
   「メッセージ」として出せば、ニーズを喚起できる。

真子:そっかあ……すっごい一貫性があるね……ニーズ、製品特徴、
   メッセージ……

勝 :これ、すっごい大事な話で、なんと「お客様は自分の欲しいモ
   ノを買う」んだよ。

真子:きゃーははは、当たり前だー!

勝 :当たり前だけど、すっごい大事だから繰り返す。「お客様は、
   他の誰が欲しいモノでもなく、自分が欲しいモノを買う」

真子:だから当たり前だってばー。

勝 :だろ? となるとさ、「お客様を起点に、お客様は勝手に一貫
   性を取る」んだよ。「自分の欲しいモノを買う」という意味で

真子:えっと……そうか、だから「売れるモノ」には、必ず一貫性が
   あるんだ! 「お客様が欲しがる」という意味で!

勝 :そういうこと。そしてその「お客様が欲しがる」モノこそ、ま
   さにニーズ。

真子:このモウガLモルティの場合は「髪質」ニーズってことか……

勝 :「ニーズの違い」を起点にしているから、さっき真子が言った
   みたいに、すっごく一貫性がある。

真子:きっとそれが「切れてる」セグメンテーションなんだよね! 
   ニーズの違いがクリアなら、それに応えればいいだけ。

勝 :それそれ。ニーズの違いが明確に出ていれば、あとは直線的な
   ロジックで解決できる。売り物とか、売り方とか。

真子:逆に言うと、「切り口」は、直線的なロジックじゃわからない
   ってことだよね。

勝 :そうだな。だから「個別具体化して神経衰弱」してみるしかな
   いと思う。

真子:そっかあ。やっぱりその「切り口」を探すところがムズカシー
   んだね。

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◆切り口4:所有資源  年収
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

勝 :じゃあ次の切り口に行こうぜ。次の切り口は「所有資源」。

真子:ショユーシゲン? って何?

勝 :平たく言えば、「持っているもの」

真子:えっと……わかった! 私のこのび、ぼ、う♪

勝 :まあ、わかりやすいのは、例えばお金とか車とか。年収なんか
   がその典型。

真子:無視しないでよー、真子の美貌はお金で買えないのにー。

勝 :まずは「お金」だな。年収と家の関係を見てみよう。

勝が真子にノートパソコンを見せる。

-----------< 記事要約 >------------

○ファミリー(第1子が小学校入学前)

世帯年収          購入価格     専有面積

400万円未満       2827万円   70平米
400~600万円未満   3466万円   73平米
600~800万円未満   4027万円   76平米
800~1000万円未満    4558万円   76平米
1000~1200万円未満     5063万円   77平米
1200万円以上      6108万円   77平米

(2012年5月15日 SUUMO首都圏版 P.14
 新築マンション契約者)

-----------< 記事要約 >------------

真子:へー、こんなところにもいいデータがあるんだあ。ホントこの
   パソコンは何でも出てくる魔法の小箱だね。

勝 :いいデータはちゃんと取ってあるんだよ。SUUMOって、い
   いデータを公開してくれてるんだよな。

真子:真子のために、あ、り、が、と、はーと。

勝 :真子のためじゃないだろ。で? データを見たのか?

真子:あ、えっと……あ! 年収とマンション購入価格は正比例!

勝 :このデータは「第1子が小学校入学前のファミリー」だから、
   家族構成による違いを除去していて、結構正確だと思う。

真子:でもさ、「専有面積」はあんまり増えないね。年収が高いほど
   若干増えるけど、ほとんど同じ。

勝 :そうそう。だから、広さではなく、都心への近さとか、床暖房
   とか、そういうところにお金かけてるんだろうな。

真子:そっか……あ、ということは、「広い家」を作ったからといっ
   て、高年収層が入ってくれるとは限らない!!

勝 :鋭い! そういうこと。「高年収が何につながるのか」という
   ことを考えないといけない。

真子:そうかー、何にでも影響するとは限らないんだね-。

勝 :むしろ、高年収層は忙しいだろうから都心への近さを重視す
   る、というニーズが推測できる。

真子:じゃあ、逆に「専有面積」には何が影響するのかなー?

勝 :まず思い浮かぶのはあの要素だな。考えてみろよ。

真子:えっと……あ、「家族の人数」だ!

勝 :そう。同じデータから……

-----------< 記事要約 >------------

                     専有面積

ファミリー(第1子が小学校入学前)  70~77平米
ファミリー(第1子が小学生以上)   69~79平米
カップル               68~73平米
シングル(男性)           58~61平米
シングル(女性)           50~62平米

(データ:同上)

-----------< 記事要約 >------------

真子:あー、確かにシングルよりカップル、カップルよりファミリー
   の方が専有面積が広いんだね。

勝 :年収に関わらず、な。さらに、子供の年齢は、専有面積との関
   係はあまりなさそうだよな。

真子:あ、ホントだねー。じゃあ、やっぱり「人数」ってことか。

勝 :それが重要な要素の1つではあるだろうな。子供がいれば、子
   供部屋が必要になるだろうし。

真子:こういうデータがあると、どの「切り口」が、自分の商品のど
   の部分に影響するのかしないのか、よくわかるね。

勝 :そう。だから、色々な角度からデータを見ていく必要がある。

真子:何が影響するのか、見てみないとわからないもんね。

勝 :これが「個別具体化して神経衰弱」ってこと。切り口の項目の
   「組み合わせ」。

真子:そっか、「組み合わせ」かー。この場合は、年収と「家族の人
   数」とかの。

勝 :そういうこと。じゃあこの「年収」の続きで、家計調査を見て
   いこうか。現時点では、確か2011年が最新のデータだな。

勝が「この辺に……」と言いながらパソコンを操作し、「あったあっ
た」と言って真子に見せる。

 年間世帯収入         月間消費支出

 ~252万円        134,776円
 252-371万円     197,381円
 371-508万円     239,318円
 508-731万円     279,396円
 731万円~        385,244円

<総務省 家計調査2011 表3>
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001070347

真子:えっと、左側が年間の収入で、右側が使ったお金……あ! 収
   入が高いほど「消費支出」が多い!

勝 :って見えるよな……だから、気を付けないとな。実は世帯収入
   が多いと、世帯人員も多いから、1人当たりで見る必要がある

真子:え……そうなの?

勝 :1人当たりで見ると、こうなる。見てみろ。

 年間世帯収入   世帯主年齢  世帯人員   1人当たり
                        月間消費支出

1)~252万    64,6  1.41人  95,586円
2)252-371万 60.0  2.09人  94,441円
3)371-508万 54.9  2.54人  94,220円
4)508-731万 51.5  3.00人  93,132円
5)731万~    53.6  3.33人 115,689円

真子:えっと……あ! 731万円から下の4グループは、ほとんど
   変わらない!

勝 :そうだな。世帯人員が多くて働いている人が増えれば、その分
   世帯収入だって上がるしな。

真子:ひどい! ひっかけ問題なんてずるい! 意地悪だ!

勝 :だから気を付けろ、って言ってるんだ。

真子:じゃー、年収なんて見ても意味ないじゃん。この731万円以
   上のグループだけが消費支出が大きいってだけじゃん。

勝 :ちょっと待て、まず、大きな意味では、その731万円という
   あたりが1つの分岐点になることはわかるだろ?

真子:え? あ、なるほど、それ以上とそれ以下で、消費行動が違う
   かもしれないんだ。

勝 :だから、世帯年収700万前後が1つの分岐点、っていうのは
   覚えておいた方がいい。

真子:なるほど……そういえばそんな気もするね。

勝 :それから、「月間消費支出」全体で見ると変わらなくても、項
   目によっては結構変わるんだな、これが。

真子:そ、そうなの?

勝 :じゃ、見ていこうぜ。世帯収入の金額は省く。下に行くほど世
   帯年収が高い。数字は「1人当たり」の月間消費支出、な。

真子:う、うん……

     食料    一般外食
1) 24,652  3,789
2) 24,328  3,812
3) 23,207  4,267
4) 21,786  4,064
5) 24,615  5,032

(データ:同上)

勝 :どうだ? まず、トータルの「食料」の支出は年収では変わら
   ない。

真子:へー、世帯年収が高いからっていっぱい食べるわけじゃないん
   だねー。あ、でも「外食」は年収が高いほど高い!

勝 :そう。だから「年収」が与える影響は費用項目によって違う。
   真子の商売は「外食」だから、年収が影響するな。

真子:そっか、じゃあ私の会社のセグメンテーションの切り口の1つ
   に、「年収」が入る可能性があるってことだ!

勝 :そうそう、今のは適切な表現だな。着物類で見るとこんな感じ
   になってる。

     洋服    下着    履き物類
1)  1,018  339   406
2)  1,183  348   422
3)  1,309  352   452
4)  1,401  348   518
5)  2,211  443   681

(データ:同上)

真子:下着はそんなに年収の影響は無いけど、洋服とか履き物類は年
   収で違うんだね!

勝 :下着は、高年収層も低年収層も同じようなものを履いてるんだ
   ろうな。

真子:同じ着物なのに、面白いねー。

勝 :切り口4:所有資源の「年収」を見るのは大事だけど、それが
   何にどう影響するか、っていうのを考える必要があるわけだ。

真子:こういうデータも知っておかないとダメかー。

勝 :当然だろ。

「数字はやだなー」
「大体真子は、数字に弱すぎなんだよ。社長なんだから……」
「苦手なもんは苦手だよー。いーじゃん、望ちゃんがいるし」
「社長が自分でできなくてどうするんだよ。大体だな……」
「えー、お説教は、お正月からやめよーよ*」

*本編の「今の時間」は、年が明けた1月1日です。

カフェの従業員が2人に近づいてくる。

「お客様、申し訳ございませんが閉店の時間で……」
「え? うわあ! こんな時間だ!」
「きゃあ、ホントだー! 宿に戻らないと! ね、勝さん!」
「飯がなくなる! 真子、電話しといてくれ」
「うん」

真子が携帯で電話をかける間に、勝はバタバタとパソコンをバッグに
しまい始めた。

「よし、出るぞ」
「うん!」

カフェを出ると、外はいつの間にか暗くなっていた。あわてて駆け出
す2人。

「きゃははは、そー言えばさー、去年のソフト資源のSHOPのとき
 はこんな感じの終わり方だったよねー」
「げ……そういえばそうだったな。しかも今回はまだ終わってない」
「じゃあ、ご飯食べてから、続きだね!」
「ケーキは食べても、腹は減るもんだな」
「うん!」

2人は、暗くなった道を宿に向かって軽快に駆けていった。

次号に続きます!

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◆今日のまとめ
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●セグメンテーションの切り口の4つめは「所有資源」。まずは、年
 収の違いを考えよう!

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━特別編Vol.214(累計0990) 2013/02/14

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●セグメンテーションの4つめの切り口は「所有資源」。年収に加え
 て時間、エネルギー、所有物など様々な所有資源が行動を変える!

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◆まずは、前号の復習から!
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*本編の「今の時間」は、年が明けた1月1日の夜です。

1月1日、初詣に出かけた帰りにカフェに寄った勝と真子。カフェで
レッスンをしていたら、いつのまにか夜に……宿に走って帰る2人。

「はあ、はあ……着いたな」
「ふう、ふう……お疲れさまー」
「真子、結構走れるじゃねーか」
「だって若いもん。勝おじさんとは違って♪」
「おじさんで悪かったな」
「ねー、宿には電話したんだから、走って帰る必要あったの?」
「……そういえばそうだな……」
「なんだぁ……ふう……走り損だあ……」
「運動になったからいーじゃん。どうせ食っちゃ寝してんだろ?」
「そんなことないもん。よく食べてよく寝てるだけだもん」
「……やっぱり、食っちゃ寝してるじゃねーかよ」
「寝る子は育つ♪」

そのまま食堂に入っていくと、売多家の他の親戚一同は既に食事を終
えたようで、勝と真子の2人分だけがテーブルに残されている。

「お、良かった、飯残ってた。うまそうじゃん。食おうぜ」
「ケーキ2個ずつ食べてるのに、すぐ晩ご飯食べられる私達♪」
「当然だ。しかしオレ達だけか。親戚一同はもう部屋で宴会か?」
「まーいーじゃん、ふ、た、り、き、り♪」
「そうだな……せっかくだから食べながら続けるか」
「えー、食べながらやるのー?」
「時間もったいないだろ。今さら真子と雑談してどうするよ」
「やるのはいいんだけど、勝さん興奮すると食べ物飛ばすからなあ」
「それくらいよけろよ」
「もー……」

固形燃料に火をつけ、鍋を温め始めると、勝がノートパソコンを、真
子はノートを取り出し、レッスンが再開する。

勝 :じゃあ前号の復習。まずは「括って広げる3ステップ」から。

真子:うん!

真子が早速ノートをテーブルに広げる。

○セグメンテーションの「括って広げる3ステップ」

ステップ1:顧客像の具体化
ステップ2:ニーズの普遍化
ステップ3:ニーズで人を括る

勝 :そうだよな。それで、ここまで色々な切り口を見てきて……

真子:前号は、切り口4、「所有資源」。これさー、「持ち物」とか
   にしよーよ。言葉がムズカシー。

勝 :じゃあ真子は「持ち物」でいいよ。「小学生割引」で。

真子:え? 「小学生割引」?

勝 :そう。真子の漢字のレベルが小学生だから。遠足のしおりに
   「もちもの」とかひらがなで書いてあるだろ?

真子:や、やだ! じゃあ「所有資源」でいいよ……

勝 :前号で見た「所有資源」は?

真子:年収! 年収が高いほど、高い家が買える!

勝 :そうだな。でも年収が影響しないものもあるだろ?

真子:うん。家で食べる「食料」はあまり関係ないけど、「外食」は
   年収が高い方が多い。

勝 :他には?

真子:あと、「洋服」や「履き物類」も年収が高いほど高くなるけど
   「下着」はそうでもない!

勝 :だから、何が自分の商品・サービスの購入に影響するか、とい
   う「切り口」に万能なものはないんだよな。

真子:確かにそうだねー。だから色々な「切り口」を考えなきゃダメ
   ってことだよね。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆切り口4:所有資源  時間・エネルギー
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勝 :お金以外にも所有資源はたくさんある。お金以外で必要な「所
   有資源」には何がある?

真子:え? お金以外で? お金出せば何でも買えるんじゃないの?

勝 :そんなことないだろ。お金で買えない最たるものは何だ?

真子:あ! 「時間」だ!

勝 :そうそう。時間がある、ないでニーズが違うよな。ある意味で
  「お金」より重要かもしれない資源だからな。

真子:確かに! お金で時間を買う、っていう消費行動もあるよね!

勝 :そのわかりやすい例が「速達」。急いでいるときは、お金がか
   かっても早く送りたいだろ?

真子:うん。通販とかも、買いに行く「時間」がないときには便利だ
   よね。

勝 :共働きでお子さんがいる家庭なんかは「時間」がとにかくない
   よな。

真子:うん! その「時間」のあるなしでニーズが変わる!

勝 :保育所なんかは、ある意味でその「時間」を売っているとも言
   える。お父さんお母さんは「時間を買ってる」。

真子:そっか、「忙しいかどうか」っていう切り口もあるんだね。

勝 :そうなんだけど、ステップ1で顧客像を具体化するときは「忙
   しい人」で止めちゃダメだぞ。

真子:え、そ、そうなの?

勝 :……朝の子供の送り迎えで忙しいのか、夜の残業で忙しいのか
   なんかで全然違うだろうが。

真子:あ、た、確かに……

勝 :「忙しい」と関連して、こういうのもある。

勝が、ノートパソコンを真子に見せる。

-----------< 記事要約 >------------

◇資生堂はメーキャップを楽に落とせる化粧下地「フルメーク ウォ
 ッシャブル ベース」を2013年2月発売。通販サイトの先行販
 売で1カ月の売上が計画の2倍となり、当初予定を約2週間前倒し

◇この化粧下地は肌に塗ると、薄い膜ができる。膜がお湯になじむと
 上に重ねたメークごと剥がれるため、クレンジング料を使わなくて
 もメーク落としができるという。

2013/01/25 日本経済新聞 朝刊 P.31

-----------< 記事要約 >------------

真子:あー、確かに仕事から疲れて帰ってきて、メーク落とすの大変
   なんだよねー……勝さんにはわからないかもしれないけど。

勝 :ベッドに倒れ込んだままメーク落とさないで寝ちゃって、翌朝
   大慌て、なんて真子やってそうだよな……

真子:や、やだー……な、何でわかるのよ……そ、そんなこと……し
   ないもん……

勝 :「忙しい」のもそうだろうけど、仕事から帰ってきてメークを
   落とす一手間が大変なんだろ?

真子:そうそう、そうなのよ……

勝 :そういう意味では、これも同じじゃないかな。

-----------< 記事要約 >------------

◇味の素が実施した「シニア調査」で、食生活では60、70代は節
 約するより、多少お金をかけても良いものを食べたいというニーズ
 が高いことがわかった。

◇70代前半までは手作り志向が強いが、70代後半になると、やや
 面倒になり、「中食」や冷凍食品の利用が高まる。「食事作りは下
 ごしらえから全部自分で手作りする」という人が、70代後半で急
 に減少し、弁当・総菜や加工食品を使用する割合が増加。

◇品質や安心・安全重視の姿勢が強いのもこの年代の特徴。これらの
 意識や行動は、60代後半から70代前半まで高まるが、70代後
 半いわゆる後期高齢者になると急激に下がる。加齢による影響が大
 きくなり、続けたいのにできなくなり、面倒感が高まるようだ。

2013/01/23 日経MJ P.2

-----------< 記事要約 >------------

真子:えっと……70代後半からは、自分で作らない? へー、そう
   なんだ……「時間」がないわけじゃない……よね?

勝 :働いてないとすれば、時間はそれなりにあるだろ。足りないの
   は、「手間」っていうか「エネルギー」だよな。

真子:あ、「エネルギー」か……なるほどね……

勝 :別にシニアだけじゃないよな。真子だって、忙しいときには、
   出かける「エネルギー」がないだろ? 休みの日にも、さ。

真子:あー、確かに……

勝 :さっきの、会社から帰ってからメークを落とすのが大変、って
   いうのは、時間に加えて「エネルギー」がないんじゃないか?

真子:あ、そっか、「エネルギー」だよ、そうそう。時間もそうだけ
   ど、疲れてるとやる気がなくなっちゃう。

勝 :だからこの「エネルギー」っていう「所有資源」も大事になる
   場合もある。

真子:そっか、お金、時間、それにエネルギーも所有資源なんだ……

勝 :家事代行サービスなんかは、「時間」があっても、「エネルギ
   ー」が無い人にもニーズがあるかもな。

真子:スーパーのお総菜なんかもそうだよね。時間があっても作る気
   力、「エネルギー」が無いときってあるもんね。

勝 :そういう意味では、風邪引いたときもそうだな。「ぐったりし
   た」なんていうのは、要は「エネルギー」が無いんだ。

真子:なるほどねー、エネルギーも「所有資源」の一種か……

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆「ニーズの境目」を明確にしよう!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

勝 :でさ、この記事だと「70代後半」になると自分で作るエネル
   ギーがなくなるってことだよな?

真子:うん。それが?

勝 :だから、それが「節目」っていうか、「ニーズの境目」ってこ
   とだ。70代半ばを「境目」にして、ニーズが変わる。

真子:あ……そこがまさにセグメントの「境目」になるんだ!

勝 :そう。セグメンテーションは、この「ニーズの境目」を探す作
   業とも言える。その意味で、この調査はよくできてる。

真子:うん! 70代半ばでニーズが変わることが明確になったんだ
   もんね。

勝 :よく「シニア層」って一括りにされるけど、それも「20代」
   と同じでいくら何でも広すぎる。

真子:確かに「シニア層」って言っても、色々いらっしゃるよね。

勝 :まずは、60代前半に、引退・退職っていう「仕事の境目」が
   あるよな。ここで大きくニーズが変わる。

真子:うん。リタイアすると、生活がガラっと変わるよね。

勝 :で、その次にこの70代半ばの「エネルギーの境目」が来るん
   じゃないか?

真子:あ、だから「70代」って一括りにしちゃダメなんだ! 70
   代前半と後半で「エネルギー」が違うから!
 
勝 :そうなるだろうな。ここでは「食事を作るエネルギー」だけど
   もしかしたら「旅行するエネルギー」とかもそうなのかも。

真子:あーなるほど、自分ではなかなか動きにくくなるんだ。

勝 :多分な。シニアの方が使う言葉だと「億劫」になるんだろう。

真子:じゃあこの味の素の調査って有り難い調査だねー。

勝 :こういうのを、業界を超えて共有したり分析してみると、「シ
   ニア層」のより詳細なセグメンテーションができそうだよな。

真子:なんかさー、「エネルギー」っていう切り口が面白いよね。

勝 :「大切なものは目に見えない」っていうか、見えないからこそ
   見ようとしないと見えないんだよな。

真子:やだー、何かろまんちっくー。星の王子さまみたい♪ 勝さん
   は王子様っていうかオジサマだ、け、ど♪ きゃははは。

勝 :いちいちうるさいよ、オマエは。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆切り口4:所有資源 様々な「所有資源」が購買行動に影響する
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

真子:所有資源って、「お金」「時間」「エネルギー」って一杯ある
   んだね……

勝 :まだあるぞ。例えば、「在庫スペース」もそう。

真子:在庫スペース、って?

勝 :例えば「冷蔵庫の大きさ」。冷蔵庫・冷凍庫の大きさで、スー
   パーで1回に買える量が違う。

真子:あ、なーるほどぉ! 冷蔵庫が小さいと、あんまり多くの物は
   買えないから、コマメに買い物に行くね!

勝 :そうそう。購買頻度が上がる。逆にでっかい冷蔵庫があれば、
   ドバっとまとめ買いができる。アメリカなんかそうだよな。

真子:あー、人間が入りそうな冷蔵庫だもんね。ディスカウントスト
   アのまとめ買いはおっきな冷蔵庫を前提としてるよね。

勝 :その意味では、車の有無も、ニーズの違いを産むよな。

真子:あ、車も「所有資源」か……

勝 :車があればさ、遠くのスーパーに行って、ビールを箱買いして
   車で持って帰ったりできるからな。

真子:あ、そーか!

勝 :都心に住んでるとその感覚はあんまりないかもしれないけど、
   郊外のスーパーだと缶ビールはハコで売ってるぞ。

真子:なるほどぉ、車があれば持って帰れるからね。無いとムリだぁ

勝 :逆に、車を持ってない人も結構いるだろ?

真子:私、車持ってない。そっか、その場合には「宅配」してあげる
   っていうことになるんだ!

勝 :そうそう。逆に、車で来る人には「宅配」はそれほど刺さらな
   いかもしれないよな。

真子:確かに「車」っていう「所有資源」が「ニーズの違い」につな
   がるねー。

勝 :居住スペースなんかもそうだよな。部屋の広さとか、庭がある
   かどうか、とか。

真子:え?

勝 :例えば、真子はどれくらいのサイズのテレビ、使ってる?

真子:私の部屋はそんなに広くないから…って、知ってるくせにー。

勝 :だから、部屋の広さによって、買える液晶テレビのサイズが変
   わるだろうが。

真子:あ! そうか、「部屋の広さ」だ!! 部屋が大きい方が、大
   きいテレビが置ける!

勝 :だよな。電機メーカー各社によると、「画面の高さ×3倍」が
   「適切な視聴距離」らしいぞ。

http://www.toshiba.co.jp/regza/detail/howto/size.html
http://www.sony.jp/bravia/select/guide.html
http://www.sharp.co.jp/support/advice/aquos/use_01.html

真子:じゃあ3m離れて視るときは高さ……え!? 高さ1mのテレ
   ビがいいの!?

勝 :そういう計算になるな。実際、ブラウン管より液晶の方が小さ
   く見える感じはする。

真子:じゃあ、液晶テレビの販売員さんは、お客様の部屋の大きさを
   訊かないとダメだってことだねー。

勝 :広さとか間取り、それにアンプやスピーカーみたいなオーディ
   オ機器をを持ってるか、とかも知らないと、だよな。

真子:あ、そっか、スピーカーも所有資源だ。

勝 :商品・サービスは、それ単独で成立しない場合が多いから、そ
   の「周りに何があるか」が、ニーズを決めることがある。

真子:えっと……そっか、TPOを構成する持ち物、ってことだ。

勝 :そうそう。TPOを構成する他の「所有資源」。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆切り口4:所有資源が「制約要因」となる
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

勝 :さっきの液晶テレビの例なんかは、部屋の広さが「制約要因」
   になっている、とも言えるよな。

真子:制約要因?

勝 :いくら大きいテレビを置きたくっても、部屋が狭いと置けない
   ってことだ。

真子:あ、なるほど。

勝 :そうそう。だから、当然大型TVの顧客ターゲットは、ある程
   度大きい部屋の居住者、となる。

真子:商品特性によって、自動的に決まってくる、ってことかあ……

勝 :そうとも言える。家を買うときの「年収」もある種の制約要因
   だな。高い家を買いたくっても買えないからな。

真子:そりゃそーだね。お金は制約要因だよね。

勝 :それに、「冷蔵庫」同様、「洋服ダンス」なんかも「在庫スペ
   ース」としての「制約要因」になる。

真子:あはは、確かにうちのタンス、もうパンパンだから、洋服が買
   えないや……

勝 :だろ? その意味では、「本棚」も「在庫スペース」としての
   制約要因となりうる。

真子:きゃははは、勝さんの部屋、本だらけだもんね!

勝 :それに、肉とか野菜とかの生鮮品もそうだぜ。包丁、まな板、
   フライパンがあることを前提としてるだろ。

真子:え? あ! 包丁とかフライパンがない人もいるってことだ!

勝 :普通の家庭はあるだろうけど、男性の1人暮らしとか、寮に入
   っている人は包丁持ってないかも。電子レンジはあっても、な
 
真子:なるほどー! 包丁とかまな板が、生鮮食品の「制約要因」に
   なるんだ! それは盲点だった……

勝 :だから、肉とか野菜は、実は「包丁、まな板を持っている人」
   を自動的に顧客ターゲットにしているとも言える。

真子:そっか、だから自分の売り物が「何があることを前提としてい
   るのか」って考えないといけないんだねー。

勝 :そうそう。「切り口」以前の「基本的な前提条件」になるかも
   しれないからな。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆所有資源という「制約要因」から「解放」してあげよう
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

真子:あ……そうか、だから「お総菜」が売れるんだ! 包丁、まな
   板を持ってない人にとっては便利だから!

勝 :そう! 「包丁・まな板を持っていない」という所有資源の制
   約がある人には、その制約要因から「解放」してあげればいい

真子:あ……そうか! 「制約要因がある人」を「顧客ターゲット」
   にする場合には、「制約要因」から解放しないといけない!

勝 :そうすれば売れるようになるよな。スーパーの「お総菜」は、
   包丁、まな板以外の「所有資源」からも解放してるだろ?

真子:えっと……あ、「時間」と「エネルギー」が制約要因になって
   る人だ! 忙しい人とか。そっか、そう考えるんだ……

勝 :制約要因がある人を顧客にしたければ「制約要因から解放」し
   てあげる打ち手は有効だよな。

真子:なるほどねー。でも、どうすればいいのかな……?

勝 :やりようは色々ある。さっきの「洋服ダンス」が「在庫スペー
   スとしての制約要因」になっている場合は、どうする?

真子:えっと……そうか! タンスの在庫引き取りセールだ! どこ
   かの店でやってた!

勝 :そういうこと。在庫引き取りセールって、「洋服ダンスの在庫
   スペース」っていう制約要因を解決した打ち手と言える。

真子:うん! クリーニング店でも、最近「預かりサービス」とかや
   ってるよね。それも「在庫スペース」の問題かあ……

勝 :電子書籍が人気になりつつあるのも、「本棚」っていう「在庫
   スペース」の制約要因からの解放とも言える。

真子:うん、勝さんはとりあえずあの本全部何とかした方がいいよ、
   きゃははは。

勝 :家とか車を買うときにお金を貸す、っていうのもそうだよな。
   「現金」っていう制約要因からの解放。

真子:なるほどねー、「所有資源」のありなしで、打ち手が変わるん
   だねー。まさにセグメンテーションだ♪

勝 :そう。逆にさ、最近スマホとかから印刷できるようなプリンタ
   が出てるだろ? それは何だ?

真子:プリンタかぁ……あ、プリンタは「パソコン」を持ってないと
   使えなかったけど、その「制約要因」を外したんだ!

勝 :そうだよな。パソコンっていう「所有資源」でターゲットが決
   まっていたんだけど、その制約要因を外して、顧客を広げた。

真子:なるほど、そういう「切り口」もあるか……

勝 :あとは「車」も所有資源だけど、無い場合は制約要因になる。
   車を持ってないと移動が不便。

真子:そう? 都心だとそんな感じはあんまりしないけど……

勝 :ほら、去年の夏に、「密着軸」特集やっただろ?

真子:うん、あの勝さんお気に入りのペンションでやった!

勝 :車のないオレ等は移動に困るじゃん。多くのペンションが「自
   分で車で宿まで来い」って感じだからさ。

真子:あ、確かに! 車が「制約要因」になってた!

勝 :だから、「駅まで送迎します!」というあの宿の送迎サービス
   がすごい強みになるんだよな、車を持たない人にとっては。

真子:そうだよねー。じゃないと、ウチらは行けないもんねー。確か
   に、車持ってるかどうかでニーズが違うんだねー。

勝 :車の有無は、真子の会社のイタリアンレストラン、そーれ・し
   ちりあーのにも関係あるよな?

真子:そっか、駐車場を持つべきかどうかも変わるね。車を持ってる
   人を狙うなら、駐車場が必要、とか。

勝 :飲酒運転の問題があるから飲み屋は厳しいだろうけど、車の有
   無で商圏が変わるからな。

真子:そうだよねえ……

勝 :そういう意味でも「何を持っているか、いないか」という「所
   有資源」は重要な「切り口」の1つになりうる。

真子:確かに、「20代女性」とか粗っぽい切り口じゃ、ニーズがわ
   からないわけだー!

勝 :しかもさ、どの「所有資源」が自分の商品・サービスに影響を
   与えるのか、っていうのを特定するのが結構難しい。

真子:じゃーどうすればいーの?

勝 :だから「ステップ1:顧客像の具体化」で、所有資源を具体的
   に洗い出していけばいい。

真子:そっか、ステップ1で「所有資源」を1つ1つ具体化すればい
   いのか……ステップ1は結構大変だねー……。

勝 :ところで真子、バレンタインのチョコレートを買うのに必要な
   「所有資源」は何だ?

真子:え? チョコレート買うのに必要な「所有資源」は……ああ!
   カレシだぁ……もう、意地悪!

勝 :意地悪じゃなくて、実際恋人の有無が購買行動に影響する例だ
   って。だから大事な切り口の1つになる可能性があるよな?

真子:そ、そうだけどさあ……そんな例使わなくてもいいのに……

勝 :レストランなんかもそうだぞ。「カップルを狙うかどうか」な
   んて、「恋人という所有資源の有無」が切り口になってる。

真子:なるほど……恋人も「所有資源」か……イヤな「制約要因」だ
   なあ……

勝 :逆に冬のイベントシーズンに、「所有資源の無い人」を狙って
   も面白いかもな。「クリスマス! お一人様歓迎」ってさ。

真子:きゃははは、おっもしろーい……ね、ねえ……勝さんはチョコ
   レートもらう予定ないんでしょ?

勝 :余計なお世話だ。

真子:じゃ、じゃあ…… しょうがないなあ、今年も勝さんにチョコ
   レートあげてあげよう。うん、そうだ、そうしよう。

勝 :何でオマエにそんなに偉そうに言われなきゃいけないんだ……

真子:でもさー、確かに「所有資源」って大事だねー。それによって
   買うモノがこんなに影響を受けるなんて……

勝 :意外に意識しないからな。特に、自分が持ってるものは、お客
   様も持ってると錯覚しやすいからな。

真子:そうだよねえ……

「大体さあ、お店はみんな恋人がいることを前提にしすぎなのよ!」
 1人だと入りにくい店、ホント多いよ……」
「別にいいじゃねーかよ。2人なら客単価2倍になるだろうが。真子
 の店だってそういう人を狙ってるだろうが」
「そ、そうだけど……旅行だってそーだよ。旅館とかの予約サイト見
 ても、人数の入力欄に1人っていう項目すらない!」
「1人用のビジネスホテルはいっぱりあるのにな。1人用の旅館とか
 あれば、はやりそうなもんだけどな」
「勝さんは大丈夫♪ 真子が一緒に行ってあ、げ、る」
「遠慮させてい、た、だ、く。それよりご飯食べよう。話してるとな
 かなか食えないもんだよな」
「あ、食べるの忘れてたねー。お鍋せっかく温めたのにちょっと冷め
 ちゃったかな?」
「いや、オレは猫舌だからこれくらいが丁度適温だわ」
「きゃははは、そっかー。いっただきまーす」

2人の箸と口が激しく動き始めた。

次号に続きます!

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◆今日のまとめ
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●切り口の4つめは「所有資源」。時間、エネルギー、在庫スペース
 など様々な「所有資源」が購買行動に影響する。

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━特別編Vol.215(累計0991) 2013/02/18

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●セグメンテーションの5つめの切り口は、「こだわり・マニアレベ
 ル」。マニアとビギナーではニーズが違う!

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◆まずは、前号の復習から!
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*本編の「今の時間」は、年が明けた1月1日の夜です。

1月1日、昼は初詣に出かけ、寄ったカフェで続いた真子へのレッス
ン。夜に宿に戻り、食堂で食事しながらレッスンは続き……

「勝さん、ご飯お代わりするよね?」
「ああ、頼む」

真子が勝のお椀に、おひつからご飯をかいがいしくよそっていく。

「はい、大盛りね」
「盛りすぎだろうが……」
「だって何回もよそうの面倒なんだもん」
「まあそうだろうけどさ……食いづらいよ」
「よそってあげたんだから文句言わないの♪」
「はいはい、ありがとうございます」
「この宿のごはん、おいしーよね。ご馳走だ♪」
「ご馳走だし、夕飯をゆっくり食べられること自体贅沢だよな」
「普段は時間ないもんねー」
「そうなんだよな」
「しかもとびっきりの美女とい、っしょ、に、はーと」
「はいはい、じゃあ始めるぞ」

真子:はーい。じゃあ前号の復習だよねー。今は、「括って広げる3
   ステップ」をやってまーす。

真子がノートを指さしていく。

○セグメンテーションの「括って広げる3ステップ」

ステップ1:顧客像の具体化
ステップ2:ニーズの普遍化
ステップ3:ニーズで人を括る

真子:それで、今はその「括り方」っていうか、セグメンテーション
   の切り口を考えてまーす。前回は切り口4:「所有資源」。

勝 :そうだよな。で、「所有資源」って何だっけ?

真子:お金、時間、エネルギーに……冷蔵庫の中や部屋の広さみたい
   な「スペース」もそうで、それに車……

勝 :そうそう。どんな所有資源を考える必要がある?

真子:自分の商品・サービスの利用場面なんかに関わるもの。例えば
   生鮮食品を売るなら、包丁・まな板持ってるか、とか。

勝 :持ってなかったら?

真子:持ってなかったら、それが「制約要因」となるから、それから
   「解放」してあげると売りやすくなる!

勝 :例えば?

真子:私たちが夏に行ったペンションでは、送り迎えしてあげるとか
   包丁が無かったら、カットしてあげるとか?

勝 :OK。

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◆切り口5:こだわり・マニアレベル
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勝 :じゃあ次の切り口に入っていくけど、その前に、コーヒー豆を
   売る、なんていう場合は、どんな所有資源が関係する?

真子:えっと……当然、コーヒーをいれる道具だよね?

勝 :そりゃそうだけど、それにしても色々あるだろ?

真子:あ、そっか。ペーパーフィルターとか、コーヒーメーカー……
   あとコーヒーミルとかもそうか。

勝 :そうだよな。あと、エスプレッソマシンもそうだぜ。

真子:あ、そうだね。でも、そんなにたくさんの人が持ってないでし
   ょ、エスプレッソマシンなんて。

勝 :そうだよな。でもそれによって豆の消費量違うんじゃないか?

真子:あ、確かにエスプレッソマシン持ってる人って、豆をたくさん
   買いそう。

勝 :オレはもうキロ単位で買うからな。200gとかちびちび買っ
   てると間に合わない。

真子:それ飲みすぎ~。

勝 :オマエだってオレのオフィスでガブガブ飲んでるだろうが。し
   かも勝手に。

真子:あ……きゃははは、そっかー、真子も貢献してるんだ♪

勝 :でさ、その所有資源は、何で決まると思う?

真子:え? だからマシンとか持ってるかどうか、でしょ?

勝 :だから、その「マシンを持ってるかどうか」は何で決まるんだ
   って訊いてる。

真子:え? あ、コーヒーが好きかどうか?

勝 :もう一声。好き、はもちろんそうだけど、単に好き、だけなら
   インスタントコーヒーの方がラクだぞ?

真子:そっか……あ、コーヒーマニアかどうかだ!

勝 :そうそう。「こだわり」の強さ、だな。「マニア」かどうか、
   という意味でオレは「マニアレベル」って勝手に呼んでる。

真子:なるほどぉ……こだわりが強い人は、高い器具とか持ってそう
   だよねー。

勝 :コーヒーなんかの場合は、そういう関係が成り立つだろうな。
   持ってる器具でこだわりがわかる、みたいなところが。

真子:でも、ペーパーフィルターしか使わないけど、豆にこだわって
   る人はいるんじゃないの??

勝 :こだわってる人は、豆で買うよな?

真子:え、うん、そうだけど……

勝 :その場合、何が必要だ? 挽き立ての方がうまいよな?

真子:あ! コーヒーミル!

勝 :だろ? もちろん例外はあるけど、マニアは道具にそれなりに
   お金かけるだろ?

真子:確かに……

勝 :エスプレッソは、普通の挽き方じゃダメ。店で挽いてもらうと
   きは説明面倒。だから、細挽きできるミルが必要だよな。

真子:あー、家庭用のミルだと、細挽きできるのってほとんどないも
   んねー。

勝 :逆に言えば、そのミルを持っていれば「エスプレッソを自分で
   いれる」とかっていう推測ができる。つまり……

真子:「こだわり」の強さがわかる!

勝 :そういうこと。この「こだわり」って、非常に使いやすい、実
   戦的な切り口だからな。

真子:うん、わかる。

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◆切り口5:「マニア」と「ビギナー」の違い
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勝 :こだわりが強い人は「マニア」、弱い人は「ビギナー」と一応
   2つに分けておく。その中間もあるけどな。

真子:うん。

勝 :ビギナーっていうと「始めたばかり」って感じもするけど、経
   験が長くてもこだわりがなければ「ビギナー」と呼ぼう。

真子:ずっとこだわりが低いまま、ってことだね。

勝 :そうそう。で、マニアとビギナーの違いって何だと思う?

真子:まずはさっきの「所有資源」だよね? マニアの方がたくさん
   道具とか持ってる。

勝 :そうだよな。バイクにこだわるハーレーのオーナーだと、バイ
   クの倉庫を建てるファンとかいらっしゃるらしいぞ。

真子:うっわー。あ、じゃあ「投資金額」もマニアの方が高いよね。

勝 :だな。あとは?

真子:あとは……マニアの方がしょっちゅうやってそう。コーヒーマ
   ニアなら毎日、何回も飲みそう。

勝 :そう、「利用頻度」が違う。スキーもそうだよな。スキーマニ
   アは年に何十日ってスキーする。ビギナーは年1回。

真子:うん。あと、「知識」も違うよね。マニアは当然よく知ってる
   よね。うんちくも語れる。

勝 :そうそう、「知識」「リテラシー」だな。その結果として、何
   が違ってくる? 会話してわかること。

真子:え? 会話してわかること? 知識が豊富ってことでしょ?

勝 :だからその「知識が豊富」っていうのは何でわかるんだよ。

真子:えっと……ヒントくださーい。

勝 :コーヒーマニアは焙煎にこだわって「イタリアンロースト」と
   か言うよな。

真子:あ! 「専門用語」を使える!

勝 :そうそう。マニアは専門用語を使う。

真子:勝さんは、そんなに深い焙煎はむしろイヤなんでしょ?

勝 :そう! エスプレッソっていうとみんな深めのローストとかっ
   ていうけど、深すぎると苦くて味がわからないと思う。

真子:ハイかシティくらいが好きなんだっけ?

勝 :そのくらいの方が、豆の味がわかる。まあこのあたりは好みの
   問題かもしれないけど。

真子:あー、「好み」があるんだね。ビギナーからすればどうでもい
   い、って言われそうな「好み」が。

勝 :そうそう。ビギナーは「コーヒーなんて苦くて黒いもの」くら
   いじゃないか?

真子:あ、うん、そうかも。

勝 :逆に言えば、おれはお茶についてはそれくらいの知識しかない
   な。「お茶は黄色くて熱いモノ」くらい。

真子:それ、きっとお茶のマニアの方が聞いたら怒るよね。

勝 :そういうことだ。だから、顧客対応のときは言葉遣いを変えて
   あげないといけないな。

真子:あ、確かに。マニアには、むしろ専門用語の方が通じやすい。
   ビギナーには逆だけど。

勝 :そうそう。セグメンテーションってそういうこと。相手に合わ
   せて対応を変える、みたいなことも含めて。

真子:そういうところも変わって来るんだね。

勝 :具体的な行動が全部変わる。じゃないとセグメンテーションす
   る意味がない。分けるために分けても意味が無い。

真子:確かに……

勝 :で、さっきの専門用語とか知識は、マニアはどうやって獲得す
   るんだろうな?

真子:えっと……あ、専門書とか、雑誌とか読んでそう!

勝 :そうそう。「情報収集態度」が違う。マニアは情報収集に積極
   的で、自ら集める。ビギナーはマニアに聞く。

真子:あ、パソコン雑誌とか、ランナー雑誌とか、色々あるもんね。

勝 :そうそう。やっぱりある程度のこだわりがないと、雑誌を買っ
   てまで、って思うだろ。

真子:勝さん、TARZANよく読んでるよね。

勝 :あれは、ジム通いする人は結構読んでるんじゃないか。

真子:なるほど、読む雑誌とかにも現れるんだね。

勝 :他にはないか? マニアとビギナーの違い。

真子:ほかに? 何かな……

勝 :コーヒーで続けるけど、豆を自家焙煎するマニアもいるよな。
   それはどういうことだ?

真子:あ、うん……あ! 自分でやるのが好き!

勝 :そうそう、マニアは、「自分の作業」を厭わない。用具の手入
   れとか、自分で加工するとか。時間を投資するんだよな。

真子:うん。あれ? 勝さん、確かスピーカー自分で作ってたよね?

勝 :作ったって言っても、キットを組み立てただけだぞ。

真子:っていうか普通の人は、あんなおっきいスピーカー使わないよ
   ねー、きゃははは。

勝 :オーディオもマニアとビギナーがわかりやすいな。ビギナーの
   人は、何かあったらどうする?

真子:えっと……あ、マニアに頼むんじゃないかな?

勝 :そうだよな。今の、真子とオレの関係が全くそれだからな。

真子:え……あ、マーケティングについて? ひっどーい。もうビギ
   ナーじゃないもん。

勝 :ビギナーは卒業したにしても、マニアにはほど遠いだろうが。

真子:あ……マニアの人ってさー、教えるのが好きだよねー。

勝 :あ、そうだな。ウンチクを語りたがる。

真子:真子は、教えるのが好きな勝さんに、教えさせてあ、げ、て、
   る、の♪

勝 :ふっざけんな! マジでアタマ来た。

真子:あ、うそうそ、冗談です、すみません……

勝 :コイツは……で、ここまでちょっとまとめてみろよ。

真子:うん。

      マニア      ビギナー

所有資源  多い       少ない
投資金額  多い       少ない
知識    豊富       少ない
言葉遣い  専門用語     普通の言葉
情報収集  積極的      マニアに聞く
作業    自分で行う    マニアに頼む
好み    細かい好み    こだわらない

勝 :OK、そんな感じだな。

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◆ビギナー開拓とマニアトラップ
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真子:ねー、この「マニア」と「ビギナー」の話って、マニアトラッ
   プの話だよね?

勝 :あ、そうそう。マニアトラップは、売り手がマニア化して、ビ
   ギナーセグメントが見えなくなるってことだ。

真子:そういうことか……

勝 :だから、「カプチーノセオリー」とかの施策も共通。

真子:えっと……何だっけ?

勝 :何だよ、一昨年の初詣シリーズでやっただろうが。覚えてねー
   のかよ……

真子:え? じゃあこのノートのどっかに……あ、あった!

○カプチーノセオリー:マニアトラップ脱出のための商品戦略

1)とっつきやすく、ビギナーに道を開く
2)本格(マニア)商品への導入になる

カプチーノ
 1/3:エスプレッソ(濃いコーヒー)
 1/3:ホットミルク
 1/3:泡立てたミルク(フォーム)

真子:苦いエスプレッソをミルクで飲みやすくしたのがカプチーノ。
   飲みやすいけど、本格派のエスプレッソはしっかり入ってる。

勝 :エスプレッソは「苦い」んじゃない。「濃い」んだ。オマエ、
   イタリアンのプロだろうが。苦さと濃さは違う概念だぞ。

真子:マニアはいちいち細かいねー、もー……

勝 :あのなー、「強み」と「独自資源」のような似て非なるものを
   峻別することは大事だぞ。大体、エスプレッソはだな……

真子:はいはい、とにかく、飲みやすさの中にも本格さのあるカプチ
   ーノみたいな商品を作るってこと。

勝 :そうそう。わかりやすいのがこんな感じ。脂肪測定計の話。

勝が、お皿が多く並ぶテーブルの横から、真子にノートパソコンを渡
す。

-----------< 記事要約 >------------

◇2012年11月の販売数量実績での体重体組成計ランキング1位
 はオムロンヘルスケア「HBF―214」。体重体組成計は足裏か
 ら微弱電流を流し、体重・脂肪量・筋肉量を測定。HBF―214
 と2位のHBF―212は2011年9月に同時発売。2012年
 11月までの販売台数は2機種合計で100万台を突破。

◇両機種はガラスの天板で、厚みは28mm。四隅には滑り止めのゴ
 ムが付き、立てて収納できる。20~40代女性をターゲットに
 「居間に置いてもなじむデザイン」(同社)を目指した。

◇従来の体重体組成計は樹脂やメタルが主流で、いかにも機器の印象
 が強かった。同商品は表面にガラス天板を使い、四隅は丸くして、
 インテリアのような雰囲気を演出。目立つ場所に抵抗なく置ける。

◇ガラス天板と薄さには実用的なメリットもある。ガラス天板は掃除
 がしやすい。同社は開発段階で約30件の家庭を訪問し、体重体組
 成計が洗面所の前など汚れやすい環境にあるからだ。洗濯機の横な
 どに立てて置く家庭も多いため、角にゴムを付け、縦置きしたとき
 にも滑らないように配慮、収納しやすい点も主婦に人気だ。

◇POPでは「収納」をアピール。表面を見せた商品の横に縦置きし
 た商品も並べた。POPには「薄い28ミリメートル」「取り出し
 スムーズ」という説明書きを付けた。

◇売り場で目立つのは女性や若者。「体重体組成計はかつて、何とな
 く怖いイメージがあったが、最近は乗りたくなるようなポップな色
 使いが増え、売り場の雰囲気も変わった」(ヨドバシカメラ)。測
 定指標を競ってきたメーカーも「基本的なことがわかればいい」と
 いう利用者の声を受け、デザインや使い勝手に着目し始めたようだ

2012/12/28 日経MJ P.2

-----------< 記事要約 >------------

勝 :この商品のHPはこれ、な↓。ちょっと見てみるか……

http://www.healthcare.omron.co.jp/product/basic/166

真子:えっと……体脂肪率、内臓脂肪レベル、骨格筋率、基礎代謝、
   って色々わかるんだね。

勝 :いや、高機能なのは、部位別の皮下脂肪率がわかったり、パソ
   コンと通信できたりするだろ。

真子:へー。じゃあそこまではいらない、っていう「ビギナー」の人
   がこの商品を買ってるんだぁ。

勝 :そうだろうな。高機能で、パソコンとつなげて、メタリックで
   っていうのはまさに「怖いイメージ」なんだよな。

真子:あー、マニア向け商品は、ビギナーには「怖い」んだ。機能が
   あるほど、なんか使いにくそうで……

勝 :そうなるな。それがまさに「マニアトラップ」。マニア向けに
   高機能化して、ビギナーを遠ざける。

真子:確かに……

勝 :この商品の特徴をまとめてみろよ。典型的な「ビギナー向け商
   品」の特徴がいくつかあるぞ。普遍化して、だぞ。

真子が「うん!」と言ってノートをまとめる。勝はその間に、大盛り
のご飯をかきこんでいく。ご飯が無くなろうかという頃、真子が「出
来た!」と言って勝に見せた。

オムロンヘルスケアHBF-214 商品特徴

○デザインが良い(機器でなくインテリアっぽい)
○お手入れカンタン(掃除しやすい)
○置き場所をとらない(縦置きできる)
○機能は絞っている(基本的な数値のみ測定できる)

勝 :お、いいじゃないか。そうそう、左側の言葉が普遍化された、
   ってことだな。

真子:うん! 「ビギナー」向けっていうのがよくわかるね。「怖く
   ない」商品なんだよね。

勝 :まさに「カプチーノセオリー」だな。基本的な機能はしっかり
   おさえた上で、「飲みやすく」している。

真子:機能を減らして、カンタンにカワイク、だね。

勝 :そうそう、そういうこと。しかも、POPで訴求してるのは、
   機能じゃなくて「収納」だよな。

真子:あー、ビギナーはそっちを気にするんだ!

勝 :そう。だから「怖くない」んだよな。一般論として、マニアは
   「高機能な怖いモノ」を作りがち。

真子:あー、それでマニアトラップになるんだね。ねー、ビギナー向
   け商品の方が売れるの?

勝 :「数」としてはそうだろ。ビギナーの方が数が多いからな。こ
   のデータも「販売数量」だから、「台数」だよな。

真子:あ、そっか。単価はマニア向けの方が高いんだ。

勝 :おそらく、な。だから「金額」で見るとまた違う順位になる可
   能性はある。この記事だと……

-----------< 記事要約 >------------

   機種名     メーカー        実勢価格

1位 HBF214 オムロンヘルスケア   4000円前後
2位 HBF212 オムロンヘルスケア   3000円前後

4位 BC312  タニタ         7980円
8位 HBF252F オムロンヘルスケア  8980円

2012/12/28 日経MJ P.2

-----------< 記事要約 >------------

勝 :4位は50g単位で測定できて、8位はスマホに測定結果を転
   送できる、つまり、高機能で高価格、みたいだな。

真子:やっぱり高機能な機種は値段が高いんだね。

勝 :そうなってるみたいだな。

真子:マニアには逆に高機能な「怖い」商品の方がいいんだよね?

勝 :そうそう。だから、マニア向けとビギナー向けでは、商品の作
   り方が全く変わる。

真子:あ、じゃあマニア向けかビギナー向けかを考えないと、商品が
   作れない!

勝 :そういうこと。切り口として5番目にしたけど、トップクラス
   に重要なものの1つ。

真子:なんで?

勝 :ここまでの、TPOとか、所有資源を決める「理由」になるか
   ら。

真子:どーゆーこと?

勝 :いや、だから、所有資源の多い少ないは、マニアかビギナーか
   で決まるだろ? だから。

真子:えっと……あ! モトをたどっていくと、マニアかビギナーか
   にたどり着くからだ!

勝 :そういうこと。逆に言えば、TPOとか所有資源を見れば、マ
   ニアかビギナーか、わかることもある。

真子:なるほどねー。大事な切り口なんだねー。

勝 :それで、「マニア」とか「ビギナー」ってわかったら、それは
   どんな人か、と落とし込んでいけばいい。

真子:えっと……オムロンの「体重体組成計」だと、20~40代女
   性、だっけ?

勝 :みたいだな。この層が「ビギナー」なんだろうな。

真子:なーるほどぉ。

勝 :ただ、ダイエットマニアとか、毎日ジム通いする主婦なんかは
   高機能なのを買うかもな。

真子:あ、確かにそうだね。

勝 :だから、性別・年代だけだと括りにくいだろうな。

真子:うん。だからこのマニアレベルを考える必要があるんだね。

勝が満足そうにうなずいた。

「あ、あれ? 勝さん、あのご飯は?」
「もうとっくに食べたよ。いつの話してんだ」
「えー、いつの間にぃ……ね、お代わりいる?」
「そうだな……軽くでいいや、頼む」
「うん。あ、おひつのご飯なくなった。勝さん、食べ過ぎぃ!」
「オマエだってお代わりしてたじゃねーかよ」
「きゃはは、ばれたか」
「オレもこの体重体組成計、いるかな……」
「そーゆー問題じゃないよ、食べる量減らしなよー」
「これでも大分減ったんだよ!」
「あーまーそうか……昔、よくおひつお代わりに行かされたもんね」
「オレのせいみたいに言うな。真子が食べる分だろうが」
「そんなことないもん」
「食い過ぎると眠くなるから、ほどほどにしておけよ」
「きゃははは、勝さんに言われたくないよー」

2人の目の前の皿は、次々に空になっていった。

次号に続きます!

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◆今日のまとめ
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●切り口の5つめは「こだわり・マニアレベル」。他の切り口の要因
 ともなる、重要な切り口。

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━特別編Vol.216(累計0992) 2013/02/21

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●セグメンテーションの5つめの切り口は、「こだわり・マニアレベ
 ル」。ビギナーには、手取り足取りで過保護にしてあげよう!

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◆まずは、前号の復習から!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

*本編の「今の時間」は、年が明けた1月1日の夜です。

1月1日、昼は初詣に出かけ、寄ったカフェで続いた真子へのレッス
ン。夜に宿に戻り、食堂で食事しながらレッスンは続き……

「ごっちそーさまでした!」

勝と真子は揃って手をあわせて空の食事にお礼を言うかのようにお辞
儀をする。ごく自然なのは、売多家のしきたりだからだろうか。

「ふう、おなかいっぱいだねー。ちょっと太っちゃったかなー」

真子がおなかをさすりながら幸せそうにささやく。

「オレみたいに腹八分でやめとけ」
「あんだけ食べといて腹八分目なんだー? きゃははは」
「だってデザート食べてないだろ。ケーキとか」
「え~、昼間あんだけケーキ食べたじゃん。私もだけど」
「正月はケーキはいくら食べてもいいんだよ」
「何その自分勝手なルール……あ、お部屋にお菓子あるよ!」
「あ、電車で食ってたヤツか」
「うん。それとは別にまだあるよ。じゃあ取って来るね!」
「待て待て待て、楽しみではあるが、それは後」
「何よー、勝さんが食べたいって言ったんじゃん」
「オマエが食いたいんだろ」
「へっへー、バレたか……」
「さすがにもう少したってからにしようぜ」
「あ、お茶いれるよ」
「あ、そう言えばそうだな」

真子が手際よく日本茶をいれて、勝に湯飲みを渡す。

「熱いから気を付けてね! 勝さん猫舌だから、きゃははは!」
「あ、あち……ホントに熱いわ」
「だから言ったのにー……」
「日本茶はなんかくつろぐよな……」
「真子がココロを込めていれた、か、ら、はーと♪」
「はいはい……ずず……ふう……」

真子はその間、2人が食べた食器を手際よく片付けていくと、テーブ
ルの上を拭いた。

「お、ありがと。じゃあ再開だな」

真子:うん、まずは復習からだよね。セグメンテーションの「括って
   広げる3ステップ」をやってまーす。

真子がノートを指さしていく。

○セグメンテーションの「括って広げる3ステップ」

ステップ1:顧客像の具体化
ステップ2:ニーズの普遍化
ステップ3:ニーズで人を括る

真子:今はその「括り方」、セグメンテーションの切り口を色々と見
   てまーす。前回は切り口5:「こだわり・マニアレベル」。

勝 :それで?

真子:こだわりが高いと「マニア」、低いと「ビギナー」。全然ニー
   ズが違う!

       マニア      ビギナー

所有資源   多い      少ない
投資金額   多い      少ない
知識     豊富      少ない
言葉遣い   専門用語    普通の言葉
情報収集   積極的     マニアに聞く
作業     自分で行う   マニアに頼む
好み     細かい好み   こだわらない
必要な機能  高機能     必要最低限 

勝 :OK、そんな感じだな。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆BtoBの「マニア」と「ビギナー」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

真子:ねー、BtoBでも「マニア」と「ビギナー」ってあるの?

勝 :あるよ、フツーに。

真子:お客様が会社でも??

勝 :だからあるってば。例えば日本企業だと、昨日まで営業部長で
   今日からIT部長とか、職域を超えた移動が普通にあるだろ?

真子:そ、そうだけど?

勝 :だから、そういう人は「業務知識」が無い。いわば、ITの
   「ビギナー」がいきなりIT部長になるんだぞ?

真子:なーるほどぉ! ね、じゃあ逆に「マニア」っているの?

勝 :オレなんかまさにそうじゃん。外資系だとマーケティング一筋
   ウン十年、っていう人がマーケティングの幹部になるだろ。

真子:あ、そっか……勝さんは「マーケティング業務」の「マニア」
   なんだ。知識とか経験が豊富だし。

勝 :そう。それに利用量とか利用頻度だってあるだろ。

真子:例えば?

勝 :例えば、コピー機をよく使う会社はコピー機の「マニア」にな
   るだろ。コピー機が業務上重要なのかもしれないし。

真子:あーなるほどねー。うちの会社は、小規模企業用の小型機で十
   分だから「ビギナー」ってことか。

勝 :そうそう。大体このあたりは共通するよな……

勝が真子のノートの上に○をつけていく。

       マニア      ビギナー

知識     豊富      少ない
言葉遣い   専門用語    普通の言葉
情報収集   積極的     マニアに聞く
作業     自分で行う   マニアに頼む
好み     細かい好み   こだわらない

真子:そっかあ……昨日まで違う仕事をしてたら、専門用語とか、わ
   かんないよねー。それが「ビギナー」なんだ。

勝 :だから、しばらくは「マニア」である部下とか取引先を頼るこ
   とになるよな。

真子:でもさー、買う商品って結局一緒じゃないの?

勝 :ちょっと待て、真子の会社のイタリアンレストランで考えてみ
   ろよ。

真子:へ?

勝 :例えば、食材の発注責任者が外食業界とか調理に詳しい「マニ
   アだったら、どうなる?

真子:んーと、細かい発注するかな? 産地とか、とれた時期とか。

勝 :そうだよな。ビギナーだったら? 昨日まで違う会社にいて、
   転職してきたら?

真子:発注先に訊くんじゃないかな? 

勝 :その場合、同じモノを買うとは限らないだろうが。

真子:あ、そっか。

勝 :それに、「マニア」の場合、つきあいの長い取引先がいたりす
   るから、転職先でつきあいのある取引先に変えたりするよな。

真子:あ! なるほど、食材仕入だとそういうことがあるかも! 知
   ってる会社の方が気心しれてるし。

勝 :だろ? 逆にビギナーだと、専門知識がないから「お任せ」に
   なる。

真子:えー、そんなの頼む方も不安じゃん。

勝 :だよな。だから、自分に恥をかかせないという基準で発注先を
   選ぶ。言わば「自分がリスクを負わない無難な選択」をする。

真子:あー、「マニア」だと、よく知ってるから……

勝 :自分の思い通りに動いてくれる発注先を選ぶんじゃないか?
   自分の好みを知ってるところとかさ。

真子:なーるほどねー。

勝 :そういう意味では、マニアには「カスタマイズ」ニーズが強い
   ことが多いかな。BtoCでもBtoBでも。

真子:あ、自分の「思い通りにしたい」んだ。それだけの知識もある
   し。

勝 :そう。逆にビギナーだと「お任せ」ニーズになるよな。よくわ
   かんないし、めんどくさいし。コーヒーもそうだろ?

真子:あ、そうだね。マニアは豆とか焙煎の深さとか指定したいだろ
   うけど、ビギナーはわかんないから「おいしーの」みたいな。

勝 :そうそう。そのあたりは、BtoBもBtoCも同じ。

真子:あ……パソコンなんかそーかもね。

勝 :オマエがパソコン買うのにつき合わされたことあったよな……
   秋葉原まで。しかも貴重な休日に。

真子:だって真子ちゃん、ビギナーだからよくわかんないんだもーん

勝 :わかんないんだったら何買ったって一緒だろーが。こだわりが
   ないんだから、自分で通販で買えっつーの。

真子:だからビギナーはそう思わないの。ホントに選べないの。わか
   んないから不安なの♪

勝 :まあそうか……そういえばオマエの部屋のテレビとBDレコー
   ダー、オレがセッティングさせられたよな。超忙しい時に……

真子:だって接続とかわかんないんだもん。真子ちゃん「ビギナー」
   だ、か、ら。それにお返しに仕事手伝ったよー。

勝 :ってことは、どういうサービスが「ビギナー」向けにあればい
   い? 接続できなかったら、テレビが売れないよな?

真子:あ! なるほど、お店の店員さんとかがセッティングしてくれ
   ればいいね。

勝 :そうそう。地域の電機店なんかだと、そこまでやってくれる店
   もあるらしいぜ。お年寄りなんかだとできないからさ。

真子:なーるほどぉ。「ビギナー」を助けてあげる「マニア」がいれ
   ばいいんだね。

勝 :BtoBだとまさにそうだよな。「信頼できるアドバイザー」
   みたいな存在の人がいれば、ビギナーには助かるだろうな。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆ガーデニングの「ビギナー」開拓作戦
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

勝 :ガーデニングでさ、まさに「ビギナー」を狙った例があるんだ
   よな……

真子:ガーデニング?

勝が「そう、これを……」と言いながら真子にノートPCを見せる。
真子はモニタを注視する。

-----------< 記事要約 >------------

◇ホームセンターのホーマックは園芸用品・資材の実演販売を拡大。
 2012年春をメドに全店の園芸売り場で小規模の模擬菜園やプラ
 ンターで実際に植物の育て方や器具の扱い方などを来店客に説明。
 初心者が育てやすい新種の苗なども紹介する。園芸の初心者を囲い
 込み、定期的な来店につなげる。

◇園芸用品は種類が多く「初心者は選ぶのが難しい」(同社)ため、
 全店でニーズがあると判断。来春の植え付けシーズンに合わせて関
 東地方を皮切りに広げていく。これまで実演販売は店の裁量に任せ
 ており、全約170店中10店程度でしか実施していなかった。

2011/10/12 日経MJ P.5

-----------< 記事要約 >------------

真子:なるほどねー。「初心者」って記事でも言い切ってるね。まさ
   に「ビギナー」だ。

勝 :そうそう。初心者は、いきなり家庭菜園なんか始めないよな?

真子:うん。ハードルが高い。だから、イメージしやすいように模擬
   菜園とか、道具とかを見せるんだろうね。

勝 :「育てやすい苗」とかいいよな。意気込んで始めて、いきなり
   枯れちゃったら、ココロが折れるよな……

真子:きゃははは、そーだよねー。

勝 :それに、ここまで突き詰めてる会社もあるぜ。

勝がノートパソコンを再度操作し、真子に向けた。

-----------< 記事要約 >------------

◇園芸資材製造・販売のプロトリーフ(東京・港)は2000年創業
 以来、成長を続ける。「都心のマンションに住む、共働きで子供が
 いる世帯」(同社)を狙う。家庭菜園や緑のカーテンに興味はある
 が、場所や時間がとれず、栽培をためらう層だ。

◇2012年3月発売の「袋で育てる菜園セット」(ミニトマト、キ
 ュウリ、ナス、店頭想定各980円)は小型ながら「収穫」も期待
 できる園芸商品。衣料用粉末洗剤2個程度の大きさと小型だが、ミ
 ニトマト栽培に必要な道具は、支柱以外すべて入っている。「ガー
 デニング人口の8割を占める女性でも簡単に持ち帰れる」(同社)

◇「袋で育てる菜園セット」は栽培しやすさを追求。商品の中のビニ
 ール袋に排水用の穴を開け、植木鉢として使う。初心者の最初の障
 壁「植木鉢の購入」を省く。パッケージとほぼ同サイズの圧縮培養
 土は、水をかけると柔らかい土になる。種と発芽専用の圧縮土も付
 き、初心者に多い発芽しないというつまずきを避ける。「説明書通
 りに栽培したら、ほぼ確実に収穫できる」(同社) 

◇情報発信も配慮。袋や容器に載ったQRコードをスマホで撮影する
 とYouTubeの同社ページに飛ぶ。現在30本超の動画が視聴
 でき、3万5千回以上視聴された「トマトの育て方 日常管理編」
 など、説明書だけでは分かりにくい点を解説している。

◇「店頭販促(POP)やデザインを考える際、参考にするのは同業
 他社ではなく、若者に人気のライフスタイル雑貨店やペットフード
 など。消費者にとって分かりやすく、目をひく商品は何かを常に考
 えている」(佐藤崇嗣社長)

◇矢野経済研究所の調査で、家庭菜園をしない層に「やりたくない」
 理由(複数回答)を尋ねると「場所がない」(52%)、「時間が
 ない」(36%)、「難しそう」(26%)が上位。こうした要因
 を除くことが市場拡大につながる。

2012/04/25 日経MJ P.3

-----------< 記事要約 >------------

勝 :HPはこれだな……「初めての方でもミニトマトを100個収
   穫」だってよ。

http://www.protoleaf.co.jp/news/479-2012-03-09-13-10-54.html

真子:ひゃ、ひゃっこ!? ひゃー、すっごいねー。うちの店でもや
   ろっかなー。

勝 :これさー、ターゲット像がピンポイントでいーよな。「都心の
   マンションに住む、共働きで子供がいる世帯」

真子:あ、そーだね。土地がないけど、子供がいるから、食育とかで
   興味がある家だよね。まさに「ビギナー」。

勝 :庭がある家はターゲットにならないよな。庭でできるからさ。

真子:あ、そっか。競合が「庭」なんだ。

勝 :東急線沿線の「二子玉川」に店があるけど、まさにそういうこ
   とだろ。そのあたりの自由が丘とかたまプラーザに住む方々。

http://gardenisland.blog.protoleaf.com/

真子:え? じゃあうちの店のお客様とかぶるねー。

勝 :年代は若干違うような気もするけど、立地はかぶるな。980
   円で、ミニトマト100個とれれば、1個10円だぜ。

真子:へー、それをお子さんと食べると、楽しそうだね!

勝 :「ガーデニング人口の8割を占める女性」って書いてあるけど
   まあビギナーの比率はそんなもんだな。で、マニアが2割程度

真子:ふーん、そうなんだ。

勝 :2割もいないかも。体感的には、マニアは1~2割くらいの割
   合だろうな。どのカテゴリーでも。

真子:これ、色々気が利いてるよね。ビギナー向けに親切♪

勝 :どんなビギナー向け配慮があるか、考えてみろよ。

真子:う、うん……でも、どうやって?

勝 :左側に「ビギナーの障壁」、右側に「解決策」、って書いて、
   その組み合わせをまとめてみ。

真子:なるほどねー。わかった。

勝 :わかってるとは思うが、時間軸で、な。上から順に、マインド
   フローみたいに「障害」を考えろよ。

真子:え、あ、なるほどね。そう考えればいいんだ。

勝がずず、と日本茶をすする間に、真子がノートにまとめていく。

   ビギナーの障壁             解決策

○そもそもよくわからない    わかりやすく目をひくPOP

○いきなり高額なモノは怖い   980円でミニトマト100個

○重いモノを持ち帰りたくない  粉末洗剤サイズ・圧縮の軽量土

○育てる場所がない       小型のセット

○道具や材料がない       鉢、土、種、が同梱

○やり方がわからない      動画サイトで、動画で解説

○失敗したくない        発芽専用の圧縮土、発芽しやすい

真子:あ……ホントだ! モレがないねー。

勝 :どれどれ? うん……そうだな。そうそう。モレがない。ビギ
   ナーがつまづかないよな「杖」がしっかりしてる。

真子:うん! そっか、ここまで「親切」にやってあげないといけな
   いんだね。

勝 :ビギナーには、過保護に過保護に、だな。記事にさ、ビギナー
   が家庭菜園を始めない理由があるよな?

真子:あ、うん、「場所がない」「時間が無い」「難しそう」。これ
   を解決してるんだね。

勝 :そういうこと。マニアにはそういう問題は起きないけど、ビギ
   ナーはそれを解決してあげないと、やってもらえない。

真子:マニアには当たり前のことがビギナーにはわからないんだよね

勝 :そう。それで、マニアには、その「当たり前」がビギナーには
   当たり前じゃないことがわからない。それがマニアトラップ。

真子:あー、売り手がマニア化するからだ。

勝 :そう。だから、マニアがビギナー向けのビジネスをするのは、
   結構難しい。自分じゃわからなくなってるんだよな。

真子:うーん、気を付けないとなー。

勝 :お客様が慣れていけばそのうち「マニア」になるよな。そうす
   れば自分でネットとかで調べて、自分でできるようになる。

真子:そーやって「ビギナー」から「マニア」になっていくんだー。

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◆キャンプ用品の「ビギナー」開拓作戦
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

勝 :キャンプ用品なんかもそうだな。マニアだけじゃやっていけな
   いからな……

真子:キャンプ用品? 雨具とか?

勝が「こういうの」と言いながら、再び真子にノートPCを向ける。

-----------< 記事要約 >------------

◇米アウトドア用品の日本法人、コールマンジャパンが初心者向けの
 イベントや講座を活発に開催。

◇アウトドア用品店が集まる東京・神保町の店頭では「最近はキャン
 プ用品もカラフルになった」と店員が口を揃える。その先導役の一
 社がコールマン。バーベキューグリルでは色鮮やかな赤を追加、バ
 ッグ類は3年前から色を増やし、業界最多の約10色を揃える。
 「アウトドア初心者の女性を意識した商品開発」(同社)を進める

◇同社が初心者や女性に照準を合わせるのは、大きな潜在需要をうま
 く取り込めていなかったとの思いがあるからだ。アウトドアブーム
 の追い風が吹く今、潜在需要を掘り起こそうと打ち出したのが初心
 者の開拓。初心者向けキャンプイベントの実施と、テント設営など
 をテーマにした店内講座開催を二本柱に据えた。

◇初心者向けキャンプイベントでは、テントの設営・撤収や燃焼器具
 を使ったアウトドア料理の実習、トレッキングといったプログラム
 を組む。実際、評判は上々で、物販面にも効果は表れている。スポ
 ーツ量販店などに、テント設営・撤収の手順を実演指導する担当者
 も配置。販売店の要望があれば全国に派遣している。

2011/06/27, 日経MJ P.11

-----------< 記事要約 >------------

真子:あー、最近山ガールとか多いらしいしねー。

勝 :コールマンってバーナーのイメージしか無いけど、最近はカラ
   フルなバッグなんてあるんだな……信じられん。

真子:え? あ、そっか、勝さん、ボーイスカウトやってたもんね。

勝 :そう。よくキャンプしてた。山は危ないから、きちんと装備が
   必要だぞ。

真子:めんどくさそーだ。

勝 :キャンプするならまずはSILVAコンパス買って、地図に線
   引いて、地図の読み方覚えろ、って話だ。

真子:ど、どこにキャンプ行くのよ

勝 :だから山の中だろ。キャンプ場に車で行ってそこでテントで泊
   まるのはキャンプとは言わないからな。テントは担ぐもんだ。

真子:マニアがそーゆーこと言うから、売れないって話じゃないの?

勝 :そうそう。テントなんか、持ってくのも張るのもすっげー面倒
   だった。昔のテントは重いし、スコップで溝掘ってさー。

真子:スコップ? 持ってくの?

勝 :夜に雨降ったらテントに浸水するから、皇居のお堀みたいに、
   テントの周りに溝を掘る。水が入ってこないよーに。雨の中。

真子:きゃー、やだやだそんなのー。

勝 :トイレだって穴掘るだけだからな。風呂は1週間入れない。

真子:えー、それはちょっとありえないや……

勝 :かまども木で作るんだぜ。薪だから、火力調整が慣れないと難
   しい。水は、川に汲みにいく。

真子:な、生水飲んでたの?

勝 :当たり前だ。山の中に水道なんかあるか。一応沸かしてはいた
   けど、まあ死なないよ。

真子:それだとビギナーは寄りつかないよー。

勝 :だよな。オレだって今やるのはイヤだよ。かまどで料理に灰が
   飛びまくるし、飯ごう炊飯だって米に芯が出来るしさ。

真子:なんだー、そーなんだー。

勝 :ビギナーに大事なのは「機能」じゃなくて、「カワイイ色」と
   かだよな。あとカンタンにできること。

真子:うん。でも、誰かが教えてくれるんなら、楽しそうかも♪

勝 :そうそう、ビギナーに必要なのは、そういう「メンター」の存
   在。オレみたいな偏屈マニアじゃなくて、親切なマニア。

真子:あ、だからコールマンがイベントやってるんだ。「メンター」
   として。お店がメンターになるんだ。

勝 :そうだろうな。ビギナーはそもそもやり方がわからないわけだ
   から。

真子:勝さんはどうやって習ったの?

勝 :ボーイスカウトだと厳しい先輩に教わるわけだ。

真子:あ、やっぱり「メンター」がいるんだね。

勝 :そうそう、メンターの存在はマニアトラップ克服でも大事。

真子:ビギナー開拓のためには、売り手がメンターの役割を果たさな
   いといけないんだね。そのための「店内講座」かあ……

勝 :そういうこと。ビギナーには手取り足取り、過保護に教えてあ
   げる必要がある。

真子:だから、やっぱりビギナーとマニアって全然違うセグメントな
   んだねー。

勝 :だからそう言ってるだろうが。売り物・売り方、全部違ってく
   るよな。マニアなら機能、ビギナーならカワイイ色、とか。

真子:そーだねー。でもさ、ダッチオーブンなんかで料理するのは楽
   しそうだ♪

勝 :そういうのは、本格キャンプっていうより、遊びキャンプだよ
   な。水道・トイレ付き、なんて最早キャンプと呼ばない。

真子:だから、ビギナーはそういう手軽なのがいいんでしょ?

勝 :そういうこと。

「ねー、じゃあ今年の夏にキャンプ行こう!」
「オマエに耐えられるはずが無いだろうが。シャワー無いんだぞ?」
「そーゆー本格的なのじゃなくて、もちろん遊びキャンプ♪」
「久しぶりに行ってみたいけど、オマエとはイヤだ」
「何でよー、料理してあげるよー。バーベキューしよーよー」
「オレは自分で料理できるんだよ」
「仕事もできるよ? 青空の下で、きっと考えはかどるよー」
「1人で行けば、な。まー、夜空はすっげーキレイだぜ」
「きゃー、そーなんだー」
「山奥だと、全然光がないだろ? 天の川とかがはっきり見える」
「きゃー、行ってみたーい」
「満天の星、っていうのはあーゆーのを言うんだろうな」
「やだー、流れ星なんか流れちゃったりしてー」
「ただ、山奥に行かないとダメだろうけどな」
「星空の下の2人、なんてろまんちっくー」
「オマエとオレでロマンチックも何も無いだろうが」
「やっだー、やっぱり真子と2人で行きたいんだー」
「何でそうなるよ……会社で行けばいーだろ」
「それはそうだけど……じゃあ勝さんと2人で下見。決まり♪」
「望ちゃんとでも行ってこいよ。あ、望ちゃんが来るんなら行く」
「ダーメ。じゃ、企画しておくからね!」
「オマエは本当にやりそうで怖いよな……」

次号に続きます!

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◆今日のまとめ
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●セグメンテーションの5つめの切り口は、「こだわり・マニアレベ
 ル」。ビギナーには、手取り足取り、過保護にしてあげよう!

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━特別編Vol.217(累計0993) 2013/02/25

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●セグメンテーションの5つめの切り口は、「こだわり・マニアレベ
 ル」。ビギナーには「メンター」をつけて「啓発」しよう!

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◆まずは、前号の復習から!
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*本編の「今の時間」は、年が明けた1月1日の夜です。

1月1日、昼は初詣に出かけ、寄ったカフェで続いた真子へのレッス
ン。夜に宿に戻り、食堂で食事しながらレッスンは続き……

「夕食も終わったし、後は温泉だねー。勝さん、どーするの?」
「もうちょっと続けてからにしようぜ」
「うん、まだまだ終わる気配ないしねー、きゃははは」
「ホントだな……」
「だいじょーぶ、夜はな、が、い、よ♪」
「まーそうだな、風呂は24時間だったよな」
「えー、オールでやるのー?」
「徹夜はイヤだ。オマエは若いからいいけど、オレはもうムリ」
「きゃははは、真子ちゃん、若いからぁ♪」
「だから、オヤツ持ってこいよ」
「うん!」
「あ、そうだ、真子、エスプレッソ飲む?」
「うん! 飲む飲む!」
「じゃあエスプレッソマシン持ってくるわ」
「やったぁ!」

真子が勢い良く立ち上がると、パタパタと足音をさせ、部屋へと戻っ
ていく。勝もノートパソコンをパタンと閉じて片手でつかむと、部屋
に向かった。

2人はすぐに戻り、早速真子がお皿にチョコレート、おせんべいなど
を並べていく。

「ちょ、そんなに誰が食うんだよ……」
「勝くんと真子ちゃん♪」
「実際食っちゃいそうだよなあ……」
「うん♪」

勝がおせんべいを手に取ると、個装を破ってバリバリと音をさせなが
ら食べ始めた。

真子:じゃ、始めよっか。まずは復習だよね。今はえんえんと、セグ
   メンテーションの「括って広げる3ステップ」をやってまーす

真子がノートを指さしていく。

○セグメンテーションの「括って広げる3ステップ」

ステップ1:顧客像の具体化
ステップ2:ニーズの普遍化
ステップ3:ニーズで人を括る

真子:セグメンテーションの「切り口」っていう本丸のところをやっ
   てて、前回は切り口5:「こだわり・マニアレベル」♪

勝 :そうだよな。それで?

真子:まずは、この切り口は、BtoBでも使える! 業務知識とか
   利用量・利用頻度の差がそれにあたりまーす。

       マニア      ビギナー

知識     豊富      少ない
言葉遣い   専門用語    普通の言葉
情報収集   積極的     マニアに聞く
作業     自分で行う   マニアに頼む
好み     細かい好み   こだわらない

勝 :そうだな。IT会社みたいな会社はパソコンに「こだわり」が
   あるだろうし、知識が豊富な「マニア」だろうな。

真子:ね、営業所みたいなところだと、車をたくさん使うから、やっ
   ぱり車の「マニア」なんだよね?

勝 :あ、そうかもな。車がビジネスにとって重要な役割を果たす。

真子:で、前回は「ガーデニング」のビギナー獲得作戦を見たよね。

勝 :どんな感じだった?

真子:うん。「都心のマンションに住む、共働きで子供がいる世帯」
   っていう、「ビギナー」を狙うプロトリーフ社は……

   ビギナーの障壁             解決策

○そもそもよくわからない    わかりやすく目をひくPOP

○いきなり高額なモノは怖い   980円でミニトマト100個

○重いモノを持ち帰りたくない  粉末洗剤サイズ・圧縮の軽量土

○育てる場所がない       小型のセット

○道具や材料がない       鉢、土、種、が同梱

○やり方がわからない      動画サイトで、動画で解説

○失敗したくない        発芽専用の圧縮土、発芽しやすい

真子:っていう、ビギナーにわかりやすい、買いやすい商品で人気♪

勝 :そうだな。キャンプ用品でもそうだったよな。何をしたんだっ
   けか?

真子:「初心者向けキャンプイベント」! テントの設営・撤収とか、
   アウトドア料理の実習とか。

勝 :そうそう。

真子:そういうのがあると、「こんなもんなんだー」っていうのがわ
   かるから、入りやすいよね。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆ビギナーには「メンター」をつけよう
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

勝 :ビギナーには、「最初に手取足取り教えてくれる人」がいると
   入りやすいよな。

真子:初めてキャンプするような人は、そもそも何が必要か、すら全
   然わからないもんね。

勝 :だから、最初に手取足取り教えてくれる「メンター」が必要な
   んだよな。店員さんなんかに、さ。

真子:イケメンのメンターだったらもっといーなー。

勝 :はいはい、オヤジのオレはお呼びでない、っと。

真子:何すねてるのよー。勝さんには真子がい、る、よ、はーと♪

勝 :はいはい、嬉しいなっと。

真子:素直じゃないなー、もー。

勝 :ともかく、ビギナーに売るには、「手取り足取り」が必要。誰
   だって知らないことをやるのは不安だからな。

勝がノートパソコンを真子に向け、「これ読んでみ」と促した。

-----------< 記事要約 >------------

◇イトーヨーカ堂は、顧客の魚離れを食い止めるべく様々な施策を打
 ち出している。魚離れの原因を同社が店頭で聞くと(栄養面で必要
 を感じながら)魚が嫌い」「肉に比べて値段が高い」などに加えて
 「調理が面倒」「調理方法を知らない」との声が多かった。そこで
 3つのテーマの1つに掲げたのが接客強化。調理支援や献立提案な
 どのサービスを提供、魚のさばき方を知らない若者らを取り込む。

◇同社では来店客の要望に応じて無料で鮮魚の内臓を取ったり、3枚
 におろしたりする「お魚調理サービス」が好評。今年度に入って調
 理件数は1日1店舗平均で約100件と、1年前のほぼ2倍に。

◇接客サービス充実のため、魚の知識が豊富な「お魚アドバイザー」
 と呼ぶ社内資格を持つ店員を約260人抱え、各店舗にそれぞれ2
 人ほど配置。「ワタ(内臓)をとりましょうか」と声を掛けたり、
 夕食の献立を提案したりと「かつての顔なじみの魚屋の店主のよう
 な役割を担っている」(同社)

2012/11/09 日経MJ P.14

-----------< 記事要約 >------------

真子:私は仕事が仕事だから調理は練習したけど、確かに友だちは、
   魚をおろすのはムリかなあ。みんな「お魚ビギナー」♪

勝 :そうだよな。ただ、潜在的な興味はあるんじゃないか? おろ
   し方とかがわからないだけで、やってみたいんじゃないのか?

真子:そうかもね。うちの店でも、みんなが肉ばっか、ってわけじゃ
   なくて、魚料理だって結構出るからね。

勝 :昔は魚のおろし方をお母さんとかに習ったんだろうけど、今は
   そういう「メンター」がいないんじゃないか? だから……

真子:「売り手」がその役割を担ってあげないと、売れないんだ。

勝 :そういうこと。ビギナーが入ってこなくなった戦場・市場は、
   「メンター」がいない、っていう要因もあるだろうな。

真子:イトーヨーカ堂みたいに、面倒なことを肩代わりしてあげても
   いいんだよね? 鮮魚を代わりにおろしてあげる、とか。

勝 :もちろん。そのうち興味をもって、自分で3枚におろしたりし
   たくなるかもしれない。やり方はネットに載ってるしな。

真子:あ、なるほどねー。やり方を動画とかにして、ネットにのっけ
   てもいいね。

勝 :そう。ちゃんと教えてあげればいいだけ。

真子:動画はいいね。スマホで見られるし。

勝 :そういうのをビジネスにしてきちんとやる、っていう事例もあ
   るぜ。

勝が「これなんだけどさ」と、再びノートパソコンを真子に向ける。

-----------< 記事要約 >------------

◇UCC上島珈琲は2010年4月、一般消費者を対象に自宅でコー
 ヒーの知識を学べる通信教育講座を始める。コーヒーの知識を深め
 てもらい、市場を活性化する狙い。

◇UCCは2007年から神戸市で、コーヒー全般について学べる教
 育機関「UCCコーヒーアカデミー」を運営。その「ベーシックコ
 ース」と同じ内容を教材にまとめた。

◇コーヒーの歴史や産地の知識、ペーパードリップやサイホンなどを
 使った抽出方法を学ぶ。産地別コーヒーの飲み比べが出来るよう、
 6種類のレギュラーコーヒーも教材に加えた。テキストとDVDな
 どを付けた教材セットの価格は2万8000円。コーヒー抽出器具
 を付けた4万5000円のセットも用意する。

2010/03/29, 日経MJ P.19

-----------< 記事要約 >------------

勝 :UCCコーヒーアカデミーも、この通信講座も、今も続いてる
   みたいだな。もう満席のクラスもあるな。

http://www.ucc.co.jp/academy/curriculum/correspondence.php

真子:へー、本格的な内容だねー。サイフォンまでやるんだ。

勝 :だよな。しかも、ビギナーは器具を持ってないから、それもつ
   けたセットがあるんだよな。ミルとかサイフォンとか。

真子:あ、それでその器具の使い方をDVDで教えてくれるんだね。

勝 :人手でやってもいいし、こういう通信講座みたいな「仕組み」
   にしてもやりやすいな。

真子:この「通信講座」が、「メンター」の役割を果たすんだよね?

勝 :そういうこと。この講座でマニアを育成すると…?

真子:豆が売れる!

勝 :それもそうだけど、他にないか? マニアがしてくれること。

真子:えっと……あ! 口コミ!

勝 :そう。口コミも含めた「布教活動」。それで裾野が広がる。新
   たなビギナーを増やしてくれる存在になるんだろうな。

真子:なるほどねー。ファンをどんどん増やす、ってことだ。

勝 :そういうこと。マニアは教えるのが好きだからさ。

真子:なるほど、ビギナーをマニアにすれば、布教活動して、さらに
   ビギナーを増やしてくれるんだ!

勝 :そうそう。だから、ビギナーをマニアに「育成」するっていう
   「啓発活動」が大事。

真子:コーヒーってさ、こーゆー「啓発活動」、多いよね。スタバと
   かでもコーヒー教室やってるし。

勝 :そうだよな。多分、コーヒーはある意味で異文化だから、啓発
   の必要性がわかりやすいんだろうな。

真子:あ、確かにね。

勝 :「お茶」でもビギナー向けの取り組みやれば、お茶人口増えそ
   うだけどな。みんな案外知らないんじゃないか?

真子:確かに、抹茶とかあんまり飲まないね……外国人の方向けなん
   かも「お茶教室」なんかいーよね。観光にもつながるし。

勝 :あ、そうだな。日本らしいし。さすが元旅行代理店だ。

真子:へっへー。うちの店でも何かできないかなー。

勝 :真子の会社の店、そーれ・しちりあーのでも料理教室、やって
   るだろうが。それってこの目的じゃないのか?

真子:え……あ、そ、そっか、やってるやってる、あははは……そ、
   そうそう、ファン作りのため。

勝 :何だよ……

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆ビギナー・マニアの「メイン」と「サブ」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

勝 :「ビギナー」っていうのは「人」の話だけど、ビギナー「的」
   な「TPO」を狙う、っていうのも同じ。

真子:あ、そっか、「人×TPO」で考えるって勝さんいつも言って
   るよね。

勝 :そうそう。マニアでも「ビギナー的な使い方」っていうのはあ
   るんだよな。

真子:例えば?

勝 :さっき部屋から持って来た、この携帯用エスプレッソマシン。
   マシンっていう程大げさじゃないけどさ。

真子:あれ、勝さん、夜はコーヒー飲まないんじゃないの?

勝 :だから真子に「飲むか?」って訊いたんじゃないか。

真子:やった、真子のために勝さんが愛情込めていれてくれるんだ♪

勝 :自分でやれよ。

真子:やり方わかんないもーん。

勝 :だから、これをこうして圧力貯めて……ほら、覚えとけよ。

真子:こういうのは、男の子の管轄♪ 力がいるんでしょ?

勝 :オレは男の子じゃなくて「オヤジ」だ。それに真子の方がオレ
   より力ありそうだけどな。

真子:そんなことないもん。真子はか弱い女の子だもん。

勝 :ほら、できたぞ。湯飲みで飲むエスプレッソもいいだろ。

真子:やった、わー、ありがとーございまーす♪

勝 :で、これだよ、これ。携帯用エスプレッソマシン。オレは普段
   は、全自動マシンを使うけど、旅先ではこの携帯機。

真子:それがどーしたの?

勝 :だから、マニアでも、こういう「簡易な」マシンを使うTPO
   があるんだ、って言ってる。

真子:あ、なるほど……マニアだから常に本格マシンを使う、とは限
   らないわけだ……旅行中みたいなニーズもあるんだ……

勝 :逆にさ、この携帯マシン、普通の人に言われて、衝撃的だった
   一言がある。数年前に言われて、今でも覚えてるわ。

真子:え? なになに?

勝 :「これなら台所においても場所取らないから便利ですね」って

真子:え?

勝 :いや、だからさ、エスプレッソマシンって場所取るだろ? ビ
   ギナーはそんなことしたくないんだよ。

真子:あ、あああ! なるほど! マニアはでっかい本格マシンのた
   めに場所を取るけど、ビギナーはそんなことしない!

勝 :そう! エスプレッソマシンがあって当然のオレには、この簡
   易マシンを「メイン機」にするっていう発想は無かった。

真子:そっかー、マニアのための「簡易マシン」が、ビギナーにとっ
   ては「メイン機」になるんだ!

勝 :そう。「置き場所を取らない」から便利なマシン。

真子:マニアにとってはあくまでも「非常用」なのにねー。

勝 :オレにとっては、あくまでも「サブ機」だけど、ビギナーにと
   っては「メイン機」になるんだよな。

真子:同じ商品だけど、ビギナーとマニアで「使い方」が違うってこ
   とかー。

勝 :マニアにはさ、そういう発想が浮かばないんだよな。家には、
   本格マシンがあるもんだ、って思っちゃってるからさ。

真子:きゃははは、エスプレッソマシン持ってる人、日本に何人いる
   のよー。

勝 :まさにそういうこと。マニアトラップ。

真子:確かにビギナーだからこそ気づけるニーズだよね。

勝 :だから、マニアにもビギナーにも、同じモノが売れることはあ
   り得る。ただ、TPOが全然違う。

真子:マニアにとっては「サブ」で、ビギナーには「メイン」ってな
   るってことだよね?

勝 :そういうこと。車でもそういう場合あるよな。遠出するときの
   大きな車と、ちょっと出かけるための軽自動車とか。

真子:あ、なるほど。そうかも。

勝 :掃除機でもそうだぜ。

真子:そ、掃除機?

勝が「うん、そう……じき」とぼそっとつぶやきながら真子にノート
パソコンの画面を向けると、真子は逃さず捉え「きゃははは、苦しい
オヤジギャグだねー」と言いながらモニタを見た。

-----------< 記事要約 >------------

◇ダイソンが2011年1月に投入した充電式スティック型のサイク
 ロン掃除機は、小型モーターや充電技術を生かすべく開発。従来機
 同様にターゲットをファミリー層に設定し、“2台目需要”を見込
 んだ。しかし、購入客のほとんどは単身者やシニア層だった。

◇軽く小回りがきくコードレスで、「トリガー(引き金)」を引いて
 いる間だけ動く効率の良さが好評。使用持続時間を20分に延ばし
 た2代目も2012年9月の発売から好調。同タイプは日本法人の
 掃除機販売の半分を占め、12年12月期の国内売上高が過去最高
 を見込めるほど業績を押し上げた。

2012/12/03 日経MJ P.10

-----------< 記事要約 >------------

勝 :機種名は記事からはわからないけど、これ↓のことだろうな。

http://ow.ly/i0LFy

真子:あ、確かに一人暮らしならこれでも十分すぎるくらいだね。だ
   から「単身者やシニア層」に売れるんだ。

勝 :だよな。さっきの携帯用エスプレッソマシンと同じロジック。

真子:掃除機のマニアにはこれは「2台目」の「サブ機」で、単身者
   とかのビギナーにはこれが「メイン機」になる!

勝 :そういうことだな。掃除機のマニア、じゃなくて「掃除」のマ
   ニア、な。

真子:あ、そっか。

勝 :この「掃除のマニア」ってどういう人だ? 掃除が趣味、って
   いうこととは限らないよな。

真子:うん。家が大きい人! 部屋がたくさんあるとか。

勝 :そうそう。「本格的に掃除をする人」ってことだよな。

真子:部屋が1つとか2つなら、この充電式掃除機で十分だね。これ
   がビギナーにとっての「メイン機」で……

勝 :マニアにとっては?

真子:掃除をする場所がたくさんある「マニア」にとっては、充電式
   掃除機は、狭いところを掃除するための「サブ機」

勝 :そうそう。

真子:ってことはさ、それぞれに違う言い方をしてあげないといけな
   いよね? 同じ機械でも?

勝 :そうなるな。全然違うセグメントだからな。

真子:そっかあ。

勝 :家電店の店員さんなんかは、人に合わせてセールストークを変
   えたり、POPをつけたほうがいいよな。

真子:どういうこと?

勝 :掃除機を持ってる人には、「2台目需要」を作れるかもしれな
   いから。

真子:え? え?

勝 :掃除機を既に持ってる人は「サブ機」を持つっていう発想がな
   いかもしれない。だから言ってあげないとわからない。

真子:あ、そーだねー。メイン機を持ってる人には、サブ機っていう
   2台目需要が産まれるわけだからねー。

勝 :そう。ただお客様は勝手に判断してくれるかも。「メイン機」
   として使うか「サブ機」にするか。

真子:あ……だったら、使い方さえ訴求してあげればいい、ってこと
   か。「取り回しがラク」とか。

勝 :そうも言えるな。

真子:あ、「人」っていうよりは「使い方」だね。「切り口1」でや
   った、アレ。

勝 :そうそう。ビギナーには「ビギナーの使い方」、マニアには
   「マニアの使い方」があるわけだ。

真子:ってことは、切り口1の「使い方」と、この「マニアレベル」
   の話は、組み合わせて考えるんだ。

勝 :そういうこと! セグメンテーションの切り口を、どう組み合
   わせるかっていうのもポイント。

真子:うーん、ホント難しいなあ……

「オマエのマーケティングもホント、超ビギナーからだったよな。
「う……は、はい……その節はお世話になりました……」
「その節は、じゃなくて、今でもだろうが」
「ま、まあそうですけど……」
「大久保室長に怒られて、飛び出してさ……」
「あー、もーいーじゃん! やめてよー!
「そのド素人を根気よく育てるのが、いかに大変か……」
「感謝してまーす。でも勝さんだってそーだったんでしょ?」
「まあそうだけどな。色々な人にお世話になりました。はい。この場
 を借りて感謝申し上げます」
「ど、どうしたの、急に」
「最初はみんなド素人なんだけど、そのド素人だった時代を忘れちゃ
 うんだよな」
「あ、それでマニアトラップに落ちる!」
「それもそうだし、ビギナーに対して優しくなくなる。変な優越感を
 持っちゃう。オレも含めて、っていう自戒の意味を込めて、さ」
「あ……うん……そうか……確かに初めての人にはメンター代わりに
 なってあげないとね……」
「売れたま!がそうなってるといいんだけどな」
「ええ? むしろマニアトラップになってないの?」
「え? それはまずいな……でもさ、ほら、真子がド素人だったとき
 の本があるじゃん。真子にできたんなら……」
「誰にでもできる! きゃははは、そーだそーだ」
「そう自分で言ってくれるとありがたいな」

勝がせんべいを続けて食べる。バリバリと音が響く。

「勝さん、お茶入れるね」
「ありがと。でもお茶はカフェイン入ってるからパス」
「あ、そっか。夜はカフェイン摂らない主義か」
「主義っていうか、眠れなくなるから。お湯だけくれよ」
「お、お湯? うん、じゃあ……はい」
「お、ありがと」
「じゃー私にもう一杯エスプレッソ作って♪」
「えー、これ力がいるんだよな……」
「お、ね、が、い♪」
「はいはい……」

勝はため息1つついて、携帯用エスプレッソマシンに圧力を貯め始め
た。

次号に続きます!

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◆今日のまとめ
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●セグメンテーションの5つめの切り口は、「こだわり・マニアレベ
 ル」。ビギナーには「メンター」をつけて優しく「啓発」しよう!

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━特別編Vol.218(累計0994) 2013/02/28

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●プロダクトライフサイクルは「顧客の変化」。マニアとビギナーの
 切り口で市場を見よう!

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◆まずは、前号の復習から!
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*本編の「今の時間」は、年が明けた1月1日の夜です。

1月1日、昼は初詣に出かけ、寄ったカフェで続いた真子へのレッス
ン。夜に宿に戻り、食堂で食事しながらレッスンは続き……

「やっぱり、お正月は泊まってる人、多いよねー」
「そうだよな、この時間でも人が結構通るよな」
「みんなカラオケとかに行ってるんだよね。楽しそうでいーなー」
「今すぐやめてそっち行っても、オレはいいんだけどな」
「だーめ。勝さんは真子に教える義務があるの♪」
「じゃあ楽しそうでいーな、なんて言うなよな」
「真子はこっちも楽しいよ♪」
「何がこっち『も』、だ」
「ね、これ終わったらカラオケ行こうよ! 宿の中にあったよね?」
「そんなヒマあるか。大体、今日は激混みだぜ。入れねーよ」
「それもそっかー」
「あ、売多家親戚一同が行ってるかもしれないぞ」
「勝さんも行こーよー」
「親戚のオモチャにされるからヤだ。この年で未だに子供扱いだぜ」
「きゃははは、勝さんが歌うと盛り上がるもんねー」
「また真子とデュエットとか歌わされてたまるか」
「何よー、嬉しいくせにー。またう、た、お、う、ね♪」
「まあとにかくやろうぜ」
「うん!」

勝 :読者さんから、「今どこやってるのかわからなくなる」ってい
   う声があったから、ちょっと全体をまとめよう。

真子:え、あ、確かに……私もわかんなくなるよ、きゃははは。

勝 :あのな……

真子:えっと、この特集はセグメンテーション特集でーす。

勝 :そこまで戻るのかよ……

真子:だってそーじゃん。で、セグメンテーションはお客様を「分け
   る」こと。人によってニーズが違うから、分けて対応する。

勝 :そうだな。でも?

真子:でも、「分ける」というよりは「ニーズで括る」と言った方が
   現在の日本では適してまーす。

勝 :それでその「括り方」が、セグメンテーションの「切り口」に
   なるんだよな。どうやるんだ?

真子:顧客像を具体化して、そのニーズで括りまーす。

○セグメンテーションの「括って広げる3ステップ」

ステップ1:顧客像の具体化
ステップ2:ニーズの普遍化
ステップ3:ニーズで人を括る

勝 :OK。それで、その「括り方」っていうか「切り口」をずっと
   やってきてるんだよな。ここまで、何があった?

真子:以下でーす。

切り口1:使い方・利用場面
・価値は使い方に現れる。逆に使い方を見ればニーズがわかる!

切り口2:困りごと
・どんなことに困っているのか、困りごとが同じならニーズが同じ!

切り口3:体質
・肌質・髪質・アルコールへの耐性などでニーズが違う!

切り口4:所有資源
・お金・時間・エネルギー・車などの持ち物などでニーズが違う!

切り口5:こだわり・マニアレベル
・ビギナーとマニアでニーズが違う!

真子:今は、この切り口5、でーす。ビギナーはわかりやすい製品を
   簡単に操作したい。マニアはむしろ逆。

勝 :あと、「人」だけじゃなくて「使い方」も、だろ?

真子:あ、そうそう。マニアな「人」でも、ビギナー「的」な使い方
   をするときはある。

勝 :例えば?

真子:例えば、エスプレッソマニアの勝さんが持って来てる携帯用エ
   スプレッソマシン。ビギナー機種だけど、旅行中には便利。

勝 :そうだな。だから、マニア・ビギナーっていうのも、「人」だ
   けじゃなくて「使い方」を見ていく、ってことだ。

真子:ってことは、さっきの「切り口1:使い方・利用場面」と組み
   合わせて考える、ってゆーこと、なんだよね?

勝 :そう。この「こだわり・マニアレベル」はい実戦的かつ意外に
   盲点になってるから、もうちょっと見ていこうぜ。

真子:うん!

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◆ビギナー「的」なTPOを狙う
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勝 :ビギナーの「TPO」を狙う、っていうのも、結構見る手段だ
   な。「ビギナー的な使い方」を狙った商品。

真子:例えばどーゆーの?

勝が「例えばこーゆーの」と言いながら、ノートPCを真子に向ける

-----------< 記事要約 >------------

◇ミズノのアウトドアシューズ「WAVE ADVENTURE 
 GT」(1万3650円)が快走。2012年12月の発売後、年
 間販売目標4千足に対して登山閑散期の1月時点で1700足を販
 売。目標を2倍の8千足に修正。購買層は30~50代と幅広い。

◇シューズ表面に防水や湿度調整に優れた「ゴアテックス」、靴底に
 クッション性と安定性に優れた独自開発の素材を使用。鮮やかな黄
 色など街中でも違和感のないデザインとした。「四駆で街中を走る
 ような感覚」(同社)で、ジーンズなど普段着とも合わせやすい。

◇ふもとまで電車で行くような日帰り登山や野外音楽イベントなどが
 浸透、「アウトドアが若者にも身近になっている」(同社)。ミズ
 ノは「ウオーキングを基本にしながら、裾野を広げる商品を生み出
 し」(同社)、アウトドア分野の事業を強化。SNSなどを通じ
 て広く初心者層にも訴求する。

2013/02/18 日経MJ P.20

-----------< 記事要約 >------------

勝 :製品のHPはコレ、だな。

http://www.mizuno.co.jp/whatsnew/2012/12/20121212.html

真子:結構本格的だよね……靴底、なんかすごいねー。

勝 :だよな? 本格的だけど、アイゼンつけて山登りするほど本格
   的ではなく、ライトなアウトドア、って感じじゃないかな。

真子:あ、それがビギナーのTPO、っていうこと? 日帰り登山、
   とか、そういう感じの。

勝 :そうそう。「人」というよりは「使い方」として、ビギナー
   「的」、ってこと。

真子:あ、なるほどね。マニアな人でも、ビギナー的なTPOのとき
   にはいいんだ。

勝 :さらに言えば、別にこれで街を歩いたっていい、ていうか、そ
   れを狙ってるんだろ。

真子:あ、雨のときなんかはいいかもね。ぬかるんだところでも平気
   で歩けそう。

勝 :そうそう、アスファルトを歩く分にはオーバースペックでも、
   そういうTPOはあるだろ。

真子:そっか、登山用の靴で、普通に街を歩く、ってことなんだ。

勝 :そんな感じなんだろうな。だから「普段着とも合わせやすい」
   っていうデザインにしたんだろ。

真子:あ、確かに登山靴登山靴しちゃってると、街で浮いちゃうね。

勝 :マニア向け商品を普段使いに、っていう事例は結構ある。例え
   ばマウンテンバイクで一般道を走るとか、そうだよな。

真子:あ、確かにマウンテンバイクって「マウンテン」用っぽいけど
   普通に街でも乗ってるよね。

勝 :だろ? カシオのG-SHOCKもそうだな。普段の生活で使
   う以上の性能っていうか、堅牢さっていうか……

真子:あーなるほど、G-SHOCKって、それこそ登山用みたいな
   感じだけど、普通に使うもんね。

勝 :ジムで泳ぐときとかにはいいよな。ダイビングするほど本格的
   じゃないけど、防水機能が必要なTPO。

真子:あ、なーるほどぉ。そういうTPOってあるんだね。

勝 :だから、マニア向け商品でも、ビギナーのTPOに合わせた売
   り方をすれば、売れることもあるっていう事例。

真子:マニアとビギナーっていう「人」じゃなくて、それぞれの「使
   い方」で考えるってことだね。

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◆「こだわり具合」で「買うモノ」が違う!
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勝 :ここまで「マニア」「ビギナー」っていう切りやすい言葉を使
   ってきたけど、いわゆる「こだわり」もこの切り口の一部。

真子:どんな「こだわり」があるの?

勝 :真子の会社のビジネス、イタリアンレストランでいえば、季節
   感とか記念日の食事とかへの「こだわり」

真子:それはそうだと思うけど、どーやればわかるのかな?

勝 :例えばこんな調査もあってだな……

勝がノートパソコンを真子に向ける。

-----------< 記事要約 >------------

◇日経産業地域研究所の調べでは季節感のある食を「プチぜいたく」
 に生かす「シーズナリスト(造語)」は行事食や旬の食材を使う料
 理のほか、記念日の食事を楽しむ意向が高い。

◇「シーズナリスト」と「非シーズナリスト」

A.季節感は、プチぜいたくを楽しむ際の大事な要素の一つだ
B.食べ物で季節感を楽しむことが多い

「シーズナリスト」は、A,Bの双方とも「あてはまる」または「ま
ああてはまる」と回答した人

◇「シーズナリスト」とそれ以外の「非シーズナリスト」では、年代
 別構成比で突出した層はなかった。男女別構成比では、シーズナリ
 ストは女性が57・7%に達し、自身が商品の買い手となる機会が
 多い女性に多いことがわかった。

◇「店頭に出回り始めると、すぐに買うか」で「必ずすぐに買う」ま
 たは「割とすぐに買う」

シーズナリスト: 55・0%
非シーズナリスト:24.6%

◇12年に何で楽しみたいか(楽しむ意向のある人)

           おせち料理    栗ご飯
シーズナリスト    58.0%   44.9%
非シーズナリスト   49.7%   23.0%
(数字は記事の図表から筆者が再計算)

◇12年に「結婚記念日(既婚者のみ)」や「自分や家族の誕生日」
 に「食事の予定があるか(何かしたいか)」も尋ねた。これらの場
 合も、楽しむ意向を持つ割合はシーズナリストの方が高かった。

2011/12/14 日経MJ P.2

-----------< 記事要約 >------------

真子:「シーズナリスト」って面白い言葉だねー。「シーズン」から
   取ってるんだろうね。

勝 :そうだろうな。「季節性」は「Seasonality」(シーズナリテ
   ィ)って言うしな。

真子:シーズナリストっていうのは……食への「こだわり」が強い人
   っていうことかな?

勝 :食っていうよりは、「イベント食へのこだわり」かな。季節感
   とか記念日の食事、とか、そういうの。

真子:あ、なるほど。「イベント食」ね。それいーな♪

勝 :で、これ、うまく切れてそうな感じがする切り口だわ。

真子:うん、「栗ご飯」作るかどうか、なんて確かに、食を楽しんで
   る人、って感じがするよね。

勝 :この定義の何がいいって、「定義する方法があること」なんだ
   よな。

真子:へ? そんなの当たり前じゃないの?

勝 :んなことないぞ。世間では「高感度な人」とかっていう、曖昧
   模糊としたターゲット描写がまかり通ってるぞ。

真子:ダメなの? 高感度な人って、実際いるじゃん。

勝 :だからそれを定義しろ、ってこと。定義できるんならいいよ。

真子:できないの?

勝 :いや、できるよ。例えば週2回以上は、大規模繁華街に行く、
   とかさ。大規模繁華街を定義した上で、だけど。

真子:あ、そういうことか……

勝 :で、シーズナリストの定義も、「性別・年代」とは関係ないよ
   な。何で切ってる?

真子:だから「こだわり」でしょ? この質問にYESの人!

A.季節感は、プチぜいたくを楽しむ際の大事な要素の一つだ
B.食べ物で季節感を楽しむことが多い

勝 :そうそう。「イベント食へのこだわり」。

真子:でもさー、このこだわりの強い人、じゃあどんな人かわからな
   いよね?

勝 :そう、だから「この人達は、どういう人か」って、ここから再
   定義していく。その結果、性別・年代になれば、それはOK。

真子:あ、いきなり性別・年代だとダメだけど、こういう切り口から
   入っていって、性別・年代になるのはいいんだ?

勝 :それがニーズの違いを表しているわけだからな。ただ、シーズ
   ナリストでは性別・年代ではあんまり明確に出てないよな。

真子:じゃあどうすればこの人達に到達できるの?

勝 :何言ってんだ、そういう「イベント食」を訴求すれば、シーズ
   ナリストの人達が反応するだろうが。

真子:あ、そうか、「メッセージ」を出せば、反応してくれるんだ!

勝 :そうそう。変な話、別に顧客を描写できなくてもいいんだ。ニ
   ーズがわかれば、メッセージが出せるから。

真子:そっかあ。ね、ね、じゃーうちの店でもさ、季節感を出したメ
   ニューとかをやればいいってこと?

勝 :そう!! それを前面に打ち出せば、そういうのが好きな人に
   は刺さるだろ。

真子:なるほどねー。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆プロダクトライフサイクルと「ビギナー」「マニア」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

勝 :じゃあ、この「切り口5:こだわり・マニアレベル」の最後の
   事例。多分最後。

真子:何、「多分」って?

勝 :後で気が変わるかもしれないから。

真子:でたー、無計画なんだから……

勝 :無計画なんてオマエに言われたくねーよ。この事例だな。

-----------< 記事要約 >------------

◇「無印良品」を運営する良品計画は、男性用スキンケア化粧品を
 2006年から販売開始。2011年、刷新に向けて男性社員の意
 見を集めると「自分がどういう肌質なのかわからない」「1日に何
 種類も使うのが面倒だ」などの声が出た。

◇2012年3月、男性用スキンケア化粧品を刷新。男性が迷わずに
 商品を選べるように、肌タイプ別の品ぞろえを廃止、商品種類を約
 半分の7品目に集約。男性があまり使わない乳液やリップクリーム
 などを廃止し、洗顔と化粧水を基本とするシンプルな商品構成にし
 た。

2012/02/29 日経MJ P.6

-----------< 記事要約 >------------

真子:あれ? これって前号でやった「ビギナー開拓策」と同じじゃ
   ないの? ビギナー向けにわかりやすく、選びやすく。

勝 :そうだけど、「男性化粧品」ってどんな市場だ?

真子:どんな市場って、ビギナーが多そうだけど……

勝 :だからそういうこと。

真子:え?

勝 :これさ、経産省が発表してる男性用化粧品の市場規模、な。

-----------< 記事要約 >------------

男性用化粧品(出荷ベース)

    販売金額(百万円) 伸び率

2007 15,061  
2008 17,600   +17%
2009 16,134   - 8%
2010 19,391   +20%
2011 21,694   +12%

(経済産業省 化学工業統計 伸び率は筆者が計算)
www.meti.go.jp/statistics/tyo/seidou/result/ichiran/
02_kagaku.html
www.meti.go.jp/statistics/tyo/seidou/result/ichiran/
resourceData/02_kagaku/nenpo/h2dbb2011k.xls#化粧品!EK6

-----------< 記事要約 >------------

真子:すごい勢いで伸びてるねー。2009年のマイナスはリーマン
   ショックかな? でもその後はすごい伸び率だね。

勝 :そう、いわゆる「プロダクトライフサイクル」でいう、導入期
   とか成長期にある市場なんだよ。

真子:あ! そういう市場だと、ビギナーが多いんだ!

勝 :そう! ライフサイクルのどこにいるか、でもその割合が結構
   違ってくる。

真子:なるほど、時間を経るにつれてマニアが増える!

勝 :だよな。スキーは成熟期か衰退期だけど、マニアばっか。ゲレ
   ンデ出ると、みんなビュンビュン飛ばすよな。あぶねー。

真子:勝さんだっていい年して超飛ばしてんじゃん。同類だよ。

勝 :そうなんだけどさ。マニアトラップって、要は成熟期から衰退
   期に起きる。

真子:そっか、時間の変化、っていうのも考慮にいれる必要があるん
   だね。

勝 :正確に言えば、「プロダクトライフサイクル」っていうサイク
   ルが「ある」わけじゃない。

真子:え? ないの? よく本に載ってるよ?

勝 :サイクルがあるかのように見えるような「顧客の変化」がある
   ってことだ。逆じゃないぞ。

真子:あ、そっか。顧客が変化していくのが、プロダクトライフサイ
   クルなのか。

勝 :逆に言えば、顧客を見ておけばいい、って話。当然、マニアが
   増えてくると、「サイクルが進んでいる」ってことになる。

真子:なーるほどぉ。サイクルが進むから顧客が変わるんじゃなくて
   その逆なんだぁ!

勝 :そうそう。「プロダクトライフサイクル」は「現象の描写」で
   あって、ドライバーではない。

真子:わかんなーい。そんな難しい表現は使わないでくださーい。

勝 :だから同じこと。顧客が変化する、っていうのが本当に起きて
   いることで、その現象を描写しているのがライフサイクル。

真子:本質は顧客の変化、ってこと?

勝 :そういうこと。これがいい例だ。

-----------< 記事要約 >------------

◇2013年2月開催の東京マラソンは過去最高の30万人超が申し
 込み、ランニング関連消費に息切れ感はない。ブーム定着で拡大す
 る中上級ランナー層向けの商品が充実、ランニングシューズの販売
 競争が新たな段階に入った。

◇アディダスジャパンの新ブランド「エナジーブースト」は、膝や腰
 への負担が少ないトレーニングに適した新商品。同社はアシックス
 を定年退職した技術者、三村仁司氏とアドバイザー契約を結び、中
 上級者向けランニングシューズの開発に注力。本来のファッション
 性に機能性を加えて、強みとする中上級市場を攻める。

◇プーマの2月発売の新ブランド「モビアムランナーエリート」は靴
 底の横幅を着地時に広げ、蹴り出す時に収縮し蹴り出す力を補助、
 ランナーの負担を減らす。「上級者層が厚みを増しており、ファッ
 ション性だけでなく技術力でランナーに訴える」(同社)。

◇国内勢として最後発のデサントは2月からランニングシューズ市場
 に参入。英スポーツブランド「イノヴェイト」と組む。同ブランド
 は山道を走るトレイルランニング用シューズで知られ、トレイル用
 の需要増もにらんで同ブランドを展開する。

◇中上級者向けのランニングシューズでトップシェアをもつアシック
 スも「製品性能だけでなく、練習メニュー作成サービスも加えた総
 合力で引き離す」(同社)考えだ。

2013/02/27 日経MJ P.7

-----------< 記事要約 >------------

真子:へー、ランニング市場は逆にマニア化しつつある、ってこと?

勝 :マニア化とまではいかないかもしれないが、中上級者が増えて
   るってことだな。昔のビギナーがベテランになってきてる。

真子:そうすると、「技術」とか「機能」が大事になってくるんだ。

勝 :知識と経験を持ってるから、製品の「判断力」が高まるんだよ
   な。前にやったマニアとビギナーの比較表、あるか?

真子が「これだよね」と言いながらノートを開く。

       マニア      ビギナー

所有資源   多い      少ない
投資金額   多い      少ない
知識     豊富      少ない
言葉遣い   専門用語    普通の言葉
情報収集   積極的     マニアに聞く
作業     自分で行う   マニアに頼む
好み     細かい好み   こだわらない
必要な機能  高機能     必要最低限 

勝 :そうそう、これこれ。まさにこのランニングシューズはこの話
   だろ。知識が増えて、高機能を好む中上級者が増えてる。

真子:ホントだ! きっとランニングフォームとかさ、そういうのに
   も詳しいんだろうね。

勝 :着地の時に、足のどこで着地するか、とかでも色々あるらしい
   ぜ。

真子:へー、そうなんだ。ビギナーにはわからなくても、マニアには
   大事なことなんだろうね。

勝 :ざっくり言うと市場が変わって来てる、ってことだけど、具体
   的にはこのビギナー・マニアの話で説明できるよな。

真子:うん。マニアトラップの逆だよね。マニア対応が必要になって
   きてる戦場なんだね。

勝 :そういうこと。「市場の見方」という意味でも、この切り口は
   大事だな。

真子:そうだよねー。

勝 :ということで、この切り口も終わり。次の切り口に入ろうか。

「ねー、疲れた。ちょっと一休みしよーよ」
「そうするか」
「ね、またエスプレッソいれてよ。勝さんの携帯マシンで」
「よく夜にそんなカフェイン飲んでも大丈夫だな……」
「真子ちゃん、全然へーき」
「じゃあ、お湯もらってこいよ。お湯がないといれられない」
「はーい」

勝が準備を始めると、真子が軽くなったお湯のポットを持って行く。

「お湯がきたよー」
「おう……じゃあ……ほら」
「わあ、ありがと」

勝もおやつをつまむ。

「ある人が面白いこと言ってた。コーヒー豆については、庶民もアラ
 ブの大富豪と同じ、世界最高の豆が買えるって」
「あ、確かに! 世界最高の肉なんて手に入らないけど、世界最高に
 近い豆は買えるよね」
「そういう意味でも、コーヒーって面白いよな」
「うん、庶民の贅沢だ」
「ちなみにラーメンもそうじゃないか、って思ってる。世界で一番う
 まいラーメンでも、せいぜい千円ちょっと」
「あ、確かに! 勝さんが好きなのってそんなのばっかだねー」
「だってさー、切ないだろ、1万円の高い肉食べて、他の肉がおいし
 くなくなっちゃったら」
「きゃははは、そういう考えもあるかー。じゃあさ、勝さんは、女の
 子を見る目が厳しくなっちゃって、た、い、へ、ん♪」
「まさか、「世界一カワイイ真子ちゃんをいつも見てるから」とか言
 わないよな?」
「きゃはは、やっぱりそう思ってるんだ、世界一カワイイ、って♪」
「オレがそう思ってるんじゃなくて、オマエがそう思ってそうだ、っ
 ていうのがわかるだけだろうが」
「いーじゃん、世界一の女の子が目の前にいると思えば、それは錯覚
 だとしてもすっごく幸せでしょ?」
「オマエすげー開き直りだな。そこはホントすげーよ」
「じゃーエスプレッソおかわり!」
「もうやめとけ。いくらなんでも飲み過ぎだ」
「何か飲んべのダンナと奥さんみたいな会話だ♪」
「オマエと話すのはホント疲れるよ……」

次号に続きます!

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◆今日のまとめ
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●プロダクトライフサイクルを引き起こすのは顧客の変化。その重要
 な切り口が「マニア」「ビギナー」。顧客の変化をよく見よう!

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━特別編Vol.219(累計0995) 2013/03/04

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●切り口その6は「購買履歴」。自社商品の購買履歴は社内にあるは
 ずなので、活用しやすい!

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◆年末年始特別号!
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2月になっても終わる気配のない、年末年始特別号!

実戦的セグメンテーションに深く彫り込んだ、日本でも珍しい特集で
す(ひょっとして日本で初めてかも……)。

我らがヒロイン「売多真子」(うれた・まこ)と、真子の親戚にして
そのメンター「売多勝」(うれた・まさる)です。2人は以下の本の
登場人物です。まだお読みでない方はぜひ!

○「新人OL、つぶれかけの会社をまかされる」 佐藤義典著
http://ow.ly/89pSR

売多真子が、勝の助力を得てイタリアンレストランの新企画に奮闘!
マーケティングの最初の1冊としてオススメ。

○「新人OL、社長になって会社を立て直す」 佐藤義典著
http://ow.ly/6s63d

上の本の続編。真子が社長になり、ライバルと戦っていく! 戦略構
築から実行プロセスまで、社長の視点を物語で体感!

例によってこのシリーズはどのくらいの長さになるかは、この2人の
活躍次第ですので、現時点ではわかりません。

今回の特集は、「セグメンテーション」! マーケティングで恐らく
は一番難しいことの1つです。

そのセグメンテーションにどう切り込むのか?

●あらすじ

大晦日の夜、売多真子と勝は、年末に売多家が集まる温泉宿へと一緒
に向かった。電車の中で、そして除夜の鐘を聞きながら続いた2人の
レッスン。

一夜明けて、お正月を迎えて……

今号はシリーズ第20回目です。

最近お読み始めになられた方は、バックナンバーからどうぞ。第1回
目はコチラです↓

http://archive.mag2.com/0000111700/20121228030000000.html

ここから「次の記事」をクリックしてお読みください。

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◆まずは、前号の復習から!
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*本編の「今の時間」は、年が明けた1月1日の夜です。

1月1日、昼は初詣に出かけ、寄ったカフェで続いた真子へのレッス
ン。夜に宿に戻り、食堂で食事しながらレッスンは続き……

「この宿のお風呂、広くていーよねー。温泉だし」
「何だ、もう入りたいのか?」
「まだいーけど、もー少ししたら温泉いこーよ」
「ああ。旅館の顧客満足度って、風呂の満足度と比例するらしいぜ」
「へー、そうなんだ。食事とかは大事じゃないの?」
「風呂の満足度と比例するっていうか、風呂がいいところは、他の部
 分もいいのかもしれないけどな」
「あ、そうかも。食事では差がつけにくい、ってことかな?」
「さあなあ……食事は素材のコスト勝負みたいな部分もあるんじゃな
 いか?」
「お風呂は見た目わかりやすいからねー」
「それもあるだろうな」
「勝さんにとっては、この宿はどうなの?」
「いいところだと思うよ。対応いいしさ……ていうか、オマエの方が
 専門だろ。旅行代理店にいたんだからさ」
「仕事での使いやすさとはまた違うから勝さんに訊いたの♪」
「まあ正月にこんな大人数で泊まれるだけ有り難いけどな」
「そーだねー」

勝 :じゃあ復習から、な。

真子:うん。ここまでのおっきなまとめはこんな感じでーす。

○セグメンテーションの「括って広げる3ステップ」

ステップ1:顧客像の具体化
ステップ2:ニーズの普遍化
ステップ3:ニーズで人を括る

○セグメンテーションで「括る」ための切り口

切り口1:使い方・利用場面
・価値は使い方に現れる。逆に使い方を見ればニーズがわかる!

切り口2:困りごと
・どんなことに困っているのか、困りごとが同じならニーズが同じ!

切り口3:体質
・肌質・髪質・アルコールへの耐性などでニーズが違う!

切り口4:所有資源
・お金・時間・エネルギー・車などの持ち物などでニーズが違う!

切り口5:こだわり・マニアレベル
・ビギナーとマニアでニーズが違う!

勝 :そうだな。

真子:前回は、プロダクトライフサイクルと、マニア・ビギナーの関
   係を考えました♪

勝 :それで?

真子:プロダクトライフサイクルは、そういう「サイクル」があるわ
   けじゃなくて、あくまでも「顧客の変化」のパターン。

勝 :そう。プロダクトライフサイクルは「現象」なんだよな。現象
   と原因を混同しちゃダメだ。

真子:はーい。見ておくべきは、「お客様」ってことだよね。

勝 :そういうこと。

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◆切り口6:購買履歴
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勝 :じゃあ次の切り口に入っていこう。次の切り口は「購買履歴」

真子:何を買ったか、っていうこと?

勝 :そう。真子の会社のイタリアンレストラン、「そーれ・しちり
   あーの」なら、いつ誰と来て何を食べたか。

真子:あ、なるほどね。それがわかれば、お勧めとかができるもんね

勝 :単純な話、真子の店に来てワインを飲んだ人なら次回はワイン
   を薦めるだろうし、飲まない人にはノンアルコール、だよな。

真子:そりゃそうだよね。でもさ、既存顧客はわかるけど、来たこと
   がないお客様についてはわからないよね?

勝 :自分の会社とか店だけで考えればそうなるけどな。

真子:え?

勝 :だってさ、紹介を受ける場合とか、他社と共同プロモーション
   なんかをする場合があるだろ?

真子:あ、そっか、他の会社さんと組む場合もあるのか……

勝 :例えば、そーれ・しちりあーのが、和食店と互いにお客様を紹
   介しあうとするだろ? そうすると……

真子:あ、なるほど、和食店から紹介を受けたら、その人は「和食が
   好き」っていうのがわかるから、日本酒を用意しておくとか?

勝 :日本酒を用意するかどうかはともかく、「和食店に行く」とい
   う「購買履歴」を活用できるとは言えるだろ?

真子:うん。それも大きな意味での「購買履歴」なんだね。

勝 :そういうこと。具体的にはこんな感じだな。

いつものように勝がノートPCを操作し、真子に向ける。

-----------< 記事要約 >------------

◇スタイリングライフ・ホールディングスの「プラザ」は会員の購買
 履歴を細かく分析して「『丁寧な接客の店』『ギフトに特化した
 店』など個店ごとにメッセージを明確にしていく」(同社)。

◇「その店は『誰に愛されているのか』を理解して商品を選ばなけれ
 ば、支持は続かない」(同社)。

2012/12/24 日経MJ P.7

-----------< 記事要約 >------------

勝 :プラザ、って昔のソニプラ、な。

真子:うん。そっか、店ごとにお客様が違うから、それを分析して、
   それにあった店にするんだ。

勝 :店舗の場合は、「立地」の違いがあるから、顧客層がそれで変
   わるよな。

真子:「ギフトに特化した店」なんていいね。きっと、ギフト商品が
   売れるんだろうね。

勝 :「購買履歴」が切り口として優れている1つの点がそれ。「売
   り物」の分析だから、打ち手につなげやすいんだよな。

真子:あ、そうだよね。ギフトが売れている、とわかれば、ギフトニ
   ーズがあるってことだから、ギフトを強化する!

勝 :そうそう。「どんな人」っていう顧客の定義をしなくていいと
   は言わないけど、少し粗くてもなんとかなる。

真子:そっか、「これを買う人」っていう定義でいいんだ。

勝 :それだけでいいとは言わないけど、「これを買う人」っていう
   基準は明確だからな。「高感度な人」みたいな曖昧さはない。

真子:あーなるほどね。スパって切れるもんね。

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◆切り口6:購買履歴  店舗の場合は「購買履歴×立地」
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勝 :あと、店の場合はどうしても「立地」の影響を受けるから、
   「購買履歴×立地」で考えた方がいいな。

真子:うん。

勝 :それをうまく活用した、こういう事例もあるぜ。

-----------< 記事要約 >------------

◇味の素は2012年夏から、取引先のスーパー4000店ごとの立
 地条件に合った販促策を提案。販売地域の特性を細かく分析、顧客
 の行動パターンを割り出し、特売や商品陳列に活用。自社調味料の
 販売増につなげる。

◇周辺住民の年齢や世帯構成、食材の購買傾向など店舗ごとの特性を
 踏まえ、スーパーのバイヤーらの要望を交えて分析。高齢者が多い
 地域なら、和食の素材になる野菜や魚、調味料を1カ所に陳列する
 クロスマーチャンダイジングを提案。

◇顧客に会員カードを発行しているスーパーには会員情報と購買履歴
 を結び付け、店ごとの顧客の行動特性を明らかにする作業も支援。

2012/05/18 日経産業新聞 16ページ 943文字 PDF有 書誌情報

-----------< 記事要約 >------------

真子:立地に合わせて提案する、っていうのももちろんすごいけど、
   各店のお客様の購買履歴分析できたらホントすごいね!

勝 :なかなか店の方ではそこまで手が回らないだろうからな。

真子:うん、品出しとかレジとかがやっぱり大変だろうし……

勝 :2012年12月17日号でも「味の素の営業戦略」としてと
   りあげさせてもらったけど、結構徹底してやってるよな。

http://archive.mag2.com/0000111700/20121218025000000.html

真子:これ、スーパーに「購買履歴を分析したい」っていうニーズが
   あるってことだよね?

勝 :鋭いな。多分そうなんだろうな。そこまで手が回らない店もあ
   るだろうし。

真子:じゃあ、「セグメンテーションしたいニーズ」をうまく捉えて
   るってことだ!

勝 :そういうことになるな。

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◆「購買履歴」の切り口としての「強み」
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勝 :「購買履歴」を使うメリットっていうか、他の切り口に対して
   の「強み」は何がある?

真子:最初にいった、「スパッと切れる」ってところじゃない? 曖
   昧さがないっていう……

勝 :お、鋭い。まずはそれ。

真子:鋭いっていうか、勝さんが言ったんだよ、さっきのプラザのと
   ころで。

勝 :それもそうか。1つめは「客観性」。買った、買わない、って
   いうYesNoで分けられる。曖昧さがない。

真子:そりゃそうでしょ。

勝 :大事なことなんだよ! マニアとビギナーの切り口なんかだと
   基準を定義する、っていうワンクッション必要だろうが

真子:あ、そっか。切り口2:困りごと、なんかもそうか。基準が曖
   昧になりがちだね。

勝 :だろ? YesNoで分けられることは、2つめのメリット
   につながる。それは「操作容易性」

真子:はい? ソーサヨーイセー?

勝 :真子的に言うと、「カンタンに使える」。表計算ソフトとかで
   扱いやすい。

真子:どういうこと?

勝 :Excelで上から順番にお客様を並べて、どの商品を買った
   買わないっていう分析がやりやすい。「操作」しやすいんだ。

真子:他の切り口だとできないの?

勝 :性別年齢とかだとできるけど、使い方・TPOとかだと、まず
   使い方を分類する、っていうカテゴリー分けが大変。

真子:あ、そっか。

勝 :それから、3つめが「入手容易性」。なんと、自社商品の購買
   履歴は、自分のところにあるんだよ!

真子:当たり前じゃん。

勝 :当たり前っていうくらいだから、活用してるんだろうな?

真子:そ、それは……どうでしょーねー。

勝 :注文メニュー別に人を分けて来店頻度とか客単価を分析するく
   らいのことは「当たり前」のようにしてるんだよな?

真子:えっと……望ちゃん*がしてる……といーな……。はい、スミ
   マセンでしたー。社長として指示は出してませんでした!

*「新人OL~」などの登場人物。真子の部下。

勝 :じゃ当たり前とか言うんじゃねーよ。購買履歴は、ホント使わ
   れてないぞ。未活用の独自資源であることがすっごく多い。

真子:じゃあうちも望ちゃんとやってみるか……

勝 :望ちゃんになら、懇切丁寧にじっくりとゆっくりと手取足取り
   教えるんだけどな

真子:やだー、真子に教えてよー。手取足取りで-。

勝 :また今度、望ちゃんと一緒にな。オマエはデータとか苦手そう
   だからな……

真子:それはそーだけどさー。

勝 :で、4つめが「直接性」。「売り物」に直結する。っていうか
   「売り物」のデータそのまんま、だな。

真子:どーゆーこと?

勝 :例えばさ、性別・年代で切ると、30代女性が何を買うか、っ
   て「直接」はわからないだろ?

真子:??

勝 :例えば、子供のおむつを買うかどうか、わからないよな? 子
   供の有無とか、子供の年齢とかを知ればわかるけど。

真子:それで?

勝 :「おむつを買った人」なら、「おむつを買ったかどうか」がわ
   かるだろ? 「直接に」購買と結びついてる。

真子:あ! そうか、40代男性でも子供のおむつを買った人なら、
   乳幼児がいるって「直接」にわかる!!

勝 :そういうこと。40代男性がビールを飲むとしても、自分で買
   ってるとは限らない、という代理購買の問題もあるよな?

真子:そっか、「ビールを買った人」なら、自分で飲むかどうかに関
   わらず、ビールを買うかどうかの意思決定者なんだ!

勝 :そういうこと。この「直接性」という強みは「購買履歴」にし
   か無いと言ってもいい。

真子:4つで終わり?

勝 :うん。ちょっとまとめてみ。

真子が「うん……」と言いながら、ノートにまとめていく。「こんな
感じかな?」と言いながら勝に見せる。

○「購買履歴」を切り口に使うメリット

1)客観性:YesNoで分けられ、曖昧さがない
2)操作容易性:表計算ソフトとかで扱いやすい
3)入手容易性:購買履歴は自社にある
4)直接性:売り物と顧客を直接つなげている

勝 :そうそう。

真子:ちょっとピンと来ないんだけど……

勝 :まあそうだよな……確か事例があったけど……

「ちょっと一休みするか……」

勝がふう、と息をはきだした。

「うん! ねー勝さん、なんか難しいことやったら疲れたよー」
「そうだな……風呂入ってさっぱりしてくるか」
「やった、温泉タイム♪」
「女性は温泉好きだよな……」
「お肌すべすべになるんだもん♪ お風呂上がったら続きだね!」
「えー、風呂上がりにか?」
「もっちろん。どうせ他にやることないしさー」
「オマエ失礼だな……大体風呂上がったら寝そうじゃねーかよ」
「きゃははは、若いから大丈夫♪」
「じゃあ、30分後にロビーな」
「え? 30分後? 早すぎない?」
「オマエどんだけ長風呂なんだよ……」
「だってー、女の子は色々と準備があ、る、の♪」
「じゃあ40分後。それ以上待つならオレは寝る」
「やだー、そんな早く真子と逢いたいんだぁ。待ちきれないんだ♪」
「正月くらい早く寝たいの! じゃあ風呂行くか」
「やった、温泉だ、温泉温泉♪」

勝がノートパソコンをパタンと閉じてカバンにしまうと、真子も大事
そうにノートをしまい、同時に立ち上がった。

「早くいこーよ」
「別に一緒に行くわけじゃねーだろ」
「そーだけど、早く温泉入りたいんだもん♪」

2人は足取りも軽く、部屋に戻っていった。

次号に続きます!

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◆今日のまとめ
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●切り口6は「購買履歴」。客観性、操作容易性など様々なメリット
 があるので、ぜひ使いこなそう!

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━特別編Vol.220(累計0996) 2013/03/07

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●切り口その6は「購買履歴」。お客様が買ったモノからニーズを考
 え、それに合った「お勧め」をしよう!

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◆まずは、前号の復習から!
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*本編の「今の時間」は、年が明けた1月1日の夜です。

1月1日、昼は初詣に出かけ、寄ったカフェで続いた真子へのレッス
ン。夜に宿に戻り夕食を終え、温泉を楽しんだ後……

ロビーのソファで男性がテーブルの上のパソコンを操作しながら、周
りをちら、ちらと気にしている。もちろん、勝だ。

浴衣姿の真子がロビーに駆けて来たかと思うと、すぐ勝に駆け寄る。

「お待たせー!」

ソファーに腰掛ける勝のすぐ横に真子が勢いよく腰を下ろし、ノート
などをバラバラと机の上に広げていく。

「おせーよ、40分後って言っただろ。10分遅刻!」
「だってー……いろいろ準備しないと……」
「まさか予習してたのか?」
「え? あ、そうそう。このために予習してたの♪」
「……絶対違うだろ」
「まあでもそんな感じ。勝さんに会うためのよ、しゅ、う♪ あれ、
 勝さん、浴衣の着方が変だよ?」
「そうか? 別にいーじゃん」
「もー、ちゃんと着なよー。ほら、ここが……」
「やめろ、触るな」
「ダメだよ、真子と一緒にいる人が変なカッコなの、イヤだもん」
「オレがカッコ悪いのなんて何を今更……やめろってば」
「えっと……こうして、っと……はい、できたよ!!」
「……ありがと」
「どーいたしまして♪ でもいいお湯だったねー」
「そうだな」
「ほら、見てみて、お肌、す、べ、す、べ♪」
「そうだな」
「なんでそんな投げやりなのよー、ちゃんとお肌見てよー」
「知るか、そんなの」
「やだー、真子の美しい素肌にドキドキしちゃうんだ♪」
「誰がするかよ。いいから始めるぞ」

真子:じゃあ復習だよねー。まずはこれから……

○セグメンテーションの「括って広げる3ステップ」

ステップ1:顧客像の具体化
ステップ2:ニーズの普遍化
ステップ3:ニーズで人を括る

○セグメンテーションで「括る」ための切り口

切り口1:使い方・利用場面
・価値は使い方に現れる。逆に使い方を見ればニーズがわかる!

切り口2:困りごと
・どんなことに困っているのか、困りごとが同じならニーズが同じ!

切り口3:体質
・肌質・髪質・アルコールへの耐性などでニーズが違う!

切り口4:所有資源
・お金・時間・エネルギー・車などの持ち物などでニーズが違う!

切り口5:こだわり・マニアレベル
・ビギナーとマニアでニーズが違う!

切り口6:購買履歴
・何を買ったかで、直接の購買行動がわかる!

真子:それで先週は、切り口6:購買履歴をやりました!

勝 :購買履歴を「切り口」として使うメリットは?

真子:この4つでーす。

真子が勝にノートを見せる。

○「購買履歴」を切り口に使うメリット

1)客観性:YesNoで分けられ、曖昧さがない
2)操作容易性:表計算ソフトとかで扱いやすい
3)入手容易性:購買履歴は自社にある
4)直接性:売り物と顧客を直接つなげている

勝 :OK。こんなデータもあるんだよな。

今度は勝が真子にパソコンを見せる。

-----------< 記事要約 >------------

◇どんな商品を買ったか、消費者の記憶に頼っていたモニター調査が
 会員カードなどの購買履歴と連動することで正確さを増している。

◇Pontaリサーチを運営するロイヤリティマーケティングは約
 50万人のモニターを持つ。「今までの一般的な調査は『この商品
 買いました』というモニターの記憶と自己申告頼み。正解率は6割
 程度」(同社)。同リサーチはレジでの買い物ごとにポイントカー
 ドを読み取り、各モニターの正確な購買履歴を蓄積する。

2013/01/16 日経MJ P.3

-----------< 記事要約 >------------

真子:へー、自分が何を買ったか、の「正解率は」6割なんだ! そ
   れって高いの、低いの?

勝 :まあそんなもんかな、って感じがするな。少なくとも、買った
   もの全部は覚えてないよな。

真子:そっかあ……ということは、さっきの「メリット」で言えば、
   「客観性」が高いっていうことの証拠になるのかな?

勝 :そうだな。それに「入手容易性」が活きてくるよな。こんなに
   正確かつ入手容易なデータがあるんだから、使わないと……

真子:うん、使わないと損だよねー。

勝 :でも「購買履歴」は意外に使われてないような感じがしてる。

真子:そうなの?

勝 :オレが知る限りでは、な。

真子:使わないともったいないよねー。私も人のこといえないけど、
   きゃははは。今からはその事例を見ていくんだよね。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆購買履歴:「いつ何を買ったか」は重要な情報
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

勝 :購入履歴のわかりやすい使い方としては、まずこういうのがあ
   るよな。

勝の横に座る真子が、勝のパソコンをのぞき込む。

「隣に座ると、いちいちパソコンを動かさなくていいから楽だね」
「ほら、寄るな」
「寄らないと見えないんだもーん」

-----------< 記事要約 >------------

◇サッシ大手の三協立山は約150の建材卸と窓の購入履歴管理シス
 テムの運用を開始。建材卸はガラスとサッシから窓を組み立て、工
 務店に販売する。サッシとガラスにバーコードラベルを張り、建材
 卸が窓を出荷する際に読み取り機で受注情報と合っているか確認。
 どの住宅のどの窓を販売したか、なども管理できる。

◇窓製品は結露やサビなどで断熱性能などが落ちる。建材卸が購入履
 歴に基づき消費者に納入した窓を最適の時期に点検することで、改
 修需要などを取り込みやすくなる。

◇新築用の窓は標準的な仕様が多いが、リフォーム向けは住宅ごとに
 条件が異なるため、建材卸のネットワークを活用する。

2012/11/29 日本経済新聞 朝刊 P.11

-----------< 記事要約 >------------

真子:なるほどねー。点検したりして、傷んでるのがわかったらそれ
   を改修する提案とかをしよう、ってことだよね?

勝 :そうみたいだな。それに「購買履歴」を使う、ってわけだ。

真子:でもこれ、セグメンテーションっていうよりは、顧客リストを
   使って更新需要を喚起しよう、って感じじゃないの?

勝 :そうなんだけど、「どの住宅のどの窓」とか、「住宅ごとに条
   件が異なる」ってあるから「違い」が重要じゃん。

真子:あ、そっか、「人によって違う」ってことか。

勝 :違う。「買ったものによって違う」ってことだ。

真子:きゃははは、そっか! 「購買履歴」だもんね。「買ったもの
   によって違う」んだ。

勝 :そう、だから標準品が多い「新築向け」じゃなくて、「違い」
   のあるリフォーム向けを選んだ、ってことだ。

真子:ね、ね、これだとさ、「いつ買ったか」っていうのも大事にな
   るんじゃない??

勝 :お、そうそう。点検するタイミングとかもあるだろうからな。
   それがわかるだけでも全然違うだろうな。

真子:うん。「取付からXX年たったので、点検のご案内を……」っ
   て言われると、納得感があるよね。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆切り口6:購買履歴に基づく「レコメンデーション」
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勝 :購買履歴の使い方の典型がいわゆる「レコメンデーション」っ
   て呼ばれるアレだな。

真子:あ、あのアマゾンの「おすすめ」だよね。「これを買ったアナ
   タにお勧めなのがこの商品です」ってヤツ。

勝 :そうそう。わかりやすいのは、同じアーティストの違うCDを
   勧める、とか、同じ時代のアーティストのCDを勧めるとか。

真子:そっか、それこそ「買ったものから好みがわかる」ってことだ

勝 :単純だけど真理だろ。80sの音楽CDを買った人にクラシッ
   クを勧めるよりは、80sを勧めた方が売れそうだよな。

真子:あ、それが「直接性」ってこと? 買ったものから「直接」に
   好みがわかる。

勝 :そういうこと。レコメンデーションの典型がこれ。

-----------< 記事要約 >------------

◇ファミリーマートは「土用の丑の日」に向け、過去の購買履歴を基
 に、購入する可能性が高そうな人を対象にうな重の割引券を発行。
 「Tポイント」の会員データから同チェーンで過去にうな重を買っ
 た人の属性や一緒に購入した商品を分析。購買パターンの似た人に
 クーポンを渡し、効果的に客層を広げる。

◇ファミマは過去にうな重を買った顧客の年齢や好きな商品分野、来
 店頻度などから「うな重を買いそうな人」をパターン化。これに当
 てはまり、過去に同社でうな重の購入履歴がない人にクーポンを発
 行する。

2012/07/20 日本経済新聞 朝刊 P.31

-----------< 記事要約 >------------

真子:へー、これって、まさにこのセグメンテーションそのものだ!

勝 :そうだな。イメージにするとこういう感じ。

勝が、横にいる真子のノートに勝手に書き始める。「キレイに書いて
よー」という真子を無視して走り書きしていく勝。

     うな重  年齢  よく買う商品  来店頻度

顧客1  購入    A     A     A

顧客2  未購入   B     B     B
顧客3  未購入   C     C     C
顧客4  未購入   A     A     A

勝 :さー、マコちゃん問題です! 顧客1は、うな重を買ったこと
   がある人です。顧客2,3,4の誰が買ってくれそうですか?

真子:はいはいはーい、顧客4でーす。

勝 :それはなぜですか?

真子:はーい、うな重を買ったことがある顧客1と、行動が似てるか
   らです! 近いニーズを持つと考えられまーす!!

勝 :せーかい!!

真子:そっかー。購買履歴でそーゆーのがやりやすくなるんだねー。
   年齢だけだと、決め手に欠けるんだろうね。

勝 :そうそう、年齢はあった方がいいにしても、それ「だけ」じゃ
   真子の言う通り、決め手に欠ける。

真子:それで、同じような「購買履歴」を持つ人を「括る」んだね。

勝 :そうだな。この場合は「クーポンを渡す」っていう行為をもっ
   て「括ってる」わけだけど。

真子:行動に直結してるね!!

勝 :購買履歴は、業種業態に関わりなく使いやすいぞ。

勝が言いながらパソコンのモニタを開くのを真子が眺める。

-----------< 記事要約 >------------

◇化粧品などを製造・販売するネイチャーズウェイの通販サイト。肌
 の乾燥に悩む女性が商品を探すと、「おすすめセレクション」に保
 湿クリームなどの関連商品が次々と表示された。翌日に届いたメー
 ルマガジンでは、気になっていた人気商品がずらりと並ぶ。

◇同サイトが活用しているのはシステム開発のナビプラスが提供する
 「レコメンド」機能。年齢や性別などの顧客情報、検索・購入履歴
 のデータを分析して、顧客一人ひとりの嗜好や興味に沿った商品・
 キャンペーン情報を配信。ネイチャーズウェイのネット事業の売上
 高は導入後に1.6倍に増えた。

2012/08/01 日本経済新聞 朝刊 P.13

-----------< 記事要約 >------------

真子:そっか、「乾燥肌」向けの商品をクリックしたり買ったりすれ
   ば、お肌の悩みがわかるんだ。

勝 :そうそう。探しているもの、買ったものに、ニーズが現れるこ
   ともある。

真子:なるほどねー。だから売上が「1.6倍」になるのか……

勝 :それでさ、化粧品っていうと、思い出さないか? 前に出てき
   た切り口では、何だった?

真子:そう言えばやったよね……あ、「切り口3:体質」だ。肌質は
   体質の一部だね。

勝 :そう。ということは?

真子:購買履歴、検索履歴をみれば「体質」がわかる! だから、切
   り口を組み合わせて考える!

勝 :お、そうそう。まさに「組み合わせ」で考えていく。するとど
   んどん顧客像が具体化されていく。

真子:あっちがわかればこっちがわかる、みたいな感じだね。

勝 :そうそう。クロスワードパズルみたいな感じ。

真子:なるほどー。

勝が「金融でもそうなんだよな」と言いながら、次のデータを開く。

-----------< 記事要約 >------------

◇横浜銀行は、地銀5行と金融商品の顧客管理システムを共同運用。
 預金口座の出入金動向や金融商品の購入履歴などを分析、顧客の求
 める金融サービスや商品を予測できる横浜銀のシステムを改良。

◇このシステムは日々更新される顧客の取引情報に基づき、どのよう
 な助言や営業が効果的かを予測できる。例えば、顧客の国債に満期
 が近づいた場合に「満期後の資金の使い道を聞く」よう行員に促し
 新たな金融商品の販売につなげる。

2012/11/13 日本経済新聞 朝刊 P.7

-----------< 記事要約 >------------

真子:金融でもそうなんだねー。

勝 :まずは単純に、「国債の満期日」がわかれば、買い替えを勧め
   ることができるようになる。

真子:うん。

勝 :それ、さっきやったのと同じだよな?

真子:え? えっと……あ! 窓だ! 窓が傷んだら、買い替えとか
   改修を勧める!

勝 :そうそう。そういうところは、金融も建築物も同じ。あとは?

真子:あとは……わかりませーん。ヒントください!!

勝 :さっきの化粧品と同じ。買うものによって……何が違う?

真子:えっと……金融商品に対するニーズ、かな?

勝 :そう。株を買う人と、国債を買う人では、「リスクの許容度」
   が多分違う。株を買う人の方がリスクが取れる。

真子:えっと……「リスクの許容度」が「購買履歴」に現れるんだ!
   確かにさっきの化粧品と似てる!

勝 :そういうこと。こういう風に見ていくと、「窓」、「化粧品」
   に「金融商品」、それに「うな重」って幅広く使える。

真子:きゃははは、ホントだー! みんなおんなじなんだねー。

勝 :セグメンテーションの切り口って、こうやって業種業態を超え
   て使えたりするんだよな。っていうことは?

真子:っていうことは……他の業種から学べる!!

勝 :大正解!! BASiCSと同じで、他の業種の考え方は非常
   に参考になる!

真子:自分の業種にはなかった切り口で見られれば、違う手が打てる
   ってことだ!

勝 :そうそう。レコメンデーションではアマゾンが有名だけど、ど
   の業種でも、そういう考え方は参考になるな。

真子:ねー、こーゆーのって分析大変なんじゃないの?

勝 :超大変。今になってやっとビッグデータとかって言われて注目
   されるようになったけど、オレは10年以上前からやってた。

真子:へー、そーなんだ!

勝 :当時は、PCの性能が今ほど高くなかったから、数十MBのデ
   ータでさえ動作が重くってさ……よくPCがフリーズしてた。

真子:「購買履歴」の分析で?

勝 :そうだよ。

真子:そっか、やっぱりやってたんだあ。うちの店だと、どうなるの
   かなあ……?

勝 :イタリアンレストランなんて滅茶苦茶わかりやすいだろ。ワイ
   ンの好みとか、食事とお酒の組み合わせのお勧めとか。

真子:あ、そっか。じゃあ、今までの注文を洗い出して、どんなもの
   を食べる人はどんなお酒が、とか分析すればいいんだ!

勝 :まさにそうなんだけど、やってないのか??

真子:さあ?

勝 :オマエなあ……

「ねー、そーゆー分析はどーやればいいの?」
「こっちに寄るな。離れろ、ほら……」
「何よ今さらー」
「数が少なきゃExcelでできるだろ。ピボットテーブルとかで」
「ピボット? バスケ?」
「あははは、そう来るか。いいオヤジギャグじゃねーか」
「ち、違うもん」
「何だ、素だったのか」
「……いーじゃん。だからどーやるの?」
「真子にエクセル教えてもなあ……砂漠に水まくみたいなもんだ」
「あ! 染みこむのが早い! 真子は飲み込みがいいんだよね!」
「オマエほんとポジティブだな。無意味、ってことだ」
「あー、ひっどーい! 真子は砂漠のオアシスってことでしょ?」
「もう何でもいいけどさ……ピボットはできた方がいいんだよな」
「じゃあ今度教えてよー。何なら今からでも……」
「砂漠に水まくのはイヤだから、望ちゃんか恵利ちゃんと一緒にな」
「ちぇっ……でも望ちゃんにやってもらった方がいっか」
「そりゃそうだろ。望ちゃんに会いたいなあ……」
「何よー、隣に真子がいるのにー」
「はいはい、世界一カワイイ真子ちゃんがいますねー」
「やっと認めたか」
「そのしつこさは認めるわ……」

次号に続きます!

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◆今日のまとめ
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●切り口6は「購買履歴」。買ったモノから推測されるニーズに合わ
 せて顧客に合った「レコメンデーション」をしよう!

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━特別編Vol.221(累計0997) 2013/03/11

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●切り口7は「競合」。競合にニーズが現れるから、競合を把握しよ
 う!

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◆まずは、前号の復習から!
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*本編の「今の時間」は、年が明けた1月1日の夜です。

1月1日、昼は初詣の後に寄ったカフェ、そして宿の夕食で続くレッ
スン。温泉の後もロビーでレッスン再開。2人は隣同士に座って……

「ねー、のど乾いた! お風呂上がってから何も飲んでなーい!」
「水道の水飲めよ。この宿の水なんて全然キレイじゃねーか」
「もー……自販機でなんか買ってくるねー。勝さんは?」
「炭酸水……はないよな。なきゃミネラルウォーター」
「何よそれー、真子には水道の水飲めって言っといてー」
「じゃーいらねーよ」
「とにかく買ってくるねー」

真子がパタパタとスリッパを響かせて小走りで駆けていく。勝がノー
トパソコンを操作している間に真子がすぐに戻ってくると、勝が座る
ソファーの、勝の隣に座る。

「はい、ミネラルウォーター」

画面に集中する勝の頬に真子がいたずらっぽくボトルを当てる。

「うわ、冷て……オマエなあ……」
「いーじゃん、ちゃんとリクエストにお応えしたんですからー」
「はいはい、ありがと」

ボトルと缶を開けるプシュ、という音が2回響く。

「うわ、勝さんも一気飲みしちゃって……喉渇いてたんだ♪」
「そりゃそうだろ。真子のは……アルコールフリービールか」
「うん。勝さん、飲む?」
「あ、一口もらうか……うん、ホント最近のノンアルコールドリンク
 はおいしくなったよな」
「ねー。技術革新ってすごいねー」
「ノンアルコールの選択肢って今までホント少なかったからな。コー
 ラ、ジンジャーエール、ウーロン茶、炭酸水くらいか」
「そーだよねー。ノンアルコールカクテルとか、うちの店でも頑張っ
 て開発しないといけないなー」
「じゃあ始めるか」

真子:じゃあ復習だよねー。まずはこれから……

○セグメンテーションの「括って広げる3ステップ」

ステップ1:顧客像の具体化
ステップ2:ニーズの普遍化
ステップ3:ニーズで人を括る

○セグメンテーションで「括る」ための切り口

切り口1:使い方・利用場面
・価値は使い方に現れる。逆に使い方を見ればニーズがわかる!

切り口2:困りごと
・どんなことに困っているのか、困りごとが同じならニーズが同じ!

切り口3:体質
・肌質・髪質・アルコールへの耐性などでニーズが違う!

切り口4:所有資源
・お金・時間・エネルギー・車などの持ち物などでニーズが違う!

切り口5:こだわり・マニアレベル
・ビギナーとマニアでニーズが違う!

切り口6:購買履歴
・何を買ったかで、直接の購買行動がわかる!

真子:今は切り口6:購買履歴をやってて、前号では購買履歴に基づ
   くレコメンデーションを見てきましたぁ!

勝 :例えば?

真子:例えば、うな重を買う人の特性を調べて、それと似ている人で
   うな重を買ってない人に、うな重をお勧めする!

真子が勝にノートを見せる。

     うな重  年齢  よく買う商品  来店頻度

顧客1  購入    A     A     A

顧客2  未購入   B     B     B
顧客3  未購入   C     C     C
顧客4  未購入   A     A     A

真子:これなら、「顧客4」の方にうな重をレコメンド(お勧め)す
   れば、買っていただけそう。顧客1と似てるから!

勝 :そうだな……っていうか、これ、オレが書いたんだろうが。

真子:うん、とっても汚い字だね。

勝 :うるせーよ。

真子:それぞれのお客様のことを知ってるほど、的を射た「お勧め」
   ができるよね!

勝 :そうなるな。だから購買履歴と他の切り口との「組み合わせ」
   で見ていく必要がある。

真子:うん!

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◆切り口7:「競合」
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勝 :じゃあ次の切り口。切り口7は、「競合」な。「競合」の定義
   は、覚えてるよな?

真子:もっちろん。「顧客にとっての、自分以外の選択肢の束」。

勝 :そうだな。その「選択肢の束」は何によって変わる?

真子:ニーズによって変わる!

勝 :そう。逆に言えば、ニーズは競合からわかる。

真子:えっと……競合はニーズによって変わるから……あ、逆から考
   えるんだ! 競合からニーズを推測する!

勝 :そういうこと。真子の会社のイタリアンレストラン、そーれ・
   しちりあーのだと、どうなる? そもそも競合とは?

真子:競合は、「◇◇◇にしようか、そーれ・しちりあーのにしよう
   か」っていう、◇◇◇に入る「選択肢の束」だよね?」

勝 :OK。それで、◇◇◇にはどんな競合が入るんだ?

真子:まずは、イタリアンとかフレンチとかの同業だと、カップル、
   って感じかな?

勝 :なんで?

真子:デートニーズだから。ゆっくりお食事。

勝 :なるほどな。あとは……居酒屋も競合になるか?

真子:うん。居酒屋が競合になるときは、会社のグループ客の場合と
   かかな。みんなで気楽に寛いで、ちょっと騒ぎたい。

勝 :競合によって顧客が変わるよな?

真子:ホントだねー。っていうか、競合が顧客によって変わるんでし
   ょ?

勝 :そう。それが顧客と競合の一貫性。それを逆から見る、ってい
   うこと。

勝が「例えばさ」と言いながら、真子にノートPCを見るよう促す。

-----------< 記事要約 >------------

◇名古屋発の喫茶店チェーン、コメダが同業やファミレスを攻める。
 三鷹市にあるコメダはファミレスさながら。三鷹駅から徒歩15分
 の住宅街立地で約250平米・122席の店内は吹き抜けの天井、
 駐車場は40台分。お茶の時間には主婦や高齢者で席が埋まる。
 「周りを気にせず、のんびり会話できるのがいい」(68歳女性)

◇大きめの天然木テーブルに、広い座席スペース。長時間座っても苦
 にならない。仕切りが隣席の視線を遮る半個室風の「長居仕様」。

◇88品のメニューも喫茶店というよりファミレスに近い「エビフラ
 イ」(890円)、「コメダグラタン」(690円)など。多くの
 品は2人以上で分けられるボリューム。「ハンバーガー」(380
 円)のパンの直径は約14センチでファストフード店の1・5倍。

◇地元客を重視、多くの店は幹線道路から離れた住宅街立地。休日の
 客の5~6割は家族客、ファミレスと喫茶店双方の客層を取り込む

2011/12/05 日経MJ P.1

-----------< 記事要約 >------------

真子:えっと……喫茶店のコメダがファミレスを競合に置いてる、っ
   てことだよね?

勝 :そう。逆にファミレスに行く人はどんな人って書いてある?
   まず、どんなニーズがある?

真子:「長居したい人」!

勝 :そうそう。それがニーズだよな。都心でよく見る、「ちょっと
   一服してすぐ出て行く」のとは違うよな?

真子:うん。その場合だったら、競合はドトールとかマックだよね。

勝 :そうそう。競合が違うとニーズも違う。で、長居したい人は、
   どんな人だ?

真子:えっと……平日だと高齢者や主婦で、休日だと家族客。

勝 :そうなるよな。平日は、って書いてないけど、多分そういうこ
   とだよな。

真子:でも、高齢者、主婦、家族客、っていうと全然絞ってないよね

勝 :そう! でも「ファミレスに行く人」という切り口で見れば、
   平日には高齢者や主婦、休日の家族、というのはその通りだろ

真子:そっか、その人たちを「括っている」のが「ファミレスに行く
   方々」ってことだ。

勝 :そういうこと。それで、ファミレスではなくコメダを選んでい
   ただく理由、すなわち「強み」を色々と作って……

真子:それを「ファミレスに行く方々」が重視してくださってる、っ
   ってことだねー。

勝 :そういうこと。「ファミレスに行く方々」の「長居する」とか
   のニーズが明確になってるから、打ち手が打てる。

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◆「競合」にニーズが現れる
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勝 :オレ、広告代理店業務みたいのをやってたことがある。例えば
   DMの制作なんかをやってたんだよな。

真子:あ、コピーライターもできるんだもんね。

勝 :そうそう。で、クライアントにコンペに呼ばれて行くわけだ。
   何社かに企画を出させて、どこかに発注するコンペ。

真子:それで?

勝 :それで「ブリーフィング」を受けるわけ。

真子:あ、今回はこういう趣旨で……っていう?

勝 :そう、それ。それで企画を考えるんだけど、その場合当然顧客
   は見えてる。呼んでくれるクライアントが顧客。

真子:そりゃそうだよね。目の前にお客様がいらっしゃるんだから。

勝 :そう。でも、ニーズは見えていない。ブリーフィングに入って
   はいるけど、ホントのところはどうなの、と。

真子:へー、それで?

勝 :で、あるとき気づいたのが、「競合を確認するとニーズが見え
   るときもある」ってこと。

真子:どーゆーこと??

勝 :例えば広告制作とかDM制作のとき、印刷会社と比較されると
   きがある。そのときのニーズは……なんだと思う?

真子:さあ? 印刷技術?

勝 :いや、それならオレが印刷技術の高い会社に発注すればいいだ
   けだろ?

真子:そっか。でもそうなると、勝さんのマージンの分だけ見積もり
   が高額になるよね?

勝 :そういうこと。逆に言えば、うちのマージンをどれだけ削れる
   か、つまり「価格」を見たい、っていうこと。

真子:あ、なるほど! 価格を下げたいんだ!

勝 :そういうこと。同じように、デザイナーがコンペの相手、なん
   ていう場合は、クライアントは何を見たいんだと思う?

真子:あ、そのときは「デザイン」だよね?

勝 :そう。競合がデザイナーのときは、デザインを求めてるときな
   んだよな。

真子:なーるほどぉ。コンペの相手にニーズが現れてるね-。

勝 :それで、競合が広告代理店のときは、もうガチの企画勝負。総
   合力を試されているっていうか、求められている。

真子:へー、競合が誰か、によってニーズが推測できるんだ。

勝 :そういうこと。確実ではないけど、傾向はわかる。

真子:そういう競合って、クライアントから教えてもらえるの?

勝 :関係ができてれば、結構教えてもらえる。会社名までは教えて
   くれなくても、業種くらいは教えてもらえることが多かった。

真子:そうなんだぁ。

勝 :BtoBの場合だと、顧客は同じでも、ニーズが違う、ってい
   う場合が結構あるんだよな。予算のあるなしも含めて。

真子:予算なんかも、競合を聞けばわかるかもしれないよね?

勝 :そうだな。超大手広告代理店を使う会社は、やっぱり予算が大
   きい。小規模な制作会社を使う会社は、予算に制限がある。

真子:そっか、競合に「予算額」が現れるんだ。

勝 :だから競合が何になるか、もセグメンテーションの有力なカギ
   になる。ニーズがそこに現れるからな。

真子:なーるほどねー。えっと……こんな感じ?

真子がさらさらとノートにまとめていく。

   自社     競合    クライアントニーズ

 広告代理店   印刷会社   価格を抑えたい
 広告代理店   デザイナー  色々なデザインを見たい
 広告代理店   広告代理店  ガチの企画勝負

勝 :お、いーじゃん。

真子:へっへー。

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◆「戦場」と「セグメント」は一致する
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勝 :日本メーカーが海外進出するとき、欧米メーカーと、現地メー
   カーと、どっちと競合するか、なんていう話もよく耳にする。

真子:??

勝 :欧米メーカーと現地メーカーには、価格差があることが多い。
   一般論として欧米メーカーは高価格、現地メーカーは低価格。

真子:なるほど。ということは、欧米メーカーの顧客層は高所得層で
   現地メーカーの顧客層は、中・低所得層?

勝 :ざっくり言えばそうだな。お金の有無に加えて、払う意思の有
   無もだけど、さ。

真子:あ、そっか。とにかく、競合が欧米メーカーになるのか、現地
   メーカーになるのか、で顧客層が違うってことだよね?

勝 :そうそう。そうすると、どうなる?

真子:どうなるって?

勝 :だから「欧米メーカーの顧客層」を狙うと、競合は誰になる?

真子:そりゃ「欧米メーカー」でしょ?

勝 :そうだよな。つまり、「競合」を顧客セグメントの切り口に使
   うと、何がわかる?

真子:あ……そうか、「競合」が決まるんだ!! 

勝 :そういうこと。競合が決まれば顧客が決まり、顧客が決まれば
   競合が決まる。

真子:その一貫性を利用するんだねー。

勝 :そう。逆に、顧客を決めると戦場が決まるから、さっきの例だ
   と「高所得層」を狙えば……

真子:競合が決まる。あれ? ということは、セグメンテーションと
   「戦場」って同じ?

勝 :そう! うまく切れてるセグメンテーションは、戦場と一致す
   ることが多い。

真子:逆に、競合が見えなければ、そのセグメンテーションはうまく
   切れてないかもしれない??

勝 :必ずしもそうではないけど、そういうことが多い。だから、競
   合が見えるかどうかは、セグメンテーションのチェックになる

真子:なるほどねー。ということは、お客様に「競合」を聞いてみる
   必要はあるんだ……

勝 :意外にここは盲点になってる。自社の利用状況を顧客に確認す
   る会社は多いけど、競合まではやってないことが多い。

真子:ねー、競合がわかればそこから売上を持ってこれるかもしれな
   いんだから、勝ちやすい競合の顧客を狙った方がいいよね?

勝 :……すごい鋭いな。そういうことだ。顧客セグメントの優先順
   位をつける意味でも、競合を知るといいな。

真子:競合に対する「勝ちやすさ」だよね?

勝 :それもそうだし、その競合の大きさ、もだよな。競合が大きい
   と、市場規模が大きい、ってことだからな。

真子:あ……そうか!! 競合=戦場だから、それが市場規模になる
   んだ!

勝 :当たり前だ。セグメンテーションだって市場規模だろうが。

真子:ということは、戦場=競合=顧客セグメント、ってこと?

勝 :そうなることが多いな。「戦場と顧客はコインの裏表」みたい
   な関係。戦場は売り手、顧客は買い手。

真子:それで、売り手の裏側に買い手が、買い手の裏側に売り手がい
   るってことだ!

勝 :「戦場」と「顧客」は同じモノをどっちから見るか、の違い。
   同じ「取引」を買い手からみるか、売り手からみるか。

真子:そっかあ……だから顧客セグメントの切り口を「競合」にする
   と、その関係をチェックしやすくなるんだ。

勝 :BASiCSの一貫性を考える、という意味でも、顧客セグメ
   ンテーションの切り口に「競合」を使う意味がある。

真子:なるほどねー。

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◆「競合」を知ると、自社の「顧客内シェア」がわかる
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勝 :あと大事なのが、競合がわかれば、「自社の顧客内シェア」が
   わかる、ってこと。

真子:え?

勝 :だからさ、真子の会社の店、そーれ・しちりあーのの場合は、
   お客様の総外食費に占める真子の店の割がわかるだろ?

真子:なんで?

勝 :なんでって、総外食費、っていうのは、真子の店への出費と、
   競合に対する出費の合算だろ?

真子:うん……あ、その総外食費の中での、うちに対する出費が、う
   ちの店の「顧客内シェア」だ!

勝 :そうそう。どういう顧客の優先順位が高い?

真子:そりゃ、総外食費の多いお客様だよね?

勝 :まあそうだよな。それから?

真子:それから、って?

勝 :だから顧客内シェアの高低、という意味でだよ。

真子:あ、それか。顧客内シェアが高いと、優良顧客だよね?

勝 :そのお客様は維持しないとな。ただ、そこはシェアが高いだけ
   に、売上の伸びしろが少ないよな。

真子:そっか。伸びしろがあるのは顧客内シェアの低いお客様だ。

勝 :そういうこと。

真子:なーるほどねー。競合がわかると、いろんなことがわかるね。

勝 :だから、顧客と競合は常にセットで考える。BASiCSはも
   ともとそういう発想だから……

真子:セグメンテーションの切り口に「競合」を使うのはすっごく相
   性がいいんだ!

勝 :そういうこと。

「ふう……話すとノド渇くよな」

勝が、ペットボトルのミネラルウォーターを一気に飲み干す。

「あー、全部飲んじゃったー」
「?」
「それ真子も飲みたかったのにー。残しといてよー」
「そんなのもっと早く言えよ……じゃーどっかで水くんでくるか」
「どっかで、ってどこで?」
「んーと、風呂場に冷水機があったな。休憩がてらに行ってくるか」
「何それー。勝さん、妙な金銭感覚だよね」
「そうか?」
「だってパソコンとかには湯水のごとくお金使うじゃん」
「仕事に必要なんだから、しょうがないだろ」
「スキーにもすっごくお金使うよね?」
「唯一の趣味だからな」
「んー、勝さんのアタマはどっかネジが1本抜けてる……っていうか
 ネジじゃなくてボルトがはまってる……って感じ?」
「そりゃ褒め言葉な。人と同じことしてて差別化できるはずがない。
 大体、オマエに変わってるなんて言われたくねー。同類だ」
「きゃははは、まーそりゃそーか。そういう意味では、真子と勝さん
 は、同じせ、ぐ、め、ん、と、はーと♪」
「全然違うだろうが」
「同類だ、って勝さんが今言ったばっかじゃん」
「……まーいーや。それよりアイス食いてーな」
「あ、真子もそう思った。やっぱり同類だ。気が合うねー」
「そーゆーのは気が合うって言わねーだろ」
「アイスの自販機あったよ、お風呂の前に」
「お、そういえばそうだ。じゃー買って来いよ。ほら、お金」
「うん、ありがと。じゃー買ってくるねー」
「冷水機で水も汲んでこいよ。ほら、ペットボトル」
「きゃははは、わかったよー」

真子は勢い良く立ち上がると、駆けだして言った。勝はその後ろ姿を
何となく眺めると、再びノートパソコンに向かった。

次号に続きます!

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆今日のまとめ
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●切り口7は「競合」。競合を知ると、顧客ニーズなど色々なことが
 わかるから、競合を把握しよう!

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━特別編Vol.222(累計0998) 2013/03/14

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●切り口8は「バイヤー・ユーザー」。「買う人」と「使う人」が違
 う場合は、それぞれのニーズに応えよう!

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◆まずは、前号の復習から!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

*本編の「今の時間」は、年が明けた1月1日の夜です。

1月1日、昼は初詣の後に寄ったカフェ、そして宿の夕食で続くレッ
スン。温泉の後もロビーでレッスン再開。

浴衣姿の真子が、ロビーでノートパソコンを操作する勝に駆け寄る。

「はい、勝さんご希望のアイス買って来たよー。私のお、ご、り♪」
「お、ありがと」

2人は幸せそうにアイスをパクつく。

「風呂上がりのアイスって、何でこんなにうまいんだろうな」
「ホントだねー。でも普通はビールなんだろうけど♪」
「ビールとアイスってどっちが健康的なんだろうな」
「いーじゃん、そんなの気にしてたら何も食べられないよ」
「しかし今日1日食ってばっかだな……正月だからいーけどさ」
「そうそう、こーゆーときはいいの。そのために生きてるんだから」
「オマエはホントそんな感じだよな。食うために生きてる」
「だってそうだもん。ねー、勝さんの1口ちょーだい」
「オマエの1口は大きいからな……オマエのおごりだからいーけど」
「真子のも食べていーよ、はい」
「……オマエの、うまいな」
「へっへー、これでも飲食店の社長だから、選ぶ目は確かだもん♪」
「そこは認める。あれ、水は?」
「汲んできたよ。冷水機からペットボトルに」
「お、ありがと」

勝はペットボトルの水をごくごくと飲むと、ふう、と満足そうな表情
をした。

「ミネラルウォーターもうまいけど、水道水も十分うまいよな」
「こーゆー土地だと、そーだよね」
「元々水がキレイなんだろうな」
「なんか、幸せだねー。温泉入って、アイス食べて……」
「そうだよなあ……」
「一番幸せなのは、隣にマコちゃんがい、る、こ、と、はーと」
「これで独りだったら最高なんだが……おい、くっつくなって」
「だって勝さんが意地悪なことゆーんだもん」
「とにかく始めるぞ」
「はーい」

真子:ここまでの復習でーす。まずはこれから……

○セグメンテーションの「括って広げる3ステップ」

ステップ1:顧客像の具体化
ステップ2:ニーズの普遍化
ステップ3:ニーズで人を括る

○セグメンテーションで「括る」ための切り口

切り口1:使い方・利用場面
・価値は使い方に現れる。逆に使い方を見ればニーズがわかる!

切り口2:困りごと
・どんなことに困っているのか、困りごとが同じならニーズが同じ!

切り口3:体質
・肌質・髪質・アルコールへの耐性などでニーズが違う!

切り口4:所有資源
・お金・時間・エネルギー・車などの持ち物などでニーズが違う!

切り口5:こだわり・マニアレベル
・ビギナーとマニアでニーズが違う!

切り口6:購買履歴
・何を買ったかで、直接の購買行動がわかる!

切り口7:競合
・どの競合商品を買うかに、ニーズが現れる

真子:それで、前回は「切り口7:競合」をやりました!

勝 :それで??

真子:競合にニーズが現れる。何と比べているか、でニーズがわかる

勝 :そうだな。ちなみにBASiCSで言えば、戦場=自社+競合
   だよな?

真子:うん。それでそれで?

勝 :それで、自社+競合の「括り」は、ベネフィットになる。マッ
   クの競合が吉野家なら「食事」だし、ドトールなら「カフェ」

真子:えっと……あ、そうか! 戦場もベネフィットで「括る」わけ
   だから、一致するんだ!

勝 :そういうこと。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆切り口8:バイヤー・ユーザー
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

勝 :次の切り口に行くぞ。次は、バイヤー・ユーザー、な。

真子:へ?

勝 :だから言葉の通りの意味だよ。バイヤー、すなわち「買う人」
   と、ユーザー、すなわち「使う人」

真子:あ、「買う人」と「使う人」が違う場合があるってことだ。

勝 :そうそう。「私、作る人。僕、食べる人」ってCM、覚えてる
   か? 色々と論議を呼んだCMなんだけどさ。

真子:しらなーい。

勝 :まーそーだよな。とにかく作る人と食べる人が違う、なんてい
   うのは食品だと普通にあるだろ?

真子:うん。代理購買とかだよね?

勝 :そうそう。わかりやすいのは、両親が食材を買ってきて、子供
   が食べる、なんていう場合は?

真子:バイヤーが両親で、ユーザーが子供! それぞれにニーズが違
   うよね。

勝 :ニーズはどう違うと思う?

真子:例えば、親は、子供にとって健康的なものを買うだろうし、子
   供は多少体に悪くても、甘いお菓子とか食べたい。

勝 :あははは、オレも子供のときはそうだったな。とにかく肉が食
   いたかった。

真子:わかるわかる~。あと、「作る人」は作りやすいのがいいし、
   「食べる人」は、おいしいのがいい!

勝 :それもあるな。ビール類なんかだと、バイヤーの母親は味より
   値段優先で、ユーザーの父親はその逆とかな。

真子:あー、なるほどね。大丈夫、真子はダンナさんにも、ちゃんと
   お金を使ってあ、げ、る♪

勝 :ダンナに「も」とか、使って「あげる」とか、どんだけ上から
   目線なんだよ、オマエは……

真子:あ、あ、うそうそ、そ、そんなこと無いってばぁ……

勝 :そんな冗談はさておき……

勝がノートパソコンのデータを開くと、横に座る真子がのぞき込む。

-----------< 記事要約 >------------

◇車に乳幼児と乗る際に必要なチャイルドシート。赤ちゃん本舗の2
 月28日~3月28日の店頭での販売数量ランキングのトップは、
 アップリカ・チルドレンズプロダクツ(大阪市)の「フラディア」

◇アップリカは子供の成長に合わせて使い分ける「3段階シート」が
 親たちに支持されてきた。新生児のうちは平らな「ベッド型」に寝
 かせ、首のすわらない赤ちゃんの安全を確保。首がすわる頃は、車
 の進行方向とは逆向きに座らせる後ろ向き型。腰が安定すると、進
 行方向と同じ向きの前向き型シートとして使える。

◇フラディアはベッド型と後ろ向き型の移行が簡単。レバー操作でシ
 ートが回転、シートを付け替える必要がない。生後6~7カ月にな
 ると腰がすわってベッドに横になることを嫌がる場面もある。「赤
 ちゃんの様子を見ながら寝かせたり、座らせたりできる」(同社)

◇フラディアは親の使い勝手の良さを広告で強調。「従来、赤ちゃん
 の安全性や快適さをアピールする広告が多かった」(同社)が、使
 い手にとってのメリットを分かりやすく伝えることが、より多くの
 親たちに関心を持ってもらえると判断した。

2012/04/20 日経MJ P.3

-----------< 記事要約 >------------

真子:なるほどー。「座る人」と、「使う人」が違うってことだ。

勝 :そうそう。そのニーズの違いは?

真子:座る「赤ちゃん」は座るときに快適なのが良くて、使う「親」
   は設置とかに便利なのがいい!

勝 :そうだな。この場合、バイヤーもユーザーも親だが、ある意味
   で赤ちゃんも「ユーザー」だからな。

真子:普通の広告は「赤ちゃんの安全性・快適性」を強調してたんだ
   ね。ちょっと意外。

勝 :この場合の意思決定者は、「バイヤー」である親だからな。さ
   すがに赤ちゃんは「これ買って」って言わないだろ。

真子:あ、広告のメッセージとかは意思決定者に向ける必要があるん
   だね。

勝 :そりゃそうだ。決めるのは意思決定者だから。

真子:じゃあ、「ユーザー」は気にしないでいいの?

勝 :気にする。バイヤーは、ユーザーのことも考えながら意思決定
   するからな。この場合も、親は子供のことを考えて決めるだろ

真子:あ、そっか。常にバイヤーが意思決定者なの?

勝 :いや、そんなことないだろ。ユーザーが指定して、バイヤーは
   手配するだけ、ってこともあるだろ。BtoBとかは特に。

真子:あ、そっか。工場が部品を指定して、購買部門が手配する、み
   たいなときだ。

勝 :そうそう。その場合は、工場がユーザーで購買部門がバイヤー
   だけど、実質的な意思決定者は「ユーザー」である工場、な。

真子:そっかー。じゃあバイヤーとユーザーのどっちが意思決定者か
   っていうのを知らないとダメなんだぁ。

勝 :まさにそういうこと。その「意思決定プロセス」を知る必要が
   あるな。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆切り口8:バイヤー・ユーザー BtoBtoCと同じ考え方
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

勝 :このロジックは、BtoBtoCのロジックと近いぞ。

真子:あ、それだ! これ、どっかで聞いたことがあると思った……

勝 :なんだよ、気づけよ……BtoBtoCっていうのは?

真子:これ! この「BBCフロー」!

===============================

 B    to    B    to    C

自社     →   中間のB   →   最後のC

会社     →   直接の顧客  →   顧客の顧客

===============================

勝 :例えば?

真子:例えば、ワインの卸売会社が、うちの会社みたいな飲食店にワ
   インを売る、っていう場合はこうなりまーす。

===============================

 B    to    B    to    C

自社      →  中間のB   →   最後のC
ワイン卸売      飲食店        来店客

ワインが売れる ←  ワインを発注 ←  ワインを飲む

(実戦BtoBマーケティング 佐藤義典著 P.111)
http://ow.ly/7Wvdq

===============================

真子:ワイン卸売会社でワインが売れるのは、最後のCである来店客
   が飲むから! だから直接の顧客だけでなく、その先を見る!

勝 :そうそう。今回のアップリカのベビーカーの場合は?

真子が、えっと……と言いながら、ノートに書き込んでいく。

===============================

 B    to    C    to    C

自社      →  バイヤー   →   ユーザー

アップリカ      両親         赤ちゃん
          意思決定者       影響者

===============================

真子:こんな感じ!

勝 :お、そうそう。意思決定者とか影響者、なんて、よく覚えてた
   じゃないか。実戦BtoBマーケティング、P.88~な。

真子:もっちろん。これって、BtoCでも使えるな、って思って。

勝 :へー。例えば?

真子:うちの会社のイタリアンレストラン、そーれ・しちりあーのの
   お客様。飲み会の幹事さんなんかだとこうなるよね。

===============================

 B    to    C    to    C

自社      →  バイヤー   →   ユーザー

そーれ・     飲み会の幹事さん    飲み会参加者
しちりあーの   (意思決定者)    (影響者・拒否権者)

===============================

勝 :おー、そうそう。拒否権者っていうのもよく覚えてたな。言葉
   通りの意味だけど。

真子:バイヤーの幹事さんは、職場の若い人。ユーザーは、上司とか
   になるから、拒否権を持ってるみたいなんだよね……

勝 :そうなると、バイヤーとユーザーの両方のニーズに応えないと
   来ていただけないよな。ユーザーに拒否権があるなら、さ。

真子:そうそう、そうなのよ。上司の方は比較的年配だから、それに
   合ったメニューも必要なんだよね。

勝 :そうだよな。こんな事例もあってさ……

真子が勝のノートパソコンをのぞき込む。

-----------< 記事要約 >------------

◇鳥取市のタイ料理店「アイワナドゥ岩戸」。鳥取砂丘も近い景勝地
 にあるが人通りは少ない。砂丘の観光客が同店に気づくことはほぼ
 なく、飲食店経営には相当に不利な立地だ。

◇8年前に母親から引き継いだ河合店長が取り組んできたのは店に来
 るきっかけを作ることと、店に来ない理由を減らすこと。琉球ガラ
 スのコップなどおしゃれな食器を使い、本場タイで学んだ料理を地
 元客の口に合う味に仕立て直して提供。「わざわざ出かけていく価
 値のある本格タイ料理店」という個性につながっている。

◇オムライスや海鮮丼、地鶏の空揚げなどの定番料理もある。タイ料
 理専門を貫けば、連れにタイ料理が苦手な人がいた場合に店選びか
 ら外される。オムライスを出せば小さな子供が、海鮮丼があれば、
 年配者が喜ぶ。

◇タイ料理店の体裁は保ちながら、デートから家族や地元小中学校の
 PTAの食事会まで老若男女が気軽に使える。その結果、毎月の売
 上は300万円と、8年前の1・5倍に増えた。

2012/07/27 日経MJ P.15

-----------< 記事要約 >------------

真子:なるほどねー。自分はタイ料理を食べたくても、一緒に行く人
   が苦手だったら、「拒否権」発動されちゃうもんねー。

勝 :まさにそういうこと。だから、バイヤーである幹事さんは、そ
   のユーザーである参加者の満足を考えるから……

真子:タイ料理以外で食べられるものがあった方がいい!

勝 :大都市だとここまでの配慮をしなくてもいい場合が多いけど、
   商圏の顧客数が少ない場合は「嫌いな人」がいるとまずい。

真子:うちの店でも「無難な一品」っていうのはあるよ。「困ったと
   きの……」みたいな。

勝 :そういうメニューがあると、「拒否権」を回避できるよな。

真子:バイヤーとユーザーを一緒に考えないといけないんだね。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆切り口8:バイヤー・ユーザー 顧客の「組み合わせ」を考える
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

勝 :そう! 顧客を「組み合わせ」で考える必要があるケースは、
   結構ある。バイヤーとユーザーもその一例。

真子:他にもあるの?

勝 :これもバイヤーとユーザーっていえばそうなんだが……

勝がノートパソコンを操作するところから、真子がじっと見ている。

-----------< 記事要約 >------------

◇レジャー・アミューズメント業界で祖父母と父母、子供の交流を促
 すサービスが広がってきた。シニア層は教育費や住居費の負担が少
 なく、孫にプレゼントなどのお金をつぎ込んできた。

◇近畿日本ツーリストは2012年の夏休みの国内旅行商品に「3世
 代パック」を取り入れた。祖父母の宿泊料金を割り引くほか、カラ
 オケ料金を60分間無料とするなどの特典をコースごとに設定。

◇キッザニア東京は4月から60歳以上のシニア料金を1000円と
 通常の大人料金の約半額に。祖父母と孫の来店が増えたという。

◇子供の受け入れを拡大しているのがゴルフ場。リゾートソリューシ
 ョンは埼玉県本庄市のゴルフ場でコースの途中から1打目を打てる
 「ファーストティ」を全ホールに設け、シニア層が孫と一緒にラウ
 ンドできるようにした。別のゴルフ場では小学生向け練習教室を開
 催。受講料を月5千円払った参加者にゴルフクラブを無償提供。

2012/06/08 日経MJ P.9

-----------< 記事要約 >------------

真子:そっか、おじいちゃんおばあちゃんとお孫さん、っていう「組
   み合わせ」のターゲットなんだ!

勝 :そうそう。働いているお父さん・お母さんは、平日は動きにく
   いだろうけど……

真子:退職した祖父母なら、平日でもキッザニアとかに行ける! 学
   校に行く前のお子さんならいいね。

勝 :孫とゴルフしよう、っていう発想も斬新だよな。

真子:おじいちゃん・おばあちゃんに子供を預けておけるパパママも
   ラクになるのかもしれないね。

勝 :BtoBtoCの場合も、「中間のB」と「最後のC」ってい
   う「組み合わせ」で考えた方がいいんだよな。

真子:どーゆーこと?

勝 :こういうこと。

勝が真子のノートに書き加えていく。

===============================

 B    to    B    to    C

自社      →  中間のB   →   最後のC
ワイン卸売      飲食店        来店客

ワインが売れる ←  ワインを発注 ←  ワインを飲む

         富裕層向け飲食店 ←  富裕層

          庶民向け飲食店 ←  庶民

        若い女性向け飲食店 ←  若い女性

===============================

勝 :あくまでも説明用のイメージだからな。

真子:うん。

勝 :でさ、なんとなんと、驚くべきコトに……

真子:驚くべきコトに……?

勝 :富裕層向け飲食店にはさ、なんと富裕層が来る!! 若い女性
   向け飲食店には、若い女性が来る!! どうだ、すげーだろ?

真子:きゃーはははは、当たり前だあ!!

勝 :そう、当たり前。中間のBと、最後のCはつながってんだよ。

真子:あ!! そうか! 中間のBと最後のCの「組み合わせ」だ!

勝 :そういうこと。中間のB、この場合「飲食店」は、最後のC、
   この場合は「来店客」のニーズに応えようとするだろ?

真子:だから、飲食店と来店客が「つながる」んだ!!

勝 :そう。それが「中間のBと最後のCの一貫性」。だから、中間
   のBと最後のCは、セットで考えることになるな。

真子:そっかー、お客様が「1人」とは限らないんだねー。

勝 :この「組み合わせ」で考える典型例が、ギフトニーズのとき。

真子:ギフトニーズって……あ! お土産を買うときとかだ! 「買
   う人」と「もらう人」がいる!

勝 :そうそう。「買う人」は、「もらう人」のことを考えて、お土
   産とかギフトを選ぶだろ?

真子:うん! BtoBtoCとおんなじだ! 例えば……

真子がノートにさらさらと書いて、勝に見せる。

===============================

 B    to    C    to    C

自社      →  中間のC   →   最後のC
お土産屋さん     バイヤー       ユーザー
(売る人)     (買う人)      (もらう人)

      シニアが喜ぶお土産を買う ←  シニア層

       家族が喜ぶお土産を買う ←  子供のいる家族

===============================

真子:こんな感じ? 最後の「もらう人」に合わせて「買う人」がお
   土産を選ぶ!

勝 :そう! だから、お土産屋さんは「買う人」もそうだけど「も
   らう人」のことも考えた打ち手が必要になるな。

真子:例えば、「買う人」に対して、「このお土産はこういう人に、
   あのお土産はああいう人にお勧めです」って説明するとか?

勝 :例えばそういうこと。バレンタインデー、ホワイトデーなんか
   もそう。甘いモノ嫌いな人にチョコレートあげてもなぁ……。

真子:あ、バレンタインデーでも、「もらう人」の好みに合わせて、
   食べ物じゃないギフトがあってもいい、ってことか……

勝 :百貨店なんかだとそうだろうな。チョコレートとお酒が一緒に
   売られていてもいいかもしれないな。

真子:なるほどー。チョコかお酒か、きっとどっちかは好きだよね。

勝 :こういう、バイヤー・ユーザーとか、BtoBtoCみたいな
   「組み合わせ」を考えることも大事だぞ。

真子:「組み合わせ」かー。セグメンテーションで考えることって、
   いっぱいあるねー。

勝 :だから楽しいだろ、考えるのが。

「ねーねー、勝さんとさー……」
「オマエとオレのく、み、あ、わ、せ、とか言うなよ」
「やっだー、勝さんも同じこと思ってたんだー」
「オマエとオレの組み合わせなんて、変なセグメントだよなぁ」
「だいじょーぶ、割れ鍋に綴じ蓋ってヤツだよ、きゃははは」
「失礼な。勝手に組み合わせんな、つーの」
「ねー、人通りがなくなってきたね……ってゆーか、私たちだけだ」
「今何時だ……って、うわ、すげー時間じゃねーかよ」
「気づいてなかったの?」
「ああ」
「やだー、真子といると時間を忘れちゃうんだねー」
「さすがにもう寝るか……」
「うん。ねー、勝さん、明日の朝ご飯食べるの?」
「食べない。そんな時間あったら寝る。だから起こすなよ」
「どーしよっかなー」
「起こすなっつってるだろうが。じゃあ片付けるか」
「うん。今日はレッスンありがとうございましたー」
「明日も続く、か……こんなに続くとはな……」
「はーい、じゃあ明日もよろしくお願いしまーす」
「しかし元旦早々、オマエとずっと一緒か……」
「何言ってんのよー、毎年そーじゃん」
「まあそうなんだけどさ」

2人は楽しそうに話しながら、のんびりと荷物を片付けると、ロビー
から去って、部屋へと戻っていった。

真子の「きゃははは」という声が遠くから聞こえる。ロビーには誰も
いなくなり、静寂だけが残されていた。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆今日のまとめ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●切り口8は「バイヤー・ユーザー」。顧客を「組み合わせ」で考え
 ることが必要なときもある!

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━特別編Vol.223(累計0999) 2013/03/18

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●切り口9は顧客の「ありたい姿」。「ありたい姿」によってニーズ
 が変わるから、顧客の「ありたい姿」を知ろう!

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆まずは、前号の復習から!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

*本編の「今の時間」は、年が明けた1月2日の朝です。

1月1日、真子と勝はほぼ1日中マーケティングレッスンに明け暮れ
た。翌1月2日の朝……

「おっはよーございまーす」

売多家一同が集まった旅館の朝食会場である食堂に、真子の元気な声
が響き渡る。

「あらあら真子ちゃん、おはよーさんだねー。相変わらず元気ねー」
「あ、おはよーございます!」
「昨日は遅くまで勝ちゃんとお勉強してたみたいだけど、真子ちゃん
 も社長になると色々大変なのかい?」
「はい、まー適当に頑張ってまーす」
「今朝は勝ちゃんは一緒じゃないのかい?」
「まだ寝てると思いますよー。朝ご飯食べないって言ってましたし」
「あの子は昔っから朝が弱かったからねー。誰の遺伝かねぇ」
「きゃははは、じゃー勝さん、起こして来ますねー」

「いや、起こさなくていい」
がら、と戸が開き、眠そうな顔をした勝が食堂に入ってきた。手には
パソコンバッグを持っている。

「あれ、勝さん、早いじゃん。どーしたの?」
「オマエに起こされるくらいなら自分で起きるわ」
「きゃははは、今から起こしに行くって何でわかったのー?」
「あらあら、勝ちゃん、おはよー」
「あ、おはよーございます……ふわあ……」
「勝ちゃん、髪の毛くらい、とかして来な。若い女の子の前で……」
「え? 若い女の子って、誰ですか?」
「このカワイイ真子ちゃんに決まってるじゃん♪」
「何だ、真子のことか……オマエに気を遣ってどーするよ」
「ねー、勝さん、ご飯食べるでしょ?」
「いや、いらない。お湯だけでいい」
「もー、またエスプレッソだけ?」
「いや、豆乳も持ってきたから、ソーイカプチーノだな」
「勝さん、そういうとこだけマメなんだから……」
「お、いいじゃん。豆乳だけに、豆だよな……」
「え……ホントだー、って前も聞いたよこれ、きゃははは」

真子と勝は向かい合わせに座ると、真子は朝食を食べ始め、勝は携帯
用エスプレッソマシンやら何やらを操作し始め、カプチーノを作る。

「ふう……カプチーノを飲むと、やっと1日が始まる、って感じがす
 るな……」
「なんか、それ作るの大変そーだよねー。あれ? また作るの?」
「ああ、お代わり作ってる。しかし朝からよくそんな食えるな……」
「だって若いもん、きゃははは」
「朝飯食うと、アタマ働かないだろ? 空腹の方がアタマ働くぞ」
「べっつにー? 食べても変わんないよ」
「そっか、いつもアタマ働いてないもんな」
「きゃははは、そうそう……ってそんなことないもん!」
「真子、今日、東京に帰るだろ?」
「うん! 勝さんと一緒の便だよ」
「それまでにこのシリーズ、終えたいよな……」
「じゃあ食べたら始めようよ……ごちそうさま!」
「うわ、もう食い終わったのか。またえらい早いな」
「ねー、私もカプチーノ飲むぅ!」
「残念、豆乳はもうなくなった。エスプレッソならできるけどな」
「じゃあエスプレッソでいいから作って!」
「でいいから作って、ってオマエ何様だ」
「お願いします、作ってくださいませ、勝さまぁ」
「はいはい……湯呑み貸せ」

真子が勝がいれたエスプレッソを飲み干すと、勝は既にパソコンを取
り出していた。

「あらあら、勝ちゃんと真子ちゃんはまたお勉強かい?」
「うん! 社長にお正月なんてありませんから」
「社長さんたちは大変だねー。頑張るんだよ」
「はい!」
「やっとカフェインが回ってきたな……アタマが働いてきた」
「あ……いつもの勝さんになった。顔が締まったねー」
「カフェイン充填120%、さあ始めるぞ!」

真子:まずはここまでの復習だよね。

○セグメンテーションの「括って広げる3ステップ」

ステップ1:顧客像の具体化
ステップ2:ニーズの普遍化
ステップ3:ニーズで人を括る

○セグメンテーションで「括る」ための切り口

切り口1:使い方・利用場面
・価値は使い方に現れる。逆に使い方を見ればニーズがわかる!

切り口2:困りごと
・どんなことに困っているのか、困りごとが同じならニーズが同じ!

切り口3:体質
・肌質・髪質・アルコールへの耐性などでニーズが違う!

切り口4:所有資源
・お金・時間・エネルギー・車などの持ち物などでニーズが違う!

切り口5:こだわり・マニアレベル
・ビギナーとマニアでニーズが違う!

切り口6:購買履歴
・何を買ったかで、直接の購買行動がわかる!

切り口7:競合
・どの競合商品を買うかに、ニーズが現れる

切り口8:バイヤー・ユーザー
・「買う人」と「使う人」が違う場合は、それぞれにニーズが違う!

真子:前号では、切り口8:バイヤー・ユーザーを考えました!

勝 :そうだな。それで?

真子:「バイヤー」は「買う人」で、「ユーザー」は「使う人」。こ
   れが違う人の場合がある!

勝 :そうだよな。BtoBなんかだと特にそうだな。買う人は購買
   部門で使う人が工場、とかな。

真子:それで、バイヤーとユーザーは「組み合わせ」で考える! 例
   えばワイン卸売会社なら、こうなりまーす。

真子がノートの図を指し示す。

===============================

 B    to    B    to    C

自社      →  中間のB   →   最後のC
ワイン卸売      飲食店        来店客

ワインが売れる ←  ワインを発注 ←  ワインを飲む

         富裕層向け飲食店 ←  富裕層

         庶民向け 飲食店 ←  庶民

        若い女性向け飲食店 ←  若い女性

===============================

真子:ワイン卸売会社がワインを売るとき、直接の顧客である「中間
   のB」の飲食店と、「最後のC」の来店客をセットで考える!

勝 :そうそう。基本的に、飲食店もターゲット顧客を決めているか
   ら、飲食店と来店客がセットになるんだよな。

真子:うん。それの「組み合わせ」によって、勧めるワインを変えた
   りする。

勝 :OK。こんな「組み合わせ」もあるな。

勝がノートパソコンを操作し、食堂のテーブルの向かいにいる真子に
見せる。

-----------< 記事引用 >------------

◇「娘とおもちゃ遊びを楽しむ20~30代の母親が最近目立つ。子
 供のころに親しんだ遊びを今風にアレンジした玩具や、なじみのあ
 るキャラクターを使いつつ携帯電話と連動するといったゲーム機な
 どが登場し、売れ行きも好調」

◇「エポック社(東京・台東)のビーズ玩具「アクアビーズアート」
 はウサギなどの絵柄にビーズを載せ、水を吹きかけ固定する。昔は
 ひもに通してアクセサリーを作るのが一般的。小学生に手軽さが受
 け、1月下旬~3月上旬の売り上げは前年同期比49%増えた。3
 千円程度のセットが人気だ」

◇「母親にもファンが広がっている。川崎市に住む主婦(36)は昨
 年末、6歳の娘の誕生祝いに購入したが「本格的な作品を簡単に作
 れるので自分も楽しんでいる」。同社が毎月開く作品コンテストに
 も母親の応募がある」

2013/03/16 日本経済新聞 夕刊 P.1

-----------< 記事引用 >------------

真子:あーなるほどー、バイヤーが「母親」で、ユーザーは「娘」だ
   けど、母親が「バイヤー兼ユーザー」になるんだ。

勝 :そうそう。自分がユーザーになれば、もう1人のユーザーであ
   る子供と一緒に遊べるから楽しいよな。

真子:なーるほどねー。そういう応用型もあるんだね。

勝 :ツイッターのフォロワーさんが、ホワイトデーについて面白い
   ことおっしゃってた。

真子:ホワイトデー? 大分先だよね?*

(本編の日付は1月2日です)

勝 :とにかく、奥さんとお子さんのいるダンナさんは、家族にホワ
   イトデーのプレゼントを買って帰るだろ?

真子:うん。多分ケーキだよね?

勝 :奥さんはケーキでいいんだけど、お子さんは、「ウサギの形を
   したチョコ」とか、そういうシンプルなのがいいんだって。

真子:あーなるほど、モンブランとか私子供の頃ダメだった。

勝 :だろ? だから、奥さん用のケーキと、小さいお子さん用の、
   わかりやすい味のチョコとかがあればいいな、って。

真子:「奥さん」と「小さいお子さん」の「組み合わせ」のターゲッ
   トなんだ!!

勝 :そうそう。ホワイトデーっていうTPOなら、その組み合わせ
   は考えつくはずだな。

真子:お店にしても、お子さん向けの一品で、客単価上がるしね。

勝 :そうそう。鋭い指摘だと思った。まさに「組み合わせ」で考え
   るってことだよな。

真子:勝さんからのホワイトデーのプレゼント、何かなー? 指輪と
   かじゃなくても、ココロがこもってればいーからね♪

勝 :何言ってんだ、コイツ……

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆切り口9:顧客の「ありたい姿」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

勝 :じゃあまた、次の切り口に行くか。

真子:まだあるの? えんえんと続くねー。

勝 :これで最後。最後は、顧客の「ありたい姿」。

真子:はい??

勝 :だから、お客様が「そうだったらいいな、と思っている理想の
   姿」だってば。「ありたい姿」って、文字通りの意味だよ。

真子:??? わっかりませーん。

勝 :例えば、下着のワコールが興味深い調査をしてる。女性は何歳
   に見られたいか、っていう……これな。

勝が再びノートパソコンを操作し、真子に見せる。

-----------< 記事引用 >------------

「実年齢」と「見られたい年齢」との差は、20歳代で1.3歳、30
歳代で4.5歳、40歳代で6.2歳、50歳代で7.7歳、60歳代
で7.3歳、70歳代で7.6歳という結果で、平均で5.6歳、それ
ぞれ若く見られたいと思っています。

http://www.wacoal.jp/news/pdf/51935_1.pdf

『女性の加齢意識と生活スタイルに関する調査』
~女性のエイジングと下着の心理学的研究~
2012年3月12日 株式会社ワコール

-----------< 記事引用 >------------

真子:……なるほど……実際の年齢よりみんな若く見られたいんだ。

勝 :ということらしいな。

真子:これ……年が上がるほど、若く見られたいんだね……

勝 :ということのようだな。だからその「若く見られたい」ってい
   うのが「自分のありたい姿」だろ?

真子:あ! そういうこと? 実際の自分とは違うけど、そうだった
   らいーなー、っていう……女性なら、5.6歳若くありたい。

勝 :だからさっきからそう言ってるだろ。英語でいう仮定法だな。
   「実際は違うけど、そうだったらいいな」っていう……

真子:それが「ありたい姿」ってことかあ……それが人によって違う
   っていうこと?

勝 :そうそう。50歳の人でも、「年相応に見られたい」と思って
   いるか、若く見られたいか、で買うモノが違う。

真子:なるほど!!

勝 :こんな調査もあるんだよ。

ノートパソコンを手際よく操作した勝が、画面を真子に向ける。

-----------< 記事引用 >------------

◇「博報堂はアジア12都市における50代男女の若さに関する考え
 方の調査結果を発表した。東京が他都市より突出して精神的にも肉
 体的にも若さを保ちたいという志向が強い一方、マニラやジャカル
 タなどは年齢にふさわしい外見や行動を重視する傾向があることが
 分かった」

◇「「身体的にいつまでも若々しくいたい」か「年齢にふさわしい熟
 年の容姿になりたい」かどちらかを志向するかを聞いたところ、東
 京は74%が前者を選んだ。北京と台北も6割に及んだ。反対にマ
 ニラ、ジャカルタ、クアラルンプールの3都市では7割程度が後者
 の熟年の容姿の方がよいと答えた」

2012/11/08 日経産業新聞 P.13

-----------< 記事引用 >------------

真子:へー、東京の人は若く見られたくて、マニラとかだと年相応に
   見られたいんだねー。おもしろーい。

勝 :調査結果も興味深いけど、まあとにかく「ありたい姿」とか
   「見られたい自分」が人によって違うから……

真子:買うモノも変わるんだ!!

勝 :そうそう。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆切り口9:顧客の「ありたい姿」 マインド年齢
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

真子:年齢なんかは確かにわかりやすいね。何歳の自分でいたいか、
   っていうのが出やすいよね。

勝 :まさにそういうことでさ、フランフランの社長が、こんなこと
   をおっしゃってて……

勝が再びノートパソコンを真子に見せる。

-----------< 記事引用 >------------

◇「ファッション雑貨店「フランフラン」を運営するバルス。
 (中略)高島郁夫社長にその狙いと新たな成長戦略の青写真を語っ
 てもらった」

◇「――かつて、フランフランは「25歳、一人暮らしのA子さん」
 に支持されるコンセプトを掲げていました。今、A子さんはいます
 か。「いませんね。もう消費者を束ねることはできなくなってきて
 います。創業の頃、1990年代の前半は消費行動も画一的でした
 ので年齢で束ねることも可能でした」

◇「でも30歳でも40歳を超えても25歳の感覚を持つA子さんは
 いらっしゃいます。かつてはこうした年齢になるとどうしても生活
 感がでていましたけど。今は年齢を重ねても若い感覚やマインドを
 持つ消費者はたくさんいます。リアルな年齢からマインドな年齢で
 すね」

2012/02/27 日経MJ P.3

-----------< 記事引用 >------------

真子:あ、昔は「年齢で束ねること」もできたけど、もう今はできな
   いって……

勝 :そうそう、そうなんだよな。それに変わるものとして「マイン
   ド年齢」っておっしゃってるんだろうな。

真子:そっかー、実年齢じゃなくて、「25歳の気分」を持つ人、っ
   てことか。

勝 :「25歳の気分」であり「25歳の自分」、だな。「25歳の
   人」と「25歳の気分を持つ人」は全然違うからな。

真子:うん。25歳の人でも、「17歳の気分」を持つ人もいるもん
   ね。私みたいに。

勝 :オマエは気分っていうか、知能レベルが子供だよな。

真子:そーだねー、きゃははは……ってひっどーい!

勝 :だから「マインド年齢」、実年齢じゃなくて、マインドつまり
   「気持ち」上の年齢が大事。

真子:あー、気が若い、ってこと?

勝 :まあそういうこと。実年齢より、お客様の「ココロ」に近い。

真子:あ、実際の年齢にあった商品じゃなくて、自分の「見られたい
   年齢」にあった商品を買うんだ。

勝 :最近のシニアの方々は特にそうらしいぞ。

言いながら、再び勝が真子にノートパソコンを見せる。

-----------< 記事引用 >------------

◇「高島屋横浜店は年々顧客の平均年齢が上がり、今や売上高の45
 %を60歳以上が占めている。

◇「本来なら30代向けの紳士服ブランド「マッキントッシュ フィ
 ロソフィー」。ここでは顧客の半分が50歳以上。百貨店では国内
 トップクラスの売り上げを誇る。仲田勝彦店長(58)は「最近の
 シニアは感覚が若い。従来の年齢別の対策では顧客をつかめない」
 と話す」

2012/08/16 日本経済新聞 朝刊 P.1

-----------< 記事引用 >------------

真子:なるほどねー。50代以上の方も、30代向けの服を買うんだ
   ねー。

勝 :正確に言うと、「マインド年齢が30代の方は、30代の服を
   買う」ってことだな。実年齢に関わらず、だ。

真子:あ、そっか。もちろん30代向けの服を買う30代の方もいら
   っしゃるわけだよね。

勝 :そういうこと。

真子:ってことは、実年齢より、マインド年齢を知るべきなんだね。

勝 :そう。訴求すべきも実年齢より、マインド年齢かもしれない。
   例えばシニア層に「シニア向け商品」って謳うと嫌がられる。

-----------< 記事引用 >------------

◇「積極的に消費に励むシニアにシニアの自覚はない。クルーズ船
 「にっぽん丸」を運航する商船三井客船(東京・港)が07年に売
 り出した2泊3日の「アクティブシニアクルーズ」。還暦を迎える
 団塊の世代を狙った企画には誤算があった。「シニアと呼ばれるの
 は違和感がある」。利用客アンケートの指摘を受け、翌年からその
 看板を下ろした。

2012/08/16 日本経済新聞 朝刊 P.1

-----------< 記事引用 >------------

真子:あー、なるどねー。本当は若々しくありたいのに「アナタはシ
   ニアですよね」って言われると……

勝 :そういうこと。ただ、必ずしも「若く見られたい」とは限らな
   い。子供なんかは、むしろ年上に見られたいって思うだろ?

真子:あ、そうだ! 子供服なんかそーだよね! ちょっとお姉さん
   っぽい服に憧れる!

勝 :だから、小学校高学年なんかだと、むしろ大人っぽい服の方を
   着たがる子供もいるだろうな。

真子:だから、子供っぽい服、って思われちゃうと逆に売れなかった
   りするよね。

勝 :シニアの逆だけど、「ありたい姿」という意味では同じ。

真子:それも「ありたい姿」かあ……

勝 :未成年がタバコを吸うなんていうのもそうなんだろうな。「大
   人に見られたい」みたいな、さ。

真子:あ、「タバコ吸ってるオレ、大人でカッコイー」みたいな感じ
   なのかな?

勝 :そういうのもあるんじゃないのかな。

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◆顧客が「ありたい姿」を知ろう!
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勝 :逆に言えば、お客様が「ありたい姿」になるのを演出する、手
   伝う、っていうのが必要。

真子:え??

勝 :だからさ、「本当の姿」と「ありたい姿」にはギャップがある
   わけだろ? だからそれを埋めてあげる。

真子:あ、なるほどー。

勝 :例えば「アンチエイジング」っていう言葉は、まさに「本当の
   姿」と「見られたい年齢」のギャップの話だよな。

真子:あー、なるほど……痛いところついてくるなー。ねー、ちょっ
   とは女ゴコロを考えなよー。女の子に嫌われるよ。

勝 :別に男性だってアンチエイジングはあるだろ。髪の毛関連の商
   品・サービスなんかまさにアンチエイジングじゃん。

真子:あ、そっか。

勝 :化粧品とか洋服もそうだよな。外見を飾るものは、顧客が「あ
   りたい姿」になるための「道具」だからな。

真子:あ、確かに化粧品もそうかー。美しくありたい自分、か……

勝 :その「美しくありたい自分」が人によって違うから、口紅の色
   があんなにたくさんあるんだろ? じゃないと説明できない。

真子:な、なんで?

勝 :だって、「求める美しさ」が全員同じなら、口紅でも何でも、
   1色あればすむだろ?

真子:あ、そっか。でもさ、そんなの顔立ちとかによって違うんじゃ
   ないの?

勝 :だからそれが人によって違う、ってことだろうが。

真子:きゃははは、そーだそーだ。人によって違うから分けて考える
   っていうのがセグメンテーションだった。

勝 :男性の場合は、時計なんかに自分の「ありたい姿」が反映され
   る、っていう仮説をオレは持ってる。

真子:なるほど、男性はお化粧よりも、時計、かあ。

勝 :ブランドによって、力強く見られたいとか、そういうのがある
   だろ。「自己投影」みたいな感じ。

真子:あ、昔、勝さんよく英字新聞を見せびらかして歩いてたよね?
   アレは「英語ができる自分」を見せたかったんだぁ。

勝 :それは単に英語を勉強してたからだろ。でも確かに、英字新聞
   なんて「ありたい姿」を演出するツールではあるな。

真子:なるほどねー。じゃあさ、お客様が「どんな姿でありたいか」
   っていうのを知る必要があるよね?

勝 :だからさっきからそう言ってるだろ。お客様が「どんなありた
   い姿」を持ってるか、でお客様を括ろう、ってことだぞ。

真子:あ、そっか。「ありたい姿」に合わせて対応しよう、ってこと
   だ。でも、お客様の「ありたい姿」なんてわからないよね?

勝 :そうか?

真子:だって、お客様に「あなたはどんな「ありたい姿」を持ってま
   すか?」なんて聞けないよ。

勝 :そんなことないだろ。それこそ時計とか、メークとか、服に現
   れるだろ。それが「ありたい自分」だろ。

真子:え……あ! そうか、「ありたい姿」が「外見」に現れるんだ
   ね!

勝 :人を見かけで判断してはいけないけど、どんな見かけでありた
   いか、は、見かけに現れてるよな。

真子:きゃははは、当たり前だー!!

勝 :オレさ、スポーツジムに通ってるんだけどさ。

真子:それで?

勝 :で、通い始める最初には、「どんな体になりたいですか?」み
   たいなカウンセリングを受けるんだよ。

真子:まさに「ありたい姿」だ!」

勝 :そう。「なりたい体」によって、筋トレをメインにするのか、
   有酸素運動主体にするのか、なんかが変わってくるからな。

真子:そっか、トレーニングメニューが「人によって違う」んだ。そ
   の理由が「ありたい姿が違う」から、か……

勝 :そういうこと。だから最初に「ありたい姿」をお客様に確認す
   る必要があるわけだ。

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◆ベネフィット=「ありたい姿」
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勝 :結局、ベネフィットっていうのは、「ありたい姿」なんだよな

真子:え? な、なにそれ?

勝 :ベネフィットていうのは、お客様にとっての価値であり、「嬉
   しさ」だろ?

真子:う、うん……

勝 :だから、「自社商品・サービス利用後のなりたい姿」っていう
   のがその「嬉しさ」なわけだろ?

真子:え?

勝 :真子の会社のイタリアンレストラン、そーれ・しちりあーのの
   ベネフィットは?

真子:食べて、飲んで、ストレス発散して、また明日から頑張ろうっ
   てなってほしい……あ! それがお客様の「ありたい姿」か!

勝 :そうそう。ベネフィットとは、その商品・サービス利用のビフ
   ォー・アフターの「差」、つまり「アフターの嬉しさ」。

真子:その「アフターの嬉しさ」が、自分のなりたい姿ってことだ!

勝 :そうそう。立ち食いソバの「安く早く満腹」っていうのも、立
   ち食いソバ店利用「前」の「なりたい姿」だろ?

真子:なるほど、「満腹になってる自分」が「なりたい姿」なんだ。

勝 :そう。「ありたい姿」はまさに「ベネフィットそのもの」

真子:あれ? セグメンテーションって、ベネフィットの人による違
   いでしょ? だったら「ありたい姿の人による違い」って……

勝 :お、よく気づいた。「ありたい姿」の人による違いがセグメン
   テーションそのものだ。

真子:そっかー。じゃあ、こんないくつも切り口を使わないで、最初
   っから「ありたい姿の人による違い」でいーじゃん。

勝 :それがわかれば苦労はしないの! だから「使い方」とか「競
   合」とかを色々と考えるんだってば。

真子:あ、なるほどねー。確かにいきなり「このお客様のありたい姿
   を考えろ」とか言われても無理だー。

勝 :そう。切り口はこれで最後だけど、この「ありたい姿」を最後
   に持ってきた理由もそれ。

真子:「ありたい姿」の人による違いを描ければいいんだ!

勝 :そういうこと。切り口はこの9つでやっと終了。

真子:ふう……セグメンテーションの切り口って一杯あるんだねー。

勝 :「切り口」が終わっただけで、セグメンテーションの話はまだ
   続くけどな。

「ねー、その勝さんの服装とか、ぼさぼさの髪の毛って、勝さんの
 「ありたい姿」なの? なんとかしなよ」
「大きなお世話だ。昨日ちゃんと風呂に入ったし、今朝もちゃんと顔
 洗ったんだからいーだろ」
「そんなの当たり前だよー。浴衣もちゃんと着なよ……いつもの服も
 オヤジだし、恥ずかしいからやめてよ……」
「そんなのオマエにぜんっぜん関係ないだろ」
「関係あるもん! 真子のせーになるじゃん」
「ならねーよ、何でオレの服装がオマエのせいになるんだよ」
「今日だって一緒に帰るんだしさー、隣にいたら恥ずかしいよ……」
「別にそんなの誰も頼んでないだろ。だから別々に帰ろうぜ」
「もー、じゃあ今度洋服買ってあげる! 教えてもらってるお礼に。
 だからデパート一緒に行こうよー。選んであげるよ」
「何が「選んであげる」だ。オマエの「こうあって欲しい姿」という
 のを他人に勝手に押しつけるのはやめろ」
「じゃあ、今のだらしないカッコが勝さんの「ありたい姿」なの?」
「うるせーよ、気にしないだけだろ」
「なんでそんなに意地っ張りなのよー」
「オマエに言われたくねーよ、売多家みんなそーだろ? 周り見ろ」
「確かに……あ、わかった! 勝さんは、「洋服なんて気にしない自
 分」が好きなんだ! それが「ありたい姿」なんでしょ?」
「……オマエ鋭いな」
「やだ、「オレ自身が最高のブランドなんだ」とか言いそうだ~~」
「オマエだって、鏡よ鏡よ鏡さん、この世で一番美しい人はだーれ、
 とかって毎晩、鏡に向かって言ってそーじゃねーか」
「きゃーははは、そうそう、世界で一番美しいのはこの真子ちゃん!
 やっぱ私たち、同類だねー」
「……なんかイヤな感じではあるが、今のが「ありたい姿」で括ると
 効果的、っていう証明になってしまったな……」
「私たち、同類同類!! 同じセグメントだ、きゃははは」
「ふう……エスプレッソでも飲むか……」
「あ、真子のもお願いしまーす」
「はいはい。湯呑み貸せ。その間にノートまとめとけよ」
「はーい」

勝は、携帯用エスプレッソマシンにお湯をいれ、エスプレッソを入れ
る準備を手際よく始める。真子は、ノートをせっせとまとめ始めた。

次号に続きます!

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◆今日のまとめ
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●切り口9は「ありたい姿」。顧客の「ありたい姿」はベネフィット
 を表すから、その違いがセグメンテーションそのものになる。

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━特別編Vol.224(累計1000) 2013/03/21

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●セグメンテーションで「括って広げる」手法としては、顧客データ
 ベースが有効。切り口を組み合わせて「括って」みよう!

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◆まずは、前号の復習から!
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*本編の「今の時間」は、年が明けた1月2日の朝です。

1月1日、真子と勝はほぼ1日中マーケティングレッスンに明け暮れ
た。翌1月2日の朝、朝食を取り終え……

勝が携帯用エスプレッソマシンで湯呑みに入れたエスプレッソを、少
しずつ口に含んで味わう真子と勝。

「エスプレッソ、どうだ? 悪くないだろ」
「まあまあ、って感じかな……いれてもらっておいて何だけど」
「まあ携帯機だからな……これで本物のマシンなみにいれられたら、
 むしろそっちが驚きだわな」
「うん、代替品としては十分だと思うよ」
「まさにそんな感じだな。これを、お湯で割ると結構おいしいコーヒ
 ーになるぜ」
「へー、じゃあもう一杯ちょーだい? お湯で割ってみる♪」
「しまった……余計なこと言ったか。まあそういう展開になるよな」

勝は「しょうがない、自業自得か」と観念したようにつぶやくと、携
帯用エスプレッソマシンを操作し、ポットのお湯を加えた。

「ほら、エスプレッソのお湯割りだ。アメリカーノってヤツだな」

勝が手渡した湯呑みの香りを調べるようににおいをかいでいたかと思
うと、真子はコーヒーをじっくり味わった。

「あ、ホントだ。雑味がない、すっきりとしたコーヒーだね」
「豆できちんといれてる、っていうところは一緒だからな」
「うん、そーだね」
「まだ真冬だからやんないけど、氷があれば、アイスコーヒーとして
 は結構上出来になるぜ」
「へー、しかしまー、そーゆーことは色々とやるよねー、勝さん」
「あとさ、やっぱり豆、正確にはPODだけどさ、によって、味もや
 っぱり違うからな」
「そりゃそうだろうけどさ……まあ私は勝さんが作ってくれるから、
 いいや」
「知るか。いつものペンションだと、エスプレッソマシンがあるから
 この携帯用マシンの分の荷物が減るんだよな」
「あーなるほど、それが勝さんがあのペンションを選ぶ理由なんだ」
「それだけじゃないけど、選ぶ理由の1つではある。お客が選ぶ理由
 とはすなわち「強み」のことだからな」
「わかってるよー」

勝 :とにかく、ここまでの復習から、な。

真子は「うん」と言いながら、ノートを広げ、勝に見せる。

○セグメンテーションの「括って広げる3ステップ」

ステップ1:顧客像の具体化
ステップ2:ニーズの普遍化
ステップ3:ニーズで人を括る

○セグメンテーションで「括る」ための切り口

切り口1:使い方・利用場面
・価値は使い方に現れる。逆に使い方を見ればニーズがわかる!

切り口2:困りごと
・どんなことに困っているのか、困りごとが同じならニーズが同じ!

切り口3:体質
・肌質・髪質・アルコールへの耐性などでニーズが違う!

切り口4:所有資源
・お金・時間・エネルギー・車などの持ち物などでニーズが違う!

切り口5:こだわり・マニアレベル
・ビギナーとマニアでニーズが違う!

切り口6:購買履歴
・何を買ったかで、直接の購買行動がわかる!

切り口7:競合
・どの競合商品を買うかに、ニーズが現れる

切り口8:バイヤー・ユーザー
・「買う人」と「使う人」が違う場合は、それぞれにニーズが違う!

切り口9:ありたい姿
・「ありたい姿」の違いは、ベネフィットの違いそのものとなる

真子:切り口はこの9つで終わり、なんでしょ?

勝 :いや、もう1つある。

真子:えー、終わりって言ったじゃん!

勝 :最後に、「切り口10:属性」っていうことになる。

真子:へ? 「属性」って、男女とか年齢とか、ってこと?

勝 :そうだよ。BtoCなら性別、年齢、年収、居住地とか。
   BtoBなら、企業規模とか業種業態とか。

真子:それじゃ切れない、って最初に言ってたじゃん!

勝 :正確に言えば、それ「だけ」じゃ切れない。それで満足しちゃ
   ダメってことだ。

真子:えーー……

勝 :だから、ここまでの切り口1~9などを考えて、描写するとき
   には、「属性」も加える。

真子:なんだ、やっぱり「属性」も必要なんだあ……

勝 :そりゃそうだ。それに「属性」って言っても、性別・年齢だけ
   じゃないからな。色々あるぞ。

真子:家族構成とか、世帯年収とかでしょ?

勝 :それもそうだけど、例えば読んでる雑誌とか、好きな音楽とか
   休日に遊びに行く場所、とか、色々あるだろ。

真子:それって「属性」なの?

勝 :広い意味での属性、だろ。調査でいう「フェースシート」に入
   るような項目だからな。まさに「フェース」、「顔」だよな。

真子:あ、じゃあ、持ってる車とかもそーだよね?

勝 :それは「切り口4:所有資源」だろうが。

真子:あ、そうか。

勝 :まあ別に、それがどの切り口に分類されるかどうかは大きな問
   題じゃない。要は、ニーズの違いがわかればいいんだ。

真子:じゃあ、最終的にはこうなるんだね。

○セグメンテーションで「括る」ための切り口

切り口1:使い方・利用場面
・価値は使い方に現れる。逆に使い方を見ればニーズがわかる!

切り口2:困りごと
・どんなことに困っているのか、困りごとが同じならニーズが同じ!

切り口3:体質
・肌質・髪質・アルコールへの耐性などでニーズが違う!

切り口4:所有資源
・お金・時間・エネルギー・車などの持ち物などでニーズが違う!

切り口5:こだわり・マニアレベル
・ビギナーとマニアでニーズが違う!

切り口6:購買履歴
・何を買ったかで、直接の購買行動がわかる!

切り口7:競合
・どの競合商品を買うかに、ニーズが現れる

切り口8:バイヤー・ユーザー
・「買う人」と「使う人」が違う場合は、それぞれにニーズが違う!

切り口9:ありたい姿
・「ありたい姿」の違いは、ベネフィットの違いそのものとなる

切り口10:属性
・BtoCなら性別・年齢など、BtoBなら業種・企業規模など

勝 :ということになるな。

真子:ちょうど10個か。キリがいいね。

勝 :わざとそうしたわけじゃないけど、まあこのあたりで量として
   限界だろうな。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆切り口を「組み合わせ」で考える具体的な方法
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

真子:ってゆーか、10個でも実際すごく多くない? 切り口1:使
   い方・利用場面を考えるだけでも大変なのにぃ……

勝 :まあそうだよな。しかも色々な切り口を「組み合わせ」て考え
   る、ってことだからな。

真子:えー、そんなのムリに決まってんじゃん。

勝 :そんなことないだろ。

真子:じゃーどーすればいーのよー

勝 :真子の会社が運営するイタリアンレストラン、そーれ・しちり
   あーのだったらどうなる?

真子:さあ?

勝 :前にやっただろうが。このシリーズの9回目でやったアレ……

勝が真子のノートを奪い、ぱらぱらとめくり始める。「これこれだ」
と言いながら、真子にその部分を見せた。

      勝     真子    恵利ちゃん    望ちゃん

食べる量  食べ過ぎ  多い     普通      少なめ
脂モノ   大好き   大好き    ?       普通
お酒    弱い    強い     弱い      強い
彼氏・彼女 いない   いない    いない     いない
使い方   接待    女子会    1人で     1人で
重要な品  ドルチェ  お酒     ドルチェ    お酒

真子:え? これって私が書いたチャートだよね?

勝 :そう。これをやればいいだけ。

真子:え?

勝 :これって、横軸に顧客をとって、縦軸に「切り口」をとってる
   チャートだよな?

真子:えっと……あ、うん、そーだね。あ、確かに、「食べる量」と
   か、「お酒」とかは「切り口3:体質」だし……

勝 :「使い方」は「切り口1:使い方」、そのまんま。

真子:「重要な品」は「切り口6:購買履歴」から持ってくることに
   なるよね、多分。

勝 :現実的にはそうだろうな。

真子:彼氏・彼女は「切り口4:所有資源」かな?

勝 :さあ……所有してるわけじゃないからなあ……

真子:じゃあ、「切り口10:属性」かな?

勝 :ともかく、Excelとかの表計算ソフトでやるときは、この
   チャートの縦横を入れ替える。

真子:え、Excelでやるの?

勝 :そうだよ。客数が何百万人いたら別だけど、何万人単位だった
   ら、Excelでも十分分析できるぜ。

真子:へー、そうなんだ!

勝 :で、さっきのチャートの縦横を入れ替えると、こんなイメージ
   になるはず。

      切り口1 切り口2 切り口3 …… 切り口10
顧客1
顧客2
顧客3
顧客4
顧客5
 ・
 ・
顧客1000

真子:えっと……うん、縦横を入れ替えたんだね。

勝 :それで、切り口ごとにタテに見ながら「神経衰弱」するわけだ
   な。

真子:神経衰弱って、「人を括っていく」ってことだよね?

勝 :そう。で、これでピボットでクロス集計するわけ。Excel
   のピボットテーブルは超使えるからできた方がいい。

真子:ピボットテーブルって?

勝 :Excelの説明書買って読め。

真子:んーと……これだとわかんない! やっぱりこっちでやって!

真子がノートに書き直していく。

     食べる量    使い方   重要な品

勝さん  食べ過ぎ    接待    ドルチェ

真子    多い     女子会    お酒

恵利    普通     1人で   ドルチェ

望    少なめ     1人で    お酒

勝 :またえらく減らしたな……まあいっか。ここから一旦「グルー
   プ化」する。

真子:「グループ化」って?

勝が「要はこういうこと。回答項目を単純化してく」と言いながら真
子のノートに修正を加える。

     食べる量   使い方    重要な品

勝さん  大食い   グループ    ドルチェ

真子   大食い   グループ     お酒

恵利   少食    1人で     ドルチェ

望    少食    1人で      お酒

真子:あ、全部2つずつに分けるように単純化したんだ。

勝 :そう、これで、2×2×2の8通りのセグメントが理論上存在
   することになる。

真子:これが「グループ化」かあ……2つずつに分けるの?

勝 :違う違う、ここではわかりやすくしてるだけ。実際には、各切
   り口で5~8個くらいにまとめるかな。

真子:ふーん、そんなもんなんだ。

勝 :最初は「個別具体的」に書いていくんだけど、実際にセグメン
   テーションするときには、こうやってまとめていく。

真子:うん。

勝 :で、例えば、「食べる量」と「使い方」で「括る」と、オレと
   真子は「大食いのグループ利用」で……

真子:恵利と望ちゃんは「少食の1人利用」……私もこっちがいい!
   「大食い」に分類されるのはイヤだ!

勝 :うるせーよ。ともかく、この2つのセグメントに対して、メニ
   ュー展開とかはどうすればいい?

真子:「大食いのグループ利用」の人たちには、大皿でボリュームた
   っぷりの、食べ応えがあるメニューを用意する!

勝 :そうだよな。「少食の1人利用」の方は? 恵利ちゃんと望ち
   ゃんに対しては、どんなメニューにする?

真子:いろんなものが少しずつ載ってるプレートを1人前から頼める
   ようにするとか?

勝 :そういうこと。これが「ニーズが違うから分けて対応する」っ
   てこと。

真子:なあるほどねー。じゃあ、「重要な品」にある「ドルチェ」と
   か「お酒」とかは、どう使うかなあ……

勝 :例えば、DM出すときに「ドルチェ」のオレと恵利ちゃんには
   「新作ドルチェ登場!」って書けば来店してもらえそうだろ?

真子:なるほどぉ! 逆に言えば、そのドルチェセグメントに来てほ
   しければ、新しいドルチェ出せばいんだ!

勝 :そうそう、そういう「打ち手」を考えながら「どう括るか」っ
   て考えていくわけ。

真子:このデータが増えていったら、どんどん複雑になるんだよね?

勝 :そうなるな。ただ、あんまり複雑にしても、打ち手が打てなけ
   れば意味がないから、打ち手を考えながら、だけどな。

真子:どういうこと?

勝 :例えば、オレは「ドルチェ」好きだけど、チョコレート系のが
   好きなんだよ。恵利ちゃんはフルーツのドルチェが好きだろ?

真子:それで?

勝 :それで、ドルチェ好きな人をさらに「チョコレート」と「フル
   ーツ」に分けたとして、なんか手が打てるか?

真子:打てなくもないけど、チョコレート系のドルチェが好きな人を
   狙ってわざわざドルチェを作るは大変だあ……

勝 :だろ? だから、「ドルチェ」でまとめちゃってもいいんじゃ
   ないか、ってこと。

真子:あ、そっか。違う打ち手を打てないんだったら、分ける意味が
   ないってことだ。

勝 :そういうこと。実務では、こうやって、Excelでやってい
   くのがお勧め。

真子:データがたくさんあったら? お客様が何十万人もいらっしゃ
   る、とか。

勝 :昔のExcelは65,536行までっていう制限があったけ
   ど、今は100万行とかまでできるからな……

真子:うわあ、そんなに……

勝 :これって結構すごいことで、昔はAccessじゃないと何十
   万件単位のデータは使えなかったけど、今はExcelで可能

真子:じゃあ、勝さんにやってもらおうっと。

勝 :絶対イヤだ。数千人単位のデータなら結構手軽にできるけど、
   数十万人単位なら、外注を考えた方がいいな。

真子:じゃあさ、データがたくさんある会社が有利ってことだよね?

勝 :否定はしないけど、本当に大事なのは、データの「使い方」だ
   からな。どういう切り口で括るのか、っていう。

真子:なるほどねえ……それを考えるのは人間だもんね……

勝 :でさ、「括って広げる3ステップ」って何だっけ?

真子:うん、これだよ!

ステップ1:顧客像の具体化
ステップ2:ニーズの普遍化
ステップ3:ニーズで人を括る

勝 :そうだよな。で、今やったことも全く同じだからな。

真子:え?

勝 :こういうこと。

    ステップ1  ステップ2  ステップ3
    (具体化)  (普遍化)   (括る)

勝さん 食べ過ぎ    大食い  大食いグループとして括る

真子   多い     大食い  大食いグループとして括る

恵利   普通     少食   少食グループとして括る

望   少なめ     少食   少食グループとして括る

真子:あ! ホントだ! 具体化して、まとめて、括ってる!

勝 :そう、この括って広げる3ステップをExcelの上でやるっ
   ていうだけ。

真子:へー、単なる理論じゃないんだ!

勝 :当然。この「括って広げる」っていう発想は、こういうデータ
   ベース的なことをやってたから思いついたんだろうな。

真子:そうなの?

勝 :そう。顧客データベースは、顧客を1人1人「個別」に扱うか
   ら「個別具体化して神経衰弱」がどうしても必要になる。

真子:なーるほどぉ。

勝 :マスメディアを使ってドカン、っていうのだと、なかなかそう
   いう発想にならないんだよな。

真子:ふーん、じゃあ顧客データベース(DB)を作ると、セグメン
   テーションがやりやすいんだ。

勝 :そう言っていい、というか、セグメンテーションと顧客DBは
   非常に相性がいい。

真子:そーなんだ。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆「顧客データベース」とセグメンテーション
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勝 :こういう考え方に基づいて、実際にビジネスしてる実例がある

勝が「これを読んでみろ」と言いながら、真子にパソコンを向ける。

-----------< 記事引用 >------------

◇(楽天は)「各事業ごとに保持していたデータを集め、データウエ
 アハウス「楽天スーパーDB」を築いた。全会員の属性、購買履
 歴、趣味や関心などの登録情報、カードやポイント、クーポンの情
 報、ログイン情報などを集積する。これらのデータを基本属性、購
 買やサイト内での行動の傾向、消費態度の特徴の3つの切り口から
 分析、人口統計など外的なデータを重ねたうえで「全会員を数百の
 グループに分類する」」

◇「グループは例えば「家事は任せて」「グルメ大好き」「お手軽ビ
 ューティー」「家でじっくり派」などだ。商品・サービスの推奨や
 メール配信では、グループの数をさらに20~30に集約し、簡素
 化して運用する」

◇「例えばゴルフ場予約サイト「楽天GORA」。かつて利用しなが
 らここ数カ月、利用がない人を2つに分け、一方に楽天市場のトッ
 プページで「ゴルフ場予約サイトはこちら」などゴルフ場関連のア
 イコンを集中して表示した。結果は多様なアイコンを表示したグル
 ープに比べ、10倍のクリック率を記録した」

◇「配信を希望しない人を除く全会員に楽天市場が送るメールマガジ
 ンで、「グルメ大好き」といったグループごとに的を絞って配信し
 たところ、一斉に同一内容のメルマガを送っていた従来に比べ開封
 率は数倍となった」

2012/02/24 日経MJ P.1

-----------< 記事引用 >------------

真子:へー、楽天ってこんなことやってるんだー! すっごーい!

勝 :多分だけど、この考え方は、さっきの説明とほとんど同じで、
   それを大規模にやってるんだと思う。

真子:うん、具体化して、普遍化して、括ってる、っていう順番通り
   だ!

勝 :多分こういうことだろ。

勝が真子のノートに図を描きながら説明していく

        属性  購買履歴 趣味・関心  カードの情報
顧客1
顧客2
 ・
 ・
顧客10000

真子:あ、これで、普遍化して、括るんだ! さっきと同じだ!

勝 :そう、神経衰弱するわけだ。その結果「家事は任せて」「グル
   メ大好き」「お手軽ビューティー」みたいに括られる。

真子:名前がわかりやすいよね。

勝 :「数百グループ」もある、っていうのがすごいな。

真子:会員数が多いからだよね、きっと。

勝 :確か、楽天って会員数8100万人*とかだぜ

*2013/03/05 日本経済新聞 朝刊 P.1

真子:ひゃあ、じゃあ千グループあっても……えっと……あれ?

勝 :千グループでも、1グループあたり平均8万人、だな。

真子:うわあ……じゃあ数百グループ必要だね……

勝 :それを8100万人でやるっていうのは、数十万人でひいひい
   言ってたオレからすると、すごいことだな。

真子:ほとんど日本人全員だもんねー。

勝 :オレも楽天で買い物したり旅行予約するけど、どんな「グルー
   プ」に入ってるか、楽天に聞いてみたいな。

真子:楽天からどんなメールが来るか、見てみればいーじゃん。お勧
   め商品を見ればそこからわかるんじゃない?

勝 :! オマエ、鋭いな。きっと「大食いオヤジ」とかのグループ
   じゃねーかな。

真子:きゃはは、きっとそーだ。真子は「家事は任せて」かな♪

勝 :オマエがやると「火事は任せて」になりそうだな……危なっか
   しいからな……

真子:きゃははは、おもしろーい! ってそんなことないもん!

勝 :で、「グルメ大好き」なグループの人に、グルメのメルマガを
   送れば「開封率が数倍」になるわけだな。

真子:そりゃそーだよね。それに興味がある、っていうことがわかっ
   てるわけだからさ。

勝 :そういうこと。

真子:この、楽天GORAの例ってどういうこと?

勝 :いわゆる「ご無沙汰顧客」をターゲットにしたってことだな。
   昔は使ってくれてたのに、最近ご無沙汰してるお客様。

真子:あ、「購買履歴」だ! それで、その「ご無沙汰顧客」を2つ
   に分けて……?

勝 :これ典型的な「ABスプリット」。同じグループをAとBの2
   グループに分けて、違う広告とかを出して、反応の差を見る。

真子:あ、それでどっちの方が効果的か、っていうのがわかる!

勝 :今回は、ゴルフ場予約の「ご無沙汰顧客」に、片方には普通の
   広告、片方にゴルフ場の広告を出したら……

真子:ゴルフ場の広告を出した方が10倍のクリック率!

勝 :ゴルフ場を昔使っていた、っていう「購買履歴」から、ゴルフ
   に興味があることは既にわかってるわけだからさ。

真子:そりゃ、「買ったモノにはニーズがある」からね。

勝 :そう!! その当たり前のことを利用したのが「切り口6:購
   買履歴」っていう切り口。

真子:そっか、だから効果的な切り口なんだねー。

勝 :この、楽天の手法は、まさに正攻法。オーソドックスだわ。

真子:顧客像を個別具体化して、神経衰弱するように仲間合わせして
   いく、っていうのをちゃんとやってるんだね。

勝 :こういうデータは手に入りやすくなってるから、この情報をど
   う加工して、どう「意味づけ」していくかが大事だよな。

真子:「意味づけ」って?

勝 :だから、セグメンテーションして、セグメントごとに違う手を
   打つとか、だよ。データから何を得るか。

真子:あ、なるほど。それが、カンじゃなくて、データでできるんだ
   もんね……

勝 :そう、ビッグデータとか言われるような時代だからこそ、セグ
   メンテーションの「括る」考えが実際にできるようになった。

真子:BtoBとか、うちみたいな業態だとBtoCでも顧客DBっ
   て作れるけど、消費財の場合なんかはどうするの?

勝 :顧客調査をかけるか、もしくは小規模でもいいから、作ってみ
   ればいいよな。

真子:小規模、って?

勝 :やりかたは色々あるだろ。会員組織とか、ファンクラブみたい
   のを作る、とか。

真子:あ、なるほど。

勝 :消費財なら、DMとか出さないだろ? だったら別に個人名と
   かはいらない。購買履歴とかは訊きやすいだろ?

真子:確かに。

勝 :スマホなんかは、そういうツールとしてはいいんじゃないか。
   意見を聞き出すツール、として。

真子:なるほどねー。やりようはあるものだねー。

勝 :そういうこと。

「私も、ファンクラブでもつくろっかなー」
「そーれ・しちりあーののファンクラブか。それ、いいな」
「ううん、違うの。私のファンクラブだよ」
「は?」
「真子ちゃんファンクラブ♪」
「……」
「クラブ・マコとかどう?」
「違う「クラブ」に聞こえるぞ……」
「きゃははは、そっちかー。クラブ・マコではお酒はでませーん」
「なんか特典あるのか? ケーキ食べ放題とか」
「このカワイイ真子ちゃんと、お話できるの♪」
「じゃあ、パス」
「勝さんは特別会員ね。なんと今なら初年度年会費無料!」
「遠慮する」
「特別会員には、特別特典もあるんだ♪」
「なんだ?」
「特別会員は、真子様の招集がかかったら1時間以内に集まるの♪」
「デメリットしかないな。あ、望ちゃんファンクラブ作ろうぜ」
「だ、ダメよ、そんなの」
「っていうかさ、既にありそうだよな。望ちゃん目当てのお客さんと
 か、いるんじゃないか。オレみたいのが」
「勝さんは真子ちゃん目当てじゃん」
「違うだろ。あ、今のはすっごい参考になったわ」
「なになに?」
「ファンクラブっていうのは、結局は商品の魅力なんだな、って。魅
 力があれば、自然発生的にファンクラブができるんだ」
「そーだよねー」
「だから、望ちゃんなら自然発生的にファンクラブができるけど、真
 子だと自分で作らないとできないんだな……」
「そーそー、魅力がないから……違うもん! 意地悪!」

次号に続きます!

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◆今日のまとめ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●セグメンテーションを行うには、顧客データベースが有用。色々な
 切り口を並べて、神経衰弱しよう!

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━特別編Vol.225(累計1001) 2013/03/25

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●将来の顧客像を考え、「未来」に最適化しよう!

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆まずは、前号の復習から!
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*本編の「今の時間」は、年が明けた1月2日の朝です。

1月1日、真子と勝はほぼ1日中マーケティングレッスンに明け暮れ
た。翌1月2日の朝、朝食を取り終え……

勝・真子がレッスンを続けている朝食会場に残っているのは勝と真子
だけになる。

旅館の従業員がお皿を片付けるガチャガチャという音が響く。2人の
食器も、従業員が片付けていく。

「すみません、お話中失礼いたします……」
「あ、いえ、こちらこそお仕事のジャマしちゃって……」
「いえいえ、どうぞごゆっくりされてくださいね。すみません、お皿
 だけ片付けさせてください」
「あ、はい、どうぞ……えっと……はい、っと」
「あ、すみません、お手伝いいただいてしまいまして……」

一通り片付けが終わると、朝食会場に残されたのは2人だけとなる。

「チェックアウトまで、まだちょっと時間があるよな」
「朝ご飯、早かったからね。勝さん、よく起きられたね、きゃはは」
「あんまり寝てない。まあいつものことだけど。まだ時間あるな?」
「うん、だいじょーぶ。やることないし」
「オレ、温泉もう1回入ろうと思ってたんだけどな……」
「え? 勝さん、朝風呂なんて趣味あったの?」
「いや、ないけど、正月くらいは温泉を楽しんでみるのもいいかな、
 と珍しく思って、さ」
「勝さん、お風呂早いから、どーせ10分とかでしょ、きゃははは」
「そうそう。カラスの行水ってヤツ」
「真子も温泉はいろっかなー」
「オマエも、オレと同じで早風呂だよな」
「でも女の子はそのあと、色々支度があ、る、の♪」
「じゃあこの部分を終えたら、朝風呂にするか」
「うん♪」

真子:まずは復習だよね。

真子がノートを広げ、勝に見せる。

○セグメンテーションの「括って広げる3ステップ」

ステップ1:顧客像の具体化
ステップ2:ニーズの普遍化
ステップ3:ニーズで人を括る

○セグメンテーションで「括る」ための切り口

切り口1:使い方・利用場面
・価値は使い方に現れる。逆に使い方を見ればニーズがわかる!

切り口2:困りごと
・どんなことに困っているのか、困りごとが同じならニーズが同じ!

切り口3:体質
・肌質・髪質・アルコールへの耐性などでニーズが違う!

切り口4:所有資源
・お金・時間・エネルギー・車などの持ち物などでニーズが違う!

切り口5:こだわり・マニアレベル
・ビギナーとマニアでニーズが違う!

切り口6:購買履歴
・何を買ったかで、直接の購買行動がわかる!

切り口7:競合
・どの競合商品を買うかに、ニーズが現れる

切り口8:バイヤー・ユーザー
・「買う人」と「使う人」が違う場合は、それぞれにニーズが違う!

切り口9:ありたい姿
・「ありたい姿」の違いは、ベネフィットの違いそのものとなる

切り口10:属性
・BtoCなら性別・年齢など、BtoBなら業種・企業規模など

真子:それで、これを組み合わせて考えていくんだよね。表計算ソフ
   トだとこんなイメージで……

      切り口1 切り口2 切り口3 …… 切り口10
顧客1
顧客2
顧客3
顧客4
顧客5
 ・
 ・
顧客1000

勝 :そうそう。顧客データベースにある情報を使っていくんだ。

真子:それで、この上で「括って広げる3ステップ」をやる! デー
   タを括ったり、組み合わせたりして。

勝 :そう。だから、顧客をデータ化することができるようなビジネ
   スについては、これをぜひやったほうがいい。

真子:うん! ねー「Excelで顧客データ作り」なんて本を書い
   たら? っていうか、勝さん、書いてよぉ。

勝 :ニッチなニーズはありそうだけどな……それこそ「括る」こと
   はできるけど、ターゲットを「広げる」のが難しいな。

真子:そっかあ……まあ真子はこうやって教えてもらえるからいいか

勝 :さすがに、本っていうより、コンサルの領域になるな。それこ
   そ、会社によってニーズが違うからな……

真子:そりゃそーか……実際どうやるか、ってところだもんね。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆「セグメンテーションの時間軸」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

勝 :じゃあ、次は「セグメンテーションの時間軸」。なあ、真子は
   10年後に、何歳年を取ってる?

真子:やだー、レディに年を訊くなんて、だーめ♪ 

勝 :年なんて訊いてないだろ。10年後に何歳年取ってる、って訊
   いてるだけだろうが。

真子:え? 10年後? えっと、10歳、年取ってる、でいいの?

勝 :せーかい!! すごいじゃん!! そう、真子は10年後には
   10歳、年を取ってる!! どーだ、すげーだろ?

真子:きゃははは、そーだねー……って、バカにしてるぅ!

勝 :いや、これものすごく重要なことなんだけどな。

真子:え?

勝 :だから真子の会社がやってるイタリアンレストラン、そーれ・
   しちりあーの既存顧客は、10年後、何歳年を取ってる?

真子:だから10歳年取ってる、ってば。

勝 :じゃあ、10年後も、その人たちがターゲットでいいのか?

真子:え……あ!! そうか、今25歳の女性も、10年後は35歳
   になるんだ!

勝 :そうなると、どうなる?

真子:えっとね、ご結婚されたり、お子さんができるかも……

勝 :仮に25歳のお客様を顧客ターゲットにしているとしてだな、
   10年後は35歳になるだろ?

真子:そっか、10歳年を取るから、ニーズが変わるんだぁ!

勝 :お客様がビジネスパーソンの場合は?

真子:退職したり、転勤したりしてるかも……あ、昇進してる、って
   こともあるね。

勝 :そうだよな。BtoBでもそうだぜ。顧客企業が大きくなった
   りしてるかもしれない。

真子:あ、確かに大きくなれば、ニーズが変わるかもしれないね。

勝 :税理士さんなんかだと、顧客企業が大きくなって上場準備、と
   かってなるとすべきことが全然変わってくるよな。

真子:あ、そーだね。うちの会社もそうなるんだ♪

勝 :問題は、その10年後、どうするか。それが「セグメンテーシ
   ョンの時間軸」っていうこと。

真子:あれ? これ、なんか聞いたことあるかも……

勝 :売れたま!でも何回かやってるだろ。最近だと……これか。赤
   ちゃん本舗の事例。2012年6月14日号。

勝がノートパソコンを操作し、真子に見せる。「ちょっとノートに抜
粋してみろ」と勝が言うと、真子は「はーい」とまとめ始める。

しばらくすると、真子が「できた!」と顔を上げ、ノートを見せる。

◇10年後の2つの選択:新陳代謝型 と 伴走型

現在のターゲットが25歳女性だと、10年後には35歳になる!

「10年後」の顧客ターゲットは、2通りになる。

1)新陳代謝型:今と同じ25歳女性が顧客となる

今の25歳女性は35歳となって自社商品を「卒業」し、新たに25
歳となった方を顧客とする。

   今の20歳     今の25歳     今の30歳
              ↑↑
   将来の顧客     現在の顧客     卒業した顧客
   「新入生」     「在学生」     「卒業生」

「在学生」のニーズに応えつつ、その先を見越して、「新入生」のニ
ーズを探り続ける!

2)伴走型:今の25歳の人と一緒に歳を取り、35歳女性が顧客

今の25歳女性は35歳となっているので、それに合わせて自社の商
品構成などを変えていく。

顧客の好みなどを記録する、データベースマーケティングが有効。経
年変化を探る!

勝 :オッケー、そういうこと。この「時間軸」の話は、セグメンテ
   ーションの盲点になってるんだよな。

真子:確かに、あんまり聞かないよねー。

勝 :10年後の顧客像によって、今やることが全然違うよな。

真子:うん。新陳代謝型なら、将来の顧客を狙い続けるし、伴奏型な
   ら、今の顧客を追い続ける。

勝 :本来は1年後でも違うはずだ。

真子:1年で1歳は年を取るわけだからね……微妙に変わってるはず
   だよね。

勝 :それが積み重なると、結構大きな変化になる。特に立地商売の
   小売なんかそうだぜ。

真子:そ、そうなの? うちもある意味で立地商売だけど……

勝 :そう。店を作るときは商圏調査とかしてそれに合わせるだろ?
   でもさ、10年たつと……

真子:あ! 商圏内の人たちが変わってるんだ! 10歳年を取るの
   もあるし、引っ越したりしてるかも!

勝 :そう。それを無視して、まさに「十年一日」で同じことやって
   ると、商圏内の顧客と合わなくなってくる。

真子:なーるほどねー。まさに「十年一日」だー、きゃははは。

勝 :だから、少なくとも5年に1回くらいはきちんと商圏調査とか
   やって、ズレを減らしていかないとな。

真子:うん。ねー、新陳代謝型と伴奏型と、どっちがいーの?

勝 :それは戦略の違いだから、良い悪いじゃなくて、「決め」の問
   題だな。戦略としてどっちを選ぶか。

真子:そっかー。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆1)新陳代謝型の顧客戦略
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

勝 :じゃあまずは、新陳代謝型の方からやっていくか。この記事を
   読んでみ。

勝が例によってノートパソコンを操作し、反転して真子に見せる。

-----------< 記事引用 >------------

◇「ワールドが、40代を中心とする「大人の女性」を狙った新型店
 を立ち上げた。相模原市に9月開業したイトーヨーカ堂のショッピ
 ングセンター(SC)「アリオ橋本」に初出店した「スマーティ
 ー」だ」

◇「郊外SCは多彩なブランドやショップを集める。だが、若いころ
 からファッションビルなどでの買い物に慣れた層にはデザインや
 質、感度などの面で物足りないものも多いとの読みだ」

◇「従来のSCでは手薄だった海外買い付けの遊び心のある商品を充
 実させ、セレクト感を強めたことだ。実際、独自企画の「スマーテ
 ィー」ブランドの商品構成比は3割。残る7割は外部から買い付け
 た衣料とストールなどの服飾雑貨、クッションや自転車関連などの
 生活雑貨が占める」

◇「インポート商品の目玉の一つとしてそろえるのがビートルズの公
 認グッズだ。キーホルダーや目覚まし時計などのほか、直筆サイン
 など限定品も扱う」

2010/11/24, 日経MJ P.4

-----------< 記事引用 >------------

真子:なんでビートルズなんだろうね? 男性狙いかな?

勝 :それもあるだろうけど、ビートルズのピークは60年代後半。
   40代後半くらいまではビートルズの影響を受けてるよな。

真子:そっかー。

勝 :昔の40代とか50代だと演歌ファンかもしれないけど、今の
   40代なんかは、ディスコ世代だからな。

真子:なるほどねー。今の40代は、昔の40代とは違うんだー。

勝 :それ!! 今の40代は、昔の40代とは違う!!

真子:あ、洋服なんかも、その世代はセレクトショップで買ってたか
   ら、「セレクト感を強めた」んだ!

勝 :そうだろうな。セレクトショップの代表格の1つ、ユナイテッ
   ドアローズが頭角を現してきたのが90年代だからな。

真子:じゃあ40代はモロそこに当たってるんだ。

勝 :そういうこと。だから、40代を狙う、って言っても「中年女
   性」という昔の感覚だと、ズレが生じる。

真子:そうか、その「ズレ」が時間軸によってできちゃうんだ!

勝 :そうそう。当たり前だけど、「今の40代」のニーズを捉える
   必要がある。

真子:そのためにはどーすればいいの?

勝 :だから、昔、どこで何を買ってたか、とか考える。セレクトシ
   ョップとかファッションビルで買ってたわけだ。

真子:なるほどねー。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆2)伴走型の顧客戦略
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

勝 :じゃあ次は、伴走型、の方な。その典型例がこれなんだよな。

勝が再びノートパソコンを真子に見せる。

-----------< 記事引用 >------------

◇「「無印良品」を展開する良品計画は旗艦店の有楽町店(東京・千
 代田)を9月に改装する。客層の平均年齢が上がる中で子連れ客の
 取り込みを強化するのが狙いで、子供服売り場を1・5倍に広げ、
 遊び場となるスペースも刷新し3倍強に拡張する」

◇「有楽町店2階の奥にある子供服売り場には、長椅子で囲われた約
 9平方メートルの小さな「遊び場」がある。子供が靴を脱いで遊べ
 るスペースで、同店で買える絵本やおもちゃが置いてある。商品棚
 の間にひっそりとあるが、買い物中の休憩所として、平日、休日問
 わず子連れ客でごった返す。9月1日の改装ではこのスペースを3
 倍強に広げる計画だ。

◇「子供服売り場を改装する背景には、無印良品自体の客層の変化が
 ある。同社では、顧客の平均年齢が「年々1歳ずつ上がっている」
 といい、現在は35歳で女性客が中心。これに合わせて子育て関連
 部門が伸長している。たとえば、2012年2月期に3年ぶりに売
 上高が前の期を上回った衣服部門は、子供服がけん引役となった。

2012/07/11 日経MJ P.6

-----------< 記事引用 >------------

真子:へー、お客様の平均年齢が、毎年1歳ずつ上がってるんだ!

勝 :すごいよな。まさに、お客様が毎年1歳ずつ年取ってる。

真子:じゃあ、それに合わせていけばいいんだよね。

勝 :そうなるな。予測しやすいっていえば予測しやすいよな。

真子:うん。お子さんも毎年1つずつ年を取るから、わかりやすいよ
   ね、来年は小学生になるからランドセルが売れる、とか。

勝 :そうそう。さらに言えば、変化の先取りもやりやすい。子供の
   遊び場を3倍にする、っていうのもそれなんだろうな。

真子:そっか、予測しやすくければ先回りできるんだ!

勝 :そういうこと。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆現在最適と未来最適:未来に最適化する
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

勝 :顧客は常に変わってるから、どうやって「入れ替える」か、っ
   ていうのが問題になることもある。

勝が「これがその例の1つ」と言いながら真子にパソコンを向ける。

-----------< 記事引用 >------------

京王百貨店社長 林静男氏

◇「――秋に向け大改装を段階的に進めている。
 「狙いの1つは現在の中心顧客(60代以上)より若い、40代後
 半~50代という次代の顧客層の獲得にある。例えば『美』や『健
 康』に焦点を当てる。この世代の生活感にあった提案をする」」

◇「1990年代後半から戦略的に顧客にしてきたシニア層と今のシ
 ニア層は異なる。団塊世代が加わり、より行動的だ」

2013/01/21 日経MJ P.7

◇京王百貨店は新宿店(東京・新宿)主力の婦人服売り場を全面改装
 する。3フロアを主要なターゲットの世代で分類。現在の主要顧客
 層よりも若い30~50代向けの売り場を広げる。

◇2~4階を改装する。現在は3フロアのうち半分程度が55歳以上
 に向けた売り場になっている。これを2階は30~40代前半、3
 階を45~50代前半、4階を55歳以上とフロアごとにターゲッ
 ト層を分ける。

◇「同じフロアでも顧客層が異なるテナントが混在、若い世代の足が
 遠のく一因になっていた」

2012/11/09 日経MJ P.5

-----------< 記事引用 >------------

真子:確かに、京王百貨店って、シニアに強いので有名だよね。エス
   カレーターがゆっくり、だとか。

勝 :そうそう。でも「昔のシニア」と「今のシニア」が違う、って
   いうのが社長の認識なんだよな。実際違うだろ。

真子:どっか、だから同じ「シニア顧客を取る」って言っても、その
   「中身」は全然違ってくるんだ。

勝 :そういうこと。京王百貨店は一見シニアを狙う伴走型に見える
   けど、実は60代中心の新陳代謝型なのかもしれないな。

真子:あ……そうかも。そっか、だから「昔のシニアと今のシニアは
   違う」っていうことになるんだ。

勝 :まあさすがにシニアの場合は、80代まで「伴走」するのは難
   しいからな。色々な理由で。

真子:あ、そうだよね……

勝 :だから、いかに「10年後」を考えて、それに最適化するか、
   っていうのがポイントになる。

真子:へ?

勝 :いや、だからターゲティングっていうと、「今」の分析しかし
   ないけど、「今」じゃなくて「未来」に最適化する。

真子:わっかりませーん。

勝 :あのさ、10年後にはその10年後に合った姿を自社がしてい
   る必要があるだろ?

真子:はーい。

勝 :でも10年後にいきなり変わることはできないから、今から少
   しずつ変わっていくことになるよな?

真子:はーい。

勝 :だからそういうことだよ。「今」に最適化しないで「1年後」
   に向けて「1年間」かけて最適化すればちょうどいいだろ。

真子:え?

勝 :だからさ、伴走型なら、来年はお客様が1歳年を取るのに合わ
   せて1年間かけて変えていく。

真子:あ、わかった!! 今の顧客に合わせるんじゃなくて、未来の
   顧客に合わせるんだ! 変えるのに時間がかかるから!

勝 :そう。「部分最適と全体最適」と同じような話で、「現在最適
   と未来最適」がある。もちろん、未来に最適化する。

真子:なーるほどぉ。

勝 :京王百貨店の場合は、10年後に60代を取るためには、今か
   ら50代を取ろう、ってフロア構成にしてるんだろ。

真子:あー、そういうことかあ……「未来最適」なんて、勝さんにし
   ては珍しくカッコイー言葉だ。

勝 :うるせーよ。別にオレは難しい言葉も使えるんだよ。真子には
   使わないだけで、さ。ターゲットに合わせてるんだ。

真子:やだー、勝さんのターゲットは真子ちゃんなんだー。狙われちゃ
   ったー♪

勝 :うるせー。とにかく、だから5年後、10年後の顧客像を考え
   て、未来に最適化する。「今」に最適化しない。

真子:はーい、わかりました。質問がありまーす。

勝 :どーぞ。

真子:今気づいちゃったんだけどさー、このシリーズって「年齢で切
   るな」って話じゃなかったっけ? 今ずっと年齢の話だけど?

勝 :やっと気づいたか。

真子:へ?

勝 :だから、年齢で切ると、この問題が起きるんだよ。若返りをど
   うするとか、さ。

真子:え? じゃあ年代で切らないってこと?

勝 :年代を使ってもいいけど、それと同様の重みを持った他の切り
   口も必要だよな。

真子:例えば?

勝 :例えば、さっきの良品計画の例だと、子供の有無とかさ。

真子:あ、そっか。子供服売り場を増やすんだから、当然そうか。

勝 :京王百貨店だと、「体がどれくらい動くか」とか「年間何回旅
   行に行くか」とか、あとは服の好みとか。

真子:あ、なるほど。でも、服の好みなんかは、年代によって、って
   いう時間軸の影響を受けちゃうよね。

勝 :服はそうかもしれないけど、売れたま!なんかは性別・年代関
   係ないだろ? なんか1000号も出してるみたいだけどさ。

真子:あ、そっか。そーだね。売れたま!のターゲットは、このカワ
   イイ真子ちゃんが好きな人、だもんね。みんなニーズ同じ♪

勝 :違うだろ! ってツッコむのは疲れるわ……読者さんは、マー
   ケティングとか戦略に興味のある人、だよな。

真子:うん。でもさー、それじゃ「どんな人」に落ちないよね?

勝 :お、鋭いじゃないか。だから、そこから「大企業のマーケティ
   ング部門のリーダー」とか「中堅企業の経営層」ってなる。

真子:あ、それだと確かに「10年後」も同じだね。

勝 :だろ? だから、年代で切ってもいいけど、他の切り口を組み
   合わせることで、「若返り」なんかの問題を回避しやすくなる

真子:なるほどねー。

勝 :厳密に言えば、どんな顧客セグメンテーションをしようと、時
   間がたてば顧客は変わる。

真子:だから、未来に最適化するんだね。

勝 :そう。ターゲット、って「的」だよな。「的は動いている」
   んだよ。売多勝名言集、として書いておけ。

真子:なーるほどぉ。「的は動いている」、かあ……お客様は常に変
   わっている、ってことだ。

「ね、ね、勝さんのターゲットである真子ちゃんも動いてるよ」
「は?」
「だから、勝さんも急いだ方がいいんじゃないかなあ……」
「確かにオマエは、中堅企業の経営者って意味では、ウチの会社のタ
 ーゲットではあるが、どう動いてるんだ?」
「会社なんかどーでもいーの」
「じゃあ、なんでオマエがオレのターゲットなんだよ」
「もー知らない」
「あ、わかった」
「え? や、やだあ……わかっちゃった?」
「真子は落ち着きがないから、確かに「動いてる的」だな……」
「え? な、なにそれー……何よ、もー、べー、だ」
「じゃあ風呂に行くか」
「あ、うん、そーだねー。朝日が差し込む温泉だ♪」

勝はノートパソコンをぱたりと閉じ、マウスなどをパソコンバッグに
入れていく。真子は、ノートに書き込んでいたかと思うと、もう一度
見て満足そうにうなずき、2人とも一緒に立ち上がった。

「よし、じゃあ温泉だ!」
「うん! 朝風呂なんてぜーたくだねー!」
「へー、真子ちゃんと一緒にいるのが最高のぜ、い、た、く、とか言
 うのかと思った」
「やっだー、やっぱりそう思ってくれてるんだー。嬉しいな♪」
「全く思ってない。とにかく風呂行こうぜ」
「うん♪」

次号に続きます!

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◆今日のまとめ
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●セグメンテーションの「時間軸」を考えよう。10年後の顧客像を
 考え、それに合わせて自分も動いていこう。未来に最適化しよう!

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━特別編Vol.226(累計1002) 2013/03/28

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●顧客セグメントに合わせて、「売り物」を変えていこう!

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◆まずは、前号の復習から!
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*本編の「今の時間」は、年が明けた1月2日の朝です。

1月1日、真子と勝はほぼ1日中マーケティングレッスンに明け暮れ
た。翌1月2日の朝、朝食を取り終え、朝の温泉を楽しみ……

勝と真子は、温泉に入ったあと、身支度を調えて、チェックアウトの
時間にロビーに集合した。

親戚一同のほとんどは旅館に残るが、勝と真子は一足早く帰京する。
親戚が真子たちを見送りに集まる。

「2人とも、もう帰っちゃうのかね。ゆっくりしていけばいいのに」
「いえいえ、ナントカ暇なし、ってヤツで、すみません……」
「2人とも元気でね」
「色々とお世話になりましたぁ!」
「はい、では良いお年を」
「何が良いお年を、だよ。勝ちゃんは正月早々、何言ってるんだい」
「だって、年末までもう会わないかもしれないじゃないですか」
「この子は理屈っぽいねぇ。誰の血をひいたんだか……」
「きゃははは、そーだよ勝さん、理屈っぽいよ」
「じゃあ2人とも東京で仲良くね」
「はーい」
「真子と仲良くなんてしませんよ」
「何言ってんだい、正月も2人でずっとべったりだったじゃないか」
「きゃははは、そーそー。2人でべったりでしたー」
「話してただけで、全然べったりなんか……あ、行かないと電車が」
「じゃあ、気をつけて帰るんだよ」
「はい、皆さんもゆっくりされてくださいね」

2人が荷物を抱えて駅に着いたときには、既に電車が2人を待ってい
た。指定席について荷物を網棚に載せ、並んで座った瞬間に、発車ベ
ルが鳴り響く。すぐに電車がゆっくりと動き出した。

「またギリギリか……オマエと一緒だといつもそーだ」
「えー、真子だけのせーじゃないよー」
「まあともかく続きをやるか。時間が無い」
「うん」

2人は、荷物から大事そうにパソコンやノートを取り出し、座席の狭
いテーブルをやりくりして、スペースを作った。

真子:じゃあいつも通り、復習から♪ 前号では「セグメンテーショ
   ンの時間軸」について、考えました!

勝 :どういうことだっけ?

真子:10年後の顧客像を考えて、それに合わせて自分たちも変わっ
   ていく!

◇10年後の2つの選択:新陳代謝型 と 伴走型

現在のターゲットが25歳女性だと、10年後には35歳になる!

「10年後」の顧客ターゲットは、2通りになる。

1)新陳代謝型:今と同じ25歳女性が顧客となる

今の25歳女性は35歳となって自社商品を「卒業」し、新たに25
歳となった方を顧客とする。

   今の20歳     今の25歳     今の30歳
              ↑↑
   将来の顧客     現在の顧客     卒業した顧客
   「新入生」     「在学生」     「卒業生」

「在学生」のニーズに応えつつ、その先を見越して、「新入生」のニ
ーズを探り続ける!

2)伴走型:今の25歳の人と一緒に歳を取り、35歳女性が顧客

今の25歳女性は35歳となっているので、それに合わせて自社の商
品構成などを変えていく。

顧客の好みなどを記録する、データベースマーケティングが有効。経
年変化を探る!

勝 :そうだな。どちらを選ぶかによって、やることが変わる。

真子:うん! 自称「売多勝名言集」は「的は動いている」。あ、的
   ってお客様のことね。お客様は常に変わっている!

勝 :そうそう。少しずつお客様が変わっているから、それに敏感に
   なって、自分も変えていく、ってこと。

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◆セグメンテーション 実戦編!
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勝 :で、ここからは、セグメンテーションを実際に「売り物」とか
   「売り方」っていう4Pにどう使うか、っていうのを考えよう

真子:あ、セグメンテーション 実戦編、って感じ?

勝 :そうそう。分けるためにセグメンテーションするんじゃなくて
   売れるようにするためにセグメンテーションするわけだからな

真子:じゃあホントはこっからが始まりってこと?

勝 :いや、実際に大変っていうか、難しいのは、やっぱりセグメン
   テーションの「括り方」だと思う。

真子:え? でも実行しなきゃ意味ないよね?

勝 :もちろんそうだけど、セグメンテーションが間違ってたら、そ
   の「実行」の意味がないだろ。

真子:あ、そっか。

勝 :セグメンテーションがうまく括れれば、そのあとの「実戦」は
   直線的に、論理的に「やればいいだけ」ってなるんだ。

真子:な、なんで?

勝 :だって、セグメンテーションの切り口がわかってる、ってこと
   は、お客様が見えてる、ってことだぜ?

真子:あ、うん。お客様の「神経衰弱」ができてるわけだから。

勝 :だよな? 「お客様を個別具体化して神経衰弱」できてる、っ
   てことはそのニーズに真っ向から応えていけばいい。

真子:あ、そっか。ニーズがわかっているんだから、ひたすら実行し
   ていけばいいんだ。

勝 :そういうこと。真子の会社がやってるイタリアンレストラン、
   そーれ・しちりあーの、なら?

真子:お客様のニーズが「大食い」なら、「大食いメニュー」を考え
   ればいい、とか、だよね。

勝 :そうそう。うまく括れていれば「そんなことやって当たり前じ
   ゃん」っていう感じになるんだよな。

真子:そこに行き着くまでの「括り方」が難しい、ってことか……

勝 :だから色んな切り口を紹介したわけだ。やってみて、しっくり
   来る切り口で括ってみる。

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◆セグメンテーションと「売り物」:お客様は自分の鏡
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勝 :じゃあ、まずはセグメンテーションと「売り物」から考えてい
   こうか。

真子:はーい。

勝 :狙ったセグメントのニーズに合わせて「売り物」を変えれば、
   当然その売り物にあったお客様に人気になるよな。

真子:そりゃそーだね。

勝がパソコンを操作するのを真子が先んじて覗き込む。

-----------< 記事引用 >------------

◇「タリーズコーヒージャパンが横浜市の駅ビルに開業した女性向け
 の新型店が好調だ」

◇「女性の来店比率は8割で、通常のタリーズの6割を大きく上回
 る。店舗面積は約120平方メートルで客席は55。全体を白で統
 一し、所々に茶色を配色した。いすやソファも白で、座面にはクッ
 ションを施して居心地を良くした」

◇「女性をターゲットにするこの店が力を入れたのはケーキの販売。
 入り口近くに大型のショーケースを配し、「ニューヨークチーズケ
 ーキ」(360円)や「モンブランタルト」(380円)など約
 10種類の品を目の高さに陳列する。通常の店がパンやサンドイッ
 チを中心に並べているのとは対照的で、一見するとケーキ専門店の
 ようだ」

◇「午後2時からはドリンク類と、ロールケーキやチーズケーキなど
 4種類の中から1つを選べるセット「スイーツプレート」(680
 円)を販売。お茶の時間をゆっくり楽しむ女性客の取り込みを図
 る」

◇「2011年11~12月は、ケーキやパフェなどデザート商品の
 売り上げが通常店舗の約3.5倍に達した。店の売り上げ全体に占
 める構成比も2倍近くになり、当初期待した通りに客単価の引き上
 げにつながっている」

2012/02/06 日経MJ P.15

-----------< 記事引用 >------------

真子:……なんかこれ、そーれ・しちりあーのと似てる……ドピオド
   ピオとか、うちの方が先だもーん。

勝 :妙なライバル意識燃やしてどーするよ。っていうか、同じター
   ゲットを狙えば、やることは似てくるだろ。

真子:そりゃそっか。

勝 :ともかく、「売り物」を変えれば、やっぱりその「売り物」が
   好きな人がついてくる。「顧客と売り物の一貫性」な。

真子:そりゃそーだね。

勝 :だから、今のお客様を見れば、今の「売り物」が好きな人がわ
   かる、とも言える。「お客様は、自分の鏡」だからな。

真子:なーるほどぉ……「お客様は、自分の鏡」なんだ。

勝 :タリーズは、徹底してスイーツ強化したんだろ? 内装も変え
   て……そしたら、デザートの売上が3.5倍、と。

真子:わかりやすいねー。

勝 :単純に、「狙いたい顧客層に合わせて、売り物を変えよう」っ
   てことだけどな。言うのは簡単だけどさ。

真子:そうなんだよねー。こういうのって読んでる分には簡単そうに
   見えるけど、やってる人たちは大変なのよー。

勝 :さっきの「そんなことやって当たり前じゃん」ってまさにそれ
   で、「当たり前に見える」ってことは、うまく括れてる。

真子:あ、なるほどねー。ニーズがわかってるから、当たり前に見え
   るんだ!

勝 :そうそう。逆に、若い男性を取ろうとしたら、こうなるぜ。

-----------< 記事引用 >------------

◇「喫茶店の老舗、銀座ルノアール。40代前後の男性会社員がたば
 ことコーヒーでくつろぐ場所、という印象が強い。しかし最近、客
 層に変化がみえる。全来店客の2~3割を20~30代が占めると
 いうのだ」

◇「「コーヒー1杯で500円程度という値段ではハードルが高いよ
 うで」(猪狩安往専務)、従来は20~30歳の来店はほとんどな
 かった。しかし109店のほぼすべてに無線LANと電源を配備し
 たところ、様変わりした」

◇「新たな来店客の多くは「電子端末を使いこなすノマド」(猪狩専
 務)。彼らに働く環境を整備したところ、これまで取り込みに苦労
 した若年層の来店動機を刺激することに成功した」

2011/08/31, 日経MJ P.1

-----------< 記事引用 >------------

勝 :いわゆる「ノマド」ってオレみたいのな。パソコン持ち歩いて
   外で仕事するようなタイプの人たち。

真子:へっへー、電源を増やすとか考えたのも私の方が早いもーん。

勝 :わかったよ。ともかく、メニューは変えなくても、電源と無線
   LANっていう「売り物」で、顧客層を追加できたわけだ。

真子:これもわかりやすいね。

勝 :お客さんって、敏感なんだよ。今でこそ電源がある店は充実し
   てきたけど、昔は探すのが大変で、電源難民が結構いた。

真子:勝さんはどうしてたの?

勝 :あの店のあの席は電源が使える、とか、そういうことをちゃん
   と覚えてる。

真子:なーるほどぉ。お客様にも「来る理由」があるってことだ。

勝 :だから「お客様は、自分の鏡」なんだってば。

真子:あれ、勝さん、オフィスあるじゃん。結構広いのに。会社で仕
   事しなよ。

勝 :そーだけど、1人で籠もってると気分転換したくなるんだよ。

真子:じゃあ、うちの店に来なよ。話相手になってあ、げ、る♪

勝 :オマエに絡まれるからイヤだ。仕事にならないだろうが。

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◆セグメントに合わせて「売り物」と「メッセージ」を変えよう!
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勝 :いわゆるセグメンテーション、つまり複数通りのお客様に合わ
   せて打ち手を変えるっていう手もある。

真子:うん。っていうか、それがセグメンテーションらしい、って感
   じがするよね。

勝 :真子、プラネタリウムって行ったことある?

真子:うん。確か小学生のときに社会科見学かなんかで行ったかな?

勝 :で?

真子:ずーっと寝てた!! きゃははは。

勝 :まあオマエの場合はそーだろうな。最近は、デートスポットら
   しいぜ。

真子:え??

勝がノートパソコンを操作するのを真子はじっと眺めている。

-----------< 記事引用 >------------

◇「複写機大手のコニカミノルタホールディングスが東京・池袋で運
 営するプラネタリウム「満天」の入場者がこのほど300万人を突
 破した。2004年3月のオープンから9年で達成」

◇「星空を再現するデジタル機器の進化だけでなく、娯楽性の高い番
 組放映や芳香の自動発生装置を使った「癒やし」のプログラム導入
 など、若い男女を意識した手法が奏功した」

◇「金環日食のあった12年には過去最高の43万9000人が来場
 した。不況下の「安近短」ニーズに加え「子どもの学習施設として
 の位置づけが一般的だったプラネタリウムのデートスポットとして
 の役割を重視した結果」(同社)という」

◇「同社の調査によると、来場者の6割前後を「カップル」が占め、
 「家族連れ」は2割前後で推移している」

2013/03/20 日経MJ P.9

-----------< 記事引用 >------------

勝 :これ、池袋のサンシャインにあるやつな。昔からあったけど、
   今はコニカミノルタがやってるんだな。

真子:へー、カップルが6割なんだー

勝 :必然的に暗くなるから、デートにも向いてるよな。2人だけの
   空間が作りやすい。うまく「強み」を活かしてるな。

真子:あー、確かにぃ。お勉強ちっくだと、寝ちゃうよね。

勝 :「こと座のベガ」は……、とかな。

真子:何それ?

勝 :覚えてないのかよ、織姫様の星だよ。夏の大三角形を作る星の
   1つ。彦星様がわし座のアルタイル、だろ。

真子:?? だからそーゆーお勉強はイヤだってばー。

勝 :っていう話なんだろうな。今なんかは、スキマスイッチとか、
   そういうプログラム*をやってるみたいだぜ。

http://ow.ly/jusN2
(満点/池袋サンシャインシティHP)

真子:ホントだ! お勉強じゃないなら行きたい!

勝 :この「満点」のHP、きちんとセグメントごとにメッセージを
   変えてるぜ。

-----------< HP引用 >------------

カップルで

プラネタリウムで星空体験をしたあとは、展望台で実際の夜景を眺め
るロマンチックなデートはいかが?

友達と

プラネタリウム“満天”と水族館のおトクなセット券を使って、星空
と海の生き物をどっちも楽しんじゃおう!

家族で

雨の日でも元気いっぱいなお子様には、屋内で楽しめるプラネタリウ
ムやナンジャタウンがおすすめ!

http://www.planetarium.konicaminolta.jp/manten/introduction/

-----------< HP引用 >------------

真子:あ、そっか、サンシャインってサンシャイン60の展望台とか
   テーマパークのナンジャタウンとか、色々あるもんね。

勝 :あそこの展望台も、デートスポットにはいいもんな。夜景がキ
   レイだしあ。

真子:えー、誰と行ってるのよー!

勝 :1人でだよ! とにかく、サンシャインの遊び場の「お勧めの
   組み合わせ」を、セグメントごとに変えてるだろ?

真子:ホント、セグメンテーションだ!

勝 :各セグメントの「使い方」は? 「価値は使い方に現れる」ぞ

真子:カップルが「デート」で、ファミリーが「勉強になる娯楽」っ
   て感じじゃないかな?

勝 :そうそう、それがベネフィット。

真子:ねー、この「友達と」ってなんだろーね?

勝 :真子が恵利ちゃんとかと行くんじゃないのか? 女友達と、ご
   飯の帰りに、とか。

真子:あ、女子会ニーズか。

勝 :あとは、中学生のデートとか、「友達以上、恋人未満」の関係
   とか、かもな。

真子:あ、初デート、みたいな? 初々しいねー。

勝 :まあさすがにそれはHPには書きづらいだろうけどな

真子:きゃははは、そーだね! だからあえて「友達と」って、ボヤ
   かしてるのかも!

勝 :で、そのベネフィットに合わせたプログラムになってる。これ
   見てみ。今やってるプログラムなんだけど……

 ○「スキマスイッチ 宇宙の奏」 カップルにおすすめ!
 ○「ブラックホール」 ファミリーにおすすめ!
 ○「フィンランド オーロラの詩」 アロマが香る!

http://www.planetarium.konicaminolta.jp/manten/program/

真子:あ、HPにターゲットがはっきり書いてあるんだ!

勝 :そう。それって良いことだとオレは思う。わかりやすいから。

真子:スキマスイッチがカップル向け、ブラックホールがファミリー
   向けか。きっと「ブラックホール」は勉強になるんだろうね。

勝 :まさに「セグメント」によってプログラムっていう「売り物」
   を変えてるわけだ。

真子:あ、さっきの「友達と」って、この「アロマが香る」かも。女
   子会ならわかるような気もする。「癒やし」って感じで。

勝 :そうかもな。とにかく、同じプラネタリウムって「入れ物」で
   も、その中身次第でどうにでもできるよな。

真子:なるほどー。プラネタリウムって「入れ物」だもんね。どんな
   中身にするかは、ターゲット次第、かあ……

勝 :さらに、座席も、カップル向けの工夫があるみたいだぞ……

-----------< HP引用 >------------

肘掛けを上げればデートにぴったりなカップルシートとしてもご利用
いただけます。また床面をほのかに照らすLED照明、プラネタリウム
投映機のライトアップといった、空間演出が、二人のデートを盛り上
げます。

http://www.planetarium.konicaminolta.jp/manten/introduction/

-----------< HP引用 >------------

真子:あー、ホントだー。勝さん、やーらしー!

勝 :やらしくないだろ、この席は親子で来れば、親子シートになる
   んだよ! 肘掛けを上げて、親子で仲良く座れるの!

真子:あ……なるほどぉ!! あ、この電車の席も、ある意味「カッ
   プルシート」だ!

勝 :おい、そんな不吉なことを言うな

真子:じゃあ、この席もカップルらしく、肘掛けをあげて、と……

勝 :誰がカップルだよ。

真子:カップル、って組み合わせ、って意味だもーん。

勝 :ともかく、カップル向けの工夫をすれば、カップルが増える、
   っていうある意味当たり前のことなんだけどな。

真子:「20代男女」とかじゃなくて、「カップル」って括ってるの
   がいーよね。夫婦だってカップルだもんね。

勝 :そう! よく気づいた。この「カップル」「友達」「ファミリ
   ー」って「何で」括ってる?

真子:え? 人じゃないの?

勝 :だからその基準は何だ、って訊いてんだよ。

真子:あ、そっか。えっと……誰と出かけるか?

勝 :お、そうそう。その「誰と出かけるか」は何で決まる?

真子:えっと……あ! 使い方だ! デートとか、家族のお出かけと
   か!!

勝 :そう! 「水族館の使い方」で括ってるんだよな。じゃあ、こ
   のセグメンテーションをまとめてみ。

真子:うん!

今度は勝が真子が書いていくのを眺めている。

真子:やだー、そんなに見ないでよー、は、ず、か、し、い、の♪

勝 :いいから早く書け。

真子が「こんな感じかなー」と言いながらノートを勝に見せる。

     使い方     誰と行くか     ニーズ

カップル デート     恋人・夫婦   2人きりの空間

友達   女子会      女友達     癒やし
     初デート  友達以上・恋人未満? 誘いやすさ?

家族  休日のお出かけ   子供      勉強になる

勝 :お、いい感じだ。各セグメントに合わせてプログラムを作った
   り、カップルシートだったり、アロマだったり、と……

真子:うん、同じプラネタリウムでもセグメントによって「売り物」
   を変えられるんだね!

勝 :過去最高の入場者数になった、っていうのもわかるよな。

真子:うん! セグメンテーションと売り物の一貫性がうまくいった
   んだろうね。

勝 :それも一因だろうな。

「あ……ほら、勝さん、雪だよ!」

車窓から見える風景は、いつの間にか雪景色になっていた。

「うわ、寒いと思ったら……」
「キレイだねー。お正月の雪なんて、ろまんちっく♪」
「何がロマンチックだよ」
「カップルシートにぴったりの景色だねー」
「何がカップルシートだ。でも滑りてーな。いい雪だぞ」
「あ、うん、軽そうな雪だね。転んでも痛くなさそう♪」
「真子が転ぶと、地面の方が痛いだろうな」
「あー、しっつれーねー、もー。じゃ、いつ滑りに行く?」
「へ? 何手帳出してんだ、オマエは」
「え、だって今、誘ってくれたじゃん。いつ滑りに行くの?」
「何が?」
「滑りにいこうぜ、って、今言ってたじゃん。日程決めよーよ」
「誘ってねーよ、滑りたい、って独り言を言っただけだ」
「それで、いつにする? 勝さんの方が忙しいでしょ?」
「だから人の話を聞けよ、オマエは……」
「あ、ほら、夏に恵利と3人で行ったペンションにしよーよ。あそこ
 もともとスキー場なんでしょ? ねー、いつにする?」
「そんな時間はない」
「時間はつくるものだ、っていつも誰かさんが言ってるけど?」
「うるせーよ。じゃあ、恵利ちゃんと望ちゃんが来るなら行くよ」
「やったぁ!! じゃあ日程教えて」
「え?」
「今の聞いたからね。恵利と望ちゃんが来るんなら行くんだよね?
 今から2人に連絡するから、日程教えてよ。合わせるよ」
「ちょ、ちょっと待て、オマエ本気か?」
「勝さんが行こうって言ったんじゃん。恵利と望ちゃん、連れてくれ
 ばいーんでしょ? 多分2人とも来るよ」
「マジかよ……」
「マジかよ、って、今自分で言ったじゃん」
「オマエに対してはホント発言を気をつけないといけないよな……」
「何よー、嬉しいくせにー。それに、たまには遊んだ方がいいよ」
「恵利ちゃんと望ちゃん、両方だからな。片方でも欠けたら行かない
 からな。両方だぞ。真子は来なくてもいいけど」
「絶対行くもん」

勝が苦笑いしながらスケジュール帳を取り出した。

次号に続きます!

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◆今日のまとめ
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●顧客セグメントに合わせて「売り物」を考えよう。セグメンテーシ
 ョンがうまくできていれば、ニーズの違いに合わせるだけ。

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━特別編Vol.227(累計1003) 2013/04/01

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●顧客セグメントの「ニーズの違い」を洗い出し、それに合わせて、
 「売り物」を変えていこう!

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◆まずは、前号の復習から!
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*本編の「今の時間」は、年が明けた1月2日の昼ごろです。

1月1日、真子と勝はほぼ1日中マーケティングレッスンに明け暮れ
た。翌1月2日は、朝の温泉を楽しみ、宿を後にして帰京。

電車の窓からの眺めは、雪景色。窓の枠は、水蒸気でくもる。勝が手
で窓を拭く。

「こーゆー、ゆっくり進む電車もいーね」
「確かに風情はあるよな」
「珍しーじゃん。いつもオマエと一緒じゃなきゃな、とか、心にもな
 いこと言うのにー」
「まー正月くらいは、な」
「やだー、大切なときは二人きりでいたいなんて言われちゃったー」
「そんなことひっとことも言ってねーだろ」
「横にいる人がもっとイケメンだったらなあ……ね、勝さん?」
「全くその通りだ。だからオレはイケメンに席を代わってもらうわ」

勝がノートパソコンを閉じて片付け始めると、真子があわてて「や、
だ、ダメ、う、ウソです、や、やだ……も、もう……」と言いながら
真子が勝のノートパソコンを力を込めて再び開く。

「なんなんだよ、オマエは……」
「だ、だって……勝さんが意地悪するんだもん……」
「オマエの重要なニーズに応えようとしただけだろうが」
「い、意地悪……ね、雪景色、キレイだねー」
「結構降ってるよな。今年は雪、多そうだな……」

窓の外を流れゆく雪景色を黙って眺める2人。正月らしい、ゆっくり
とした時間が流れる。

「このままスキーしに行きたいくらいだな……すげー雪いいぞ」
「あ、行こうよ! きっとふかふかのパウダーだよ!」
「道具がないだろ」
「借りればいーじゃん」
「板はいいけど、自分のブーツは絶対必要」
「だいじょーぶだよ、いこーよー。あ、じゃあ真子がボード教えてあ
 げる! たまにはボードでもやりなよ!」
「オマエに教わるなんて、そんな恐ろしいことないわ」
「大丈夫、やさしく教えてあ、げ、る♪
「オマエに教わったら、絶対ケガするからイヤだ」
「じゃー滑りにいこう、なんて誘わないでよー」
「誘ってないだろ。オマエには独り言も言えないな」
「独り言は、独りでゆーから独り言なんだよー。私に言わないでよー
 本気にするじゃん」
「なんでオマエはそういうところだけ妙に論理的なんだよ……」
「だってー」
「まあとにかく復習からだ」
「はーい」

真子:前号から、セグメンテーション 実戦編! どう実際に使って
   いくか。まずは「セグメンテーションと売り物」から!

勝 :それで、前号の内容は?

真子:プラネタリウム! 池袋・サンシャインのプラネタリウム、
  「満天」は、こういうセグメンテーション!

真子がノートの該当部分を開き、横にいる勝に見せる。

      使い方     誰と行くか     ニーズ

カップル  デート     恋人・夫婦   2人きりの空間

友達    女子会      女友達     癒やし
      初デート  友達以上・恋人未満? 誘いやすさ?

家族   休日のお出かけ   子供      勉強になる

勝 :そうだな。「セグメンテーションと売り物」っていう意味では
   どうなってる?

真子:プラネタリウムの「売り物」はプログラム! それぞれに合っ
   たプログラムを用意してまーす。

 ○「スキマスイッチ 宇宙の奏」 カップルにおすすめ!
 ○「ブラックホール」 ファミリーにおすすめ!
 ○「フィンランド オーロラの詩」 アロマが香る!

http://www.planetarium.konicaminolta.jp/manten/program/

真子:これで、上から順に、カップル、家族、友達! それぞれのセ
   グメントにあったプログラムだよね。

勝 :OK。これがセグメンテーションの典型的な例。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆うまく括れたセグメンテーションは「ニーズの違い」をあぶりだす
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

真子:すっごい単純に見えるけどねー、カップル、家族、友達、なん
   ていう括り方は。

勝 :そう。うまく括れていると、「すっごい単純」に見える。逆に
   そうなってなかったら、何かが間違ってる。

真子:じゃーこれでいいんだ。

勝 :その「すっごい単純」なセグメンテーションに至るまでが大変
   なんだけど、言われてみれば「当たり前」に聞こえるもんだ。

真子:そんなもんかー。

勝 :真子の会社のイタリアンレストラン、そーれ・しちりあーのの
   セグメンテーションは簡単じゃなかっただろ?

真子:うん! 具体化して括って、っていうのすっごい繰り返した!

勝 :それを怠ると、「すっごい単純」でも「当たり前」でもない、
   「切れてない」セグメンテーションになるんだよな。

真子:なるほどぉ。でもさ、単に「すっごい単純」ならいい、っても
   んじゃないんでしょ?

勝 :もちろん。単に「男女」で切っただけとかだと、ダメ。でも、
   それが一番重要な切り口だと検証されていればOK。

真子:それって、どーすればチェックできるの?

勝 :うまく括れてるセグメンテーションは、「ニーズの違い」が明
   らかになる。セグメント間の「ニーズの違い」。

真子:どういうこと?

勝 :各セグメントの違いが一言で「こう違う」って言える。プラネ
   タリウムもそうなってるだろ?

真子:あ、うん。そうだね。カップルだとデートで、ファミリーだと
   勉強の要素が入って、って。

勝 :その説明がすんなりいかない場合は、何かがおかしい。

真子:っていうことは、その「ニーズの違い」がわかりやすいかどう
   かがチェックポイントなんだ!

勝 :そう。で、その「ニーズの違い」がわかりやすければ「打ち
   手」に落ちる。プラネタリウムなら、プログラムが変わる。

真子:打ち手に落ちてこなければ、ニーズが同じなんだ?

勝 :同じかどうかはともかく、打ち手に落ちてこなければ、セグメ
   ンテーションをする意味がないだろ?

真子:あれ、じゃあ、打ち手を考えながらセグメンテーションするっ
   てこと?

勝 :そう! 打ち手に落ちてこない戦略は意味が無い。ただのお絵
   描きか数合わせ。

真子:じゃあ、セグメンテーションするときに打ち手を考えるんだ。

勝 :正確に言えば、ニーズの違いを考えて、そのニーズの違いが、
   打ち手に反映されるかどうかを考えながらやる。

真子:うわー、セグメンテーションって大変じゃん!

勝 :だから一番難しい、っつってんだろうが。BASiCSでも、
   打ち手に近い「メッセージ」を入れてるのはそれが理由の1つ

真子:うん、「メッセージ」で、「打ち手」に落ちてくるかどうかを
   チェックするんだよね。

勝 :そういうこと。セグメントごとに「違う売り物・売り方」に落
   ちてくるはずだからな。

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◆チルドハンバーグのセグメントごとの「ニーズの違い」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

勝 :じゃあ次の事例。チルドハンバーグ。

真子:冷凍食品?

勝 :チルド、だから冷凍じゃなくて「要冷蔵」の方。

勝が席に付いた小テーブルの上のノートパソコンを操作すると、「と
もかくこれを読め」と横に座る真子に促す。

-----------< 記事引用 >------------

◇「レンジなどで温めて食べるチルドハンバーグ。(中略)売れ筋ラ
 ンキングは日経POS(販売時点情報管理)のデータを基に、
 2012年7月30日から8月26日までの販売金額を集計して作
 成した」

◇「日本ハムからは首位の「とろける4種チーズのハンバーグ」を含
 めて4品が上位に入った」「ランキングに4商品が入ったのは、世
 代や生活習慣が異なる客層に向け、それぞれに合った商品を投入し
 ているためだ」

◇「とろける4種チーズのハンバーグは3月の発売から8月までで小
 売りベースで約10億円を売った。(中略)近年、濃厚な味が好ま
 れるようになり、あるファミリーレストランではチーズ入りのハン
 バーグが一番の人気メニューになったといったデータを集めた。ゴ
 ーダやパルメザンなど4種類のチーズを包んだ濃厚な味が人気だ」

◇「2位「プレミアムハンバーグ 豊潤 デミグラスソース」はその
 名の通りの高級志向に対応した。2個以上のハンバーグをセットに
 した商品も多い中、単品の販売で個食に対応。ポテトとコーンの付
 け合わせも入っており、1人で食べきれるだけの食事を用意したい
 単身世帯の要望に応えた」

◇「5位「ミルポア デミグラスハンバーグ」は香味野菜をいためた
 ソースが40~50代に人気で、顧客層が若い「とろける4種チー
 ズのハンバーグ」とすみ分けている」

◇「7位に入った「直火焼でおいしいハンバーグ」は家庭向けだ。国
 産の鶏肉と豚肉を使用。母親に安心してもらうことで、子どもの弁
 当需要を開拓している。さらに同商品は3個セットのため、弁当で
 使わなかった分を母親の昼食として利用してもらおうと、丼として
 食べるメニュー提案もしている」

2012/09/07 日経MJ P.3

以下、表から抜粋、グラムあたり単価は筆者計算、個数はHPより

1位 とろける4種チーズのハンバーグ
   3個入り、計255g、311円  1.22円/g

2位 プレミアムハンバーグ 豊潤 デミグラスソース
   1個入り、180g、265円   1.47円/g

5位 ミルポア デミグラスハンバーグ
   3個入り、285g、289円   1.01円/g

7位 直火焼でおいしいハンバーグ
   3個入り、225g、175円   0.78円/g

http://www.nipponham.co.jp/products/hamburger/

-----------< 記事引用 >------------

真子:わ、どれもおいしそーだね! ねー、ベスト10に4商品なん
   て、日本ハム、すごくない?

勝 :だからすごいよ。さすが去年、巨人と日本シリーズで死闘を演
   じたパリーグ優勝チームのオーナー会社。

真子:へ?

勝 :何でも無い。これ、まとめてみろよ。セグメント、ニーズ、商
   品特徴な。記事からわからないところは推測でいいから。

真子:うん!!

真子がノートパソコンとノートを見比べながら、「やだ、ブレちゃっ
た……電車だとうまく書けないな……」などと独りで騒ぎながら、ノ
ートにまとめていく。「できた!」と言うと、ノートを勝に見せる。

         セグメント  ニーズ      商品特徴

とろける     若者層   ・濃厚な味    ・チーズの
4種チーズの         ・ボリューム感   濃厚な味
ハンバーグ

プレミアム    単身世帯  ・1人で     ・1食分と
ハンバーグ           食べきれる    付け合わせ
豊潤             ・高級感     ・高級感
デミグラスソース

ミルポア     40~   ・しつこくなく  ・香味野菜
デミグラス    50代    食べやすい    の食べやすい
ハンバーグ                    ソース

直火焼で     小さな子供 ・子供の弁当   ・国産原料
おいしい     がいる母親 ・自分の食事を  ・母親の昼食
ハンバーグ           ラクにすませる  

勝 :お、こんな感じ。OK。ヨコの一貫性がわかりやすいな。

真子:うん! あと、さっきの「ニーズの違い」がわかりやすいね。
   お母さんは、お弁当に使って、自分も食べる、とか。

勝 :単身世帯だと1食分で付け合わせ付き、若者は濃厚な味、とか
   な。商品特徴とセグメントのニーズがかみ合ってる。

真子:そう言われてみれば「当たり前」って感じだよね。

勝 :その「当たり前」って言われるのが、使えるセグメンテーショ
   ンなんだよな。そこに落とし込むのが難しい。

真子:やっぱり、「プレミアムハンバーグ」が一番グラムあたり単価
   が高いよね。「プレミアム」を謳ってるだけあって。

勝 :そうそう。そういうところも「当たり前の一貫性」がある。

真子:「ニーズの違い」がわかれば、それに対応すればいい、ってこ
   ういうことかあ……「当たり前の一貫性」をとるだけ……。

勝 :そう。「ニーズの違い」さえわかれば、あとは直線的、論理的
   に対応するだけ。

真子:難しいのは、その「ニーズの違い」をあぶりだすセグメンテー
   ションなんだね……

勝 :このセグメンテーションは、どの切り口括ってる? 切り口は
   1つじゃないだろ?

真子:うん。んーっとね……こんな感じ?

 切り口1:使い方・利用場面
 ・何人で食べるか、お弁当に使うか

 切り口3:体質
 ・こってり、さっぱりなどの好み

 切り口4:所有資源
 ・食事を作る時間、食事にかける予算

 切り口8:バイヤー・ユーザー
 ・お母さんのニーズと子供のニーズ

 切り口10:属性
 ・年代、家族構成

勝 :そうだな。一見単純だけど、色々な切り口の組み合わせの「結
   果」として、単純なセグメンテーションになってる。

真子:商品特徴と、ユーザー層に一貫性があるよね。

勝 :その一貫性は、どんな場合でもある。

真子:そうなの?

勝 :そうだよ。想定顧客じゃないぞ、実際の顧客像、な。実際の顧
   客と、商品特徴は常に一貫性がある。何でだと思う?

真子:うーんっと……なんでだろう?

勝 :お客様の側から考えろよ? お客様はどんなものを買う?

真子:自分が欲しいモノ!

勝 :そう。

真子:え……? あ! そうか、お客様は自分のニーズに合ったモノ
   を買うから、一貫性が出るんだ!

勝 :そうそう。言われてみれば当たり前だろうけど、大事な話。
   「お客様は、自分が買いたいものを買う」。

真子:あれ? そういえばさ、「お客様は自分の鏡」って、前号でや
   ったよね?

勝 :よく思い出した。今のお客様は、自分の売り物が欲しい、って
   思っていただいている方だからな。一貫性があるわけだ。

真子:そっか、最終的には一貫性がとれるんだ……お客様が「自分が
   欲しい」って思ったものしか買わないから……

勝 :そう、「最終的には」な。

真子:最初に考えていたこととは違うかもしれない、ってこと?

勝 :そう。だから「お客様は自分の鏡」。想定していたお客様に売
   れなかったら、ニーズの読み間違い。

真子:逆もあるよね? 想定外のお客様に売れる、とか。

勝 :それもいっぱいある。それは気づいてなかったニーズ、ってこ
   とだな。

真子:やってみなきゃわかんないことって、一杯あるよね……

勝 :そうなんだよな。考えて、考えて、それで外れるのは、もうし
   ょうがない。

真子:だからテストマーケティングとかやるんだよね

勝 :まさにそういうこと。

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◆都心では電動工具が売れない!
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勝 :あと、店舗だと「立地」っていう切り口も見逃せない。立地に
   よって、「売り物」を変える必要がある。

真子:そりゃそーだよね。

勝 :例えばこんな感じだな。

-----------< 記事引用 >------------

◇「全国に約170店あるホームセンター、カインズホームのなかで
 唯一東京23区内にある南砂町SUNAMO店(東京・江東)。シ
 ョッピングセンター内に出店という立地上の制約があるため品ぞろ
 えも限られるが、小林昌英店長(37)は「売れ行きが全店でトッ
 プクラスの商品がいくつもあるんです」とほほ笑む」

◇「例えば、ベランダに置いて育てられる野菜の栽培セット
 (498円)。周辺のマンション群に住む人たちに受け、10月第
 3週の販売数は全店で最多だった。車で来店する人が郊外店に比べ
 少ない同店では自転車もよく売れる。9月の改装では自転車売り場
 を2倍に拡大。通勤や通学に便利なクロスバイクを従来の5倍の約
 30種類にしたところ、改装後は売り上げが前年比で3~4割伸び
 ているという。

◇「小林店長は「あれもこれも取りそろえる品ぞろえではだめ」と痛
 感している。改「改装では自転車売り場を広げた代わりに、「思い
 切って電動工具売り場を狭めた」」

2010/11/12, 日経MJ P.5

-----------< 記事引用 >------------

勝 :今でも、カインズホームで23区内にあるのは、この店だけみ
   たいだな*。

*http://sasp.mapion.co.jp/b/cainz/attr/?t=attr_con&kencode=13

真子:23区内だと、そりゃー電動工具は売れないよね……そもそも
   電動工具なんて何に使うんだろ?

勝 :いろいろあるだろ、本棚作るとか、壁の補修するとか、さ。

真子:あ、日曜大工かあ……マンションだと、そもそも壁に穴とか、
   開けられないもんね。

勝 :そうそう、そういうのがまさに「立地」によって違う。都心部
   かどうか、とかで。

真子:ホームセンターって、都心ではあんまり見ないよね……

勝 :オレも工具は使うけど、大工じゃ無くてパソコンのケース開け
   るとか、モニタのアームつける、とかだからな。

真子:あ、むしろ精密機械の方なんだ。

勝 :そう。「野菜の栽培セット」も、都心だとベランダで、郊外だ
   と「家の庭で」ってなるからニーズが変わるよな。

真子:必要な肥料のサイズとか、全然違うよね。自転車もそーだね。
   郊外だと車だけど、都心だと自転車。

勝 :そういうこと。「立地」によって「売り物」が変わる。

真子:ねー、「立地」って、10の切り口のどこに入るの?

勝 :いろんなところに関係するけど、まあ最後の「属性」だよな。

真子:そっか。「立地」という切り口を独立させなかった理由ってあ
   るの?

勝 :店舗ビジネスに限られるから。

真子:あ、そっか。みんながみんなうちみたいな店舗ビジネスじゃな
   いんだもんね。

勝 :当然。で、その立地をどう「括るか」っていうのは結構難しい
   ところになる。

真子:なんで?

勝 :あのな、大都市vs小都市とか、立地にしたって括り方が色々
   あるだろ?

真子:あ! 近さで括るだけじゃないんだ!

勝 :当然。大都市は、離れていてもニーズが近いだろ? 東京と大
   阪とか、さ。

真子:あ、そっかあ

勝 :それに、同じ県内でも全然違うぞ。北海道とか滅茶苦茶広いん
   だぞ? 札幌みたいな大都会もあれば、雪山もあるんだぞ?

真子:あ、そっか。同じ市内でも、学生街とか、高齢者が多いところ
   とかあるもんね。

勝 :そういうこと。だから、性別・年代とかと同じで、「なんでそ
   の立地で括るのか」っていうのが大事。

真子:それは、切り口1~9を組み合わせる、っていうことだよね?

勝 :そういうこと。

真子:結局は、何でも「組み合わせ」で考えるんだねー。

「ふう……真子、食い物ある?」
「あれ、勝さんおなか減ったの? あ、朝ご飯食べてないもんねー」
「で、食い物ないの?」
「お菓子の残りならあるよ♪」
「お菓子かあ……」
「お菓子かあ、って、ご飯なんか持ってるはずないよ、きゃははは」
「朝飯のときに、おにぎり作っときゃ良かったな。忘れてた」
「あ、そーだよね。でもTOO LATEでしたー♪」
「じゃあお菓子くれ」
「うん。後でどっかで駅弁買いなよ」
「でさ、エスプレッソは作っといたんだよ、水筒に」
「きゃははは、それは忘れないんだー」
「当たり前だろ。真子も飲むか?」
「わーい、飲む飲む」

勝が網棚に置いてある真子のバッグを取って真子に渡すと、真子はバ
ッグからお菓子を取り出す。勝も自分のバッグから、ステンレスボト
ルを取り出した。

「いっただっきまーす♪」
「オマエも食うの?」
「何よー、私が買ったんだよ?」
「いや、もちろんいいんだけど、朝飯食ってたじゃん」
「これはべ、つ、ば、ら♪」
「……まあ、真子だからな……」

勝がステンレスボトルのふたをクルクル回して開けると、ぽんと音が
して、湯気とコーヒーの香りが立ち上る。勝が一口すする。

「あ、あち!」
「きゃはは、勝さん、猫舌だー。私にも!」

真子が勝からボトルを奪ってごくごくと飲む。

「あ、こら、そんなゴクゴク飲むもんじゃねー。あ、ああ……」
「うん、おいしー。あ、り、が、と♪」
「オマエなあ……帰り道これでもたせようと思ってたのに……」
「もー、じゃあどっかでコーヒー買ってあげるからー」
「コーヒーじゃなくてエスプレッソだからな」
「はいはい、わかりましたー」
「それにもっと味わって飲めよ。大体いつもオマエは……」
「もー、お正月くらいお説教はやめよーよー」
「オマエいつもそう言って逃げるだろ」
「きゃははは、バレたかー。ほら、お菓子お菓子」
「あ、そうだな。腹減ってたんだった」

車内で2人きりの、お菓子とエスプレッソの賑やかな宴が始まった。

次号に続きます!

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◆今日のまとめ
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●セグメントごとの「ニーズの違い」を洗いだそう。その違いに合わ
 せて、「売り物」を変えていこう!

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━特別編Vol.228(累計1004) 2013/04/04

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●セグメントに合わせて「売り場」を変えていこう!

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◆まずは、前号の復習から!
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*本編の「今の時間」は、年が明けた1月2日の昼ごろです。

1月1日、真子と勝はほぼ1日中マーケティングレッスンに明け暮れ
た。翌1月2日は、朝の温泉を楽しみ、宿を後にして帰京。

電車の窓からの眺めは、雪景色。窓ガラスの下の方には氷塊がくっつ
きはじめている。

真子の膝の上のハンカチに置かれたお菓子をつまむ2人。勝は、ステ
ンレスボトルを開けて、一口含む。

「ふう……正月に雪見エスプレッソ……なんて優雅なんだ」
「きゃははは、お菓子食べながらカッコつけないでよー。ブランデー
 とかならカッコイイのにー」」
「つけてねーだろ、単なるオヤジって自覚はあるんだから。オマエも
 イタリアンレストランの社長ならブランデーじゃなくてだな……」
「あ、たしかにー。マルサラワインとか言えばよかった……って、何
 でそんなところにこだわるのよー」
「そういうところにどれだけ自分のビジネスを真剣に考えてるかが出
 るの! この雪景色に合うメニューは無いのか、とか考えろよ!」
「う、うぐ……そ、そりゃどーだけど……じゃ、じゃあ勝さんは何考
 えてたの?」
「アフォガートってあるだろ?」
「うん、アイスにエスプレッソとかかけたの」
「バニラアイスを雪山に見立ててさ、うまくカタチを作って、イタリ
 アンアルプスとかって名前で売れば……」
「わあ、おもしろーい!! って勝さんのビジネスと何の関係もない
 じゃん! てっきりBASiCSでも考えてるのかと……」
「……」
「あ、わかった! いっつも真子のことばっかり考えてるから、真子
 の仕事のことばっかり思いつくんだ……やっだー、嬉しいなー♪」
「背筋に悪寒が走るようなことを言うのはやめろ」
「図星かあ……いつも真子のことでアタマがい、っ、ぱ、い♪」
「とりあえず今、コイツ何とかならんのか、っていう思いでアタマが
 いっぱいだがな。とにかく再開だ」
「はーい」

真子:前号は、「セグメンテーションと売り物」っていうのを見てき
   ました!

勝 :どんな感じ??

真子:日本ハムの人気チルドハンバーグは、こんな感じに、顧客ニー
   ズごとに商品が作られている!!

         セグメント  ニーズ      商品特徴

とろける     若者層   ・濃厚な味    ・チーズの
4種チーズの         ・ボリューム感   濃厚な味
ハンバーグ

プレミアム    単身世帯  ・1人で     ・1食分と
ハンバーグ           食べきれる    付け合わせ
豊潤             ・高級感     ・高級感
デミグラスソース

ミルポア     40~   ・しつこくなく  ・香味野菜
デミグラス    50代    食べやすい    の食べやすい
ハンバーグ                    ソース

直火焼で     小さな子供 ・子供の弁当   ・国産原料
おいしい     がいる母親 ・自分の食事を  ・母親の昼食
ハンバーグ           ラクにすませる  

勝 :そうだな。このセグメンテーションを見て、一言。

真子:「ニーズの違い」がよくあぶり出されてる!

勝 :例えば?

真子:例えば、単身者だと「1人分で、ハンバーグだけじゃなくて、
   付け合わせも欲しい!」とか。

勝 :そうだよな。

真子:うまく括れているセグメントなら、そのニーズにそのまんま応
   えていけばいい! つまり打ち手に落ちてくる!

勝 :そういうことだ。打ち手に落ちてこない戦略なんて無意味だか
   らな。

真子:え、じゃあ打ち手に落ちてこない戦略を作っちゃうことなんて
   あるの?

勝 :そりゃあるよ。戦略のフレームワークだって、打ち手に落ちて
   くるものの方がむしろ珍しいだろ。

真子:あ、そういえばそっか……

勝 :だからBASiCSを作ったんだけどさ。あと、セグメンテー
   ションの切り口も、ここでまとめておこうか。

真子:うん!

○セグメンテーションの「括って広げる3ステップ」

ステップ1:顧客像の具体化
ステップ2:ニーズの普遍化
ステップ3:ニーズで人を括る

○セグメンテーションで「括る」ための切り口

切り口1:使い方・利用場面
・価値は使い方に現れる。逆に使い方を見ればニーズがわかる!

切り口2:困りごと
・どんなことに困っているのか、困りごとが同じならニーズが同じ!

切り口3:体質
・肌質・髪質・アルコールへの耐性などでニーズが違う!

切り口4:所有資源
・お金・時間・エネルギー・車などの持ち物などでニーズが違う!

切り口5:こだわり・マニアレベル
・ビギナーとマニアでニーズが違う!

切り口6:購買履歴
・何を買ったかで、直接の購買行動がわかる!

切り口7:競合
・どの競合商品を買うかに、ニーズが現れる

切り口8:バイヤー・ユーザー
・「買う人」と「使う人」が違う場合は、それぞれにニーズが違う!

切り口9:ありたい姿
・「ありたい姿」の違いは、ベネフィットの違いそのものとなる

切り口10:属性
・BtoCなら性別・年齢など、BtoBなら業種・企業規模など

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆セグメンテーションと「売り方」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

勝 :前号はセグメンテーションと「売り物」だったけど、ここから
   は、セグメンテーションと「売り方」な。

真子:「売り物」っていうのは商品・サービスを変える打ち手で、
   「売り方」は商品・サービスを変えない打ち手、だよね?

勝 :その通り。ナイスフォロー。「売り場」とかも含めた、広い意
   味での「売り方」な。

真子:さっきのチルドハンバーグはセグメントに合わせて「売り物」
   を変えてるよね。「売り方」は同じに見えるけど。

勝 :そういうこと。ここからは「売り物」を変えずに「メッセー
   ジ」を変える、っていうところが主になる。

真子:はーい。

勝 :まずは基本形がこれ。

-----------< 記事引用 >------------

◇「債務危機によるユーロ圏内の需要減少や新興国の攻勢で、ギリシ
 ャなど一部の国では外国人客数が落ち込む一方、英国、イタリア、
 フランスは今なお健闘を続ける。原動力は、強化すべき対象国やツ
 ールを明確に絞り込む新発想のマーケティングだ」

◇「「観光情報をテーラーメードでお届けする」。同庁(英国政府観
 光庁、筆者注)のキース・ビーチャム海外統括局長は、海外での観
 光促進キャンペーンの要諦をこう語る」

◇「同国の観光資源を「歴史遺産」「文化」「スポーツ」「買い物」
 「田園」「食」「音楽」の7テーマに分類。この中から売り込むべ
 きテーマを対象国ごとに選定し、現地でのPR活動に反映させる」

◇「どの国にどのテーマをあてはめるかは、観光客の動向を自前で調
 査したデータに加え、英ブリティッシュ・エアウェイズや米エクス
 ペディアなど観光活性化で連携する企業の意見も参考にする」

◇「例えば日本人は英国の「歴史遺産」や「田園」にあこがれを抱く
 傾向がある一方、ブラジル人は「買い物」や「文化」の鑑賞を好む
 傾向がある。ほかには中東が「買い物」、米国は「歴史遺産」とい
 った具合だ。現地での街頭看板や交通広告を含め、観光PRはこの
 選定テーマに沿って進める。

2012/07/27 日経MJ P.1

-----------< 記事引用 >------------

真子:えっと……イギリスって言う、「国のマーケティング」ってこ
   とだよね? イギリスの観光を売る、っていう……

勝 :そうそう。イギリスの観光資源そのもの、つまり「売り物」を
   変えてるわけじゃなくって……

真子:メッセージ、「魅せ方」を相手国によって変えてるんだ!

勝 :そうなんだよな。ちょっとまとめてみ。

真子が「うん!」と元気よくうなずき、ノートにまとめていく。

       日本人 ブラジル人  中東  米国

 歴史遺産   ●              ●
 文化         ●
 スポーツ 
 買い物        ●     ●
 田園     ●
 食
 音楽

勝 :あ、そうそう。ぱっと見てわかるからよな、これ。

真子:うん!

勝 :実はさ、このまとめ方がセグメンテーションそのもの、って言
   ってもいい。

真子:ほ、ホント!? やったあ!

勝 :実際には、○×みたいな、いわゆる「フラグ付け」でもいいけ
   ど……

真子:「フラグ」って?

勝 :そのまんま「旗」だよ。上の図の ● のところは、旗が立っ
   てる、ってこと。

真子:なるほどぉ。「印」が旗なんだね。

勝 :まずは、○×の前に、点数化していく。日本人は、歴史遺産は
   5点、田園が4点、とか。

真子:それで?

勝 :そうやって点数の傾向がわかるだろ? どこの国とどこの国の
   「点数の付き方」が似てる、とか。

真子:うん……あ! その「点数の付き方」で括ればいいんだ!

勝 :そう! それを「人」でやるわけ。AさんとBさんは、歴史遺
   産と文化が好きで、CさんとDさんはスポーツで……って。

真子:それなら、客観的に括れるね!

勝 :まさにそういうこと。明確な基準が作れるから、セグメンテー
   ションを「ルール化」できるんだよな。

真子:ねー、このやり方、ちゃんと教えてよー。その「ルール化」の
   やり方。どーやるの?

勝 :……

真子:えー、また望ちゃんなら、とかって言うのかと思ったら……?

勝 :……

真子:ど、どーしたの?

勝 :オレ今カンタンそうに言ったけど、コレすっげー大変でさ……

真子:……

勝 :……

真子:じゃ、じゃあ……望ちゃんに……

勝 :まあ、試行錯誤してみろ。大変だったら、さっきの図みたいな
   シンプルなフラグ立てでもいいよ。

真子:う、うん……そーだね。

勝 :本題に戻って、この英国政府観光庁のやり方が、セグメントに
   よって「売り方」を変えるわかりやすい手法。

真子:別に「国」でセグメンテーションしなくてもいーんだよね?

勝 :そうだな。例えば何がある?

真子:イギリスのスポーツって言えば、サッカーじゃん?

勝 :お、そうだな。プレミアリーグとかだよな。それで?

真子:だから、サッカーファン、ってセグメントもありかな、って。

勝 :悪くはないけど、もう一ひねりしろよ……。

真子:えー?

勝 :例えば、プレミアリーグの各国の外国人選手の顔を立てて、そ
   の国に売り込むとか、さ。旅行代理店の仕事かもしれないけど

真子:あ、なるほど。

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◆セグメンテーションと「売り場」:セグメント別の「接客」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

勝 :このセグメンテーションと「売り方」については、色々とある
   から1つ1つ見ていこう。まずは「売り場」から、な。

真子:はーい。

勝 :じゃあこれを……

勝がノートパソコンを軽快に操作するのを真子が感心しながら見る。

-----------< 記事引用 >------------

◇「同社(ドラッグイレブン、筆者注)は4月から、外国語での接客
 会話をまとめた用語集「指さしマップ」を全店に順次配布。英語や
 中国語、韓国語に対応し、商品の特徴や使用法を記載している。店
 員は同マップを見ながら会話するほか、来店客に指し示して使うこ
 ともできる。同店の津村紀一店長は「指さしマップの導入で外国人
 観光客の購入額が格段に増えた」と話す」

2012/11/01 日本経済新聞 地方経済面 九州 P.13

-----------< 記事引用 >------------

勝 :これはわかりやすいよな。

真子:うん。外国人には、その外国人の方の話す言葉で接客する!

勝 :「売り物」は全く変えてないよな。

真子:うん、「売り方」を変えるだけでも売上が「格段に増えた」り
   するんだね。

勝 :当たり前っちゃーそうだけど、その当たり前のことをちゃんと
   やるってことだな。

真子:うん!

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆セグメンテーションと「売り場」:セグメント別の「陳列」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

勝 :「売り場」っていう意味では、「陳列」もセグメント別に変え
   ていく、っていう手があるな。

-----------< 記事引用 >------------

◇「首都圏の百貨店内などを中心に約50の鮮魚店を展開する東信水
 産(東京・杉並)は「調理時間」や食材の“ストーリー”など、新
 しい切り口に基づく売り場展開を始めた。鮮度や産地など魚自体の
 特徴を打ち出す従来の売り方では顧客のニーズに応えられないと判
 断」

◇「昨年12月から荻窪総本店の一角を使い、ブリやサーモンなどの
 商品を調理時間別に分けて並べるようにした。サーモンの場合だと
 「0~5分」には刺し身やすし、電子レンジで温めるだけのソテ
 ー、「5~10分」には簡単な調理で食べられるムニエル用の切り
 身商材、「15~30分」にはムニエルにも刺し身にもできる大型
 の切り身といった具合だ。料理の上級者向けに魚1匹でも販売」

◇「従来、刺し身や切り身など商材ごとに魚を陳列し、産地や漁法、
 鮮度、旬などをアピールしていた。だが30~40代の主婦層は魚
 料理になじみの薄い人が多い」

◇「売り場ではそれぞれの料理に適した包丁や調味料なども併せて販
 売し、実際に購入した顧客の声もポップを使って紹介する。陳列方
 法を変えた直後の12月の2週間で、ブリの売り上げは直前の2週
 間の2倍に伸びた」

2013/01/21 日経MJ P.14

-----------< 記事引用 >------------

真子:へー、「調理時間」で魚を並べるなんて、面白いよね。初めて
   見たかも。

勝 :そうだよな。面白い切り口だと思うわ。

真子:言われてみれば、なんで「魚の種類別に並べてるの?」って感
   じだよね。

勝 :そうそう。「漁法」とかは、わかる人にはいいけど、気にしな
   い人には、調理のしやすさとか、だよな。

真子:うん。

勝 :で、これは、どういう切り口でセグメンテーションしてる??

真子:まず……忙しさ、かな??

勝 :そうだな。時間のある、なし、っていうところだな。

真子:あ、「切り口4:所有資源」かあ。

○切り口4:所有資源
・お金・時間・エネルギー・車などの持ち物などでニーズが違う!

勝 :そうなるな。特に平日なんかは料理する時間はあまりない人が
   多いだろうからな。あとは?

真子:あとは……何かな?

勝 :だから、調理のしやすさとか、魚料理になじみがあるか、とか
   だろうが。

真子:あ、そっか。その「こだわり」だ。料理の腕とかだよね。

○切り口5:こだわり・マニアレベル
・ビギナーとマニアでニーズが違う!

勝 :そうだよな。調理時間が長い人は、多分「マニア」だよな。手
   間暇かけるわけだからさ。

真子:あ、そーだね。

勝 :「マニアレベル」で陳列するとしたらさ、さらにどんな陳列が
   考えられる?

真子:え? だから料理の難しさ、とかでしょ?

勝 :だから具体的にどうすんだ、っつってんの。

真子:んーと……ヒントは?

勝 :料理しない人は、極端な話、包丁持ってないぞ。単身者とか。

真子:あー確かにねー。じゃあ、「包丁不要コーナー」とか?

勝 :そうそう。調理方法によって「括る」わけ。電子レンジくらい
   はあるから……

真子:あーなるほどぉ。「切り口4:所有資源」だね。レンジででき
   る魚料理コーナーかあ。レシピとかつけて。

勝 :鯛茶漬けとかなら、鯛の刺身を買えば包丁使わないで料理でき
   そうじゃん?

真子:そうなの?

勝 :そんなに本格的にしなければ、だけどさ。

真子:確かに、「残ったら鯛茶漬けにしよう」とか思えれば、1人暮
   らしでも「ちょっと多いけど刺し身買うか」ってなるかも!

勝 :そういうこと。半分刺身で、半分茶漬けにするとかな。

真子:それ、帰りが遅いときでもいいよね。もたれなさそう。夜中に
   トンカツはちょっと重いよね。

勝 :夜遅いと、おなか減ってるし、かと言って揚げ物だともたれる
   よな。実体験に基づいた意見だな、あははは。

真子:それでも食べちゃうけど、きゃははは。

勝 :で、「帰りが遅いとき」っていう、その切り口は何だ? やっ
   と出てきたか、って感じなんだが。

真子:え? ああ! 「TPO」だ!! 

○切り口1:使い方・利用場面
・価値は使い方に現れる。逆に使い方を見ればニーズがわかる!

勝 :そうだよな。来店の時間帯によってセグメントが違うよな。ど
   う違うと思う?

真子:昼とか夕方に来る人は主婦で、深夜に来る人は働いてる人だ!

勝 :っていうことは?

真子:っていうことは、夜は、すぐ食べられるものを充実させた方が
   いい! 疲れてるだろうし、調理時間もないし。

勝 :そう!! あと店頭のPOPを、夕方と夜遅くで変える、とか
   だよな。夕方は主婦向けで夜遅くは働く人向け、とか。

真子:あ! 確かに、「夜でも、もたれないように鯛茶漬けに」って
   POPがあれば、買いたくなるかも!

勝 :時間帯によってPOP1枚変えるくらいなら忙しい売り場でも
   できるだろ。

真子:こういう「切り口」を色々組み合わせていくと、「売り場」で
   も色々と考えられるんだね!

勝 :だから、アイディアの「引き出し」としてもセグメンテーショ
   ンの「切り口」は使えるんだよな。

真子:うん。この「10の切り口」は、パソコンに貼っておこうっと

「オマエ何、夜、1人で部屋でスーパーのトンカツ食ってんの?」
「い、いーじゃん! べ、別に毎日じゃないもん」
「いや、別にいーけどさ。実際スーパーのトンカツ、うまいし」
「さ、寂しくなんかないもん。そんなことゆーなら、勝さん来てよ」
「オレは関係ねーだろ。そーじゃなくて、まかない飯とかないの?」
「んー、社長が毎日「まかない飯出せ」って厨房に行くのもね……」
「そりゃそうか」
「たまに持ってきてくれたりもするけど、ぜんっぜん足りないんだよ
 ねー、中途半端に食べてかえっておなかが減るよ、きゃははは」
「……」
「え? だ、だって、まかない飯、って1人分しかないんだよ?」
「そりゃそーだろ」
「ひ、1人分で足りるわけないじゃん!」
「でも厨房の男子がその1人分で足りてるんだろ?」
「だ、だって私は若いんだよ? そ、育ち盛りなんだよ!?」
「確かに、女性社長がまかない飯2人分出せって……あははは」
「勝さんに食べ過ぎって言われたくないよー。勝さんなら3人分食べ
 て、デザートも出せとかゆーって、絶対」
「そうかもな。まあトンカツもいいけど、体には気をつけろよ」
「やっだー、真子のこと心配なんだー。大丈夫、トンカツばっかじゃ
 なくて、唐揚げとかアジフライとかチキンカツも食べてるから♪」
「うわ、揚げ物ばっかりじゃねーかよ……」
「だって若いんだもーん♪」

次号に続きます!

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◆今日のまとめ
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●セグメントに合わせて「売り場」を変えていこう! 「売り場」を
 考えるときも、色々な切り口を結びつけていこう!

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━特別編Vol.229(累計1005) 2013/04/08

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●セグメント・売り場・競合の一貫性を取ろう!

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◆まずは、前号の復習から!
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*本編の「今の時間」は、年が明けた1月2日の昼ごろです。

1月1日、真子と勝はほぼ1日中マーケティングレッスンに明け暮れ
た。翌1月2日は、朝の温泉を楽しみ、宿を後にして帰京。

電車に流れるアナウンス。
「えー、この電車は、次の○○駅にて、5分間の停車をいたします。
 電車にお乗りになってお待ちください」

「お、ちょうどいい。オレ昼飯買ってくるわ。真子も食う?」
「あ、じゃあ、真子が買って来てあげる!」
「ど、どうしたんだ? オマエがそんなこと言うなんて……」
「だ、だって、いちおー今教えてもらってるし……ご飯くらい……」
「じゃ、頼んだ。オレの好みはわかってるよな?」
「うん、とりあえずたくさん入ってて、脂っこいのでしょ?」
「……大分誤解はありそうだが、まあそれでいいや」
「じゃあ買ってくるね!」

真子はバッグから財布を取り出すと脱兎のごとく駆け出す。勝はその
後ろ姿が消えるのを見届け、再びノートパソコンに向かった。

真子がすぐに大きな袋を手に戻ると、満面の笑みで勝の横に座る。

「勝さん、買ってきたよ!」
「ありがと。またえらく早いな……って、いくつ買ったんだ!?」
「えっと……わかんない」
「あのなあ……」
「お昼にはちょっとだけ早いから、種類もいっぱいあったよ!」
「そうじゃなくってさあ……これ、誰が食うの?」
「勝さんと真子ちゃん♪」
「オマエ、朝飯食ってたよな?」
「だってもうお昼じゃん。それに勝さん、2つは食べるでしょ?」
「そりゃ食えるけど……まあ、買って来てもらったから素直に感謝し
 ていただくか。ありがと」
「はいはい、そうしてください」
「食いながらでも、続けるからな」
「えー……」
「じゃないと、これ帰るまでにマジで終わらない」
「きゃははは、そーだねー」

席の机にはパソコンとノートを、膝の上にお弁当を置いて、レッスン
が再開される。

真子:じゃー、前号の復習からね。今やってるのはこれでーす。

真子がノートを開く。

○セグメンテーションの「括って広げる3ステップ」

ステップ1:顧客像の具体化
ステップ2:ニーズの普遍化
ステップ3:ニーズで人を括る

○セグメンテーションで「括る」ための切り口

切り口1:使い方・利用場面
・価値は使い方に現れる。逆に使い方を見ればニーズがわかる!

切り口2:困りごと
・どんなことに困っているのか、困りごとが同じならニーズが同じ!

切り口3:体質
・肌質・髪質・アルコールへの耐性などでニーズが違う!

切り口4:所有資源
・お金・時間・エネルギー・車などの持ち物などでニーズが違う!

切り口5:こだわり・マニアレベル
・ビギナーとマニアでニーズが違う!

切り口6:購買履歴
・何を買ったかで、直接の購買行動がわかる!

切り口7:競合
・どの競合商品を買うかに、ニーズが現れる

切り口8:バイヤー・ユーザー
・「買う人」と「使う人」が違う場合は、それぞれにニーズが違う!

切り口9:ありたい姿
・「ありたい姿」の違いは、ベネフィットの違いそのものとなる

切り口10:属性
・BtoCなら性別・年齢など、BtoBなら業種・企業規模など

真子:それで前号は「セグメンテーションと売り方」をやりました!
   売り物を変えずに、売り方をセグメントに合わせて変える!

勝 :例えば?

真子:例えば、イギリスの観光マーケティング! イギリスの魅力を
   相手国ごとに変えて訴求する!

       日本人 ブラジル人  中東  米国

 歴史遺産   ●              ●
 文化         ●
 スポーツ 
 買い物        ●     ●
 田園     ●
 食
 音楽

勝 :そうだよな。同じ「イギリス」っていう観光地でも、国民によ
   って感じる魅力が違うわけだよな。

真子:うん! これがわかれば、「魅力を感じる点」で相手国を「括
   れる」よね。

勝 :で、前号は「セグメンテーションと売り場」についての事例を
   見たけど、どんな例があった?

真子:スーパーの「魚」の売り場の陳列を、「調理時間」で並べる、
   っていうのは面白かった。

勝 :そうだよな。

真子:忙しさとか、魚料理への慣れ、なんかは「調理方法」に表れる
   んだよね。「価値は使い方に表れる」。

勝 :そうそう。

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◆セグメントと「売り場」の一貫性
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勝 :じゃあまた「売り場」の続き、な。

真子:うん。

勝 :これは「売り場」っていうか、「販促」の話なんだけど……

-----------< 記事引用 >------------

◇「今夏、パナソニックの新型炊飯器「SR―SX1」の販促手法が
 話題を集めた。飲食店情報サイトの「ぐるなび」と連携、加盟する
 全国の100店に実際にSX1で炊いたご飯を使ったメニューを提
 供してもらった」

◇「同製品は高温による加熱が特徴で、1リットルタイプの店頭実勢
 価格が5万5千円程度の高級機。炊きあがったご飯の味こそが他の
 製品との最大の機能差だが、主力販路である家電量販店では試食が
 できないケースが多い。「機能を実感してもらえる場を設ける」
 (同社)ための秘策が、飲食店サイトとの連携だった。炊飯器の最
 高級機種としては前モデルの倍の売れ行きを見せる」

◇「パナソニックは、店舗外で消費者に直接接触する機会を設けるこ
 とに力を入れ始めている。店舗外でファン作りを進め、指名買いに
 つなげる戦略だ」

◇「3月に発売した携帯用の小型ヘアアイロン「ミニコテ」。価格を
 2500円程度に抑え、高校生前後の若年層に向けて開発した製品
 だ。ただ、高額商品を多く扱う家電量販店への高校生の来店頻度は
 高くない。そこで考えたのが、女子高生に人気のある雑誌やファッ
 ションビルと組んだ販促だ」

◇「店頭に置くカタログ冊子は、10代に人気のファッション誌「セ
 ブンティーン」と組んで3月号に挟み込み、目に触れやすいよう工
 夫した。製品発売直後の3月5~6日にはファッションビルの
 「109」をはじめとした東京・渋谷一帯で、同製品の「店頭イベ
 ント」も開催。ディスカウントストアなど、「家電量販店以外も巻
 き込んで、地域全体で販促をしかけるのは異例」(同社)という」

2011/11/25 日経MJ P.7

-----------< 記事引用 >------------

真子:なるほどねー。家電量販店に女性が来るか……

勝 :そうなんだよ。男性はさ、家電量販店にふらっと立ち寄ること
   は結構あっても……

真子:私は寄らないなあ……ケータイ売り場くらいかな?

勝 :だろ? でも、炊飯器も、女性向けドライヤーも、売り場は家
   電量販店だろ? っていうことは……どうなる?

真子:っていうことは……あ、「顧客ターゲット」と「売り場」が乖
   離してる!

勝 :そうなるよな。となると、炊飯器とかドライヤーの「売り場」
   は家電量販店で売るにしても……

真子:店に来てもらわないとしょうがない!!

勝 :そう。でもそのお店には来ないわけだから……

真子:そっか、この109でのイベントとかって「売り場を広げる」
   みたいな意味もあるんだね。

勝 :そうそう。渋谷の109の真ん前に家電量販店もあるしな。

真子:あ、そーだね。

勝 :それに、なるほど、って思ったのは、炊飯器で炊いたお米の
   「試食」は、家電量販店では確かにやりにくい。

真子:あ、うん。

勝 :でも、この炊飯器の「強み」は何かって言うと……?

真子:えっと……「炊きあがったご飯の味こそが他の製品との最大の
   機能差」だから、お米のおいしさ!!

勝 :ということは?

真子:その「強み」が活きる「売り場」を考えるべき!!

勝 :そういうこと。顧客セグメント、売り場、強み、っていう要素
   の一貫性があるんだよな。

真子:なーるほどねー。

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◆顧客によって「売り場」・「戦場」が変わる
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勝 :「セグメント」と「売り場」っていう考えをさらに進めていく
   と、こういうことになる。

勝がノートパソコンを操作し、少しだけ真子に向ける。

-----------< 記事引用 >------------

◇「ユニ・チャームが軽い尿漏れ(軽度失禁)に悩む女性向けに販売
 している生理用品の顧客層が広がっている。軽度失禁は多くの女性
 が経験しているが、専用商品を生理用品売り場で買うのに抵抗を感
 じる人も多かった」

◇ユニ・チャームによると、軽い尿漏れは女性の各年代で3分の1以
 上が経験する「普通の生理現象」(営業企画部カテゴリーマネジメ
 ントGの田頭耕司アナリスト)という」

◇「発売後、売れ行きは40~50代を中心に伸びたが、生理用品売
 り場に置くと「若い人には買うのに恥ずかしさがある」(田頭さ
 ん)。「ソフィ」など一般的な生理用ナプキンで済ませる人も多
 く、同社の一般消費者を対象にした調査では、30代の軽度失禁専
 用品の使用率は2割強にとどまっていた」

◇「20~30代を取り込むには「ターゲットに合わせた入り口を用
 意する」(田頭さん)必要があると判断、4月からベビー用品売り
 場での販促を本格化した。若い母親が赤ちゃん用のおむつ、おしり
 ふきを買うついでに手に取るようになった。ある小売りチェーンの
 POS(販売時点情報管理)データによると、チャームナップ購入
 者で20~30代の約3割がベビー用品売り場で買ったという」

◇「2個パックで特売されるケースが多い生理用ナプキンのソフィに
 比べ、チャームナップの1個当たりの単価は3倍強。競合品が少な
 いベビー用品売り場に置くことで特売競争から免れることにも成功
 している」

◇「40~50代に比べ、尿漏れの量が増える70代前後の高齢者は
 「生理用品売り場へは行きにくい」(田頭さん)。同社は大人用お
 むつ「ライフリー」のブランドで吸収量が20ccからのナプキン
 型パッドを提供。高齢者が立ち寄りやすい大人用おむつ売り場に陳
 列している」

2012/10/12 日経MJ P.6

-----------< 記事引用 >------------

勝 :これ、「チャームナップ」の話な。

真子:うん。「20~30代」ってことは私もターゲットなんだぁ

勝 :そうみたいだな。

真子:ベビー用品売り場に置いてあれば、「あれ、これ私たち向けの
   商品なんだ」ってわかる、ってことかな?

勝 :多分そういうことなんだろうな。逆に70代のお客様は、生理
   用品売り場には行きにく、ってことだな。

真子:となると、また売り場が変わって……「大人用おむつ売り場」
   に置くんだ。

勝 :同じ「軽度失禁」グッズでも、セグメントによって売り場を変
   えてるんだよな。じゃあ……

真子:うん、まとめてみるね。

勝が「へー、成長したな……」というと、真子が「だっていつも言う
ことが同じなんだもん」と返す。勝が弁当を1口2口、口にすると真
子がすぐ「できた!」と勝にノートを見せる。

   セグメント     売り場

 ○20~30代  ベビー用品売り場     広げた
                        ↑
 ○40~50代  生理用品売り場   ← ここがメインだった
                        ↓
 ○70代前後   大人用おむつ売り場    広げた

真子:今回は単純だった。わかりやすいね。

勝 :OK。それで、売り場を変えると、何が変わる?

真子:何が、って顧客セグメントでしょ?

勝 :当たり前だろ。「売り場」だぞ? 「売り場」には何が置いて
   ある?

真子:何って、商品が……あ!! そうか、隣にある商品が違う!

勝 :そうそう。つまり?

真子:競合商品が違うんだ!!

勝 :そう! 「売り場」が変わると「競合」が変わる。もう1回、
   記事読めよ。

真子:はーい。えっと……あ! 「競合品が少ないベビー用品売り場
   に置くことで特売競争から免れる」!

勝 :っていうことだ。隣に安い商品があると、どうしても比べちゃ
   うからな。

真子:なーるほどぉ。「売り場」が変わると「競合」が変わる、か。
   「売り場」が「戦場」になるんだね。

勝 :そう。つまり?

真子:つまり……「売り場」が変わると「競合」も「顧客」も変わる
   ってことだよね?

勝 :そう。顧客セグメントによって「売り場」が変わる。それで、
   「売り場」が変わると「競合」が変わる。大事だからメモ取れ

真子:はーい。顧客セグメントによって「売り場」が変わる。「売り
   場」が変わると競合」が変わる……うん、書いた!

勝 :セグメンテーションを考えるときは、こうやって「売り場」と
   かまでを考える。そうすると、打ち手に落ちてくるからな。

真子:うん、さっきの炊飯器とかドライヤーもそうだけど、お客様が
   「買いたくなる場所」で売らないとダメだよね。

勝 :「買いたくなる場所」っていい表現だな。「売り場」じゃなく
   って、「買いたくなる場所」、だな。

真子:やった、褒められた♪

勝 :実際、20~30代の方にとっては「生理用品売り場」は、チ
   ャームナップを「買いたくなる場所」ではなかったわけだ。

真子:なんかさー、売り場によってそういう「気分の違い」っていう
   のもあるかもね。

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◆「売り場」を広げる「ネット販売」戦場
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勝 :「売り場」が「戦場」っていう意味では、「ネット販売」もそ
   うなるよな。

真子:あ、確かに「ネット」も「売り場」だね。

勝が「そうそう」と言いながら、真子にノートパソコンを向ける。

-----------< 記事引用 >------------

◇「2011年度の売上高に占めるネット販売の構成比は1%未満が
 60・6%を占め、規模はまだ小さい。10年度に比べた増収率を
 みると都市部より地方企業が高かった。地方百貨店の増収率は
 14・2%。都市百貨店より約10ポイント高い。地方スーパーは
 35・7%だったが、全国スーパーは22・6%、地域スーパーは
 26・0%にとどまった」

◇「オークワは今年5月下旬、ネットスーパーの配送地域を地盤の和
 歌山県に加え、愛知・岐阜・三重の3県全域に広げた。「近隣に満
 足できるスーパーがない、車での買い物が難しいなど潜在需要は大
 きい」という」

2012/06/27 日経MJ P.5

-----------< 記事引用 >------------

真子:都市部より、地方の方が伸びてるんだね。近くにお店が少ない
   んだ……

勝 :どんな人が、ネット販売とか使う?

真子:だから、近くにお店が少ない人?

勝 :まあそうだけど、車で買いに行けばいいだろ?

真子:あ、そっか。じゃあ車の無い人とか、外に出るのが大変な高齢
   者の方とか?

勝 :それもあるだろうけど、ネット販売、ってそもそもどういうニ
   ーズに応えてる?

真子:外に買い物に行けない!

勝 :そうだよな。そういう人って色々いるだろ? 括ってみろ。

真子:あ、そっか。まさにニーズで括るんだ。えっと……外に買いに
   行くのが大変な人?

勝 :だからそれってどんな人だよ。

真子:忙しい人! 例えば、小さいお子さんのいるお母さん!

勝 :お、そうそう。「外に買い物にいけない人」は、他には?

真子:んーと、家で仕事してる人とか……

勝 :そうだよな。あとさ、別に普通のビジネスパーソンでも、そう
   いう「場合」はあるだろ?

真子:え? そうかなあ……ヒントください!

勝 :体調が常に万全とは限らないだろうが。

真子:あ! 風邪引いたときとか、ケガしたときとか!

勝 :そうそう。そうやって「括って」いく。

真子:なーるほどねー。

勝 :実際買ってる人は、そうみたいだぞ。

-----------< 記事引用 >------------

◇「ヨーカ堂では全店舗の8割にあたる140店強がネット通販に対
 応している。共働き夫婦の増加で、早朝や深夜に食品などをネット
 で注文するといった例が多い」

◇「衣料品販売のユナイテッドアローズは「仕事の合間に店舗で商品
 を見て、夜に自宅からネット経由で購入する」といった需要を取り
 込んでいる。13年3月期は予想連結売上高(1126億円)の
 12%程度をネット通販が占める」

2012/10/25 日本経済新聞 夕刊 P.1

-----------< 記事引用 >------------

真子:あー。お忙しくてお店に行けない人、かあ……共働きの方ね。
   忙しいビジネスパーソンも、昼間は洋服買いに行けないし。

勝 :そういうこと。「売り場」っていう意味では、いまやこういう
   のも「売り場」に入ってくる。

-----------< 記事引用 >------------

◇ホームセンター大手のカインズはインターネット通販をテコ入れす
 る。アマゾンジャパン(東京・目黒)のサイトへの出店を始めたほ
 か、独自にスマートフォン(スマホ)向けのサイトも用意する。

◇カインズのネット通販の購入者は東京都や神奈川県など都市部が半
 数以上を占め、これらの地域は出店コストが高い。

2013/03/08 日経MJ P.6

-----------< 記事引用 >------------

真子:あ、スマホ! そっか、スマホも売り場なんだ!

勝 :そうなるな。となると、この場合のセグメンテーションはどう
   なる?

真子:どこで買うか! 「買いたい場所」だ!

勝 :そう。まさに「売り場」っていうか「買いたい場所」。それは
   何によって変わる? セグメンテーションの切り口は?

真子:んーっと……これかな?

○切り口4:所有資源
・お金・時間・エネルギー・車などの持ち物などでニーズが違う!

勝 :そうだな。スマホ持ってるか、車があるか、とかで変わってく
   るからな。いっそ、こっちに入れてもいいけどな。

○切り口6:購買履歴
・何を買ったかで、直接の購買行動がわかる!

真子:あ、「何を買うか」だけじゃなくて、「どこで買うか」も「履
   歴」に入れちゃえばいいんだね。

勝 :そういうこと。「どこで買うか」にニーズが表れることもある
   ってことだ。

真子:なーるほどねー。ねー、こうやって聞くとさー、お客様のこと
   が全部わかってないとセグメンテーションってできないよね。

勝 :だーかーらー、最初っからそう言ってるだろうが。だから一番
   難しいんだよ。

真子:そっか……なんか、セグメンテーションの本当の難しさがやっ
   とわかってきた感じがする……

勝 :ホントそうだわ。そもそもセグメンテーションを解説しきる、
   なんていうことが傲慢かつムリなのかもしれない。

真子:自信過剰な勝さんがそんなこと言うなんてね……セグメンテー
   ションって底知れないや……

「オレが自信過剰なら、真子は自意識過剰だな。ごちそうさまっと」

勝が拝むように言うと、すっかり食べ尽くされてキレイになったお弁
当の空箱を、ビニール袋に放り込む。

「あれ? もうお弁当1つ食べたんだ。いつの間に……」
「オマエが考えてる間」
「私も食べようっと♪」

真子がペンを置いて膝の上のお弁当の箸を取る

「じゃあ次、な」
「え、次のレッスン? ちょっと待ってよー」
「じゃなくて、次の弁当だよ。今の、ちょっと少なかったからな」
「きゃははは、勝さんの胃袋も底知れないねー」
「単に朝飯食ってないからだろ。昼と合わせりゃ2食分で普通」
「ほらー、だからたくさん買って来て良かったじゃん」
「そーだな。ありがと」
「だっていつも勝さん、そーなんだもん。少ない少ないって」
「オマエ、オレよりオレのニーズがよくわかってるな。素晴らしい」
「真子は勝さんの密・着・軸♪」
「どれがいっかなー。じゃあこの肉のヤツ」
「やっぱりなー。それ選ぶと思ってたよ」
「って……結局、全部で弁当4つ買ったってことか?」
「そーかな」
「1人弁当2個ずつってどんな計算だよ……」
「だから結果オーライでしょ? 余ったらオヤツになるし♪」
「まあそうだけどさ……」
「真子は1.5個でいーよ。ダイエット中だし♪」
「何がダイエットだよ、朝飯あれだけ食って、また弁当1個半も食う
 なんて……」
「だから勝さんと真子ちゃんは同じせ、ぐ、め、ん、と、って言った
 じゃん、きゃははは」
「……まあいいや、いっただっきまーす」
「真子もたーべよっと。勝さんのお肉ちょーだい」
「あ、肉だけ持ってくな! ご飯だけ残るだろーが」
「いーじゃん、勝さん、ご飯好きでしょ」
「じゃあオマエのももらうからな」
「あー、だ、ダメー、ああああ、もー……」
「うん、うまい」
「ね、雪を見ながらのお弁当なんて幸せだよね」
「そうだな。色々なものに感謝していただこう」
「うん! あとこのお弁当を買った真子ちゃんへの感謝もね♪」
「はい、ありがとうございまーす!」

次号に続きます!

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◆今日のまとめ
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●顧客と売り場の関係を考え、セグメント・売り場・競合の一貫性を
 考えよう!

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━特別編Vol.230(累計1006) 2013/04/11

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●顧客データベースを作って、「個別具体化して神経衰弱」を実践し
 よう!

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◆まずは、前号の復習から!
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*本編の「今の時間」は、年が明けた1月2日の午後です。

1月1日、真子と勝はほぼ1日中マーケティングレッスンに明け暮れ
た。翌1月2日は、朝の温泉を楽しみ、宿を後にして帰京。

真子と勝を乗せ、ゴトンゴトンと走る電車。

車窓からの眺めは雪が少なくなり、風景も野原から住宅地へと変わっ
ていく。

「あー、なんか東京に帰ってるなー、って感じがするねー」
「お正月の街並みってなんかキレイだよな」
「えー、街並みは変わらないよー、きゃははは」
「あのなー、そうじゃなくってさ……」
「あ! わかった! 隣にキレイな女の子がいるからだ! だから、
 いつもと違って見えるんだ! ね、そーでしょ?」
「誰のことだ?」
「やっだー、照れなくっていーのにー」
「逆だろ。隣にこんなやかましいヤツがいるのに街並みがキレイに見
 えるのは、国旗が出てたり、交通量が少なかったりするからだろ」
「素直じゃないんだからー、もう……でも、真子はちゃんとわかって
 るから、い、い、よ♪」

勝は無視して2つめの弁当を食べ終えると、「ごちそうさま」と手を
合わせ、ビニール袋に空の容器を戻す。

「ね、あと1個お弁当残ってるよ? これは半分こしよーよ」
「そうだな……まあ、再開しようぜ」
「はーい」

真子:ここまでの復習ね。今やってるのはこ、れ♪

真子がノートを開きながら説明していく。

○セグメンテーションの「括って広げる3ステップ」

ステップ1:顧客像の具体化
ステップ2:ニーズの普遍化
ステップ3:ニーズで人を括る

○セグメンテーションで「括る」ための切り口

切り口1:使い方・利用場面
・価値は使い方に現れる。逆に使い方を見ればニーズがわかる!

切り口2:困りごと
・どんなことに困っているのか、困りごとが同じならニーズが同じ!

切り口3:体質
・肌質・髪質・アルコールへの耐性などでニーズが違う!

切り口4:所有資源
・お金・時間・エネルギー・車などの持ち物などでニーズが違う!

切り口5:こだわり・マニアレベル
・ビギナーとマニアでニーズが違う!

切り口6:購買履歴
・何を買ったかで、直接の購買行動がわかる!

切り口7:競合
・どの競合商品を買うかに、ニーズが現れる

切り口8:バイヤー・ユーザー
・「買う人」と「使う人」が違う場合は、それぞれにニーズが違う!

切り口9:ありたい姿
・「ありたい姿」の違いは、ベネフィットの違いそのものとなる

切り口10:属性
・BtoCなら性別・年齢など、BtoBなら業種・企業規模など

真子:それで、前号は「セグメンテーションと売り方」っていうのを
   やってて、特に「売り場」を考えました!

勝 :そうそう、それで?

真子:顧客セグメントによって、「売り場」が変わる! 例えばチャ
   ームナップミニは、こんな感じで売り場を広げた!

   セグメント     売り場

 ○20~30代  ベビー用品売り場     広げた
                        ↑
 ○40~50代  生理用品売り場   ← ここがメインだった
                        ↓
 ○70代前後   大人用おむつ売り場    広げた

勝 :そうだよな。それで、大事なことは?

真子:「売り場」を変えると、隣にある商品が変わって「競合」が変
   わる!!

勝 :まず1つはそうだよな。チャームナップミニだと?

真子:例えば、 ベビー用品売り場だと、競合が少ないから特売競争
   を避けやすくなる!

勝 :そうだな。あとあともう1つ大事なことは?

真子:え? まだあったっけ?

勝 :あっただろ。オマエが言った言葉だ。

真子:えっと……あ、「売り場」は「お客様が買いたくなる場所」っ
   てヤツ?

勝 :そう、それそれ。売り場は「お客様が買いたくなる場所」

真子:「商品を並べる場所」というだけじゃなくって、「お客様が買
   いたくなるようにする」のが売り場の役割、ってことだよね。

勝 :そうだな。それでその「お客様」っていうのが……

真子:人によって違う! だからセグメンテーションする!!

勝 :せーかい!!

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆セグメンテーションと「顧客データベース」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

勝 :そろそろこのレッスンも終わりに近づいて来てるんだけど……

真子:すっごく長かったもんねー、きゃははは。

勝 :最後は、セグメンテーションと顧客データベース(DB)だな

真子:あれ? この話ってどこかで……

勝 :お、よく覚えてたじゃん。楽天の話をしたときにやった。

真子:あ、そーそー、これだこれだ。

真子がノートをめくり戻して、開いた。

        属性  購買履歴 趣味・関心  カードの情報
顧客1
顧客2
 ・
 ・
顧客10000

勝 :そうそう。これが顧客DB。

真子:顧客DBって、「顧客リスト」とは違うの?

勝 :まあ似たようなもんだけど、顧客DBをあえて定義すれば、
   「体系的に整理された顧客リスト」って感じだな。

真子:「体系化されてない顧客リスト」なんてあるの?

勝 :いくらでもあるだろ、例えば紙に、フォーマットも何もバラバ
   ラになって書かれてるものとか。単なる名刺の束とか。

真子:あ、そっか。じゃあExcelで整理されてれば、顧客DBって言
   っていいのかな?

勝 :整理されていれば、な。

真子:なるほどー。じゃあうちの会社にもあるんだ。

勝 :あと、別にパソコンじゃなくてもいい。紙で管理していても、
   体系的に整理されていれば、立派なDB。

真子:あ、昔はパソコンなかったんだもんね。

勝 :そうそう。「大福帳」ってヤツ。江戸時代からあったって言わ
   れてるけどさ。

真子:へー、そーなんだー。DBっていう機能は、商売やってる以上
   必要だったってことだ。パソコンが無かった時代でも。

勝 :まさにそう。で、その楽天のときの話にちょっと戻って、もう
   1回見てみよう

今度は勝がノートパソコンを開く。

-----------< 記事引用 >------------

◇(楽天は)「各事業ごとに保持していたデータを集め、データウエ
 アハウス「楽天スーパーDB」を築いた。全会員の属性、購買履
 歴、趣味や関心などの登録情報、カードやポイント、クーポンの情
 報、ログイン情報などを集積する。これらのデータを基本属性、購
 買やサイト内での行動の傾向、消費態度の特徴の3つの切り口から
 分析、人口統計など外的なデータを重ねたうえで「全会員を数百の
 グループに分類する」」

◇「グループは例えば「家事は任せて」「グルメ大好き」「お手軽ビ
 ューティー」「家でじっくり派」などだ。商品・サービスの推奨や
 メール配信では、グループの数をさらに20~30に集約し、簡素
 化して運用する」

2012/02/24 日経MJ P.1

-----------< 記事引用 >------------

真子:あ、そーだそーだ、思い出した。私は「とってもカワイイ女の
   子」セグメントだったんだ♪

勝 :無視。で、この顧客DBは、セグメンテーションとすごく近い
   位置にある。「括って広げる3ステップ」は何だった?

真子:これ♪

○セグメンテーションの「括って広げる3ステップ」

ステップ1:顧客像の具体化
ステップ2:ニーズの普遍化
ステップ3:ニーズで人を括る

勝 :で、「括って広げる」って、どういうことだっけ?

真子:お客様を「個別具体化して、神経衰弱」♪

真子が確かこのとき……と言ってノートをめくり、指を止めた。

    ステップ1  ステップ2  ステップ3
    (具体化)  (普遍化)   (括る)

勝さん 食べ過ぎ    大食い  大食いグループとして括る

真子   多い     大食い  大食いグループとして括る

恵利   普通     少食   少食グループとして括る

望   少なめ     少食   少食グループとして括る

勝 :そうそう。これがまさに「個別具体化して、神経衰弱」

真子:DBがあれば、できるんだよね。楽天の「家事は任せて」とか
   は、きっとそうやって「括ってる」んだよね。

勝 :そう。Excelの上で物理的にそれができる。お客様が書かれて
   いる「行」を上下に動かしたりして、さ。

真子:あ、なるほど。顧客数が少なければできるよね。

勝 :顧客数が多くっても同じだろ。セルを選択するときに時間がか
   かるだけで。

真子:そっか。

勝 :まあ、手でやるときはコピペミスとかしないように細心の注意
   を払わないといけないけどな。

真子:きゃははは、私、そーゆーミスやっちゃいそうだ。

勝 :オレ、いわゆるDBマーケティングを結構やってたから、「個
   別具体化して神経衰弱」っていう発想になったんだと思う。

真子:あ、そーなんだ?

勝 :マスマーケティングが主体の人だと、どうしても「20~30
   代女性」みたいな粗っぽい括りになっちゃうみたいんだよな。

真子:なんで?

勝 :打ち手が限られるからだろうな。TVとかのマス広告CMやる
   ときには細かいターゲティングが反映しにくいからな……

真子:あー、なるほどぉ……打ち手に落とせないんであれば、やらな
   いよね……でも、DBマーケティングだと打ち手があるの?

勝 :DMなんかだと、内容物とかを割と細かく変えられるから、
   「個別具体化して神経衰弱」っていう風に考えやすい。

真子:あ、そっか。DMは1人1人に送るんだもんね。

勝 :で、セグメンテーションに話を戻して、この顧客DBを使って
   セグメンテーションすると、かなり正確にできる。

真子:でもさー、顧客DBにあるのは既存顧客だけでしょ? だった
   ら、まだ買ってないお客様のことはわからないよね?

勝 :いや、まずセグメンテーションの切り口がわかるから、セグメ
   ンテーションには使える。

真子:でも、買ってないお客様は買ってないわけだから、それを無視
   しちゃっていいの?

勝 :いや、全く違う商品を出す場合は別として、狙っているセグメ
   ントのお客様が全く買ってない、ということはないだろ?

真子:え? 買ってない人のことだよ?

勝 :だからその「買ってない人」はそうだけど、その人が属するセ
   グメントの、他の人は買ってるかもしれないだろ?

真子:わかりませーん。うちの会社がやってるイタリアンレストラン
   そーれ・しちりあーのだったら?

勝 :例えば、仮に20代のカップルを狙ってるとして、あんまりそ
   ういうお客様にいらしていただけないとするだろ?

真子:うん。

勝 :それでも、20代カップルの方がゼロ、ってことは無いだろ。
   少しはいらっしゃってる。だから、それを手がかりに……

真子:あ! そうか、その少ない方々を頼りに、他のセグメントとの
   共通点とか違う点を見ればいいんだ。

勝 :そうそう。

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◆セグメンテーションのベースは「1人1人の個客」
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勝 :セグメンテーションを究極までつきつめていくと、「1人」に
   なるよな。いわゆる1to1(ワントゥワン)ってヤツ。

真子:その言葉はよく聞くけど……

勝 :要は「1人」を1セグメントとして捉えるってこと。さっきの
   楽天の話、実は続きがあって……

真子:え?

勝が「これなんだけどな」と言いながらパソコンを真子に向ける。

-----------< 記事引用 >------------

◇「楽天のネット通販サイト「楽天市場」のトップページ。あなたが
 見ているページは、隣の人のものとつくりが違う――。約7500
 万人の会員ごとに「ほぼ100%、パーソナライズしている」。グ
 ループコアサービス部の景山均部長は明かす」

◇「10以上の区画に分け、各区画で表示する内容や表示時間を会員
 ごとに変えている。ファッション、食品などジャンルの一覧を並べ
 る順番は男女で異なる。購買履歴や行動特性、嗜好などをもとに、
 購買意欲を刺激しそうな推奨商品を割り出し掲載する」

2012/02/24 日経MJ P.1

-----------< 記事引用 >------------

真子:すごーい、こんなことやってるんだ!! 私のトップページと
   勝さんのトップページが違うんだ!

勝 :人によってトップページ変えるなんてすげーよな。

真子:うん!

勝 :セグメンテーションの基本は、「分ける」んじゃなくて、この
   お客様1人1人という発想。

真子:あ、だから「分ける」じゃなくて「括る」なんだ。分ける、だ
   と既に「多くの人から」っていう考えになっちゃってる……

勝 :そう! 「分ける」っていうのは、「集まってる」から分ける
   わけで、そもそも「集めない」。理想は個別対応。

真子:例えば?

勝 :例えば、購買履歴なんかを使えばできるだろ。

真子:えっと……「切り口6:購買履歴 何を買ったかで、直接の購
   買行動がわかる!」だね。

勝 :それそれ。例えばさ……

-----------< 記事引用 >------------

◇「スリーエフはポイントカード「Tカード」から得られる顧客の購
 買動向などを分析し個別にクーポンを発行する新しい販促策を導入
 する。7月上旬から、買い得商品の情報をレシートに印字するレシ
 ートクーポンの発券を開始」

◇「レシートクーポンは店で受け取るレシート上で、一定期間内に購
 入するとポイントを加算する商品を案内する」

◇「これまでTカードを提示した顧客には一律税抜き価格200円に
 つき1ポイントを付与。人気商品100品目程度に5ポイント刻み
 でボーナスポイントを設定し、店頭で表示していた。これに加え、
 今後は1週間や1カ月単位での店の利用頻度や購買履歴に基づき個
 別にボーナスクーポンを発券する。

2012/06/29 日本経済新聞 地方経済面 神奈川 P.26

-----------< 記事引用 >------------

真子:あ、「利用頻度」とかに基づいてクーポンを発行するんだ。ス
   ーパーでも、レシートと一緒にクーポンくれたりするよね。

勝 :だろ? 今はさ、そういう「1人1人の個客に対する打ち手」
   があるんだよな。ということは……

真子:うん! 1人1人を1セグメントとみなしたマーケティングが
   できるってことだよね。

勝 :そういうこと。逆に言えば、「打ち手の個別性」にセグメンテ
   ーションが影響される。

真子:え?

勝 :いや、だから、お客様1人1人対する打ち手が打てるなら、1
   人1人を「1セグメント」とみなせばいいし……

真子:あ、なるほど。打ち手がどれくらいお客様を細かく分けられる
   か、でセグメンテーションの細かさが変わるんだ。

勝 :そういうこと。

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◆顧客情報に基づく、セグメント別の打ち手
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勝 :カタログ通販なんかだと、さすがに1人1人のためのカタログ
   はできないけど、やれることはある。

勝が再度ノートパソコンを操作して、真子に向ける。

-----------< 記事引用 >------------

◇「神奈川、静岡、山梨県の3生活協同組合が合併して21日に発足
 したユーコープ(横浜市)が宅配事業のてこ入れに拍車をかける」

◇「毎週発行するカタログを刷新したのは3生協がユーコープ事業連
 合(横浜市)に加盟していた昨年11月。主力媒体「お買物めも」
 (76ページ)の内容をファミリー層向けに変え、新たにシニア向
 けの「めもっと」(12ページ)を創刊した」

◇「媒体再編の狙いは世代別対応の強化。ユーコープの客層は主に
 30代の子育て主婦、40~54歳のファミリー層、55歳以上の
 シニア層に3分類できる。このうち囲い込みの重点ターゲットに据
 えるのが「子育て世代とシニア」(朝原隆充常務執行役員)」

◇「「お買物めも」は商品構成こそ大幅に変えないが、組合員のモニ
 ター制度を活用し、利用者の声を紙面に載せるようにした。例えば
 人気商品の冷凍豚肉は、味の評価や調理例などを掲載したところ販
 売数が2倍以上に伸びた。「30代前半の若い主婦は手料理のスキ
 ルや情報に乏しい」(朝原常務執行役員)。そこをサポートする情
 報を提示することで需要を掘り起こせることがわかった」

◇「カタログの内容刷新に大きく貢献しているのが、約25億円を投
 じ昨年4月に稼働させた新基幹システムだ。従来は利用者の名前と
 受注履歴しか把握できなかったが、新システムでは年齢や家族構成
 までわかる。昨年7月にはポイント制度も変え、誕生月にポイント
 が2倍になるキャンペーンを実施したところ利用世帯の約半分の顧
 客属性も判明した」

◇「この利用者データから最近、30代の子育て世代の退会率が従来
 の2%から3%にじわり上昇していることがわかった。分析した結
 果、媒体再編に合わせて100円均一商品や冷凍弁当食材といった
 若い主婦に人気のシリーズの掲載が減ったことが原因と判明。そこ
 で今春から「お買物めも」で同コーナーを復活させることを決め
 た」

2013/03/29 日経MJ P.5

-----------< 記事引用 >------------

勝 :真子、これをどう読む?

真子:えっと……まずは、セグメントは3つなんだよね。

1)30代の子育て主婦
2)40~54歳のファミリー層
3)55歳以上のシニア層

勝 :そうだよな。各セグメントに対する打ち手は?

真子:まずは、3)のシニア層向けのカタログを、今までのカタログ
   とは別に作ったんだよね

勝 :まずはそこだよな。1通りのカタログでは対応できなくなった
   っていうこと。ニーズが違うからだろうな。他には?

真子:それで、1)30代の子育て主婦、の退会率が上がっているこ
   とがわかった。

勝 :なんで、その分析ができたかっていうと……

真子:DBを作ったんだよね。名前と購買履歴だけだったけど、年齢
   と家族構成も付け加えたから、この分析ができた!

勝 :そうそう。まさに切り口の組み合わせ。使った切り口は?

真子:この2つの切り口を組み合わせた!

○切り口6:購買履歴
・何を買ったかで、直接の購買行動がわかる!

○切り口10:属性
・BtoCなら性別・年齢など、BtoBなら業種・企業規模など

勝 :そうだな。ここで面白いのは、情報をどうやって集めたか。最
   初から年齢を聞いておけば良かったけど、無かったから……

真子:誕生月に「ポイント2倍」キャンペーンをやる、っていうきっ
   かけを作って、データを集めた!

勝 :そうそう。そうしたら、半分のお客様については、わかった。

真子:なーるほどねー。お客様の情報をいただくには、お客様にメリ
   ットが出るような取り方をすればいいんだね。

勝 :そういうこと。全部のお客様じゃなくても、半分のお客様につ
   いて取れれば、分析はできるからな。それで??

真子:それで、1)30代の子育て主婦の退会率が上がってるから、
   その対策を取ったんだよね。

勝 :それは??

真子:ちょっ待ってね、まとめるから。

真子がノートにまとめ始めると、勝は満足げにうなずき、眺めた。

○100円均一商品や冷凍弁当食材などの、若い主婦に人気だったシ
 リーズを復活させた

○若い主婦は情報やスキルを求める。モニター制度を使って利用者の
 声を掲載。冷凍豚肉は、味の評価や調理例などを載せたら売上倍増

勝 :そうそう。カタログは「1)30代の子育て主婦」と「2)
   40~54歳のファミリー層」をまとめてはいても……

真子:うん、子育て主婦向けの情報を充実させてるんだよね。セグメ
   ントごとの打ち手を打ってる。

勝 :それができたのは「モニター制度」のおかげだよな。

真子:お客様の声を聞く方法があったから、わかったんだよね。

勝 :で、ここまでわかれば、世代別、というところから離れて、ニ
   ーズで括れるよな?

真子:え?

勝 :だって、顧客のニーズがわかったんだろ? 例えば、冷凍弁当
   食材は、お子さんのお弁当向けだよな?

真子:あ! そうか、使い方だ!

○切り口1:使い方・利用場面
・価値は使い方に現れる。逆に使い方を見ればニーズがわかる!

真子:30代、っていうのは、「小さいお子さんがいる」っていうこ
   となんだ! だから「冷凍弁当食材」なんだ!

勝 :気づいたか。あとは? まだあるだろ。

真子:「若い主婦は手料理のスキルや情報に乏しい」っていうところ
    だよね! だから……

○切り口5:こだわり・マニアレベル
・ビギナーとマニアでニーズが違う!

勝 :そうそう。だから、「調理例」とかを載せると、売上倍増する
   わけだ。

真子:ね、ね、じゃあ「献立を考える時間を惜しむ人」とかも、そこ
   に入るかもしれないよね?

勝 :そうだよな。性別・年代を出発点にして、そこからどんどん掘
   り下げていって、「括る」。それができたのは……

真子:お客様の情報をいただけたから!!

勝 :そういうこと。だから、顧客DBとかの顧客データが大切にな
   ってくる。

真子:ね、そーなるとさ、生協の購買履歴を加えれば、またわかるこ
   とがいっぱいあるよね?

○切り口6:購買履歴
・何を買ったかで、直接の購買行動がわかる!

勝 :そういうことだ。そうやって顧客DBの内容を充実させていく
   と、ニーズが見えてくる。

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◆セグメンテーションは、お客様の顔が見える「神経衰弱」
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真子:じゃあさ、さっきのこれで言えば……

真子がノートを開いて勝に見せる

        属性  購買履歴 趣味・関心  カードの情報
顧客1
顧客2
 ・
 ・
顧客10000

真子:この横軸の項目をどうするか、っていうのがすっごい大事にな
   るよね?

勝 :あのなあ、今まで何をやってたんだよ……そこには何が入る?

真子:え? ああ!! セグメンテーションの切り口だ!

勝 :そうそう。

真子:それで、1人1人のお客様の情報を個別にとって、Excelで上
   から並べて、入れ替えたりして「括る」んだ!!

勝 :喩えとしては、お客様1人1人の「顧客カード」を作る。

真子:お客様の情報が書いてある「カード」? 紙のカード?

勝 :イメージとしては、紙のカード。で、その顧客カードをおっき
   な机にばばばばば、って並べて……

真子:並べて……???

勝 :どうするんだよ。ここまで言えばわかるだろ。

真子:え? カードを並べて……あ! 神経衰弱!!

勝 :そう! 顧客カードで、ニーズが似ている方々を重ねていけば
   いい。これこそまさに「ニーズで括る」ってこと。

真子:なーるほどー、顧客カードを並べて、まとめていく……ホント
   神経衰弱だー。

勝 :でさ……神経衰弱って、カードが裏面になってるだろ?

真子:うん、それを表にして、神経衰弱するんだよね!!

勝 :覚えてたか。前にやったもんな。それで、カードを表にする方
   法は? お客様が見えてないと、カードは裏面のままだぞ。

真子:えっと……あ、だからお客様の情報をいただく! お客様に訊
   いてみる、とか!

勝 :そうなるよな。顧客DBもその一環。

真子:あ、そうやってつながるんだぁ。顧客DBで「お客様の顔が見
   える」状態になればいいんだ。

勝 :そう、ニーズが見えれば、あとは括るだけ。

真子:その「ニーズの違い」を表すのが、セグメンテーションの切り
   口、なんだよね。

勝 :そういうこと。でも最初は、ニーズが見えない。だから、色々
   と訊いてみる、ってことだ。

真子:それがセグメンテーションってことなんだよね?

勝 :そうそう。分けるんじゃなくて、括る。でも括り方がわからな
   いから、最初は「個別具体化」して1人1人把握して……

真子:個別具体化したあとで、神経衰弱、つまり「括る」!!

勝 :そう!! 結論を言っちゃえば、すっごい単純だけどな。それ
   がセグメンテーションの本質。

真子:うん……そこだけ訊くと簡単そうに聞こえるけど……ここまで
   やってきたこと全部が背後にあるんだよね?

勝 :そういうこと。だから、すっごい奥が深い。でも、「個別具体
   化して神経衰弱」っていうのは単純。

真子:うーん……単純なものほど奥が深い、ってことかあ……

勝 :セグメンテーションは「基本中の基本」なんだけど、これがで
   きれば、超一流だぜ。

真子:そうだよねえ……

勝 :ということで、セグメンテーションについて、オレからの説明
   はこれにて終了!!

真子:え、じゃあこれでレッスン終わり??

勝 :オレからの説明は、って言っただろ。

真子:じゃ、じゃあ……次は何?

勝 :だから真子の番だよ。

真子:なになに?

勝 :真子が最後にまとめて、それで終わりにしよう。

真子:ええええ……ちゃんとノートしてたからいーじゃん……

勝 :ダメ、オマエのことだから、後でまとめなおしたりしない。今
   やれ。

真子:はーい……

車窓からの眺めは、すっかり都会になってきた。

電車がゆっくりとスピードを落とし、車内アナウンスが流れる

「○○駅~、○○駅に到着しまし~た~。どなたさまも、お忘れもの
 のないように……」

「あ、もうこんなところか……」
「もう大分近づいたねー」
「そうだな、いつの間にかここまで来てたな」
「ね、幸せな時間は、たつのが早いよねー」
「幸せかどうかはともかく、確かにあっという間だったな……」
「真子といると幸せだ、なんて言われちゃった♪ 嬉しーな♪」
「だから言ってねーだろ」
「あ、勝さん、お弁当1つ残ってるよ。半分こしよーよ」
「そうするか。っていうか、オマエ、1個しか食べてないだろ?」
「そーだけど、だから?」
「足りるのか? 弁当1個半で」
「きゃははは、女の子だもーん。そんなに食べないよー。でも、心配
 してくれて、あ、り、が、と、♪」
「朝飯あれだけ食って、弁当1個半、でそんなに食べない、ね……」
「お弁当2個平らげて、まだ食べるっていう人に言われたくないよ♪
 ね、食べよーよ。開けるね」
「そうだな。いただくか」

2人で1つのお弁当を一緒につつき始める。

「あ、こぼれた」
「あ、やだもー、私の服にこぼさないでよー」
「わりーわりー」
「もー、勝さん、ホント子供なんだからー」
「オマエ、弁当選ぶセンスはいいよな。うまい」
「勝さんが好きそうなのを選んでき、た、の♪」
「はいはい」

お弁当の中身は2人の会話のテンポと同じくらい速く減っていった。

次号に続きます! 次号、(多分)最終回!

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆今日のまとめ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●顧客情報を集め、体系的に整理しよう。顧客ニーズが見える状態に
 して「個別具体化して神経衰弱」することがセグメンテーション!

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━特別編Vol.231(累計1007) 2013/04/15

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●「良いセグメンテーション」の条件は 1)括れるか 2)使える
  か 3)勝てるか。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆まずは、前号の復習から!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

*本編の「今の時間」は、年が明けた1月2日の午後です。

1月1日、真子と勝はほぼ1日中マーケティングレッスンに明け暮れ
た。翌1月2日は、朝の温泉を楽しみ、宿を後にして帰京。

電車の車窓から見える街並みは、もう都会のそれになってきた。

電車が駅に停まるたびに、大きな荷物を網棚から下ろす音や声でざわ
つく。

「ふー、ごちそーさまー」
「ごちそうさまでしたぁ」

4つ買った弁当を2人で全て食べ終わり、買ったときに重かったビニ
ール袋は、中身がなくなり軽くなった弁当容器で一杯になった。

「この袋、軽くなったねー。持ってくるときは重かったのにぃ」
「その分オレらのカラダが重くなったけどな」
「きゃははは、そーだよねー」
「オマエ、食い過ぎ」
「何よー、勝さんの方が食べてるじゃん」
「だって、オレは、朝飯と昼飯とオヤツだろ、ちょうど弁当2.5個
 分くらいでカロリーぴったりじゃん」
「あー、お得意のへりくつぅ!」
「オレはカロリー計算してるんだよ! 大体だな、朝飯食うなんて、
 集中の妨げにしかならないぞ」
「出た、勝さんの非常識栄養学」
「非常識じゃないだろ、摂取カロリー減らすなら、朝飯食わない方が
 いいに決まってる」
「朝ご飯食べた方が太らないってゆーじゃん」
「それは、1日の摂取カロリーが同じなら、分けた方がいい、ってい
 うことだろうが。3食バクバク食ったら太るに決まってる」
「えー、でもー」
「あのなー、やせる方法なんて1つしか無いんだからな。絶対に」
「え、なになに? そんなのあるの、魔法のダイエットが」
「消費カロリー>摂取カロリー、っていう不等式を守ること。食べる
 量減らすか、運動するか、しかないからな」
「えー、何それ、つまんなーい」
「つまるもつまんないもないだろ」
「そーだけどさ……」

真子が車窓に目をやり、少し寂しげな表情を浮かべた。

「あー、帰って来ちゃったなあ……」
「何だ、イヤなのか?」
「だってー、休みが終わり、って感じがしちゃって……」
「オレは騒がしいところが好きだからな……むしろ人が多いところの
 方が「地元」って感じがするわ」
「まーそれもそーかー」
「っていうか、正月なんて東京の方が人が少ないからいーだろ」
「やっだー、人が少ないところで真子と一緒にいたいだなんてー」
「オマエのその飛躍はスゲーよ。もうそのネタはいいから、復習な」
「はーい」

真子:じゃーここまでの復習ね。今やってるのはこれでーす♪

真子がノートを開きながら説明していく。

○セグメンテーションの「括って広げる3ステップ」

ステップ1:顧客像の具体化
ステップ2:ニーズの普遍化
ステップ3:ニーズで人を括る

○セグメンテーションで「括る」ための切り口

切り口1:使い方・利用場面
・価値は使い方に現れる。逆に使い方を見ればニーズがわかる!

切り口2:困りごと
・どんなことに困っているのか、困りごとが同じならニーズが同じ!

切り口3:体質
・肌質・髪質・アルコールへの耐性などでニーズが違う!

切り口4:所有資源
・お金・時間・エネルギー・車などの持ち物などでニーズが違う!

切り口5:こだわり・マニアレベル
・ビギナーとマニアでニーズが違う!

切り口6:購買履歴
・何を買ったかで、直接の購買行動がわかる!

切り口7:競合
・どの競合商品を買うかに、ニーズが現れる

切り口8:バイヤー・ユーザー
・「買う人」と「使う人」が違う場合は、それぞれにニーズが違う!

切り口9:ありたい姿
・「ありたい姿」の違いは、ベネフィットの違いそのものとなる

切り口10:属性
・BtoCなら性別・年齢など、BtoBなら業種・企業規模など

勝 :そうだな。前号は?

真子:前号は、顧客DBについてやってきました!! 例えばこんな
   DBがあるとして……

        属性  購買履歴 趣味・関心  カードの情報
顧客1
顧客2
 ・
 ・
顧客10000

真子:お客様1人1人の情報を使って括る! それが「個別具体化し
   て神経衰弱」っていう、セグメンテーションそのもの!

勝 :そうなるよな。だから?

真子:だから、この横軸のところに、どんな「切り口」を入れるかが
   とっても大切!

勝 :その「切り口」で括っていくわけだからな。

真子:その「切り口」がさっきの「10の切り口」なんだよね?

勝 :そういうこと。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆セグメンテーションの前提:「ニーズの違い」を捉えていること
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

真子:じゃ、次は総まとめとして、私がまとめる番なんだよね?

勝 :前号で確かにそう言ったけどさ……すっげー大事なこと忘れて
   た。だから、それちょっと待って。

真子:きゃははは、そーなると思ってた。当ててみせようか?

勝 :え?

真子:どんなセグメンテーションが「使えるか」とかじゃない?

勝 :おお……当たりだ……あのなあ……わかってたら言えよ。

真子:後で聞こうと思ってたんだもん♪

勝 :ここまでやってきたのは、言ってみれば「どういう」セグメン
   テーションができるか、っていう話だったからな。

真子:それで、どんなセグメンテーションがいいのか悪いのか、って
   いうのは、ポロポロとはあったけど……

勝 :その通りだよ。何が「良いセグメンテーション」なのかを定義
   する必要があるよな。

真子:きゃははは、「そんなセグメンテーションじゃダメだ!」とか
   で始めておいて、それがなきゃねー。

勝 :そういうことだ。

真子:じゃあ、「良いセグメンテーション」って何??

勝 :良いセグメンテーションの条件の前に、まずセグメンテーショ
   ンは「ニーズの違いを捉えている」という前提がある。

真子:「条件」じゃなくて「前提」なの?

勝 :そうだよ。そもそもセグメンテーションの目的って何だっけ?

真子:お客様によってニーズが違うから、分けて対応する!

勝 :そうだよな。だから、「ニーズの違いを捉えていること」は、
   「目的」であって、「条件」とは少し違う。

真子:できて当然、ってこと?

勝 :「当然」というほど簡単なことではないけど、それを満たして
   いないとそもそも意味が無いから「前提」なんだよな。

真子:「ニーズの違い」が捉えられていなかったら、やってもしょう
   がないってこと?

勝 :そういうこと。分ける意味・括る意味がない。

真子:じゃあ、「前提」は「ニーズの違いを捉えること」、と……
   それで?

勝 :良いセグメンテーションの条件は、3つある。

条件1)論理性:括れるか?
条件2)実戦性:使えるか?
条件3)戦略性:勝てるか?

真子:相変わらずシンプルだねー。でも、これだけじゃちょっとわか
   らないから……

勝 :1つ1つ説明していくか。

真子:お願いしまーす!

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◆良いセグメンテーションの条件1 論理性:括れるか?
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勝 :じゃあ条件の1つめは「論理性」。「明確な基準で、モレなく
   ダブりなく分けられるか」

真子:えっと……「論理性:明確な基準で、モレなくダブりなく分け
   られるか」ね

勝 :要は「括れるか」ってこと。

真子:括れないことってあるの?

勝 :例えば、真子の会社のイタリアンレストラン、そーれ・しちり
   あーので言えば「外食好き」なんていうのはダメ。

真子:な、なんで?

勝 :「外食好き」ってどういう人だよ。

真子:「よく外食する人」。

勝 :「よく」ってどれくらいだよ。あとその「外食」に駄菓子屋の
   買い食いは入るのか? コンビニでお湯を入れたカップ麺は?

真子:やー、それも外食って言えばそーかー。意地悪。

勝 :それを明確に定義しろ、ってことだ。10年に1回外食をする
   人は、外食好きなのか? 一応たまに外食はするんだぜ。

真子:ううん、10年に1回だと少なすぎる。l

勝 :じゃあ、何ヶ月に何回ならいい? そもそも外食の回数だけで
   好き嫌いはわかるのか? 誘われて行ってるだけかもしれない

真子:なるほどぉ……何をもって「外食好き」とするか、をはっきり
   させよう、ってことね。

勝 :そう。「映画が好きな人」とかも同じ。「映画をよく見る」で
   もダメ。それだと明確に分けられない。

真子:映画を週1回以上見る、ならいいんだね。

勝 :その場合、TVで見た映画が入るかどうか、なんかも問題にな
   るよな。

真子:あ、そっか。映画館で見るのとは「好きの度合い」が違うよね

勝 :そう。どうすればいい?

真子:「映画館でお金を払って、映画を毎月1回以上見る」みたいな
   感じならいいのかな??

勝 :そういうこと。「論理性」の基準としては、量的調査の質問と
   して適切か、っていうのが1つの目安になるな。

真子:「量的調査」って?

勝 :例えば何百名にアンケート用紙を配って聞くような調査。ウェ
   ブ調査でもいいけど。後で、きちんと数でまとめる調査のこと

真子:あ、グループインタビューとかじゃなくって、ちゃんと数値化
   する調査のことか。

勝 :そう。そこで、回答者が迷うようなのはダメ。「あなたはどれ
   くらい映画が好きですか」って聞かれても、答えにくいだろ。

真子:きゃははは、そーだよね。

勝 :それに、ある人の「すごい好き」は年1回映画を観に行くこと
   かもしれないし、ある人だと毎週1回、かもしれないから……

真子:人によるバラツキがでちゃう!

勝 :そういうこと。あと、「モレ」があってもダメ。

真子:「モレ」って?

勝 :みんながどこかのセグメントに入る、ってこと。外食の例で言
   えば「外食しない」っていうセグメントが必要。

真子:えー、でも「外食しない」人は、うちの顧客ターゲットじゃな
   いんだけど。

勝 :それは「ターゲティング」の話で、セグメンテーションじゃな
   いだろ。「狙う」のは後。まずは「分ける」のが先だからな。

真子:あ、そっか、まずは分けるだけなんだ。で、その後でどこを狙
   うかを考えるのが「ターゲティング」か……

勝 :だから、全員が必ずどこかのセグメントに入る必要がある。

真子:それが「モレなく」かあ……

勝 :そう。

真子:ねーねー、「明るい人」なんていうのは、もちろんダメなんだ
   よね?

勝 :もちろんダメ。でも、定義の仕方次第ではできる。

真子:え?

勝 :例えば「その人と話していると楽しい気持ちになれる」という
   質問に対して、「はい」と答える人が1/2以上、とか。

真子:あーなるほど、本人じゃなくて、周りの人に聞くんだ!

勝 :そういう手もある。要は「論理性」があればいいわけで、定義
   の仕方は色々とあっていい。

真子:じゃーじゃー、「カワイイ女の子」なんていうのも……

勝 :言うと思った。真子の会社の社員にでもアンケートしてみろ。
   きっとお情けで「真子はカワイイ」って言ってくれるよ。

真子:「お情け」じゃないもん。みんなそー思ってるもん。

勝 :その話は結構大事で、手法の客観性の問題だな。真子の会社の
   社員はまさか「社長はカワイくない」なんて言えないだろ。

真子:そーかなー。

勝 :記名式だと、真子の復讐が怖いだろうが。無記名なら、ちゃん
   と答えてくれるかもな。

真子:でもいーもん。「勝さんセグメント」で真子が「一番カワイイ
   女の子」になってればいーんだもん。

勝 :それ、喩えはともかくとして、重要なポイント。

真子:え?

勝 :それは後にして、次、次。

真子:はーい。

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◆良いセグメンテーションの条件2 実戦性:使えるか?
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勝 :次の基準は、「実戦性」。「具体的な打ち手に落ちるか」

真子:あ、これはやったね。セグメントごとに「売り物」「売り方」
   を変えられるか、だよね。

勝 :そう。「具体的な打ち手」は要は4P。Product、
   Promotion、Place、Priceの4P。

真子:「売り物」「売り方」「売り場」「売り値」だね。

勝 :そういうこと。分けたはいいけど、結局同じ売り物を同じ売り
   方で同じ売り場で同じ売り値で売るなら、分ける意味がない。

真子:だったら、分けるだけムダ、ってことだね。

勝 :そういうこと。「外食好き」なんていうのも、意味があるかど
   うかわかんないぜ。

真子:な、なんで?

勝 :だって「外食好き」な人のためのメニューとか、作れるのか?

真子:え……あ、そ、そっか……

勝 :「脂っこいモノが好きな人」なら、「脂っこいモノを作る」っ
   ていう打ち手があるけどさ。基準の明確さはさておいて。

真子:あ、そうだね……どんな食べ物が好きか、なら「メニュー」に
   落ちてくるけど……

勝 :ただ、「外食をあまりしない人」でも、入りやすい店にする、
   ということができるのなら、意味があるのかもしれない。

真子:あ、それはできるかも。選びやすいメニューとか、入りやすい
   店構えとか。

勝 :そういうこと。「具体的な打ち手に落ちてくる」のであればい
   いし、落ちないのであれば、分けてもしょうがない。

真子:うん!

勝 :あと、そのセグメントに「到達できるか」っていうのも重要。
   「アクセスのしやすさ」って言ってもいいな。

真子:「到達」できるか、って?

勝 :セグメントごとのアクセス方法があるか、ってこと。

真子:「セグメントごとのアクセス方法」って?

勝 :例えば、「国内線の飛行機に週1回以上乗る人」は、アクセス
   しやすい。どこに行けばいい?

真子:あ、空港だ!! その人たちは空港にいる!

勝 :そうだよな。よくクレジットカードの入会促進を空港でやって
   るけど、飛行機使う、ってのはカードの優良顧客なのかもな。

真子:なるほどねー。

勝 :でも「世帯年収」で分けたセグメントに、年収別にアクセスす
   るのは大変。例えば「世帯年収1千万円以上の富裕層」だと…

真子:あ、確かに。そういう人だけにアクセスするのは難しいかも。
   でもでも、高額所得者リストとかないのかな?

勝 :発想としてはそうなる。「リストがあるか」とか考える。高額
   所得者リストは、税務署にはあるはずだけど……

真子:それこそ私たちは「アクセス」できないね、きゃははは!

勝 :昔は長者番付が公開されてたし、高額所得者リストってあった
   んだけど、最近は個人情報が色々厳しいしな。

真子:ね、住んでるところでわかるんじゃない? 高級住宅地とかに
   チラシをまけば「アクセス」できるよね?

勝 :そういう手もあるな。ただ、オートロックのマンションとかだ
   と最近は入れないぞ。

真子:そっかあ……あ! プレミアムクレジットカード持ってる人と
   かは富裕層だよね? 年会費が何万円もするようなカード。

勝 :そうそう、だからプレミアムクレジットカードの所有者には、
   カード会社から色々なDMが来るよな。

真子:そっか、高額所得者に「アクセス」したければ、そういう方法
   を取るんだ。

勝 :そう。もしくは、高額所得者が読むような「雑誌」に広告を打
   つ、とか、でもいいな。

真子:そっか、そういう「広告媒体」があればいいんだ。

勝 :そうそう。「アクセスのしやすさ」は、お客様が「どこにいる
   のか」がわかりやすいかどうか、なんだよな。

真子:なるほどねー、「どこにいるか」か……「読む雑誌」っていう
   このも、ある意味「どこにいるか」だもんね。

勝 :「飛行機に乗る人」とかもそう。まさに「どこにいるか」がわ
   かりやすい。

真子:確かに、飛行によく乗る方は、空港にいる、っていうのがわか
   りやすいね。

勝 :だから、セグメンテーションするときは「その人はどこにいる
   んだ?」って考えることが大事になるな。

真子:「その人はどこにいるんだ?」かあ……まさに「実戦性」だね

勝 :セグメンテーションはお遊びでやってるんじゃないからな。そ
   のセグメントにアクセスできなきゃ、意味がない。

真子:ね、別に、そのお客様だけにアクセスしなくてもさ、新聞広告
   とかでそのお客様向けにメッセージを出せばいいんじゃない?

勝 :お、鋭いな。「メッセージ」でセグメンテーションする方法、
   はまさにそういうこと。

真子:やったあ。

勝 :セグメンテーションをするときに、BASiCSの「Sm:メ
   ッセージ」も合わせて考える、ってことだ。

真子:そっかー。つながってるんだもんね。

勝 :でもその広告を出す「新聞」を読んでいなかったら意味がない
   からな。

真子:あ……そっか、やっぱり「アクセス」できなきゃダメなんだ。

勝 :結局はそういうこと。お客様がいらっしゃらないところにいく
   ら店や広告を出しても意味が無い。

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◆良いセグメンテーションの条件3 戦略性:勝てるか?
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真子:次が3つめだよね?

勝 :3つめが「戦略性」。「強みが活きるか」。

真子:へ? それって、分けられるかどうかとカンケーないよね?

勝 :分けた結果、全部のセグメントで何やっても勝てない、ってこ
   とになったら、分ける意味がないだろうが。

真子:あーそっかあ……

勝 :だから、自分が「勝てる」という要素を持っていることも大事
   になってくる。

真子:なるほどー、分けたはいいけど「全部勝てませーん」じゃ意味
   がないよねー。

勝 :そう。ただ、気をつけないと、自分本位の切り口になるから、
   ニーズを捉えた上で、ってことを忘れないように。

真子:「強みが活きる」って、例えばどんなのがあるの?

「そう聞きたくなるよな……」と言いながら、勝がノートパソコンを
操作し、真子に向ける。

-----------< 記事引用 >------------

◇「低価格品に押され、苦戦が続く中価格帯の化粧品。逆風をよそに
 販売を伸ばしているのがコーセーの「エスプリーク」だ。2011
 年3月のリニューアルに伴い、イメージ重視から「時短メーク」な
 ど利便性を打ち出す戦略に転換。分かりやすい特徴づくりが多忙な
 女性に支持された」

◇「例えば同系の3色が並んだアイシャドーパレット「ブレンドディ
 メンショナルアイズ」。通常は色の濃淡に応じて目の際からまぶた
 にかけて1色ずつ塗って目元の陰影をつくるが、新商品は3色同時
 にチップにとってまぶたに一気に塗る。色が混ざってくすむことが
 なく、立体感を演出できる」

2012/11/30 日経MJ P.6

-----------< 記事引用 >------------

真子:なるほど、強みは「時短」かあ……となると、セグメンテーシ
   ョンの切り口に「忙しさ」みたいなことが入ってくるんだよね

勝 :そうそう。「忙しさ」がいいのか、「朝時間がない」というこ
   とがいいのかはわからないけどさ。

真子:え? どう違うの?

勝 :「忙しい」だとビジネスパーソンみたいな感じになるけど、
   「朝時間がない」なら、幼稚園に子供を届ける母親も入る。

真子:あ、なるほどね。とにかく、「時短」っていう「強み」を活か
   す切り口を入れた方がいいってことだ。

勝 :これもそうだな。旅行用バッグ。

-----------< 記事引用 >------------

◇「かばん大手のエース(東京・渋谷)が「ゼロハリバートン」ブラ
 ンドで6月下旬に発売したスーツケース「ゼロエアー」の売れ行き
 が好調だ」

◇「容量35リットルで重量が2・2キログラムと、従来商品に比べ
 約4割軽いのが特徴で、特に女性の購入者が目立っている。同商品
 がけん引役となりゼロハリブランド全体の販売は前年同期比5割増
 で推移している」

◇「女性の購入者が多いのも特徴で、購入者の男女比は半々程度。ゼ
 ロハリブランドの商品の購入者は従来8~9割が男性だった」

2011/12/14 日経MJ P.9

-----------< 記事引用 >------------

真子:あ、なるほど。「軽さ」を重視するのは「女性」だ! 力があ
   んまりないから……

勝 :そうなるよな。

真子:なるほどぉ。じゃあ切り口に「性別」を入れた方がいいね。

勝 :ただ「女性」とか「力が無い」だけに限らないぞ。

真子:え? 何で?

勝 :例えば、「重いモノを運ぶ人」とか。中に入れるモノが重いの
   なら、カバンは軽い方がいいだろ。耐久性がある前提で。

真子:あ、確かにぃ! 同じ力でより多くのモノを持てる!

勝 :となると、「運ぶモノの重さ」っていう切り口があるといいか
   もしれないよな。

真子:なるほどねー。そのセグメントは「自社が勝てるセグメントな
   のか」っていうのを、セグメンテーションの時に考えるんだ。

勝 :その方が、あとで「絞る」ときに使いやすい。結局、全ての顧
   客は狙えないからセグメンテーションするわけだしな。

真子:そっか、後で結局絞るんだもんね。そのときに「強み」が活き
   る顧客を探す、っていうことだ。

勝 :そういうこと。さっき、真子が「勝さんセグメントで真子が一
   番カワイイ女の子になってればいい」って言ったろ?

真子:やー、覚えててくれたんだー。真子……う、れ、し、い、な♪

勝 :いちいちうるさいよ。で、それがまさに「勝てるかどうか」っ
   ていうことだよな。

真子:え? あ! そうか「勝さんセグメント」では真子のこの美貌
   がすごい「強み」になるんだ!

勝 :内容はさておき、ロジックとしては、その「美貌」が強みにな
   るような切り口も必要、ってことだな。

真子:やっだー、勝さん、珍しく素直なんだからー。そっかー、やっ
   ぱり真子が一番だって思ってくれてるんだー。

勝 :繰り返すが、内容については全く同意していないからな。

真子:あれ? ってことは、セグメンテーションするときに、自社の
   「強み」を知っておく必要がある、ってこと?

勝 :そりゃそうだ。セグメンテーションはBASiCSの「C:顧
   客」の一部だからな。「S:強み」と合わせて考える。

真子:うわ、じゃあセグメンテーションって、「顧客」のことだけ考
   えてちゃダメなんだ!

勝 :当然だ。さっきの「メッセージ」もそうだけど、BASiCS
   の5つは行ったり来たり、だからな。

真子:そーだよねえ……全体の一貫性、だもんね……

勝 :じゃあ、「良いセグメンテーションの条件」をまとめてみ。セ
   グメンテーションの「前提」を忘れずに、な。

真子が「うん!」と元気よく答え、すぐノートにまとめ、勝に見せる

○セグメンテーションの前提:顧客のニーズの違いを捉えていること

○良いセグメンテーションの3条件

1)論理性:括れるか?
・明確な基準で、モレなくダブりなく分けられるか

2)実戦性:使えるか?
・具体的な打ち手に落ちるか、アクセスできるか

3)戦略性:勝てるか?
・自社の「強み」が活きるか

真子:これでいーよね?

勝 :そうだな。ホントはBASiCSみたいに覚えやすくしたかっ
   たんだけどなぁ……頭文字をとったりして。

真子:なるほどねー。「括れるか」「使えるか」「勝てるか」だから
   「く・つ・か」か……びみょー。

勝 :だよな。まーでも「括れるか」「使えるか」「勝てるか」で、
   覚えればいいだろ。

真子:うん、そーだね!

勝 :で、総まとめの前に、もう少しだけ続けることにする。まだや
   ることがあった。

真子:きゃはは、そーなると思ってた♪ 

「飯食うと、エスプレッソ飲みたくなるのは何でだろな」
「あれ、もー無いの?」
「真子が遠慮無くガブガブ飲んだから、残り少ないけど、食後のため
 に少しだけ残しといた」
「ちょーだい、ちょーだい」
「ダメ、オレが先」
「えー、けちぃ」
「じゃあオマエ、コーヒー買って来いよ」
「ムリに決まってるじゃん。そんなに長く駅に停まらないでしょ」
「だから、入手可能性という意味で貴重なんだよ」
「なんでそんなムズカシー言葉使うのよー、きゃははは」
「とにかくオレが飲んでから」

勝がステンレスボトルのキャップを開け、一口エスプレッソを口にす
る。もう1口だけ飲むと、真子に「ほら」とボトルを渡した。

「ふう……」

真子がボトルに口をつけると、ボトルを傾けて飲み干した。

「もうほとんど無いじゃん!」
「さっきオマエが飲んだんだろ」
「ねー、エスプレッソまた作ろうよー。マシンはあるんでしょ?」
「お湯がありゃできるけどな……」
「お湯かあ……」
「そんなもんないだろ」
「お湯、お湯……あ!! いいこと思いついた!」
「?」
「お湯の入れ物は、このボトルでいいよね?」
「いいけど、お湯のアテはあるのか?」
「頼んでみる」
「は?」
「じゃあこのボトル洗ってくるねー。ゴミも一緒に捨ててくるよ」
「お、ありがと」

真子がテーブルを片付け、元気よく立ち上がる。

「ちょ、おい、パソコン気をつけろって」
「きゃはは、ごめんごめん」

真子が、通路側に座る勝と、前の座席との間を強引に通ると、早足で
通路を歩いて行った。

次号に続きます! もう少しです。

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◆今日のまとめ
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●「良いセグメンテーション」の条件は、3つ。1)括れるか、2)
 使えるか、3)勝てるか。色々と考えよう!

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━特別編Vol.232(累計1008) 2013/04/18

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●セグメント・戦場の選択基準は、「儲かるか」「勝てるか」「やり
 たいか」の3つ。

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◆まずは、前号の復習から!
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*本編の「今の時間」は、年が明けた1月2日の午後です。

1月1日、真子と勝はほぼ1日中マーケティングレッスンに明け暮れ
た。翌1月2日は、朝の温泉を楽しみ、宿を後にして帰京。

2人を乗せた電車はどんどん東京に近づいている。

車内アナウンスが流れる。
「次の~○○駅で~3分間停車ぁ、いたしぃます」

「やったぁ、チャンスとーらい!」
「何が?」
「お湯もらってくる! お湯があればエスプレッソ作れるでしょ?」
「できるけど、どこでお湯もらうんだ?」
「ダメモトで頼んでみるよ!」

真子が今洗ったばかりのステンレスボトルを持って、駅のホームへと
駆けだしていく。「アイツ、どこに行くつもりだ?」と思って勝が真
子の姿を目で追うと、真子はホームの立ち食いソバ店に飛び込んだ。

「なるほどなあ……立ち食いソバ屋にはお湯があるか……でも間に合
 うのか??」 勝がつぶやく。

「おい、電車が出るぞ」と勝が自分に声をかけるかのように言うと、
真子が店から飛び出し、電車へと駆け込む。

ほどなくして真子が電車の廊下に姿を現すと、得意満面で笑みを浮か
べ、勝の隣の窓側席に自分自身を押し込んでいく。

「へっへー、おソバ屋さんでお湯もらってきたよ~」
「すげーな、オマエ。よく思いついたな」
「だって飲みたかったんだもーん」
「必要は発明の母、ってヤツか。しかよくお湯もらえたな」
「カワイイ女の子はトクだよねー。お湯ください! って言ったら、
 おじさんが喜んでお湯くれたよ」

真子が勝にステンレスボトルを差し出す。

「カワイイ女の子だからじゃなくて店員さんがいい人だったんだろ。
 何だよ、そのおにぎりは……」
「あ、これ? さすがにタダでお湯もらうのも悪いから、おにぎり買
 ってきたの。勝さん、食べる?」
「いや、もういい」
「じゃー、真子が食べるねー。ね、苦労してお湯もらってきたんだか
 ら、エスプレッソ作ってよね」
「はいはい……まあオレも飲みたかったからな」

勝がタナの上の荷物から携帯用エスプレッソマシンと、カップを取り
出す。勝がマシンを操作する間に、真子はおにぎりをパクつく。

勝が「ほら、2ショットできたぞ」と、真子にカップを渡すと、真子
は「やったあ」と両手でカップを抱え、一気に飲み干す。その間にも
勝はマシンを操作し、真子が空にしたカップに注いでいく。

「あれ、お代わりくれるのー?」
「これはオレのだよ!」
「きゃははは、そりゃそっかー」
「あれだけポッド(コーヒーの粉が入ったパック)持ってきて、まさ
 か使い切るとはな……」
「勝さん、飲みすぎー」
「オマエもだよ!」

勝は入れたばかりのエスプレッソを、大事そうに口にする。

「ふう……」
「なんか一息ついたねー」
真子が食べ終えたおにぎりやポッドののゴミをビニール袋に集める。
「そうだな。じゃあ始めるか」

真子:はーい。まずは復習ね。今やってるのはこれでーす♪

真子がノートを開きながら説明していく。

○セグメンテーションの「括って広げる3ステップ」

ステップ1:顧客像の具体化
ステップ2:ニーズの普遍化
ステップ3:ニーズで人を括る

○セグメンテーションで「括る」ための切り口

切り口1:使い方・利用場面
・価値は使い方に現れる。逆に使い方を見ればニーズがわかる!

切り口2:困りごと
・どんなことに困っているのか、困りごとが同じならニーズが同じ!

切り口3:体質
・肌質・髪質・アルコールへの耐性などでニーズが違う!

切り口4:所有資源
・お金・時間・エネルギー・車などの持ち物などでニーズが違う!

切り口5:こだわり・マニアレベル
・ビギナーとマニアでニーズが違う!

切り口6:購買履歴
・何を買ったかで、直接の購買行動がわかる!

切り口7:競合
・どの競合商品を買うかに、ニーズが現れる

切り口8:バイヤー・ユーザー
・「買う人」と「使う人」が違う場合は、それぞれにニーズが違う!

切り口9:ありたい姿
・「ありたい姿」の違いは、ベネフィットの違いそのものとなる

切り口10:属性
・BtoCなら性別・年齢など、BtoBなら業種・企業規模など

真子:それで、前号は「良いセグメンテーションの条件」でしたぁ!
   それがコレでーす。

○セグメンテーションの前提:顧客のニーズの違いを捉えていること

○良いセグメンテーションの3条件

1)論理性:括れるか?
・明確な基準で、モレなくダブりなく分けられるか

2)実戦性:使えるか?
・具体的な打ち手に落ちるか、アクセスできるか

3)戦略性:勝てるか?
・自社の「強み」が活きるか

勝 :OK。

真子:これ、シンプルでいーねー。

勝 :「単純」であることは、必ずしも「簡単」であることを意味し
   ないからな。むしろ逆の場合が多い。

真子:うん。でも、「単純」じゃないと理解できないからさ。

勝 :まあ真子はそうだよな。

真子:きゃははは、そーだよねー、ってひっどーい!

勝 :まあいいから次な。

真子:はーい。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆「セグメント」=「戦場」を選ぶ3つの基準
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

勝 :じゃあ今からは、セグメントを選ぶ3つの基準、な。

真子:え? さっきのとは違うの?

勝 :さっきのは「セグメンテーション」だから、「分け方」「括り
   方」の話。

真子:ここからは?

勝 :「選び方」の話。まずはきちんと「分ける」「括る」ことがで
   きていないと「選ぶこと」ができないから……

真子:あ、だから「分け方」「括り方」が先なんだ。

勝 :そう。分けたあとで、「どうやって選ぶか」ってことな。

真子:なるほどねー。ターゲティングの話?

勝 :そうも言えるし、「戦場」の選び方とも言える。

真子:え? あ、そっか、セグメンテーションは、「戦場」の分け方
   でもあるからだ。

勝 :そうそう。うまく「括られている」セグメンテーションは、
   「戦場」と等しくなることが多い。なぜだ?

真子:セグメンテーションは「ニーズで括る」ことで、「戦場」は、
   「同じニーズの集合」だから!

勝 :そういうこと。で、セグメントの基本的な「選択基準」は3つ
   ある。

真子:また3つなんだー。

勝 :あえてそうしてる部分はあるけどな。9個もあると多すぎるし
   1つに絞れるほど簡単でもない。

真子:なるほどー。

勝 :で、その3つの「選択基準」は、何だと思う??

真子:なんだろーな……「売れるか?」とか? きゃははは。

勝 :惜しい。それも入ってくるけど、もう少し広い概念。

真子:え? 惜しいの? やだー、真子えらーい。

勝 :いいから。

真子:「売れる」より広い概念、かあ……

勝 :「売れる」ことの目的は?

真子:売れることの目的?

勝 :そう。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆セグメント選択基準1)市場の魅力度:儲かるか?
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

真子:あ! 「儲かる」ことだ!! 利益が出る!

勝 :正解! 選択基準その1は、「儲かるか」。ちょっと堅い表現
   にすると、「市場の魅力度」だな。

真子:「市場の魅力度」っと。儲かるか、ってことは、価格が高くつ
   けられる、とか?

勝 :それもあるけど、まずは、そのセグメントの「市場規模」が十
   分にあるか。

真子:あ、そっか。市場が小さすぎると、売上が取れないからだ。

勝 :そう。どのくらいをもって「十分に大きいか」は、会社によっ
   て変わるけどな。大企業なら、大きな市場が必要。

真子:ねー、この「市場規模」って業種業態とは限らないんだよね?
   「戦場」は業種じゃないんだから。

勝 :もちろん。「ファミリー」セグメントの「外食」、なんていう
   と、マクドナルド、ファミレスに回転寿司……

真子:だとすると、市場規模を測るのは工夫がいるよね。「ファミリ
   ーの外食」市場なんて都合の良い数字があるかわかんない……

勝 :そうだな。そういう、「人×使い方」で推測していくしかない
   かもしれない。

真子:そっかー。

勝 :だからこそ、セグメンテーションの切り口の「論理性」が大事
   でもある。

真子:あ、「良いセグメンテーションの3条件」の「1)論理性」!
   数値化できるかかどうか。

勝 :そういうこと。で、市場規模は、どう「分解」する?

真子:えっと……客数×客単価、かな?

勝 :正解。それが「売上」だよな。利益を構成するのは、「売上」
   と、何だ? 「売上」に何を掛けると「利益」になる?

真子:売上に何を掛けると利益に……あ! 「利益率」!

勝 :そうだな。「市場の魅力度」という意味であと必要なのは?

真子:え? 「売上」と、「利益率」に……まだあるの??

勝 :今のことだけ考えてちゃダメだよな? 未来のことも……

真子:え……? あ! 将来性! その市場が将来伸びるかどうか!

勝 :そうそう。正確に言えば「成長性」。そのあたりが、「1)市
   場の魅力度」で検討すべきことになるよな。

真子:なるほど。「儲かるか」を市場規模、利益率、成長性、でチェ
   ックするんだ。

勝 :そう。それが「基準1)市場の魅力度」。じゃあ次の基準な。

真子:ねー、市場の魅力度、っていうより「儲かるか」って言ってく
   れた方がいーよー。

勝 :まあそうなんだよな。「市場の魅力度は?」って言われるより
   「儲かるか?」って聞かれた方が、アタマが働くよな。

真子:うん!

勝 :だから、基準1は「儲かるか」。次は何だと思う?

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◆セグメント選択基準2)長期的競合優位:勝てるか?
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真子:んーと……儲かるか……以外にあるんだよね……?

勝 :そのセグメントがすっごい魅力的だったとしても、それだけじ
   ゃダメだろうが。

真子:んー……男の子だったら、真子の魅力でノックアウトできるん
   だけどな……

勝 :それ、ホントか??

真子:もちろん!

勝 :「真子の魅力」って、誰と比べて言ってる?

真子:え? そ、そりゃ……他の女の子?

勝 :だから、その「他の女の子」のなかに、真子より魅力的な子は
   いないって言えるのか?

真子:も、ももも、も、もちろん……

勝 :オマエの魅力はおいといて、今のがヒントだぞ。

真子:え? 「他の女の子のなかに真子より魅力的な子は……」あ!
   わかった! 「競合が強いか」だ!!

勝 :そうそう。もうちょっと平たく表現すると?

真子:その競合に「勝てるか」!! も、もちろん真子は勝てるんだ
   からね!

勝 :だから真子の話はおいといて、その魅力的なセグメントを、強
   い競合が独り占めしてたら、手が出せないだろうが。

真子:そっかあ……

勝 :さっきのセグメント選択基準は何だっけ?

真子:儲かるか! 市場規模、利益率、成長性。

勝 :魅力的な「儲かる」セグメントだったら、みんなほっとかない
   よな? っていうか、魅力的なセグメントほど……

真子:競合が激しい! そうかあ……そうだよね……魅力的な人ほど
   彼女がいるかもしれないってことか……

勝 :そういうこと。市場規模なんかが大きいところには、滅茶苦茶
   強い「競合」がいるんだよな。

真子:えっと……あ、その競合が強いからこそ、市場規模が大きいっ
   てことだ!

勝 :そういうこと。「勝てる」かどうかは、どうやって判断する?

真子:「強み」があるか、だよね。

勝 :そうそう。「強み」っていうのは?

真子:「お客様が競合ではなく自社を選ぶ理由」!

勝 :それを作れるか。競合がいてもいい。っていうか競合がいない
   戦場なんてない。「自社を選ぶ理由」が作れればいい。

真子:え? 競合がいてもいい……あ、勝てればいいんだね。

勝 :そういうこと。

真子:これ、前号の「勝てるか」とダブるよね? 「良いセグメンテ
   ーションの条件」の、「勝てるか」と。

勝 :そうそう。セグメンテーションがうまく切れていれば、勝てる
   セグメントを選べるはずだぞ。

真子:そっか、「分ける」基準として「勝てるか」っていうのを入れ
   ておいて、「選ぶ」基準で「勝てるセグメント」を選ぶんだ。

勝 :そう! これ、売れたま!の2011年12月15で取り上げ
   た記事だけど、その例としてわかりやすい。

勝が真子にノートパソコンを向けると、真子が覗き込む。

-----------< 記事引用 >------------

◇「ダイエーが食品や日用品を恒常的に低価格で販売する「毎日安売
 り」手法を本格展開する。チラシ代や人件費削減などで店の運営費
 全体を約1割抑える分、店頭価格を通常より2~3割引き下げる」

◇「効率的に運営するため、EDLP業態の店は平日の来店頻度が高
 く、狭い商圏の中に多くの居住者が住む住宅街に立地する店が向
 く(中略)週末に買いだめする客が多い郊外の店では、毎日安売り
 する集客効果が低くなってしまう」

◇「同店も昨年11月にEDLPを導入した直後はチラシをやめたこ
 とによる客数減でいったん売り上げが落ちた。だが、利用頻度が高
 い近隣住民を中心に「毎日安い」ことへの認知度が徐々に高まって
 客数が回復。今年3~8月の売上高は前年同期を上回り、営業利益
 は同2倍以上になった」

2011/12/02 日経MJ P.14

-----------< 記事引用 >------------

真子:あ、これ見たことある! 「EDLP」つまり「毎日安売り」
   がダイエーの「強み」で……

勝 :その「強み」を反映する「セグメントの切り口」は?

真子:「来店頻度!」 よく来店されるお客様にとって、EDLPは
   ありがたい! でも土日来店客にとってはそうでもない……

勝 :そうだよな。だから、EDLPを「強み」と考えるなら、来店
   頻度という「切り口」を加えておいて……

真子:「セグメント選択基準」として、それを使う!! 来店頻度が
   高いお客様を選ぶんだ!

勝 :そういうことだ。

真子:なるほどぉ……ね、勝てそうじゃないセグメントでも、勝てる
   「部分」はあるよね? そのセグメントをもう一度分けて……

勝 :お、そうそう。勝てるところを切り取っていく、という手はあ
   る。でも、そのセグメントが小さすぎたらダメだよな??

真子:そ、そうだけど……

勝 :だから、どんな基準でチェックすればいい? さっきやったぞ

真子:え? あ! そうか、「儲かるか」だ!

勝 :そうそう。だから??

真子:だから……「勝てそうもない」セグメントでも、勝てそうな一
   部をまた切り取って、「儲かるか」をチェックする!

勝 :そういうこと。「儲かるか」「勝てるか」っていうのを組み合
   わせて考えていく。

真子:うん、わかった。

勝 :これが基準2、「勝てるか」だな。

真子:うん。これが2つめ、ってことは、もう1つあるんだよね。3
   つある、って言ってたよね?

勝 :そうだな。なんだと思う?

真子:えっと、儲かるか、勝てるか、と来て……何だろう……?? 
   ヒントください!

勝 :儲かるか、は対「顧客」、勝てるかは対「競合」だよな。あと
   残るは……?

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◆セグメント選択基準3)自社の意思:やりたいか?
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真子:顧客、競合と来て、残るは……? 何?

勝 :「自分」。

真子:え……「自分」?

勝 :そう。自分自身。「自社の意思」として、やりたいと思える顧
   客かどうか。平たく言えば「やりたいか」。

真子:あ、なるほどぉ。「やりたいか」かぁ。

勝 :そう。組織として、あるいは従業員全員が、「尽くしたい」と
   思える顧客か。

真子:でもさ、「儲かる」「勝てる」セグメントを「やりたくない」
   なんてことあるの?

勝 :当たり前だ。仮に「儲かる」「勝てる」としても「やらない」
   という意思決定をすることはある。

真子:な、なんで? 儲かって勝てても?

勝 :だからそれは必要条件だけど、十分条件じゃねーんだよ。企業
   理念とかと一致しないのなら、やるべきじゃない。

真子:あ……そっかあ……例えばどういうの?

勝 :例えば「お互いに敬意を持てる人」としか仕事しない、とか。
   人をアゴで使うような人は「儲かる」としてもお断りだ。

真子:なあるほどねー。それは人それぞれ、かあ……

勝 :そうだな。だから、他人がどうこう言うことではないな。

真子:でもさー、株主様は「儲け」を重視するよね?

勝 :だから、株主様了承の上で、か、そういう株主を探すか。オレ
   は、自分が100%株主なのはそういう理由。

真子:あ、そーなんだぁ。そういう風に考えていくんだ……

勝 :統治形態なんかも、つながってくるんだよな。

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◆セグメント選択基準とBASiCS
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勝 :でさ、唐突だけど、戦略BASiCSって何だっけ?

真子:えー、それはわかるよー。

真子がさらさらとノートに書いていき、はい、と勝に見せる。

 Battlefield:戦場・競合
 Asset:独自資源
 Strengh:強み
 Customer:顧客
 Selling message:メッセージ

真子:この5つで、マーケティング戦略を考える!

勝 :そうだよな。それで、セグメント選択基準は、それぞれ、
   BASiCSのどれの話だ?

真子:え?? あ……選択基準1は、「戦場」「顧客」ってこと?
   「儲かるか」って市場規模とかだから……

勝 :そうそう。選択基準2は?

真子:基準2は「勝てるか」だから……「競合」に対する「強み」で
   いいのかな?

勝 :そうなるよな。じゃあ、選択基準3の「やりたいか」は?

真子:企業理念だから……「独自資源」のソフト資源になる……あ!
   この選択基準って、BASiCSなんだ!!

勝 :そういうこと。BASiCSがそれぞれのチェックポイントに
   なっているんだよな。

真子:そうなんだ!! 3つの選択基準はBASiCSそのもの!

勝 :実はそういうこと。じゃあ、ここまでをまとめてみ。

真子は「うん!」と元気よく返事をすると、ノートにまとめていくと
すぐにノートを勝に見せる。

○セグメント・戦場の選択基準

選択基準1)市場の魅力度:儲かるか?

・市場規模、利益率、成長性
・BASiCSでは「B:戦場」「C:顧客」

選択基準2)長期的競合優位:勝てるか?

・そのセグメントにとっての「競合」ではなく自社を選ぶ理由を作れ
 るか
・BASiCSでは、「B:競合」に対する「S:強み」

選択基準3)自社の意思:やりたいか?

・自社の企業理念などとの適合
・BASiCSだは、「A:独自資源」の企業理念との適合

真子:どう??

勝 :うん、これでいい。

真子:やりぃ。これも、「儲かるか」「勝てるか」「やりたいか」っ
   て、シンプルでいーねー。

勝 :だろ? 覚えられないような基準じゃ、実戦で役に立たないか
   らな。こういうシンプルなチェックリストが大事。

真子:うん!

「○○駅~、○○駅~」

東京に近づくにつれて、車内アナウンスで流れる駅名も、聞いたこと
のある駅名になってくる。

「しかし、よく食った正月だったよな……」
「きゃははは、そーだねー」
「まあ、毎年のことだけどさ……」
「でも、帰ったら体重計が怖いなあ……」
「……」
「な、なによ、ちょっとは反応してよ」
「何を今更というか、何というか……」
「ひ、ひっどーい!」
「っていうか、もう別にいいだろ」
「あ、そっか、「今の真子がいいんだ」ってこと? そっかー」
「は?」
「うん、じゃあそれでいいや」
「いや、オレだって帰ったら運動するからな。食べた分は消費する」
「えー、裏切りものー」
「もう、明日くらいからジムもやってるだろうしな」
「そーなんだー」
「オマエもちょっとは運動しろ」
「ねーでもでも、脳みその運動は一杯したよ!」
「そりゃそーだな」
「アタマってエネルギー使うんだよね? そーだ、それで運動したこ
 とにしよー。うん、そーだ」
「そういうお気楽さは見習いたいよ、ホントに……」

次号、最終号……かも??

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◆今日のまとめ
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●セグメント・戦場の3つの選択基準は、「1)儲かるか」「2)勝
 てるか」「3)やりたいか」。覚えて、チェックポイントにしよう

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━特別編Vol.233(累計1009) 2013/04/22

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●セグメンテーション特集、総まとめ! その1

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◆総まとめ編 その1
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*本編の「今の時間」は、年が明けた1月2日の午後です。

1月1日、真子と勝はほぼ1日中マーケティングレッスンに明け暮れ
た。翌1月2日は、朝の温泉を楽しみ、宿を後にして帰京。

2人を乗せた電車はどんどん東京に近づいていく。

「ねー、勝さん、またエスプレッソいれてよー」
「まだ飲むのか?」
「だって、エスプレッソって量が少ないんだもん♪」
「そういうもんだからしょうがねーだろ」
「ねー、飲みたいよー、ねー、真子、お湯もらってきたよ?」
「わかったよ……じゃあ今から総まとめ編に入るから、作ってる間に
 ノートに今までのところをまとめておけよ」
「やったあ!」

真子がノートをめくっては戻し、というような作業を繰り返して、ノ
ートに書き込んでいく。

その間に勝が、携帯用エスプレッソマシンでエスプレッソを作ってい
く。何回か操作を繰り返すと、真子にコップを差し出した。

「できた。3ショット入れたから、半分ずつな。真子、先に飲んでい
 いぞ。オレの分、半分残しておけよ」
「わーい、ありがとうございまーす」

真子が、少しずつ味わいながら、こく、こく、と飲み下していく。

「ふう……ありがと! じゃあ残りは勝さんね、はい」

勝がコップを受け取ると、大事そうにエスプレッソを口に含んで、ゆ
っくりとおいしそうに嚥下していった。

「よし、じゃあ、総まとめ開始だ!」
「おー!」
「ここまでの分を一気にまとめていくぞ」
「うん!」

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◆まとめ1:自分と顧客は違う。顧客も色々いる。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

勝 :じゃあまずは一番最初から。

真子:うん! まずは……「お客様と自分は違う」っていうところ。
   だからお客様の立場に立つ必要がある。

勝 :そうだな。「自分が欲しいモノを作れ」は、入門としては正し
   いけど、それ以上のレベルでは「間違い」になる。

真子:うちの店でもさ、私が食べたいモノばっかり出したら、脂っこ
   いのばっかりになるよね!

勝 :そういうこと。「自分=顧客」という例外的な場合にのみ、
   「自分が欲しいモノを作れ」は正しい。

真子:まあそうしないと、男性が女性用の商品を作ったりできないも
   んね。その逆もあるし。

勝 :よくあるのは、大企業の高齢のトップが「若者が若者向けに考
   えた商品」を「オレはいらない」って否定しちゃうケース。

真子:え、そーなんだ!? ターゲットじゃない人に、「オレはいら
   ない」って言われてもねぇ……

勝 :いや、超有名企業でも普通にある。「アンタはターゲットじゃ
   ないんだ!」ってサラリーマンは社長に言えないからなぁ……

真子:うーん……私も社長だけど、部下にはそう言ってほしいな……

勝 :大丈夫。そうなってないときには自動的にわかるから。

真子:え? え? そーなの??

勝 :そう。売上が伸びてなかったら、「顧客」じゃなくて「自分」
   が欲しいものを作ってるってこと。

真子:なるほど! 売上が伸びてなければ、そうなってるんだね! 
   って……もー、意地悪。

勝 :そうなんだからしょうがないだろ。次に行こうぜ。それから?

真子:あ、うん。お客様も色々といらっしゃる。それぞれにニーズが
   違うから「分けて」対応する。それがセグメンテーション。

勝 :そうだな。例えば?

真子:基本的なところは、性別・年齢とか、年収とか。それによって
   ニーズが違うから、お客様を「分ける」

勝 :そうだよな。まずは「性別・年齢」とかで「分ける」。後で修
   正するけど、まずは「分ける」こと。

真子:うん。まとめるとこんな感じ?

真子がノートにまとめていく。

○まとめ1

・自分と顧客は違う。自分の欲しいモノではなく、顧客が欲しいモノ
 を作る。
・顧客と言ってもそれぞれにニーズが違うから、分けて対応する。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆まとめ2:もはや性別・年代では分けられない。ニーズで「括る」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

勝 :じゃあ次。

真子:次は、性別・年齢で分けるって言ってすぐに何だけど、性別・
   年齢ではもはや分けられない!

勝 :何で?

真子:性別・年代だけでは「ニーズの違い」を表せない。

勝 :そうだな。例えば「20代の女性」って言っても……

真子:20歳の女子大生、23歳の新人OL、28歳のキャリア女性
   に、29歳の子育て専業主婦じゃ全然ニーズが違う!

勝 :そう。だから、個別具体的にニーズを考えないといけない。

真子:ショックだったのは小学館の「小学3年生」とかのシリーズが
   3~6年生まで廃刊になってたことだなあ……

勝 :そうだな。小学生でも「小学3年生」とかの括りではニーズが
   分けられない。まして大人なら……

真子:うん。だから、性別・年代などに加えて「ニーズで括る」こと
   が大事になる。

勝 :その背後にある社会背景は??

真子:あ、そっか。その背後にあるのが「主流派の消失」

---------< デ ー タ 要 約 >---------

      単独世帯  夫婦のみ  夫婦と未婚の子  3世代
                 
1970  18.5  10.7  41.2    19.2
1989  20.0  16.0  39.3    14.2
2010  25.5  22.6  30.7     7.9

厚生労働省 国民生活基礎調査(2011年)
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001101476
表番号2

---------< デ ー タ 要 約 >---------

真子:昔みたいな「子供がいる家族世帯」ばっかりじゃなくなったん
   だよね。色々な世帯が増えて、それぞれにニーズが違う!

勝 :単独世帯が増えたし、その「単独世帯」でも、若者もいれば、
   高齢者もいる。

真子:だから「ニーズで括る」ことが大事。まず、セグメンテーショ
   ンの目的は、「ニーズが違う」人たちに分けて対応すること。

勝 :それで?

真子:でも、「分ける」というよりは同じニーズで「括る」。括る際
   は、性別・年代とかは関係ない。それがコレ。

○まとめ2:セグメンテーションの「括って広げる3ステップ」

ステップ1:顧客像の具体化
ステップ2:ニーズの普遍化
ステップ3:ニーズで人を括る

勝 :そうだな。括ることで、顧客をむしろ広げられる。

真子:うん。「個別具体的」な1人のお客様について「個別具体的」
   なニーズをまずは考える。それがステップ1。

勝 :「個別具体的」に考えようっていうと、必ず「顧客が減る!」
   って言われるけど、そんなことはないよな。

真子:うん。その「個別具体的な人」のニーズを普遍化して、同じニ
   ーズを持つ人を「括る」。それで顧客はむしろ広がる。

勝 :そうそう。小学3年生」じゃなくて「子供のための初めての英
   語学習」雑誌なら、年齢関係なく「括れる」よな。

真子:あー、なるほどねー。それならむしろ広がるね。

勝 :ニーズで括るイメージは?

真子:「個別具体化して神経衰弱」! お客様を1人1人個別に見て
   近い人を「括る」! 例えばうちの会社のレストランなら……

      勝     真子    恵利ちゃん    望ちゃん

食べる量  食べ過ぎ  多い     普通      少なめ
脂モノ   大好き   大好き    普通      普通
お酒    弱い    強い     弱い      強い
彼氏・彼女 いない   いない    いない     いない
使い方   接待    女子会    1人で     1人で
重要な品  ドルチェ  お酒     ドルチェ    お酒

勝 :そうだな。お酒の「強い」「弱い」があるなら、アルコールメ
   ニューに「強い」「弱い」表示をしてもいいよな。

真子:うん。それであくまで1人1人を個別に見ないと、括れない。
   神奈川県の気候を東西で分けるか、南北で分けるか……

○神奈川県略図(あくまでもイメージです)

    相模原          川崎

          厚木     横浜

    小田原   平塚     横須賀

勝 :NHKの天気予報だと、神奈川を東西で分けてる。

真子:っていうのも、1つ1つの都市を「個別具体的」にみた上で、
   東西で「括ってる」んだよね。

勝 :そう。「20代女性を狙う」なんて、地図を見ていきなり「神
   奈川県東部を狙う」って言ってることになるから、おかしい。

真子:まずは個別具体的に考えてから「括る」んだよね。

勝 :そう。例えば、長野県って南北つまり「タテ」に長いけど、気
  温つまり「寒暖」は何で「括られる」と思う?

真子:その口ぶりだと、南北じゃないってことだよね……?

勝 :そう。答えは「標高」。

(長野地方気象台HP 「長野県は南北に約2度の緯度差があります
 が、地形が複雑なために気温の分布はおおむね標高によって決まり
 ます」 www.jma-net.go.jp/nagano/kikou_tokucyou/
nagano_kikou_tokucyou.html)

真子:あー、なるほどー。それも個別具体的に都市を見て、括るんだ

勝 :そういうこと。あと、あれ忘れるなよ。ニーズの「階層構造」

真子:あ、うん。例えばコレだよね

○ビジネスパーソンのランチ「戦場」

階層0      ビジネスパーソンのランチ戦場
競合       全部、もう何でも!

階層1     仲良くなる戦場        栄養補給戦場
競合    寿司、レストラン、ホテル     たくさんある!

階層2 楽しく語らう  じっくり話す   速い食事  お腹一杯

顧客像 ○おしゃべりに ○取引先と来る  ○会議が  ○朝食抜
     来るマダム   男性会社員    近い人   いた人
    ○先輩と来る
     女性会社員

競合  レストラン   寿司屋      コンビニ   牛丼屋
    ホテル     ホテル      マック    定食屋
    ファミレス   レストラン    社内食堂   弁当店
                     牛丼屋

勝 :そうそう。ニーズの階層があって、それごとに競合が存在する

真子:うん。ニーズを広げようとすると、競合も増えちゃう。だから
   ニーズを絞っていく。すると顧客も「括れる」。

勝 :そうだな。

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◆まとめ3:セグメンテーションの10の切り口
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真子:それで、いよいろセグメンテーションの切り口。紆余曲折の末
   この10個が典型的な「括り方」

勝 :「紆余曲折」したのはオレだ。自分で作ったかのように言うな

真子:いーじゃん、そんなのわかってるよ。とにかくコレね。

○まとめ3:セグメンテーションで「括る」ための切り口

切り口1:使い方・利用場面
・価値は使い方に現れる。逆