2011-05 アイディア発想のコツ

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━特別編Vol.119 2011/05/02
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●必要は発明の母。「制約」の下で、「この状況下でどうする」と考
 え、頑張って「知恵」を出そう!
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◆GW特別号:アイディア発想
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●GWに、「アイディア発想」について考えてみよう!

いつの間にかゴールデンウィークまっただ中になりました。多くの方
はお休みかもしれません。

ということで、GWは少し気楽に、「アイディア発想」について考え
ていきましょう!

今回のテーマは、

○制約はアイディアを生む

です。

 

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◆アイディア発想は「技術」であって才能ではない
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●アイディアの出し方は「技術」「スキル」です。

芸術家になる、というのであれば話は別ですが、ビジネスにおけるア
イディアに必要なのは、問題解決の手法であって、「とっぴ」な考え
が必要なわけではありません。

アイディアの出し方、というのは、「技術」「スキル」です。ですか
ら、それは誰にでも身につけられるものです。

アイディアの出し方には、方法論があるんです。GW特別号では、そ
の方法論(の一部)をご紹介していきます。

 

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◆節電照明の工夫
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●LEDで節電と効果的な照明を両立

現在、首都圏でも計画停電はされていませんが、この夏は厳しい節電
が要請される可能性があります。

そのような「制約」下でも、「知恵」を出して頑張っている企業もあ
ります。

「照明」なんかは電力使用に直結するので、各企業がアタマを絞って
色々考えていらっしゃるようですね。
-----------< 記事要約 >------------

○現在「電力不安」が長引く公算が大きい。事業者には節電対策が求
 められ、夏に向けて流通・サービス企業の知恵が試される。注目を
 集めるのが、品質向上と普及がめざましいLED照明。
○節電対応で全館の照明を絞り込んでいる西武池袋本店のデパ地下で
 ひときわ明るく輝く一角が、総菜店「RF1」のショーケース。ケ
 ース内で使われるLED照明の特徴は、光が横に広がらず、真っす
 ぐ降り注ぐ点。約2cm間隔で並ぶLEDの光を受けたサラダは、
 蛍光灯に比べ「きらきら光って、みずみずしく見える」(同社)。
 消費電力も従来より15%ほど抑えられた。
○このケースはもともと、LEDの節電や寿命の長さのエコ発想で開
 発。当初、ケースメーカー、LEDメーカーを交えて改良を施し、
 完成までに1年を費やした。
○LEDの普及当初は、演出手法を考えあぐねる業者も多かったが、
 実際にケース内で使ってみると商品に微妙な陰影が表れて、より立
 体的に見える効果が確認できた。「エコ対応の面だけでなく、商品
 を見せる手段としてもLEDのほうが蛍光灯より優れていることに
 気がついた」と同社は言う。
○別の利点もあった。ガラス製の蛍光灯は総菜の皿を出し入れ時にぶ
 つかって割れるリスクがあるため、ケース内に余裕のある2段設計
 にする。強化プラスチックに覆われたLEDは割れにくく、間隔の
 狭い3段仕立てが可能。陳列する商品を増やして購買意欲を高めら
 れる。
○同社は2009年秋にLEDケースを導入し始め、現在は直営店全
 体の4分の1にあたる93店で使用。今後、数年かけて全店に広げ
 る。
2011/04/08, 日経MJ(流通新聞), 1ページ

-----------< 記事要約 >------------

もともとは今回の計画停電対策ではなく、「エコ対応」ということだ
ったようですが、こういう取り組みが増えてくるといいですね。

この記事をお読みになられると「ふーん、LEDでも大丈夫なんだ」
と思われるかもしれませんが、ケースメーカー、LEDメーカーを巻
き込んで1年がかりで考えた、というところに、苦労の跡が忍ばれま
す。

 

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◆「制約」は「創造的発明」を促す
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●自由に考えてもアイディアは出ない!

アイディアを出す、発想する、というと、「自由に考えた方がアイデ
ィアが出る」と思われるかもしれませんね。

しかし、現実的にはそうでもありません。「自由に売れるアイディア
を出してください」と言われて、売れるアイディアがバンバン出てく
るのであれば誰も苦労しません。倒産する企業も相当減るはずです。

実は、アタマを働かせるのに必要なのは、「自由さ」ではなく、「制
約」なのです。

 

●「制約」は「創造的発明」を促進する

「創造的な」発明をするに当たっては、「自由」よりも「制約」の方
が良い、という調査結果*もあります。「創造的な発明」ですよ。

どんな部品を使ってもいいし、どんなものを作ってもいい、と言われ
るよりは、こういう部品を使って、こういったものを作ってもいい、
と言われた方が、創造的な発明が2倍以上になる、という結果が出て
いるのです。

*創造的認知 P.75(森北出版:Ronald A.Finke, Thomas B Ward,
and Steven M. Smith 小橋康章訳)
それは私の経験ともピタリと合います。繰り返しますが、「自由にア
イディアを出そう」と言っても、少数の天才以外にはできないのです
(少なくとも私にはできません)。

アタマにどういう制約をかけるか、が、アイディア発想のポイントに
なるのです。

 

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◆節電という「制約」の下で、照明を考える
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●電気を使わない、という「制約」の下で照明方法を考える

冒頭のLED照明の例もそうですね。「エコ対応」という「制約」の
もとで「どのように照明するか」という発想をしたのでしょう。

この「制約」がなかったら、LEDにすると蛍光灯より

・15%節電できて、しかも
・商品を見せる手段としても優れている

ことはわからなかったのではないでしょうか?

逆に、「LEDを使う、という制約の下で、その使い方を工夫した」
とも言えますね。
また、節電の方法はLEDだけとは限りません。照明方法を工夫する
ことでもできます。
-----------< 記事要約 >------------

○照明の数を減らしながら効果的に店内を演出する方法もある。日本
 ライティングコーディネート協会の山中敏裕副会長は「壁面を明る
 くすれば天井や床が暗くても全体の明るい印象は損なわれない。
 通常の照明を7割消しても大丈夫」と話す。
○実際にフォーエバー21新宿店は、売り場中央付近のシャンデリア
 や蛍光灯、棚を裏側から照らすスポットライトなどを消し、壁沿い
 だけ明るく照らす。照明の数は通常の3分の1程度だが「苦情はな
 く、売り上げの面でも節電の悪影響はない」(店長)という。
○買い物に来た女性会社員(25)は「気づかなかった。このくらい
 の明るさがちょうどいい」と指摘。
2011/04/08, 日経MJ(流通新聞), 1ページ

-----------< 記事要約 >------------

これは震災による節電対応策のようです。「照明の数は通常の3分の
1」とのことで、それはすごいな、と思います。

が、なぜ最初からそうしなかったのか、そのようなトライをしなかっ
たのかというと、これは恐らく「そのような制約が無かったから」で
はないでしょうか?

電気をジャブジャブ使える、制約のない環境下においては、節電の工
夫をしよう、という動機付けが産まれないですよね。

 

さらにさらに、電気を全く使わない「照明」もありますよね。そうで
す、いわゆる「蓄光」商品が最近脚光を浴びています。

-----------< 記事要約 >------------

○照明を補う省エネ製品もある。太陽や電灯の光を吸収し、暗い場所
 で長時間発光する蓄光製品もそのひとつ。主に避難誘導標識に利用
 され、看板や広告にも用途が広がっている。製造・販売大手のネモ
 ト・セーフテックは「大震災以降、引き合いが2倍程度に増えた。
 自動販売機や看板に利用したいとの問い合わせもある」と言う。
○電力を使わず、維持費もあまりかからない。A4サイズのステッカ
 ーなら暗くなって12時間経過しても約40メートル先から視認で
 きる。、価格は1万5千~2万円程度だ。

2011/04/08, 日経MJ(流通新聞), 1ページ, 有, 1026文字 

-----------< 記事要約 >------------

子供の頃に「夜光塗料」というのが駄菓子屋で売っていたのを懐かし
く思い出します。最近は蓄光性能が相当改善されたようです。

店の看板にも使えそうですよね。「節電営業中」なんて、夜光で浮か
び上がるステッカーがあったら、ちょっとカッコよさげですよね。

 

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◆歴史的にも、「制約」がアイディアを生み出して来た
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●排ガス規制による自動車技術の進化

「制約」による進歩・発展というのは、実は昔から、イノベーション
の王道だったりします。

環境関連においては、「規制」が技術革新を刺激することがあるんで
す。古典的な例として語られるのが、排ガス規制による日本車の低燃
費化と国際競争力の劇的な向上です。
-----------< 記事要約 >------------

○我が国では昭和40年代から自動車の排ガスによる大気汚染が問題
 となりました。政府は自動車排ガスの規制に乗り出し、更に時を追
 うごとに強化してきました。
○自動車メーカーも、排出ガスによる大気汚染の問題に対処すべく、
 エンジンの燃焼制御及び熱効率の改善、車両の軽量化、排出ガス用
 触媒などの技術を研究・開発し、世界トップクラスの排出ガス抑制
 技術を確立しました。燃費についても技術開発を進め、世界トップ
 クラスの技術を持つに至っています。
○自動車の排ガス抑制技術や燃費の向上は、環境保全上の効果だけで
 はなく、商品価値の向上や国際競争力の向上という効果ももたらし
 ました。

www.env.go.jp/policy/hakusyo/zu/h19/html/vk0701030300.html

-----------< 記事要約 >------------
アメリカにおける日本車のシェアは、70年代前半には、1ケタ台前
半だったのが、第2次オイルショック後には20%を超えています。
(上記資料)
私は政府による規制を必ずしも支持するわけではありませんが、ここ
でも「制約」が促した効果が見て取れます。

当時リアルタイムでビジネスパーソンだったわけではありませんので
この規制に対する産業界の反応を知っているわけではありませんが、
恐らく「素晴らしい規制だ」という声では無かったと思います。

「制約」に対して、やむを得ず、しかし必死になって頑張って対応し
たら、いつの間にか世界のトップに躍り出た、というところなのでは
ないでしょうか?

1970年代のホンダの革新的なCVCCエンジンも、アメリカの排
ガス規制(マスキー法)に対応するものだったと言われていますね。

 

●オイルショック下でのエネルギー効率のアップ

それから、日本の産業のエネルギー効率は世界的にも高いようなので
すが、その原因の1つがやはりオイルショックという「制約」だった
ようです。

-----------< 記事要約 >------------

○昭和48年の第1次石油ショックによる原油価格の高騰を機に、当時
 の省エネルギーに関するコストパフォーマンスの最も大きな技術の
 導入などが、事業者の経営判断として積極的に進められました。
 その結果、我が国の産業分野のエネルギー効率は世界トップクラス
 となりました。少ないコストで製品を作ることができるようになり
 我が国の産業の国際競争力の確保につながりました

www.env.go.jp/policy/hakusyo/zu/h19/html/vk0701030300.html

-----------< 記事要約 >------------

これも、オイルショックに必死で対応しようとして、「制約」の下で
知恵を出し、頑張った結果ですよね。
歴史的にも、「制約」が技術革新を生み出して来たわけです。

 

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◆「制約」により伸びる市場
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●飲酒運転の厳罰化が後押しした「アルコールフリービール」

最近の、キリンフリーやサントリーオールフリーに代表される、アル
コールフリービールの活況も、ある意味では「制約」に対応した商品
開発だった、と言えそうです。
-----------< 記事要約 >------------

○ビールテイスト飲料はアルコール度数1%未満で、法律上は清涼飲
 料。酒類各社はビールとの競合を避けるため、長い間積極的に商品
 化してこなかっが、2000年代に入り飲酒運転の厳罰化や健康志
 向の高まりで見直され、市場は活況を帯び始めている。
(2010/11/19, 日経MJ(流通新聞), 3ページ)
○最近の商品は発酵工程そのものを省き、度数0・00%を実現。
 02年の改正道路交通法施行でごく少量でもアルコールが体内に残
 っていれば飲酒運転として厳罰が科されることになったことも、ア
 ルコールゼロという商品の人気を後押しする。
(2011/03/07, 日経産業新聞, 18ページ)

-----------< 記事要約 >------------
もともと「飲酒運転」は許されないことだったわけですが、その「厳
罰化」という「制限」に対応した市場がアルコールフリービールとも
解釈できますね。

飲酒運転の罰則が甘い状態では、アルコールフリービールを真剣に開
発・上市しようという動機が湧きにくかったかもしれません。

もちろんその分、ビールそのものの市場は厳しくなっているかもしれ
ませんがそれが顧客ニーズの変化なのであれば

「そのような制約の下でどうする」

と考えるしかありませんよね。

 

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◆制約を、ビジネスを「見直すキッカケ」にしよう
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●キッカケが無いと、アタマが働かない

ここから先は、震災の被害が軽微な方だった方に限定した話です。震
災の被害が未だに深刻なところでは、難しいように思います。

震災の被害が軽微だった、という前提で、今生じている、あるいはこ
れから生じるであろう様々な「制約」を、自分のビジネス・商品・仕
事を「見直すキッカケ」にできないか、ということです。

被害が軽微だ、という前提ではありますし、ご不満も色々とあるでし
ょう。が、ブツブツ言いながらも、その対策を必死になって考えてみ
るのも良いと思います。
恵まれた状態だと、ココロのどこかに甘えが出てしまいます。しかし
現在は厳しい状況だからこそ、真剣に取り組めますよね。会社全体が
一丸になっての取り組みもやりやすいでしょう。
ただ、このような発想ができるのは、やはりある程度の余裕ができて
からかもしれません。震災の被害を受けられている方・地域の、一刻
も早い復興をお祈りしております。
次回は、アタマの働かせ方をさらに突っ込んで考えていきましょう!
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◆今日のまとめ
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●人間のアタマは「制約」の下で働き出す。「制約」がある中で、
 「この状況下でどうするか」と考えよう!

 

 

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━特別編Vol.120 2011/05/05
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●アイディアを考える際には、「バラして」考えるとアイディアが出
 しやすい。アイディアを出したら、「つなげ」て整理しよう!
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◆GW特別号:アイディア発想
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●GWに、「アイディア発想」について考えてみよう!

GWまっただなか! 今日はこどもの日でしたね。そろそろ上りの電
車やクルマが混雑してくるかと思いますので、お気をつけてください
ね。

GWは少し気楽に、「アイディア発想」について考えてましょう!
今回はその2回目、です。

 

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◆アイディア発想は「技術」であって才能ではない
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●アイディアの出し方は「技術」「スキル」です。

芸術家になる、というのであれば話は別ですが、ビジネスにおけるア
イディアに必要なのは、問題解決の手法であって、「とっぴ」な考え
が必要なわけではありません。

アイディアの出し方、というのは、「技術」「スキル」です。ですか
ら、それは誰にでも身につけられるものです。

アイディアの出し方には、方法論があるんです。GW特別号では、そ
の方法論(の一部)をご紹介していきます。
前回は、「制約」がアイディアを生む、ということについて考えてき
ました。

今回のテーマは

○バラして、つなげる

です。

 

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◆分けて考えた方が、アイディアが出る
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●バラして、つなげる

今回は、マーケティングには限らないのですが、アタマの使い方のコ
ツのうちでも、大きな考え方を紹介しましょう

今日は、「バラして、つなげる」がメインテーマです。

まずは、「バラして」、つまり「分ける」ことから考えて行きましょ
う。

 

●「バラして」考えよう

結論から言うと、アイディアは分けて考えた方が出しやすいです。

例えば、「スパゲティの新しいレシピ」を考えてみてください

いかがですか? 

ちょっと考えにくくありませんか?

ではスパゲティを「バラして」考えて見ましょう。

まずは、麺とソースに分けられますね。

麺と言っても、まだ広いです。小麦粉と何か、ですよね。ほうれん草
を練り込んであるスパゲティなども売っています。

ソース、といっても、まだ広いです。「具」と「調味料」に分けられ
ます。

「具」は、「野菜」と「肉」に分けられます。「肉」も、牛、豚、鳥
や馬、魚、さらにバラ肉、ひき肉、などに分けられます。さらに、魚
だって、マグロのような大きい魚から、小魚、しらす、と色々ありま
すよね。

「調味料」は、醤油、オリーブオイル、にんにく、みそ、唐辛子、コ
チュジャン、ニョクマム、など無限と言っていいほどあります。たら
こなどもある意味で調味料ですよね。

ここまで「バラす」と大分考えやすくなったのではないですか?
「何でもいいからスパゲティの新しいレシピを考えよう」と言われて
も、考えにくいです。

そうではなく、「バラして」考えた方が、実はアイディアというのは
出てくるんですよね。
分けた方が考えやすいんです。

前回の「制約がアイディアのモト」というのと原理は同じです。

「自由に」ではなく、「このようにアタマを使おう」という制約を与
えることによって、考えやすくなるんです。
売上について考えるときも同じです。

「売上を上げる方法を考えよう!」と言われるよりは、例えば4P
(売り物・売り方・売り場・売り値)で分けた方が考えやすいですよ
ね。
しつこいんですが、「自由に考えよう」で考えられるのなら、苦労は
しません。

アタマの使い方がうまい人は、こういう制約のかけ方がうまいだけの
ことです。

 

●「バラす」ことで「具体性」が高められる

バラすことによって、どんどん「具体性」が高まっていきます。

スパゲティのメニューも、「調味料」で止めずに、さらに

・塩分
・油分
・甘み

と具体化し、塩分でも、塩・醤油・味噌……、油分でもオリーブオイ
ル、ゴマ油……とバラしていくと具体性が高まります。
アイディアを出す際には、抽象的な思考も重要ですが、それだけでは
ダメです。

例えば「ブランド力を強化しよう」みたいな発言は、何の意味も持っ
ていません。ほぼ全ての企業・商品・人にあてはまるものだからで、
それは「ガンバレ」と言っているのとあまり変わりありません。

「ブランド力」では「抽象度」が高すぎるんですね。この種のスロー
ガンは、耳あたりが良いので誰も反対しませんが、実際に具体的に何
かをしていく際には、総論賛成・各論反対に陥ります。

「ブランド力」を定義して、それを要素分解していくことによって、
具体的に考えていくことが重要です。

ブランド力と言っても、製品のことなのか認知のことなのか、認知と
言っても認知の量(人数)のことなのか認知の質(連想されるイメー
ジなど)のことなのか、それによって全然違います。
多くの場合、抽象度の高い発言は、考えが浅いことが多いです。「付
加価値を高めよう」なんていう発言もそうですね。

「付加価値とは例えば何ですか?」と聞いて、1秒以内に答えが出て
こない場合は、「言葉遊び」に終わってしまっている可能性がありま
す。

「言葉遊び」で終わらせないために、「バラして」考えて行くことで
具体性を高めていくんです。

 

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◆論理的に「バラす」
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●「バラす」ときは論理的に考えよう!

「バラす」方法ですが、ここは論理的にバラした方がいいです。そう
しないと「モレ」が出るからです。

先ほどのパスタも、

・具→肉・野菜
・肉→牛・豚・鳥・馬・魚

などと、(ある程度)モレなく、ダブり無く分けていますよね(魚は
広い意味で「肉」ですから、「肉」に入れています)。

いわゆる「モレなくダブり無く」と言われる、要素分解的な手法です
ね。これは、ビジネスパーソンの基本的な手法ですので、マスターし
ておいた方がいいでしょう。

いわゆるロジカルシンキングの本をお読みいただいてもいいですし、
拙著「実戦マーケティング思考」でも一通りは説明しています。

 

●難しいのは、バラす切り口

「バラす」こと自体は単純です。

難しいのは、バラす際の「切り口」を選ぶことです。その選び方次第
で、その先が全く変わって来ます。

スパゲティの場合も、先ほどは「麺と具」という、「物質的構成要
素」を切り口にバラしましたが、他の切り口もあります。

例えば、味付けを「国・地域」で分ける方法もあります。

和洋中、とまずは大きく分けた上で、「日本的な味付け」にしても、
関東風、関西風などとさらに分けていけますよね(それぞれがどんな
味付けなのかは別にして)。

「中華風」の味付けと言っても、辛めの四川料理など、色々あります
よね。

また、「温度」などという切り口もありますよね。熱々のスパゲティ
と冷製スパゲティは違うでしょう。

物質の状態(液体・固体)などの切り口もあります。液体の多いパス
タとしては、スープパスタなんかもあります。半液体状とでも呼べる
「あんかけ」なんかもありえます。

こうやって、色々な切り口を使っていくと、スパゲティのレシピなど
は無限に考えられそうなことがわかります。

 

●切り口の「引き出し」を増やそう

「切り口」が決まれば、そこから先は論理分解すればいいだけですが
その「切り口」を考えるのは難しいです。

この「切り口」の引き出しが発想力のポイントになります。

その「引き出し」の分だけ発想力が高まっていきます。

はい、その「引き出し」の数も発想の「スキル」の1つなんですよ。

すると、むしろ引き出しを多く持った、経験豊富なビジネスパーソン
の方が、発想力が高い、ということになります。

「アイディアを考えるときは若い人に」というようなことも言われま
すが、「こんなことを言ってはいけないのではないか」という心的制
約という意味では確かに有利ですが、引き出し、という意味では、経
験豊かな方の方がアイディアは出ます。
もちろん、戦略BASiCSを始めとする、売れたま!で紹介してい
る数々のツールは、この「切り口の引き出し」なんですよ。

ですから、売れたま!をお読みいただくと、このような「切り口」が
自動的にどんどん増えていくようになります(我田引水ですけど)。

数々のツールを並べていくと……

・戦略BASiCS
・マインドフロー
・売上5原則
・プロダクトフロー
・3つの差別化軸
・BtoBtoC
・ERG理論
・戦略指標・勝利の方程式
・TPO

など、全ては構造・体系をもった、論理的な「バラす切り口」になっ
ていることがわかります。

というわけで、売れたま!のツール群は、「切り口」の引き出しを増
やし、アタマの使い方がうまくなるツールでもあります。

 

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◆バラしたら、つなげよう
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●バラした後で、つなげていこう!

バラしたら、後はつなげていくだけです。

スパゲティで言えば、

○具:野菜、肉 → 挽肉

○調味料:辛子、味噌、砂糖、みりん、ゴマ油、豆板醤……

○状態:固体・液体 → あん

と考えて行くと、「マーボースパゲティ」なんかは、麻婆豆腐の応用
ですぐできそうですよね。

で……ここで、「麻婆豆腐に使う豆腐が上の要素に入ってない」と気
づきますよね。豆腐は「具」なのか「調味料」かよくわかりませんが
上の分類には「モレ」があることに気づきました。

すると、もう一度「豆腐」がうまくおさまる切り口を探すわけです。
恐らくは「具」の切り口を再度見直した方が良さそうです。
このように、「バラして、つなげる」の後に、もう一度「バラす」た
めの切り口を考えて……という思考の「グルグル回し」をしていくわ
けです。
「バラして、つなげる」という発想ツールがモーフォロジカル・アプ
ローチ*です。基本的には、上記の「バラして、つなげる」ことを体
系化したものです。
*モーフォロジカル・アプローチの詳細は、拙著「実戦マーケティン
 グ思考」をどうぞ!

「実戦マーケティング思考」 佐藤義典著
http://www.sandt.co.jp/shiko.htm

 

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◆バラして、つなげる「ピラミッドツール」
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●「バラして、つなげる」ことを前提としたピラミッドツール

私の数々のツールは、基本的にこの「バラして、つなげる」という思
考パターンを踏襲しています。

例えば、私の本の中で現時点で一番売れている本である「図解 実戦
マーケティング戦略」について考えて見ましょう。

この本は、タイトル通りマーケティング戦略の本です。

「マーケティング戦略を考えよう」と言って自由に考えて考えられる
のであれば、誰も苦労しません。誰でもが素晴らしい戦略を作れるは
ずですよね。

で、それはムリですから、「バラして」考えます。
まず、「戦略」を

・戦略を考える
・戦略を実行する

という2つにバラします。分けることによって、より考えやすくなる
からです。

○戦略を考える:戦略BASiCS
○戦略を実行する:売上5原則、マインドフロー、プロダクトフロー

というツール群に分けられます。これらを総称して「ピラミッドツー
ル」と呼んでいます(「ニーズの広さ深さ」は、今は売上5原則と統
合して考えています)。
戦略BASiCSをさらに「バラす」と、当然

 B:戦場・競合
 A:独自資源
 S:強み・差別化
 C:顧客像
 S:メッセージ

になります。

「独自資源」をさらにバラすと、ハード資源とソフト資源に分けられ
ます。

「強み・差別化」をさらにバラすと、3つの差別化軸になります。

どんどん分けていくのは、分けた方が考えやすいからです。

そして、考えが具体化され、「具体性」が高まっていきます。

分けて考えて行くことにより、「こんなことがやりたいな」と、ぼや
っとしていた「やりたいこと」が、どんどん具体化されていくわけで
す。
バラした後で、つなげます。

例えば、「設備」という「ハード資源」は、どのような「強み」を生
み出しているのか、と「独自資源」と「強み」をつなげます。

そして、その「強み」はどのような「顧客」を惹きつけるのか、と又
つなげていきます。

BASiCSの5要素の「一貫性」とは、このような「つながり」の
ことを意味しています。
そして、BASiCS・3つの差別化軸などで戦略が完成したら、今
度は、他のピラミッドツールであるところの売上5原則などとつなげ
ていきます。

例えば密着軸で行くなら、売上5原則で言う「顧客維持」重視になり
ますよね。

今度は、マインドフローと「つなげ」て行きます。顧客維持が重要な
ら、マインドフローで重要なのは「愛情」関門になってきます。

ではまたここで、愛情関門の打ち手を考え……と、具体化していくわ
けです。その際には、また「4P(売り物・売り方・売り場・売り
値)」という別の「切り口」でさらに具体化し、その後で、またつな
げる作業に戻ります。
BASiCSの最後のS、メッセージにもどり、4Pでやっているこ
とは、この「メッセージ」との一貫性があるか、とチェックしていく
わけです。
このように、バラしてはつなげ、つなげてはバラし、という作業を永
遠に繰り返していくわけですね。
私のツールの「強み・差別化」は、全てが全体としてこのような有機
的な連動性を持っていることです。単なるフレームワークの羅列にな
らず、「実戦性」を持っているのは、このような「バラして、つなげ
る」ことができる全体構造を持っている、ということです。

僭越ながら、「図解 実戦マーケティング戦略」は、6年前に発売さ
れて今もなおアマゾンのマーケティング本ランキングでトップ10に
入ります(残念ながら今は品切れ中で、順位が落ちています)。

恐らくはこのような「全体感」と、「バラして、つなげる」ことので
きる実戦性が評価をいただいているのかな、と思います。
逆に言うと、私のツールは、全てこの「バラして、つなげる」思考法
に基づいて考え出されているわけですから、この方法をマスターされ
ると、アナタ自身の独自ツールを生み出すこともできます。

 

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◆一貫性と具体性
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●「バラして、つなげる」=一貫性と具体性

売れたま!ではもちろんのこと、拙著やセミナーなど、色々なところ
で、思考のカギは「一貫性と具体性」と申し上げいます。

「バラして、つなげる」思考法は、この「一貫性と具体性」を両立さ
せる思考法の1つです。

「バラして」考えることにより、どんどん細かくなっていきますから
「具体性」が増していきます。

その逆に、「つなげる」過程において、一段上の概念と照合していく
ことにより、上位概念との「一貫性」を保つことになります。

BASiCSで言えば、
 戦略:BASiCSの5要素
  ↓
 強み(5要素の1つ)
  ↓
 3つの差別化軸(強みの3つの分類)
  ↓
 密着軸(3つの分類のうちの1つ)
  ↓
 4P(売り物・売り方・売り場・売り値)
  ↓
 カスタマイズできる「売り物」
と「バラして」行く過程でどんどん「具体化」されていきます。

そして、今度は逆に、上の方へと「つなげて」いきます。

1つ上の4Pに「つなげる」際には、カスタマイズできる「売り物」
に適した「売り方」「売り場」「売り値」は何か、と考えることによ
り「一貫性」を確保します。

そして、それをさらに上位概念の戦略(BASiCS)に戻す際には

・競合にはカスタマイズできないのか (B:戦場・競合)
・競合にマネできなり理由は何か (A:独自資源)

とまた「一貫性」をチェックしていきます。
このように、「バラして」考えることによって具体性のあるアイディ
ア発想を行った上で、「つなげて」考えることにより、全体の一貫性
を保つわけですね。
冒頭のスパゲティの新メニューにしても、調味料が「豆板醤」なら、
それに合うのは、鳥のささみよりは、豚の挽肉ですよね? 個々の素
材も重要ですが、何より重要なのは全体としての、味の統一感(=一
貫性)ですよね(ささみの方が合う、という方もいらっしゃるでしょ
うが、好みの問題なのでご勘弁下さい)。
戦略であろうと、料理であろうと、「バラして、つなげる」ことによ
る「一貫性と具体性」という考え方は同じなんです。

献立を考える際に練習してみるといいかもしれませんね。

 

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◆今日のまとめ
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●バラして考えることによりアイディア発想の「具体性」を、つなげ
 て考えることにより全体との「一貫性」を保とう

 

 

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━特別編Vol.121 2011/05/09
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●発想を刺激する「触媒」を使おう。触媒は他業種にあり。そして
 「理論」を触媒に使うと、問題解決になる!
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◆GW特別号:アイディア発想
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●GWに、「アイディア発想」について考えてみよう!

GWが終わってしまいましたね……今日は、アイディア発想編の最後
です。
GW明けのアタマのリハビリにどうぞ!

 

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◆アイディア発想は「技術」であって才能ではない
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●アイディアの出し方は「技術」「スキル」です。

芸術家になる、というのであれば話は別ですが、ビジネスにおけるア
イディアに必要なのは、問題解決の手法であって、「とっぴ」な考え
が必要なわけではありません。

アイディアの出し方、というのは、「技術」「スキル」です。ですか
ら、それは誰にでも身につけられるものです。

アイディアの出し方には、方法論があるんです。GW特別号では、そ
の方法論(の一部)をご紹介していきます。
前回は、「制約」がアイディアを生む、ということについて考えてき
ました。

今回のテーマは

○アイディアを出すには、触媒を使おう!

です。

 

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◆アイディアを出すには、触媒を使おう!
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●「自由」に考えても、アイディアは出てこない!

今回のアイディア発想編で繰り返し主張しているのが、

「アイディアは自由に考えても出てこない!」

です。

正確に言うと、出てくる人は出てきます。ただ、その方法に普遍性は
ありません。もし「自由発想法」に普遍性があるのなら、誰にでも売
れるアイディアが考えつき、日本から「売れない」という減少は消え
てなくなるはずです。

まあ、「自由に考えよう!」と言って売れるアイディアがバンバン出
てくるなら、世の中に「発想法」の本なんかありませんよね。
アタマにそれほど「良い悪い」の差はないと思います。

が、アタマの使い方の「うまいヘタ」は明らかにあります。

その「アタマの使い方」をここまで考えて来ました。

今回は、「触媒を使う」です。

 

●触媒とは?

触媒とは、自身が変わること無しに、他社に化学反応を促進させる物
質のことです(と、中学の理科で習いました……違ったらご指摘くだ
さい。得意科目ではなかったので……)。

そのときにやった実験は、過酸化水素水を二酸化マンガンの粒にかけ
ると、酸素と水に分解される、というアレですね。やりましたよね、
その実験?

アイディア発想をする際も、アタマの中の「化学反応」を促進する材
料を使おう、ということです。
ここでは、触媒を2つ紹介します。

 

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◆1)他業種のネタを「触媒」に使おう!
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●スパゲティの新しいレシピのアイディアはどこにある?

触媒の1つめは、「他業種」です。

前回は、「スパゲティの新しいレシピ」を考えてみました。前回は要
素に分解してつなげていく、という「バラして、つなげる」法をやっ
てきました。

今回は、又別のアプローチを考えて見ましょう。

「スパゲティの新しいレシピ」を考えるには……

「触媒」を使いましょう。

触媒は、「他業種」にあります。
この場合は、「麺類」から持ってくるのが手っ取り早いです。

まずは、日本ソバから考えて見ましょう。

ざるそばに習って、ざるスパゲティがあってもいいかもしれません。
つけ麺スパゲティ、ですね。タレを相当濃くしないと、パスタに味が
絡まないかもしれませんが……

そうすると、タレを5種類用意しておいて、そのうちから2種類選べ
る、なんていうメニューもありえますよね。

スパゲティは、500gくらい(乾麺で200gくらい)食べないと
満腹にはならないのですが(私は、ですけど)、500g同じ味が続
くと飽きてきます。

タレを何種類も選べれば、味に変化がつけられて、お得な感じがしま
せんか?

それから当然薬味です。そばには、ネギ、唐辛子、などの薬味を使い
ます。だったらパスタにあってもいいですよね。ネギではなく、多分
フライドガーリックとかでしょう。熊本のラーメン屋さんには、フラ
イドガーリックが「ドン」とおいてあることもあるようですが、何で
パスタ屋さんにないのか、不思議でしょうがありません。あれ、魔法
の粉のようにおいしいんですよ。

 

次は……「ラーメン」から持ってきてみましょう。

最近、「麺固め」「味濃いめ」とかって選べる店が出てきますよね?
スパゲティでもできたら面白いかもしれません。私は固い麺が好みで
すが、当然柔らかい麺を好む方もいるでしょう。私からすると「のび
てる」状態の麺を出してくる店なのに、なぜか回りの方がよく行こう
行こうと言っていたことを思い出します。

このアイディアは、拙著「売れる会社のすごい仕組み」で使っていま
すが、こういうところから発想しているんですよ。

で、ラーメンと言えば「トッピング」ですよね。チャーシュー、タマ
ゴ、メンマ……

スパゲティにトッピングがあってもいいですよね。スクランブルドエ
ッグとかポーチドエッグ、それからサラミにチーズ……。チーズも選
べると面白そうです。「そーれ・しちりあーの」の「清川シェフ」に
言ったら邪道だ、と怒りそうですが、邪道だと言われるくらいでない
と「新しい」アイディアとは言えないでしょう。

さて、このあたりは同じく「イタリア」つながりの「ピッツア」を触
媒に使うと色々ありそうです……触媒が触媒を呼ぶわけです。

ということで、ちょっと脱線してデリバリーピザのカタログを見てみ
ましょう。ハッと思いついたのが、ハーフ&ハーフですね。味を2つ
楽しめるパスタなんかいいかもしれません。

ラーメンに戻って、担々麺なんかもおいしいですよね。これはそのま
まスパゲティに使えそうです。本来の担々麺は汁気がそれほど無いも
ののようなので、ぴったりです。

ラーメンのつけ麺は、汁の熱い冷たい、麺の熱い冷たい、を選べたり
もします。つけ麺パスタにする際のアイディアに使えそうです。
無限に出てきますが、キリがないので、次にいきます。、

例えば……「うどん」から持ってきてみましょう。

うどんのメニューはたくさんあります。例えば「味噌煮込みうどん」
というメニューを「触媒」にしてみましょう。

当然、「あー、スープパスタね」と思いつきます。味噌煮込みスパゲ
ティは、うまく味を作ればいけそうな気がします。

さて……ここで、前回の「バラして、つなげる」法を応用すると……

「スープの味次第で無限にスープスパゲティが作れる」

ことに気づきます。カレー、クリームソース、味噌、フカヒレ、トム
ヤムクン、ボルシチ、クラムチャウダー……「スープ」で検索すれば
いくらでも出てきますね。

ここでも、触媒が触媒を呼ぶわけです。

これは、「自由」に考えてるのではありませんよ。触媒が触媒を呼ぶ
という連鎖を「触媒を使うこと」によって起こしているわけです。

自由に考えて、「トムヤムクンのスープスパゲティを作ろう!」とい
う発想が出てくる人は、天才です。しかし、私のような凡才でもそれ
くらいは全然できるわけです。

うどんに戻ると、讃岐の「ぶっかけ」のような「ぶっかけスパゲテ
ィ」もあるかもしれませんね。タレはいくらでも考えられます。
と、「触媒」があるだけで、無限にアイディアが出ることに気づきま
す。ちなみに、上のは私が書きながら適当にやっているだけでもこれ
だけ出てくるので、きちんとやれば本当に「無限」でしょう。

 

●売れるアイディアは他業種に学ぼう!

スパゲティで言えば、うどん、そば、ラーメンから学ぼう、ですが、
マーケティングで言うと、「売れるアイディアは他業種に学ぼう」と
なります。

もともとの売れたま!のコンセプトが、

 売れ  るアイディアは
 た   業種から
 ま   なぼう

で「売れたま!」だったんです。
売れるアイディアは、業種業態を問わず共通します。

今、自動車の内装や色はお好みで変えられますよね。これは、ピザの
トッピングと同じです。

自動車の車体、ピザの生地、というベースは同じで、その上に載せる
ものを選べるようにしているわけです。いわゆる「マスカスタマイゼ
ーション」という生産手法です。

さらに、自動車のオプション品は、ピザのサイドメニューと同じです
よね。いわゆる「クロスセリング」です。

自動車とピザと見え方が違うだけで、背後にあるロジックは全く同じ
ですから、他業種の例は自業種でも使えるんです。

BtoBとBtoCでも共通します。

例えば、BtoBで、生産機械を「燃費や生産効率がいいので、10
年でモトが取れます」「人件費換算で○○万円減ります」という売り
方をすることがあります。

これは、昨今の「この省エネ冷蔵庫は電気代を月々○千円節約できま
すので、○年でモトが取れます」という売り方のロジックと全く同じ
ですよね。
スパゲティが「うどん」を触媒にするとネタが無限にあるように、売
れるネタは他業種にたくさん埋もれています。
しかも、自業種から学ぶと「パクリ」とそしられますが、他業種から
学ぶと「革新的」と褒めてくれます。

文房具にカタログ通販を導入したアスクルを誰も「ニッセンのパクリ
だ」なんて言わないですよね? それどころか「画期的なビジネスモ
デルだ」と褒めてくれます(もちろん、チャネルに既存の文具店を使
う、などの色々な工夫はあります)。

 

●他業種のアイディアは、誰も使わない

このように、他業種はアイディアの宝庫ですが、意外にそういう発想
をされる方は少ないです。

それは……

「ウチの業界は特殊だ」

とみんなが思っているからです。

結論から言うと、本当に特殊な業界は、まずありません。本当は「特
殊な業界なんて無い」と言い切ってしまいたいのですが、ひょっとし
てあるかもしれませんので、あまりない、と言っておきます。

若干の特殊性はあるにしても、おおよそは、他業界でもあることの
「組み合わせ」にすぎないことが多いです。

極端な話、M78星雲のウルトラの星でクルマを売る場合でも、ター
ゲットを誰にして、CMは影響力のありそうなウルトラの父にして、
のような考え方は全く同じです。ウルトラマンは空を飛べるので、人
(?)を載せるニーズは無いかもしれないから、「ベネフィット」は
「荷物の運搬で……」と考えるわけです。

ウルトラの星でクルマを売る以上に特殊なビジネスの方がいらしたら
ぜひ教えてください!
「自分の業界が特殊だと思っている人」は、他業種から学ぶことには
意味が無い(マネできない)と思うので、他業種を見ずに自分の業種
を見ることになります(つまり二番煎じばかり)。
だから「ウチの業界は特殊だ」とみんなが思っている業界は、チャン
スですよ。

もっとも、自分の会社の人達が「ウチの業界は特殊だ」と思っていた
らお話にならないので、この売れたま!を渡してあげましょう!

 

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◆2)理論を触媒に使おう!
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●ビジネスのアイディアは、問題解決

芸術家になるのならともかく、ビジネスにおけるアイディアは、基本
的には「問題解決」です。

・競合商品に負けている……
・工場の歩留まりが悪い……
・従業員の動き方が足りない……

などなど、会社において求められている「アイディア発想力」は、問
題解決ですよね。

問題解決において「業界知識に囚われた発想」は不要ですが、別に
「突飛」なアイディアが求められているわけではありません。

「新しい売り先は無いかな?」に対して、欲しいのは、

「M78星雲!」 という突飛なアイディアではなく、

「そうか、何で今まできづかなかったんだろうな」

というアイディアです。

 

●「理論」を触媒に使おう!

そのようなときの「触媒」として役立つのが実は「理論」です。

「理論」は基本的には「問題解決」の手法です。

そして、よく考えられた「理論」は、体系があり、モレがない優れた
触媒なんですね。

例えば、「新人OL、つぶれかけの会社をまかされる」で使っている
フレームワークが、

1)ベネフィット
2)ターゲット
3)強み・差別化
4)4P
5)想い

というフレームワークです。

「売れない」というときには、必ずと言っていいほど、このうちのど
こか、あるいは複数に問題があります。

逆に言うと、この5つをきちんと考えれば、「問題解決」になるんで
す。

そして、「売れる方法を考えよう!」ではなく、「バラして考える」
とアイディアを出しやすいのは、前号の「バラして、つなげる」で見
てきた通りです。

この5つのポイントは、それぞれがアイディア発想の「触媒」になり
ます。ある意味「売れる方法」をバラして考えるフレームワークでも
あるわけです。

すなわち、

・問題解決になる
・バラしてアイディアを出す

という2つの条件を満たした「理論」なんですね。

このような「理論」の引き出し(=触媒)をたくさんもっておくこと
が、

○問題解決につながるアイディア発想

のモトになるわけです。

だから、理論を知っている人の方が、触媒を多く持っていますのでア
イディアは出しやすいですし、しかもそれが真っ当な問題解決になる
発想になりやすいんです。
その意味で、マーケティングに限らず、ですが、「理論」をきっちり
と学ぶことをオススメします。

「理論」や「フレームワーク」は色々ありますよね。

BtoCのベネフィットを考える際に使いやすいのは、3大欲求(生
存欲求、社会欲求、自己欲求)です。

BtoBのベネフィットを考える際には、「QCD:品質、コスト、
納期」なんかは、「触媒」として使いやすいです。
・BtoBtoC
・マニアトラップ・カプチーノセオリー
・勝利の方程・戦略指標

など、無限に「理論」を作りだしていってるのは、適切な「アタマの
使い方」をご紹介させていただいている、という意味合いもあるんで
す。

売れたま!の読者さんは、マーケティングと経営戦略については、大
抵のことは私がある程度体系化していますので、そこから始めるのが
ラクで良いかと思います。

 

●アタマに適切な質問を投げかけよう!

「理論」を「触媒」として使うときのポイントが……

「質問として使う」

ということです。

質問を投げかけられると、アタマは働きます。勝手に答えを出すんで
す。

「売れたま!は役立ちますか?」

とアナタに聞きます。すると、「すごく」「全然」「たまには、な」
とか、答えを出しますよね? 答えは何でもいいです。答えを出す、
ということは、アタマが働く、ということです。

質問をアタマに投げかけると、アタマは働くんです。

ただ、問題は……不適切な質問を投げると、アタマは不適切な答えを
返します。

マーケティングでの典型的な「不適切な質問」が

「ウチの商品の強みは何だろう?」

です。これ、意外にやってしまう質問です。

よく、マクドナルドの強みは何ですか? と聞くと、「早い!」とい
う答えが返ってきます。

しかし……

「早い」ことを評価する人もいればそうでない人もいます。ゆっくり
食べたいときなどには、早いことはどうでもいいです。すなわち、
「顧客」が誰かによって違います。
さらに……「誰と比べて」という「競合」の問題もあります。ファミ
レスと比べれば「早い」かもしれませんが、コンビニやドトールと比
べて早いとは言えないでしょう。

しかし、このような「顧客」「競合」の問題があるのを無視して、案
外無神経に「あなたの強みは何ですか?」という質問をしますよね?
売れたま!では、SWOT*分析の危険性はたびたび指摘していると
ころですが、その問題の1つのがこれです。顧客や競合を無視して考
えてしまうので、当然答えを間違う可能性が高いです。

*強み、弱み、機会、脅威 の4つで戦略を考えるとされる手法
そうではなくて、アタマに投げかけるべき適切な質問は……

「お客様が、競合ではなくて、ウチを選ぶ理由は何だろう?」

なんです。

「アナタの競合は誰ですか?」も不適切な質問です。この質問に対し
て、アタマは同業種の会社・商品を答えるでしょう。

そうではなく、「アナタの商品が無かったとしたら、お客様はどうす
るんだろう?」が適切な質問です。それが、お客様の思考回路に近い
からです。

 

BASiCSにおける適切な質問は、例えばこのようなものです。

○競合:うちの商品が無かったとしたら、お客様はどうするんだ?
○強み:お客様が競合ではなくて、ウチを選ぶ理由は何だろう
○独自資源:この強みを競合がマネできない理由は何だ?
などですね。

そう、つまり、アタマの使い方がうまい方、というのは、このような
「適切な質問」をたくさん引き出しにもち、それを「触媒」として使
える人なんですよ。
なので、

・他業種の事例
・理論体系

などを蓄積し、「触媒」にされると「発想力」がすさまじく高まって
きます。

売れたま!でも、なるべくこのような「適切な質問」を投げかけるよ
うにしています。

ということで、売れたま!では、これからもどんどん

○アタマに投げかける適切な質問

を投げかけていきます。

今後ともよろしくお願い申し上げます!

 

最後に……宣伝になりますが、BASiCSの「適切な質問」をこれ
でもか、これでもか、と投げかけるのが……
○「経営戦略虎の巻」 CD7枚組

です。アタマを働かせる「触媒」としてどうぞ!

http://sandt.co.jp/keieitoranomaki.htm

 

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◆今日のまとめ
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●アイディアを出すには「触媒」を使おう! 触媒には、他業種と
 理論が適しているので、蓄積して触媒を増やそう!

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