2008-12 ブルーオーシャンを斬る!

 

■■2008-12 「ブルー・オーシャン戦略」を斬る!
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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━戦略編Vol.083 2008/12/18
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●「ブルー・オーシャン」とは、顧客の視点で定義された新しい「価
 値の戦場」のこと
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◆ブルー・オーシャン戦略
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●大ヒットした「ブルー・オーシャン戦略」

全世界的にヒットし、日本では2005年に発売されてやはりヒット
した「ブルー・オーシャン戦略」*。

ブルー・オーシャン戦略
W・チャン・キム、レネ・モボルニュ著
ランダムハウス講談社 刊

本をお持ちの方は、ぜひ取り出してみてください。
「レッド・オーシャンではなく、ブルー・オーシャン」で戦おう、と
いうような言葉も、今はあちこちで耳にしますね。
読者さんから、「ブルー・オーシャン戦略を斬ってください」という
リクエストがあったこともあり、今回あらためて考えてみました。

今回は、このブルー・オーシャン戦略を分解していきましょう。

私自身のスタンスは中立で、客観的に分析していく、というスタンス
です。良い部分は褒め、ダメな部分はダメ、ということです。
ブルー・オーシャン戦略ファンの方は、目くじらを立てずにお読みい
ただければと思います。

 

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◆ブルー・オーシャン戦略とは?
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●そもそもブルー・オーシャン戦略とは?

ブルー・オーシャン戦略とは、名前の通り、「ブルー・オーシャン」
で戦おう、という提案です。
ブルー・オーシャンは、競合のいない、青い澄んだ新規の市場。

レッド・オーシャンは、血で染まった、競争が激しい既存の市場。

このあたりの表現というか、ネーミングはうまいですね。青い澄んだ
海と、血に染まった赤い海が視覚的にイメージされます。
ブルー・オーシャン戦略でよく引き合いに出されるのが、「シルク・
ドゥ・ソレイユ」(以下シルク)。

見ていないと説明しづらいのですが、動物のいないサーカスというか
ミュージカルの中国雑技団というか、新しいエンターテインメントで
す。今度東京ディズニーリゾートにシルクの専用シアターができます
ね。

私も「ドラリオン」を見に行ったことがありますが、チケットは1万
円くらいしましたが、大人気で取るのが結構大変でした。
著者は、これをブルー・オーシャン戦略だと言います。それは、ミュ
ージカルやサーカスなどの要素を抜き出し、つまりは

「競合のいない」エンターテインメントとして
「新しい需要」を作ったから

ですね。サーカスにいる動物はいないし、ミュージカルには無いアク
ロバットがある、そういう特徴的なエンターテインメントで、新しい
需要を切り開くのが「ブルー・オーシャン戦略」だそうです。
日本企業も出てきます。

10分1000円の床屋さん、QBハウスも「ブルー・オーシャン」
の事例として出てきます。

これはご存じかと思いますが、10分1000円、駅の中の床屋さん
という、直接の競合はいないところに新たな「市場」を「創出」した
ということで、ブルー・オーシャン戦略だそうです。
という感じの戦略がブルー・オーシャン戦略、です。
お読みで無い方は、「それじゃわからん! いい加減な……」とおっ
しゃるかもしれませんが、実際その通りで、そもそも「ブルー・オー
シャン戦略とは何か」というのがあまりよく定義されていないので、
このような言い方にならざるを得ないのですね。
本当は、著者の方はブルー・オーシャン戦略を定義し、これは似てい
るけれでもそうではない、とか、きっちりとした線引きをする必要が
あると思います……ですので、結果としては、成功した戦略を「これ
はブルー・オーシャン戦略だ!」と恣意的に言っているように見えて
しまうんです。

 

●ブルー・オーシャン戦略の3つの特徴
ちなみに、ブルー・オーシャン戦略の特徴は(P.63くらいです)

・メリハリ:強みをしぼる

・高い独自性:他社と違う強みを持つ

・訴求力のあるキャッチフレーズ
の3つだそうです。が、これはある意味当たり前のことで、これを備
えたうえで、どれがブルー・オーシャンで、どれがブルー・オーシャ
ンで無いのか、を定義する必要があるんですけどね……

それはおいといて、では具体的に分析していきましょう!

 

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◆競合のいない、新しい需要を作れ!
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●競合のいない、新しい需要を作れ!

ブルー・オーシャン戦略の一つの強力なメッセージがこれです。

競合が多くいる、レッド・オーシャンで戦うな!
競合がいない市場を作り出せ!

ということですね。
この主張には私は大変共感します。
確かに、多くの起業が、同業種内での戦いにばかり目を向けてしまっ
ており、その中で「安く、安く」というところに血道をあげているよ
うに思います。
その意味で、著者がシルクの例を出してきたところは非常にわかりや
すいですね。

シルクは、確かに直接の競合はいませんね。そのようなエンターテイ
ンメントを新しく作り出したわけですから。
厳密には、「競合がいない」といことは、まずあり得ません。著者は
説明のインパクトをつけるために「競合がいない市場を!」と言って
いるわけで、シルクの競合は、それこそ映画、ミュージカル、遊園地
と山ほどあります。同じような形態の直接競合がいない、ということ
でしょう。
これは批判的に言っているように見えるかもしれませんが、これが経
営学者から出てきたことには大きな意味があると思います。

 

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◆既存の経営戦略論へのアンチテーゼ
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●既存の経営戦略論へのアンチテーゼ

著者の、

競合が多くいる、レッド・オーシャンで戦うな!
競合がいない市場を作り出せ!

というメッセージの裏には、既存の経営戦略論、特にポーター氏らの
経営戦略論が前提としている、固定的な業界・「静的な競合構造」
(これは私の言葉)ではダメだ、と言うメッセージがあるのだと思い
ます。
この意味で、ブルー・オーシャン戦略は、既存の経営戦略論へのアン
チテーゼになっています。これは、ブルー・オーシャン戦略の一つの
意義だと思います。
つまり、シルクのようなブルー・オーシャンは、「サーカス」という
既存の業種ではなく、「エンターテインメント」という顧客にとって
の価値、という発想からで無いと出てこない、と言っているわけです
ね。

ブルー・オーシャン戦略のキーメッセージの一つに「バリューイノベ
ーション」(価値革新)があります。革新的な技術ではなく、革新的
な価値を提供せよ、ということです。そしてそれは、業種・業態に囚
われた発想からは出てこない、と言う著者からのメッセージが読み取
れます。これには私は大賛成です。

 

●そもそも戦場を業種・業態で捉えてはいけない

私は、戦場を業種・業態(少なくとも既存の意味での)で捉えてはい
けないと思っています。

サーカスはサーカスと競合しているだけではなく、エンターテインメ
ントと競合しています。

マクドナルドは、ロッテリアだけではなく、ドトールともコンビニと
も競合しています。業種・業態は違っても、です。
何を巡って競合しているか、というと、「顧客にとっての価値」です
ね。その意味で、シルクは確かに「家族・カップルが楽しめる新しい
ステージ型エンターテインメント」という価値を創造しました。

それが「ブルー・オーシャン戦略」なのでしょうね。

 

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◆戦略BASiCSで言うと……
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●「戦場」を変える!

そうです、ブルー・オーシャン戦略の一つの意味は「戦場を変える」
ということです。

だんだん私のやりたいことがわかってきたのでは……そう、ブルー・
オーシャン戦略はBASiCSで切れる、ということです。
ブルー・オーシャン戦略の言う「ブルー・オーシャン」とは、まさに
新しい「戦場」なんですね。

そして著者の主張は、「戦場は顧客にとっての価値で定義せよ」と言
いかえられます。この主張の核心は戦略BASiCSの発想と全く同
じです。

 

●新しい楽しみを提供した「イエロー・テイル」

ブルー・オーシャンが取り上げている多くの事例の一つに(この事例
の多さは特筆モノ)、イエロー・テイルというワインがあります。言
ってみれば「気軽に楽しく飲めるワイン」とのことです(私は飲んだ
ことが無いので何とも言えません)。
これは、BASiCSで言うと、今までの味を楽しむ「こだわりのワ
イン」ではなく、「楽しく飲める」という「顧客の価値」で「戦場」
を定義したワイン、と言えます。

やはり、このブルー・オーシャンの例も「戦場を顧客視点で定義しな
おした」例なんですね。既存の「ワイン」という戦場のワクに囚われ
ずに、「飲む楽しさ」という顧客視点でワイン戦場をとらえると、本
格的なワインだけではなく、「気軽に楽しく飲めるワイン」という新
しい戦場(つまりはブルー・オーシャン)が見つかった、ということ
です。
何が言いたいかというと、ブルー・オーシャン戦略で著者が言いたい
ことは、BASiCSでほぼそのまま言い換えられる、ということな
んです。
ということで、ブルー・オーシャンと戦略BASiCSは無関係でも
はたまた敵対関係でもなく、ひょっとして単なる表現の違い……
ブルー・オーシャンもBASiCSもこんなものではなく、まだまだ
続きます。

 

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◆今日のまとめ
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●「ブルー・オーシャン」とは、顧客の視点で定義された「価値」の
戦場のこと。新しい「価値」が提供できる戦場を考えてみよう!

 

 

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━戦略編Vol.084 2008/12/22
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●「ブルー・オーシャン」の極意は「削る」ことにあり。でも独自資
 源には気をつけよう!
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◆復習:ブルー・オーシャン戦略とは?
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●そもそもブルー・オーシャン戦略とは?

ブルー・オーシャン戦略とは、名前の通り、「ブルー・オーシャン」
で戦おう、という提案です。
ブルー・オーシャンは、競合のいない、青い澄んだ新規の市場。

レッド・オーシャンは、血で染まった、競争が激しい既存の市場。
一言で言えば、競争が激しい既存市場ではなく、新しい価値を切り開
いていこう、ということです。ある意味それだけと言えばそれだけの
ことで、ある人が「よくあれで1冊の本が書けたな」とおっしゃって
ましたが、本当にそうだと思います。

 

●ブルー・オーシャン戦略の3つの特徴

ブルー・オーシャン戦略の特徴は(P.63)

・メリハリ:強みをしぼる
・高い独自性:他社と違う強みを持つ
・訴求力のあるキャッチフレーズ

の3つです。

 

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◆復習:戦略BASiCS
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●戦略BASiCS:戦略の5つのチェックポイント

「白いネコは何をくれた?」などでもおなじみ、戦略BASiCS。
一応復習しておきましょう。
Battlefield:戦場・競合
Asset:独自資源
Strength:強み
i
Customer:顧客
Selling message:メッセージ

の5つのチェックポイントでマーケティング戦略を考えていくもので
す。

 

●戦略BASiCSとブルー・オーシャン戦略

「ブルー・オーシャン」を私流に言うと、

既存の業種業態ではなく「顧客にとっての価値」で「戦場」を考えれ
ば、そこには今までの意味での「競合」はいない。

シルク・ドゥ・ソレイユが切り開いたブルー・オーシャンは、劇場型
アクロバット娯楽であり、レッド・オーシャン(既存の戦場)はサ
ーカス。

イエロー・テイルが切り開いたブルー・オーシャンは、「気軽に楽し
く飲めるワイン」であり、レッド・オーシャンは「本格的なワイン」
ということです。

こんな例は売れたま!で何百回も紹介してきているので、読者さんは
何を今さら、と思われるかもしれませんね……
何はともあれ、
「ブルー・オーシャン」とは、「戦場の定義の仕方だ」
ということが一つわかりました。

 

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◆戦略キャンバス
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●顧客の購買要素を視覚化した、戦略キャンバス

ブルー・オーシャン戦略の慧眼の一つが、「戦略キャンバス」です。
何かというと、
・顧客にとって購買意思決定上重要なことを
・対競合で比べ」
・視覚化した折れ線グラフ
です。「楽しいワイン」イエロー・テイルの戦略キャンバスは、著者
によると
・価格
・伝統・格式
・回路や味わい
・品種

などの伝統的な意思決定要素(私が抜粋しました)に加えて
・飲みやすさ
・選びやすさ
・楽しさや意外性
という新しい要素を加えて、競合とは違う「戦場」にした、というの
です。

テキストだと説明しにくいのですが、調査に詳しい方なら、

「へ? それだけ?」

とおっしゃるのでは無いでしょうか?

ちょっとしたブランディング調査には、このようなグラフは普通に使
われると思いますよ。少なくとも私はよく使ってましたから。
ただ、「経営学者」さんが、このようなことをやった意味は大きいと
思います。私たち実務家が普通に行うところまで経営学者さんに降り
てきていただいたので、実務と理論がつながるからです。
ちなみに、このイエロー・テイルは「マニアトラップ」ですか? と
気付いた方、もう素晴らしいです! その通りですが、今回は本論と
外れるので置いておきます。マニアトラップだってBASiCSの一
類型でしかありません。

 

●強みを体系化した戦略キャンバス

この戦略キャンバスは、「強み」の体系化ですね。さらに、これを競
合と視覚的に比べよう、というのは非常に良いところです。強み・弱
みというのは、「競合」と比べてナンボ、ですから。

BASiCSだと、「Strength:強み」のところになること
がわかります。そして、それは戦略キャンバスでは「Battlefield 
戦場・競合」との比較において表されます。

 

●新しい要素を加えて「ブルー・オーシャン」に!

ブルー・オーシャンの中核の主張の一つが、
「戦略キャンバスに新しい要素を加えてブルー・オーシャンにする」
ということです。

楽しいワインの場合だったら (P.55)
・飲みやすさ
・選びやすさ
・楽しさや意外性
シルクの場合は (P.65)
・テーマ性
・快適な鑑賞環境
・演目の種類
・芸術性の高い音楽とダンス
という新しい要素を戦略キャンバスに加えたことによって、ブルー・
オーシャンが切り開けた、というのです。

ちょっとシルクの場合は強引な感じがしますけどね……(シルクはブ
ルー・オーシャンだ、と言いたいがための理論になっている)。

ともかく、ブルー・オーシャンの開拓を戦略BASiCSで言うと
「強みを加えて、新しい戦場を作る」
ということになります。BASiCSのB:戦場と、S:強みの組み
合わせの類型がブルー・オーシャン戦略だ、ということです。

 

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◆「削る」重要性
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●「削る」ことを明示化した珍しい戦略論

さて、強みを加えると、すなわち差別化を進めると、コストが上がり
ます。通常は品質とコストの曲線は、品質が上がればコストが上がる
という曲線を描きます。当たり前ですね。
これに対して、ブルー・オーシャン戦略は明快な回答を出してきまし
た。

「余計なモノを削れ!」

です。

私がブルー・オーシャン戦略で評価している点は2つあります。その
うちの1つが、これです。

「削る」

ことをここまではっきり出した理論は結構珍しいと思います。
シルクはサーカスから

・動物のショー
・サーカス界のスター
・グッズ販売

を削ったと言います(P.33)

これによって、その分のコストを下げ、アクロバットや芸術性などの
新しい価値を高めてもトータルなコストを劇的に増やさないようにし
た、というのです。これにより、差別化と低コストを両立するように
できる、ということです。
これは非常に評価できる主張だと思います。普通、価値を加えること
は誰でもやりますが、「削る」ことはやらないからです。
うそだと思ったら、あなたの携帯電話の機能を見てください……

写真、メール、スケジュール、目覚まし、ストップウォッチ、グロー
バルローミング、などなど機能がこれでもかこれでもか、というほど
詰め込まれています(その結果使いにくくなることをマニアトラップ
と呼んでいます)。

高機能化するほどコストも上がるでしょう。こうやって、どんどん高
価になり、ユーザーニーズから離れていく、ということですね。

ブルー・オーシャン戦略は、だから顧客ニーズと合わなくなって、新
規顧客がとれなくなるんだ、と言います。

新しい戦場を切り開き、新しい顧客を取るためには、思い切って削れ
というブルー・オーシャン戦略の主張には私は非常に共感します。

 

●「顧客」に合わせた「強み」の最適化

では当然、「何を削るのか?」という疑問が出ますよね?

それは……
お客様にとって価値が低いモノ
です。特に、ブルー・オーシャンは新しい戦場ですから、今までとれ
ていなかった新規顧客を取ることになります。その潜在顧客にとって
価値が低いモノを削るんです。
「潜在顧客にとって価値が高いモノを加え、低いモノを削る」
というのが、ブルー・オーシャン戦略のいう「バリュー・イノベーシ
ョン」(価値革新)です。
ちなみに私は「顧客にとって価値が高いモノを低コストで提供できる
もの」を「価値ギャップ」と言って、2003年8月に売れたま!で
書きました(なんと発行18号です)。
これは、普通に言えば

「顧客に合わせた強みの最適化」

と表現できます。そう言わずに「バリュー・イノベーション」という
大げさな言葉を使っていることもブルー・オーシャン戦略の全体に渡
る特徴の一つです。

ともかく、ここで再び戦略BASiCSに戻ると、ブルー・オーシャ
ン戦略の言うバリュー・イノベーションとは、
・Strength:強み

・Customer:顧客

に合わせて、増やしたり削ったりして最適化しよう、

ということです。

ここでもブルー・オーシャン戦略の中核理論が戦略BASiCSで説
明できることがわかります。

 

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◆ブルー・オーシャン戦略理論の致命的な弱点
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●「Asset」に対する言及が無い!

さて、ここで、戦略BASiCSとブルー・オーシャン戦略の対比を
まとめてみると、
B 戦場:ブルー・オーシャン、新しい戦場なので「競合」はいない

S 強み:価値を足し引きして最適化する「戦略キャンバス」

C 顧客:新しい顧客、潜在顧客を開拓する
となります。

戦略BASiCSは、

Battlefield:戦場・競合
Asset:独自資源
Strength:強み
i
Customer:顧客
Selling message:メッセージ

ですね。メッセージは、次回で取り上げますからここではおいておき
ますね。さて……そう、お気づきのとおり、
Asset
に対する言及が、ブルー・オーシャン戦略にはあまり無いんです!!
これ、全編を通じてそうなんです。シルクは、新しい「劇場型アクロ
バット娯楽」を生み出した。そこまではいいんです。

問題は、
「なぜシルクだけができたのか? そして本当にシルクにしかできな
いのか?」

ということです。

シルクの、動物が出てこない、美しいストーリー性のあるアクロバッ
トは、新しい「強み・差別化」です。

そこまではいいとして、では、例えば劇団四季なり、ブロードウェイ
などで実績のあるところが中国の雑技団と組んで、さらに素晴らしい
ものを生み出すことはできないのか?

ここが長期的に大事なところです。そして、それがBASiCSにお
ける「独自資源」なんです。これがなければ、カンタンに真似されて
レッド・オーシャンになります。

例えば、素人目ではありますが、私はシルクに対しては、まだ相当の
り改善の余地があると思っています。特にストーリー部分の見せ方・
作り方についてはまだまだです。

このことの正誤はおいておき、かりにそうだった場合、ブロードウェ
イミュージカルの鬼才が乗り込んできてもっとうまい物語を作ってア
クロバットをやったら、シルクは勝てるのか、ということです。

シルクにしかない何か、は何なのか、そしてそれは単なる「物語性の
あるアクロバット」ではダメです。すぐにマネされるからです。

マネされて、勝てないのならば、もうそこは「ブルー・オーシャン」
ではありえません。血で血を洗うレッド・オーシャンになってしまい
ます。
シルクの場合は、ブルー・オーシャン戦略で紹介されている情報から
でしかありませんが、独自資源として「ストーリー性のあるアクロバ
ットの見せ方ノウハウ」を作るべきだと思います。

「アクロバット」だけだったら、上海雑技団に勝てません。

「ストーリー性」だけだったら、映画の脚本家が乗り込んで来たとき
に勝てません。
シルクの「アクロバット」×「見せ方」という組み合わせでの、「経
験」「ノウハウ」が独自資源になるのだと思います。

残念ながらこのような言及がブルー・オーシャン戦略に無いのです。

 

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◆ブルー・オーシャン戦略を考えるときには独自資源も考えよう!
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●独自資源なしには「ブルー・オーシャン」が維持できない!

ブルー・オーシャン戦略の真骨頂は、「ブルー・オーシャン」、すな
わち「競合のいない市場」のはずです。

しかし、カンタンにマネされた場合には、すぐにそれが「レッド・オ
ーシャン」という血の海になります。

これは、ブルー・オーシャン戦略という理論が抱える致命的な弱点で
す。「ブルー・オーシャンで戦おう」と言っていながら、独自資源に
ついて言及しないのでは、そのブルー・オーシャンがすぐレッド・オ
ーシャンになってしまいます。

 

●ブルー・オーシャン戦略は、短期的な差別化戦略でしかない
この意味では、実はブルー・オーシャン戦略の本質は、
「持っているものを最大限活用した短期的な差別化戦略」
でしか無いのです。私は、ブルー・オーシャン戦略は、BASiCS
で言う「強み」に分類される戦略論だと考えていますが、その理由が
これです。

皮肉なことに、ブルー・オーシャン戦略の御託宣に忠実にしたがうと
実は競合にどんどんマネされる、というレッド・オーシャンに突っ込
んでいくことになるんです。
これは数年後にやってみたいのですが、ブルー・オーシャン戦で取り
上げられた事例が5年後、10年後どうなっているか検証して
みたいです。

独自資源があった場合は、それでもブルー・オーシャンにいるでしょ
うし、独自資源が無かった場合には、もうレッド・オーシャンにいる
こととなるでしょう。
つまり、ブルー・オーシャン戦略を実行する場合には、「独自資源」
を考えないと危険なんです。

 

楽しめるワイン、イエロー・テイルの場合は、この問題がより顕著に
なります。
イエロー・テイルは、「楽しめるワイン」を売り出しました。大成功
しました、万歳、万歳!
問題は、

「それは、イエロー・テイルにしかできないのか? 競合ワインメー
カーがマネしたらどうなるのか?」
です。

「楽しめるワイン」の独自資源が「楽しめるワイン用に特殊に栽培さ
れたぶどうの品種」であれば、マネするのに時間がかかるかもしれま
せん。しかし、「楽しめるワイン」という販促、メッセージのレベル
のことであれば、競合がマネした瞬間にレッド・オーシャンになりま
す。

運が良ければマネされないかもしれません。現実、韓国のジンロは、
日本で「楽しいお酒」としてCMをしていますが、それが今のところ
マネされていないようですので(そのCMに効果があったのかどうか
を判断する材料を私は持っていません)。
つまり、ブルー・オーシャン戦略を考えるときには、独自資源を共に
考える必要があるんです。

 

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◆ブルー・オーシャン戦略「だけ」で考えると危険!
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●ブルー・オーシャン戦略「だけ」に頼ってはいけない

これでブルー・オーシャン戦略には「致命的」な弱点がある、という
のがおわかりいただけたかと思います。
で、「アンタ間接的にBASiCSを持ち上げようとしているよね」
と気付いたアナタ、素晴らしいです(笑)。

そうなんです、戦略BASiCSはきちんと「Asset」という項
目をいれていますので、これだけで大丈夫なんです。

ブルー・オーシャン戦略の「新しい戦場」「新しい強み」「新しい顧
客」を切り開こう、という主張は全てBASiCSでカバーされてい
ます。

そして、BASiCSには、ブルー・オーシャン戦略には無い、
Assetという項目を持っているんです
こう書くと、「しかしアンタ、人の理論けなすのうまいよね」とか言
われそうですが、実際、戦略BASiCSは既存の理論の弱点を補う
べく作られたんですね。

別にブルー・オーシャン戦略だけに「独自資源をチェックしない」と
いう弱点があるわけでなく3C*やSWOT分析*なんかも同じです
ね。世の中のにある「強み」を考えよう、という荒っぽいフレームワ
ークにはつねにこの「強み」と「強みの源泉である独自資源」という
問題がつきまとうんです。

 

*3C:Customer(顧客), Company(自社), Competitor(競合)の
 3つの視点から分析するフレームワーク

*SWOT分析:Strength(強み), Weakness(弱み),
 Opportunity(機会), Threat(脅威)の4つで考えるツール

 

●ブルー・オーシャン戦略からの答えは……

ちなみに、公平性のために付記しておくと、ブルー・オーシャン戦略
からの上記の議論に対する回答は、無くはありません。ブルー・オー
シャン戦略の回答は

マネされたらレッド・オーシャンになる。そのときは再びバリュー・
イノベーション(価値革新)を行ってブルー・オーシャンを切り開け
というものです(P.246~7の抜粋)。これ、身も蓋も無いです
よね。

「マネされたら、さらに先に進め」は確かにそうなんですが、これは
やはりブルー・オーシャン戦略は短期的な差別化のことしか考えてな
いことの証明になります。そんなカンタンにブルー・オーシャンが切
り開けるのなら、誰も苦労しませんよね……

というか、それによってマネされるサイクルが早まったら、かえって
大変になります。日本では、コンビニの出現で商品改廃サイクルが早
まったためにかかるエネルギーは、在庫管理、商品開発などすさまじ
いものがあります。だったらやらないほうがマシです。
ここは、戦略BASiCSからの意見は明確に違います。

「独自資源が活きるような強みを作れ」

です。マネされたらさらにブルー・オーシャンを、ではなく、そもそ
もマネされないようなブルー・オーシャンを狙うべきなんです。
先の楽しいワイン、イエロー・テイルにしても、単に「楽しさ」を、
販促レベルだけで打ち出すのではなく、そのような潜在顧客が多いチ
ャネルへの強いアクセスがある、などの独自資源がある場合に限って
やる、ということです。

この意味において、戦略BASiCSはブルー・オーシャン戦略より
明確に優れていると言えます。なんか戦略BASiCSが素晴らしい
もののように思えてきましたね(笑)。

 
さて、すごく長くなってたのでこの辺で……

ここまで、ブルー・オーシャン戦略をBASiCSの順番で
B 戦場:ブルー・オーシャン、新しい戦場なので「競合」はいない

S 強み:価値を足し引きして最適化する「戦略キャンバス」

C 顧客:新しい顧客、潜在顧客を開拓する

とやってきました。

A 独自資源 については、ブルー・オーシャン戦略には言及が無く
これが致命的な弱点になっています。

ここまできたら、次は……おわかりですよね。

次号に続きます!

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆今日のまとめ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●ブルー・オーシャン戦略の慧眼は「削る」ことにある。が、独自資
源を同時に考えないとマネされてレッド・オーシャンに突入する!

 

 

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━戦略編Vol.085 2008/12/25
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●ブルー・オーシャン戦略は、戦略BASiCSの使い方の一つとし
 て理解しよう。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆ブルー・オーシャン戦略
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●大ヒットした「ブルー・オーシャン戦略」

全世界的にヒットし、日本では2005年に発売されてやはりヒット
した「ブルー・オーシャン戦略」*。

全3回で、ブルー・オーシャン戦略を売れたま!流に斬ります。今回
はその3回目、最終回です。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆復習:ブルー・オーシャン戦略と戦略BASiCS
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●ブルー・オーシャン戦略とは?

ブルー・オーシャン戦略とは、名前の通り、「ブルー・オーシャン」
で戦おう、という提案です。
ブルー・オーシャンは、競合のいない、青い澄んだ新規の市場。

レッド・オーシャンは、血で染まった、競争が激しい既存の市場。

 

●戦略BASiCS:戦略の5つのチェックポイント

「白いネコは何をくれた?」などでもおなじみ、戦略BASiCS。
一応復習しておきましょう。
Battlefield:戦場・競合
Asset:独自資源
Strength:強み
i
Customer:顧客
Selling message:メッセージ

の5つのチェックポイントでマーケティング戦略を考えていくもので
す。

 

●ブルー・オーシャン戦略をBASiCSで斬る!

世界的に有名なブルー・オーシャン戦略を、日本古来(笑)の戦略ツ
ール、戦略BASiCSで斬ると……
B 戦場:ブルー・オーシャン、新しい戦場なので「競合」はいない

S 強み:価値を足し引きして最適化する「戦略キャンバス」

C 顧客:新しい顧客、潜在顧客を開拓する

となります。

A 独自資源 については、ブルー・オーシャン戦略には言及が無く
これが致命的な弱点になっています。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆ブルー・オーシャン戦略の3つの特徴
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●ブルー・オーシャン戦略の3つの特徴

ブルー・オーシャン戦略の特徴は(P.63~)

1)メリハリ:強みをしぼる

2)高い独自性:他社と違う強みを持つ

3)訴求力のあるキャッチフレーズ

の3つです。
メリハリ、とは、前号でもやったように
・顧客の価値があるところを増やし
・価値が無いところは大胆に削る
ことにより、「絞り」を実現することですね。
高い独自性、というのも実は同じことを言っています。つまり、絞ら
れた強みを持て、ということです。
面白いのは、「訴求力のあるキャッチフレーズ」です。著者曰く

・明快で記憶に残り
・サービスの中身を正しく表現する

のが良い、とのことです。

恐らくは、上記のメリハリと高い独自性が実現されていれば、「訴求
力のあるキャッチフレーズ」も可能だということでしょう。そして、
逆に訴求力のあるキャッチフレーズを言うためには、メリハリと高い
独自性が実現されていなければならない、ということが著者の言いた
いことのようです。
1)メリハリ:強みをしぼる

2)高い独自性:他社と違う強みを持つ

3)訴求力のあるキャッチフレーズ

で、1)と2)は戦略BASiCSでは「S:強み」の理論になりま
す。
3)は……もうおわかりでしょう、戦略BASiCSの最後の要素、

Selling message:メッセージ

なんです。

ここにおいて、「明確に伝えよ」というブルー・オーシャン戦略の教
えと、戦略BASiCSの「メッセージ」は完全に軌を一にします。
「企業戦略の効果や魅力を見極めるには、心に響き、しかも信頼に足
るメッセージをともなっているかどうかを考えてみればよい」
(P.64)という著者の主張は、「メッセージによって強み・差別
化をチェックしよう」という、戦略BASiCSのチェックポイント
と全く同一です。戦略をメッセージでチェックしよう、という主張が
経営学者から出てきたのは正直なところ驚きです。
といことで、このような現実性の高い理論を経営学者さんが出してき
た、というのは高く評価できることです。
ただ、残念ながらブルー・オーシャン戦略では、いかに「伝えるか」
までは踏み込んでいないのが残念です。ただ、この点では、拙著の
「経営戦略立案シナリオ」や「実戦マーケティング戦略」でも、かな
り詳しく「伝え方」を書いているとは言え、まだまだです。経営戦略
立案シナリオは戦略BASiCSに特化した本ですが、さらに、メッ
セージだけに特化した本をいずれ書こうと思っています。

 

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◆実は、ブルー・オーシャン戦略がブルー・オーシャン戦略だ!
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●ブルー・オーシャン戦略の意義は?

ここまでを戦略BASiCSでまとめると、
B 戦場:ブルー・オーシャン、新しい戦場なので「競合」はいない

S 強み:価値を足し引きして最適化する「戦略キャンバス」

C 顧客:新しい顧客、潜在顧客を開拓する

S メッセージ:訴求力のあるキャッチフレーズで伝える
となります。こう見てくると、ブルー・オーシャン戦略は、別に新し
く生まれた理論ではないことがわかります。戦略BASiCSのパタ
ーンの一つであり、BASiCSの一つの使い方の例と言えます。

ブルー・オーシャン戦略の本質である、「新しい価値を創って新しい
顧客に売ろう」、というのは別に今生まれた理論ではないんです。前
号で書いたように、「削る」とか、「戦略キャンバスで視覚化」とい
うのは極めて実用的だと思いますが、著者の発明ではありません。
ではブルー・オーシャン戦略に意義が無かったのかというと、そうで
は無いと思います。ブルー・オーシャン戦略がヒットしたのは事実で
す。そこには何かがあったはずです。

それは何かというと、実は私は……

「ブルー・オーシャン戦略」自体が、「ブルー・オーシャン」のマー
ケティングとしての有用性を示したのではないかと考えています。

 

●ブルー・オーシャンに学ぶマーケティング戦略
つまり、「ブルー・オーシャン戦略」が非常に考えられたマーケティ
ングなんだと思います。
ブルー・オーシャン戦略の特徴は、著者によれば

1)メリハリ:強みをしぼる

2)高い独自性:他社と違う強みを持つ

3)訴求力のあるキャッチフレーズ

の3つです。

1)と2)は基本的に同じことなのでまとめます。

ブルー・オーシャン戦略は、他のことではなく、「ブルー・オーシャ
ン」に特化しました。とにかく新しい戦場を、新しい価値を、という
一点に絞った本です。私の本も含めた、他の経営戦略論のように総花
的ではありません。特化しています。
そして、

3)訴求力のあるキャッチフレーズ

で伝えています。「ブルー・オーシャン」という名前自体、極めてよ
くできた「訴求力のあるキャッチフレーズ」だと思います。

私はブルー・オーシャン戦略の真骨頂はここにあると思います。
他にも、例えば、顧客の購買要素を視覚化したグラフを「戦略キャン
バス」と呼んだり、「顧客にとっての価値の最適化」を「バリュー・
イノベーション」という名前で呼んだりしてことです。

内容的には、決して新しいものではないのですが、それに魅力的な名
前を付けて売り出した、ということです。

「ブルー・オーシャン戦略」自体が、経営戦略理論の「ブルー・オー
シャン」を切り開いたのです。
というわけで私の結論は、ブルー・オーシャン戦略は新しい概念では
ない、しかし、これだけ売れた。それがブルー・オーシャン戦略のマ
ーケティングのうまさだ、ということです。
戦略BASiCSよりも全世界的にヒットしたので、その意味では私
も学ばないといけない、ということですね。私も、ブルー・オーシャ
ン戦略のマーケティングを参考にして、戦略BASiCSを世界的に
売れるようにしたいと思います。
と、とんだオチがついたところで……

 

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◆戦略BASiCSとブルー・オーシャン戦略の対応関係
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●戦略BASiCSとブルー・オーシャン戦略はどう対応するか?

ということで、ブルー・オーシャン戦略のまとめです。

ブルー・オーシャン戦略は、BASiCSで見ると
B:戦場・競合  競合の無い新しい「価値」戦場を開拓せよ

S:強み・差別化 価値を足し引きして、新規顧客に最適化せよ

C:顧客   潜在的に多数いる新規顧客を獲得せよ

S:メッセージ 訴求力のあるキャッチフレーズを作れ
となります。そして、強み・差別化(S)を、対競合(B)で視覚化
したツールがブルー・オーシャン戦略の売り、「戦略キャンバス」で
すね。

つまり、ブルー・オーシャン戦略は完全に戦略BASiCSで切れる
ことがわかります。

ブルー・オーシャン戦略は、戦略BASiCSの使い方の一類型なん
ですね。

そして、戦略BASiCSが優れている点が、「独自資源」です。ブ
ルー・オーシャン戦略には、「A:独自資源」の記載が薄いのは、前
号で記した通りです。そしてそれが、ブルー・オーシャン戦略の致命
的な弱点なので注意しましょう。ブルー・オーシャン戦略をそのまま
実行すると、マネされやすいレッド・オーシャンに突入します。
ここまでお読みのみなさんは、ブルー・オーシャン戦略を理論的に解
明でき、かつ、その弱点までわかった、ということになります。あの
本を読んだだけの方よりは一段も二段も上に上った、ということがお
わかりいただけると思います。

 

●戦略BASiCSは「ハコ」でしかない

つまり、ブルー・オーシャン戦略にしても、戦略BASiCSの一つ
のパターンであり、ブルー・オーシャンもレッド・オーシャンも、戦
略BASiCSで表現できるんです。
では戦略BASiCSの方がブルー・オーシャン戦略より優れている
かというと、そういうことでもありません。

そもそも比べる対象ではありません。戦略BASiCSは、あくまで
「ハコ」です。そして、ハコにしか過ぎません。だからこそ、ブルー
・オーシャン戦略がBASiCSの使い方の一つ、になるのです。

戦略BASiCSは、ハコなので埋め方次第でどうにでもなります。
その埋め方の一つが、ブルー・オーシャン戦略なんです。

そういう理解の上で、ここでもう一度ブルー・オーシャン戦略をお読
みいただくと、さらに理解が深まって良いと思いますよ。つまり、

「戦略BASiCSを使う際のネタが増えた」

ということです。戦略BASiCSの使い方がうまくなるからです。

戦略BASiCSがよく切れる包丁とすれば、その包丁を使った切り
方の一つがブルー・オーシャン戦略、ということですね。その意味で
戦略BASiCSとブルー・オーシャン戦略とは比較するものではな
い、ということがわかります。

その意味では、ブルー・オーシャン戦略の本を読むことはお勧めでき
ます。もちろん「白いネコは何をくれた?」など、戦略BASiCS
の本をお読みいただいた後で、のことですが。

 

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◆結論:ブルー・オーシャン戦略をBASiCSの中身として使おう
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●使うツールは1つでいい

それでも、戦略ツールとして使う分には、戦略BASiCSの方が圧
倒的に優れているということは言えます。

使うツールは少ない方がいいに決まっています。

・PEST
・3C
・SWOT
・5 Forces

などなどの分析ツールに加え、ブルー・オーシャンも使いこなそう、
あ、あっちも、なんて無茶な話です。阿多間良夫君にだって無理だと
思いますよ。トップ校MBA程度の能力ではまず無理だ、と言ってお
きます。少なくとも私には全く無理です。分析自体はできますよ、そ
れぞれチャートを書けばいいだけですから。そうではなく、その複雑
な分析結果にそれぞれ意味づけをして全ての一貫性を確認したうえで
現実的なアクションプランに落とし込むのが無理、ということです。
だから、「白いネコは何をくれた?」で、クライアントの友田社長は
正直に「ギガ広告のプレゼンは難しすぎてよくわからなかった」、と
言ったんです。多くのツールを使えば使うほど、わかった気にはなり
ますし、仕事をした気にもなりますが、ほとんどの場合、かえって複
雑にしているだけで意思決定の妨げになります。

使うツールは少なければ少ないほどいいんです。多くのツールを中途
半端に使えるよりは、きっちり使えるツールが1つあり、そのツール
の経験値を高めた方がいいんですね。野球でも、結局は打たれてしま
う変化球をたくさん持っているより、「これなら打てない」という、
元マリナーズの佐々木投手のフォークのような決め球があったほうが
ここぞというときに頼りになるんです。
その意味で、ハコでしかない戦略BASiCSの包容力は、大きな強
みになります。

 

●入れ物であるBASiCSの中身としてブルー・オーシャンを使う

ということで、全3回の結論です。
結論は、まずは戦略BASiCSをきっちり理解したうえで、その際
の使い方の一つとしてブルー・オーシャン戦略を理解する、というの
が一番いいブルー・オーシャン戦略の使い方、ということです。

 

計3回、ブルー・オーシャン戦略はいかがでしたでしょうか?
世間的にはブルー・オーシャン戦略が絶賛されるなか、このような切
り口のものは少ないと思います。ぜひご感想をお寄せください!

また、「アンタは戦略BASiCSの開発者だからBASiCS寄り
なんだよ」と思われた方、実際BASiCSに熱が入ったのはその通
りだとは思います……が、偏った切り方では無いと思いますよ。
では、良いクリスマスをお過ごしください!

 

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◆今日のまとめ
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●ブルー・オーシャン戦略は、戦略BASiCSの使い方の1つとし
 て理解しよう。また、ブルー・オーシャン戦略の「マーケティン
 グ」から学ぼう!