6月 132011
 

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━戦略編Vol.195 2011/06/13
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●自分が何屋か、という戦場の定義に合わせて、Assetを育成・
 蓄積しよう!

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◆T&Gが他社式場をプロデュース!
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●結婚式場運営のT&Gが、他の式場での結婚式を請け負い

テイクアンドギヴ・ニーズ(以下T&G)は、80を超える自社施設
での、特徴あるウェディングで伸びてきました。

「ハウスウェディング」という言葉を広めた立役者の1人が、T&G
だったように思います。
その「独自の施設」で業績をあげてきたT&Gが、最近は他社施設で
の受注もしているとのことです。

どういうことかと言うと……


-----------< 記事要約 >------------

○長野県松本市の「ホテルブエナビスタ」と提携し、その結婚式を陰
 で支えるのがテイクアンドギヴ・ニーズ(T&G)。ホテルに従業
 員を常駐、スタッフ教育や婚礼料理の監修などを手掛ける。成約率
 は提携前より約10ポイント改善。下見に訪れるカップルも約25
 %増えたという。
○T&Gは式場の積極出店で成長してきたが、2008年に20億円
 の最終赤字を出すなど、業績が失速。11年3月期は2億円の最終
 利益を出すまでに回復したが、再成長への転機を迎えている。多額
 のコストをかけて直営式場を増やさなくても、「オリジナルウエデ
 ィング」を提供できれば受注は増やせる。
○「場にとらわれないウエディング」(同社)というコンセプトのカ
 ギを握るのがウエディングプランナー。直営式場以外でのT&G流
 挙式を推し進める中心が有賀明美氏。帝国ホテル東京での石田純一
 さんとプロゴルファーの東尾理子さんの結婚式など、自社式場以外
 の約15件の挙式を担当。「特徴を知り尽くした自社施設での式よ
 りもプランナーの力が問われる」(同氏)
○「将来はフリープランナー制を導入したい」と同社は言う。「新郎
 新婦のためを考えたら、当社の式場にこだわらない自由な発想がも
 っとあっていい」。そのためには「まず当社のゲストハウスでより
 よい結婚式が提案できるようにレベルアップが必要」(同社)とし
 て、有賀氏のようなスタープランナーの知恵を共有できる社内情報
 システムも活用し始めた。
2011/06/08, 日経MJ(流通新聞), 1ページ

-----------< 記事要約 >------------
T&Gの誇るウェディングプランナーを、他社に派遣する、というこ
とですね。
ウェディングプランナーが他社より優れている(=強みがある)ので
あれば、確かに、他社施設でも、プランナーの存在意義が出てきます
よね。

頼む方(新郎新婦)にとっても、

・自分たちのやりたい式を、
・自分たちのやりたい式場で

できますよね。

 

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◆復習:戦略BASiCS
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●戦略BASiCS 戦略の5つのチェックポイント

一応復習しておきましょう。

経営戦略・マーケティング戦略で考えるべきポイントは5つです。そ
の5つは……

Battlefield:戦場・競合
Asset:独自資源
Strength:強み
i
Customer:顧客
Selling message:メッセージ

です。

戦略BASiCSは、この5つのチェックポイントでマーケティング
戦略を考えていく、経営・マーケティング戦略の統合フレームワーク
です。
戦略BASiCSの詳細は、「経営戦略立案シナリオ」(かんき出版
刊)で!

http://www.sandt.co.jp/scenario.htm
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◆「ハード資源による成長」の限界
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●施設という「ハード資源」に依存した成長には、限界が来る
記事に「T&Gは式場の積極出店で成長してきた」とあります。

このような「出店による成長」は、どこかで限界が来ます。資金負担
(有利子負債)が重くなりますし、市場も飽和します。

というわけで、T&Gの業績の「伸び方」を検証してみましょう。
       売上*    営業利益*      施設数**
      (億円)    (億円)      (直営会場)
2003   53      5           8
2004  114     16          22
2005  218     35          41
2006  340     50          62
2007  464     66          84
2008  405     21          88
2009  415     24          87
2010  414     41          87
2011  413     39          ??
 *売上・営業利益

 2003年の数字:2004決算短信
 2004~2007年までの数字:2008事業報告書
  (2007年は連結、セグメント別情報の記載無し)
 2008~2010年までの数字:各年の有価証券報告書
  (国内ウェディング事業)
 2011年の数字: 当年決算短信(国内ウェディング事業)
 **施設数

 2003年の数字:2006アニュアルレポート
 2004~2008年の数字:2008事業報告書
 2009~2010年の数字:2010決算説明会資料
 2011年の数字は不明(震災の影響?)

 

2007年までは、倍々ゲームのような勢いで伸びていますね。これ
が、「ハード資源による成長」です。ここまでの売上伸張要因は、施
設数の拡張です。直営の結婚式場を多く持ち、面を広げることで売上
を広げてきたわけです。
2003年と2007年を比べると、ざっくり言えば、施設数が10
倍になり、売上も10倍になっている、という比例的な売上の伸びに
なっていますね。逆に言えば、「比例以上には伸びていない」とも言
えます。

そして、施設数を増やさなくなった2007年以降、売上が横ばいに
転じます。施設数と比例的に伸びてきたので、当然と言えば当然、で
すが……

 

●ハード資源はマネされやすい

さらに、施設のような「ハード資源」は、競合にマネされやすいので
す。

ハウスウェディングを大々的に展開したのはT&Gが最初でも、それ
が成功するほど、他社がマネします。
T&Gが施設をどんどん増やしていった時代は、「T&Gは……「ハ
ウスウェディング」を作り出した」(T&G事業報告書2004)と
いうこともあり、「ハウスウェディング」は、T&Gの独壇場だった
わけですね。

ところが、それにつれて、皮肉なことに、ハウスウェディングがメジ
ャーになっていきます。「2003年には日本経済用語辞典に新しい
結婚式スタイルとして登録されました。ハウスウェディングは今や日
本中に認知され」(T&G事業報告書2004)るに至ります。

すると、競合がマネしてきて、似たような施設を作り始めます。そし
てさらに市場の飽和をさらに加速させる、という悪循環に陥るわけで
す。
これが「ハード資源による成長」の限界ですね。小売店などの、「拠
点ビジネス」は、どうしてもこうなります。

倒産した英会話のNOVA、大規模閉店を敢行したマクドナルド、最
近苦戦しているコーチ、など、

「出し過ぎのワナ」

に落ちてしまうんですよね。

ですので、どこかで、「ハード資源主導の成長」から、「ソフト資源
主導の成長」へと方向転換することになります。

 

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◆「ソフト資源」主導の成長への転換
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●ソフト資源主導への転換を目指す「フリープランナー」

このような文脈で冒頭の記事を読むと、「フリープランナー」の持つ
意味の重さがよくわかります。

T&Gが理想像として掲げる「フリープランナー」とは、挙式の場所
が、「自社施設」でも「他社施設」でも関係なく、「お客様に最適の
場所を提案・プロデュースできるプランナー」と言えるでしょう。

ポイントは、「自社施設でもなくていい」ということです。

つまり……「自社施設」という「ハード資源のくびき」から、自社を
解放しようとしているのだと考えられます。

挙式の場所は他社施設ですから、自社施設からのような飲食などの売
上は無いか少ないか、でしょう。それでも、ウェディングの「プロデ
ュース」を請け負って、「プランナー料で稼ぐ」という、稼ぎ方の転
換を図っているものだと推測できます。

つまり、「フリープランナー」及び、その「採用・育成方法」という
「ソフト資源」で稼ぐ方向への転換、なのですね。

 

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◆「戦場」と「独自資源」の一貫性
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●「戦場」はどこか? = アナタは何屋か?

BASiCSでいう「B:戦場」(Battlefield)は、「自社+競合」
です。

そして、「自社+競合」の「括り方」が、「自分は何屋か」という、
自社の事業領域の顧客視点での定義、です。
今回の、T&Gの「戦場」を考えて見ると……

 

○ハード資源(自社施設)主導の成長

「ウェディング施設の提供屋」であり、顧客視点の表現にすると、

「他社に無い施設で、素敵なウェディングができる」屋さん、

と言った感じになるでしょう。

 

○ソフト資源(フリープランナー)主導の成長

「ウェディングプランナーの派遣屋」であり、顧客視点の表現では、

「他の誰にもできない素敵なウェディングを企画してくれる」屋さん

と言った感じでしょうか。

 

つまり……
「どの独自資源を成長のドライバーにするか」

によって、戦場の定義が変わるわけですね。
その意味では、T&Gは、主要な独自資源を「ハード資源」から「ソ
フト資源」へとシフトさせていく過程において、「戦場を変更させつ
つある」とも言えます。

 

●「アナタは何屋か?」に合わせて独自資源を育成・蓄積しよう!

そのことを逆に言えば、

「戦場を変えるために、投資すべき「独自資源」を変更しようとして
いる」

とも言えますね。
「投資・育成・蓄積すべき独自資源」が、「戦場の定義」によって変
わるわけです。

 

自分を

「ウェディング施設の提供屋」

と定義するのであれば、ハード資源の拡充・設備更新・新設に投資し
ていくことになります。
自分を

「ウェディングプランナーの派遣屋」

と定義するのであれば、人材というソフト資源と、その採用・育成ノ
ウハウというソフト資源に投資していくことになります。
戦場(=自社の事業領域)によって、すべきことが変わる、というの
は「独自資源」においても同じです。

むしろ、「独自資源」の育成・蓄積には時間がかかるために、こちら
の方をより真剣に考える必要がありますね。
BASiCSの5要素は、全て連動しています。それ故に、一貫性を
保つ必要があります。
ここまでの本や売れたま!、では、「独自資源」は「強みを競合がマ
ネできない理由」という、「対競合」の視点が多かったと思います。

が、独自資源は、それに限らず、「戦場」=顧客視点の事業領域を規
定することにもなるんです。

 

戦場=お客様にとっての価値としての事業領域

であり、

競合=お客様にとっての価値としての事業領域での他の選択肢

ですから、要は、戦場=競合となります。ですから、独自資源がその
双方を規定するのは、「BASiCSの一貫性」という意味で、当然
と言えば当然ですね。
今回はここまで、次号では、ハード資源とソフト資源について、さら
に考えを深めていきましょう!

 

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◆今日のまとめ
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●「戦場の定義」によって「独自資源」が変わる。そして「独自資源
の定義」によって「戦場」が変わる。その一貫性を考えよう!