8月 152011
 

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━━━戦略と組織編Vol.005 2011/06/27
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◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●密着軸と手軽軸では組織が全く変わる。組織の前に、まずは戦略を
 決めよう!

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◆戦略と組織編
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今年の4月からスタートした、「戦略と組織編」。今回は2回目です
ね。

戦略の「実行主体」であるところの「組織」について、きちんと整理
しておきたい、ということです。

 

●組織は戦略実行の「手段」であって「目的」ではない

なぜ単に「組織」編とせずにわざわざ「戦略と組織」編と銘打ってい
るかというと、「組織をどうするか」という問いを、戦略と独立して
発することは無意味だからです。「組織」は、手段であって目的では
無いからです。

そもそも「万能な組織」というのはありませんよね。あるのだったら
教えていただきたいです。経営学上の超大発見となります。無いから
こそ、みんな「最適な組織」を目指して苦労しているわけです。

なぜ「万能な組織」な組織が無いかというと、組織は戦略実行の手段
だからです。そして、「万能な戦略」もありませんから、それを実行
する手段にも万能なものはありえない、ということです。
当たり前だ、とおっしゃる方もいらっしゃるでしょうが、「組織」を
単独で議論することは結構多いですよ。そうではなくて、あくまでも
「何を達成したいのか?」という「目的」に対する「手段」として
考えよう、ということです。

 

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◆店舗に権限移譲するサミット
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●サミットが、本部から店舗への権限移譲を進行中!

スーパーマーケットのサミットが、会社の運営方法を大胆に転換して
います。

本部集中→店舗へ、という権限移譲です。

その理由は……
-----------< 記事要約 >------------

○サミットは本部主導の効率的な運営を標榜。それは1994年から
 2001年まで社長を務めた荒井伸也氏の信条で、それがサミット
 らしさであり、同社の強みとなっていた。販促も本部が決め、店舗
 はそれに従っていた。ほとんどのPOPも全店共通だった。しかし
 売上が停滞。
○ある店で消費者モニターにヒアリングすると「店に活気がない」と
 いう指摘があったという。従業員は指示通りに淡々と作業し、顧客
 に積極的に声をかけることはほとんどなかった。
○2010年3月期に経常減益となり、方向を転換。本部の権限を店
 長に移譲、店ごとに最適な販売促進策を考え、試食などで顧客に積
 極的に声をかける
○消費者の心をとらえるような企画は本部だけでは生まれにくい。消
 費者に最も近い従業員からアイデアを引き出すには、彼らに自ら考
 えさせる必要がある。
○昨春には、1人の従業員が複数の部門の作業をこなす「マルチジョ
 ブ」制度を本格的に導入。ある店ではレジ係だったパート従業員が
 自分でメニューを考え試食販売に取り入れた。
○サミットストア中野南台店に、「ネバネバヨーグルト対決」という
 ヨーグルトの試食コーナーが登場。明治乳業の「明治ヨーグルト
 R―1」とフジッコの「カスピ海ヨーグルト」を試食できる。対決
 スタイルも取り上げる商品も、店長とパートタイマーが考えた。同
 時に干しイモとポン酢の試食販売も実施し、売上高は1・5~7倍
 に増えたという。

 

2011/02/21, 日経MJ(流通新聞), 9ページ

-----------< 記事要約 >------------

お客様を一番知っているのは、やはりお客様に近い部署、小売の場合
は「店舗」ですね。

そこの従業員に考えてもらうと、売上が1.5倍になったりするわけ
ですね!

 

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◆復習:3つの差別化軸
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●復習:3つの差別化軸とは?

売れたま!でも何度となく紹介している3つの差別化軸。差別化戦略
は大きく分けて3つしかありません。

1)手軽軸:早い、安い、便利
2)商品軸:商品・サービスが良い
3)密着軸:個別具体的ニーズに応える

となります。
これは私のオリジナルではなく、元ネタは、マイケル・トレーシー、
フレッド・ウィアセーマ両氏のValue Disciplinesを解釈・再定義し
たものです。
この、どの軸を選ぶかで、自社の戦略の構築はもちろん、戦術・行動
が全く変わって来ます。

軸に善し悪しはなく、「決め」の問題です。「最悪な軸」があるとす
れば、それは「軸を決めないこと」、さらには「決めたのにブレるこ
と」です。

 

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◆差別化軸の転換を図るサミット:手軽軸→密着軸へ
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●手軽軸→密着軸へ、という差別化軸の転換

サミットは、以前は「手軽軸」でした。それがわかる部分を記事から
拾ってみましょう。
・効率性を重要視
・本部が決め、店舗はそれに従う、という中央集権的な組織運営
・従業員は指示通りに淡々と動く
というところですね。

これが手軽軸の運営の特徴です。

これが悪い、というわけではありません。この「効率性」による「低
価格」でお客様をひきつける、というのが手軽軸の戦い方です。

昔はそれでも良かったのかもしれませんが、競合も同様な戦い方をし
ている場合には、それでは差別化できません。さらに、安いだけでは
売れない、ということでもあるのでしょう。
ここから、

・店ごとに最適な販売促進策を考える
・1人の従業員が複数の部門の作業をこなし、試食メニューを考案
・試食などで顧客に積極的に声をかける
という組織・動き方にしています。これは、典型的な密着軸的な動き
方です。
それまでの手軽軸から、密着軸へと差別化軸の転換を図っている、と
いうように見えます。

 

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◆密着軸の考え方
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●全体の考え方

今回のサミットの動きを全体として分析してみると、このようになり
ます。

         手軽軸          密着軸

 戦略:    効率・低コスト    顧客の個別ニーズに対応

         ↓↑           ↓↑

 組織・権限: 本部に中央集権    顧客に近い組織に分権

         ↓↑           ↓↑

 顧客応対:  淡々と        積極的に声かけ

         ↓↑           ↓↑

 働き方:   シングルジョブ    マルチジョブ・自ら考える
では、1つ1つ考えて行きましょう。

まずは、全体の「考え方」です。

手軽軸は、「低価格勝負」という戦い方になることが多いです。する
と、低コスト化のために「効率」を求めます。

対して、密着軸は「顧客の個別ニーズに対応」することで差別化しま
す。小売店の場合には、店舗の立地によって顧客ニーズが違う、とい
うことになることが多いです。
この、軸ごとの「戦略の違い」が、「組織・権限」と「社員の動き
方」を決めるわけです。あくまでも、戦略が先です。

 

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◆手軽軸と密着軸の組織の違い
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では、手軽軸と密着軸の組織やその運営方法の違いについて、1つず
つ見ていきましょう。
●組織・権限:中央集権の手軽軸、顧客部門へ分権する密着軸

まずは、「権限構造」です。

手軽軸は、低コスト化するために効率を重視します。それに適してい
るのは、「中央集権」型の軍隊型組織です。意思決定は「本部」(言
わばGHP)で全て行われることになります。その方が効率が良いか
らです。

単純な話、店頭のPOPにしても、店毎にバラバラに作るよりは、本
部で決めて、大量発注したほうが低コストになりますよね?

また、店毎に何かを考える、となると、それだけの人件費も必要にな
ります。そんな人を雇う余裕があるのであれば、その人件費を削って
価格を下げる、という発想になります。
密着軸は、お客様に近い部署に分権します。そして、その部署(多く
の場合は営業部門)に権限を持たせます。お客様の意見が一番重要で
すから、それを代表する部門の言うことに他部門が従う、ということ
になります。本部は、顧客代表部門に対する「サポート部門」という
位置づけになります。

これは、「ニーズはお客様ごとに違う。それに合わせて個別の対応策
を取る」という密着軸の発想によるものです。

ある店では若者が多く、別の店では年配者が多い、という場合、手軽
軸ではその差を無視して「安ければ両方来てくれる」という発想にな
りますが、密着軸では、若者が多い店では若者向けの品揃えに、年配
者が多い店では年配者向けの品揃えにします。

立地に合わせた品揃え、と書くと「当たり前だ」と思われるかもしれ
ませんが、手軽軸の店の方が安いわけですから、その手軽軸の店と大
差ない品揃えであれば安い方に行きます。密着軸ではその価格差を上
回る「自分にあった品揃え」を実現しなければ、価格差を克服できな
いんですよ。これは結構大変ですよ。

 

●顧客応対:マニュアル対応の手軽軸、積極提案の密着軸

次に、顧客応対を見ていきましょう。

手軽軸は、「マニュアル的な対応」になります。中央集権的な「いい
から本部の言うことを黙って聞け」という組織形態なわけですから、
現場は「本部の言う通りに」画一的な対応をすることになります。

本部としては、現場に「余計なこと」をして欲しくないわけです。バ
ラバラに動くと効率が悪くなるからです。

また、顧客回転率も上げたいので、短時間で機械的な対応になること
が多いです。

繰り返しますが、これが良い悪い、ということではなく、戦い方の問
題ですから「決め」の問題です。

手軽軸で行くならば、このような割り切りが必要になります。それで
クレームが出たら、「それは安いんだからしょうがない」と(程度問
題ではありますが)割切ることになります。機械的な対応でもいいか
ら安い方がいい、というお客様を狙っているわけですから、しょうが
ないですね。
密着軸は、「個別応対」になります。お客様の個々の事情に合わせて
「臨機応変」に対応することになります。

一般的に、密着軸の場合は「親身な応対」になります。お客様の「個
別ニーズを引き出す」ために、お客様のココロに近づく必要がある
(ことが多い)からです。お客様との接触時間も長くなります。

すると、効率が悪くなりますから、それを何らかの形で価格に反映さ
せる必要があります。低価格でなくとも良いからそのような対応をし
て欲しい、と考えるお客様を狙うことになります。

 

●働き方:シングルジョブの手軽軸、マルチジョブの密着軸

最後に、「働き方」です。

手軽軸は、シングルジョブ、というか、同じことをひたすら行って、
効率を高めることが多いです。

「分業制」による、効率アップ、という発想ですね。
密着軸は、マルチジョブ、であり、1人の従業員が色々なことをしま
す。その分効率が落ちますが、顧客の個別応対がしやすくなります。
例えば、小売店の場合、品だしや陳列をしているとき、手軽軸であれ
ば、お客様に何かを聞かれても「あっちにあります」と簡単な応対を
するのは(望ましくないにしても)ある程度やむをえません。それで
もお客様は「安い方」にくるわけです。
密着軸であれば、何をしていても、お客様に何かを聞かれたら、それ
に最優先で対応します。そのような意味での「マルチジョブ」なんで
すね。

また、密着軸では、お客様の「個別ニーズ」に対応します。そしてそ
れはお客様によって違うわけですから、従業員がその都度自分で考え
て判断する、という「自分で考える」態度が必要になります。逆に手
軽軸の場合は、自分で考えず、「機械的に本部に従う」ことが重要に
なります。

 

メーカーの場合も同じです。

手軽軸だと、大量生産システムを志向することが多いです。そしてそ
れは多くの場合、「分業制」となり、シングルジョブになります。車
を作る、という場合、「ブレーキを取り付ける」というような、全体
から見るとごく一部の作業に専門化します。
密着軸ですと、「セル生産システム」と呼ばれるような、1人、ない
しは少数の従業員が全てを作るような生産システムを志向します。車
を作る、という場合、全ての作業を自分1人でできるようにします。

この理由が、まさに「個別ニーズに応える」ためです。密着軸で車を
作るのであれば、お客様の個別ニーズに応えて、細かな細かなカスタ
マイズを行います。そのお客様のための専属工員が、1人でその個別
ニーズに応えるわけです。その専属行員は、お客様とよ~く話して、
その個別ニーズを知り尽くす、ということになります。

このような手間のかかることは手軽軸ではやりません。それより安く
することが重要なわけです。

 

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◆戦略と組織の一貫性
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●組織は「戦略」で決まる

このように、「手軽軸」「密着軸」ともに、組織およびその運営方法
が全く異なることがわかりますね。

そして、それぞれの要素に一貫性があることがわかります。
密着軸では、顧客の個別ニーズに応えます。それを実現するために、
顧客に近い組織に分権します。お客様の個別ニーズを引き出すために
は、お客様と積極的に話す必要があります。そして、その個別ニーズ
には、お客様に近いところにいる人が、自ら考え、自ら実行するため
にマルチジョブ、という働き方になります。

全体として、戦略・組織・従業員の動き方、というのが全て一貫性を
持っていることがわかります。
つまり……

組織を考える場合、組織だけを取り出して考えてはいけない
組織を考える場合、組織だけを取り出して考えてはいけない
組織を考える場合、組織だけを取り出して考えてはいけない
ということなんです。

その意味で、「組織論」というものは存在しないことになります。組
織「だけ」を考える、ということがありえないからです。

全ての組織論は「戦略と組織」論になるはずです。組織に限らず、マ
ーケティング、財務、など全てについて同じです。例えば、「製品だ
け」を取り上げて考える、ということはありえません。ある戦略の下
で「どういう製品を作るか」と考えることになります。

 

●戦略を決めて、それを実行するための手段としての組織を考えよう

組織は、戦略実行の「手段」ですから、戦略が決まっていなければ、
組織を考えることはできません。

逆に、「短期的には」今の組織でできること、という制約要因の中で
戦略を考えることになります。

しかし、長期的には、その制約要因を外し、「あるべき姿」を考えて
それを実行するためにはどのような組織であるべきか、と考えるのが
筋です。それは、現在の姿とギャップがあるはずです。

そしてその「ギャップ」を埋めるのが行動、となります。
当然、戦略を考えるのはBASiCS、そして3つの差別化軸です。
組織を考える前に、そちらを考え抜く必要があるんです。

 

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◆今日のまとめ
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●差別化軸によって組織が変わる。組織を考える前に、戦略をきちん
 と考えよう!