6月 162011
 

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━戦略編Vol.196 2011/06/16
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●何を「持つ」「持たない」かは戦略次第。戦場、ハード資源、ソフ
 ト資源の組み合わせに一貫性を持たせよう!

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◆前号の復習
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●結婚式場運営のT&Gが、他の式場での結婚式を請け負い

テイクアンドギヴ・ニーズ(以下T&G)は、80を超える自社施設
での、特徴あるウェディングで伸びてきました。特に有名なのが、
「ハウスウェディング」という市場の開拓ですね。

そのT&Gが、他社施設のウェディングの受注を始める、という方向
に向き始めました。

これは、ある意味で「戦場」を広げる、ということになります。
戦場1)(これまで):「ウェディング施設の提供屋」
「他社に無い施設で、素敵なウェディングができる」屋さん
○ハード資源(自社施設)主導の成長
戦場2)(これから):「ウェディングプランナーの派遣屋」
「他の誰にもできない素敵なウェディングを企画してくれる」屋さん
○ソフト資源(フリープランナー)主導の成長
恐らくは、これから 1)+2)というカタチでの成長を考えている
のだと思われます。

今回は、この「戦場」「独自資源」の変更の意味を、さらに考えてい
くこととしましょう!

 

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◆復習:戦略BASiCS
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●戦略BASiCS 戦略の5つのチェックポイント

一応復習しておきましょう。

経営戦略・マーケティング戦略で考えるべきポイントは5つです。そ
の5つは……

Battlefield:戦場・競合
Asset:独自資源
Strength:強み
i
Customer:顧客
Selling message:メッセージ

です。

戦略BASiCSは、この5つのチェックポイントでマーケティング
戦略を考えていく、経営・マーケティング戦略の統合フレームワーク
です。
戦略BASiCSの詳細は、「経営戦略立案シナリオ」(かんき出版
刊)で!

http://www.sandt.co.jp/scenario.htm

 

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◆「成長の制約要因」の変化
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●戦場の定義により、「成長の制約要因」が変わる
戦場(=自社の事業領域の顧客視点での定義)のとらえ方により、成
長の仕方が変わります。

 

戦場1)(これまで):「ウェディング施設の提供屋」
○ハード資源(自社施設)主導の成長
この場合には、自社施設をガンガン建設していくのが、成長の主導要
因(ドライバー)になります。

実際、そうやってT&Gは成長してきたわけです。前号からの再掲で
す。
       売上*    営業利益*      施設数**
      (億円)    (億円)      (直営会場)
2003   53      5           8
2004  114     16          22
2005  218     35          41
2006  340     50          62
2007  464     66          84
2008  405     21          88
2009  415     24          87
2010  414     41          87
2011  413     39          ??
 *売上・営業利益

 2003年の数字:2004決算短信
 2004~2007年までの数字:2008事業報告書
  (2007年は連結、セグメント別情報の記載無し)
 2008~2010年までの数字:各年の有価証券報告書
  (国内ウェディング事業)
 2011年の数字: 当年決算短信(国内ウェディング事業)
 **施設数

 2003年の数字:2006アニュアルレポート
 2004~2008年の数字:2008事業報告書
 2009~2010年の数字:2010決算説明会資料
 2011年の数字は不明(震災の影響?)
2007年までは、施設数の伸びに応じて成長してきました。

逆に見ると、「施設数」が増えなければ、成長できないわけです。実
際に、施設数が伸びていない2008年以降は売上が全く伸びていま
せん。
つまり、この成長の源だった「施設数」が、「立地の余地」という
「制約要因」によって、成長を阻害されるわけです。

この戦場で戦う限りは、この「立地の余地」という制約要因をいかに
外していくか、という勝負になります。

ですから、主たる投資対象が「設備」になります。
そして、拠点ビジネス・立地ビジネスの場合は、どこかで限界が訪れ
ます。ハウスウェディングのニーズがある都市はそれなりに限定され
ますし、また競合もマネしてくるために、市場も飽和してきます。こ
れは、ハード資源主導型の成長戦略の「宿命」と言ってもいいでしょ
う。

 

戦場2)(これから):「ウェディングプランナーの派遣屋」
○ソフト資源(フリープランナー)主導の成長
これは、ある意味での「人材派遣業」ですから、「拠点数」の制約を
受けません。この戦場では、施設数の制約は受けません。全国各地に
多くある結婚式場など、「結婚式ができる場所」であれば、どこでも
いいわけですから。

他社のハード資源を使うわけですから、その制約を受けないわけです
ね。
しかし、この戦い方では、別の制約要因が生まれます。

それは「優秀な人材の採用・育成スピード」ということになります。
ソフト資源の育成スピードが新たな制約要因になります。

今度は、この「人材の採用・育成」という制約要因をいかに外してい
くか、という勝負になってきます。

ですから、主たる投資対象が「人材の採用・育成」になります。
コンサルティング会社などですと、この制約要因は結構大きな足かせ
になってきますよね。優秀な人材(自社に適した、という意味で)は
そうそういませんから。

スターバックスなどもそうですよね。あのような愛想の良い対応がで
きる人材はそうそういないでしょうから。

 

ただ、戦場1のハード資源の制約要因が、物理的な制約要因であるの
に比べ、戦場2のソフト資源は、やり方次第によっては何とかなるよ
うなもの(であることが多い)ので、ソフト資源主導型の方が、まだ
やりやすいとは言えそうです。

 

●成長を主導する資源が変わるから、投資の優先順位が変わる
戦場1)(これまで):「ウェディング施設の提供屋」
○ハード資源(自社施設)主導の成長
○主たる投資対象:ウェディング施設の立地開拓・建設
戦場2)(これから):「ウェディングプランナーの派遣屋」
○ソフト資源(フリープランナー)主導の成長
○主たる投資対象:人材の採用・育成
このように、「戦場」「独自資源」が変わると、「主たる投資対象」
が変わって来ます。

すると、当然組織も変わってきますよね。戦場1)の場合ですと、新
しいウェディング施設の立地開拓の担当部門などが組織上重要になり
ます。予算もそこに多く配分されます。
戦場2)の場合ですと、人材の採用・育成担当部門が組織上重要にな
り、予算も多く配分されることになります。
戦場・独自資源の変更は、「成長の制約要因」に大きな変更を与えま
す。これは、組織や予算決めなども含めた、全社的な影響をもたらす
わけです。

これはもともと「戦場」の変更から来ています。「戦場の変更」は、
会社全体を変えてしまうような、大きな変更となることが多いのは、
このためなんですね。

 

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◆「持つ」経営 vs 「持たない」経営
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●「独自資源」は、「強みの源泉」

「強み」というのは、「お客様が競合ではなく、自社を選ぶ理由」で
す(さらりと書きましたが、この言葉は極めて深く、重い意味を持ち
ます)。

そして、「独自資源」というのは、その「強みを競合がマネできない
理由」です。つまり、独自資源は「強み(=競合ではなく自社が選ば
れる理由)の源泉」なんですね。

 

●「持つ」経営 と 「持たない」経営

最近よく、「持たない経営」などという表現がされるようになってき
ました。

これをBASiCSで考えて見ると、この「独自資源」の問題に行き
着くことになります。

何を「持つ」のか、そして何を「持たない」のか、を考える、という
ことです。

そして、それが成長の「制約要因」になる、というのは見てきた通り
です。

 

●独自資源を「ハード資源」に置くのが「持つ経営」

「持つ経営」は、ハード資源を主要な「強みの源泉」(=独自資源)
とし、積極的な投資をします。

工場の設備投資などが典型で、シャープが亀山に千億円単位で投資し
たのが1つの典型例です。

 

●独自資源を「ソフト資源」に置くのが「持たない経営」

それに対して、「持たない経営」は、「強み」を生み出す独自資源を
「ソフト資源」に置きます。

「持たない経営」という表現は、正確ではなく、「換金できるような
性質の資産は持たない」ということかと思います。ソフト資源も「持
たない」のであれば、強みを生み出せませんからね。
ソフト資源について、一番詳細に解説しているのは、現在のところで
は、「経営戦略虎の巻 CD7枚組」*です。

*経営戦略虎の巻
http://sandt.co.jp/keieitoranomaki.htm

 

●バリューチェーンのどこに「強みの源泉」を持つか

一般論として、いわゆるバリューチェーンは、

 ○メーカー :考える   → 作る  →  売る
       (R&D)   (生産)   (販売)

 ○小売・流通:仕入れる → 並べる →   売る
       (仕入れ)   (店舗)  (集客・接客)

のようになります。

特にメーカーの場合に顕著ですが、「作る」ことに「強みの源泉」を
置くか置かないか、というのは極めて重要な意思決定になります。
例えば、アップルや任天堂は、生産は自社ではなく、いわゆるEMS
などに生産を外部委託しています。

さて……アップルや任天堂は、自分で作っていないのに、メーカーと
呼べるのでしょうか? 「作る」ところは、それが得意な他の誰かに
任せて、「考える」こと(商品企画)と「売ること」に、「強みの源
泉」(=独自資源)を置いているわけですね。
逆に言えば、任天堂DS、Wii、iPod、などは、任天堂やアップル
でなくとも、「作ること」は可能なんですよね。

逆に、ソニーは、それを潔しとせず、自社で作る「持つ経営」を志向
しているように見えます。
「作ること」に「強みの源泉」を持つ、という場合は他の誰かに作れ
るようなものでは、意味がありません。

極論すれば、ある生産設備が「他の誰にも作れないようなものを作
る」ことができないのであれば、それは他の誰かに任せてしまった方
がいいかもしれない、ということです。

そのときに、独自資源がなくなってしまう、というのであれば、他の
独自資源(例えばソフト資源)を急ぎ育成するか、あるいは「他の誰
にも作れないものを作れるようになる」しかありませんね。

 

●どちらを選ぶか、は、決めの問題

どちらが良い・悪い、という話ではありません。このような戦略は、
ある意味で「決め」の問題ですから、決めるしかありません。
自社の「強みの源泉」をどこに置くにしても、それは「独自」な資源
である必要があります。だから単なる「資源」ではなくて、「独自」
資源なんですね。
今、特に日本においては、どちらかというと、「持たない経営」の方
が有利でしょうね。生産設備などのハード資源が余り気味だから、で
す。

逆に、だからこそ「持つ経営」を行う、という選択肢もあるわけです
よ。差別化、とは、競合がやらないことをやる、ということです。

半導体などですと、他社が二の足を踏むような超大型投資をする、と
言う手もあります。逆に日本企業は、それができずに他国の競合の後
塵を拝する、ということもありますよね。

ただ、その場合に、みんなが持っているものと同じようなものに投資
しても、それは「独自」になりません。競合がやらないことをやらな
ければ、差別化できません。

 

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◆ハード資源とソフト資源の組み合わせ
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●ハード資源とソフト資源を組み合わせよう!

では、ここでT&Gに戻りましょう。戦場が2つありました。
戦場1)(これまで):「ウェディング施設の提供屋」
○ハード資源(自社施設)主導の成長
○主たる投資対象:ウェディング施設の立地開拓・建設
戦場2)(これから):「ウェディングプランナーの派遣屋」
○ソフト資源(フリープランナー)主導の成長
○主たる投資対象:人材の採用・育成
戦場2においても、ハード資源が重要でなくなる、というわけではあ
りません。

戦場2の場合でも、もちろん「素敵なウェディング施設」は提供し続
けます。

提供しますが、その上に「素敵なウェディングプランナー」という独
自資源がもたらす「素敵なウェディングプラン」が載ってきて、その
施設の「使い方」がさらに魅力的になります。

 

○ソフト資源:素敵なウェディングの提案ができる人材・ノウハウ
 ↓ ↑
○ハード資源:素敵なウェディング施設
という、「ハード資源とソフト資源の組み合わせ」による、相乗効果
が起きてくるわけです。

 

●T&Gのハード資源の位置づけの変化

さらに、ハード資源の使われ方も広がってきます。

こういう言い方をしては怒られるかもしれませんが、ハード資源であ
るところの「自社施設」が、「自社プランナー育成の場」にもなるわ
けです。

「素敵なウェディング施設」を提供する一方で、その「素敵なウェデ
ィング施設」というハード資源が、「素敵なウェディングを提案する
プランナー」というソフト資源を育成する場としての「ソフト資源」
になるわけです。さらには、その「育成するノウハウ」というソフト
資源を蓄積する場、としても機能するわけです。
ハード資源も、ソフト資源も、それぞれ「単独」で存在しても良いの
ですが、「ハード資源とソフト資源の組み合わせ」となると、非常に
マネしづらい、まさに「独自な」資源になります。
戦略BASiCSの要素間における一貫性はもちろん重要ですが、
「独自資源」という1つの要素の中においても、このような、「ハー
ド資源とソフト資源の一貫性」が重要になってくるわけです。

そして、その一貫性のカギを握るのが、「戦場」の定義であるわけで
すね。

つまり……「持つ経営」「持たない経営」のどちらがいいか、という
議論に意味はなく、それは戦略次第、ということです。

それよりも、

・戦場
・ハード資源
・ソフト資源

における、一貫性、そしてその組み合わせに基づく相乗効果によって
いかに、競合に「これはマネできない」という言わせられるか、とい
うのが勝負なんですね。
独自資源の育成には時間がかかります。少なくとも数年がかりになり
ます。「やっぱやーめた」というわけにはなかなか行かないんです。

ですから、他の要素との一貫性を考えながら、丁寧に丁寧に思考を詰
めていく必要が必要があります。それに最適なのが、BASiCSと
言うわけですね。
ホントBASiCSって深いですよね……

そして……ホント経営って面白いですよね!

 

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◆今日のまとめ
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●「戦場」の定義のもと、「ハード資源」「ソフト資源」の一貫性を
 取り、相乗効果を発揮させて、競合にマネされにくくなろう!