2010-11 シルク・ドゥ・ソレイユ

 

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━特別編Vol.096 2010/11/15
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●戦略BASiCSを考える際には、まずはお客様のニーズやTPO
 を考えてみよう
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◆シルク・ドゥ・ソレイユ
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●太陽のサーカス、シルク・ドゥ・ソレイユ

きっとシルク・ドゥ・ソレイユのお名前くらいはお聞きになられたこ
とはありますよね?

日本でのツアーショーが始まる度に大規模なCMや鉄道広告などが展
開されるので、タイトルもきっと耳にされていることでしょう。
1992 『ファシナシオン』  全国8都市118回57万人
1994 『サルティンバンコ』 東京のみ248回 56万人
1996 『アレグリア』     東京・福岡のみ260回67万人
2000 『サルティンバンコ2000』 全国5都市530回124万人
2003 『キダム』     全国4都市516回132万人
2005 『アレグリア2』 全国4都市466回114万人
2007 『ドラリオン』   全国5都市569回149万人
(2008年6月現在)

(HPより)http://www.zed.co.jp/about_cds/intro.php
毎回100万人以上の動員をしていますね。

仮にチケット代が平均1万円とすると、100億円レベルの興行収入
を日本だけで叩きだしていることになります(だから日本にも来るん
でしょうね)。

シルク・ドゥ・ソレイユはフランス語で「太陽のサーカス」という意
味です。フランス語なのは、きっとその出自がカナダのケベックだか
らでしょう。

 

●シルク・ドゥ・ソレイユのパフォーマンス

私も見に行ったことがありますが、ご覧になったことの無い方のため
に粗っぽく説明すると

「物語性があって美しいアクロバットショー」

ですね。

西洋風の中国雑伎団、と言っていいかもしれません。

「太陽のサーカス」という名前ですが、ライオンの火縄くぐりも象の
ダンスもありません。演じるのはあくまで人間です。
文字だと通じにくいかもしれませんので、以下をご覧になってみてく
ださい。

www.zed.co.jp
Youtubeにも動画がありますね。ご覧になってみてください。

http://ow.ly/39H7c

 

●世界に展開するシルク・ドゥ・ソレイユ

シルク・ドゥ・ソレイユの2009年の売上高は9億米ドル(約84
0億円)です。常設ショーとツアーショーなどを合わせて、現在は世
界で計21の演目を公演。2010年は10億ドルの売上高を見込ん
でいるそうです。

(2010/05/10, 日経MJ(流通新聞), 11ページ)
これまでの世界実績は以下のようになっています。

・全世界でのチケット販売枚数 800万枚(2007年見込)
・常設シアターの観客動員 年間400万人(6作品合計)
・総観客動員数 8000万人(1984~2007)        
 (2008年6月現在)

http://www.zed.co.jp/about_cds/intro.php

 

では、ここからシルク・ドゥ・ソレイユのBASiCSを考えていき
ましょう。

一番考えやすそうな「ターゲット」から考えて行きましょうか。

BASiCSで分析していく際の考えるプロセスの例としてお考えく
ださい。

 

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◆シルク・ドゥ・ソレイユの顧客ターゲット
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●顧客ターゲット:Customer

まず、シルク・ドゥ・ソレイユの主要なターゲットは「大人」である
と考えていいでしょう。

「大人」だと粗すぎてお話になりませんが、「サーカス」との対比と
いう意味で、ひとまず粗っぽくそうしておきます。
「大人」にすることによって「顧客単価アップ」が狙えます。

シルク・ドゥ・ソレイユのチケット(現在公演中のZED)は、ピー
ク料金で以下のようになっています。
プレミアビュー        16,000円
ステージサイド・センタービュー13,500円

http://www.zed.co.jp/tickets/information.php

16,000円がZEDの最高価格です。
対して2010年9~11月の木下サーカス神戸公演の入場料は、以
下のようになっています。
        おとな(高校生以上)  子供(満3歳~中学生)
リングサイドA:4,800円      3,800円
リングサイドB:4,300円      3,300円

(一般当日、おとな。前売りだと300円安いです)

http://www.kinoshita-circus.co.jp/htmls/ticket/ticket-01.htm

最高価格が4,800円で、3倍以上になっていますね。

子供のために使うのであれば、このくらいが限界でしょうか。いみじ
くも東京ディズニーリゾートの金額と近いですね。

大人(18歳以上)  中・高校生   4歳~小学生
5,800円     5,000円  3,900円

 

●子供料金の設定のないシルク・ドゥ・ソレイユ

シルク・ドゥ・ソレイユには「子供料金」の設定はありません。4歳
以上であれば、みんなこの金額です。

となると、大人2人子供2人で行くと、5万円前後の出費になってし
まいます。家族全員で見に行くにはキツイ料金設定ですね。

大人で来て静かに見て下さい、というスタンスの料金体系なのでしょ
う。ここからも、子供をターゲットから外している、ということがよ
くわかります。
公式データではないのですが、ドラリオンのときは、

SS席 11,500円
S席   9,000円
A席   5,500円

という設定だったようです。

 

●価格設定でターゲティングをしている

このように、「価格設定」でターゲット顧客を設定する、というのは
1つのターゲティングの手法ですね。

「顧客」と「価格」の一貫性がある場合にのみお客様が自社商品を選
んでいただけます。逆に、価格をあるゾーンに設定すれば、それで買
うというお客様がいらっしゃいます。

「安売り」をしていれば、「安さ」を求めるお客様が集まります。シ
ルク・ドゥ・ソレイユの場合はそうではない、ということですね。

 

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◆シルク・ドゥ・ソレイユの戦場・競合
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●シルク・ドゥ・ソレイユの戦場はどこか?

ターゲットは大人として、「戦場・競合」はどこでしょうか? それ
にあたっては、「ニーズ」を考える必要があります。
では、ターゲットが「大人」として、それをさらに具体化していきつ
つ、ニーズ(=価値)を考えて行きましょう。
ニーズ=「価値」は、使い方に表れます。

ですので、使い方=TPOを考えましょう。

このときに、「価格」というのは大きなカギになります。
15,000円とか12,500円のチケットを買って観にいきたい
という場合を考えると

・コアなシルク・ドゥ・ソレイユファン、もしくは……

・「大人のカップルのちょっとゴージャスなデート」

になるかと思います。
・30~40代の夫婦がちょっとした記念日にでかける

・20代のカップルが平日の夜に「おしゃれなデート」をする

ような使い方ですね。

 

●シルク・ドゥ・ソレイユの競合は?

調査をしているわけではないので、これはあくまで仮説です。実際に
このコンサルティングをするとかプランを練るという場合には、ここ
でいったん

「シルク・ドゥ・ソレイユに来る理由」

をきちんと調査することになります。
・誰が来るのか:未婚か既婚か、何回目のデートか
・T:来場曜日・時間
・P:そのあとにどこにいくのか
・O:誰とくるのか、それは記念日か普通のデートか

などですね。

それは調査すれば良い話ですので、ここでは仮説が検証されたとして
進んで行きましょう。
私の仮説は、シルク・ドゥ・ソレイユの使われ方は

「ちょっとお金をかけたい文化的なイベント」

ニーズかと思われます。カップル・夫婦のデートや記念日需要、とい
うことです。

すると、競合はもちろん「サーカス」ではなく

・ミュージカル
・オペラ

などになるでしょうね。

価格設定も大体その程度になっています。

例えばミュージカルでは、

「ライオンキング」:S席9,800円(一般料金)

(劇団四季、四季劇場[春]、2011年3月まで、最高価格のチケッ
 ト)

http://www.shiki.gr.jp/applause/schedule/lionking.html
オペラでは、

「アンドレア・シェニエ」:S席21,000円

(オペラ:新国立劇場の2010/2011シーズン、最高価格のチ
 ケット)
と、ZEDよりさらに高価格です。

このあたりが競合になるでしょう。

「競合」は、あくまでお客様が決めることです。ですから、

「戦場」は、お客様のアタマの中にあります。

まずは、「ニーズ」「TPO」「使い方」を把握し、そこから「戦場
・競合」を考えて行くわけですね。

さらにいうと、「ニーズ」「TPO」「使い方」そのものが「戦場・
競合」なのです。

 

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◆シルク・ドゥ・ソレイユについて、調査実施!
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●ぜひご協力ください!

ここから先は、ぜひ一緒に作り上げていきましょう!

やはり「顧客ニーズ」はきちんと把握したほうがいいので……

シルク・ドゥ・ソレイユについてのアンケート調査を実施します!

売れたま!初の試みです!
(修正)アンケートURLがありましたが、削除
15分程度でカンタンにお答えいただけると思います。
特に特典などはご用意していないのですが、次号からの売れたま!に
反映し、より事実に近いものにしていくため、ご協力をよろしくお願
い申し上げます!

ここからの売れたま!の内容は、あなたのご協力にかかっています!

ぜひよろしくお願い申し上げます。

既に説明してしまっているのでバイアスはかかっているかもしれませ
んが、それはやむを得ないかと思います。
こちらからお答えいただけると嬉しいです。

(修正)アンケートURLがありましたが、削除
お答えいただく「ベネフィット」としては、売れたま!式のアンケー
トの作り方がわかる、お客様に質問票を作るときの作り方がわかると
いうのもありますので、ぜひ!

なお、無料のアンケートシステムを使わせていただいています。若干
の制約はありますが、こんなシステムが無料で使えるなら使わない手
はありません。ありがたい話です。
では、ご回答をお待ちしています!

*17日(水)までにご回答いただければ、それを売れたま!に反映
できると思います。

 

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◆今日のまとめ
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●戦場・競合はお客様のアタマの中にある。お客様のアタマの中につ
 いては、聞いてみよう!

 

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━特別編Vol.097 2010/11/18
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●価値は使い方に現れる。まずはTPOを把握しよう!
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◆シルク・ドゥ・ソレイユを斬る! 2回目
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●太陽のサーカス、シルク・ドゥ・ソレイユ

前回から始まった「シルク・ドゥ・ソレイユを斬る」、今日はその2
回目です。

私も見に行ったことがありますが、ご覧になったことの無い方のため
に粗っぽく説明すると

「物語性があって美しいアクロバットショー」

ですね。

西洋風の中国雑伎団、と言っていいかもしれません。

「太陽のサーカス」という名前ですが、ライオンの火縄くぐりも象の
ダンスもありません。演じるのはあくまで人間です。
文字だと通じにくいかもしれませんので、以下をご覧になってみてく
ださい。

www.zed.co.jp
Youtubeにも動画がありますね。ご覧になってみてください。

http://ow.ly/39H7c

 

●アンケートにご協力ありがとうございました!

前回は、顧客ターゲットの仮説を設定し、そこで検証するためのアン
ケートをいたしました。

18日深夜までに、364名の方にご協力いただきました。

本当にありがとうございました!
お詫びがございます。

シルク・ドゥ・ソレイユの演目の中に「コルテオ」「ZED」が抜け
ていました。申し訳ございません……

自分としても結構痛いミスでした。後で演目でのクロス集計ができな
くなりますので……

きちんと他人の目を通した方がいい、という悪い例でしたね。

読者さんにおかれましては、そのようなことのないようにいたしまし
ょうね。反面教師にしてくださいね。

 

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◆シルク・ドゥ・ソレイユの顧客ターゲット
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●顧客ターゲット:Customer

ではアンケート結果をご紹介してまいりましょう。

アンケート結果には、そんなに突飛で目を見張るような発見があった
わけではなく、意外に予想と近い結果(ある意味読み通り)となりま
した(もちろんそういうことを検証することは必要です)。

なお、今回のアンケート結果は、対象者が「売れたま!読者さん」で
あるという時点で相当バイアスがかかっています。

そもそも30~40代の方の読者が多いですし、男性が8割ですから
人口のサンプリングなどは当然できていません。

ですので、「○○のセグメントの人が多い」というようなことは言い
にくいです。

それでも、例えば

「30代の人と20代の人を比べると、こういう傾向にあります」

という比較はできるはずです(そもそもそうでないとアンケートをし
た意味がありません)。
では、アンケート結果を分析していきましょう。

ここではアンケート設問の作り方講座、みたいな意味も含んでいます
(ZEDを入れ忘れる人間にそんなことを語る資格があるかどうかは
微妙なところですが……)。

 

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◆まずは基本情報をおさえよう
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●24%の人がシルク・ドゥ・ソレイユの観劇経験あり

まず基本的なところですが、ご回答者364名中88名の方がご観劇
経験がありました。

このあたりのところはまた後の号で分析していきます。

「観劇経験者」は88名です。

100を切ったサンプル数ですので(お答えいただいた方を「サンプ
ル」呼ばわりするのは大変失礼なのですが、業界の慣例に従います)
あまり細かくは観られませんが、おおざっぱな傾向はわかるでししょ
う。

 

●年代別の違いは無し

まず、男女合計での年代別の観劇経験率は……

20代 22.4%
30代 23.9%
40代 27.2%
50代 27.3%
60代    0%

となっています。これは正直意外な結果だったのですが、差がないん
ですよね。60代の方はサンプル数が少ないので何とも言いにくいの
ですが、そもそもシルク・ドゥ・ソレイユをご存じないんです。ひょ
っとしたらそこに逆にチャンスがあったりするのかもしれません。
なお、サンプルに代表性がないために、「シルク・ドゥ・ソレイユを
観た人は人口の2割程度」とはとても言えません。

そもそもシルク・ドゥ・ソレイユの総動員数が約700万人(ZED
を除く)で、人口の1割を切っています。

売れたま!読者さんは感度が高いので、2割以上の数字になっている
のでしょうね。

 

●男性より女性

しかし、男女差は明確にありました。20~40代の、どの年代にお
いても、一貫して女性が高いんですね。

一番サンプル数が多い30代においても(売れたま!の読者層は30
代がメインということですね)、男性20.5%、女性39.4%と
ざっくり2倍になり、恐らく統計的な有意差はあると思います。

 

ここで……

「あれ、佐藤さん、性・年代別のセグメンテーションなんかダメだっ
 て書いてたじゃん! 何コレ!」

って言われた方がいらしたら、鋭いです!

実はその通りなんです。

が、セグメンテーションをしていくにあたっては、まずは探索的に見
ていきます。手探りで色々当たってみることが最初は必要です。

性・年代などの基本的なところをおさえてから、顧客をイメージする
(アンケートの裏側を読む)という作業に入ります。性・年代別の分
析をやらなくて良いというわけではないんです。

そうではなく、

「性・年代別の分析は入り口にすぎない」

と言いたいんですよ。「性・年代」で分析して、そこで終わり、とい
うことがほとんどなんですよね……

 

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◆基本情報をおさえたら、「使い方」「TPO」を見よう
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●「使い方」「TPO」を見よう!

基本情報をおさえたら、次は「使い方」を見ます。

「価値は使い方に表れる」

からです。

大事なので繰り返します。「価値は使い方に表れる」んです。

「使い方」とはTPOです。

Time
Place
Occasion

ですね。

Placeは決まっていますので、

Time:いつ観ましたか?
Occasion:誰と観ましたか?

という設問を入れています。

これはTPOを聞くための質問です。

本当に調査をかける場合には、定性調査で確認しておいた方が良いの
ですが、今回はそれはできませんので、この2つの質問でいけるだろ
うという読みのモトに、この設問にしました。
ベネフィットを知りたいと思っても、「シルク・ドゥ・ソレイユのベ
ネフィットは何ですか?」とお客様に聞いても答えは出てきませんよ
ね。

しかし、

Time:いつ
Place:どこで
Occasion:どのように

使っていますか?

ならお客様も明確に答えられますよね。

そこから「お客様のニーズ」を売り手が推測していけばいいんです。

 

●Time:いつ観るか?

アンケートでは、

1)土日昼 50.0%
2)平日夜 22.7%
3)土日夜 18.2%
4)平日昼  8.0%

でした。

土日昼が圧倒的に多いですね。

ここから、シルク・ドゥ・ソレイユは「休みの日のおでかけ」であり
イベント的な使われ方であることがわかります。

まあ1万円のチケット代ということを考えれば当たり前だ、と言われ
ればそうなんですけどね……

 

●Occasion:どう観るか?

Occasionで聞きたかったのは、「デート」なのか、社会科見
学なのか、家族のお出かけなのか、というようなものなのですが、そ
れは「誰と観に行くか」が一番答えやすいかと思いましたので、「誰
と観に行きましたか」という設問にしました。

結果は……

1)1人で            0%
2)恋人・夫婦と2人で   51.1%
3)友人・知人と      17.8%
4)家族で子供と      24.4%
5)その他          6.7%
となりました。

圧倒的に多いのが「恋人・夫婦と2人で」でした。

TPOで一番検証したかったのはこれです。

というのは、恐らくはここが「戦場の定義」に直結する、と読んだか
らです。

セグメンテーションは、「戦場」(Battlefield)の定義
と非常に近い(ニアリーイコールと言っていいです)んです。

シルク・ドゥ・ソレイユは「デートイベントだ」と定義できれば、そ
こで色々な考えが一気に進むんですよ。特に「戦場の定義」です。
一応前号から引用すると……

―――――――――――――――――――――――――――――――

私の仮説は、シルク・ドゥ・ソレイユの使われ方は

「ちょっとお金をかけたい文化的なイベント」

ニーズかと思われます。カップル・夫婦のデートや記念日需要、とい
うことです。

―――――――――――――――――――――――――――――――

と仮説を立てていましたが、それはほぼ当たったと言っていいのでは
ないか、ということです。
ちなみに1人で観に行く人はいない! んですね。

少しくらいはいらっしゃるかと思いましたが、そうでもない、という
ことですね……「おひとり様」需要は無い、と……。

 

●もう1つのセグメント=「戦場」の可能性

ただ、異常値が出ている層がありました。こういうデータを突っ込ん
でいくと可能性が開けていることもあります。

今回は……30代女性です。

30代女性のみ、「友人・知人と」が「恋人・夫婦と2人で」を上回
っているんです。

繰り返しますがサンプル数がそれほど多いわけではないので断言でき
ませんが、ヒントにはなるでしょう。
これは、恐らく……

「女子会」

の延長ではないでしょうか?

今回は「未婚・既婚」を聞いていませんでした。恋人でも夫婦でも要
はカップルだからニーズが同じだろう、と読んだからです。

念のため聞いておけば良かったな、と思わないでも無いですが、未婚
の方でしたら女子会でしょうし、既婚の場合であれば、恐らくは子供
がいらっしゃらない方だと思います。
このようなデータは深掘り(ドリルダウン)していきます。

もし、「マダム」なら平日の昼に行くでしょう。そう思って、

・30代女性で
・友人・知人と

観に行かれた方(繰り返しますがサンプル数は少ないです)の、「観
に行った時間」は、

・平日夜
・土日昼

なんです。

ということは、この方々は、恐らくは独身有職の30代で、お金にあ
る程度は余裕があって、女性の友人同士で観に行っているのだろう、
とイメージできますね。

この方々が行かれた理由を拾ってみると……

・友人の誘いで
・話題の舞台を見てみたかったので
・期間限定で次いつ観られるか分からないから  TVなどでも多く紹介
 されていたから
・シルク・ドゥ・ソレイユがどんなものか1度観ておこうと思ったか
 ら
・大道芸をしている友達(専門家)がとっても良いと言ったので。
とのことです。

話題になっているものだから、女性同士の友人で観に行った、という
ことでしょうね。

数として多くはないのですが、「デート」ニーズでも「家族団らん」
ニーズでも無い、「話題性ニーズ」とでも言うべき潜在的な「戦場」
がありそうです。取り込むのは難しいかもしれませんけどね。
こうやって、定量的に分析したあとで、自由回答の定性部分を分析し
ていく、という「定量と定性のやりとり」でお客様のニーズに突っ込
んでいくんですよ。

この「定量と定性のやりとり」というのは、調査を設計・分析する上
での最大のポイントの1つです。

 

●TPOを聞いておけば、他のことはカバーできる(ことが多い)

ちなみに、「TPO」を聞いておけば、家族構成や職業などを推測で
きたりします。

それは「価値は使い方に現れる」からです。価値が読めれば、顧客ニ
ーズも読めたりするんです。
TPOで「家族で」というような曖昧な聞き方ではなく

「恋人・夫婦と2人で」
「家族で子供と」

と聞くことで、

「カップルのデートニーズ」
「家族団らんニーズ」

を分けているんですよ。これは「戦場が違うからだ」と踏んだからで
す。
つまり、実は「戦場」というのは、マーケティングにおいては、戦い
というよりは「使い方」「利用場面」なんですよね。

だから「用途提案」がマーケティングの王道なんです。
今日はここまで! まだまだ続きそうです!

 

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◆今日のまとめ
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●価値は使い方に現れる。お客様にニーズを聞くときには、TPOを
 必ず聞こう!

 

 

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━特別編Vol.098 2010/11/22
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●顧客セグメント、戦場・競合、と一体的に考えていこう!
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◆前回のまとめ:シルク・ドゥ・ソレイユの顧客ターゲット
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●顧客ターゲット:Customer

前回は、シルク・ドゥ・ソレイユの顧客ターゲットを考えました。こ
こまでにわかったことをまとめておきます。
1)年代別の違いは目立たない。男性より女性の方が多い

年代別には、シルク・ドゥ・ソレイユの観劇率の差はほぼ無かったの
ですが、性差はありました。女性の方が観劇率が高いです。ただ、ミ
ュージカルなどでもそうでしょうから、驚くような結果ではありませ
んね。

 

2)TPO:デート、家族、女子会

次に、TPOを分析しました。

価値は使い方に現れます。

使われ方は3つあります。

1)恋人・夫婦と2人で
2)家族で子供と
3)友人・知人で
それぞれ「デート」「家族のお出かけ」「女子会」ニーズだと思われ
ます。1)と2)は数字ではっきり出ているのですが、3)について
は女性のサンプル数が少ないこともあり、仮説レベルです。
観劇ご経験者さんは88名ですので、以下はこのサンプル数下での仮
説です。

この売れたま!の目的は、「事実」を知ることではなく、「考え方」
を考えていくことですので、サンプル数の少なさはそれほど障害には
なりません。事実を知りたいのであれば、お金をかけてこの10倍く
らいのサンプルを取ればいいことですから。

むしろ、膨大なサンプル数でできる方が少ないと思いますので、その
意味では「実戦性」はこちらの方が高いかもしれませんね。

 

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◆顧客がわかったら、「競合」を考えよう
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●戦場=競合

前号である程度(ある程度でしかありませんが)「顧客」が見えてき
たので次は「競合」を考えてみましょう。
さて……

競合を考えるということは、戦場を考えるということなんです!

例によって「当たり前じゃん」と思われるかもしれませんね。

BASiCSでも、Battlefieldは「戦場・競合」と一緒
に扱っていますしね。

そのココロは……「戦場=競合」だからです。

シルク・ドゥ・ソレイユの競合が「サーカス」であれば、シルク・ド
ゥ・ソレイユは「サーカス戦場」(それが何かはともかくとして)で
戦っていることになります。

シルク・ドゥ・ソレイユは、「演目」としては、「人間サーカス」で
すね。
では、シルク・ドゥ・ソレイユの競合は何だったのでしょうか?
アンケートで使った「魔法の質問」は……
―――――――――――――――――――――――――――――――

もし、シルク・ドゥ・ソレイユに行かなかったら、そのお金・時間を
何にお使いになられたと思いますか? 特になければ、特になし、と
お書きください。自由記入式の回答です。

―――――――――――――――――――――――――――――――
本来的には、このような自由記入式回答(いわゆるFA。岩隈選手の
アレではなく、Free Answerです)を事前に行ってから、量的に検証
するのがセオリーですが、今回はそんな手間と時間はかけられなかっ
たので、自由記入でお書きいただき、後で強引に手作業で分類するこ
とにしました。

 

●シルク・ドゥ・ソレイユの戦場・競合は?

では、結論を見ていきましょう。

1)50.0% 特になし・競合なし
2)29.5% 食事・旅行・ショッピング・映画・遊園地
3)12.5% ミュージカル・観劇・コンサート
4) 8.0% 東京ディズニーリゾート
となりました。FAを強引にまとめたものですので、若干恣意的では
あるのですが、まあこんなものかな、という感じでしょうか。

これが「戦場」になります。
1位は、「特になし・競合無し」です。

「特になし」というお答えをそのまま信じるとすれば(面倒だから、
特になしと書いておこう、という方があまりいないとして)、半数が

「シルク・ドゥ・ソレイユが観たかったから観た」

ということになりますね。

 

2位は、「食事・旅行・ショッピング・映画・遊園地」です。

その名の通りの「競合の集合」です。

これは、

「気軽なお出かけ」戦場

と言っていいかと思います。

 

3位は、「ミュージカル、観劇、コンサート」

です。これもその名の通りの分類ですが、それ以外にも「歌舞伎」な
ども入っています。

これは

「文化的なイベント」戦場

と言う意味でまとめています。

 

4位は、「TDR」です。

これは、ZEDの劇場がTDRにあるからで、これは「舞浜戦場」と
言っていいでしょうね。
結構納得感のある感じで切れているのではないでしょうか?

実は、この分類に行き着くのに相当時間がかかっています。

サンプル数が多ければ素直に解釈できますが、それほど多くないので
どうしても恣意的になります。

「アンケートのウラを読む」*ような作業が必要になるんですよね。
*「新人OL、つぶれかけの会社をまかされる」の一場面

 

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◆「顧客」と「戦場・競合」をつなげよう!
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●戦略の要素を切り離して考えてはいけない!

BASiCSの5要素の1つ1つを切り離して考えてはいけません。

数多出ている経営本、マーケティング本の最大の問題はそこで、多く
の場合、

「顧客セグメンテーションとは」

「5Forces*とは」

*M・ポーター氏が唱えたフレームワーク。BASiCSでは戦場の
 理論として捉えられる

などと、別々に説明したあげく、両者の関連性が全く説明されないん
です。

それでは現場で使い物になりません。

「戦場」とは、お客様のアタマの中での選択肢の束です。ですから顧
客と切り離せるはずがないんです。
ということで、「戦場」と「顧客」をつなげていきましょう!

 

●戦場・競合と顧客セグメントをクロスしよう

「戦場・競合」と「顧客」をつなげる、ということは、分析の作業上
は、上の「戦場・競合」と、「顧客セグメント」を「クロス集計」す
ることになります。

ここで、色々な統計手法はありますが、このサンプル数でやってもム
リがあります。また、統計手法を使って解釈不能な結果が出たらどう
せ意味がない(解釈できなければ打ち手が無い)ので、私はあまり
「ナントカ分析」のたぐいはやりません。大体、回帰分析系の手法な
んて変数を1つ出し入れするだけで正反対の結果をカンタンに「作り
出せる」わけですからね。

大体、クロス集計に現れなければ、それは何かがおかしいサインなん
ですよ。

というわけで、原始的で確実なクロス集計で見てみましょう。

クロスするのは、「TPO」と「競合」です。

横軸にTPOをとりました。前号で見た、「誰と出かけますか?」で
すね。

縦軸には先ほどの「競合」を取りました。

集計すると、このようになりました。タテが100%です。

          恋人・夫婦  友人・知人  家族・子供
特になし・競合なし  47%    44%    62%
食事・ショッピング  33%    19%    29%
ミュージカルなど   13%    25%     0%
TDR        7%     13%    10%
ここから小数点1位は四捨五入しています。そもそもサンプル数が少
ないので、その位にあまり意味はありませんし。
さて……ここでわかることがいくつかあります。

・家族・子供は、「競合なし」が多い、ミュージカルはゼロ
・恋人・夫婦は、「食事・ショッピング」が目立つ
・友人・知人は、「ミュージカル」が他より目立つ

このあたりがそれぞれのセグメントの特徴を表していると思います。

 

●戦場・競合を考えながら、セグメントの特徴を分析しよう!

ここから先は(というかこのシリーズ全体が)仮説ベースでの意見構
築となります。

それを強調した上で、セグメントの違いの「仮説」を考えてみましょ
う。

実際に、出てきた「声」の中で特徴的なものを拾ってみましょう。
ここでのアンケートでの「魔法の質問」は……
―――――――――――――――――――――――――――――――

問6のお答えの対象ではなく、なぜシルク・ドゥ・ソレイユに行かれ
たのですか? その理由を教えてください。例えば問6のご回答が
「映画」であれば、映画でなくてシルク・ドゥ・ソレイユをお選びに
なった理由は何ですか、ということです。

問6のお答えが「特になし」であれば、シルク・ドゥ・ソレイユに行
かれた理由を単純に教えてください。自由記入式の回答です。

―――――――――――――――――――――――――――――――

はい、これは「強み・差別化」を聞く「魔法の質問」です。

問6、というのは、さっきの「競合」を聞く質問です。

この問いに対する答えが、シルク・ドゥ・ソレイユの「強み」になる
はずです。
「恋人・夫婦」セグメントは……
・金曜の夜をステキに過ごすためのイベントとして適切だったから
・ワクワクするショーを観て思い出をつくりたかったから

 

「友人・知人」セグメントは……
・友人からの誘い
・話題の舞台を見てみたかったので
・シルク・ドゥ・ソレイユがどんなものか1度観ておこうと思った

 

「家族・子供」セグメントは……
・子供にシルク・ドゥ・ソレイユの幻想的な世界を見せたかった
・今しか見れない、感動の体験は絶対に子供たちの将来にプラスにな
 る!
これで、各セグメントが大分イメージ出来てきましたね。

念のためお断りしておきますが、かなり恣意的にこのようなお答えを
選んでいます。

 

「恋人・夫婦」セグメントは……
・どうせ2人きりでお出かけはする。普段は普通の食事だけど、ちょ
 っとした記念日とかにはミュージカルとかで思い出と作りたい
「友人・知人」セグメントは……
・やっぱり話題になったものは観たい。ミュージカルとか、シルク・
 ドゥ・ソレイユとか、そういうのが来たら行きたい。でも1人で行
 くのはちょっと……だから女子同士で観に行こう
「家族・子供」セグメントは……
・いつもはお出かけどころじゃないけど、たまには子供たちにも芸術
 に触れさせておきたいな。
という感じではないでしょうか?

もし、「当たり前じゃん、こんなの」と思われたら、分析成功です。

うまく切れているセグメンテーションは「当たり前」になるんです。
もし「突飛」で「違和感」がある場合には、それはうまく切れていな
いということが多いです。
このように、戦場・競合と顧客セグメントを合わせて見ていくことで
非常に考えやすくなりますし、イキイキと描けて来ますよね。
今日はここまで!
ところで……今回やってみて、数字の分析が結構大変なんです……

数年前まではこのような分析をガシガシやっていたので、何も考えな
くても手が勝手に動いたんですが、Excelの命令なんかを結構忘れて
ますね……色々と思い出したので、久々にやって良かったです。

実務でやるときには、ExcelとかAccessの細かいテクニックが実は色
々とあるんですよね。ピボットテーブルの作り方にも結構コツがあっ
たりします。

マーケターならアンケート分析のためにも、Accessくらいは使いこな
せた方がいいです。と言っても、今回みたいに数百サンプル程度なら
Excelの力業で十分です。私は(いつもそうなのですが)独学の力業
で学んで来ました。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆今日のまとめ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●BASiCSの5要素は切り離して考えてはいけない! 顧客、戦
 場・競合などを一体的に見ていこう!

 

 

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━特別編Vol.099 2010/11/25
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●お客様のアンケートから、セグメントごとのBASiCSを作ろう
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆前回のまとめ:シルク・ドゥ・ソレイユの顧客ターゲット
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●顧客ターゲット:顧客ターゲットと戦場

ここまでにわかったことをまとめておきます。

まずは顧客セグメントです。

最終的に知りたいのは「人×TPO」です。

どんな人が
どんなTPO(いつ、どこで、どのように)

見るか、を知りたいわけです。私の「解釈」も含めてまとめると、こ
のようになるかと思います。
1)「恋人・夫婦」セグメント
・どうせ2人きりでお出かけはする。普段は普通の食事だけど、ちょ
 っとした記念日とかにはミュージカルとかで思い出と作りたい
2)「友人・知人」セグメント
・やっぱり話題になったものは観たい。ミュージカルとか、シルク・
 ドゥ・ソレイユとか、そういうのが来たら行きたい。でも1人で行
 くのはちょっと……だから女子同士で観に行こう

3)「家族・子供」セグメント
・いつもはお出かけどころじゃないけど、たまには子供たちにも芸術
 に触れさせておきたいな。

 

●シルク・ドゥ・ソレイユの「戦場・競合」

戦場も「使い方」で切れます。戦場は「価値」で表現されるものであ
り、「価値は使い方に表れる」からです。
1)「シルク・ドゥ・ソレイユが観たい」戦場

とにかく「シルク・ドゥ・ソレイユ」が見たかった、という戦場です
ね。ポジティブには、「熱狂的なシルクファン」もいれば、「無料チ
ケットが手に入った」という理由もあります。

本来的には、この2つは分けた方が良いでしょうが、今回はちょっと
難しそうです。
2)「文化的なイベント」戦場

これは、「文化的」というか、教養・文化を楽しむニーズですね。

競合は、

・ミュージカル、観劇、コンサート、歌舞伎

などです。
3)「気軽なお出かけ」戦場

これは、デートやショッピングなど、日常のお出かけのなかで、少し
奮発してシルク・ドゥ・ソレイユを観に行こう、というニーズです。

ですので、競合は日常のお出かけ先です。

・食事、旅行、ショッピング、映画、遊園地

などですね。
4)舞浜戦場

特に東京ディズニーリゾートにあるZEDを念頭に置いています。
TDRに行くついで、あるいは、ZEDに行くついでにTDRに行く
という使い方ですね。
念のため繰り返しておきますが、サンプル数がそれほど多いわけでは
ありませんので、あくまで仮説ですね。

実際には、ここまで彫り込んでから大規模な定量調査を行うと、かな
り確かな検証ができます。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆お客様に聞いて、BASiCSを作ろう!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●アンケート結果から、BASiCSを作ろう!

もうお気づきかもしれませんが、ここでやろうとしているのは、

「BASiCSをお客様に聞いて作ろう!」

ということです。

私はシルク・ドゥ・ソレイユのエキスパートでは全くありませんし、
関係者でもありません(関係者だったらこんなシリーズ作れません)
が、お客様に聞いて作れば、かなり正確なものが作れるはずです。

何より、お客様の言うことの方が正しいんですよ。

だから、新人OL本*でも、売多勝さんは「お客様に聞いたことある
のか?」と売多真子に聞き、真子はそのアドバイスに従って顧客アン
ケートをしたわけです。

*「新人OL、つぶれかけの会社をまかされる」(青春出版社)
http://ow.ly/2M3M0
今日は、B,S,Cをいよいよつなげていきます。

B:Battlefield 戦場・競合
S:Strength 強み・差別化
C:Customer 顧客ターゲット

の一貫性をとっていく、ということです。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆まずは、BとCをつなげよう!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●B:戦場・競合とC:顧客ターゲットをつなげよう!

まずはBとCをつなげていきましょう。

「顧客」「戦場・競合」をつなげる(=一貫性を保つ)ことによって
より論理的かつ具体的にしていきます。
前号でも少し見てみましたが、戦場・競合と顧客ターゲットのクロス
表を見てみましょう。
表頭(ひょうとう、ヨコの列)が顧客ターゲット
表側(ひょうそく、タテの列)が戦場・競合

です。
           恋人・夫婦  友人・知人  家族・子供
特になし・競合なし   47%    44%    62%●
(シルクが見たい戦場)

食事・ショッピング   33%●   19%    29%
(気軽なおでかけ戦場)

ミュージカルなど    13%    25%●    0%
(文化的なイベント戦場)

TDR         7%     13%    10%
(舞浜戦場)
特徴的なところに●をつけてみました。
それほど際だった差があるわけではありませんが、ある程度は傾向が
出ていそうですよね。

 

●「顧客」と「戦場・競合」をつなぐ

アンケート結果に基づいて、顧客と戦場を強引につなげてみると……

1)「恋人・夫婦」セグメント → 気軽なお出かけ戦場

2)「友人・知人」セグメント → 文化的なイベント戦場

3)「家族・子供」セグメント → シルクが見たい戦場

「家族・子供」セグメントでは、「シルクが見たい」よりは、「シル
クを見せたい」戦場でしょうか。ある意味では、これも「文化的なイ
ベント」かもしれませんが、「人」も「競合」も違うので、分けた方
がいいでしょうね。
「舞浜戦場」だけ浮いてしまっています。これは結構大きな意味を持
ってきますが、また後で考えていきましょう。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆シルク・ドゥ・ソレイユの強み
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●シルク・ドゥ・ソレイユの強み=シルクを選ぶ理由

これで、B:戦場・競合とC:顧客ターゲットまで見えてきました。

次に、シルク・ドゥ・ソレイユの「強み」を整理しておきます。

「強み」とは、競合ではなくて、シルク・ドゥ・ソレイユを選ぶ理由
です。

これは、前号でもご紹介した通り「魔法の質問」を使っています。
―――――――――――――――――――――――――――――――

問6のお答えの対象ではなく、なぜシルク・ドゥ・ソレイユに行かれ
たのですか? その理由を教えてください。例えば問6のご回答が
「映画」であれば、映画でなくてシルク・ドゥ・ソレイユをお選びに
なった理由は何ですか、ということです。

問6のお答えが「特になし」であれば、シルク・ドゥ・ソレイユに行
かれた理由を単純に教えてください。自由記入式の回答です。

―――――――――――――――――――――――――――――――

「問6のお答えの対象」とありますが、問6は「競合」を尋ねている
質問です。
「競合ではなく、なぜ自社」というのが魔法の質問ですね。
この結果は……

1位:話題性・観ておきたかった 31%
2位:勧められた・誘われた   18%
3位:芸術・演技・感動     16%

でした。

これは、全体での数字です。当然、セグメントごとに重視する強みが
変わってくるはずですよね。

セグメンテーションは、ニーズが違うから分けるわけです。ニーズが
違うのであれば、分ける意味はありません。

 

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◆B、S、Cをつなげよう!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●戦場、強み、顧客セグメントをつなげよう!

ここまで来ると、

B:戦場・競合
S:強み・差別化
C:顧客セグメント

をつなげられます。

顧客セグメントの分だけ、BASiCSができます。それぞれ、戦場
も強みも変わってきます。
セグメントごとに、強み=シルク・ドゥ・ソレイユを選んだ理由で、
典型的な声をピックアップしていきましょう。

 

○1)「恋人・夫婦」セグメント → 気軽なお出かけ戦場

このセグメントが、シルク・ドゥ・ソレイユの「強み」(=他のもの
ではなくて、シルクを選んだ理由)として選んだのは……

1位:話題性・観ておきたかった
2位:芸術・演技・感動

でした。

シルク・ドゥ・ソレイユの「強み」(=選ぶ理由)のうちで、最大の
ものが「話題性・観ておきたかった」なのですが、この強みが1位に
なっているのは、このセグメントだけです。
恋人・夫婦として、デートはとにかくします。そのデートの「ネタ」
として、「話題性」のあるシルクは最適だった、ということでしょう
ね。
このセグメントの典型的な声は……

・金曜の夜をステキに過ごすためのイベントとして適切だったから。
・ワクワクするショーを観て思い出をつくりたかったから。
・ちょっと頑張りたかった(プチ贅沢という意味で)
・いつでも見られるものでない、非日常性。演出、ビジュアル、音楽
 の素晴らしさ。他にはない、その特徴。

これらは、「気軽なお出かけ」をニーズとして選んでいるの方々の声
です。

気軽なお出かけである「食事・買い物」と比べれば、やはりシルク・
ドゥ・ソレイユは「ステキなイベント」「プチ贅沢」「非日常性」と
なりますね。

 

○2)「友人・知人」セグメント → 文化的なイベント戦場

このセグメントが、シルク・ドゥ・ソレイユの「強み」(=他のもの
ではなくて、シルクを選んだ理由)として選んだのは……
1位:勧められた・誘われた
2位:話題性・観ておきたかった

でした。
このセグメントの典型的な声は……

・シルク・ドゥ・ソレイユがどんなものか1度観ておこうと思ったか
 ら。
・話題の舞台を見てみたかったので
・友人に誘われて
・友人からの誘い
「誘われたから」という声が非常に多いのですが、それはこのセグメ
ントの典型が「女子会」ニーズであることと無縁では無いでしょう。
実際、このセグメントにおいて30代女性が占める率は非常に高いの
です。

女友達同志で誘い合って観に行く、という光景が目に浮かびますね。
このセグメントでは、競合が「ミュージカル・観劇・コンサート」に
なることが目立ちます。

それに対するシルク・ドゥ・ソレイユの強みは

・期間限定で次いつ観られるか分からないから。TVなどでも多く紹介
 されていたから
・なかなか見ることのできないイベントで、質も高いと評判だったか
 ら

ということですね。期間限定だったりメディアが取り上げる、という
話題性が強みになっています。
シルク・ドゥ・ソレイユは、きっと友人・知人を「誘いやすい」ので
しょうね。これが、オペラのように敷居が高いものだったりすると、
同じ「文化的なイベント」でも誘いにくくなるでしょう。
ちなみに、このセグメントでは、全体としては3位にランクされる
「芸術・演技・感動」という強みが、ほとんどありません。

競合が「ミュージカル」や「コンサート」であれば、「芸術・演技・
感動」などはあって当たり前であって、強みにならないわけです。
「戦場・競合」が違えば、「強み」が変わるんです。
「気軽なお出かけ戦場」においっては、「芸術性」は強みになります
が、「文化的なイベント戦場」においては「芸術性」は持っていてあ
当たり前なんですね。
このように、BSC(競合、強み、顧客セグメント)の一貫性がとれ
ている、ということは、セグメンテーションがうまく切れていること
の傍証になります。

これで、このセグメンテーションは結構良さそうだ、という判断がで
きそうです。

 

○3)「家族・子供」セグメント → シルクが見たい戦場

このセグメントが、シルク・ドゥ・ソレイユの「強み」(=他のもの
ではなくて、シルクを選んだ理由)として選んだのは……

1位:親孝行・家族子供に見せたい
2位:芸術・演技・感動
3位:話題性・観ておきたかった
1位がこうなるのは当たり前と言えば当たり前ですね。「芸術性」が
2位に来ているのは、芸術性が高いから、家族子供に見せたい、とい
うことなのでしょうね。
このセグメントの典型的な声は……
・子供にシルク・ドゥ・ソレイユの幻想的な世界を見せたかった
・今しか見れない、感動の体験は絶対に子供たちの将来にプラスになる!
・家内が観たいと言った。「自分も観たいし、義理の母を招待して一
 緒に行く機会としたい」とのこと。
・母親が行きたいと言ったから
「子供と行く」というのは私も予想していました。が、「親と観に行
く」というニーズには気づけませんでした。やはり何事も聞いてみな
いとわからないものですね。

この戦場でのシルク・ドゥ・ソレイユの強みは「わかりやすさ」でし
ょうね。

オペラ、ミュージカル、歌舞伎などは一定の「お約束」があり、それ
をあらかじめ理解していないとなかなか入り込めません。

が、それは子供や、年配の両親にはちょっと敷居が高いですよね。

シルク・ドゥ・ソレイユは言葉もありませんし、肉体のすごさみたい
なものは見ればわかりますから、誰でも楽しめます。

 

これで、かなり強引ではありますが、シルク・ドゥ・ソレイユの

・戦場・競合
・強み・差別化
・顧客セグメント

がわかりましたね。

どのセグメントにおいても強み(=選ぶ理由)が存在します。

 

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◆顧客ターゲットによって強みが変わる!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●BSCチャート完成!

これで、BSCチャート(戦場・強み・顧客の一覧表)が完成するこ
とになります。

ちなみに「戦略BASiCS集中セミナ-」では、ある会社のこのチ
ャートを作っていただいたのですが、かなり大変な作業です。

ここまで来てしまえば、あとは、顧客セグメントの優先順をつけ、そ
れぞれの打ち手を考えて行くことになります。

 

戦場・競合     顧客セグメント    シルクの強み

気軽なお出かけ    恋人・夫婦    話題性・芸術性
vs食事・買い物
文化的イベント    友人・知人    誘いやすい・話題性
vsミュージカル
シルクが見たい    家族・子供    芸術性・家族に見せたい
vs何もしない

 

いかがですか? それなりに納得感があるセグメンテーションではな
いでしょうか?
各セグメントによって、強み(=シルクに行く理由)が異なることが
わかりますよね。もちろんある程度は重なりますが、その優先順位が
異なります。

それによってやるべきことが変わります。

例えば、文化的イベント戦場の30代女性が、ミュージカルに行こう
か、シルク・ドゥ・ソレイユに行こうか迷っているときに背中を押し
てくれるメッセージは「芸術性」ではなく、「シルクなら誘っても、
断られないよ」かもしれません。

逆に、家族に対しては、「お子様の教育も兼ねてどうぞ」というよう
なメッセージが刺さるかもしれません。

当然広告媒体なども異なりますね。
BSCチャートができれば、セグメントごとのBASiCSは大きく
完成に近づいたことになります。
ここまでくれば、あとは実戦では、この仮説を量的調査で検証すると
ともに、認知経路・媒体などを確認して打ち手を考えて行くことにな
ります。

 

●BSCを行ったり来たりしながら考えよう!

アンケートをさせていただいてから、3号に渡って、このBSCチャ
ートを作るために、色々と考えてきました。

ポイントは、

B:戦場・競合
S:強み・差別化
C:顧客ターゲット

をやりとりしながら考えて行くことです。

今回の売れたま!では、このプロセスを割と忠実に再現しています
(というと聞こえはいいですが、書きながら考えている、ということ
ですね)。

戦場を知るにはニーズがわからないといけないので、TPOに戻り、
そのTPOを生々しくするためには顧客ターゲットを考え、それを検
証するために強みを確認し、そして、顧客に戻って……

という、ぐるぐる回しを延々と繰り返しながら考えて行くんです。

ポイントは、BSCの一貫性ですし、また、お客様の声という「具体
性」ですね。

今回、ご回答者の方々が自由回答欄に色々と書いてくださったので、
大変やりやすかったですね。これが無かったら、相当難しい作業にな
ったでしょう。
今回はここまで、まだ続きます!
さて……順調そうに見えるシルクにも死角があります。
東京ディズニーリゾートのZEDは、実は苦戦していたりします。

その理由は何でしょうか? ぜひ考えてみてください!

 

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◆今日のまとめ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●BSCのやりとりをしながら、一貫性・具体性でグルグル回しなが
 ら考えて行こう!

 

 

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━特別編Vol.100 2010/11/29
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●「一貫性」を失うと強い企業でも苦戦する! 一貫性には徹底的に
 こだわろう!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆前回のまとめ:シルクの戦場・顧客・強み
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ここまでにわかったことをまとめておきます。

●BSCチャート、完成!

サンプル数が少ないためにあくまでも仮説的な結論ではありますが、
皆様からいただいたアンケート結果からは、次のような

B:戦場・競合
S:強み・差別化
C:顧客セグメント

が導かれそうです。
戦場・競合  ←→  顧客セグメント←→  シルクの強み

気軽なお出かけ    恋人・夫婦    話題性・芸術性
vs食事・買い物
文化的イベント    友人・知人    誘いやすい・話題性
vsミュージカル
シルクが見たい    家族・子供    芸術性・家族に見せたい
vs何もしない

 

●ポイントは一貫性と具体性

BSCチャートのカギは「一貫性」と「具体性」です。
例えば「友人・知人と行くセグメント」(多くは30代女性と推測さ
れます)について、つぶやきイメージで考えると……
・やっぱり話題になったものは観たい。ミュージカルとか、シルク・
 ドゥ・ソレイユとか、そういうのが来たら行きたい。でも1人で行
 くのはちょっと……だから女子同士で観に行こう

という「具体性」のあるニーズですね。
競合がミュージカル等なので、他のセグメントでは強み・差別化にな
る「芸術性」は強みになりません。ミュージカルなども同様に高い
「芸術性」を持つからです。

女子(30代女性のことを「女子」と呼ぶのか、という議論はあるで
しょうが、実際そう自称する30代女性もいらっしゃいますし、「女
子会」という言葉が浸透したので、いいですよね)同志で行くので、
「誘いやすさ」は大事で、その根拠が「話題性」ということですね。

逆に、「家族」にとっては「誘いやすさ」は強みになりません。家族
ですから「誘いやすい」も何も無いでしょう。「行くわよ」ですみま
すからね。

これが、ヨコの「一貫性」です。

 

●一貫性は「ロジック」だが、それは顧客の「ロジック」

BSCチャートは、

・戦場
・競合
・強み
・顧客

の4通りの組み合わせになります。

戦場と競合、強みと競合、など、相互に一貫性チェックが必要になり
その数は4×3÷2=6通りあります(4C2というCombinationで
すね。「順列組み合わせ」、って高校でやったの、覚えてます?)。

そのヨコの一貫性をきちんと考えることがポイントです。

今回の調査結果では、見事にその一貫性がありました。

というか、一貫性がとれるように解釈をするわけですね。

一貫性のチェックは論理的に行いますが、それはあくまで

「お客様のロジック」

です。お客様のロジックを読み取れるようにアンケートを設計し
(それが新春号でえんえんとやった3つの魔法の質問です)、自由回
答などから「回答の裏側」を読み取って行くわけです。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆常設ショーのZEDは目標動員数に届かず
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●ZED、目標動員数に届かず

2008年10月に、シルク・ドゥ・ソレイユは日本市場で新たな手
をうちました。

「常設劇場」を開設、演目は「ZED」です

場所は、東京ディズニーリゾート、舞浜ですね。

これが……動員数は目標に達しませんでした。
―――――――――――< 記事要約 >――――――――――――

シルク・ドゥ・ソレイユがオリエンタルランドと共同で08年10月
に開業した東京ディズニーリゾート(千葉県浦安市)の常設劇場につ
いては今後約10年間で1200万人の観客を呼び込む考え。初年度
の動員数は目標の75万人に届かなかった。

2010/05/10, 日経MJ(流通新聞), 11ページ

―――――――――――< 記事要約 >――――――――――――

ここでいう常設劇場とはZEDのことです。
苦戦とは言っても、シルク・ドゥ・ソレイユにしては、ということな
のでしょうね。
「1年9カ月で100万人来場達成という記録は、同一劇場での無期限ロ
 ングラン公演としては、日本舞台興行史上最速ペースでの達成だと
 いう」

http://www.theaterguide.co.jp/theater_news/2010/07/22_03.php

とのことですので、目標数値が高かっただけなのかもしれません。

それでも、なぜ目標動員数に達しなかったのでしょうか?

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆S(強み)をチェックしよう!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●まずは顧客ニーズを確認しよう!

何かがうまく行ってないときには「常に顧客に戻れ」です。

まずはニーズを確認しましょう。

「ニーズ」はBSCチャートがうまくできていればわかるはずです。

まずは「強み」=「お客様が競合ではなく自社を選ぶ理由」から見直
して行きましょう。
アンケートでは、シルク・ドゥ・ソレイユの「強み」(=「お客様が
競合ではなく自社を選ぶ理由」)は……

1位:話題性・観ておきたかった 31%
2位:勧められた・誘われた   18%
3位:芸術・演技・感動     16%

でした。

見ればわかるとおり、このうちで、他のツアーショー(ドラリオンな
ど)と比べて、「常設ショー」(ZED)にあてはまるものは、

3位:芸術・演技・感動     16%

しかありません。
1位:話題性・観ておきたかった 31%

は、ZEDは常設ショーですから「話題性」は弱いです。「話題性」
に括ったニーズの「生の声」には、以下のような声もあります。

・TVなどで話題があり、期間限定ということもあったため
・期間限定で次いつ観られるか分からないから  TVなどでも多く紹介
 されていたから

期間限定だからこそ見たい、という声が「話題性」ニーズには入って
きます。常設ショーであるZEDにはこれはありません。
2位:勧められた・誘われた   18%

というニーズでも、「誘いやすさ」の根源は「話題性」であることも
あるでしょうから、同じ理由があてはまります。

また、「舞浜」という立地は「誘いやすい」とは言いにくいですね。
つまり、シルク・ドゥ・ソレイユに行く理由3つのうち、1位と2位
があてはまらないのです。

 

●「競合」でなくて、「自社」

「強み」を聞く魔法の質問は、「競合ではなく自社を選ぶ理由」でし
たね。

普通に「シルク・ドゥ・ソレイユに行く理由は何ですか?」と聞くと
「美しいから」「楽しいから」という答えが返ってくるはずです。

そのような答えでは、以上のような分析ができないんですよ。

「美しいから」「楽しいから」という点において、ZEDと他のツア
ーショーとの違いは無いはずです。むしろZEDは専用劇場での公演
ですから、もっと「美しい」のではないでしょうか。

すると、

「何でダメなんだろうね~」

と悩むことになります。

ですから「競合ではなくて」と聞くことが大事なんですよね。これは
「新人OL~」で大久保さんも言ってましたね。
ちなみに、この発想はセオリー通りかというとそうでもありません。

BASiCSからは必然的に導かれる「聞き方」ですが、このような
「聞き方」を私が発想した源は、「ディベート」にあります。

「ディベート」は、「なぜ○○でなくて、××なんだ」という問いを
徹底的に繰り返していきます。これは、他のロジカルシンキングなど
では「明示的には」あまり強調されません(「なぜなぜを繰り返せ」
くらいではないでしょうか)。

このような「えぐり出していく」方法がBASiCSの根幹であり、
それは実は英語ディベート歴20年以上という私の「独自資源」に基
づいていたりします。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆BとCをチェックしよう!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●B:戦場・競合とC:顧客ターゲットをチェック

S(強み)を見てきましたので、残るはB(戦場・競合)と、C(顧
客ターゲット)ですね。

前号でのBCクロス表(戦場とセグメントのクロス集計)を再度見て
みましょう。

 

           恋人・夫婦  友人・知人  家族・子供
特になし・競合なし   47%    44%    62%●
(シルクが見たい戦場)

食事・ショッピング   33%●   19%    29%
(気軽なおでかけ戦場)

ミュージカルなど    13%    25%●    0%
(文化的なイベント戦場)

TDR         7%     13%    10%
(舞浜戦場)
となっていましたね。
○恋人・夫婦セグメントの「気軽なお出かけ」戦場

「恋人・夫婦」セグメントでの「気軽なお出かけ」戦場においては、
ZEDのある舞浜まで行くのは、「気軽なお出かけ」とは言いがたい
ですよね……

ツアーショーは、例えば最近のドラリオンでは、東京では原宿の国立
代々木競技場オリンピックプラザ、大阪では大阪南港・コスモスクエ
アなどの行きやすい場所で行います。これであれば、デートなどに行
きやすいですよね。原宿なら、帰りに渋谷で食事、などが普通にでき
ますね。

要はここは「デート」戦場なわけですが、舞浜にオシャレなフレンチ
などもあまり無さそうですから、デートには向かないリッチですね。
イクスピアリのレストランも結構カジュアルなものが多いです。

ただ、1万円以上のチケットの舞台の後には、やっぱりある程度高級
な店に行きたいのではないでしょうか?

 

○友人・知人セグメントの「文化的なイベント戦場」

「友人・知人」セグメントの「文化的なイベント戦場」でも、やはり
都心で行われることの多いミュージカルやコンサートなどに比べて、
立地の不利があります。

このセグメントで重要なことは「誘いやすさ」でしたが、舞浜は「誘
いやすい」とは言い難いです。
ちなみに、アンケート結果で「本当は最初のデートに誘いたい、って
いう「口説きたいニーズ」じゃないんですかね」というご回答があり
ました。

秀逸(アンケートに秀逸も何もありませんが)なお答えで、なるほど
と思いました……が、その場合は「友人・知人」の「誘いやすさ」ニ
ーズに分類されますね。ニーズ自体はそれほど変わらないように思い
ますので、大丈夫でしょう。

その場合も「舞浜」はちょっと誘いづらいですよね……

 

○家族・子供セグメントと東京ディズニーリゾート(TDR)

「家族・子供」セグメントでは「TDRが近いからついでに」という
ニーズが狙えるのかな、と思っていました。

が、TDRのある「舞浜戦場」があまり「家族・子供」セグメントに
評価されているわけではないんですよね。

恐らくは、「家族・子供」セグメントは、

「舞浜まで行くんなら、TDRの方が安いしTDRに行くよ。昼間デ
 ィズニーランドに行ったら、子供は疲れるからそのあとシルクには
 行けないよ。チケット高いし」

という感じではないでしょうか?

TDRの魅力が強いこともあり、「TDRのついでに」とはなりにく
いですね。

 

すると……

恋人・夫婦:デートに行くには舞浜は不便
友人・知人:友人を誘うには舞浜は誘いにくい
家族・子供:TDRに行くくらいならディズニーランドに行く
ということになってしまい、ZEDが苦戦する、ということがアンケ
ート結果から読み取れますね。
前号で「舞浜戦場が浮いてしまっている」つまり、ここの支持の高い
セグメントが無い、と書きました。

立地という意味で強みがあるはずの「舞浜戦場」、つまり「TDRと
セットで」というニーズがあまり無かったのではないか、ということ
です。

 

○外国人ニーズは?

常設劇場を作る1つの理由として、「そこでしかやってないショー」
を見るために、その国に来る外国人を狙える、ということもあるよう
です。
ここで、他国の常設劇場の立地を見てみると……

・ラスベガス「トレジャー・アイランド」(ホテル)
・フロリダ「ウォルト・ディズニー・ワールド・リゾート」

などです。

ラスベガスにしてもフロリダにしても、滞在型リゾートですよね。で
あれば、

「どうせここに長くいるんだから」

という理由で、見に行く人は結構いそうです。長い滞在中のメニュー
の1つ、ということですね。今回のアンケートでも、「ラスベガスで
観た」という方がいらっしゃいました。
・舞浜は滞在型リゾートとは言いにくい

・東京にいらした外国人を呼び込むには、ちょっと立地が厳しい……
ということになります。
今回売れたま!でわかったセグメントとそのニーズについては、応え
るのが難しいのではないか、ということが読み取れます。

シルク・ドゥ・ソレイユであろうと何であろうと、BSCチャートの
一貫性を欠くと、やはり厳しいんですね。
ではシルクはどうすればいいのか、と思われるでしょうが、それに対
する魔法の回答のようなものは無いかと思います。あればきっと高く
売れますよ。
きちんとBSCの一貫性のある戦場・競合、顧客、強みを作り出す
以外には無いかと思います。

今回は母集団に出てこなかったんですが、例えば「シニア層」を狙う
などのこともあるのかもしれません。その際には、戦場も強みも恐ら
く変わるでしょうから、それもお客様の声を丹念に解析していく、と
いうことになります。それはまさに「終わりのない旅」のようなもの
なんです。

これで、アンケートの魔法の質問の部分、BSCは終わりです。

が、まだ残っている分析項目があります。そう、それは……

 

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◆今日のまとめ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●BSCの一貫性を取ろう! 取れていなければ失敗する。その場合
 には、BSCの一貫性があるターゲット・戦場を作りだそう!

 

 

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━特別編Vol.101 2010/12/02
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●マインドフローは定量化して、モレを分析しよう!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆前回のまとめ:シルクの戦場・顧客・強み
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ここまでにわかったことをまとめておきます。

●BSCチャート、完成!

サンプル数が少ないためにあくまでも仮説的な結論ではありますが、
皆様からいただいたアンケート結果からは、次のような

B:戦場・競合
S:強み・差別化
C:顧客セグメント

が導かれそうです。
戦場・競合  ←→  顧客セグメント←→  シルクの強み

気軽なお出かけ    恋人・夫婦    話題性・芸術性
vs食事・買い物
文化的イベント    友人・知人    誘いやすい・話題性
vsミュージカル

シルクが見たい    家族・子供    芸術性・家族に見せたい
vs何もしない

舞浜戦場
vsディズニーランド   ?          ?
というところが、ここまでのまとめです。
今回は、マインドフローについて分析していきましょう。

 

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◆復習:マインドフロー
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●マインドフロー=ココロの流れ

マインドフローとは、お客様のココロの流れ、です。英語そのまんま
の意味でマインドフローと名付けました。

要は、知って、買って、使って、ファンになる、という当たり前の流
れを私が体系化したものです。

 

●お客様が「認知」してから「ファン」になるまでの7つの関門

ビジネスの大きな目的の一つは、お客様にファンになっていただくこ
と。でも、いきなりファンにはなりません。

 認知
 興味
 行動
 比較
 購買
 利用
 愛情

という、7つの関門を通るのが一般的です。

この7つの関門を超えていく「ココロの流れ」をマインドフローと名
付けました。
マインドフローの詳細は、図解 実戦マーケティング戦略をどうぞ

http://tinyurl.com/a6ul5

 

●マインドフローは数値化しよう!

拙著「売れる数字」でも提唱していますが、「定量化」することは極
めて重要です。

マインドフローは「定量化」できるツールです。

ぜひ定量化しましょう。

 

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◆シルクのマインドフローを訊く質問
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●マインドフローを知る質問

シルクのアンケートにも、こっそりと(?)、マインドフローを把握
する質問を入れています。

この質問を使って、マインドフローの定量化を試みます。
お客様に、「あなたはどの関門でつまづいていますか? 認知関門で
すか?」と聞いても回答できませんので、普通の言葉で以下のように
訊ねています。

―――――――――――< 質問内容 >――――――――――――

シルク・ドゥ・ソレイユを、売れたま!で紹介される前にご存じでし
たか? 以下からお選び下さい

1)知らなかった
2)聞いたことはあったがよく知らなかった
3)大体どんなものかはわかっていた
4)観たことがある

―――――――――――< 質問内容 >――――――――――――

 

●シルク・ドゥ・ソレイユのマインドフローは?

マインドフローの7つの関門は、適宜状況に応じて変えていただいて
構いません。シルク・ドゥ・ソレイユの場合は以下のようになるでし
ょう。
1)認知:シルク・ドゥ・ソレイユという名前を知っている
2)興味:どんなものかわかっているか
3)行動・比較:行こうと思ってHPなどを観たりしたか
4)購買・利用:観たことがあるか
5)愛情:また観たいと思ったか、友人などに勧めたくなったか

上の質問の数字がそれぞれの関門に対応しています。

5)愛情:また観たいと思ったか、友人などに勧めたくなったか

については、別の質問で確認しています。

 

1)認知:シルク・ドゥ・ソレイユという名前を知っている

これは素直に聞いてしまっていいと思います。

「1)知らなかった」と回答すると、認知関門を越えていません。

ここでは、「助成想起」(~を知っていますか、に対する回答)で聞
いています。というのも既に売れたま!で書いてしまっているからで
す。

「純粋想起」(知っている劇団名をあげてください、などの聞き方に
対する回答)で訊いた方が正確かも知れませんが、そもそも「戦場」
がわからないので、「知っている劇団名」という質問で良いのかどう
かが検証できません。しかも「戦場」が人によって違うので、純粋想
起では訊きにくいですね。
アンケートをお作りになる方なら、助成想起・純粋想起くらいの概念
は知っておいた方がいいでしょう。Googleで検索すると出てきますの
で、ここでは説明は割愛します。

 

2)興味:どんなものかわかっているか

これも素直に聞いてしまっていいと思います。

「2)聞いたことはあったがよく知らなかった」とお答えになった方
は興味が無い=興味関門を越えていない、ということです。

 

3)行動・比較:行こうと思ってHPなどを観たりしたか

ここの質問は色々聞き方はあると思います。

「観に行くことを検討した」

と訊いても良かったのですが、ちょっと興味関門の質問と飛びすぎか
と思い、「3)大体どんなものかはわかっていた」で代用しました。

このあたりは、状況によって変わりますね。

今考えると、「検討した」かどうかをきちんと訊いた方が良かったよ
うにも思います。

 

4)購買・利用:観たことがあるか

これは直接に訊くべきでしょう。

「4)観たことがある」方は、購買関門は越えていますし、観に行っ
てずっと寝ている人はまずいないでしょうから、利用関門(観る)も
越えています。

 

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◆認知~利用関門:調査結果
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●認知~利用までの調査結果は……

結果は以下のようになりました。

1)知らなかった               4.1%
2)聞いたことはあったがよく知らなかった  16.2%
3)大体どんなものかはわかっていた     55.5%
4)観たことがある             24.2%

マインドフローは、全体を100%として、上から下へと「流出」し
ていく概念ですから、基本的には上方の関門が大きい数字になるはず
です。

 

認知関門を越えていない人が4.1%いる、ということですから、逆
に認知関門を越えた人が95.9%いる、ということです。
そのロジックで整理していくと……

0)全体   : 100%
1)認知・興味:95.9%  (差が4.1%)
2)行動・比較:79.7%  (差が16.2%)
3)購買・利用:24.2%  (差が55.5%)

となります。

上から下に行くにつれて、「モレ」ていくわけです。

上のアンケートの回答の数字がどのような意味を持っているのか、確
認してみてください。質問を1つ入れるだけで、色々なことがわかる
ということがご理解いただけるかと思います。

当然、「モレ」の大きいところが「優先課題」になりますので、優先
的に打ち手を打つことになります。
アンケートは適当に作るものではなく、BASiCSやマインドフロ
ーなどの「アウトプット」(成果物)をイメージして作るものなんで
す。

逆に言うと、BASiCSのような考え方を知らなければ戦略のベー
スとなるアンケートは作れませんし、マインドフローを知らなければ
マーケティング課題を把握することすら大変なんですよ。

BASiCS、マインドフローなどの売れたま!式フレームワークは
当然このようなアンケート作成のベースになるんです。

 

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◆関門の調整
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●結果を見て、関門を再定義しよう!

ここまでの結果は……

0)全体   : 100%
1)認知・興味:95.9%  (差が4.1%)
2)行動・比較:79.7%  (差が16.2%)
3)購買・利用:24.2%  (差が55.5%)
です。

これですと、行動・比較→購買・利用の関門の落ち込みが大きすぎて
課題の把握が粗すぎます。
3)とご回答された方が多かったので、ここであらためて

「観に行くことを具体的に検討したことがある」

という選択肢を入れておけば良かったなあ、と反省しています。

本来的には、事前調査のようなものをして、そのような「反省」が無
いようにすべきですね。
そこで、関門の再定義を行うことにしました。

まず、「全く知らない」という方がほとんどいないので、

1)知らなかった               4.1%
2)聞いたことはあったがよく知らなかった  16.2%

はまとめて、「認知関門」と再定義します。
そこから先の関門ですが、幸いなことに、シルクについて「3)大体
どんなものかはわかっていた」とお答えいただいた方に、自由回答で
その理由を聞いています。

その理由を強引に手作業で分類することにしました。

さすがに1000サンプルを超えると難しいですが、400サンプル
くらいであれば手作業でも何とかなります。
さて、その作業に結構時間はかかったのですが、結論は……
止まった関門  残存数 モレ率

 全体     364
 認知     290 20%
 興味     232 20%
 行動     108 53%
 比較      96 11%
 購買      91  5%
 利用      89  2%

表の見方は、364人の回答者のうち、20%が認知関門で止まって
いる(モレている)ということです。

この数字は、先の

1)知らなかった               4.1%
2)聞いたことはあったがよく知らなかった  16.2%

を足した数字ですね。
モレ率の計算式は、

1-(その関門の残存数/前の関門の残存数)

と定義されます。

例えば、行動関門では、前の興味関門では232人いたのに、ここで
がくっと108人に減っています。

1-(108/232)=1-0.47=53%

ということです。行動関門を通過した人は47%、行動関門で止まっ
てしまった人が53%となります。
「利用関門」でモレる人はほとんどいませんね。

これは、チケットを買った(購買関門を通過した)のに公演に行けな
かった、というような方ですから、やはり数は少なくなります。

チケットを買えば(購買関門を通過すれば)、行きます(利用関門を
通過する)よね。

 

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◆愛情関門:質問と調査結果
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●愛情関門の質問

愛情関門については、別の質問で訊いています。なぜなら、「回答対
象者」が変わるからです。

「購買・利用関門を越えた方」(=観たことのある方」)だけに訊か
ないと意味がありませんので、場所も変えて別の設問を立てました。
これは、今回は以下のような質問で訊いています。

―――――――――――< 質問内容 >――――――――――――

シルク・ドゥ・ソレイユを友人・知人にお勧めしたいと思われます
か? 以下からお選び下さい

1)強く勧めたい
2)まあ勧めたい
3)あまりお勧めしない
4)全く勧めない

―――――――――――< 質問内容 >――――――――――――

今回のアンケートでは、「満足度」を訊いていません。この質問で代
替しました。

「また観たいですか?」と訊いてもいいのですが、同じ演目を繰り返
して観る方はあまりいないでしょうし、演目による違いなどもあるか
と思い、ここでは「クチコミをする意思」について訊きました。

設問数に余裕があれば、大事なことなので両方とも訊いておいた方が
良いは良いのですが、そうすると「アレもコレも……」と、設問数が
40とかになるようなアンケートになってしまいます。

体感的には、限界が20問くらい、A4で3枚くらいですね。それ以
上になると真剣に回答される方でもさすがに飽きてきて、回答の精度
が落ちてしまいます。

アンケートでは、「何を訊くか」も大事ですが、「何を訊かなくても
良いか」も重要です。
今回は、「BASiCSの作成」が最優先課題だったので、マインド
フローの質問は控えめにしました。

「どちらでもない」という選択肢を入れていないのは、良かったのか
ダメだったのかはっきりしていただきたかったからです。

 

●愛情関門の調査結果

この設問の調査結果は……

1)強く勧めたい    34.1%
2)まあ勧めたい    54.5%
3)あまりお勧めしない 11.4%
4)全く勧めない       0%

となりました。

1)と2)を足すと、シルクを観た方の中で、88.6%の方が、
「強く薦めたい」「まあ薦めたい」というポジティブな回答をされた
(=満足した)ということですね。
ただ、真の意味で「愛情を関門を通過した」という意味では、

1)強く勧めたい

とお答えになった方を対象とすべきかと思います。「まあ薦めたい」
方は、訊かれれば「まあ面白かったよ」と応えると思いますが、自分
からは積極的にPRしないだろう、という判断です。
ですので、1)と2)は分けておきましょう。
1)強く勧めたい    34.1% =大ファン
2)まあ勧めたい    54.5% =ファン
としておきますね。
「3)あまりお勧めしない」の方は、愛情関門を通過しなかった方と
なります。

 

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◆シルク・ドゥ・ソレイユのマインドフロー 完成!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●定量化されたマインドフロー

これで、認知→愛情関門までが定量化されました。

結論は……
止まった関門  残存数 モレ率

 全体     364(全員)
 認知     290 20%
 興味     232 20%
 行動     107 54%*
 比較      95 11%
 購買      90  5%
 利用      88  2%
 愛情      78 11%

となります。

愛情関門までの全ての関門を通過した方は78人で、その内訳は

 ファン:30名 (知人に「まあ勧めたい」方)
大ファン:48名 (知人に「強く勧めたい」方)

となります。

 

さて……これでやっと下準備が完了です。

ここから、「ではどうすれば良いのか」というのを考えていくことに
なります。

まずは定量化しないと、どこの対策をうてばいいのかわかりません。

調査などで一番手間がかかるのは、ここまでなんですよね……

経験的には、ここに来るまでにエネルギーの90%が投入されます。

 

●モレ率が高い関門が、優先的に対策すべき関門

モレ率が高いところが当然、最優先で打ち手を打つべき関門となるこ
とが多いです。

上の数字を見る限り、「行動関門」が最優先課題です。

モレが少ないところに手を打っても、投資対効果は低いんです。

ですので、まずは定量化しないと「どの関門の対策をすべきか」がわ
かりません。
「当たり前じゃん」と言われるかもしれませんが、認知率が極めて高
い会社なのに、「認知型」のCMをやっている、なんていう例はいく
らでもありますよ。

あなたが会社名を知っているのに、認知型のCMをしていたとしたら
それは投資対効果が低いですよね。

ムダが出るんです。

そう考えると、マインドフローを定量化しないと、恐くないですか?

私なら、マインドフローを定量化することなしに、広告媒体を決めた
りCMのクリエイティブを決めたりすることは、まずできません。

調査しなくても、カンと経験で関門ごとのモレ率はを考えるだけでも
最低限やったほうがいいと思います。

アナタにもそれは強く強くお勧めします。
では次号では、「さあどうする?」と考えていきましょう。

 

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◆今日のまとめ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●マインドフローは、まずは定量化し、モレの大きい関門に優先的に
 手を打とう!

 

 

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━特別編Vol.102 2010/12/06
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●マインドフローの関門は下から改善しよう!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆前回のまとめ:シルクのマインドフロー
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●マインドフロー=お客様のココロの流れ

マインドフローとは、お客様のココロの流れ、です。英語そのまんま
の意味でマインドフローと名付けました。要は、知って、買って、使
って、ファンになる、という当たり前の流れを私が体系化したもので
す。
●お客様が「認知」してから「ファン」になるまでの7つの関門

ビジネスの大きな目的の一つは、お客様にファンになっていただくこ
と。でも、いきなりファンにはなりません。

 認知
 興味
 行動
 比較
 購買
 利用
 愛情

という、7つの関門を通るのが一般的です。

この7つの関門を超えていく「ココロの流れ」をマインドフローと名
付けました。
マインドフローの詳細は、図解 実戦マーケティング戦略をどうぞ

http://tinyurl.com/a6ul5

 

●定量化されたマインドフロー

前回、アンケートの数字からマインドフローを定量化しました。
これで、認知→愛情関門までが定量化されました。

結論は……
止まった関門  残存数  モレ率

 全体     364(全員)
 認知     290  20%
 興味     232  20%
 行動     107  54%*
 比較      95  11%
 購買      90   5%
 利用      88   2%
 愛情      78  11%

となります。

愛情関門までの全ての関門を通過した方は78人で、その内訳は

 ファン:30名 (知人に「まあ勧めたい」方)
大ファン:48名 (知人に「強く勧めたい」方)

となります。
モレ率は、

「A関門からB関門に行くときに、B関門に行かなかった人の割合」

と定義されます。

A関門がB関門の上にあるとき、

モレ率=1-(B/A)
 ・A=A関門到達者の人数
 ・B=B関門到達者の人数

マインドフローにおいては、基本的に A>B が成立しているはず
ですので、モレ率は常に正の数字になります。

このように表現すると、売れたま!としては珍しくアカデミックに見
えますが(笑)、要は

A関門からB関門に進まなかった人の割合ってどれくらい?

ってことですね。こう書くと売れたま!らしいですね。売れたま!の
内容はそこらのMBAよりはよっぽど高度(実戦性という意味で)な
んですが(このシルクシリーズだってそうですよ)、そう見せていな
いだけだったりします。少なくとも私が卒業した、全米1、2位を争
うWhartonのマーケティングの必修科目よりは遙かにハイレベルです
し、実戦性が高いです)。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆定量と定性のやりとりをしよう!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●数字が出たら、定量と定性のやりとりをしよう!

さて、ここまでは、気の利いたマーケターの方々だったら、たどり着
く結論です(とは言え、世界的に見ても、ここまで緻密にマーケティ
ングをしている会社は少数でしょう)。

私がマインドフローに気づいたのは、実はBASiCSより遙か昔の
十年以上前、いわゆるブランドマネジメントの仕事をしていたときの
ことです。
問題は、ここからです。ここからが、本当の腕の見せ所なんですよ。

多くの人は、数字が出たらそれで満足してしまいます。

違います。数字は、始まりにすぎないんです。

繰り返します。

数字は、始まりにすぎません。その背後にある「理由」、お客様の姿
や声、肌感覚をつかみとっていくんです。
それが売多勝さんが新人OL本などでいう、「アンケートのウラを読
む」ということなんです

それは、

「定量」(数字)

 と

「定性」(肌感覚)

の「やりとり」*をしながら考えて行くんです。
*この「やりとり」について書いているのが拙著「実戦マーケティン
グ思考」です。思考の質を高めるための具体的なノウハウが満載!

「アンケートのウラを読む」という売多勝さんの手法が知りたい方は
ぜひどうぞ。アタマの使い方を知りたい、という方はぜひ!

「実戦マーケティング思考」 佐藤義典著
 日本能率協会マネジメントセンター
 右脳と左脳をフル活用、売れる思考・発想ができるようになる!
http://www.sandt.co.jp/shiko.htm

 

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◆マインドフローは下から改善する
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●まずは愛情関門からチェックしていこう!

マインドフローで、モレ率の高いところが、打ち手を打つべき優先関
門です。

そして、マインドフローは下から改善します*。その理由は、使って
いただいても(利用関門を越える)、満足につながらなければ(愛情
関門を越えられない)、リピートどころか悪評が立つからです。

一番下にあるのが、愛情関門です。愛情関門をチェックしましょう。
愛情関門を越えて、めでたくシルク・ドゥ・ソレイユの「ファン」と
なった方々は、78名でした。

その内訳は

 ファン:30名 (知人に「まあ勧めたい」方)
大ファン:48名 (知人に「強く勧めたい」方)

となります。

利用関門を越えた方々は88名で、その方々に「シルク・ドゥ・ソレ
イユを友人・知人にお勧めしたいと思われますか?」という
質問に対する回答です。
前号でも解説しましたが、この設問の調査結果は……

1)強く勧めたい    34.1% (30名) = 大ファン
2)まあ勧めたい    54.5% (48名) =  ファン
3)あまりお勧めしない 11.4% (10名) =  ご不満
4)全く勧めない       0%

となりました。
1)と2)を足すと、88.6%の方が、「強く薦めたい」「まあ薦
めたい」というポジティブな回答をされた(=満足した)ということ
ですね。

ざっくり満足度9割と言ったところですが、積極的に口コミしそうな
大ファンの方は約4割です。

そして、88名中10名は愛情関門を越えず、「不満」に思われたわ
けです。

これが「定量的」な把握ですね。

 

●「あまりお勧めしない」理由は?

では、ここから「定量と定性のやりとり」をしていきましょう。

この愛情関門を越えなかった方々が、越えなかった理由を確認する必
要があります。

それをするために、アンケートでも自由回答形式で理由を書いていた
だいています。今回、ご回答者の方々が真剣にご回答いただいたので
非常にリッチな回答になっています。

通常のアンケートですと、自由回答は空欄だったり意味不明な回答も
多くなります(そしてそれはやむを得ないことです)が、今回はそう
いう回答がなく、サンプル数に比して非常に有効な回答が得られてい
ます。ありがとうございました!

で……

シルク・ドゥ・ソレイユをご覧になった方で、「友人・知人にお勧め
したいと思われますか?」という設問に、「あまりお勧めしない」と
ご回答された方にその理由を伺いました。

愛情関門を越えなかった10名の方のご回答をそのまま列挙していき
ますね。
1)期待したほどではない 6名

・大人向け西洋版雑技団です。それほど文化レベルが高いとも思えず
・感動しなかったから。芸術の域に達しているとは思わない。
・そんなに感動しなかったから。
・期待ほど楽しめなかった(好みや方向性の違い)
・自分が期待していたような感動・興奮は感じられなかった
・期待ほどではなかった
2)金額が高い 3名

・値段が高いから。 
・金額が高い
・チケットが高価なため
3)バラツキがある 1名

・各出し物によって、面白さにかなり差があるため。キダムは道具も
 のが多くて、私はあまり面白くなかったです。

となりました。

もちろん、「感動した」というご意見がこれ以上に多くある(ほぼ9
割)わけですから、そうで無い方もいる、ということですよ。

 

●この回答をどう「解釈」する?

問題は、この回答をどう「解釈」するか、です。「定性」情報は、非
常に解釈が微妙になります。どうしても分析者の「恣意」が入ってし
まうんですよ。特に関係者が分析すると、どうしてもそうなってしま
います。

コンサルタントの意義の1つはそこにあります。私は、シルク・ドゥ
・ソレイユとは何の関係もないので、客観的に見られるんですよ。

私がシルクの担当者だったら、なかなか客観的に見られないと思いま
す。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆愛情関門:要経過観察
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●悪くはないが、より詳細に見る必要がある

ここまでをまとめると、
1)期待したほどではない 6名
2)金額が高い 3名
3)バラツキがある 1名

という回答でした。

「定性的」な自由回答を、定量的に括りなおしている様子がご理解い
ただけるかと思います。

ここについては、「論理思考」ですね。いわゆるロジカルシンキング
的な話です。簡単そうに見えて、実は結構難しいです。

これについても、詳細は「実戦マーケティング思考」をどうぞ。
私の結論としては、

「致命的に悪くは無いにしても、手放しで喜べない」

結果、という判断です。
10名ですので、数字を語るのは危険です。が、目安にはなります。
10名のうちのの7,8名が「価格が高い!」という回答なら、

「高いのはしょうがない」

と諦めてもよいように思います。「価格を下げる」という打ち手は取
れませんし、取るべきでもありません。もし値下げしたらシルクのビ
ジネスの根幹が揺らぎます。

しかし、「期待したほどではない」という方が「定量的に」見て多数
派、というのは少々まずいように思います。
この方々のご回答には、「価格が高い」などの指摘は一言も出てない
んですよ。ですので、パフォーマンス自体にそれほど満足していない
ということかもしれません。その場合には「製品改良」(演劇の内容
などを改善する)必要があります。
もちろん、その背景に「価格が高い」はあるのかもしれませんので、
それを確認してみます。

そうです、「定量的」に多かった「期待したほどではない」という回
答を、それはどういうことなのか、とまた「定性的」に検証するわけ
です。

これが「定量」と「定性」のやりとりです。

これが自由自在にできれば、一流(あるいは超一流)のマーケターと
言っていいでしょう。

調査会社でも「定量調査」部門と「定性調査」部門は別れていたりし
ますよね。だから、定量と定性の「やりとり」がしづらいんですよ。
そういう人材が育ちにくいんですね。
さて、このアンケートの中で、他にヒントになりそうなものは……

あ、ありました。

「勧めはするけど、それほど強くは勧めない」という方々の自由回答
ですね。

同じ質問(シルクを友人・知人に勧めますか?)に対して、

2)まあ勧めたい    54.5% (48名)

というご回答の方の自由回答です。

この方々は、満足はしていますが、「強く」ではなく「まあ」勧めた
い方々ですので、何らかの不満はでているかもしれません。

ですので、これを若干乱暴ではありますが、定量的に分類してみまし
ょう。すると……

・高い・高すぎる:13名
・好みが分かれる:6名
・感動しない・一度見ればいい:4名

と、案外にネガティブな評価が多いのです(だから「強く勧めたい」
ではなく、「まあ勧めたい」にしたのだと思います)。

23名(まあ勧めたい方の約1/2)の方のご回答に、ネガティブな
ニュアンスが含まれていました。

そしてその1/2が「チケットが高いから」ということでしょう。

気になるのが「一度見ればいい」というご意見です。

 

●定性調査を定量調査の代用に使う際には注意しよう!

なお、定性情報を定量データとして使うことは、かなり危険であるこ
とは、念のため申し上げておきます。今回はこのアンケート結果以外
によって立つところが無いためそうしていますが、実際に実務で行う
際には、定性調査と定量調査は分けて行った方が良いです。

50人のグルインをやって、その意見をもって「定量調査」として代
用することは、リスクを伴います。できれば、その後できちんと数百
サンプル以上の定量調査をしたほうがいいです。

また、今回の調査も、回答者が偏っています(30~40代が多い、
という意味です)ので、本来的には定量調査としても危ういです。

性・年代・職業別くらいのサンプルの割り当てはしないと、代表性が
ちょっと怖いのですが、今回はそういう配慮は一切していません。

数字に頼ってモノを言うときには、そのあたりのことを本当はきちん
と配慮したほうがいいです。

が、あまり厳密にしても真に「代表的なサンプル」などというものは
存在しないので(やるなら国勢調査みたいに全員に聞くしかありませ
ん)、時間・お金と厳密性の兼ね合いですね。

 

●愛情関門:要経過観察

ここまでの「事実」をまとめると……

・観劇ご経験者88名中10名の方が「あまり勧めない」とお答えに
 なっている。そのうちの過半数6名がパフォーマンスそのものが期
 待通りでは無かった、とご回答

・「まあ勧めたい」48名のうち23名に若干ではあるがネガティブ
 なニュアンスが見える

ということです。

これはアンケートの中における「事実」です。その「事実」をどのよ
うに結論づけるか、意味づけするか、というのもデータの見方に含ま
れます。
ここまでの定量と定性のやりとりから導き出された、シルク・ドゥ・
ソレイユを「勧めない理由」(=不満が残ったポイント)は……
「悪くはなかったけど、感動するって聞いてたほどでもなかった。そ
 れにいかんせん高いよね」
 

と、2~3割程度の方が思っている(かもしれない)

ということでしょう。
では、「診断結果」に行きましょう。診断結果は、見解が分かれて良
いと思います。ここからは私の見解です。それが正しいとか唯一の考
え方などと主張する気は毛頭ありません。
私の「診断結果」は、「要経過観察」です。私のコレステロールと同
じ(笑)です。
「現時点でどうする、ということではないが、良くないサインが出て
 いる。他にまずい兆候があったら、治療開始。できれば一度精密検
 査した方が良い」

という感じですね。

愛情関門全体として見れば、9割近い方が「強く勧める」「まあ勧め
る」とお答えいただいている(ご満足されている)ので、大丈夫では
あるかもしれません。

が、愛情関門については、良くないサインは看過してはいけません。

愛情関門で止まると、「観たけどあまり良くなかった」というマイナ
スの口コミが発生しかねません。
9割の方が満足されているので今すぐにどうこう、ということではあ
りませんが、観た人の感想・満足度などはきちんと追っていった方が
いいでしょう(シルク・ドゥ・ソレイユもそんなことは既にやってい
らっしゃるとは思いますが)。
ちなみに私のコレステロールも300近いので、「要経過観察」が
10年くらいずっと続いていました。お医者さんからも回りかもあん
まり言われるで、「じゃあもうこの際、できる検査は全部やってくだ
さい」と言って病院で検査していただきました。結果は、全ての検査
においてまったく問題無し、ということで私のコレステロール問題は
一応の決着はつきました。
シルク・ドゥ・ソレイユも似たような感じで、問題は無いかもしれま
せんが、一度精密検査をした方がいいかもしれません。

というのは、ZEDにも関わる問題だからです。多くの方が

「高いし、一度見ればいいや」

と思っているのであれば、他の演目を観た方という、ZEDの最高の
ターゲット顧客の方々がZEDをあまり観る気にならない、というこ
とになってしまうからです。

原因としては、

・宣伝で「芸術だ」「感動した」と期待を高めすぎ、結果として「何
 だ、それほどでもないじゃん」と思われた
・実際のパフォーマンスに何らかの問題があった
・ひょっとしてマンネリ化してきた
・1万円を超えると値頃感がきつい(劇団四季は1万円以下)

などが考えられます。

これが正しいかどうかはわからないので、精密検査した方がいい、と
言うことです(もちろんやっていらっしゃるとは思います)。
マインドフローを下から改善する、ということは、まさにこのために
やるんです。

商品やサービスそれ自体に満足していただいてないのなら、宣伝をす
るほど、「ネガティブな口コミ」をばらまくことになるからです。

ですので、愛情関門についてだけは、念を入れてチェックし、何か問
題がありそうならきちんと調べた方がいいわけです。
それは、劇であろうと商品であろうとレストランであろうと、全て同
じことですね。
お医者さんも「定量的」な検査結果「だけ」からは判断しないですよ
ね。他の定性的な情報、触診だったり、患者さんの話だったりを聞き
ながら「定量」と「定性」のやりとりをしながら診断するのだと思い

調査結果の「数字」(定量)だけ見てもいけません。

また、ある顧客の一言「だけ」を定性的に見て、それが「お客様全体
の意見だ」と過大評価してもいけません。

その「やりとり」がポイントなんです。

その際のアタマの使い方はこちらの本でどうぞ!

「実戦マーケティング思考」 佐藤義典著
 日本能率協会マネジメントセンター
 右脳と左脳をフル活用、売れる思考・発想ができるようになる!
http://www.sandt.co.jp/shiko.htm

 
一応免責として明記しておきますが、これはシルク・ドゥ・ソレイユ
が良い悪いということが言いたいわけではなく、アンケート結果を客
観的に分析するとこうなる、ということです。

むしろシルク・ドゥ・ソレイユは非常にうまく行っている例の1つか
と思います。どんなにうまくいっている会社・商品でも、何らかの課
題は常に存在しますよね。
えっと……愛情関門だけでこれだけ長くなってしまいました。

次は、別の関門です!

 

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◆今日のまとめ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●マインドフローは、下から改善しよう。愛情関門にまずいサインが
 出ていたら、看過してはいけない。

 

 

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━特別編Vol.103 2010/12/09
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●マインドフローとBASiCSを連動させ、行ったり来たりしなが
 ら考えよう!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆前回のまとめ:シルクのマインドフロー
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●マインドフロー=お客様のココロの流れ

マインドフローとは、お客様のココロの流れ、です。英語そのまんま
の意味でマインドフローと名付けました。要は、知って、買って、使
って、ファンになる、という当たり前の流れを私が体系化したもので
す。
●お客様が「認知」してから「ファン」になるまでの7つの関門

ビジネスの大きな目的の一つは、お客様にファンになっていただくこ
と。でも、いきなりファンにはなりません。

 認知
 興味
 行動
 比較
 購買
 利用
 愛情

という、7つの関門を通るのが一般的です。

この7つの関門を超えていく「ココロの流れ」をマインドフローと名
付けました。
マインドフローの詳細は、図解 実戦マーケティング戦略をどうぞ

http://tinyurl.com/a6ul5
前回は、愛情関門をチェックしました。

今回は、次の関門に行きましょう。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆モレが多い関門をチェックしよう!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●定量化されたマインドフロー

アンケートの数字から(若干強引に)マインドフローを定量化しまし
た。その結果は、こうでしたね。
止まった関門  残存数  モレ率

 全体     364(全員)
 認知     290  20%
 興味     232  20%
 行動     107  54%*
 比較      95  11%
 購買      90   5%
 利用      88   2%
 愛情      78  11%

となります。
マインドフローは下から改善していきます。

愛情関門は前回チェックしました。結論は「要経過観察」でした。

 

●利用関門:2%のモレ → OK

次は、利用関門での流出です。「チケット買ったのに観ない」とか、
「行ったけどずっと寝ちゃった」というような場合が考えられます
ね。

ここは問題ありません。自分の都合が変わって観られなくなった、と
いう方がごく少数いらっしゃいましたが、それは手の打ちようがあり
ませんね。

 

●購買関門:5%のモレ → OK

次は購買関門での流出です。具体的な購買の行動を起こそうとして、
何らかの理由で買えなかった、という答えをこの関門に分類していま
す。

・デートで彼女と観にいこうと思ったが、スケジュールが合わずに予
 約が取れなかった
・チケットを取ろうと思った時に、良い席が空いていなかった

などの方です。ここも少ないですね。この関門もOKでしょう。

 

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◆比較関門は、戦場・競合をチェックしよう!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●比較関門:11%のモレ

次は比較関門です。ご回答に具体的な競合名を挙げた方を、「比較関
門」に分類しています。

11%であれば、数字的にはそれほど問題は無いかと思います。

ではそれで比較関門は終了……としても良いのですが、ここで一旦
BASiCSに戻りましょう。

比較関門は、競合との「比較」であり、ここでの流出は「競合に負け
た」ということになるからです。

比較関門では、

B:戦場・競合
S:強み・差別化

の問題がこの比較関門で起きます。
当然ですが、BASiCSと他のツールは全て連動しています。拙著
売れる数字*では、戦略BASiCSと売上5原則の連動を徹底的に
検証しました。
*「売れる数字 ~組織を動かすマーケティング~」 
 佐藤義典著 朝日新聞出版

戦略を実行に落とし込み、組織を動かそう!
http://ow.ly/32zKP

 

ではここで戦場・競合をもう一度確認しましょう。

1)「シルク・ドゥ・ソレイユが観たい」戦場

競合:無し
2)「文化的なイベント」戦場

競合:ミュージカル、観劇、コンサート、歌舞伎
3)「気軽なお出かけ」戦場

競合:食事、旅行、ショッピング、映画、遊園地
4)舞浜戦場

競合:ディズニーランド・ディズニーシー
この戦場別に、比較関門で止まった方のご意見を確認していきましょ
う。例によってサンプル数が少ない(12人)ので、定量的な把握は
難しく、仮説くらいにお考えください。

 

●比較関門で負けた競合は?

では、比較関門で負けた相手(=戦場・競合)を見ていきましょう。
2)「文化的なイベント」戦場 5名

・代わりに劇団四季のミュージカルを観た
・興味あるイベントが、他にあるので(オペラ・歌舞伎・文楽・箱根
 アート旅行…)
・(サーカス含め)ダンスより、(生)歌の方が好き
・同じ値段払うなら、ディスカウントでオペラ行く
・コンサートなど、より行きたいものがあるとそちらを優先してしま
 うため。
・値段と見に行く時間を考えると別のことにそのお金と時間を使いた
 いと思う。別の選択肢は、アミューズメント系や食事、旅行など
3)「気軽なお出かけ」戦場 1名

・その金額を使うのであれば、豪華な食事に行ってしまいます
4)舞浜戦場 3名

・費用面と家族の趣向面から、シルク・ドゥ・ソレイユシアターへは
 行かず、隣接する東京ディズニーリゾートへばかり行くから。
・どうせ行くならTDLでTDLホテルに泊まった方が満足度が高い
 から。
・東京に行くときは、出張以外、家族で行きます。小さな子供がいる
 ので、シルク・ドゥ・ソレイユよりディズニーランドに行ってしま
 います。

 

不明(多分舞浜戦場?)

・子どもがまだ小学生なので、親子3人で一緒に楽しむには、シルク
 ・ドゥ・ソレイユよりもっと行きたいところがあるから。
ちなみに、

1)「シルク・ドゥ・ソレイユが観たい」戦場

は、ゼロです。この戦場にいる顧客は、比較関門で止まるはずがあり
ませんから。

 

●戦略BASiCSとマインドフローの一貫性チェック

ここで、BASiCS(具体的にはBSCチャート)で考えた仮説と
マインドフローの比較関門での結果があっているかどうか、その整合
性をチェックします。

比較関門で負けた相手が、「戦場・競合」で分析した通りの結果にな
っているので、一安心です。設問は違いますが、結果に整合性があり
ます。さすが売れたま!読者の皆さん、回答が論理的なんですね。
ちなみに、BSCチャートを作ったときにはこのマインドフローの分
析を終えていなかったんですよね……ですので、実はドキドキだった
りします。

ここで結果が食い違っているのであれば、BASiCSを書き直すこ
とになります。BSCを再度練り直していくわけdす。

 

●売れたま!ツール間の相互チェック

このように、BASiCSと、マインドフローでそれぞれ相互チェッ
クを働かせるわけですね。

BASiCSのB:戦場・競合と、マインドフローの比較関門で負け
た相手は、一貫性がないとおかしいですよね。

逆に、マインドフローの「比較関門」の突破策は、BSCチャートに
おける「強み」を訴求して、競合と差別化することになります。戦略
BASiCSをきっちりと実行することは、マインドフローの比較関
門の対策でもあるんです。

 

売れたま!や私の本で提供しているツールは、相互の親和性が高いん
です。それが、他のツールとの強力な差別化になっています。

5 ForcesとVRIOとSWOTとPESTと3C(いちいち
説明しませんが)などのフレームワークは、相互の親和性が薄く、全
体の整合性が取りにくいんですよね。

例えば、プレゼンでそれぞれのツール間に「流れ」を作ることが困難
です。

でも、BASiCSと売上5原則は「売れる数字」でその流れを具体
化しましたし、BASiCSとマインドフローもこのように「流れ」
がありますよね。
でもまだ、ここで「おー」と驚いていてはいけません。

 

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◆愛情関門は、強み・差別化をチェックしよう!
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●マインドフローでわかる、「強み・差別化」

マインドフローでは、まだ貴重な情報がわかります。

「比較関門」でわかるのは、「戦場・競合」です。

そして……

「愛情関門」では、「強み・差別化」がわかります。
なぜかというと、愛情関門を越えた方は、シルク・ドゥ・ソレイユの
「強み」を重視している方だからです。

なぜか?

「強み・差別化」というのは、「競合ではなくて自社を選ぶ理由」で
すよね。

そして……愛情関門を越えてファンとなった方は、「自社を選んで、
かつご満足いただいた方」ですから、「強み・差別化」を重視してい
る、という論理的必然性があります。

ということは……愛情関門を越えて大ファンとなった方が「シルク・
ドゥ・ソレイユを他人に強く勧める理由」を見れば、シルク・の
Strength「強み・差別化」がわかるんです!
「比較関門」で、「戦場・競合」が、
「愛情関門」で、「強み・差別化」がわかる!
なんとBASiCSとマインドフローは連動性が高いんでしょう!
こんなにツール間で連動性がある戦略ツールってそんなに無いと思い
ます。だから設問数は少ないのに、多角的な分析ができるんです。
では、回答を見ていきましょう。

ここでは、友人・知人に強く勧めたい「大ファン」の方、30名の、
「お勧めの理由」を見ていきます。

この方々からは、当然絶賛の声の数々です。まさにシルクの宣伝にで
てくるような声が続きます。ほとんどの方が「感動した」「素晴らし
かったから」とお答えいただいています。

「強くお勧めする」方なので、それがベースにあるのは当然のことで
すね。ここからもう一歩つっこんでいきましょう。
「どのように」素晴らしかったのか、を知りたいとところですよね。

そのような回答を探っていくと……
1)肉体的限界への挑戦 4名

・人間極限の技が見れる。感動する。
・人間の限界とも思えるパフォーマンスの素晴らしさを感じるから
2)肉体的限界への挑戦+ストーリー性 2名

・普通に見ていてもサーカスは驚かされるが、ストーリー性が組み込
 まれていて見ていて飽きがこない
・ストーリー性のある内容と人間業とはおもえないパフォーマンスが
 素晴らしいから。
という回答が、シルク・ドゥ・ソレイユの「独自性」としてあげられ
ています。
さて……これで、本来であれば、これを「戦場」とクロスしてみれば
BSCチャートの検証ができます。

が、今回は上記6名の方の「戦場」とクロスしてみることにはさすが
に数字的な意味がありません。技術的にはこの設問で可能ですが、で
きませんでした。
が、仮説は作れます。

「肉体的限界への挑戦」というシルクの「強み」は、全ての戦場にお
いて、独自の強みになります。

「ストーリー性」については、演劇やミュージカルにもストーリー性
がありますので、「文化的なイベント」戦場においては強みになりま
せんね。

今回は、「大ファン」の方の中で「文化的なイベント」戦場にいらっ
しゃる方がお一人だけですので、数字の検証はムリでしたが、サンプ
ル数が十分にいれば、ここでもBSCチャートの検証ができたことに
なります。

 

●「愛情関門」と「戦場・競合」のクロス集計結果

ちなみに、「愛情関門」と「戦場・競合」のクロス集計をして、他の
戦場と比べて特徴が出た戦場は2つあります。
○「文化的なイベント」戦場

・「大ファン」になった方が少なく「ファン」になった方が多い

定性的な理由を探っても特にネガティブな理由は無かったのですが、
恐らくは、ミュージカルなどを見慣れているので、素晴らしいパフォ
ーマンスに慣れている、ということなのでしょうね。
○「舞浜」戦場

・ほとんどの方が「大ファン」になった

この方々は、ディズニーランドなどが競合とお答えになった方々なの
ですが、7名中5名の方が、「大ファン」になっています
このようなご回答がありました。

「観に行くまでは乗り気じゃなかったのですが、見にいったらあのミ
 ュージカルともサーカスともライブともいえない独特の雰囲気、人
 間の可能性の深さ、ぜひ現地でみて、感動してほしいからです」

観る前はそれほど期待感が強くなく、実際に観てみたら「うわ、これ
すげー」状態になったのでしょうね。

となると、舞浜戦場(東京ディズニーリゾート・以下TDR)に来る
方々)では、意外にシルクの魅力が伝わっていない、ということかも
しれません。

多くの方が子供連れですので、どのようにその魅力を伝えるか、とい
うのがポイントになるでしょう。

その際に、

「あの感動は小さなうちから体感させるべき。こころが豊かになるし
 夢が拡がる」

というご意見がありました。ある意味「子供のために教育投資」のよ
うな位置づけですよね。

 

●BSCチャートを見直そう

ここで、前に作ったBSCチャートを確認しておきましょう。
 B:戦場・競合     C:顧客     S:強み

気軽なお出かけ    恋人・夫婦    話題性・芸術性
 vs食事・買い物
文化的イベント    友人・知人    誘いやすい・話題性
 vsミュージカル
シルクが見たい    家族・子供    芸術性・家族に見せたい
 vs何もしない

というのが一応の「完成形」でした。

そして、ZEDはどのセグメントにもはまりにくいのではないか、と
いう仮説を立ててきました。

ここまでのマインドフローの分析で、「シルクが見たい戦場」(競合
が無いセグメント)で、「家族に見せたい」の深掘りができたように
思います。「情操教育」ともいうような、「子供に見せて、ココロが
豊かになる」というようなものです。この場合の競合はクラシック音
楽などになるかもしれませんが、それに対しては「子供が飽きない」
という「強み」があります。

この強みは、上のBSCチャートには入れていなかった「舞浜戦場」
(競合がTDR)において通用する強みかもしれません。
また、「肉体的限界への挑戦」という強みは、「文化的イベント」戦
場における、対ミュージカルなどでの強みになるかもしれません。
「かも」と言っているのは、「文化」戦場で「肉体」が強みになるか
どうかは直観的によくわからないからで、要検証です。
マインドフロー分析で得られた情報を加味しての結果はこのようにな
ります。
 B:戦場・競合     C:顧客     S:強み

気軽なお出かけ    恋人・夫婦    話題性・芸術性
 vs食事・買い物
文化的イベント    友人・知人    誘いやすい・話題性
 vsミュージカル           肉体的限界の感動
シルクが見たい    家族・子供    芸術性・家族に見せたい
 vs何もしない

TDRのついで    家族・子供    子供に見せたい
 vsTDR

 

このように、BASiCSとマインドフローを相互に連動させ、行っ
たり来たりしながら仮説検証を行ってどんどん思考を深めていくわけ
です。
このような思考プロセスには、相互に連動性・親和性の高いツールを
使う必要があるんです。

それが、売れたま!ツールの最大の「強み・差別化」の1つです。

愛情関門と比較関門だけでこれだけの分析ができます。

次回は、また関門を上っていきましょう!

 

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◆今日のまとめ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●戦略BASiCSとマインドフローを相互に行ったり来たりしなが
 ら思考の質を深めよう!

 

 

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━特別編Vol.104 2010/12/13
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●定量と訂正のやりとりをしながら、マインドフローの関門を越える
 打ち手を考えよう!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆前回のまとめ:シルクのマインドフロー
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●マインドフロー=お客様のココロの流れ

マインドフローとは、お客様のココロの流れ、です。英語そのまんま
の意味でマインドフローと名付けました。要は、知って、買って、使
って、ファンになる、という当たり前の流れを私が体系化したもので
す。
●お客様が「認知」してから「ファン」になるまでの7つの関門

ビジネスの大きな目的の一つは、お客様にファンになっていただくこ
と。でも、いきなりファンにはなりません。

 認知
 興味
 行動
 比較
 購買
 利用
 愛情

という、7つの関門を通るのが一般的です。

この7つの関門を超えていく「ココロの流れ」をマインドフローと名
付けました。
マインドフローの詳細は、図解 実戦マーケティング戦略をどうぞ

http://tinyurl.com/a6ul5

 

●マインドフローとBASiCSをつなげよう

BASiCSとマインドフローは連動するツールです。

 認知
 興味
 行動
 比較 → 誰に負けるのか?(競合) なぜか?(強み)
 購買
 利用
 愛情 → どんな人が(顧客)なぜファンになるのか? (強み)
このあたりのお客様の定性的な意見を見ながら、BASiCSを修正
していくことになります。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆モレが多い関門をチェックしよう!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●定量化されたマインドフロー

アンケートの数字から(若干強引に)マインドフローを定量化しまし
た。その結果は、こうでしたね。
止まった関門  残存数  モレ率

 全体     364(全員)
 認知     290  20%
 興味     232  20%
 行動     107  54%*
 比較      95  11%
 購買      90   5%
 利用      88   2%
 愛情      78  11%

となります。
マインドフローは下から改善していきます。
愛情、利用、購買、比較の関門までをチェックしてきました。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆一番モレの大きい関門が、優先関門
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●行動関門:54%のモレ

マインドフローの関門を改善していく際には、

1)下から改善する
2)モレの大きい関門を改善する

ことになります。

今回、モレが数字として一番大きいのが行動関門です。

364人(全体)中、232人の方が興味関門まで来ましたが、その
半分以上が「行動」に至っていません。

ここを改善すると、効果が高そうです。

 

●行動関門の内容

今回は、定性的な情報を強引に関門別に分類していますので、結構恣
意的な分類になっています。

それを申し上げた上で、行動関門に分類された方はどんな理由で止ま
ったかを見ていきましょう。

125人が行動関門で止まり、その内訳は……
・チケットが高い :44人
・きっかけがない :26人
・場所が遠い   :18人
・高い+遠い   :10人
・行く相手がいない: 8人
これは、「シルクを知っているのに観に行かない理由」に対する回答
です。

厳密に言えば、「高い・遠い」ということを知っているということは
「行動関門」を通過しているのかもしれません。

が、行動関門の次の関門である「比較」にはたどりついていない、と
いうことかと思います。
「比較」関門に分類した回答は、前回でお知らせしたように、

・その金額を使うのであれば、豪華な食事に行ってしまいます

と、「競合」を明確にした回答です。

単に「高いから」などの回答は、シルクを検討する際の「真剣度」の
ようなものがあまり高くないと判断しています。ただ、「高い」「遠
い」という知識がある時点で、「興味」関門は通過しています。

ですので、「行動」関門に分類しました。

このあたりの判断はどうしても「さじ加減」になってしまいます。

 

●行動関門ではターゲットとつなげよう!

今回のアンケートでは、ターゲットをしぼっていませんので、どこか
でターゲットについて考える必要があります。

そもそも調査を「聞くべき人」に聞いているのか、ということです。

それが最も適しているのが今回はこの関門のように思います(今回は
ということで、常にそうだとは限りません)。

例えば、

・チケットが高い :44人

と回答された方の一部については、「ターゲットではないからしょう
がない」と諦めても良いと思います。
「高い」とお考えになるお客様については、2通りありえます。
1)絶対額が高いので予算外

1万円以上をこのようなショーなどに使いたくない、という方につい
ては、打ち手は「値下げ」しかありません。

「値下げ」という打ち手は戦略上ありえないと思いますので、ここは
諦めることになります。
例えば以下のようなご回答の方は、泣く泣く諦めます。

・一番の要因は、チケット代金が高額だから。当方妻子持ちの小遣い
 制ですw 可処分所得が家計全体でも厳しく、家族では出費が多す
 ぎる。
・サーカスにそこまでお金を払うのはありえない!と思っていました

 

2)価値が伝わっていない

予算は無くはないが、「認識価値」としてチケット代にふさわしいか
どうかがわからない、という方も、多くはありませんがいらっしゃい
ます。
・自分が1万円ぐらい払う価値があるショーなのかどうか、わからな
 いため踏み切れない
・価格が高額であり、支払うだけのベネフィットが得られるか判断で
 きない。
この方々については、高いのは仕方ないとしても、それだけの価値が
あるかどうかわからない、ということです。

ですので、価値を伝えれば、この関門を越えられるかもしれません。
ネットの動画などをうまく使えばいいかもしれませんね。
単に「高いから」とご回答いただいた方が多いので、数としては計算
しにくいのですが、1)の方が8割で、2)の方は2割程度という感
じかと思います。
ただ、シルク・ドゥ・ソレイユはここまでに色々な告知活動をしてき
ているので、それでも価値が伝わっていない、ということであれば、
この「高いから」と答えた方々は「ターゲットではない」と考えても
良いように思います。
また、「遠いから」とご回答いただいた方も同じ考え方で良いように
思います。

本当に行きたければ、少し遠くても行くでしょうし、打ち手が限られ
てしましまいます。「近く」するためには、公演会場を増やすことに
なりますが、あまり現実的ではありません。
すると、「高い」「遠い」という方については、「ターゲットではな
い」と割り切ってしまっても良いかもしれません。

・チケットが高い :44人
・場所が遠い   :18人
・高い+遠い   :10人
という72人/125人(58%)の方ですね。

行動関門のモレの数値が高くなっているのは、このような「ターゲッ
トではない」という方々をこの関門で除外しているからかもしれませ
ん。そのような結論であれば、行動関門は、一見モレが大きいように
見えて、実はそうでもないかもしれません。

このあたりは、「判断」の問題ですね。

 

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◆関門を越える打ち手を考えよう!
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●行動関門を越えてもらうための打ち手を考えよう!

「高い」「遠い」は仮に諦めるとしましょう。すると、残るは……

・きっかけがない :26人
・行く相手がいない: 8人

という方です。
●きっかけがないなら、きっかけを提供しよう!

・踏ん切りがつかないでいるだけで、きっかけがあれば行きたいと思
 っています。
・見に行くきっかけが無い。

という方が、26人、結構いらっしゃいます。

先ほどの「高い、遠い」という方を除くと、この行動関門の最大の課
題です。興味関門通過者232人から見ても、1割以上を占める、結
構大きな存在です。
この「きっかけがない」という回答については、実は私はあんまり予
想していませんでした。

「観たければ観るに違いない」

というのが正しいのかもしれませんが、お客様のロジックとしては、
そこに

「踏ん切り」

というプラスアルファが必要なのですね。やはり聞いてみないとわか
らないものです。

ここについては、

「背中を押してくれる何か」

が必要になります。

果たしてそれが何なのかは、やはり顧客の声に耳を傾けてみます。
例えばこんな声がありました。
・興味はあるが、いつでも観れると思っていると、ついつい行動に移
 っていかない。期間限定公開の映画に時間を割いてしまう。 
すると、例えばZEDの根本は変えないにしても、3ヶ月に1回くら
いは、少し演目を入れ替える、みたいな策は有効かもしれません。
また、こんな声もありました。
・価格が高価なので何かの記念日にと考えていた。いつかは見たい思
 っているが、きっかけがない。
・価格設定が高く、気軽に見に行けない。それなりの理由(記念日な
 ど)が無い。 
「記念日」は確かに良い「きっかけ」になりそうです。

例えば「結婚記念日」「誕生日」の前後1週間以内については、特別
プレゼント(例えばTDRのパスポートなど)を差しあげる、などの
策が考えられますね。

 

●行く相手がいなければ、行く相手を提供しよう!

次が、

・行く相手がいない: 8人

です。

これも、言われればごもっともなご意見です。
・一緒に行く相手がいないため。一人で行くのは気が引けるので
・いってみたいとおもいつつも、ひとりでいくわけにもいかず、きっ
 かけがなかった。

などの声です。
もうこれは、決まりですよね。

プロ野球の日本ハムの「婚活シート」ではありませんが、「グループ
交際シート」みたいなものを提供すればいいですよね。結婚情報サー
ビス会社などと組んでも面白いかもしれません。

これなら、興味がある方には「高い、遠い」というバリアを越える
「価値」になるかもしれませんよね。
これらが、行動関門を越える打ち手になります。

ということで、行動関門の分析は終了です!

 

●認知関門、興味関門は恐らく問題無し

行動関門の上にあるのは認知関門、興味関門ですが、どちらの関門も
それほど問題が無さそうです。

モレ率がそれほど高くないことと、上の関門の打ち手は、お金がかか
るからです。

例えば認知関門を越えるための打ち手の典型はTVCMですが、億単
位の投資になるでしょう。その投資対効果は難しいところかと思いま
す。
ただ、世代によっては問題がある世代もあります。

40代男性、50代男性については、認知関門・興味関門で止まって
いる方が非常に多いのです。60代男性については、サンプル数が少
ないために参考資料でしかありませんが、8名中6名がご存じありま
せんでした。

すると、ここについては改善の余地があるかもしれません。ターゲッ
トを絞って認知を改善するのは、投資対効果が良いかもしれません。

舞浜戦場で、シニアの方に、TDRにいらっしゃるついでにシルク・
ドゥ・ソレイユにいらしていただく手はあるかもしれません。
これで、マインドフロー全関門の分析が終了しました!

 

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◆定量と定性のやりとりをしながら、打ち手を考えよう
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●定量と定性のやりとりをしながら、関門を越える打ち手を考えよう

このように、マインドフローの各関門を越えていく際も、定量と定性
のやりとりをしながら考えて行くことになります。

行動関門においても、

「きっかけが無いのなら、きっかけを提供してあげる」

ことが必要になります。

 

●お客様が出した「問題」に、売り手が「答え」を出す!

お客様だって、背中を押して欲しいんですよ。「来たら? ほら、こ
れが来る言い訳なんですよ」と言って欲しいんだな、というウラの理
由を読んでいくわけです。

これは、適当に読んでいるわけではなく、定量的に結果に基づき、し
かも定性的な理由を読んだ上での「読み」です。

ですから、「こうじゃないかな?」と適当にアイディアを出すよりは
その「確度」が全く違うであろうことはおわかりいただけるかと思い
ます。

これが、「課題解決型のアイディア」なんですよね。

マーケティングにおいて必要なのは、「突飛なアイディア」ではあり
ません。「成果が出せるアイディア」です。

そのためには、「課題」を解決する必要があります。

マインドフローのような体系的かつ実戦的ツールに沿ってお客様に意
見を聞くと、ここまで考えられるのです。

お客様に直接答えを聞いても、わからないかもしれません。「何が売
れるんですか」と聞いて、教えていただけるのなら苦労はしません。

「どう解決するか」

は売り手の腕の見せ所です。お客様に答えを聞いても教えくれないこ
との方が多いです。

でも、そもそも

「何が問題なのか」

は聞いてみないとわかりませんよね。

「答え」(=お客様への提案)は売り手が考えます。でも「問題」は
お客様に出していただくんですよ。そのためにお客様に聞くんです。
しかも、マインドフローのための質問は

・選択質問2問
 ・知ってるか・観たことあるか
 ・観たことあれば、勧めるか・勧めないか

・自由回答3問
 ・知っているのになぜ行かないのか
 ・シルクに行かなかったら何をするか
 ・なぜ勧める・勧めないのか

の、たった5問です。
我田引水ですが、いかにマインドフローが実戦的なツールか、よくわ
かりますよね。

・お客様の課題をヒアリングして
・その打ち手を関門別に考える

という、当たり前のことが、いかに奥が深いか、ということです。
マインドフローも、BASiCS同様、シンプルですが非常に奥の深
いツールです。

来年前半に、マインドフロー1日集中セミナーみたいなものをやろう
と考えています。

どんなことをやってほしいか、リクエストがあればぜひ!

 

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◆今日のまとめ
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●マインドフローの関門を越えるには、お客様の声の中から「問題」
 を探し、その「答え」を売り手が提案しよう!

 

 

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━特別編Vol.105 2010/12/16
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●独自資源に支えられた強みは競合にマネされない
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◆シルクのAsset
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●シルク・ドゥ・ソレイユのAsset:独自資源

ここまで、シルク・ドゥ・ソレイユの

・戦場・競合、強み・差別化、顧客の組み合わせ
・マインドフロー

を見てきました。
BASiCSで、まだやっていないのが

「独自資源」

です。

今回は、独自資源に焦点をあて、BASiCSを完成させましょう。

 

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◆独自資源を考えるには、強みを見よう!
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●シルク・ドゥ・ソレイユの強みは?

独自資源は、「強み」を競合がマネできない理由ですから、「独自資
源」を確認するためには、まず「強み」を確認しましょう。
1位:話題性・観ておきたかった 31%
2位:勧められた・誘われた   18%
3位:芸術・演技・感動     16%
この強みが独自資源に支えられていれば、それは「競合にマネできな
い強み」となります。そうでなければ、カンタンにマネされてしまう
ということですね。

 

●「話題性」を作り出す能力

まずは、「話題性」から見ていきましょう。

話題性を作り出す能力、というのがここでの独自資源となります。

そこにおける必要条件は、当然「面白い出し物」という独自資源とな
るのですが、それは、後で見ていきましょう。

「面白い出し物」があったとしても、必ずしも「話題性」を作り出せ
るとは限りません。

恐らくは、「パートナーシップ」でしょう。

シルク・ドゥ・ソレイユの日本でのパートナーの1つが、フジテレビ
です。

シルク・ドゥ・ソレイユの「話題性づくり」のうまさの要因の1つが
フジテレビなのかもしれません。

「シルクのパートナー戦略のきっかけを作り、1992年に初のパー
トナーとなったのは、ツアーショーで今も提携しているフジテレビジ
ョン(当時)」とのことです(日経ビジネス2008-10-20 P.41)。

その意味では、「パートナー」というやり方を考え、適切なパートナ
ーを選びだしたことと、そのパートナーと関係を保てている、という
ことが独自資源となるのでしょう。

別に全てを自社でやる必要はなく、餅は餅屋に任せるという割り切り
ということですね。
ドラリオンなどのツアーショーを開催する度に、大規模なCM・販促
が行われますね。ただ、ZEDについてはあまり広告を見ない、とい
うのは気になるところです。ZEDのような常設ショーで、どう話題
を作り出すか、というのは1つの課題かもしれません。

 

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◆シルクの独自資源、「感動創出能力」
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●「感動」を作り出す能力

次は、3位の「感動」です。

「話題性」と「感動」があいまって、恐らくは2位の「勧められた・
誘われた」という強みになっているのでしょう。

順位は3位ですが、感動がなければ「話題性」も無いでしょうから、
「感動」が全ての強みのベースとなっているでしょう。

先ほどの「パートナーシップ」ということで言えば、東京ディズニー
リゾートのZEDの建物もオリエンタルランドとの共同出資です。そ
のような有力なパートナーと組めるというのも、「感動創出能力」ゆ
えでしょう。

では、「感動」という強みを生み出す「独自資源」は何でしょうか?
「感動」と言っても色々とありますが、マインドフローからわかった
ことは、シルクの感動を因数分解すると……
1)肉体的限界への挑戦 4名

・人間極限の技が見れる。感動する。
・人間の限界とも思えるパフォーマンスの素晴らしさを感じるから
2)肉体的限界への挑戦+ストーリー性 2名

・普通に見ていてもサーカスは驚かされるが、ストーリー性が組み込
 まれていて見ていて飽きがこない
・ストーリー性のある内容と人間業とはおもえないパフォーマンスが
 素晴らしいから。
ということでした。

では、これらの「感動」がどのように創出されるのか、その独自資源
を見ていきましょう。

 

●独自資源としての「パフォーマー発掘能力」

「肉体的限界への挑戦」で言えば、そのような「パフォーマー」を採
用・育成する能力が独自資源となるでしょう。

事実、「舞台で活躍するパフォーマーも、一流アスリートを世界各国
からスカウトする。約20人の専任のスカウトチームが、オリンピッ
クなどの国際イベントで人材を発掘するため、世界中を飛び回ってい
る」そうです(日経ビジネス2008-10-20 P.43)。
このような「人材発掘能力」があるから、「人間極限の技」とご覧に
なった方が言うようなパフォーマンスができるわけですね。オリンピ
ックアスリートを採用しているというのは驚きです。

 

●自前の工房

肉体的限界への挑戦、というパフォーマンスはパフォーマーが行うと
して、そのための大道具・小道具なども重要ですよね。あの、目をひ
くこだわり衣装などはどうしているかと言うと……

「演者の衣装、靴、カツラ、化粧はすべてカナダ・モントリオールに
ある自前の工房で製作。そのための専門職人を、400人以上社員と
して抱えている」(同上)とのことです。

そこまでしているからこそ、徹底的にこだわった舞台が作れるのでし
ょう。

 

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◆物語構築力と企業統治
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●「感動する」物語は、誰が判断するのか?

では……「感動」の中核である、「ストーリー性」については、どう
でしょうか?
ここで、シルク・ドゥ・ソレイユの企業統治を見てみましょう。

シルクの創業者であるギー・ラリベルテ氏が未だに株式の95%を保
有しており、基本的にはワンマンオーナー会社だと言えます。

要は、彼がウンと言えばそれでいい、ということですね。日本人の感
覚には違和感があるかもしれませんが、法的な意味での会社の持ち主
は「株主」です。社長であろうと、取締役の解任ができる株主には逆
らえません。ですから当然私の会社も、私が100%株主になってい
ます。そうでなければいわゆる「雇われ社長」になります。
ショーの決定・判断をするのは、創業メンバーのラリベルテ氏とジル
・サンクロワ氏の2人。「私とギーの2人で、どんな作品が良いかを
検討し、誰がディレクターなら作品の世界を再現してくれるかを判断
する。そこから2~3年かけてショーを作り上げていく」とサンクロ
ワ氏(日経ビジネス2010/10/20 P.43)は言います。

そして「企業の取締役会というものがなく、大きな意思決定は、創業
者のラリベルテ氏とラマー社長に委ねられている」(同上 P.44)の
です。
この企業統治は、1つのポイントだと言えます。

一握りの「天才」に、その決定を任せているわけです。

意思決定者が多いほど、商品・サービスの「角」は取れていきます。
残念ながら、「天才」は世の中にはそれほどいません。

大企業になると、天才的な開発者が開発した「とがっている」「エッ
ジの効いた」商品が、「普通の人」である上司がどんどん角を削って
いき、世に出るときには「丸くなった」商品となっている、というこ
とはよくあることです。

これを防いでいるのでしょう。

いわゆる「良い独裁」というものですね。「独裁」という制度が悪い
のではなく、良い独裁かどうかは「独裁者」によります。

これは、創業者のギー・ラリベルテ氏の能力が時代と合っている、と
いう前提において、シルクの強み・独自資源と一貫性のある企業統治
と言えます。逆に、ラリベルテ氏の目が曇ってきたときにどうするか
というのは大きな課題になるでしょう。天才やカリスマが晩節を汚し
た例というのも多くありますから。

その意味で、シルク・ドゥ・ソレイユの強みと企業統治にも一貫性が
あると言えますね。

スティーブ・ジョブス氏に率いられるアップルと同じような印象を私
は受けます。

企業統治・ガバナンスも、独立して議論できるものではなく、他の要
素との「一貫性」が重要なんです。
ちなみに、創業者のラリベルテ氏の経歴は、シルクのHPによると…
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青年時代からサーカス団設立の構想を持ち、自らもパフォーマーとし
て大道芸をスタート。シルク・ドゥ・ソレイユの結成は、1984年にジ
ャック・カルティエによるカナダ上陸450周年祝賀イベントがケベッ
クで開催された際、彼が事務局に提案したことにより形となった。

多彩な才能に恵まれ、早々にショービジネスの世界に進出。独創性と
大胆さでプロジェクトを支援するよう金融機関に働きかけ、世界的な
パートナー・ネットワークを構築。生まれたばかりのカンパニーを世
界中へひろめていった。
http://www.zed.co.jp/about_cds/intro.php

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となっています。起業家的アーティスト、とでも呼ぶべき、マーケタ
ーとしての側面も持っていたことがわかります。

 

●独自資源に支えられた強みはマネされない!

ここまで見てくると、シルクはかなり特異な独自資源を持っていると
言えそうです。

シルクを誰も追随してきませんが、それはやはりこのような独自資源
をマネできない(だからこそ「独自」資源)ということでしょうね。

独自資源に支えられた強みがあれば、それは競合にマネできない、と
いう当たり前のことを実証してくれていますね。

 

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◆完成! シルクの戦略BASiCS
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●シルク・ドゥ・ソレイユの戦略BASiCS

これで、ようやく(10回かけて)シルクの戦略BASiCSの全貌
がわかりました。

戦場や強みをざっくりまとめると以下のようになるでしょう。
B:戦場・競合 デートや記念日のおでかけの観劇・子供の教育

A:独自資源  話題性・感動創出能力(採用・育成、企業統治)

S:話題性・肉体とストーリー性による感動

C:デートするカップルや夫婦、お出かけする家族と子供

S:今話題の、映画や演劇にはない肉体パフォーマンスによる感動!
メッセージについては、今のシルクのメッセージというよりは、
BASiCSから導き出されるものにしています。実際のシルクのメ
ッセージは「芸術! 感動の嵐!」と言ったものですので、誤解=見
た後の不満を呼ぶ可能性があります(アンケートにもその傾向が若干
ですが見られます)。
こうやってみると、「当たり前じゃん」と思われるでしょうが、ここ
に来るまでに、10号分の思考プロセスを経て、検証を重ねてきてい
ることがわかります。

戦略BASiCSを考える、というのは、このような思考サイクル・
プロセスを経るわけです。

すると、検証に検証を重ねてくるので、違和感のない「当たり前だ」
と言われるBASiCSができます。

そしてそれが完成度の高いBASiCSなわけです。
シルクシリーズ、これにて終了、お疲れ様でした!
このような思考プロセスを体験してみたい、という方は、来年2月に
実施予定の「戦略BASiCS2日間集中セミナー」へどうぞ! 

このような思考プロセスを強制的に回していただきます。シルクが
「肉体的限界への挑戦」なら、こちらは「頭脳的限界への挑戦」と言
ったところでしょうか。だから、「その後、16時間寝続けました」
という、「アタマの筋肉痛」をご体験いただけます。

 

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◆今日のまとめ
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●検証に検証を重ね、思考のグルグル回しをして「当たり前じゃん」
 と言われるBASiCSを完成させよう!