2009-02 ラーメン店を斬る!

 

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━戦略編Vol.093 2009/02/19
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●チェーン店も、3つの差別化軸で切れる! 手軽軸編
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◆ラーメン390円、日高屋大人気!
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●ラーメン390円、日高屋大人気!

駅前の390円ラーメン店、日高屋の「ハイデイ日高」が好調!
———————–< 記事要約 >———————–

○消費者の節約志向が強まる中、ラーメン店「日高屋」を首都圏で展
 開するハイデイ日高が好調だ。生ビール、ギョーザ、ラーメンで、
 千円以内で済む低価格が受け、既存店売上高は2009年1月まで
 7カ月連続で前年実績を上回った。駅から近い好立地に、安くてそ
 こそこの味を提供する「中華居酒屋」を出すというビジネスモデル
 を確立。

2009/02/16, 日経MJ(流通新聞), 1ページ

———————–< 記事要約 >———————–
確かに安いですよね。

ハイデイ日高の現時点での業績を見てみると……

               売上高    営業利益(百万円)
2009年2月期第Q3  14,813   1,389
2008年2月期第Q3  13,176   1,335

http://www.hiday.co.jp/ir/index7.html

と、第3四半期(Q3)で比べて、増収増益ですね。

今回はこの秘密を考えていきましょう。

 

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◆チェーン店の手軽軸戦略
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●復習:3つの差別化軸

一見無限にあるように見える差別化戦略も、大きく分けると3つにな
ります。

1)手軽軸:早い、安い、便利
2)商品軸:商品・サービスが良い
3)密着軸:個別具体的ニーズに応える

ですね。

 

●チェーン店の差別化戦略

いわゆるチェーン店は、大きく見れば手軽軸になります。しかし、そ
のチェーン店の中でも、手軽軸、商品軸、密着軸の3つの戦略があり
えます。
ドトールやスターバックスは、大きく見れば、Afternoon
Tea などに対して、手軽軸です。しかし、その中でも、手軽軸のド
トールと、密着軸(+商品軸)のスターバックス、となりますね。

ハンバーガーチェーンも、他の洋食店など(競合の定義の詳細はここ
では避けます)と比べれば手軽軸です。しかし、そのハンバーガーの
中でも、手軽軸を志向するマクドナルドと、商品軸寄りのモス・ロッ
テリア、という構造になっていますね。
では、日高屋の差別化戦略を考えていきましょう。

 

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◆日高屋の出店戦略:好立地・長時間営業
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●好立地、長時間営業の出店戦略

まずはチェーン店ですから、その立地・出店に戦略が現れます。

———————–< 記事要約 >———————–

○「駅から出てすぐ見えるか、多少離れていても人通りが多い道路に
 面していることが出店場所の条件」と神田正社長は明言。ラーメン
 専門店の幸楽苑や、ちゃんぽん専門店のリンガーハットはロードサ
 イドや商業施設への出店が多いが、日高屋は全約200店の約9割
 が“駅前一等地”にある。
 
 
○家賃は高い。標準的な店舗面積100平方mの店なら、月額家賃は
 150~200万円。そのために人通りの多い一等地に店を出し、
 長時間営業(大半は午前11時―午前4時)で売上を確保する。
○「一店舗当たり一日の平均来店客数400人はほしい」と神田社長
 は話す。「駅前・長時間営業」と「サイドメニューの増加」で居酒
 屋需要も取り込み、アルコールが売上に占める割合は14%、客単
 価もリンガーハットより110円高い710円だ。
○「昨年から不況の影響もあって駅前から撤退する外食店が増えてお
 り、出店には追い風」(店舗開発部)。

2009/02/16, 日経MJ(流通新聞), 1ページ
———————–< 記事要約 >———————–
まとめると、

○駅前の好立地で客数を狙う

○高額な固定費(家賃)をカバーするために長時間営業

○客単価は、商品単価ではなく「頻度」「点数」を重視
私のオフィスは千代田区の皇居の近くですが、そこの地下鉄の駅前に
日高屋があります。駅近くには例によってモス、タリーズ、スタバ、
すき家などのファストフード店がありますが、日高屋は駅の出口から
歩いて15秒のところです。ちなみにいつもにぎわっており夜なんか
は混んでいて入れないこともしばしばです。
このモデル……どこかで見たことありませんか? そう! マクドナ
ルドとそっくりなんです。
○駅前の好立地で客数を狙う

○長時間営業:朝マック、夜マック

○「頻度」「点数」を重視:100円メニュー

と、共通点が多いのですね。
典型的な手軽軸の戦略であることがよくわかります。

売り物はハンバーガーとラーメンで全く違えど、利益構造・お客様の
価値などを考えると。似たようなビジネス展開になるのです。

 

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◆日高屋の商品戦略:早く、安く、十分
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●早く、安く、「十分」な品質

では、日高屋のラーメンはおいしいのでしょうか……?

———————–< 記事要約 >———————–

○「客が10人いたら、うち6人がラーメンやギョーザをおいしい
 と思ってもらえればいい」と神田社長はいう。低価格にはこだわる
 が、味に対しては「そこそこ」のおいしさを提供できればいいと神
 田社長は話す。

2009/02/16, 日経MJ(流通新聞), 1ページ

———————–< 記事要約 >———————–

私の個人的な感想は、「この金額でこれなら十分」というレベル。

私のオフィスの近くの日高屋のすぐ近くには、行列ができる有名ラー
メン店があります。その店は確かにおいしいのですが、ラーメンだけ
で約千円です。

日高屋ならラーメン、餃子、チャーハンが食べられる値段です(メタ
ボとかそういう話はどっちもどっちです)。ラーメンだけで比べれば
半額以下。

餃子も、普通のラーメン店でも300~400円以上はしますよね。

日高屋は190円ですが、この金額でこのおいしさなら十分です。

 

まとめると、

・早い
・安い
・十分においしい(この価格にしては)

という、これも典型的な手軽軸ですね。

 

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◆ハードな独自資源:日高屋の投資
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●投資は、「早く、うまく」

そして、何に投資しているかと言うと……

———————–< 記事要約 >———————–

○同社は厨房機器の改良に余念がない。野菜のカットやスープの製造
 は工場ですませ、店舗での作業負担を減らすなどして低コスト運営
 を徹底。
○午後10時以降の来店客の8割がギョーザと生ビールを注文し、最
 後にラーメンを食べて帰る。現在、ギョーザを注文してから提供す
 るまでに4分半。これを短縮するために、2008年10月に新型
 焼き機をメーカーと共同開発。短時間でパリッとギョーザが焼き上
 がる。従業員の作業負担も軽減でき、油や水を注入するタイミング
 も自動なので「店舗作業も効率化できるし、従業員による品質のブ
 レもなくなる」(同社)。

2009/02/16, 日経MJ(流通新聞), 1ページ

———————–< 記事要約 >———————–
つまり、セントラルキッチンを徹底し、さらに、投資の方向は、「う
まく」よりも

「早く」
「楽に」
「品質のブレなく」

という自動化ですね。

「味の改良」もあるにしても、手軽軸を強化する投資です。

このような投資が、「ハードな資源」としての「独自資源」となり、
「早い」「十分においしい」という強み・差別化の源泉となります。

 

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◆徹底した手軽軸
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●徹底的な手軽軸での一貫性

日高屋は、つまり、手軽軸の差別化戦略を徹底的に、愚直にやってい
る「だけ」ということです。そして、その「だけ」に「集中」するこ
とが難しいのです。

色々誘惑がありますから……売れたま!にも、「広告を出したいので
すが……」という依頼は結構いただきますが、現段階では全部お断り
しています。

その理由は、軸がブレるからです。広告で稼ぐことは立派なビジネス
モデルですが、私の商品軸・密着軸戦略とは相性が悪いのです。

でも、「広告を出しませんか?」と言われると、若干気持ちが揺らぎ
ますが、そのたびに自分に「戦略BASiCSの提唱者の軸がブレて
どうする!」と渇を入れます……そのような誘惑に抗い、一貫性を保
たないといけないのです。

 

●その結果、独自資源が蓄積された
日高屋のこのような「一貫性」を保った努力が、

「3.3平方m当たり月額5万円の家賃で利益が出る仕組みをつくる
のに約三十年かかった」(2009/02/16, 日経MJ 1ページ)

と神田社長がおっしゃるノウハウの結集、つまり、日高屋の「独自資
源」として結実したのですね。

 

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◆日高屋の利益構造
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●回転率重視のモデル

3Q末の店舗数:218店(3Q決算短信)

ですので、決算数字から、1店あたりの月間売上・営業利益を割り算
しますと、

月間売上高: 755.0万円
月間営業利益: 70.8万円

となります。
日高屋の客単価が710円とのことなので、1ヶ月30日とすると、

1日客数:354人

となります。
この数字であれば、変動費のFL費率(Food & Labor、食材・人件費
率)をざっくり6割の500万円とすると、家賃が200万円でも利
益が出るビジネスモデルであり、ほぼその通りになっている、という
ことですね。
社長が言うように、1日400人客数があれば、

月間売上高:852万円

となります。

現在はそこを目指しているのでしょう。

 

●手軽軸が追求できるのは、「毎日食べられる」もの

今のところ手軽軸で成功しているフードチェーンは

・吉野家(最近苦戦中)
・ココ壱番
・日高屋
・マクドナルド
・いくつかの立ち食いそばチェーン
あたりがあがってくるでしょう。マックを除きカレー、ラーメン、牛
丼、うどん・そばと、普通のメニューばかりです。

逆に、天丼、カツ丼などの毎日食べないものは手軽軸展開は厳しいと
いう状況です(個別に見れば、成功している天丼屋はありますが、手
軽軸でチェーン展開はしていないと思われます)。

これは好みによりますが、カレー、牛丼、そば、だったら毎日食べら
れても、天丼・カツ丼は、毎日はちょっと……という方が多いのでは
無いでしょうか? 私もカツ丼は好きですが、連続2回までですね。
カレーは3食カレーでも大丈夫ですけど。
つまり……購買「頻度」を高くできる食べ物でないと、手軽軸が維持
できません。商品単価を安く設定している分、客数・回数でカバーす
ることになります。
差別化戦略は、店の勝手な都合ではなく、このような顧客側の事情と
ビジネスモデルが絡み、その結果、

・手軽軸
・商品軸
・密着軸

に集約するわけです。

 

さて、今回は、ラーメンチェーンという手軽軸の中での「手軽軸」の
日高屋を見てきました。
次は、ラーメンチェーンという手軽軸の中で、別の差別化軸を志向し
て、同様に成功している会社を見ていきましょう。

次回は……「餃子の王将」です。「餃子の王将」の決算も好調のよう
です。その差別化戦略は……?

 

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◆今日のまとめ
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●ラーメンチェーンでも3つの差別化軸で切れる。どこまで徹底する
 かが成功のカギ

 

 

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━戦略編Vol.094 2009/02/23
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●チェーン店も、3つの差別化軸で切れる! 密着軸編
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◆前回の復習
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●ラーメン390円、手軽軸の日高屋

2回に分けて、ラーメンチェーン店の差別化戦略を斬る! 編、前回
は390円ラーメンで有名な日高屋をご紹介しました。
●日高屋の戦略

○駅前の好立地で客数を狙う
○高額な固定費(家賃)をカバーするために長時間営業
○客単価は、商品単価ではなく「頻度」「点数」を重視
戦略BASiCSでは、

○戦場・競合
・昼:低価格ファストフード
・夜:居酒屋

○独自資源
・セントラルキッチン、自動調理器具への投資
・スピーディな提供ノウハウ

○強み
・駅から近い
・安い:390円
(味はまあまあ)

となっています。

 

●復習:3つの差別化軸

一見無限にあるように見える差別化戦略も、大きく分けると3つにな
ります。

1)手軽軸:早い、安い、便利
2)商品軸:商品・サービスが良い
3)密着軸:個別具体的ニーズに応える

ですね。

日高屋は典型的な手軽軸の戦略です。

では、それと違うチェーン店の戦略は……?

 

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◆餃子の王将
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●日高屋のライバル、餃子の王将も業績好調

日高屋も一目置くラーメンチェーンが、「餃子の王将」(王将フード
サービス)です。
———————–< 記事要約 >———————–

○「餃子の王将」を展開する王将フードサービスは関西を地盤にFC
 店を合わせて523店、関東地域には93店(1月末)を展開。

○2009年3月期の連結業績は売上高は6%増、経常利益が4%増
 と過去最高を見込む。直営既存店の売上高は今年1月まで18カ月
 連続で前年を上回る。
2008/11/21, 日経MJ(流通新聞), 23ページ
2009/02/16, 日経MJ(流通新聞), 1ページ
———————–< 記事要約 >———————–
餃子の王将(王将フードサービス 連結)の業績も見てみましょう。

         売上高     営業利益
2009 Q3  40,741  4,652 (百万円)
2008 Q3  37,274  4,061 (百万円)
前号でとりあげた日高屋の業績と比べてみましょう。

         売上高     営業利益(百万円)
2009 Q3  14,813  1,389
2008 Q3  13,176  1,335
直営を基本とする日高屋と、508店中フランチャイズ店が179店
(2008年3月期)ある王将とは直接比較できませんが、売上・利
益率・売上と利益の伸び率などにおいて日高屋を大きく上回っていま
す。

 

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◆餃子の王将の差別化戦略:密着軸のメニュー戦略
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●店内調理・店舗の権限が大きい餃子の王将
日高屋がセントラルキッチンを徹底し、店舗調理を減らそうとするの
に対し、餃子の王将は逆を行きます。

———————–< 記事要約 >———————–

○同社は4カ所のセントラルキッチンで看板商品のギョーザの餡など
 を製造するが、大半は店内調理。店舗運営のマニュアルもない。本
 社が介入するのは基本的に不採算店舗だけという。
○店舗の自律性はメニュー構成に表れる。20種ほどの共通メニュー
 を核に、「チゲラーメン」や「肉ビーフン」「四川餃子鍋セット」
 などの店舗限定メニューを組み合わせる。裁量権は店長にある。立
 地や客層を分析、原価率や利益率を計算しながら平均客単価が
 850円程度になるよう、メニュー構成を完成させる。

2008/11/21, 日経MJ(流通新聞), 23ページ

———————–< 記事要約 >———————–
と、立地によってメニューを変え、その権限は店長が持ちます。

これは、地域密着、という意味での「密着軸戦略」の典型的なパター
ンの1つです。

密着軸戦略においては、お客様に一番近い現場が権限を持つ、という
組織構造も密着軸のセオリー通りですね。

 

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◆密着軸戦略を支える投資:店員教育
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●機械化よりも「店員の教育」に投資する

個展経営ならともかく、チェーン店での密着軸戦略は、悪い意味での
店員のレベルの「バラツキ」が起きてしまいます。

手軽軸の日高屋はそれを設備投資でカバーしようとしているとも言え
ますが、密着軸の王将は、人の底上げを重視します。
———————–< 記事要約 >———————–

○問題になるのは品質のバラツキだが、同社の解決策の一つに、「中
 国人調理師による指導」がある。同社は2005年に中国・大連市
 に海外1号店を設立。技術指導という形で年間10人ずつ、現地の
 調理師を国内店舗に受け入れてきた。彼らが従業員に繰り返し同じ
 料理を作らせながら、味や香りが安定するよう徹底して指導。
○中国人調理師たちはメニュー開発の力でもある。「安くておいしい
 ものを提供するだけでは顧客は絶対に飽きてくる。常に変化を求め
 て新しいことに挑戦しなければいけない」と大東社長は話す。

2008/11/21, 日経MJ(流通新聞), 23ページ
○日高屋が工場での内製化を徹底するのに対し、王将は店舗での調理
 を重視。看板商品のギョーザ(6個入り、231円、西日本地域は
 210円)の具材だけセントラルキッチンで製造するが、その他の
 皮につつむ作業は店内で行われる。

2009/02/16, 日経MJ(流通新聞), 1ページ
———————–< 記事要約 >———————–
立地に合わせたメニューを店長が選ぶ、というのが王将の強み・差別
化なのですから、調理は当然店内になります。
しかし、チェーン店である以上、品質の悪い方へのバラツキは他店へ
の悪影響があるために許容できません。そのための中国人調理師、と
いう王将の「独自資源」ですね。

この戦略も一貫しています。

 

手軽軸の日高屋:自動化・機械化のハードな資源に投資

密着軸の王将 :人の対応力というソフトな資源に投資

という、これも典型的な差別化軸の独自資源ですね。

 

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◆密着軸戦略を支える投資:顧客との関係作り
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●密着軸は、顧客との関係作りを強化する
密着軸戦略であれば、王将は、顧客との関係を深める施策をうってい
るはずですが……
———————–< 記事要約 >———————–

○同社はすでに会員組織「ぎょうざ倶楽部」を運営。飲食代金500
 円ごとに押すスタンプを集めれば、会員として利用代金の5%割引
 サービスが受けられる(一年間有効)。今年の会員数は前年比1割
 増の20万人を目指す。

2008/11/21, 日経MJ(流通新聞), 23ページ

———————–< 記事要約 >———————–
この辺もやはり、セオリー通りの展開です……。リピートを大事にす
る密着軸らしい販促です(このセリフが誰のセリフか、わかったあな
たはすごいです)。

 

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◆密着軸戦略での一貫性
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●密着軸での美しい一貫性

こうみてくると、日高屋が手軽軸での一貫性が取れているのと同様、
王将も密着軸の一貫性がとれていることがわかります。
王将の差別化戦略をまとめると
○立地に合わせたメニュー展開で差別化

○店内調理。品質のバラツキをおさえるために中国人調理師を雇用

○顧客との関係作りを目指したスタンプサービス

となります。

別に王将が「密着軸だ!」と強引に言いたいわけではなく、成功して
いる会社というのは、この「美しい一貫性」が取れている、というだ
けのことです。

王将フードサービスの社長はどうお考えかと言うと……
———————–< 記事要約 >———————–

○「ひたすら従業員の教育に力をそそぎ、店舗運営を店長に任せてき
 ただけ」と、大東隆行社長は話す。

2008/11/21, 日経MJ(流通新聞), 23ページ

———————–< 記事要約 >———————–
と、明示的に「店長への権限委譲」と「従業員教育」にフォーカスし
ていますね。

「店長への権限委譲」も、お客様に一番近いところに権限委譲をする
という密着軸のセオリー通りです。

「密着軸」という言葉はもちろん、そのような意識も無いのかもしれ
ませんが、行動には一貫性があります。
また、王将フードサービスの2008年度決算短信では、

———————–< 記事要約 >———————–

当社グループは、おかげさまで平成19年7月に出店した「川崎駅東
口店」で500店舗を達成することができました。<中略>

この500店舗すべては、立地・大きさ・レイアウト・定食メニュー
等が一店ずつ異なる多様性をもっております。これは、一店一店が地
域・立地にみ合った最適な販売方法を独自で生み出す事こそが地元に
永く愛される繁盛店であり続け得る条件だと考えているからでありま

———————–< 記事要約 >———————–

と、立地に密着した戦略を志向しています。

社長からのメッセージも、店全体でやっていることも、みんな同じな
んですね。明確な意思がある戦略で一貫性があります。この美しい一
貫性が王将の本当の強みなのだと思います。

 

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◆手軽軸の日高屋と、密着軸の王将
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●まとめて比較:日高屋と王将
では最後に、「まとめ」として、手軽軸の日高屋と、密着軸の王将を
比較してみましょう。
      日高屋        王将

差別化軸  手軽軸        密着軸

戦場       低価格ラーメンチェーン

独自資源  自動化設備      中国人調理師

強み    早い・安い      立地にあったメニュー
      近い         会員組織
店舗    自動化        店長に権限委譲

調理    セントラル      店内調理
      キッチン

価格    ラーメン       王将ラーメン
      390円       450円

      餃子         餃子
      190円       220円

客単価   710円       850円

 

と、それぞれに棲み分けられているのがわかります。両社とも、面白
いように手軽軸・密着軸の戦略をとっているんです。この構造は、低
価格コーヒーチェーンのドトールvsスタバとほとんど同じです。

売り物がコーヒーであろうとラーメンであろうと、差別化の方法は基
本的に変わらないのですね。
一点ひっかかるのは、

 ○日高屋:186店 原則直営店

 ○王将 :508店 フランチャイズ 179店
というところがセオリーとは逆ですね。手軽軸の企業の方が、規模拡
大、店舗拡大を志向します。
ドトールとスタバの場合でも、手軽軸のドトールがフランチャイズを
活用して店舗数拡大を図っています。
となると、日高屋の次の手は、店舗数拡大でしょう。HPでも

「2010年「売上高300億円300店舗」構想」

http://www.hiday.co.jp/man/index.html

というのを明確に打ち出しています。また、日高屋は関東にしか店舗
が無いので、関西に進出すると、王将と真っ向勝負となりますね。

 

と言いつつ、先週また日高屋で食べてしまいました……すごくおいし
いというわけでは無いのですが、飽きの来ない、普通のおいしさなん
ですね。まさに手軽軸です。

このあたりを考えながらラーメンを食べると、一層おいしいかもしれ
ませんね。

 

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◆今日のまとめ
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●チェーン店も3つの差別化軸で切れる。一貫性の徹底が重要なのは
 ラーメン店も同じ