2007-12 iPodを斬る!

 

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━戦略編Vol.044 2007/12/13
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●iPod成功の秘密は、王道マーケティング!
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◆iPodの成功の秘密を戦略BASiCSで斬る! その1
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●ご存じ、iPodは超大人気

最近勢いが衰えつつあるとはいえ、依然大人気のiPod。

今年5月のBCNランキングでも、上位1~4位までを独占。シェア
が4~5割あたりをキープしています。
正直なところ私はアップル社の製品には抵抗があり、iPodを使う前に
は他社のmp3プレーヤーを使っていました。それがたまたま壊れて
しまったのでiPod Nanoにしてみたところ、色々な面でのその圧倒的
な差に驚きました。「これは売れるわけだ」というのがその実感なの
です。

では、その秘密を解き明かしていきましょう!

 

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◆SM(売り文句・メッセージ):「ポケットに1000曲」を
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●iPondのSelling message:ポケットに1000曲

iPodの当初からのコンセプトは、「ポケットに1000曲」です。

非常にわかりやすいメッセージですね。1000曲携帯して外で聴く
ことができれば、携帯用としては申し分ありません。

たくさんの曲を外で聴ける、ということなのですが、100曲でも
5千曲でもなくて、1000曲、というのが絶妙です。

100曲だと、アルバム10枚分で、ちょっと寂しいです。

5千曲はいりません。アルバム500枚分の曲を持っている人はまず
いませんし、持っていても常に全部どこででも聴きたいということで
もないでしょう。

そう考えると、1000曲というのはキリがよくてわかりやすく、か
つ実用上も意味のある数字です。

 

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◆S(強み・差別化):「ポケットに1000曲」のハードな強み
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では、iPodという「モノ」は、「ポケットに1000曲」というメッ
セージをどのように実現しているのでしょうか?

まずはハード面の差別化・強みから見ていきましょう。
●大容量:1000曲聴ける!

iPodは、2001年の初代の発売当初(マックのみに対応)から、
「1000曲」にこだわっています。初代のHDDモデルは5GBも
あれば、3~4分の曲なら1曲5MB程度で、ちょうど1000曲に
なります。

ブレークしたiPod Miniの初代は4GBでした。サイズは小さくして
も、やはり1000曲近くは入ります。当時、フラッシュメモリタイ
プでは小さい製品はありましたが、メモリは多くて512MB。これ
だと100曲ちょっとしか入らず、CD10枚分で寂しいですね。

私のiPod Nanoは8GBですので、全部は入らないのですが、普段聴
く曲については十分入ります。

 

●「携帯」する=小さいほうがいい

「ポケットに1000曲」は、当たり前ですが、「携帯」することが
前提です。

そのために製品として考えられていることが色々あります。

まずは、サイズです。

iPodがブレークした第一波は、iPod Miniでした。2004年に
iPod Miniが出たときは、小さい、薄い、軽い、といのが話題になり
ましたね。

そして、2005年後半のiPod Nano(4GB)、2006年後半の
iPod Nano(8GB)の投入で、大ブレークするわけです。ここでも
ポイントは、サイズです。iPod Miniの1/3と言われる50g以下
で6.9mmというあの衝撃的な薄さ・軽さが「ポケットに1000
曲」の究極の形だったわけです。

 

●長時間駆動

iPod Nanoのバッテリー持ち時間は公称14時間。公称なのですが、
意外に本当で、1日1,2時間聴く程度であれば1週間くらいは充電
しなくてももつような感じがします。

14時間あれば、東京~大阪はもちろん、NYに行く飛行機の中でず
っと聴いていても大丈夫ですね。
ここまでは、容量、サイズ、長時間駆動、と機能的価値、基本的な部
分での差別化がまずはきっちりできていることがわかります。

そもそもの基本機能に圧倒的な強さを持っていたわけです。

「ポケットに1000曲」をハード面でしっかり実行していますね。

 

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◆S(強み・差別化):「ポケットに1000曲」のソフトな強み
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さらに、ソフト的な部分でもすぐれています。
●携帯していても使いやすい「クリックホイール」

iPodの売り文句は「ポケットに1000曲」。1000曲もあったら
曲を検索するのが大変です。曲数が多いことは重要ですが、それがす
ぐに探せることはさらに重要です。聴きたい曲をすぐ聴きたいのに、
曲を探すのにボタンを5回も6回も押さなければいけないというのは
大変なストレスです。だったらいっそ曲数は少ない方がよいです。

ではiPodがどうしているかというと……

iPodの最大と言ってよい特徴は、あの独特のインターフェースです。
持っている人はご存じでしょうし、お持ちでない方もデザインは見た
ことはありますよね?

iPodのデザインはざっくり言うと、

 □ ← スクリーン
 ◎ ← クリックホイール

という感じになっています。

この、下にある「◎」のクリックホイールが特徴です。大変わかりに
くいのですが、◎の外側の円の部分を指でなぞると360°回転し、
曲やアルバムを選びます。その後、◎の真ん中にあるボタンをクリッ
クすると、聴きたい曲が始まります。

全ての操作がiPod Nanoの場合直径約3cmの「◎」の中で完結し、
その他のボタンに触れる必要がありません。

携帯する、ということは、外出中ですから煩雑な操作はできません。
動く指は親指だけ、そして動く範囲は3cmだけ、という究極のシン
プルさです。さらに、スイッチを切る操作もつける操作も1つのボタ
ンを1回押すだけ。

携帯中ですから、ちょっとした合間の数分間でもすぐ聴きたいですよ
ね? ですから、スイッチを入れてから音楽が始まるまでには、プレ
イボタンを2回押すだけで一瞬で音楽が始まります。

 

●携帯していても使いやすい便利さ

さらに、携帯しますから、胸ポケットにいれたり、カバンの中にいれ
ながら聴くこともありますよね? それでも普通に聴けます。

最初からiPodを買われた方は「当たり前じゃん」と思われるかもしれ
ませんが、私は別のmp3プレーヤーから買い替えました。その某社
のプレーヤーは、操作部分が露出しており、胸ポケットにいれておく
と、ポケットの布とプレーヤーの操作部分がふれあって、勝手にボリ
ュームが下がりました。

さらに、その某社のプレーヤーでは、曲を検索するときに、1回ルー
トの画面(一番最初の画面)まで戻って、そこからまたアルバムやア
ーティストを検索する煩雑さ。

さらにさらに、iPodにはプレイリストという、お気に入り曲のリスト
を作る機能がついています。ポケットに1000曲ですが、1000
曲の中でも気分によって聴きたい曲がありますよね?

私は、「バラード(洋楽)」「ポップス(洋楽)」「JPOP」
「インストゥルメンタル」「教育用(英語など)」のようなプレイリ
ストをいれています。その一部が「iPodコーナー」になっているのは
ご存じの通りです。
最近はこの機能がついているプレーヤーが多いようですが、私が前に
使っていたプレーヤーにはブックマークという機能がありました……
が、電池が切れるとブックマークが全てリセットされるというひどさ
で、使い物になりませんでした。

正直なところ、この某社mp3プレーヤーの開発者はこのプレーヤー
を使ってないと思います。自分で使っていたら、こんなの不便で使い
物にならない、と気付くはずですから。恐らくはオフィスの机の上で
使っただけではないでしょうか……もしくは、作り手であるがゆえに
使い勝手が悪いことに気付かなかったのかもしれませんね。確かに、
ポケットに1000曲は入ったのですが(80GBだったので手持ち
の曲全て入りました)「携帯性」については厳しいものでした。当然
売れていません。

iPodはこのあたりが、本当によく考えられています。

 

●携帯する=人に見せる

携帯する、ということは、人に見られる、ということでもあります。
人に見られるからには、カッコイイ方がいいですよね?

というころで、デザインが非常に重要になります。家だけで聴くコン
ポであれば、自分が気に入ればいい話ですが、みんなに見られるもの
なら、みんなが気に入るものがいいですよね。

iPodのデザイン性の高さについてはご存じの通りです。
ところで、iPod Nanoのパッケージもデザインは出色です。見たとき
はびっくりしました。ノリとしては化粧品に近いパッケージです。カ
ッコいいプラスチックケースにちょこんとiPodがのっていて、日本メ
ーカーの紙箱に入っていたアレに慣れていた私には衝撃的でした。

説明書が不親切、などの問題はあるのですが、デザインへのこだわり
はよくわかりました。説明書については、「それは製品をみればわか
る」という自信の表れかもしれません。

 

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◆iPodは王道をいった商品
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●iPodは、携帯用mp3プレーヤーとして当たり前のことをした
まとめると、iPodという「モノ」が成功した理由は、
機能・ハード面

1)1000曲入る携帯プレーヤーとしては十分なメモリ容量

2)携帯に適した軽さ・大きさ

3)せっかく1000曲入るから長時間聴けるバッテリー
情緒・ソフト面

4)使いやすいインターフェースで1000曲を探しやすく

5)携帯して人に見せても恥ずかしくないデザイン
ということになります。全く奇をてらわず、「ポケットに1000
曲」という売り文句の約束・期待に忠実に応える製品を実現した、
ということになります。
BASiCSで言う、

Strength:強み・差別化ポイント(上記5つ)

Selling message:売り文句(ポケットに1000曲)

が見事に一貫していることがわかります。

iPodの成功は、青息吐息だったアップルが放った奇跡のように見えま
すが、実は、携帯用プレーヤーとして、当たり前のことを当たり前に
やった「だけ」にすぎない、ということがわかりますね。

さらに言うと、「ポケットに1000曲」という売り文句(コンセプ
ト)を考えたこと自体がすごいですし、忠実にそれを実現したことも
すごいと思います。あれだけ操作性がよいインターフェースを考えだ
した執念がすごいのです。あれを製品として提示されると、「なるほ
どね」くらいですが、あれを考えつくのは大変だったと思います……
成功にはやはり王道なんですね。
今号は、今発売中の週刊東洋経済12月8日号をものすごく参考にし
ています。事実の詳細はこちらに詳しいので、ぜひ買ってみてくださ
いね!

 

 

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━戦略編Vol.045 2007/12/17
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●アップルの「使いやすさ」への執念を見習おう!
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◆iPodの成功の秘密を戦略BASiCSで斬る! その2
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●ご存じ、iPodは超大人気
その1の復習
「ポケットに1000曲」という極めてわかりやすい「Selling
message」のもと、ハードもソフトも一貫させたこと。
機能・ハード面

1)1000曲入る携帯プレーヤーとしては十分なメモリ容量
2)携帯に適した軽さ・大きさ
3)せっかく1000曲入るから長時間聴けるバッテリー

情緒・ソフト面

4)使いやすいインターフェースで1000曲を探しやすく
5)携帯して人に見せても恥ずかしくないデザイン
ということになります。全く奇をてらわず、「ポケットに1000
曲」という売り文句の約束・期待に忠実に応える製品を実現した、
ということになります。

 

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◆では、これはアップルにしかできなかったのか?
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●このような「モノ」であれば、誰にでもできたはずだが……

このような、小さい優れモノを作る技術は、日本のメーカーのお家芸
だったはず……

それが、なぜアップルにはできて、日本のメーカーを含む、他の会社
にはできなかったのでしょうか?
モノは、あくまで「モノ」ですから、「モノ」自体はマネすることが
できます。問題は、「どのようにして」そのモノ作りが可能になった
のか、ということです。
実は、経営戦略という広い意味においては、モノそのものより、なぜ
その「モノ」ができるのか、ということの方が重要なのです。

それが、戦略BASiCSでいうところの「A」:独自資源です。

前号でとりあげたのは、iPodという「モノ」が、「携帯する」という
ニーズによくあっている、という(ある意味当たり前の)ことを分析
しました。しかsに、さらに重要なことは、アップルにはiPodが作れ
て、他のメーカーには同じようなものが作れなかったのはなぜか、と
いうことの方が経営的には重要なのです。
だから、
Strength:差別化された製品

の背後にある、

Asset(独自資源):差別化を可能にする資源

を別々に考えるべきだ、というのが戦略BASiCSの一つの大きな
主張です(もう一つの大きな主張は「メッセージまで考えよう」)。

3C:Company, Customer, Competitor
5F:供給者、顧客、参入障壁、代替品、自業種内競合

などの人口に膾炙したフレームワークの弱みがココにあります。3C
は、このような考え方を内包していないのです。

 

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◆Asset:アップルの独自資源は?
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●アップルの独自資源は何か?

では、アップルの独自資源はなんでしょうか? ひょっとして、あの
薄さのあれは、アップルの独自技術でしかできないものなのでしょう
か……? つまり、「作り方」がうまいのでしょうか?
独自資源には、ハードな資源とソフトな資源があります。

もし、アップルにしかあのサイズのものが製造できないのであれば、
アップルはハードな独自資源を持っていることになります。
しかし、サイズだけで言えばソニーの商品も小さいです。Eシリーズ
なんかはまるでアクセサリーのようで、小さくすることが得意なソニ
ーの面目躍如です。
さらに、アップルは自分で作っていません。製造は台湾に本社をおく
ホンハイなどのEMS(OEM機器の製造請負メーカー)です。です
から、極端な話、だれでもこのようなEMSに発注して、あのiPodを
「製造」することはできるのです。

となると、アップルが持っているのは、ハードな独自資源ではなさそ
うだという見当がつきます。ちなみに、ホンハイは任天堂のWiiな
んかも作っているそうです。

 

●アップルの独自資源は、「ソフト」
そう、もうお気づきの通り、アップルの本当の独自資源は、

・あの美しいデザインを考える、デザイン力
・あの使いやすいクリックホイールを考える創造力

にあるのです。

であれば、自分で製造部門を社内に持つ必要はありません。自分が望
むデザインを実現してくれるメーカーに作ってもらえばいいのです。

 

●独自資源である「デザイン」は絶対にアウトソースしない

だから、独自資源ではない生産はアウトソースして、デザインは社内
で行う、という戦略的な意思決定をしているわけです。
アップルのグレッグ・ジョズィアック副社長は、

「多くの家電メーカーは自社内で製品デザインを行わず、外部に委託
 しています。アップルは絶対にそれは行わない。このことが重要な
 のです。」(週刊東洋経済2007年12月8日号 P.45)

と語っています。

明示的に「アップルの独自資源はデザイン力だ」と言っているわけで
す。

 

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◆真の独自資源:「使いやすいモノを」という執念
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●最後に勝負を決めるのは、お客様への「想い」
ソフトな独自資源、と言っても、「美しいデザイン」であれば、日本
のメーカーも結構良いと思います。

が、圧倒的な差があるのは、インターフェースの「使いやすさ」でし
ょう。なんで、あのクリックホイールがアップルにはできて、他のメ
ーカーにはできなかったのか、というのが最大のポイントです。
それが、多分「想い」というか、「執念」なんだと思います。

iPodの開発には、アップル社のCEO、スティーブ・ジョブズ氏が全
力投球していたといいます。

iPodの試作の段階では、音楽を聴くまでに3回もボタンを押さなけれ
ばいけない、という仕様にジョブズ氏がひどくいらついたり、「メニ
ューが出るスピードが遅い!」と毎日のようにジョブズ氏からの改善
要求が来ていたそうです。

CEOから来る要求が、「コストを下げろ」ではなく、「もっと使い
やすくしろ」というのがアップルのすごさです(ちなみに価格も安い
ですけどね)。それがジョブズ氏の
使いやすさへの執念
なのでしょう。

 

さて……私が使っていた某社のmp3プレーヤー。社長は使ったので
しょうか? 使って、これは便利だと思ったのでしょうか? 同僚は
試してみたのでしょうか? 家族は?

もし、そうだとしたら、あのようなインターフェース、あのような製
品にはなっていないはずです。

インターフェースを考えること自体は、タダです。紙と鉛筆自体があ
れば、どこでもできます。クリックホイール自体も、そんなに難易度
の高い技術だとは思えません。
あとは……執念だと思います。ジョブズ氏は、「なんで音楽聴くのに
ボタンを3回も押さなければいけないんだ」というようなことをよく
言ったらしいですが、事実、iPod Nanoは、同じボタンを2回押せば
すぐ音楽が始まります。

ジョブズ氏がユーザーの立場に立ったというよりは、彼が一番厳しい
ユーザーだった、という方が正確だったと思いますが、

「ラクに、いつでも、すぐに音楽が聴きたいんだよ、オレは!」

というジョブズ氏の叫びが聞こえるようです。そして、それはお客様
が一番求めるものでもあったわけです。
実は、アップルの真の独自資源というのは、
「とにかく使いやすいモノを作る!」という執念
なのだと思います。そして、iPodに負けたメーカーに大きく欠けてい
たのが、この、ユーザーに対する「想い」なのではないでしょうか?

これが、「モノ」としてのiPodに一番学ぶべきところだと思います。
つまり、「お客様に近づく競争」で負けているわけですから、負ける
のも当たり前なわけです。

 

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◆モノが良いのは当たり前:ユーザーインターフェースが競争力に
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●モノの性能+インターフェースの時代へ
アナログ時代の競争力は、「モノの作り方」でした。いかに「物理的
に」小型化するか、などが競争のポイントで、ソニーはそこで勝ち続
けたわけです。

しかし、今は、モノが良いのは当たり前の時代です。デジタル化する
と、モノづくりよりも、「どう使ってもらうか」という、インターフ
ェースに競争の軸が移ってきているように思います。

そもそもiPodだって自分で作っていないのですから、モノ作りで競争
しようなんて思ってはいないでしょう。
これ、多くの日本のメーカーにとっては相当まずい話です。今まであ
まり意識をしていなかったでしょうし、メーカーによっては苦手な部
分だからです。特に、技術志向を強みとしてきたメーカーにとっては
厳しいところです。
iPodと、他社のmp3プレーヤーは基本機能は同じです。モノとして
大きく違うのは、インターフェースです。
そしてインターフェースには、メーカーの「提案力」が問われます。

「こう使って欲しい、そうすれば便利でしょ、だからこうなっている
んだよ」

という、お客様への想いを結実する提案力です。

 

製品インターフェースには、

  お客様への「想い」

が見事にでてきます。そして今は、その競争になっているわけです。

 

しかし、現実には多くの製品のインターフェースは、は、提案どころ
か「何でそうなっているの?」という意味すらわからないシロモノば
かりです。製品でなく、HPのデザイン、DMの構成などでも同じで
す。

「書いてあればいいんでしょ?」

という会社案内、DM、チラシなどのなんと多いことか……
○お客様のことを強く思えば、インターフェースを考える
○お客様のことを強く思えば、インターフェースを考える
○お客様のことを強く思えば、インターフェースを考える
○お客様のことを強く思えば、インターフェースを考える
○お客様のことを強く思えば、インターフェースを考える
○お客様のことを強く思えば、インターフェースを考える
○お客様のことを強く思えば、インターフェースを考える
○お客様のことを強く思えば、インターフェースを考える
○お客様のことを強く思えば、インターフェースを考える
○お客様のことを強く思えば、インターフェースを考える
○お客様のことを強く思えば、インターフェースを考える
○お客様のことを強く思えば、インターフェースを考える
○お客様のことを強く思えば、インターフェースを考える
○お客様のことを強く思えば、インターフェースを考える
○お客様のことを強く思えば、インターフェースを考える
○お客様のことを強く思えば、インターフェースを考える
○お客様のことを強く思えば、インターフェースを考える
○お客様のことを強く思えば、インターフェースを考える
○お客様のことを強く思えば、インターフェースを考える

 

と、このくらい書かないと伝わらないんですね。

売れたま!はテキストで配信していますが、工夫しだいで強調表現が
できるわけです。

iPodを礼賛したいのではなく、そこからの学びを得たいわけですが、
それはこのようなところにあるのではないでしょうか?

 
●直線的な改良には限界がある
あるTV番組で、ある携帯電話機メーカーのデザイナーが、技術者に
「とにかく薄くしろ。薄くしなければ売れないんだよ」と迫っている
シーンがありました。

一見、顧客・市場が主導の技術開発、という風にも見えますが、私は
大きな違和感を覚えました。私が携帯電話のマーケター」だったら
この期に及んで「もっと薄くしろ」というだろうか? と。

一昔前ならともかく、今や0.5mm単位で携帯電話を薄くしても、それ
だけで売れるわけがありません。もちろん、紙くらいに薄くなるので
あれば別ですが、薄くするといったってしれています。
それより、iPhoneのように「ボタンをなくせ」という発想だったり、
「もっと重く、大きくしよう」というような発想をするだろうな、と
考えたのです。

例えば、「携帯電話」だからと言って常に「携帯」する必要はありま
せんし、軽い必要もありません。それより、大型スピーカーと高感度
マイクつきの、電話会議用の携帯電話でも作った方が新しいニーズが
生まれそうな気がします。

DSが2画面とタッチパネルで成功しているのですから、携帯でもマ
ネすれば面白いものができそうですが、今のところ見ませんし……
「携帯電話を薄くしよう」という直線的な発想ではなく、
「どうやったら革命的に使いやすくなるんだろう?」
という発想をマーケターはすべきなんです。

モノからではなく、インターフェースからの発想、というのが、iPod
から学べる大きなポイントの一つだと思います。

 

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◆今号のまとめ
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iPodの製品としての差別化を戦略BASiCSでまとめると、
 ↑
Strength(強み):使いやすいインターフェース
 ↑
Asset(独自資源):デザイン力というソフトな資源
 ↑
Asset(独自資源):「使いやすいモノを」という執念

という、

モノ
 ↑
人・ノウハウ
 ↑
想い
という三層構造になっています。

特に、「使いやすいモノを」という執念は、学びたいところですね!

 

 

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━戦略編Vol.046 2007/12/20
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●製品だけでなく、それをとりまく垂直・水平システム全体での差別
 化を考えてみよう!
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◆iPodの成功を戦略BASiCSで斬る! その3
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●ご存じ、iPodは超大人気

iPodを戦略BASiCSで徹底分析する、年末特集!

ここまでのまとめです。
iPodの製品としての差別化を戦略BASiCSでまとめると、
Strength(強み):使いやすいインターフェース
 ↑
Asset(独自資源):デザイン力というソフトな資源
 ↑
Asset(独自資源):「使いやすいモノを」という執念

という、

モノ
 ↑
人・ノウハウ
 ↑
想い

という三層構造になっています。

 

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◆「製品」だけではない差別化
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●「製品」だけではない差別化

その1,その2までは、iPodの「モノ」、製品に絞ってその優位性を
分析してみました。

ここで、忘れてはならないものがもう1つあります。それが、iPodと
いう「製品」をとりまく「システム」です。それは、「iPod エコノ
ミー」と呼ばれたり、「生態系(エコシステム)」と呼ばれたりしま
す。いずれにしても、iPodという単体の製品をとりまくハードやソフ
トが全体としてその「システム」を形作っています

 

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◆システム1:垂直システム iTuneとiTune Music Store
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●システムその1:垂直システム

まずは、iPodの垂直システムです。具体的に言うと、iTuneと、
iTune Music Store(以降iTMS)です。
●iTune

iTuneは、パソコン上での音楽再生ソフトです。再生ソフトとしても
結構使い勝手は良いです。

iPodは小さいので、iPod上で曲の編集などはできません。それを補完
するのが、iTuneです。iTuneというソフトに、CDから曲をとりこん
だりし、それをiPodに移し替える、という役割を追います。

iTuneの最大のポイントはiPodとの自動同期です。iPodをPCに接続
すると、勝手にiTuneが立ち上がって勝手に同期します。iPodの編集
ソフトでもあり、逆からみるとiTuneを外に持ち出すのがiPodという
ことでもあります。同期が自動的であるのは、ありがた迷惑で、最初
はイラついたのですが、慣れて設定をしておけば、便利です。

前のmp3プレーヤーで使っていたこのようなソフトは、iTuneほど
は使いやすくありませんでしたので、iTuneの使い勝手自体も差別化
ポイントになっているといえますね。

 

●iTune Music Store(iTMS)

iTuneに音楽をCDなどから取り込むわけですが、お金を出して買う
こともできます。それがiTMSです。

他のmp3プレーヤーの場合は、音楽の購入サイトからダウンロード
して、それをmp3プレーヤーのソフト(iTuneに相当)を使ってプ
レーヤーに取り込む、というプロセスをとります。

iTuneの場合は、iTuneから直接iTMSにアクセスし、曲を購入し、その
ままiPodに取り込めますので便利です。

iTMS自体も成功しており、日本ではiTMSは、2005年8月から開始
されました。スタート直後から人気を呼び、サービス開始後4日目で
ダウンロードが100万曲を超えたそうです。

http://www.apple.com/jp/news/2005/aug/08itms.html

iTMSが成功したからiPodが成功したのか、iPodがあったからiTMSが成
功したのかは微妙なところですが、

・iTMSのスタート:2005年8月

・大ブレークしたiPod Nano:2005年9月発売

という時間差を見ると、日本においては、

iPod Mini までは、「製品」というモノ自体の人気

iPod Nano 以降は、「製品」と、iTMSの相乗効果

ということになりそうですね。

 

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◆システム2:垂直システム 関連ソフト群
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●エコシステムその2:サポートソフト

iPodには、フリーソフトで多くのソフトが出ています。例えば、iPod
の曲をパソコンに吸い上げてバックアップをとるソフトなどが無料で
公開されています。テキストファイルをiPodで見られるように加工す
るソフトもフリーでありますので、売れたま!もそうやってみられる
かもしれません。
これも、iPodが普及したからフリーソフトが生まれ、そしてまたiPod
が使いやすくなる、という循環が生まれています。

 

iPodという「製品」だけでなく、iPodを使う前後の環境(垂直システ
ム)自体でも、競合他社に勝っていたわけです。

 

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◆システム3:水平システム アクセサリー
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●エコシステムその2:アクセサリー

iPodの利用前後の「垂直」システムだけでなく、iPodを使うときに同
時に使うシステムも充実しています。具体的にいうと、アクセサリー
です。

iPodには、様々なアクセサリーがあります。多くは、Appleからでは
なく、サードパーティから出ています。わかりやすいところでは
iPodのケースです。色とりどりに美しいものがあり、着せ替えを楽し
むこともできます。

Apple Storeにいくと、色々なものがあります。BOSEから出てい
るiPod専用のスピーカーシステムもありますし、iPodを録音機として
使うアクセサリーが8000円以下で売られています。

このようなアクセサリーは多くの場合「Dockコネクタ」と呼ばれる、
iPod間で互換性の高いコネクタで接続します。ですので、iPodを乗り
換えても引き続き使えることが多いです。ですので、仮にiPodが壊れ
てプレーヤーを乗り換えるときでも、iPodに乗り換えればこれらのア
クセサリーを使うことが出来ます。
当然ですがこのようなものは他のmp3プレーヤーでは使えませんか
ら、これも差別化になります。

これも、iPodが普及したからアクセサリーが増え、アクセサリーが増
えるからiPodが売れる、という循環になっています。

 

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◆スイッチングコストが高まる!
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●システム全体で差別化すると、スイッチングコストが高まる

「モノ」だけの差別化でしたら、「モノ」が追いつかれたらすぐ逆転
されてしまいます。

iPodの場合は、上記のように
垂直システム(使う前後)
・iTune、iTMS
・関連ソフト群

水平システム(使うとき)
・色々なアクセサリー
と、垂直・水平の両方向で、iPodを中心とした広範なシステムが構築
されています。
ユーザーがいったんこのようなシステムを構築してしまうと、他機種
への乗り替えが大変面倒になります。つまり、「乗り替える手間」と
いうスイッチングコスト(乗り替ええコスト)が大きくなるのです。

iPodが壊れたとして、極端な話同じモノ、もしくはこれらのシステム
の大部分が利用できる別のiPodを買ってくれば、そのまま使えてラク
ですしこれまでの出費も活かせます。しかし、他機種に変えると、こ
れらのシステムを再度整備するのが大変です。

また、iPod以外のmp3プレーヤーでは、このような垂直・水平の広
いシステムが構築されていません。

ですので、iPodから他機種に乗り替えることが大きなデメリットを産
んでしまうのです。

 

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◆今日のまとめ
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●モノ単体だけでなく、システム全体で差別化する

一言でまとめると、iPodは、iPodというモノ単体だけでなく、それを
とりまくシステム全体で差別化しているのです。

BASiCSの、Strength:強み・差別化は、製品の差別化だけとは
限らず、このような「システム」での差別化もありえるのです。
どこまでがAppleの意図的なもので、どこまでがiPodが勝ち組だから
こそ、勝ち馬に乗りたい人が増えたのかは難しいところですが、何ら
かの工夫はしているのではないでしょうか。
製品だけでなく、また、自社だけでなく、このような「システム」全
体で差別化を考えることも重要なのです。

 

 

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 ■売れたマーケティング、バカ売れトレーニング:売れたま!■ 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━戦略編Vol.047 2007/12/24
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●何を社内にもち、何をアウトソースするかは、何を独自資源として
 使うかという戦略的な意思決定
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆iPodの成功を戦略BASiCSで斬る! その4
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●ご存じ、iPodは超大人気

iPodを戦略BASiCSで徹底分析する、年末特集!

今回が最終回です!
*お詫びと訂正

今までiTunes、iTunes Music StoreをそれぞれiTune、iTune Music
Storeと誤記していました。お詫びして訂正いたします。
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◆「システム」による差別化は繰り返し出てくる
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●「システム」で差別化して勝つ例は、歴史上も多く出てきた

前号では、iPodの強さは、単体としての強さに加えて、「システム」
で勝ってきた、という分析をしました。
垂直システム:製品を使う前後に使うもの

・iTunes、iTunes Music Store
・iTunes、iPodをサポートするフリーウェアなどのソフト

水平システム:同時に使う周辺機器など

・iPod用にサードパーティが作った数々の周辺機器
このような「システム」としての強さが、iPodの強さの一つだと分析
しました。
歴史的にも、「システム」で勝ってきた例は多くあります。例えば、
NECの名機PC98シリーズ。80~90年代に、「ソフトウェア
資産」を武器にパソコン市場を制覇しました。パソコンだけでなく、
ソフトで差別化したわけです。ゲームで言えばソニーのPlay Station
や任天堂DSなどもソフト資産で勝っていますね。
●オープン化が制してきた「ソフト産業」の歴史

私が知る限り、IT業界・ソフト業界では、「オープン化」したもの
が市場を制する、という歴史が繰り返されてきました。

まずは、1980年代の日本のパソコン。パソコンの日本最初のスタ
ンダードとなった、NECのPC-9801。98は、実は日本最初
のビジネスパソコンではありませんでした。

三菱電機が先行して「マルチ16」を発売、富士通も業務用の
「FACOM9450」を投入するなど、業務用パソコンは当時勃興期にあり
ました。

そんななかで、NECはソフト会社にPC-9801の技術情報を公
開し、実機100台を無償で貸し出す、という当時では「暴挙」に出
ました。今から考えれば、ソフトを制するものがパソコンを制すると
いうのは当たり前ですが、当時はそういう発想は先進的だったようで
す。

結局は、PC-9801がソフト競争に勝利し、80~90年代の日
本のパソコン市場を席巻します。ちなみに私もPC-9801UV2
という機種で一太郎やLotus(ノーツではなく123)などを使って
いました。

PC-98シリーズを破ったのがWindowsです。Windowsも、オープン
化して強い「システム」を築き上げました。Windowsが動けば、どの
パソコンであろうと、Windows用のソフトが動きます。PC-98シ
リーズ01もアップルもそのオープン化の波には勝てませんでした。
ここでもオープン化が勝ったのです。
「システム」の勝負では、オープン化したものの方が強くなりやすい
のです。垂直レベルでは「ソフト」、そして水平レベルでは「周辺機
器」なという、垂直・水平の両方のレベルでの勝負です。

PC-9801が有利になると、サードパーティが98用の周辺機器
をたくさんつくり、ますます98が有利になる、という構図もiPodの
場合と非常に似ています。

ちなみに、任天堂DSのソフトが多く出ている理由の一つに、その開
発費の低さが指摘されます。DS向けのシンプルなソフトは、数千万
円でできるそうで、ソフトメーカーにとって作りやすいわけですね。

このように、競争のパターンというのは、業種業態を超えて、同じよ
うなことが繰り返し繰り返し起きます。まさに「歴史は繰り返す」わ
けです。

理屈は単純です。垂直・水平のシステムは一社ではできません。サー
ドパーティの力を借りた方が、強力なシステムができます。ですから
「オープン化」して、サードパーティに作ってもらいやすくしたほう
が良いわけです。

 

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◆ソニーにはなぜiPodが出来なかったのか:iPodの思想
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では、いよいよ最後に、「なぜソニーにはできなかったのか?」とい
う巷でも議論されている話題に売れたま!でも斬り込んで行きましょ
う。

まずは、背後にある開発思想です。
●オープン化の思想が背後に見えるiPod

iPodは、最初はマックでしか使えませんでしたが、2002年後半か
らWindowsバージョンも出し、2003年半ばからはマックとWindows
モデルを統一しました。

そして、Dockコネクタという統一したコネクタを使い、サードパーテ
ィからの周辺機器の投入もできます。

音楽の録音フォーマットですが、汎用的なmp3が使え、かつ
Windows標準のwmaはiTunesで変換した上で使えます。mp3と
wmaが実質的に音楽フォーマットの標準のようなものですから、両
方に対応している幅の広さがあります。

iTunes Music Storeで買う音楽は、AACというmpegの規格で、
いわばmp3の上位(&著作権保護)の規格です。

iPodのコンセプトが「ポケットに1000曲」であることは一番最初
に紹介しましたね。1000曲も入れるのであれば、標準フォーマッ
トをそのまま使えなければ面倒でしょうがありません。このあたり、
「1000曲」というコンセプトと、「オープン」という思想も一貫
しています。
●「クローズド」だったウォークマン

ウォークマンの出だしのころは、「クローズド」な発想が強く出てい
ました。

まず、ハードは例によってソニーの「メモリースティック」。それも
普通のメモリースティックではなく、MagicGateメモリースティック
と呼ばれる著作権保護対応したものしか使えませんでした。

そして、ソフト面では、使えるフォーマットはATRAC3というソ
ニーのフォーマットのみ。著作権技術が高いのはいいのですが、ユー
ザーにとっては使いづらいですね。mp3や、wmaが使えなければ
お話になりません。

結局、現在のシリーズでは、はmp3、wma、AACにも対応する
ことになりましたね……そうなることは傍から(というかユーザーか
ら)見ている分には自明だったわけですが……

さすがにソニーも今は「オープン戦略」へと転換しましたが、最初は
そうは考えなかったのですね。

ちなみに、iTunes Music Storeで買ったものは、再生できるパソコン
が5台までに制限されるようです。これも不便といえば不便で、他の
ソフトなどでは再生できないようです。iTunesは、入ってくるのはラ
クですが、出て行くことができないという仕組みになっています……

 

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◆「持っているもの」に引っ張られてしまったソニー
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●ソニーはなぜ「クローズド」になってしまったのか?
では、なぜソニーはそのようにユーザーにとっては不便な、「クロー
ズド」な発想しかできなかったのか、考えていきましょう。
1)音楽部門をもっていたこと

まず、対応フォーマットです。なぜ最初に著作権保護がきつい、
ATRAC3やMGメモリースティックにこだわったかと言えば、お
そらくは傘下に音楽部門であるSMEI(ソニーミュージックエンタ
ーテインメント)を持っていたからでしょう。

iPodと競争していた2003~4年当時で、SMEIは4403億円
という売上高をもっていました。これは、当時7兆5千億円の売上高
を誇っていたソニーにとっても無視できない金額です(数字は
2004年3月期、アニュアルレポートより

音楽部門の売上が下がっては困りますから、著作権保護を強めざるを
得なかったのでしょう。

さらに、iTunes Music Storeのような、全レーベルを扱う楽曲販売を
自ら行うことが困難になります。SMEIの音楽を売りたいでしょう
から……アップルにはそういう制限はありません。

つまり、音楽部門を持っていたことが携帯用プレーヤー開発にあたっ
てはむしろ弱みになって働いたということだと思います。

ちなみにSMEIの曲は、iTunes Music Storeからはダウンロードで
きません。例えばソニーミュージック所属のChemistryの曲は、
iTunes Music Storeでは数曲しかでてきませんが、mora.jpでは、
164曲でてきます。CBSソニーから出ている松田聖子さんの初期
の曲もiTunes Music Storeにはありません……こういうところでもア
ップル対ソニーの戦いが続いているのですね。

 

2)MDをもっていたこと

もう一つは、ソニー自らが立ち上げた規格、MDを持っていたことも
要因としてあげられるでしょう。

「MDウォークマンは国内工場が製造しており、雇用のためにも重要
な製品だった。HDDやフラッシュメモリを用いるようになると得ら
れる果実が極端に少なくなるため、MDの延命策を進めることは、自
然の成り行きだった。」(東洋経済2007年12月8日号 P.47)

とのことです。MD工場を持っていたので、この稼働率を上げざるを
得ません。MDを殺してしまうような携帯プレーヤーは組織としては
作りにくいわけです。

また、初期のプレーヤーに搭載されていたATRACももともとは
MDで使っていた技術です。ATRACにこだわったのは、そのあた
りのこともあるのかもしれません。技術をもっていたがゆえに、使い
たくなったのかもしれません。

MDは日本では割と普及しましたが(私もソニーのMDプレーヤーを
使っていました)、海外ではそうでもありません。国内のMD事業の
ために、全世界の携帯プレーヤー関連市場で後手に回ったとも言える
わけです。
そこが問題で、自分がやらなければ誰かがやる、そしてその誰かがた
またまアップルだったわけです。ソニーはアップルに負けたというよ
りは、自らが持っているものに負けた、とも言えるのです。せいぜい
1枚に数十曲しか入らないMDが、1000曲入る携帯用プレーヤー
に負けるのは時間の問題でした。が、ネットMDなどを強力に推進し
ていたソニーには、それがやりにくかったのでしょう。
一方、アップルは、そのときには既に自社生産をあきらめており、生
産は外部委託していますのでそのようなしがらみがありません。

さらに、生産部門を自社で持っていない、ということは、「いつでも
生産拠点を変更できる」ということでもあります。アップルの強みの
1つはデザイン力でした。もしそうであれば、生産部門を持っている
ことは、弱みにすらなります。

デザイナーが良いデザインをして、工場部門に「これを作って」と依
頼したとします。社内の工場部門に「そんなのできない」と言われた
場合、「じゃあいいよ、外部に出すから」と言えるかどうかです。も
し言えるのであれば問題ありませんが、どこかからクレームがついて
「自社工場を使うように」とでも言われたら、自社工場が制約要因へ
と転化してしまいます。自社工場でできることしかできなくなってし
まうのです。

デザイン部門と工場部門が並列の組織の場合には、デザイン部門が工
場に「お願いします、つくってください」と依頼しなければならない
事態も発生します。「度重なる熱心な説得の結果、工場が折れた」み
たいな話はProjectX的に美談として伝わりますが、とんでもない話で
す。美談どころではなく、組織の機能不全です。生産に強みがあるの
であればそれでも構いませんが、デザインが強みの会社であれば、デ
ザイン部門が、生産を社外に依頼しようが自由であるべきです。「う
ちの工場でできないなら、社外に頼むから」と言えるべきです。

広告代理店なんかでは、逆もあります。社内にデザイン部門を持って
いるがゆえに、社内のデザイナーにできることがデザイン上の限界に
なってしまう場合もあります。その場合も、「うちのデザイン部門で
できないなら、社外のデザイナーに頼むから」と言える自由が無いと
デザイン部門の弱さに引っ張られてしまいます。

この意味でも、ソニーではMD部門、工場部門を持っていたことが弱
みとして働いたということもありえるのではないでしょうか?
実は、アップルは、ソニーのこのような「持っている弱み」を、意図
していたかどうかは別として、結果的には非常にうまく攻撃した、と
も言えるわけです。

 

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◆独自資源がマイナスの資源に転じた
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●持っていない強み・持っている弱み

MDで先行し、メモリースティックがあり、音楽部門も持っている、
ということは、携帯用プレーヤー戦場で勝負するにあたり、「独自資
源」として有利な材料だったかもしれませんが、おそらくは足を引っ
張ったであろうことになったのは皮肉なことです。
●インターネット時代はオープン化の時代

カセットテープウォークマン~MDの時代までは、携帯プレーヤーは
携帯プレーヤー単独の勝負でした。音楽媒体(レコード、カセット、
CDなど)と携帯プレーヤーが独立しており、関連がなかったからで
す。メモリースティックのそのようなときには便利だったかもしれま
せん。

しかし、この時代になって、一気にネットとの融合・関連という新し
い要素が加わってきました。インターネットで音楽を、という変数が
携帯プレーヤーに加わったのです。つまり、システムの勝負となった
のです。

そこで、冒頭の「オープン化」が強い、という話とつながってくるわ
けです。CDプレーヤー単体、MDプレーヤー単体では、モノ作りが
勝負なので、「工場を持っている生産の強さ」がフルに活きます。

しかし、ネットもからめた「システム」づくりの勝負は、生産の強さ
は勝負のポイントになりません。それよりは、オープンなネットワー
ク作りが勝負になります。前号で書いたように、そこでiPodは垂直・
水平の両方で優れたシステムを作り上げたわけです。自分で生産部門
や音楽部門を「持っていない」からこそオープンなシステムが構築で
きました。片やそれは、音楽部門や工場・生産部門を「持っている」
ソニーにはできなかったのです。メモリースティックのような囲い込
みツールも、このようなときにはオープン化競争においては、むしろ
ネガティブに働きます。

「生産」の垂直統合であれば、持っているほうが有利です。しかし、
ソフト的な垂直統合(iPod – iTunes Music Storeなど)であれば、
持っていない方が様々な組み合わせができるわけです。

「垂直統合」は一つの方法ではありますが、垂直統合が「モノ作り」
の垂直統合ではなく、「モノ」+「ソフト」の垂直統合へと変質し、
そこでは持っていた独自資源が使いにくくなったのです。

ネットの時代へとなるにつれ、必要な独自資源が変わり、そのような
ときにはむしろ何も持っていないほうが新しい独自資源を構築しやす
かったわけですね。

ソニーがiPodを作れなかった、iPodに敗れたのは、経営の善し悪しよ
りも、時代の変化によって、それまでの「独自資源」がむしろマイナ
ス要因になったことに対応できなかった、ということなのではないか
と私は考えています。

 

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◆アップルは、セオリー通りの経営をしている
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●選択と集中で「持っていない強み」をフルに活かした

こう見てくると、アップルがやったことは、いわゆる「選択と集中」
ということになります。

使いやすいデザイン力などを強みとしたiPodという製品を核に、自ら
はデザインに特化し、生産は外部委託。そして、iTunes、iTune
Music Storeという垂直統合を構築。

自らの強みに集中し、他は他社に任せる、というセオリー通りの経営
なのですね。正確に言うと、

・自らの強みとして活かせる独自資源、つまりデザイン部門は自社内
 に残した

・生産部門は強みではないので、より生産がうまい他社に任せた

と、独自資源の取捨選択を戦略的に行ったということです。「餅は餅
屋」(2007年8月16日配信)の経営を愚直に実行したのです。
何を社内にもち、何をアウトソースするかというのは、コスト効率だ
けで考えてよいことではなく、このような戦略ありきで考えるべきこ
となのです。

 

●アップルのやっていることは奇をてらっていない

iPodを分析してきて、確実に言えることが一つあります。それは、
アップルがやっていることは一見奇をてらっているようにみえて、実
は極めてセオリー通りの経営・マーケティングをやっている、という
ことです。

それをスティーブ・ジョブズ氏が意識的にやっているのかどうかはわ
かりません。彼は天才なのかもしれません。それでも、天才が直感的
にやってうまくいくことは、理詰めで考えても正しいことなのです。
逆に言うと、理詰めで考えておかしい直感は、やはり何かがおかしい
のです。

「天才の直感」には、いくつか問題があります。例え正しい直感でも
周りになぜそう考えたのか説明できないこと。そうなると、天才に従
うよりほかはありませんから、周りの人は何をやってよいのか、よく
わかりません。また、その直感が間違っていた場合に、反論できない
ことです。さらに重要なことは、私も含めてほとんどの人は天才では
ないということ。

残念ながら私のような凡人は、このように「ロジック」と「論理」で
きっちりと詰めていくことしかできません。

だからこそ、凡人たる私にできることである、「理詰めで考える」こ
とをきっちりとやるしかないんですね。戦略BASiCSは、そのた
めに考え出されたツールなんです。普通の経営者・マーケターが、普
通以上に戦略的に考えるためのツールなんですね。
●「強み」と「強みの源泉」である独自資源は、分けて考える

さらにわかったことは、やはり「強み」と「強みの源泉」は分けて考
える必要がある、ということです。

ソニーの「マイナスの独自資源」としてのMD、メモリースティック
などが、「差別化」としてのモノ作りに影響を与えている、という分
析は通常の3Cなどでは非常にやりにくいのです。やはり、「強み」
と「独自資源」は分けて考えることが必要なのです。我田引水ではあ
りますが、やはり戦略BASiCSはその意味でも使いやすいツール
なのですね。

戦略BASiCSは普通の人がきっちりきっちりと戦略を組み立てて
いく上で、極めて有効なツールになりうるのです。
今年を締めくくる年末の戦略編特集、「iPodを斬る」、売れたま!史
上最長の4回連載でお届けしてまいりましたが、いかがでしたか?
私が見落としていること、異論・反論、ユーザーとしての意見など、
ぜひご感想をいただければ幸いです!

 

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◆おたより紹介!
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こんなメールをいただきました。ありがとうございます!

若干短く編集させていただいております。

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iPodは私も愛用しているんですが、佐藤さんの分析に触発されて感想
として私なりの見解を2点、送り述べたいと思います。
(1)コミュニティとしての視点

今も活動は活発だと思いますが、Appleという会社はユーザグループ
を支援する活動は、かなり昔から行っています。

iPodがすごいと思ったのは、SONYと比べてこの「コミュニティ」を視
野に入れた仕掛けがうまくできていることです。

極めつけはiMixです。

自分の好きなアーティストのライブラリを自分で編集し、そのテンプ
レートを付加価値としてネットに公開できるマーケットプレイスをあ
らかじめ設計しているということ。

これはすごいと思います。

iMixに自分のライブラリリストを公開し、これを投票できる「場」を
提供し、このテンプレートを販売可能としたこと。

つまり、「おまえの作ったベストアルバムはすごい!」

という人たちが集い、評価し、価値をつけられる「場」の醸成。

ユーザ参加型の仕掛けをあらかじめ設計している。
これは非常に優れたコンセプトだと思います。

SONYは絶対こういう発想にはなりません。
Appleはソフトウェアメーカーなんですよね。

「MacはiPodの周辺機器です」と言い切ったあたりもすごい!
(2)プライシング

初代iPod Nanoが発売されたとき、ビックリしました。4GBモデルが
当時、4GBメモリ(単体)と同等の価格だったんです。

これは飛びつきますよね。メモリの値段と同じだったんですから。

これはAppleが4MBメモリをメーカーに交渉し、破格の値段で仕入れ
ることに成功したこと。

今でもシリーズ中、NANOは利益率No.1ですし一番の売れ筋。
つまり、稼ぎ頭なんですよね。

そこにボリュームゾーンを持ってきて一番粗利を稼げる構造にしたこ
と。

これがすばらしく評価に値する価格戦略だと思います。

モデル間の価格差をよくよく見てみると絶妙な価格差なんです。悔し
いくらいに(笑)。絶妙なプライシングだと思います。
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ありがとうございました! 鋭い視点ですね。iMixなんかは面白い試
みですよね。

素晴らしいご指摘、ありがとうございました!