4つの基礎用語

ここでは、マーケティングの基礎用語4つを説明します。

1)ベネフィット
2)セグメンテーション・ターゲット
3)強み・差別化
4)4P

です。

1)ベネフィット:お客様にとっての価値

これは、マーケティングにおいて最も重要な考え方と言えます。

一言で言うと、

「お客様は、モノ・サービスではなく、「嬉しさ」や「喜び」を買っている」

ということです。

有名なテーゼが「ドリルを売るには穴を売れ」ですね。お客様は、ドリルという工具が欲しいのではなく、そのドリルが開ける「穴」が欲しいのです。

例えば、暑い夏に冷たいスポーツドリンクを百円強で買う、というときは……

・のどをうるおせておいしい
・熱中症にならない

ということに対してお金を払っているわけです。

スポーツドリンクは、要は水分+塩分+糖分、ということだと思いますが、そのような「物質」にお金を払っているわけではなくて、「自分の嬉しさ」にお金を払っている、ということです。

これは買い手にとっては当たり前のことですが、売り手になったとたんにキレイさっぱり忘れてしまいます。「立場変われば人変わる」のですね。

その証拠に、会社案内や商品カタログなどには

・我が社は19××年に創業し……
・この製品はナントカカントカテクノロジーを採用し……
・◎◎機能搭載、最新のハイスペックで……
・容量は◎◎ml、産地は……

という、モノの説明が並びます。モノの説明が悪い、ということではありませんが、それだけで止まってしまっていますと、それはまずいです。

「モノ」ではなく「嬉しさ」の説明が必要です。なぜなら、お客様はその「嬉しさ」(=ベネフィット)にお金を払っているからです。「◎◎機能」では、「嬉しさの説明」になっていません。それによって「10分早く帰れる」のか、「給料が1万円上がるのか」ということなどの「嬉しさ」(=ベネフィット)を説明しましょう。

ここでのポイントは、「主語」です。

モノが主語になっている説明は、「モノ言葉」ですので、ダメです。「◎◎機能搭載」に主語は「モノ」ですよね? お客様が◎◎機能を搭載しているわけではありません。

そうではなく、「お客様」を主語にして、「お客様はどう嬉しいのか」を説明する必要があります。

 

2)セグメンテーション・ターゲット:ニーズが違うので分けて対応する

セグメンテーションとは、お客様を分ける(正確には括る)ことで、分けられた1つ1つのカタマリを「セグメント」と呼びます。なぜセグメンテーションをするかというと、それは「ニーズ」が違うからです。ニーズが違うから、分けて対応するわけです。

そして、どこかのセグメントを優先的に狙います。その優先的に狙うお客様を「ターゲット」と呼びます。

このあたりは基本的な用語ですので、それほど説明はいらないかと思います。

問題は、「セグメンテーションは分けることか?」ということです。

モノの本や教科書に書いてあるセグメンテーションの説明は、まるでケーキをナイフで切り分けるかのように、スパスパと「切る」ことを想定しています。

が、それは、現代先進国においては不適切なイメージです。「分ける」よりは「括る」と呼んだ方が正確です。

というのも、例えば「20代女性」、というのは典型的な性別・年代のセグメンテーションですが、20代女性と言っても、

・20才の遊び回る女子大生
・21才のヤンママ
・21才の就活中の女性
・23才の新人ビジネスパーソン
・28才の中堅ビジネスパーソン
・29才のDINKS
・29才で子供がいる共働き
・29才の子供がいないマダム
・29才で両親と子供の面倒を見る専業主婦

と、全てが入ってきます。この方々は、服装にしても、化粧品にしても、食事にしても、全てニーズが違いますよね?

セグメンテーションは「ニーズが違う」から分けて対応するわけですが、「20代女性」という括りでは、上記のニーズが違う人達を一緒くたにしてしまっています。すなわち、あまり意味が無いセグメンテーションなのです。

現代において必要なのは、「分ける」というよりは、「同じニーズを持つ人達を括る」ことです。

「夜にゆっくり落ち着いて静かに食事をしたい」

というカップルのニーズは、20代でも40代でも一緒ですよね? すると、ホテルのレストランなどにディナーに行くでしょう。

「友人とバカ騒ぎしたい」

というグループのニーズも、年代を関わらず一緒ですよね? すると、気楽な居酒屋にいくでしょう。

このように「ニーズで括り」、そして、「どのニーズに対応するのか?」という考え方で「ターゲット」を決めた方が、うまくニーズに応えられることが多いです。

 

3)強み:お客様が、競合ではなく、自分を選んでいただく理由

「お客様の立場に立つ」ということがマーケティングの基本的な考え方ですが、それだけではまだ売れません。なぜなら「競合」がいるからです。

「お客様に、競合ではなく、自社を選んでいただく」

必要があります。そしてこれが「強み」です。強みを使って差別化しますので、ここでは「強み」と「差別化」は同義として扱います。

そしてこの「強み」(=お客様が、競合ではなく、自分を選んでいただく理由)を作ることが、マーケティング戦略そのものなのです。

これは、戦略BASiCSで考えるのが考えやすいので、説明はここで止めておきます。

 

4)4P:売り物、売り方、売り場、売り値

ここまでの

・ベネフィット
・セグメンテーション・ターゲット
・強み

というのは、「考え方」です。「考え方」ですから見えません。

売り物、売り方、売り場、売り値、という状態になって初めて「見える」ものになります。

4Pというのは、いわゆる「マーケティングミックス」の構成要素である

・Product  :商品・サービス
・Promotion:広義の広告・販促
・Place    :販路・チャネル
・Price    :価格

です。英語の頭文字をとって、4P(ふぉーぴー)と呼ばれます。

が……どのPがどれだったか往々にしてわからなくなりますので(苦笑)、私は

・売り物
・売り方
・売り場
・売り値

と呼んでいます。これだと、まず忘れません。

ベネフィット、セグメンテーション・ターゲット、強み、という「考え方」を「実行に落とし込む」のが、この4P、という関係ですね。

 

どれも基本中の基本ですが、おおよそこれくらいの言葉がわかっていれば、マーケティングはできるはずです。

例えば「ポジショニング」などという誤解を招きやすい(実際に誤用が多いです)言葉を使わなくても、マーケティングは説明できるわけです。
なお、この基礎理論に基づき、マーケティングの基本的な考え方を説明している入門書が

「新人OL つぶれかけの会社をまかされる」(青春出版社)

です。

ページ上部へ戻る