B3 後編:戦略・戦術の一貫性

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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━戦略編Vol.190 2011/05/26
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日のポイント ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

●重要なのは「一貫性」。「戦略」と「戦術」全体の一貫性を取ろう

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◆再掲:B3の女性用パンツ
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●増収増益を続ける、女性用パンツのB3(ビースリー)

B3は、女性パンツのSPAで、17期連続増収増益を記録している
好調ぶりです。

前号では、「強み」と「メッセージ」の一貫性を考えて来ました。

増収増益のヒミツは、それだけでは無さそうです。今回は、他の部分
の一貫性を考えて行きましょう。

これだけの記事ではあるのですが、各要素の間に、

「一貫性の線」

がたくさん引けそうです。 前回の要約を、今号に関係する部分を抜粋して再掲しておきます。

 -----------< 記事要約 >------------

○目まぐるしく売れ筋が変わる通常の衣料店とは違い、B3は主力を
 パンツに絞っているため、店員は商品をどう売り込むべきかの知識
 やノウハウを蓄積しやすい。幅広いサイズを扱い、商品開発には最
 低でも3年をかけるこだわりぶり。
○「店は小さい方がいいし、場所はトイレ横で構わない」と井元社長
 は事もなげに言う。全国約180店の平均は50平方メートル弱、
 SCなどに入る標準的な衣料品店の半分程度。その中でも衣料店が
 入りたがらないトイレ近くなどに出店。透明筒は、限られた面積に
 多くの在庫を抱えるための保管機能も併せ持つことになる。
○立地コストは切り詰め、人に投資。販売子会社を通じ、1店平均4
 人弱を雇う。50平方メートル弱の小規模店としてはかなり多い。
 店員は時間をかけて顧客ニーズを探り、商品特性を説明。顧客の滞
 在時間は短くて30分、長いと2時間という。この接客で販売に結
 びつくと同時に、リピーター獲得にもつながる。銀座店では来店者
 の60~70%は過去に購入歴があるリピーターだという。
2011/04/20, 日経MJ(流通新聞), 1ページ

-----------< 記事要約 >------------

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◆商品を絞っているから、リピートが増える
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●商品をパンツに絞っているから、リピートを増やせる

記事にもあるように、B3の販売戦略は「リピート重視」です。

まずは、女性用パンツに特化しているから、リピートを増やせる、と
いう、「商品」と「売り方」の一貫性です。

この、「パンツに特化」 と 「リピートが増える」 という2つの
要素の間には、3本の線が引けそうです。
1)商品開発

大手メーカーならともかく、それほど規模が大きくない会社が手を広
げると、「資源分散のワナ」に陥ります。「何でもあるけど何にも売
れない」病ですね。

パンツに特化している、というのは、商品開発に時間・お金をかけて
強みのある商品ができる、という要因の1つでしょう。
2)販売ノウハウ蓄積

売り物がパンツですから、店員が売るのはパンツであり、お客様から
聞かれることも、パンツのことだけですよね。

すると、たくさんの商品を扱っているよりも、情報が集まりやすくな
ります。トークの成功事例なども増えるでしょう。
3)従業員教育

また、従業員教育もやりやすいはずです。パンツも、ブラウスも、ジ
ャケットも、となると、教えることがたくさんあります。店員に教え
るのも、覚えるのも大変です。

パンツに絞っていれば、教育負担が減りますね。

そして、パンツについて、より多くのことを覚えられるでしょう。
すると、

・強みのある商品を
・蓄積された販売ノウハウに基づき
・教育のしっかりした店員が

時間をかけてお客様に説明できます。

商品に「強み」があり、その「強み」をしっかり説明できますので、
リピートは上がりますよね。

このように、「女性用パンツに特化」していることが、「リピートが
増える」ことにつながるわけで、その間の「3本の線」が、その関係
性を支える理由になっている、というわけです。

このような「線」が多いほど、各要素感の一貫性が強い、ということ
になります。

 
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◆店舗コストを減らせると、「人」に投資できる
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●店舗関連のコストを減らせる

また、店舗関連のコストを削減できる理由が2つあります。
1)リピート重視だから、立地は一等地でなくて良い

新規獲得重視であれば、ショッピングセンター(SC)の中でも、人
通りが良い、好立地に出すことになります。

逆に、お客様がリピート顧客であれば、来店したことはあるわけです
から、店がどこにあるか、というのはわかっています。すると、人通
りの多い好立地に出店する必要性が減ります。

すると、出店コストを減らせます。「トイレの横」という、条件が良
くない場所ですから、賃料を下げる交渉もしやすいですよね。

リピート顧客が多い、ということは、B3の店に来る=そのSCに来
店する=SCの魅力が高まる、ということで、賃料交渉で優位に立て
る、という要素もある「かも」しれません。
2)透明筒だから狭い店でも在庫を抱えられる

前号で見てきた「透明筒」は、まとめて陳列できますから、「在庫保
管機能」も兼ねています。

すると、在庫スペースを減らせますから、やはり店舗コストが減らせ
ます。

同時に、透明筒は、商品説明力を高めて、リピート強化につながって
いる点は、前号説明した通りです。

 

●店舗コストを減らし、「店員」に投資できる

店舗コストを減らせれば、その分のお金を「人」に投資できます。

50平米の店に4人という多めの店員を配置できる要因の1つが、店
舗コストが小さいことですね。

 

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◆店員に投資できると、リピートが増える
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●「店員」に投資できるから、接客時間が取れる

「店員」を多めに配置できるので、その分「接客時間」が取れる、と
いうことになります。1人当たり30分~2時間という長時間の接客
が可能になるわけです。

すると……また、「店員に投資」と「リピート顧客増大」の間に、2
本の線がひけます。

 

1)お客様のニーズ把握→商品開発

お客様のニーズがわかりますから、それを商品開発に活かしやすくな
りますよね。

店員が応対に追われていると、そのようなニーズをまとめて本部に報
告することは難しいでしょうが、店員が多ければ、そのような作業も
やりやすいでしょう。
2)説明力強化

それだけ長時間話せれば、お客様のニーズが引き出せます。ニーズに
あった提案もできますし、お客様も満足されるでしょう。

そのときに、「透明筒」が威力を発揮するのは、前号の通りです。

 

これらの効果で、また「リピートが増える」、という好循環が回るこ
とになります。
最初に書いたように、

・強みのある商品を
・蓄積された販売ノウハウに基づき
・教育のしっかりした店員が

時間をかけてお客様に説明できる、という部分がさらに強化されてい
くわけです。

 

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◆一貫性の「線」を引いてみよう!
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●要素間の一貫性の「線」を引いてみよう!

ここまでの、色々な要素・施策間の「つながり」を見てみましょう。
○商品をパンツに絞っている
 →商品開発に時間をかける→商品での差別化 →リピート獲得
 →販売ノウハウ蓄積 →リピート獲得
 →従業員教育 →リピート獲得
○リピート顧客獲得
 →店舗コスト削減
 →トイレの横の立地でも顧客が来店
○トイレの横の立地
 →店舗コスト削減
○店舗コスト削減
 →店員に投資 → 店員の接客時間が取れる
○透明筒
 →商品の強みの説明力強化
 →狭い店でも在庫が置ける→店舗コスト削減
○店員の接客時間
 →お客様のニーズ把握→商品開発→商品での差別化→リピート獲得
 →説明力強化→リピート獲得
 →透明筒を使った説明ができる→商品の強みを説明→リピート獲得
と、ありとあらゆる要素に「つながり」があることがわかります。

これは実際に「図」をお書きいただいて、各要素感に実際に「線」を
引いてみると、その「密接なつながり感」がよくおわかりいただけま
す。

 

●線が引ける=一貫性が強い
「線が引ける」ということは……強固な一貫性がある、ということで
す。

それぞれの要素に、つながりがある、全体として、マネできないよう
な仕組みになっている、ということですね。
冒頭に要約した記事をあらためてお読みになっていただくと、あの短
い文の間に、「つながりのある要素」が詰まっていることがおわかり
いただけるでしょう。

全ての要素が「美しくつながり」、全体として同じ方向に向いている
のです。
ちなみに、B3は、基本的には「商品軸」で差別化していると考えら
れます。パンツの商品開発に重きを置き、商品の品質の優位が、強み
の源泉と言えると思います。

商品軸ですと、一般的には「商品単価」で利益を稼ぐことが多いので
すが、「リピート」(顧客維持・購買頻度)を重視している、という
ことですね。

密着軸の場合は、データベースマーケティングや製品のカスタマイズ
という方向に行くので、おそらく密着軸では無さそうです。

 

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◆「絞る」から、独自資源が蓄積できる!
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●「絞る」ことで、サイクルが速く回り、独自資源が蓄積できる!

ここでのポイントは……

・パンツに特化
・リピート重視
・店員に投資し、接客時間重視

という戦略の絞り、ですね。

この3つの要素に、「線」が集まっているのです。
すると、

・パンツに特化して商品開発を行い、より良い商品ができてリピート
 率が高まり、店舗コストが減らせて、店員が増やせ、お客様ニーズ
 がわかるからさらに商品開発力が高まりリピートが増え、また店員
 が増やせ、またリピートが増え、ノウハウが蓄積してまた……

という、好循環(=正のフィードバック)が起きやすくなります。
このような理由で、「サイクル」が早回しされ、

・商品開発力
・販売ノウハウ
・店員の接客・説明力

などの「独自資源」(この場合はソフト資源)がさらに蓄積されやす
くなるわけです。
あらゆる要素に、

「一貫性」=「線が引ける」=「つながり」

を持たせることにより、「独自資源」の蓄積を早め、それが「強み」
をマネできないものにしている、ということだと思います。
戦略・戦術における、「絞り」と「一貫性」の重要性がよくわかる事
例でした。

さて……あなたの会社の戦略・戦術は全て一貫性があるでしょうか?
全ての要素は、「美しくつながって」いますか?

書き出してみて、「線」を引いてみましょう!

 

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◆今日のまとめ
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●戦略の核心は「一貫性」にある。全ての要素の「一貫性」を徹底的
 に取ろう!

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